2020/01/25

北陸名物

出張で敦賀に行ってきたのだ。
敦賀というと・・・。
正直原子力発電所のイメージしかなかったんだよね。
福井県なので、カニとかの海産物もおいしいんだろうな、くらいの認識。
で、行ってみて初めて知ったのは、「おぼろコンブ」が名物だということ。
もちろん、若狭湾や敦賀湾ではコンブはとれないのだ。

聞いたところによると、このコンブは北前船で蝦夷地(北海道)から運ばれてきていたもの。
敦賀は北陸道の交通の要で、特に京の都につながる重要な拠点となっていたのだ。
鯖街道なんかも有名だよね。
で、コンブも敦賀をはじめとする北陸の各地で加工され、畿内(関西地方)に流通したようなのだ。
確かに、江戸の文化ではあまりおぼろコンブというのは見ないよね。
関西ではうどんの具にしたり、おにぎりに巻いたりといろいろと使われるようだけど。

もともとは、コンブを船で輸送する際、コンブの中心部にカビが生えることが多かったんだって。
おそらく表面は堅いし、乾いているので、柔らかく水分も多い中心部がカビるのだと思うけど。
でも、まるごと捨てるわけにはいかないので、中心部がカビたコンブは表面を削って、カビていない部分だけを食べるようにしたんだって。
それがおぼろコンブのはじまり。
両端を切り落として形をそろえてから、特製のかんなでしゅっと削るんだよね。
表面に近いものほど色が黒く、中心部に近づくほど白くなるのだ。

最後は白いコンブの芯が残るんだけど、それが白板コンブ。
もともとはカビた部分だったので捨てられていたわけど、流通の技術が向上してカビが防げるようになると、これが大阪でバッテラなどに使われるようになるんだよね。
大阪の寿司屋さんが提案したんだって。
余すところなく利用されているのだ。

おぼろコンブに似ているのがとろろコンブ。
とろろコンブは、表面を削っていくのではなく、酢に漬けて柔らかくした昆布をブロック状にかため、それを糸状に削ったもの。
全部削ってしまうので、白板コンブのような芯は残らないよ。
ちょっと酸っぱいにおいがするのは酢漬けにしているからなのだ。
いやあ、同じものだと思っていた・・・。

こちらのとろろコンブの方は工場で大量生産できるので、普通にスーパーでも市販されているよね。
一方で、おぼろコンブは手で削るので現在では高級品になっているのだ!
今回お土産で買ってきたのだけど、食べるのが楽しみだ。

2020/01/18

インペリアル離脱

英国では、チャールズ皇太子の次男であるヘンリー王子とメーガン妃が「主要王族」から抜ける、と発表して大騒ぎになっているよね。
その後にエリザベス女王以下で会議をしたらしいけど、今後どういう形が可能なのか引き続き協議していくとかなんとか。
英国王室というのがどういうシステムになっているのかよくわからないけど、今回の「思いつき」はそういうルールをよく理解した上でのものではないんだな、というのはよくわかるのだ(笑)
しかも、一部報道によれば、どうもメーガン妃発で、王族としての知名度や国庫からのある程度の収入は確保しつつ、王族としての公務の負担は減らしたい、みたいな「いいとこ取り」を狙ったものとか言われているから、そうは問屋が卸さないよね・・・。
で、気になったので、日本のシステムを調べてみたのだ。

日本でも古来から後続を離れて一般人(?)になるということは行われているわけで、特に直径の天皇家と血縁関係が遠くなると、「臣籍降下」という形で姓をいただいた進化に加わる、ということが行われていたのだ。
実は誰もが知っているのは源氏と平氏で、後に鎌倉幕府を開く源頼朝の系列は清和源氏で、文字どおり清和天皇の流れをくむ氏族。
ほかに村上源氏や嵯峨源氏(百人一首でもおなじみの河原左大臣こと源融など)というのがあるよ。
おごる平家の平清盛の系列は桓武平氏で、桓武天皇の皇子からの流れだよ。

明治維新以降は、進級の皇室典範において「皇族」の範囲が明確に定められていて、かつ、皇族を離れる場合についても規定があるのだ。
現行の皇室典範では、第二章(第5条~第15条)で皇族の範囲を明確に定めているんだよね。
そのうち、第11条~第14条が皇族を離れる場合の規定なのだ。
自由意志により皇族を離れられるのは、基本は「女子」に限定されていて、男子皇族は「やむを得ない特別の事由があるとき」に「皇室会議の議により」皇族を離れることができる、とされているよ。
女子皇族の場合は、民間の方と結婚すれば普通に民間人になるけど、結婚をせずとも、自らの意思により皇族を離れることもできるのだ。
これは、我が国の皇室が男系であるため、女子皇族には皇位継承権が一切発生しないからなんだよね。
逆に、男子皇族は順位は別として皇位継承がつきまとうので、勝手に皇族をやめることができないシステムになっているのだ。
英国にはこういうのはないのかなぁ?

そして、お金の関係。
日本の皇室は、皇室経済法に基づき国庫から皇室に国庫から予算が支出されることとなっているのだ。
皇室に支出される経費には大きく分けて3つあって、内廷費、宮廷費、皇族費という区分があるよ。
内廷費は天皇陛下をはじめとする皇族方の「御手元金(ポケットマネー)」となるもので、宮内庁が経理を行う「公金」ではないのだ。
つまり、国家から支出されるけど、皇室の私的活動に使われる性質のお金。
皇室が行う国事行為ではない祭祀やそのために必要な人員(内定職員)に当てられるよ。
宮廷費は、逆に宮内庁が経理を行う「公金」とで、国家機関としての宮内庁及び国事行為を行う公人としての皇室のための予算なのだ。
これはほかの省庁と同じような予算ということだよね。

最後の皇族費というのが、皇族に毎年定期的に支払われる、いわゆる年収的な性質の経費や皇族の身分を離れる際に支払われる「餞別」的な支出に使われるもの。
いったん皇族を離れれば、この皇族費の支出対象からは外れることとなるのだ。
これも内廷費と同様に「公金」ではなく、各皇族のポケットマネーとして使われるものだよ。
皇室経済法施行法という別の法律で定額が定められていて、そこから自動的に計算される額が書く皇族に支出されるのだ。
このほか、行政組織としての宮内庁の運営に必要な経費は部つんいない各府に計上されているよ。

というわけで、日本の皇室の場合は、ヘンリー王子のようなことはなかなか起こらないんだよね。
まず、男子皇族は皇族を離れようとしても「やむを得ない特別の事由」がなければだめだし、さらにそれが皇室会議で認められなければいけないのだ。
さらに、皇族を離れてしまえば皇族費の支出対象ではないので、メーガン妃が狙っていると言われる、王族としての収入をある程度確保する、というのもだめ。
やはり、皇族としての責務をきちんと果たさないでいいとこ取りはさせてもらえないのだ。

2020/01/11

ゆたかな酸味

東南アジアに出張で行ってきたのだ。
北京は行ったことがあったのだけど、あたたかい方のアジアははじめて!
自分ではなかなか旅行先に選ばないので、ある意味新鮮かな。
はっきり言って観光はできないけど、なかなかよい経験だよ。
現地の料理が味わえるからね。

東南アジアの料理というと、辛いものをイメージするけど、必ずしもそれだけではないのだ。
っていうか、けっこう甘酸っぱいものが多いんだよね。
どうも暑い地方だと、甘み勝手、酸味がきいたものがさっぱりしていて合うみたい。
その味付けによく使われているのが、タマリンドなのだ。
インドのチャツネに使われたり、タイ料理屋フィリピン料理の甘酸っぱい料理なんかに使われているよ。

甘みと酸味の両方があるので、ボクはてっきり柑橘系と思い込んでいたんだけど、実はアフリカ原産のマメ科の植物。
今では東南アジア・南アジア、南米などの亜熱帯・熱帯地方で好まれて栽培されているみたい。
フジと似たような大きなさやの中に身が入っていて、その中にある黒い果肉を持つ実がタマリンドだよ。
ドライフルーツにもなるみたいだけど、多くの場合、果肉の部分だけを集めてブロック状にするのだ。
そのまま削って使ったり、水でふやかしてペースト状にして使ったり。

酸味のもとは、酒石酸とクエン酸。
クエン酸は多くの酸っぱい果物に含まれているものだよね。
いわゆるレモンの酸味。
酒石酸はワインに多く含まれるもので、ワイン樽の底に白く沈殿したものがあって、そこからカリウム塩(酒石酸カリウム)が発見されたので命名されたものだよ。
ワインの酸味成分の一つで、やや渋みがあるのが特徴。
どうもこれのおかげで酸味に深みがでるようだね。

東南アジアや南米では、フレーバーとしても人気のようで、清涼飲料水になったり、ガムやキャンディのフレーバーにもなっているんだって。
日本のユズも少し苦みのあるほのかな酸味と甘みだけど、そういう深みのある甘み・酸味がよいのかもね。
ま、日本のユズの場合はそこまで酸味が強くないのだけど、タマリンドはかなりすっぱいのだ。
やっぱり暑い地方だとそれくらいパンチが効いていないとね、ということなんだと思うけど。

2020/01/04

北海名物を正月に

本来的にはお節料理には関係ないんだろうけど、最近のお節にはよく「松前漬け」が入っているよね。
スルメ(あたりめ)やコンブは縁起物でお正月飾りなんかにも使われるしね。
もともと保存食で日持ちもするし、他のお節料理と同じく、酒に合うというのもあって、常連と化しているような気がするのだ。
実際にお正月前には松前漬けの素をよくスーパーなどでみかけるようになるし。

この松前漬け、名前のとおり、北海道の郷土料理。
かつてコンブは「松前」と呼ばれることもあったように、北海道の名産。
スルメイカもよく獲れて、スルメも名物だったのだ。
さらに、江戸後期から昭和初期にかけては、北海道と言えばニシン。
大量に獲れたので、ニシンの卵である「数の子」も実は安価な食材だったのだ。
これらを塩漬けにして保存食にしたのが松前漬けの発祥だそうだよ。

これが戦前の昭和期に商品化される際、醤油ベースの調味液に漬けたものに変わったようなのだ。
それが現在普及している松前漬けになっているわけ。
調味液は、醤油、酒、味醂などを煮立てたもので、これに細切りにしたコンブ、スルメ、ニンジンを入れ、さらに、数の子を加えて数日冷暗所で味をなじませるのだ(ニンジンは入れない場合もあるよ。)。
この過程でコンブとスルメからはうまみが溶け出し、そして、コンブのぬめりで全体がとろっとするのだ。

似たような料理に福島の郷土料理の「いかにんじん」があるんだよね。
こちらは細切りのスルメとニンジンを醤油ベースの調味液で漬け込んだもの。
松前漬けの原型とも言われているんだけど、かつての松前漬けが塩漬けであったことを考えると、そう単純ではないのだ。
蝦夷地を所領していた松前藩は江戸後期にいったん福島の伊達のあたりに梁川藩に国替えになり、再度蝦夷地に戻ったんだけど、その際に福島のいかにんじんを家臣が持ち帰ったのでは、と言われているのだ。
同じ細切りのスルメを使う保存食なので、このときの醤油ベースの調味液でつけ込む、という手法が松前にもたらされたのではないかと思うんだよね。
元々塩漬けだったのが醤油ベースのものに変わっていったというわけ。
ただの塩漬けよりはそっちの方がうま味がありそうだしね。

「漬け」とは言っているけど、いわゆる発酵食品としての漬け物とは違うのだ。
浅漬けや醤油漬けなどと同じで、「漬け込んだ」というものであって、乳酸菌などで発酵はさせていないはずなんだよね。
初期の塩漬けのものはよくわからないけど、現在の調味液に漬けて味をなじませるものは発酵していないのだ。
その証拠に、まったく酸味は感じないよね。

京都名物の千枚漬けも、かつては乳酸菌発酵を使った漬け物で、塩漬けにして水分を除いたカブをさらにコンブと一緒に漬け込んで乳酸菌発酵させたもので、カブの甘さと発酵によるほのかな酸味を楽しんだものだったそうなのだ。
現在よく流通しているものは、カブのスライスの酢漬けになっていて、発酵させていないものもあるんだって。
買うときに気をつけないといけないよ。

ただし、ミソの場合も、耐塩性の乳酸菌によりほのかな酸味を加えることで味の深みが増すというから、松前漬けで全く発酵が起きていないとは言えないのだ。
特に、ニンジンが入っている場合は、ニンジン中に多くの糖質が含まれているので原料は多いわけだし。
でも、シューパーなんかで売っている「松前漬けの素」は、スルメとコンブと調味液の組み合わせだし、おそらく発酵させることに主眼はないのだ。