2019/12/28

むかしハチ公、今マサル

ロシアのフィギュアスケートのザギトワ選手が引退するとかしないとかで話題になったよね。
でも、なんと彼女はまだ17歳・・・。
けっこう大人びて見えるけど、まだそんなに若いのか。
でも、ボクはそれ以上に、彼女が秋田犬保存会から贈呈された、マサル(♀)の方が気になるのだ(笑)
もらわれたばかりの頃で本当に子犬で、ふっわふわの、もっふもふのぬいぐりみみたいだったんだよね。
あれはかわいすぎる。

見た目的には、大きい日本犬が秋田犬(あきたいぬ)、小さい日本犬が柴犬(しばいぬ)というイメージなんだけど、日本犬と言われる日本特有の犬種はほかにもいるんだよね。
甲斐犬や北海道犬などなど。
でも、やっぱりメジャーなのは秋田犬と柴犬なんだよね。
最近は豆柴ブームで柴犬が多いし、柴犬は海外でも人気があるのだ。
ところが、ザギトワ選手は秋田犬に一目惚れしたし、秋田の佐竹知事から秋田犬「ゆめ」をプレゼントされた、ロシアのプーチン大統領も秋田犬をかわいがっているようなのだ。
ロシアみたいに大きい国だと大きな犬が人気?

柴犬の「柴」は小さいという意味で、他の日本犬と比べても小柄なことから来ている名前。
すると、より大型の秋田犬の方がオオカミに近いのかというと・・・。
どうもそうではないらしい!
最新のDNA解析によると、数ある犬種の中でもオオカミにかなり近い位置にいるのが柴犬。
まず、柴犬を含むアジアスピッツ系と、ハウンド系(アフガンハウンドなど)と北欧スピッツ系(シベリアンハスキーなど)に大きく分かれたんだよね。
で、アジアスピッツ系の中で、まずシャー・ペイという中国の闘犬に使われるしわしわの犬と柴犬系が分かれ、その後、柴犬から秋田犬やチャウチャウが分かれるのだ。

って、チャウチャウってかなり見た目が違うような気がするけど、柴犬系統なのか。
でも、よくよく見てみると、チャウチャウは毛を刈って短くしたら日本犬に近いような気も。
しっぽも丸まっているしね。
すると、柴犬の系統で毛が長くなってもふもふになったのがチャウチャウで、大型化していったのが秋田犬なのかも。
アジアスピッツ系は早くから猟犬として活用されていたようだから、大型化は納得できるよね。
チャウチャウの方は、より北の寒い方で使われるから毛が長いものが選ばれたのかもしれないし、別途コートの毛皮材料にも使われていたらしいので、その関係で毛の長いものになっていった可能性も。
いずれにせよ、まずは毛を刈ってすっきりさせて柴犬や秋田犬と比べてみないといけないね!

秋田犬は、現在では国定天然記念物に指定されているんだけど、それは、江戸時代から明治時代にかけて闘犬のために洋犬と交配されるなどの品種改良が進み、純血の秋田犬が激減し絵しまったため。
同じようなことが他の日本犬にも生じていたようなのだ。
でも、大正時代になると、希少になった秋田犬の純血種を守り、保存していこうという運動が起こり、昭和6年(1931年)に優秀な9頭の犬が転園記念物としての秋田犬に指定されたようなのだ。
大戦下において軍用犬との交配で再び純血種が減ったらしいけど、戦後再度純血種の固定化が行われ、今に至るのだ。
今は秋田犬保存会というところが育成・保存を担っているよ。
ザギトワ選手にもプーチン大統領にもこの保存会の犬が贈呈されているのだ。
ちなみに、秋田の大館には、保存会が運営している秋田犬会館というのがあって、そこには秋田犬の様々な展示もあるんだけど、保存会の会員の犬にも会える場なんだって。
大館に行った際には、犬飼観でわんこと握手!

2019/12/21

特別のハニー

冬になって、咳をしている人が多くなってきたのだ!
カゼやインフルエンザが流行しているようだね・・・・。
そのため、コンビニなんかでもマスクやのど飴が目立つところに置かれるようになっているんだけど、そこでよく目にするようになったのが、「マヌカハニー」。
一時期「プロポリス」入りがはやったけど、今は「マヌカハニー」のようなのだ。
って、これはなんだ?

調べてみると、ニュージーランドや豪州南東部原産のギョリュウバイ(現地のマオリ語で「マヌカ」)からとれるハチミツなんだとか。
灌木(丈の低い木)で、ピンク色のかわいらしい花を咲かせるよ。
古くは、豪州新大陸を発見(?)したクック船長が、この木の葉を発行させてから煎じて飲むと、胃の不調が治ることを発見し、そこから「ティー-・ツリー」と呼ばれるようになったよ。
現地のマオリ族も古くから薬用植物として枝や葉を民間療法に使ってきたみたい。
「マヌカ」というのはマオリ語で「復活の木」という意味だと言うから、大事な植物だったんだろうね。

で、今このマヌカのハチミツが着目されているのは、特別な殺菌成分が多く含まれていることがわかったから。
それがメチルグリオキサールという成分で、ピロリ菌駆除力や高い殺菌力があると言われているよ。
それでのど飴にも配合されているのだ。
もともとプロポリスも消毒・抗炎症作用が期待されて入っていたんだよね。
マヌカハニーはそこにカゼの時に処方される抗生物質のような抗菌作用をプラスする、ということのようなのだ。


実は、もともとハチミツ自体に殺菌作用が認められるんだよね。
古代ローマを始め、世界の各地で傷口ややけどの箇所にハチミツを塗る、ということが行われてきているのだ。
ひとつには、は蜜には高い糖分濃度なので、浸透圧により雑菌から水分を奪って繁殖を防ぐ効果があること。
もうひとつは、ハチミツ辞退が石けんなどと同じ弱酸性で低いpHなので、もともと雑菌が繁殖しづらい環境になっているのだ。

そして、さらに、ハチミツに広く一般的に含まれている酵素でグルコースオキシダーゼ、というブドウ糖を酸化させてグルコン酸を作るものがあるのだ。
この反応副産物で過酸化水素が生まれるんだけど、これがまた殺菌作用を示すのだ。
過酸化水素と言えば、いわゆる「オキシドール」だよね。
マヌカハニーの場合は、この過酸化水素に加えて、さらに特別な殺菌成分が入っている、ということなのだ。

でもでも、あくまでも昆虫の八が花の蜜を集めてきたもので、工業的・化学的に生産されているものではないので、その効能にはかなりばらつきがあるよ。
マヌカから採取されたハチミツであっても、ほしいメチルグリオキサールがどれくらい含まれているかはものによるからね。
逆に言うと、質の悪い、というか、殺菌成分の含有量の少ないものもあるわけなのだ。
でも、流通上は、マヌカのハチミツさえ入っていれば、「マヌカハニー入り」なわけで、気をつけないといけないんだよね。

これは生薬全体に言える話なんだけど、どうしても植物などに由来する生薬は、有効成分の量がまちまちなので、医療用途にそのまま使うのは難しいのだ。
クリアに効能を求めるなら、有効成分だけ取り出した方がよいんだよね。
例えば、昔から「麻黄」はぜんそくの薬として使われてきたんだけど、長井長義博士はここから有効成分のエフェドリンを抽出することに成功したのだ。
その後、そのエフェドリンをもとにして、様々なぜんそくの薬が作られることになったよ。
そういう意味では、生薬には効能は確かにあるんだけど、「きき」にはどうしてもばらつきがあるものなので、そういうものだと認識した上で使った方がよいのだ。

2019/12/14

自転車操業で借金

年末も押し迫ってきたのだ。
そんな中、目についたニュースが、
それは、政府の補正予算編成で、赤字国債の追加発行が濃厚になった、というもの。
税収予想が下振れしたために国が借金して予算を組まないといけなくなった、ということで、赤字国債発行は3年ぶりだって。
当初は税収増を見込んでいたんだけど、けっきょく予算規模に対して税収が足りなくなる予想になったので、必要な財源を確保するために、赤字国債発行となるわけなのだ。

で、よくよく考えてみると、「赤字国債」っていまいちよくわからないんだよね(笑)
端的に言えば、「財政の赤字を補填するために発行される国債」だって。
個人レベルで言うと、収入に対して生活費をはじめとする支出が多すぎるので、とりあえず借金をしてしのぐ、ということなのだ。
なんか、こう言われるとかなりまずい状況だよね・・・。
実際に赤字国債を発行し続けてきて、国が借金まみれになってしまったので、「プライマリー・バランスの黒字化」なんて話が出てきたんだけど。

我が国の財政は、まずは憲法の第7章、第83条~第91条に定めがあるのだ。
例えば、予算の単年度主義の理念は第86条に「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」と定められていて、会計年度ごとに国会の議決を要するとしているのだ。
ただし、これと「会計年度独立の原則」は必ずしも同じではないそうで、複数年度にまたがる予算を否定しているわけではない、と解釈されるそうな。
で、その「会計年度独立の原則」を直接規定しているのは、この憲法の財政に関する規定を受けている財政法なのだ。
例えば、その「会計年度独立の原則」は、財政法第12条に「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。」と規定していて、各会計年度で歳入と歳出をバランスさせなければいけないことになっているのだ。

さらに、財政法第4条第1項では、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」となっていて、原則として借金をして予算を組んではいけないことになっているのだ。
一方で、同条同項の「ただし書き」で、「但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」とも規定していて、「公共事業」などであれば例外的に借金してもいいよ、と言っているんだ。
この場合はよく公共施設の建築に事業に使われるので「建設国債」と呼ばれるよ。
ここで例示されている、「公共事業」であれば、インフラとして「もの」が残るので、国民の利益にもつながる、「出資金」や「貸付金」であればいずれ償還されるべきものなのでキャッシュフローだけの問題、などなど、後世につけを回さないように、という規定なんだ。
それでもどうしても借金しないとクビが回らないときは、「特例公債法」という法律を別に通して、特別に借金をして財源に充てることを国会に認めてもらう必要があるのだ。
逆に、この法律がないと、赤字国債(特例公債)は発行できないんだよ。

もともとは、1965年(昭和40年)の補正予算で赤字国債を発行するために、第一次佐藤内閣が成立させたよ。
次は、1975年(昭和50年)の第一次田中内閣~三木内閣のとき。
ちょうどオイルショックがあって税収が大きく落ち込んだときなんだよね。
その後しばらく、1990年(平成2年)まで赤字国債発行は続くんだけど、原則として「単年度に限り」という建て付けになっていて、毎年度法律を通していたんだ。
その後3年間は好景気で税収増だったので赤字国債は格好されなかったんだけど、その後はまた発行が続くのだ。
これはまさに自転車操業で、借金をして前の借金を返済している状態(>_<)
信用があるからできるわけだけど、個人レベルで考えるとかなりまずい状況だよね・・・。

2012年(平成24年)以降は、複数年にまたがって赤字国債発行を認める内容になっていて、現在は、2016年(平成28年)に成立した、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律」によって、2016年度(平成28年度)~2020年度(令和2年度)の5年にわたって赤字国債発行が認められているよ。
ま、発行できるというだけで、昨年も一昨年も発行しなかったんだけど、今年は発行せざるを得ない、ということになったのだ。
今回は補正予算も含めて大型の財政出動が必要と言われておりこともあり、予算規模を抑えきれなかったんだろうなぁ。
ま、先行投資で将来の税収が上がる見込みがあるのであれば、必要なことなんだけどね。

2019/12/07

煮込んだ末に

寒くなってくると、あたたかい料理が恋しくなるよね。
熱々の鍋とか。
日本ではそうなんだけど、パリにいた頃は、フランス人が猫舌が多くて熱々のものが少なかったんだよね(>o<)
そんな中でもわりと熱々で出てくるのが、ブッフ・ブルギニョン(牛肉のブルゴーニュ風)。
いわゆるシチュー料理で、オーブンで加熱していた熱々の鉄鍋が出てくることが多かったのだ。
ま、持ってくるのが遅くなって冷めることもあるんだけど(笑)
これは牛肉の赤身肉を野菜とともに赤ワインでひたすら煮込んだ料理。
肉はたいていとろっとろになっているのだ。
脂が指しているとその部分が柔らかくなるんだけど、この料理の特徴は赤身肉がほぐれるくらい柔らかくなっていることだよ。

これは、煮込んで加熱することで、筋繊維の中のコラーゲンが変性するのだ。
コラーゲンは通常3つの繊維がらせん状に絡まっている構造なのだ。
これが熱変性するとその三重らせんがほぐれるんだ。
この変性したコラーゲンの中には水に溶けるものがあって、そうして抽出されたものがゼラチン。
温かいうちは液状だけど、冷めてくるとゲルになるのだ。
牛すね肉なんかを煮込むと煮こごりができるけど、それは固い牛すね肉の筋繊維の中からコラーゲンが溶け出して、それが冷めて固まるのだ。
魚の煮こごりなんかも同じだよ。

で、筋繊維は筋肉の形状を維持しているもので、すなわち、肉の固さの大きな要因なのだ。
それが熱で少しずつ変性して、一部が水の中に溶け出すと、その分だけ筋繊維はもろくなるわけ。
これが肉が軟らかくなる仕組みだよ。
とろっとろの牛シチューで肉が細かい繊維状にほぐれてくるのは、全体を筋肉としてまとめていたコラーゲンの構造が失われるため。
これが舌の上でとろける肉なのだ。
圧力鍋を使うとより高熱になるので、早く柔らかくなるのだ。
じっくりコトコト煮なくても、肉の中で同じような変化が起こるわけ。

逆に言うと、コラーゲンの構造が壊れれば肉は軟らかくなるわけで、それを化学的に起こしているのが、酵素による分解。
つまり、パイナップルやパパイヤ、タマネギなんかと一緒に肉を少し漬けて柔らかくする、という方法だよ。
これらの果物・野菜にはタンパク質分解酵素が含まれていて、それがコラーゲンを含めて筋繊維のタンパク質を細切れにするのだ。
その結果、肉がやわらかくなるわけ。
中心部まで柔らかくするためには、長時間漬けたり、事前に肉をフォークなどで刺して穴を開けたり、よく揉み込んだりすることが大事になるよ。

固いけど、じっくり煮込むと柔らかくなって出汁も出ると言われているのがすじ肉。
アキレス腱の部分や筋肉の間の筋のまわりの肉。
この部位はとにかくコラーゲンが豊富で固いんだけど、その分、じっくり熱をかけてコラーゲンを変性させてあげるとぷりっぷりで柔らかくなるよ。
ま、コラーゲンを抽出するだけなら豚の皮ぎしの方が楽なんだけど。
だからコラーゲン鍋には豚が使われることが多いような気がするけど、牛すじは本来捨てられることが多かったこともあって、庶民の食べる肉として食文化が形成されてきたのだ。

ただ、牛すじの難点はアクが大量に出て、しかも、くさいこと!
長時間アクを取りつつ、このにおいがしなくなるまでゆでる必要があるのだ。
そこまでが下処理で、さらに煮込むことになるんだよね。
なので、手間はかかるけど、安くおいしく食べられる肉だったわけで、それが牛丼に使われたりしたんだよね。
それにしても、こういうのって食への飽くなき探究心を感じさせるよね、
最初に、誰が長時間煮込んだらおいしく食べられると発見したのか、気になるところなのだ。

2019/11/30

桜見る場所

「桜を観る会」がかなり炎上しているのだ!
報道の中にも、もっと大事な政治的な論点があるのに、という論調はあるけど、やっぱり国民から見てわかりやすいから大きな話題になってしまうのかな?
こんなに引きずるとは思わなかったよ。
で、その「桜を見る会」の開催場所としてさらに知名度が高まったのは新宿御苑。
現在は環境省が所管する施設なのだ。

もともとは、譜代大名の高遠藩内藤家の江戸屋敷があった場所。
東照大神君家康公江戸入府の際、譜代の家臣だった内藤清成に、馬で乗り回せる範囲の土地を与えると言われ、東は四谷、西は代々木、南は千駄ヶ谷、北は大久保に及ぶ広大な範囲を白馬で回りきり、下賜されたのだ。
この白馬は回りきった後に家康公の前で息絶えたと伝えられていて、新宿の多武峯神社に「駿馬塚の碑」というのが建てられているよ。
でも、あまりにも広大すぎるので、内藤家はその土地の一部を幕府に返上し、そこに作られたのが甲州街道の最初の宿である内藤新宿なのだ。
きちんと内藤家の名前も残っているね。

御一新の後、この土地は内藤家から新政府に上納されるんだけど、政府は、隣地も買い上げた上で、こおに農業振興を目的とする内藤新宿試験場を開設するのだ。
欧米の最新式の農業技術を研究・振興するものだよ。
この試験場内に作られた農事修学所は駒場に移され、後に東大農学部の前身(駒場農学校)となるんだ。
また、ランの栽培のために我が国で初めての温室が作られるんだけど、今でも新宿御苑の名物になっているよね。
ところが、その農業振興の機能のほとんどは三田育種所に移され、この土地は皇室に献上され、皇室の御料地・農園となるのだ。
そのときの名前が新宿植物御苑だよ。

明治後半になると、この新宿植物御苑を庭園に改造する計画が持ち上がり、フランスのベルサイユ園芸学校(園芸を専門としたグランゼコール)の教授のアンリ・マルチネさんに設計を依頼。
その設計図は繊細で消失するのだけど、残っている資料(鳥瞰図)を見る限り、現在の姿はこのときにできあがったようなのだ。
そして、新たに王室の庭園である新宿御苑として生まれ変わるのだ。
そして、回遊式の日本庭園(大名屋敷のときの名残)とフランス式整形庭園、イギリス風景式庭園が組み合わされたものができあがるんだけど、大正時代にはゴルフコースももうけられたようだよ。
しかしながら、昭和20年の東京大空襲で新宿御苑はほぼ全焼してしまうんだ。
戦後、昭和22年に皇居外苑、京都御苑とともに新宿御苑を国民公園として運営する旨が閣議決定され、昭和25年から皇室の庭園だったものが一般に開放されるようになるのだ。
最初は厚生省の所管だったんだけど、環境庁発足の後は国立公園と同じく環境庁に所感が移ったよ。

新宿御苑では、戦前から皇室主催の観桜会が催されていて、戦後になってそれを総理主催の「桜を観る会」に変えたのだ。
吉田茂首相の時代。
この話は最近の炎上で有名になったよね(笑)
でも、開催時期が四月の中旬~下旬くらいなのだ、ソメイヨシノやオオシマザクラなんかは終わっていて、たいていは遅咲きのヤエザクラなのだ。
そのヤエザクラも終わりかかっていることも多いようだけど・・・。

ちなみに、11月には環境大臣主催の「菊を観る会」というのもあるんだ。
これは菊花壇展で、やはり戦前の皇室主催の観菊会を受け継ぐもの。
こちらは毎年11月1日から15日まで一般の人も自由に見られるものだよ。
功績のあった人だけを呼ぶパーティではないようなのだ(笑)
そういえば、たまたま秋に新宿御苑に行ったときに見たような気がするなぁ。

2019/11/23

名物にうまいものあります?

職場のお昼休み休憩中、NHKがついていることが多いのだ。
で、ちょうど「鱒寿司」を取り上げていたんだよね。
そういえば、高校生の頃に富山に行ったときにはじめて食べたっけ。
でも、あれって酢飯がぎゅうぎゅうにつまっているので、高校生だったのに、一つ完食できなかった・・・。
相当量が多いよね。

駅弁としては、「ますのすし」が有名。
まるいわっぱの中に笹の葉をしき、その上に塩漬けにしたしたマス(サクラマス)の並べ、酢飯をのせるのだ。
このあと、笹の葉をかぶせてからふたをして、重しをするんだよね。
いわゆる「押し寿司」のようになっているわけ。
駅弁として売られている場合は、たいていはわっぱの上下に竹をあて、ゴムやひもでぎゅうぎゅうにしめられた状態になっているよ。
これで密度が高くなっているのだ(>_<)

もともとは、神通川の流域で「鮭寿司」というのがあったようなのだ。
延喜式に紹介されているので、平安時代にはあったもの。
ただし、この頃の「寿司」は「なれ寿司」のことで、お米と魚を一緒に漬けて乳酸発酵させた保存食品のこと。
滋賀名物の「ふな寿司」のようなものだよ。
そのむかしは、乳酸発酵してどろどろの粥状になったお米を取り除き、魚の身の部分だけを食べたようなのだ。
でも、それだとお米がもったいないというので、室町時代くらいまで下ると、発酵期間を短くしてまだお米の形が残るくらいで取り出し、発酵させたお米ごと食べるようになったのだとか。

さらに時代が下って江戸時代になると、そもそも発酵させずに食べるようになるのだ。
それが「早寿司」というもの。
発酵させていないので酢でお米に酸味を漬けるのだ。
すなわち、酢飯を使うようになったんだよ。
でも、魚とお米を重ねて重しをして、という「なれ寿司」の製法は受け継がれたので、まずは「押し寿司」ができたのだ。
関西圏では今でも「押し寿司」がかなりメジャーだよね。
大阪のバッテラなんかはその典型。

そして、金沢には笹寿司なんてのもあるのだ。
笹の葉には殺菌作用があるのと、香りがあって臭みが消せるので、ちょうどよいんだよね。
その流れの中で、鱒寿司があるのだ。
今のような鱒寿司が生まれたのは8代吉宗公の時代の享保年間以降と考えられているよ。
もともとは神通川を遡上してきたサクラマスを使った郷土料理だったわけだけど、現在は遡上してくるサクラマスが減ったことと、駅弁などになって需要が増えたこともあって、外国産や北海道産のマスが使われているのだとか。
駅弁だと「さけのすし」というのもあるよね。
もうマスですらないのだ!

で、発酵食品で魚の保存法だった「なれ寿司」は「早寿司」に変わっていったわけだけど、江戸では、華屋与兵衛さんが「にぎり寿司」を考案するのだ。
すでに魚とお米を重ねて重しをすることもなく、酢飯だけ握って形を整えた上に魚介のネタをのせる、というものを考案したんだよ。
わさびを使ったのも最初だとか。
やはり殺菌作用と臭み消しに効果があるのだ。
当時はおにぎりくらいの大きさのもので、ネタも刺身ではなく、「ヅケ」や「〆たもの」だったみたい。
これは流通上の問題で、生鮮なままで持ち運びができなかったからだよ。
で、大きなにぎり寿司を二つに切って食べたので、今でも寿司屋では二貫がセットで出てくるそうなのだ。

2019/11/16

一世一代の儀礼

木曜から金曜にかけて、大嘗祭(だいじょうさい)が挙行されたのだ。
毎年五穀豊穣を祈念する皇室の祭祀である「新嘗祭(にいなめさい・しんじょうさい)」が行われているけど、即位後最初に行うのものは特に盛大で、古来より「大嘗祭」として重んじられてきたのだ。
「椎名芽債」だと、宮中三殿の付属施設である神嘉殿で行われるんだけど、「大嘗祭」だけは、特別に「大嘗宮」という専用の祭殿を設営し、そこで行うのだ。
「大嘗宮」は祭祀が終わったら解体され、焼かれることになっているみたい。
今回も、皇居東御苑の中の旧江戸城本丸跡地に「大嘗宮」が設営されて、そこで祭祀が行われたのだ。
一般公開後にやっぱり解体するんだって。

「新嘗祭」は、天皇が五穀の新穀を天神地祇(天津神と国津神)に備えるとともに、自らもそれを食べて、その年の収穫に感謝する収穫祭的な位置づけ。
同時に、神の御霊を身体に移し、生命を養うとも言われているのだ。
稲穂には皇祖神たる天照大神の霊異がこもっていて、その天孫の系譜である天皇がその稲穂を聞こし召す(食べる)ことにより、天照大神の霊異を毎年毎年身に移し、更新していくことが意義なんだとか。
いわゆる「収穫祭」が日本の新党・宮中祭祀の文化の中で儀礼化されていく中で、そういうロジックになっていったんだろうね。

もともとは、太陽太陰暦の霜月二の卯の日に行われていたんだけど、明治6年(1873年)に太陽暦が採用された際、その年の新暦の二の卯日である11月23日に固定されたのだ。
戦後になって、GHQからの政教分離令によって「新嘗祭」をそのまま祝日にすることはできなくなり、新たに「勤労感謝の日」となったのだ。
これには当時から反対意見もあったそうで、皇室の祭祀に関連した日をけっきょく祝日として残したことはけしから、とかなんとか。
紀元節を建国記念の日にしたほどはもめなかったようだけど。
ちなみに、11月14日は二の卯の日にあたるので、今回の「大嘗祭」は14日に挙行されているんだよ。

「新嘗祭」では、神に捧げる供物である神饌(しんせん)として、稲作物(蒸し米、米粥、蒸し粟、粟粥、白酒・黒酒など)、鮮魚(タイ、イカ、アワビ及びサケを甘塩してから三枚におろし、短冊に切ったもの)、干物(干鯛、鰹、蒸鮑及び干鱈)、果物(干柿、かち栗、生栗干及びナツメ)などを供えるのだ。
「大嘗祭」のときは特に気を遣っていて、最も重要な「米」については、事前に「斎田」を指定し、そこで収穫されたものを供えるよ。
今年は栃木と京都なんだけど、東日本と西日本から一カ所ずつ選ぶのだ。
「大嘗祭」では、悠紀殿及び主基伝で2回同じような儀礼を繰り返すので、2カ所を選ぶのだけど、悠紀の方は東日本から、主基の方は西日本から選ぶことになっているみたい。
選ぶ際には、いにしえにならって「亀卜(きぼく)」で選ぶんだって。
これはすごい。

今回の妻子に当たっては、閣僚や両院議長など総勢700名が参加するんだけど、基本は陛下が執り行う祭祀を見守るだけ。
しかも、祭祀自体は悠紀殿及び主基殿の中で行われているので、中で何が行われているのかは見えないのだ・・・。
それでも、14日夕方から15日未明にかけて約半日かけて行われたんだよ。
一世一代のものだから見てみたい気もするけど、それにつきあうのもつらそうだなぁ。
何より、寒そうだからね。

2019/11/09

四半世紀ぶりのリニューアル

ボクはあんまり食べないので興味がないんだけど(笑)、マクドナルドのフィレオフィッシュがリニューアルするそうなのだ。
製造プロセスを見直すことで、より高品質にするんだって。
ポイントは冷凍の回数。
冷凍・解凍の回数を減らすことで、風味よくするんだって。
具体的には、メインの具である白身魚フライの製法を見直すのだ。

フィレオフィッシュは、マクドナルドでは唯一と言っていいほどのシーフードメニューで、そのために不動の人気のあるメニューの一つなんだよね。
米国でのこと、敬虔なカトリック教徒は金曜日に肉食を避けたり、復活祭前の40日間は肉食をしなかったり、ハンバーガーの売り上げが落ちることがあったらしいのだ。
そこで、魚のフライのサンドイッチをヒントに、魚のフライを使ったハンバーガーを作ってはどうかという発想でできたのがフィレオフィッシュ。
これが人気が出て、全国展開され、日本にも来たらしいのだ。

むかしから、材料の魚がなんなのか、というのが話題になるんだよね。
米国で広まったときはタイセイヨウダラが使われていて、日本では、マダラや深海魚のホキ、メルルーサなどが使われていたんだ。
今回のリニューアルに当たっては、アラスカ産のスケソウダラを使う、ということが発表されているよ。
もともとホキは漁獲量が減っていて資源管理の観点から問題視されていたこともあって、より持続可能な材料となるスケソウダラが選ばれたみたい。

従来は、アラスカで獲れたスケソウダラを冷凍してからタイに運び、そこで骨や皮を取り除くとともに、成型してから再冷凍。
これに衣をつけて日本に出荷していたんだって。
リニューアル後は、アラスカで獲れたスケソウダラはその場で骨や皮を処理し、成型。
これを冷凍してタイに運び、タイで衣をつけて日本に出荷するのだ。
こうすると、冷凍・解凍の回数が減るので風味が失われにくいのと、二酸化炭素排出量を減らす観点でも大きな進歩なんだって。
ようはアラスカに切り身の処理工程を持ってきた、ということだよね。
おそらくこれまでは安い人件費により、タイで加工していたんだろうけど、タイにおける人件費の高騰や自動化工程の導入により、獲れたてを加工してもさほどコストがかさまないようになったと思われるのだ。

今月中に完全にリニューアルされたフィレオフィッシュに置き換わるらしいよ。
ボクはほぼほぼ食べたことがないので違いはわからないだろうけど(笑)
よく食べていた人だとわかるのかな?
魚の種類が変わった、なんて声もかつてはあったから、ヘビー消費者であれば違いがわかるのかも。
すでにネットでは本当に変わったのか味を確かめてみた、なんて記事も出始めているね。

ちなみに、フィレオフィッシュにはマクドナルドなりのこだわりがあるんだって。
ひとつは、バンズは焼かずにスチームしたものを使うことで、ふっくらとした食感を出すこと。
二つ目は、オリジナルのタルタルソース。
最後は、フィレオフィッシュに使うスライスチーズは、チーズバーガーのものと同じなんだけど、半分に切ったサイズのもの、ということ。
チーズが多すぎない方がおいしいんだって。
タルタルソースがあるから、チーズが多すぎるとしつこくなるのかな?

2019/11/02

イクメン養成ギブス

政府が、男性公務員が原則1ヶ月以上の育児休暇をとることを促すべく検討を始めた、という報道が出たのだ。
人事評価にも反映させ、原則とらせるようにしたいらしいよ。
政府としては、ずっと男性の育休を広めるために旗を振り続けているけど、なかなか浸透しないんだよね。
データ(厚生労働省の「2018年度雇用均等基本調査(速報版)」)で見ると、平成8年度の育休取得率は女性が49.1%、男性が0.12%で、これが平成30年度になると、女性が82.2%、男性が6.16%。
女性は2倍弱、男性は5倍近くに伸びてはいるんだよね。
でも、実態上は男性で育休を取得している人は1割未満という状況なのだ。

メディアなんかでも「イクメン」とか言ってはやらそうとはしているよね。
で、実際に自称「イクメン」は増えているんだろうけど、本当にパートナーと家事・育児を分担している人は多くはなさそうなのだ。
その証拠の一つがこの育休取得率の低さだよね。
巷間言われているのは、自称の人たちは、「手伝っている」というベースで、あくまでもメインの家事・育児は奥さんということみたい。
ちょっとやっただけでアピールしている、と言われているのだ。
本当にやっている人だったらアピールしないだろうしね(笑)

というわけで、政府としては、男性の育休取得促進のためにまずは国家公務員から、という流れになったみたい。
こういうのはよくあって、完全週休二日制だとか、ノー残業デーだとか、クールビズだとか、朝活だとか、これまでも公務員を皮切りに社会に広げていこうとしてきているんだよね。
今回の育休の話も、働き方改革の目玉の一つにしたいはずなのだ。
実際に、共働き世帯が増えていて、男性の側も意識の高まりはあるし、実際に男性側の負担がなければ家庭の維持は成立しない世の中になってきているので、当たり前と言えば当たり前なんだけどね。

でも、こういう旗振りが必ずしもうまくいっているわけではないわけで。
いまいちなのは、ここ数年「笛吹けど踊らず」なのは、「プレミアムフライデー」だよね。
全く浸透していない!
茶化すために言葉自体は広まっているのだけど(笑)
なので、今回はけっこう本気で検討をしていりみたいだよね。
人事評価にも反映するとか言っているし。

でも、そもそも国家公務員の場合は労働基準法の適用範囲外で、特に中央省庁ではサービス残業が横行しているという話もあるのだ。
今般の「質問通告漏洩事件」と野党が騒いでいる問題の本質は、大型台風がまさに上陸しようとしているときに中央省庁の職員が質問通告を待って遅くまで残業を強いられた、ということだったはずなんだよね。
この手の話も、管理職のマネジメント強化とか言って人事院と内閣人事局がイニシアティブをとって取組はしているみたいだけど、あまり改善されていないみたい。
というわけで、人事評価に反映するとか言っても、それだけで本当に取得が促進されるかどうかはよくわからないのだ。

また、この問題には「パタハラ」という課題もあるんだよね。
男性が育休をとろうとしてもそれを邪魔する上司がいるということなのだ。
これも根深いよね。
世代間ギャップがあるので、「自分の頃は・・・」と言われても、そもそもの生活設計やライフスタイルが異なるわけで。
この手の社会的な理解が進まないとやはりだめなのだ。
そういうところからも、まず国家公務員の世界で成功例を作るというのは意義があるから、うまくいってくれるとよいのだけど。

2019/10/26

インペリアル・スローン

今月22日に即位の礼が挙行されたのだ。
これは対外的に新天皇が皇位を継承したことを知らしめるための儀式。
実際には、5月の段階で皇位継承はすんでいるんだよね。
この辺はややこしいけど、海外の王国でも王位継承の儀式と戴冠式は別にやったりするので、特別変わっているわけではないんだよね。
かつ、今回は生前譲位という特殊な形なので別なんだけど、通常は先帝が崩御された後に皇位継承が来るので、先に先帝の「大喪の礼」を挙行し、その後、喪が明けてから「即位の礼」なのだ。
実際、上皇陛下が即位を対外的に宣明したのは平成2年になってからだよ。

今回の即位関連式典は戦後2回目。
つまり、現行憲法下で2回目ということなのだ。
憲法では、政教分離の原則があって、天皇が執り行うものとして、「国事行為」と「私的行為」(宮中祭祀など)を峻別しているのだ。
で、平成の代替わりの際、時の内閣官房主席参事官だった古川貞二郎さん(後の厚生省事務次官、事務の官房副長官)が整理して、今の形にしたんだよ。
このとき「国事行為」として行われるものとして、①剣璽等承継の儀、②即位後朝見の儀、③即位礼正殿の儀(今回の式典)、④祝賀御列の儀(いわゆる祝賀パレード)、及び、⑤饗宴の儀の5つを定めたのだ。
これら以外にも宮中祭祀として行われる即位関連の式典はあるんだけど、それは「私的行為」として扱われているのだ。
予算面では、国事行為は「宮廷費」から、「私的行為」は「内廷費」からそれぞれ思弁されることになっていて、「内廷費」は皇室の私的財産だよ。
ちなみに、11月に挙行される大嘗祭は、「国事行為」ではないけど、「私的行為」でもなく、皇室が執り行う公的な行事という整理で、特別に組まれた予算が充当されるんだそうだよ。
伝統祭祀なので「国事行為」にはできないけど、かといって私的な祭祀でもない、ということみたい。
なお、平年の新嘗祭は内廷費で執り行われているよ。

実は、明治維新後になって即位関連の儀式はいったん整理されたのだ。
それまでは、平安時代以降に確立された、皇位継承の儀式である「践祚」と、皇位継承を対外的に知らしめる儀式である「即位」の2つに分けた伝統様式に則って、有職故実に詳しい公家が仕切っていたのだ。
天皇中心国家を確立するに当たり、これを整理したんだよね。
その際、旧皇室典範やそれに基づく登極例において儀式の中身や順番などが定められたのだ。
当時はまだ「国事行為」なんていう概念もなく、天皇が国家のために挙行する祭祀はすべて公務だったので、今のような区別はなく、すべてが国としての公式行事だったんだよ。
まず、皇位継承は「践祚の儀」によって執り行われるのだ。
その際、皇位継承の証である剣璽(天叢雲剣の形代と八尺瓊勾玉)が受け継がれるんだけど、それが「剣璽渡御の儀」。
今はこの2つから、「国事行為」として行うものとして編み出されたのが「剣璽等承継の儀」だよ。

そして、皇位継承後に臣下に最初に謁見するのは「践祚後朝見の儀」。
これは今はそのまま「即位後朝見の儀」になっているのだ。
そして、対外的に皇位継承したことを知らしめるのが「即位の礼」なんだけど、旧憲法下では、「即位の礼は京都において行う」と法律で定められていたので、京都御所の紫宸殿で挙行されていたのだ。
なので、「即位礼紫宸殿の儀」と呼ばれていたんだ。
昭和帝が即位の礼を挙行したときまでは京都だったんだけど、戦後の平成の代替わりからは東京の皇居宮殿内、正殿松の間で行われることになったので、「即例正殿の儀」と名前が変わったのだ。
やることは基本的には同じようなもので、剣璽等を携えた上で即位した上でのお言葉を述べ、それに対して臣下の代表が「寿詞(よごと)」(=お祝いの言葉)を述べる形だよ。
で、その後に行うパレードが「祝賀御列」、賓客を持てナウパーティが「饗宴」だよ。

今回で2度目なので、以降はこれに従って式典が受け継がれていくんだけど、この式典に使う衣装や幟、高御座(たかみくら)などなど、一緒に伝統技術も受け継いでいかなきゃいけないんだよね。
つまり、式典を受け継ぐには、それを支える技術・人材も受け継いでいかないといけないのだ。
そういう意味でも、今回のように「即位礼正殿の儀」をテレビで生中継するのは重要だよね。
みんなこういう儀式を残していきたいと思うようになるから。
東アジアでこの手の伝統が残っているのは日本だけなので、ぜひぜひ残していきたいのだ。

2019/10/19

どてらい災害

今年は台風の被害がすごい!
ボクは3年ぶりに日本の台風を経験したけど、こんなにすごかったっけ?、という印象。
それもそのはずで、報道によれば、史上まれに見る規模で、被害も甚大なんだってね。
歴史に残るような被害状況なのだ・・・。
対策も進んできているので亡くなる方は過去に比べれば少なくなっているんだろうけど、住宅や農地への被害は甚大。
この先の復興が大変そうなのだ(>_<)

そんなときに話題になっているのが、「激甚災害」として指定するかどうかという問題。
政府からは、「被害状況を調査した上で指定する方向で検討している」なんて少し煮え切らない答弁が出るわけだけど、これには理由があるのだ。
単純な話で、お金がかかるから。
財務省との調整が必要なので、軽々に指定するとは答えられないみたい。

「激甚災害」の指定は、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和37年法律第150号)」に基づく行為。
法律第一条の趣旨によれば、「著しく激甚である災害が発生した場合における国の地方公共団体に対する特別の財政援助又は被災者に対する特別の助成措置について規定するもの」ということ。
もう少し砕けた言い方をすれば、「発生した災害のうち、その規模が特に甚大であり国民生活に著しい影響を与えたものに対して、地方公共団体(都道府県・市町村)及び被災者に対する復興支援のために国が通常を超える特別の財政援助または助成を行う事を目的とした法律」ということだよ(Wikipediaより)。
ようは、あまりにも被害が大きな災害については特別な援助をするということなのだ。

その措置の対象としては、国庫補助率・負担率のかさ上げ、若しくは、普段はしていない新たな補助をする、又は、国から特熱な貸し付けをする、若しくは、貸し付けにおいて優遇をする、といっったもの。
具体的には、地方公共団体が実施する災害復旧のための土木工事の補助のかさ上げとか、学校や公立の公共施設の復旧における補助のかさ上げ、災害で損害を受けた中小企業への資金融通などなど。
すなわち、いずれにしても国の予算にからむもので、当然財務省の了解が必要なのだ。

こういう理由があるので、「激甚災害」の指定にはあらかじめ定められた明確な基準があって、被害状況を調査してその基準に照らし、合致すれば指定する、ということなんだよ。
これが「調査した上で指定に向けて検討したい」の中身。
ちなみに、「激甚災害」の指定に当たっては2種類あって、全国規模で指定基準を上回る規模の災害の場合の「本激」と、市町村単位で指定基準を上回る規模の災害の場合の「局激(局地激甚災害)」。
それぞれに中央防災会議が定めた基準があるのだ。

実際の指定に際しては政令で定める必要があって、最新の台風15号等の指定の政令はまだ国の法令検索システムで見られないのだけど、平成30年(昨年)の秋の暴風雨の時の政令は見られるのだ。
災害名と適用すべき措置、備考が表になっている政令だよ。
ちなみに、最新のものは政令の本文はまだアップされていないようだけど、その説明資料は公開されているのだ。
今度もこれと同じような感じで定めるはずなんだけど、このときは「本激」と「局激」んぼ双方とも指定していて、「局激」の場合は「対象地域」も政令で定めるのだ。

それにしても、内閣府防災の災害情報のページを見ると、ここ5年間だけでも相当数の「激甚災害」指定があることがわかるのだ。
地震や暴風雨、日本は自然災害大国なんだよね・・・。
技術的にはかなり対策が進んでいるはずなんだけど、それでもこれだけ被害が出るんだから、日本という国はかなりの災害に見舞われているんだよね。
このリストがなくなる世界が来るとよいのだけど。

2019/10/12

Rowing a Boat

気温も少し下がってきて、過ごしやすいよう気になってきたのだ。
こうなると、とたんに眠気が襲ってくるよね・・・・。
暑すぎず、寒すぎずだと、心地いいからね。
居眠りは油断大敵。
お仕事中もそうだけど、電車に乗っているときなんかは乗り過ごしのリスクがあるのだ。

もともと「居眠り」の「居」=「居(ゐ)る」は、古語においては「存在する(exist)」よりも「座っている(sit)」の方が第一義なんだよね。
「居酒屋」は立ち飲み屋に対して座って飲むから、立居振舞は立ったり座ったりする動作を言うのだ。
つまり、座った状態で横にならずに寝ているのが「居眠り」なのだ。
これはどうも西洋世界では信じられないことのようで、しばしば日本の「ワーカホリック」体質のシンボルのようにとらえられるとか。
っていうか、欧米の学校では生徒が居眠りすることはないのかなぁ?

この状態では「うつらうつら」して、体が前後に揺れることが多いんだよね。
このため、居眠りをすることをその動きから「舟をこぐ」なんて言い方もするのだ。
少しおしゃれだよね。
学生時代はオリンピック強化選手並みに「舟をこいで」いる人がいたっけ(笑)
これがまた気持ちいいんだよなぁ。

「居眠り」自体はたいていは悪いこととして認識されるわけで、寝てません、なんて言い訳もするのだけど、最近の研究では、日中の短時間の睡眠はむしろ頭のリフレッシュによいとも言われているんだよね。
よく徹夜で勉強したりして試験に臨むけど、実はこれはよくないんだって。
まったく寝ずに試験に臨むと集中力も途切れがちになるし、実は、勉強したことも頭に入っていないのだ。
一方で、1時間でも寝ると、頭がすっきりして、記憶も定着することが知られているのだ。
寝ている間に見ている夢は記憶の整理のためじゃないか、なんて言われているけど、どうも寝ている間に記憶の整理や定着が起こっているようなんだよね。

昼寝の場合もそうで、ワーキングメモリの効率が高まるというのだ。
ワーキングメモリはいわゆる短期的な記憶で、容量には限界があるんだよね。
長時間作業し続けたり、疲れたりすると、このワーキングメモリの容量がさらに減ってきて、複雑な並列作業がしにくくなってくるのだ。
ここでいったん短時間睡眠を挟むとそれが改善されるというわけ。
フリーズしたパソコンを再起動するのに似ているかも。
一度睡眠を挟んでクリアにした方がよいということなのだ。

なので、最近は昼寝を推奨する職場も多いというよね。
でも、その場合は自席でそのまま寝るのではなく、たいていは睡眠スペースがあるのだ。
座ったまま無理に寝ると体を痛めることもあるし、けっきょく寝づらくて睡眠の質も高くないから、寝るならネルでちゃんと寝た方がよいというわけ。
そう割り切って、たまに眠くてたまらないときは昼寝するか(_o_)zzZ

2019/10/05

そのまままるごとどうぞ

おエラいさんのもらいもののおすそわけで、超高級シャインマスカットをいただいたのだ。
粒がものすごく大きくて立派!
そして、甘くておいしい♪
これは本格的にうれしかった。
スーパーで売っているのとは違うぜ。

かつて、マスカットと言えば、高級なのはマスカット・オブ・アレクサンドリア、庶民でも食べられるのがネオマスカットだった記憶があるんだよね。
シャインマスカットは最近のものだよね、と思っていたら、確かにそうで、品種登録されたのは2006年。
登録番号は、ぶどう農林21号だそうだよ(笑)
この名前だと高級感がないなぁ。
ま、農林水産省の果樹試験場で育種されたものはこういう連番になるんだろうけど。

やっぱり高級マスカットと言えば、マスカット・オブ・アレクサンドリアで、食味・食感が優れているんだけど、雨の多い日本では実が割れたり、病気になったりと、あまり栽培に適していないようなのだ。
そのため、日本では完全温室栽培みたい。
そこで、病害に強く、日本の気候にも耐えるブドウを、と思うと、あまりおいしくない、香りがよくないブドウになるんだとか。
そこで、この二つを掛け合わせ、いいとこ取りできないか、という試行錯誤の末にできたのがシャインマスカットなのだ。

シャインマスカットは、マスカット・オブ・アレキサンドリアほどは栽培が難しくないので、ちょっとだけリーズナブル。
それでいて高級なマスカットの味を味わえるので、コスパが高いって言われているんだって。
実際、最高級のマスカット・オブ・アレクサンドリアだと万円だけど、シャインマスカットだと1万円しないことが多いから、なんとか庶民の手にも届く高級品なのかも。
一回おいしいのを食べてしまうと、自分への御褒美とかでまた食べたくなるよ。

マスカット(muscat)の「musc」の部分は「麝香(ジャコウ=ムスク=musk)」のことで、甘いよい香りがするのでその名があるのだ。
で、掛け合わせると、このマスカット特有のよい香りが失われることが多いのだそうだけど、食味もよく、香りもよい、というのがついに発見されたんだよね。
しかも、粒も巨峰並に大きく、さらに、時部鈴という薬品で処理することで種なしに作れるのもポイント。
もともと皮が固くないこと、皮ぎしにも酸味が少ないことから、種がなければそのまま丸ごと食べられるんだよね。
これが現在高級品として流通しているシャインマスカットなのだ。
日本人のおいしいブドウを求める執念が実現したものだよ。

ちなみに、ボクはマスカットというのは白ブドウの品種のことだと思っていたんだけど、増すかとには緑色だけでなく、黒いものもあるそうなのだ。
全くその意識はなかったけど、赤い粒の「甲斐路」もマスカットなんだって。
ようは、欧州の部度品種でよい方向を持つものがマスカットみたい。
古くから地中海地方で栽培品種として確立されていたそうなのだ。
生食用にかなり広まっていたみたいだよ。

2019/09/28

赤い、ゆれるやつ

小学生の頃にキーホルダーを買ってから、「赤べこ」がわりと好きなんだよね。
造形もかわいらしいし、首が揺れるのも楽しいよね。
で、長らくその存在を意識することはあまりなかったのだけど、ひさしぶりに「赤べこ」熱が出てきたのだ。
それは、「妄想工作所」がデザインした、3つの首を持つ「ケルベコス」のカプセルトイ。
ギリシア神話に出てくる、3つの首を持つ地獄の番犬「ケルベロス」のように3つの首を持つ「赤べこ」なのだ。
本物はもっと大きい民芸品なんだけど、カプセルトイで出たのでついついほしくなって、新宿のヨドバシカメラまで行って手に入れたんだよね。

もともと「赤べこ」は会津地方の郷土玩具。
赤い「牛(べこ)」で、「赤べこ」。
張り子の人形で、首が揺れるように作ってあるんだよね。
木型に和紙を貼って成型し、木型を外した後に胡粉で至徳下塗りしてから、絵付けをするのだ。
このとき、全体を赤く塗って、特徴的な黒い斑点模様なんかをつけるんだ。
同じように作ったもので、虎型のものとかもあるよね。
虎の場合はひげがつけられるけど、「赤べこ」の場合は模様が描かれるだけの場合が多いよ。
そのうつろな表情がまたかわいらしいのだけど。

天正年間に、本能寺の変の後に安土城にいた織田家の一族を保護したことで有名な蒲生氏郷が殖産振興のために会津地方にまねた板技術者から伝わったと言われているよ。
それが今の張り子の「赤べこ」の製法みたい。


その由来には諸説あって、すでにどういう経緯で作られるようになったのかは定かではなくなっているみたい。
ひとつは、平安時代の疫病払いから来るというもの。
平安時代には疫病が蔓延し、その疫病払いのために様々な呪いなんかが流行するんだけど、その中に、赤い牛により疫病が払われた、という伝説があるみたい。
会津地方に天然痘が流行したとき、赤い牛の人形を持っていた子供は病気を免れた、というのもあって、それで病よけのイメージがついているみたい。
黒い斑点模様は「痘」を表しているとも言われているよ。
「赤」という色も邪気払いの意味合いがあるから、これは納得できるよね。

もうひとつは、やはり平安時代の話で、円蔵時というお寺にお堂を建立する際、上流にある村から大量の材木が寄進されたところ、どこからか赤い牛が現れて、その運搬を手伝ってくれたという伝説なのだ。
こっちはかなり仏教に寄せているので、なんとなく後付けのような気もするけど・・・。
この説話から、幸運を呼ぶ牛、という認識になったそうな。
なんかそのつながりはいまいち納得できないのだけど。

いずれにしても、子供を守るとか、子運を呼ぶとか、そういう御利益を期待して会津地方の各家庭に広まっていったようなのだ。
で、いつしかそうした由来は忘れられていき、「縁起物」として置かれるようになって、現代まで伝わったみたい。
その由来が曖昧になっていたので改めて調べて上記のような説が出てきたみたいだよ。
個人的には、「福犬」と同じくらいのかわいらしさなので、審美的にもよかったのが残った理由だと思うけどね。

2019/09/21

炊いて祝おう♪

お祝いの赤飯のお裾分けをもらったのだ。
赤飯好きのボクとしてはほっこり。
もともとごはんはかためが好きで、おこわがすきなんだよねぇ。
なので、カロリーが高いのはわかってながら、ついつい赤飯おにぎりを選ぶくらい。
こういうのはうれしいね。

現在の赤飯は、小豆又は大角豆(ささげ)と一緒に蒸して作るんだよね。
あらかじめもち米を豆のゆで汁につけておくんだけど、このときに、ゆで汁中に抽出されていたアントシアニン色素を吸って、ほんのり赤く色づくんだよ。
北海道では甘納豆で赤飯を作る地域もあるんだけど、その場合は色がつかないので、食紅などで別に色をつけるんだよね。
大事なのは、お米が赤いことなのだ。

「赤」という色は、古代日本では神に捧げる供物の色でもあり、魔除け・邪気よけの色でもあったのだ。
神社の鳥居を赤く塗るのも同じ発想だよ。
なぜ「赤」という色が選ばれたのかはよくわからないみたいだけど、神聖な色として扱われていたのは確かなんだよね。
なので、神に捧げる米も赤くしたかったのだ。

実は、赤米というのがあって、これは玄米の種皮や果皮にアントシアニン系色素の含まれている、見た目が赤いもの。
むかしむかしはこのお米を蒸したものをささげていたみたい。
ただし、きっちり精米してしまうと中身は白いので、皮ある程度残したままにしないといけないんだ。
現代で普通に食べられている白米の稲に比べると病害虫や気候の変化などの環境変化に強く、棚田などでも生育が容易という特色を持つのだ。
一方で、丈が長いので風などで折れやすく、米の収量が少ないなどのデメリットも。
そして、何より、食味が悪い、すなわち、おいしくないらしいんだよね(笑)
アミロースやタンパク質が多く、その意味では栄養面では優れている部分もあるんだけど、おいしくない。
なので、神に捧げる穀物でありながら、下等米として扱われていたようなのだ。

明治時代には、農業技術が進歩したこともあって、いったん栽培品種としては駆逐されかけたんだよね。
他方、神事に使うことから、一部の神社でそのための栽培で保存されていて、そのおかげで残ったのだ。
現在では、雑穀米に混ぜられていることもあって、紫黒米(濃い紫色のお米)とともに、「古代米」品種として珍重され、健康食品としても注目されているようだよ。
まずいからと撲滅されかけたのに、見事に復活したのだ(笑)

それだけではなく、過酷な環境に強い品種でもあるので、駆逐しようとしても勝手に生えてくることもあったみたい。
もともと排水の悪いところや新田開発をしてまだ栄養が不足しているようなところでもよく育つ品種なので、田んぼのはしや周辺に勝手に生えてきたりするんだって。
先に言ったようにおいしくないので、これがまざると米の検査等級が下がるといって嫌われたようなのだ。
そのしぶとさもなんだかいいね。

2019/09/14

たたいて闘魂注入

高知名物と言えば、「土佐造り」。
すなわち、厚切りの鰹のタタキ。
カツオのサクを藁火で表面をあぶってさっと氷水で冷やし、分厚く切って、薬味をたっぷりのせるのだ。
ショウガだけでなく、ニンニクをきかせるんだよね。
これは確かにうまい!

なぜ「タタキ」と呼ばれるようになったのかは定かでないらしいのだけど、あぶった後にたれや塩をなじませるために身をたたいたため、という説もあるのだ。
本当に「たたく」から「タタキ」なのか・・・。
実は、英語でも「タタキ」で、フランスでは「マグロのタタキ(Tataki de Thon)」をよく見かけたよ。
あぶることで香ばしさが出て、生臭みが薄れるから外国人に食べやすいのかな?
皮ぎしの脂もとろけてうまみが活性化する効果もあるんだよね。
あぶりトロとかと同じ。

なんで表面をあぶるようになったのかもよくわからないみたいなんだけど、刺身を食べることを禁じられたので表面だけあぶったとかいう説もあるんだ。
個人的には、表面についた雑菌を焼いて滅菌することで食中毒を予防したのではないかと思うんだよね。
当時は流通にも限界があるし、鮮度良く運べなかったので、刺身は取れたての魚のみでできる贅沢な料理。
多くは醤油ベースのたれで漬けた「漬け」や酢や昆布で「〆(しめ)」たものだったんだよね。
雑菌は基本的に表面についているので、そこをあぶってしまえばけっこう食中毒は防げそうなんだよね。
ユッケの場合は表面を削るわけだけど、結局表面を削るときに包丁に雑菌がついてしまうので、それだと食中毒が防ぎきれないこともあるのだ(>o<)
でもでも、最終的には、単純にそうやって食べた方がおいしいから、料理法として広まったんだろうけどね。

今ではカツオのみならず、牛肉でもたたきがあるよね。
肉の場合は、表面の滅菌もさることながら、脂の活性化が大きいと思うけど。
牛の脂は馬の脂ほど融点が低くないので、体温により口の中でそのまま油がとろける、ということはないのだ。
なので、ちょっと火を通して最初に融かしてあげるとおいしいんだよね。
マグロのトロやトロサーモンをあぶるのも同じような理由だよ。


一方、東京のおとなりの千葉で「タタキ」といえば、味などの青魚のみを刻んで薬味とまぜたもの。
味噌で味をつけると「なめろう」になるよね。
こちらは見た目どおり、まな板の上で包丁でたたきように刻みながら作るから「タタキ」。
もともとは「タタキなます」と呼ばれていたものが「タタキ」になったのだ。
「なます」は大陸から伝わった料理法で、肉や魚、野菜などを細かく刻んで作るものの総称。
現在の日本ではお正月に食べる紅白なますのように野菜の酢の物が「なます」の代表になってしまっているけど、中国では肉でも魚でもなんでも刻んで薬味やたれと混ぜて食べる料理法だったのだ。
「なます切りにする」というのはここから来ている言葉だよ。
日本に伝わってからは、仏教の影響で肉食が禁じられたので、魚と野菜が残ったわけで、魚の方は「タタキ」と呼ばれるようになり、野菜の方だけが「なます」になったのだ。
ただし、山口の郷土料理の「ちしゃなます」(ほぐした焼き魚とレタス=ちしゃを酢味噌で和えたもの)のように、魚が入っている「なます」も当然あるよ。

そして、さわにまぎらわしいのは野菜の「タタキ」。
こっちはたたくことで野菜の繊維質を柔らかくする調理法のこと。
タタキゴボウやキュウリのタタキがそれ。
たたくことで繊維がほぐれてタレともよくなじむんだよね。
野菜の場合は刻んだものが「タタキ」とよばれることはまれなようなのだ。

カツオにしても、アジにしても、タタキの場合はたっぷりの薬味とともに味付けされたものを食べるんだよね。
やっぱりこれは鮮度の問題が大きかったんじゃないのかなぁ。
カツオはなまり節や鰹節に、アジはヒラキに、と加工すれば長期保存できるのだけど、生のものも食べたいというところから初田牛反じゃないかと思うんだよね、。
とにかく日本人の食に対する欲望は尋常じゃないから(笑)
なぜか食べるものだけには異様なこだわりを見せるんだよね。

2019/09/07

あ~ま~ぞ~ん!

最近、ナショナル・ジオグラフィックの記事でm、「アマゾンのジャングルが地球の酸素の20%を供給しているというのは誤解」という記事を見たのだ。
この言説はG7でも言及されたことがあるくらいメジャーなんだけど、科学的には正しくないんだそうで。
で、実際に記事の中身を読んでみると、なるほどな、と思ったんだよね。

ようやくすれば、アマゾンのジャングルにある植物は大量の酸素を光合成により排出しているけど、同時に、アマゾンは生物の宝庫で、植物も含めて大量の山椒を消費しているので、実はネットで見ると酸素の供給量と消費量がほぼバランスしており、酸素の供給源にはなっていない、ということなのだ。
ちなみに、アマゾンから生み出される酸素量は、陸上で供給される酸素量の約16%、つまり2割弱。
これが」よく言われる20%の根拠みたい。
でも、実際には、海洋の植物プランクトンも多くの酸素を供給しているのだ。
そもそも地表面積ベースで言えば、海洋が7割、陸地が3割。
で、海洋の寄与分を考慮に入れれば、アマゾンからの供給量は9%くらいだそうだよ。

で、これは供給ベースの数字のみ。
実際には、植物は昼間は光合成するけど、夜は酸素を消費してエネルギー生産もしているのだ。
そして、アマゾンにはいろんな微生物や動物、昆虫が生息しているわけで。
これらの生物も基本は酸素を消費して生きているのだ。
すると、アマゾンで生み出された酸素のほとんどすべては消費されてしまうわけ。
途中のプロセスを見ると、発酵のような酸素を必要としないエネルギー生産もあるんだけど、最終的にはそこでできたアルコールも酸素を消費して二酸化炭素になるんだよね。
これがネットで見ると酸素の供給量はほぼゼロ、という中身。
逆に、そうでないとすると、地球上からはどんどん二酸化炭素が減って酸素が増え続けてしまうわけだけど、そうはなっていないのは、酸素の供給と消費がほぼバランスしていて、差し引きでゼロになっているから。
ここに化石系燃料の消費による二酸化炭素が加わって温暖化が問題になっているわけなのだ。

一方で、億年オーダーの長い長い地球の歴史を見ていくと、あるときから酸素が増え、大気中にそれなりの量がたまって、今度はそれを消費してエネルギー生産を行う生物が出てくるんだよね。
この時代は酸素が増えていく時代で、オゾン層も形成されるのだ。
それにより、地上に届く有害な紫外線量が減り、地上にも生物が進出できる素地が作られるよ。
こうして広がっていったのが多くの現生生物群なわけだけど、この酸素がどこから来たのかという問題が出てくるよね。
当初は、二酸化炭素から炭素固定して酸素をはき出す生物が生まれ、酸素が出てきたはずなのだ。
この時点では酸素を消費する生物はほとんどいないので酸素はたまっていく一方
あるときから酸素を消費する生物が出てきて、酸素の供給と消費が徐々にバランスしていくんだよね。
でも、その後も少しずつ酸素は増えていったのだ。
なぜか?
それは、生物の食物連鎖から一部の有機物(生物により固定された炭素)が外れていったため。

代表的なものは、深海底にたまっている海洋性微生物(プランクトン)等の死骸。
潜水艦から「マリンスノー」として観測されるものだよ。
実は、深海底にも微生物はいて、これらの有機物が酸素を消費せずに分解されてエネルギー生産が行われていることがわかってきているのだけど、そこまで多くの量ではないのだ。
これがつもりにつもって、堆積層の下の方に行って高温高圧下の環境にさらされると、ゆるやかに物理化学的変化を経て石油に変わっていくのだ。
地上にあった植物が地殻変動等で海底に沈んで同じような変化を受けると石炭になるんだけど、こっちは恒常的なものではないんだよね。
あるときアマゾンが海中に沈めば何億年後には石炭化するかも知れないのだ。

もうひとつは、珊瑚などが炭酸カルシウムの形で固定したもの。
これはそのまま石灰岩になるので、生物の食持ち連鎖から外れた炭素固定なのだ。
意外とその寄与は大きいと考えられていて、珊瑚礁の減少も地球温暖化の原因の一つと言われているよね。
こっちはその石灰岩を熱して消石灰などにしない限りは二酸化炭素は大量に出てくることはないのだ。
どんどん二酸化炭素を消費していく一方なわけ。
酸素は酸素で金属をさびさせたり(酸化)して無機物にも固定されていくので、その辺のバランスも見る必要があるのだ。

いずれにせよ、アマゾンから大量に酸素が供給されているのは事実。
でも、同時に、アマゾンで大量の酸素が消費されているのも事実。
なので、酸素の供給源としてアマゾンの自然を保護しようというのはあんまり正しくないのだ。
一方で、人工的に大量の植物だけを伐採したりするとアマゾンの生態系が乱れるので、このバランスに悪影響が出るのも確実。
なので、樹木を守るだけでなく、アマゾンの自然環境全体を守る必要があるのだ。
複雑な生態系では少しの外的な影響が大きく作用することもあるので、できるだけ現状の環境を維持できるようにするのが大切で、植樹をするとかではなく、今の生物多様性をできるだけそのまま保全していくのが大事だということだよ。

2019/08/31

和洋の辛み

フランス人って、唐辛子の辛みは苦手だけど、マスタードは大好きなんだよね。
それこそ何にでもマスタードをつけるのだ。
ステーキにもマスタードだし。
そして、実際にフランスのマスタードはおいしいのだ!
ディジョンのマスタードが特に有名だよね。

マスタードの辛味成分は、アリルイソシアネート配糖体。
俗に言うカラシ油配糖体というやつなのだ。
これは鼻につんとくる刺激性の辛味成分。
わさびの辛味もこれ。
ダイコン、カブ、ノザワナ、タカナ、アブラナなどのアブラナ科の植物の種子にはたいてい油分と辛味成分が含まれていて、草食動物に種子を食べられないように「忌避物質」として備わっていると考えられているよ。
人間はわざわざ取り出して食べているわけだけどね(笑)
カイワレや辛味大根の辛味もこれ。

一方、唐辛子の辛味はカプサイシン。
アリルイソシアネートが硫黄を含む有機硫黄化合物であるのに対し、カプサイシンはアルカロイドの一種。
アルカロイドは窒素を含む塩基性の天然有機化合物の総称だよ。
アリルイソシアネートの辛味は瞬間的であるのに対し、カプサイシンはわりとひりひりと残る辛味なんだよね。
おそらく、フランス人はこれが苦手なのだ。

マスタードの場合は、セイヨウカラシナやシロガラシの種子やその粉末に水や酢、糖類、小麦粉などを加えて練り上げたもの。
ターメリックを入れて真っ黄色にしたのが米国のイエローマスタード(本来は薄い黄土色。)。
通常は辛味は抑えめだよね。
蜂蜜を加えて辛味をマイルドにしたのはハニーマスタード。
種子が粒のままは言っているのが粒マスタード。
いずれにしても、辛味だけでなくて甘みや酸味があるのが特徴。
肉料理によく添えられるのも、辛味で‌肉の臭みを消すとともに、酸味で油脂をさっぱり食べさせるためなんだよね。

これに対して、和辛子はセイヨウカラシナの種子を粉にした粉カラシを水またはゆで溶いたもの・
単純に辛味だけ。
なので、あくまでも薬味扱いなんだよね。
ソース的に使う欧米とは役割が異なるのだ。

カラシの辛味成分は揮発性なので、水に溶いただけではすぐに辛味が飛んでしまうのだ。
なので、和辛子の場合は基本は食べる直前に練るもの。
時間をおくとどんどん辛味がなくなっていくのだ。
いわゆる風味がなくなるというやつ。
マスタードの場合は、酢が入っているので揮発しづらくなっているのだ。」でも、全体的に辛さは抑えめなことが多いんだよね。
そういう風味辛味成分が飛ばないようにすると辛味がマイルドになるから。

そこで、出てきたのが「練り辛子」。
チューブに入っているカラシやシュウマイや納豆に着いてくる袋入りのカラシだよ。
こちらは、油脂や贈年材で辛味成分を安定させて、人工的に香味成分を加えたもの。
練りたてのカラシ並、とはいえないまでも、風味が残った状態で辛味が味わえるものなのだ。
その手軽さから、国内ではこれがほぼ主流になっているんだよね。
毎回毎回粉カラシを練る、なんて家はもうほとんど存在していないのだ。
そっちの方が辛味が鮮烈らしいけど。
高級なとんかつ屋さんとかに行くと出てくるんだよね。

ちなみに、セイヨウカラシナはすでに弥生時代には大陸経由で日本に伝来していたのだ!
原産地は中央アジアと考えられているよ。
平安時代にはすでに書物にも名前が載っているので、古くから親しまれてきているのだ。
栽培植物として根付いていたわけ。
一方で、原種のカラシナが命じいいこうに帰化植物になっていて勝手に自生し始めたのだ。
そこで、単位「カラシナ」と呼ぶのではなく「セイヨウカラシナ」というのが種名になったみたいだよ。
沖縄の「島菜(シマナー)」はカラシナのことで、高菜や搾菜(ザーサイ)はカラシナの変種だって。

2019/08/24

神州一

日本料理というとどうしても醤油のイメージだけど、実は醤油が普及したのは江戸時代。
すなわち、醤油ベースの味付けは江戸時代以降にできたものなのだ。
それまでの調味料の主流は、塩、煎り酒(酒で梅肉をといて煮詰めたもの)、そして、味噌。
味噌は味噌で、「味噌汁」という形で家庭の和食には欠くべからざる存在だよね。
醤油が普及するまでは、うまみ成分であるアミノ酸を含む調味料は味噌のみ、というわけで、非常に重要なものだったのだ。
その味噌を造るときに副産物でできる「上澄み」が「たまり」で、これが非常に美味なので、これを液体等魅了として生産できるようにしたのが醤油の製法なのだ。
なので、起源をたどれば、醤油も味噌から派生したものなんだよね。

味噌が大陸から伝わったものなのか、日本で独自に作り出されたのかは諸説あるようだけど、文献に最初に登場するのは平安時代。
その頃の味噌は豆の形の残るもので、調味料ではなくて、そのまま「おかず」として食べられていたようなのだ。
中国から伝来した「塩辛納豆」に近いもの。
豆に塩分を足して発酵させたものだよ。
塩辛納豆の場合はそれを更に乾燥させるんだけど、平安時代に食べられていた「未醤(みしょう)」はもう少し柔らかい、乾燥させていないものだったっぽいのだ。
これは、同時期に調味料として伝わった「醤(ひしお)」の製法と混ざって医るっぽいんだよね。
「醤」は、肉や魚を塩と麹菌で発酵させて作られる液体調味料で、かなりどろっとしたもの。
日本では魚醤である秋田のしょっつるや石川のいしるが有名だよね。
で、麦、米、豆などを原料にして作られるのが穀醤。
通常は長期間発酵させて原料の原型がなくなるくらいまでどろっとさせるんだけど、塩辛納豆との折衷で豆の形が残る状態で食べ始めたのが日本の味噌の始まりではないかと思うのだ。
そういう意味では、中国伝来でもあるし、日本特に「独自発展」させた日本発祥のものでもあるかもしれないよね。
「未醤」というのみお、まだ「醤」になりきれないうち、という意味である可能性も高いのだ。
でも、そうすると、実は江戸時代の「たまり」から「醤油」への転換は原点回帰でもあるんだね。

で、最初は豆を主要な原料にして、豆の形が残る状態で発酵食品としておかずになっていたようなんだけど、鎌倉時代に合って中国から「すり鉢」が伝わると、これをすりつぶして湯に溶かし、汁物にされるようになったのだ。
これが味噌汁の始まり。
当初は味噌自体がまだ貴重なものなので、基本は武家や公家の食事にしか出てこなかったんだけど、室町時代になって農家で自家製味噌が造られるようになると、庶民の食卓にも上るようになるのだ。
このころ、使用目的によって味噌も発達し、保存食(陣中食)に使われる玉状に丸めたもの(そのままかじたり、削って湯に溶かしたりする携帯食)、湯に溶かしてしるにするいわゆる味噌、そのままおかずとして食べる味噌(金山寺味噌や朴葉味噌のようなもの)などなどバリエーションも増えてくるのだ。
そして、原料もいろいろ種類が増えてきて、古来からの豆味噌だけでなく、麦味噌、米味噌も生まれ、さらに、それをブレンドする合わせ味噌も。
こうして当時の日本料理は味噌の味付けで形成されていくのだ。

日本料理では一汁一菜とか一汁三菜とかの形式が存在するけど、汁物がついているのが基本。
そして、その汁物はたいてい味噌汁なのだ。
やっぱりそれだけ深く浸透していたんだよね。
江戸時代に醤油が広まっても醤油ベースの汁物に置き換わることがなかったのだから、その深さはすごいものだよね。
日本人にとってソウルフードになっているのだ。

一方で、伝統的な日本食である、漬け物と味噌汁とごはんという形式だと、塩分と炭水化物の取り過ぎになるんだよね・・・。
洋食の普及もあいまって毎日のように食べる、というものではなくなってきたのも事実。
でもでも、「減塩」タイプなんてのがあって、それが売れているんだから、まったく捨てきることもできないし、やっぱり食べるとほっとするものでもあるんだよね。
伝統は伝統としてしっかりと残していきたいものなのだ。

2019/08/17

日頃の心がけが大事

最近「未病」って言葉がはやっているよね。
CMでも聞くのだ。
で、それは何かとググってみると・・・。
なぜか神奈川県のHPがトップに出てくる!
これhが黒岩知事一押しの案件でもあるからみたい。

もともとは、中国の伝統医療である「中医」の言葉で、「健康」状態と「病気」状態の中間に位置する状態を指す言葉。
東洋医学では、「健康」と「病気」はゼロサムの世界ではなくて、グラデーションがあるのだ。
心身ともにバランスがとれていて恒常性が保たれている状態が「健康」。
逆に、バランスが崩れて恒常性が破綻している状態が「病気」。
その中間で、バランスが崩れかけていて、恒常性がゆれている状態が「未病」というわけなのだ。
「病気」とはいえないけど、その前段階で体調を崩しているときなので、ここでしっかり養生すると大病しない、ということで、中国では伝津御的な生薬(いわゆる「漢方」)で体調を整えるんだよね。

このような大きく体を壊す前、少しでも体調が悪くなったら伝統薬を服用する、というのは洋の東西を問わずにとられている両方でもあるのだ。
でも、古典的な西洋医学では、病気の原因を突き止め、それに対処する、という手法がとられてきたので、症状が安定してから病名がついて、それに対して治療を行う、という流れだったんだよね。
そうではなく、もう少し事前に対処しておけば病気にならずにすむ、ということで「未病」という概念を広めようとしているのだ。
つまり、古典的西洋医学は対症療法になっていて、常に後手後手に回ってしまうので、先んじて手を打ってしまおうというわけ。

この考え方自体はしっかりと近代医学にあるのだ。
それが「予防医学」。
病気になる前に病気にならないようにする、病気を早期発見する、病気が重症化しないようにする、病後のケア(再発防止やリハビリなど)をする、というかなり広い概念。
健康診断や予防接種、感染症教育なんかがこれにあたるよ。
聖路加病院長だった日野原重明医師が提唱した「習慣病」という概念もこれに呼応したもので、もともと糖尿病とかは「成人病」と呼ばれていたわけだけど、生活環境の改善でかなり予防できることがわかったので、「生活習慣病」と呼ぶことになったのだ。
つまり、教育や専門家の指導で発症や重傷かをかなりの程度防げるというわけ。

これ自体は非常に良いことで、特に生活習慣病は生涯にわたって多額の医療費が投入されることになるから、未然に防ぐのは大事なのだ。
感染症や合併症も防ぐに越したことはないよね。
これは知識と技術によって確実に防ぐことができるものだし。
でも、これが「がん」とか「神経系疾患」になってくるとあやしいんだよね・・・。
確かに、ストレスのような環境要因もあるのだけど、こうしたら確実に予防できるというものでもないから。
ここに「未病」という言葉がビジネス上で使われると、あやしいニュアンスを伴ってくるのだ。

もともと高血圧の人には降圧剤が処方されているんだよね。
で、当然その基準があって、血圧が一定値以上の人がその対象。
で、「未病」というビジネスが狙っているのは、その基準より少し低いくらいの、普通より血圧が高めな人。
「ゴマ麦茶」なんて特保商品もあるけど、いわゆる高血圧予備軍の人たちを対象としたビジネスがあるのだ。
そもそも高血圧と診断されている人たちに降圧剤を処方すること自体が大規模コホート研究の結果からあやしいと言われているんだけど、それ未満の人たちを相手にしているんだからね。
で、血圧が気になる方は、くらいでゴマ麦茶や青汁を勧めるkぅらいならそこまで実害はないけど、「今血圧を下げておかないと将来・・・」のように病気のリスクで脅してくる人たちが悪質なのだ。
それで高額の商品を売りつけられるケースも。
さらに、こういうやつは、ずっと摂取し続けないとダメ系なんだよね。
やめたらまた血圧が高くなりますよ、とおどすから。
すなわち、生涯にわたって「しぼりとれる」ビジネスモデルなのだ!

多くの場合はそこまで悪質じゃないんだけど、どうしてもそういうのが出てきてしまうのも現実。
特に「未病」という言葉が一人歩きしてしまうとね。
健康寿命を伸ばす、ということ自体は、(健康保険の財政問題を別とすれば、)おそらくよいことなんだけおd、それを悪用してビジネスに使う人たちも出てきてしまうというわけ。
そのためにも、しっかりと「予防医学」の概念を教育する必要があると思うんだよなぁ。

2019/08/10

お世話係

うちの職場にもあるのだけど、新人職員のケアをする制度として、メンター制度というのがあるよね。
自分が入ったばかりの頃は制度としては確立していなくて、1期、2期上の先輩とつきあう中で、お仕事をする上でのこつや心構えなどを面白おかしく失敗談などを交えながら聞いたものだけど、最近はきちんと制度化されているのだ。
先輩後輩のコミュニケーションが減ったのか、組織として「やってます」と対外的にアピールするためにそういうものをきちんと形作ることが必要なのか。
とにかく、そういうのが整備されているんだよね。

なんと、その語源は、ギリシアの叙情詩、ホメーロスの「オデュッセイア」にさかのぼるんだって。
女神アテーナーは、オデュッセウスの息子であるテーレマコスの前にメントールという老人の姿を借りて現れ、助言をする下りがあるそうなのだ。
ここから、経験豊富な者が、若者や経験の少ない者に助言をすることを「メンタリング」と呼ぶようになったんだって。
この話では老人なんだけど、実際のメンター制度では、もう少し若い世代が新人のお世話をする例が多いよね。
あまりに先輩すぎるとどうしても新人が恐縮するし、もともとあったような先輩後輩のコミュニケーションを制度化したものだというのもあって、そうなっているのだ。
ところが、制度化したためにかえってうまくいかない事例もあるみたい。

メンターを置く場合、通常は直接業務上のつながりのない人を任命するんだよね。
そうでないとお仕事における不安や困ったことなどを話しづらいから。
で、制度化される前は、業務上につながりは特にないけど話しやすい先輩に話していたわけだけど、メンターとして誰かが任命される場合、必ずしも話しやすい人とは限らないわけだよね。
実際にコミュニケーションをとってみると話せるようになるのかもしれないし、そういう相談にのる能力がありそうな人を組織としてもメンターにしているんだろうけど、いきなりメンターとコミュニケーションして、といわれても戸惑うよね(笑)
まさにそこが課題になっているみたい。
よく知らない人に相談しろと言われましても・・・、ということ。

そこで、メンターとなる職員と新人の懇親会を最初に設けたり、メンター制度が機能しているかどうかフォローするための定期的な報告の仕組みを設けたり、といろいろ工夫をするわけだけど・・・。
そういうのがかえって負担増になるんだよね(>_<)
そういうのもあって、メンター制度を廃止しているとおろもあるんだって。
よかれと思って導入しても形骸化するんじゃ意味ないからね。
むしろ、新人が困っていそうなときに周りから声をかけてあげる、わからないことなどがあったら気軽に聞ける、業務以外の話題でも話がしやすい、などの職場環境を作る方が大事なのだ。
ま、その風通しの良さを作るというのが難しいし、それは客観的には評価できないから、できているのかどうかも判断のしようがないんだけど。
特に、電通社員の過労死のような問題が発生したとき、組織としてどう取り組んでいたのか?、と社会に問われても答えづらくなるのだ。
そのため、有名無実化していようが、制度としてやってます、というところもあるのが現実。

これとは別に、もっと年配の職員、具体的には、管理職に当たるような人が若手が指導するものとして「コーチング」ちょいうのもはやっているよね。
ただ叱責するだけでなく、その若手の得意なことや能力・スキルを伸ばしてあげるためのアドバイスをしていく、というもの。
飴と鞭を使い分け、褒めるべきは褒め、注意すべきところは注意して、でも、全体的には「褒めて伸ばす」的な感じで接するんだよね。
この御時世では、普通にしかるだけだと「パワハラ」認定されることもあるので、管理職研修などでよく紹介されるようなのだ。

でもでも、そういう手法を学んだとしても、実践できるかどうかは別問題。
正式な資格認定があるわけでもなく、効果測定ができるようなものでもないので、それぞれがかってに「コーチング」だと思ってやっているだけなのがげんじつなんだよね・・・。
おそらくうまく使いこなしている人もいるのだろうけど、世の中そんなうまいこと運ぶわけもないわけで。
そもそも1~2時間の研修で講師から聞いたくらいじゃできるようになるわけないし、むしろ、できている人は元々そういうことが無意識でできていた人なんだよね(笑)
でも、さすがにこっちは制度化しづらいので、そこまでは至っていないのだ。
管理職の人事評価の視点としては取り入れられているんだろうけど。

ともあれ、「人事」は心の問題が絡んでくるから難しいよね。
それこそ明治の時代から「最近の若者は」みたいな話があるそうだけど、世代間ギャップで認識の差があるから、それを意識してうまくつきあうようにしないとダメなのだ。
そういう意味では、元来コミュニケーション能力が高い人はそういうにおが自然にできるから、うらやましいよね。

2019/08/03

夏の友

夏といえば、そうめん!
蒸し暑い日本の夏にぴったりな料理なのだ。
つるつるっと食べられてるけど、意外とカロリーは高いんだよね・・・。
ゆで時間が短いのも魅力的。


その歴史は古く、奈良時代に遣唐使が伝えた「索餅(さくべい)」から発達したと考えられているよ。
索餅は、そのjきったいはよくわからないのだけど、小麦粉と米粉を水で練って生地を作り、縄状に延ばした上で乾燥させ、或いは、油で揚げたものと推測されているのだ。
この状態では保存がきき、ゆでてから食べていたみたい。
神社でのお供え物(神饌)にも使われ、「延喜式」なんかにもその名前が登場するのだ。
初期のものは相当太く、ちぎって食べたのではないか、ともいわれているみたい。
いずれにせよ、縄状に延ばすのは表面積をかせいで乾燥させやすくするためだろうね。

時代が下ってくると、この索餅がもっと長く麺状に延ばされるようになるのだ。
今のような細い麺になったのは室町時代みたい。
この頃もまだ「索餅」とも呼ばれていたみたいだけど、「素麺(そうめん)」という表記も見られるようになるとか。
ただ小麦粉の生地を練ってのばすから「素」の「麺」なのかな?
室町時代はゆでてから洗った麺をもう一度蒸したりして暖める食べ方が主流だったとか。
その後、江戸時代になると、今のように冷たい麺として食べられるようになるみたい。
当然、冷蔵庫・冷凍庫がない時代なので、冷たい井戸水で冷やした程度だとは思うけど。

経緯からわかるように、素麺の発祥の地は奈良。
そして、細い麺状に引き延ばす製法も奈良の三輪地方が発祥のようなのだ。
「揖保乃糸」でおなじみの三輪素麺が元祖みたい。
ここから摂津や、播磨や小豆島に手延べ技術が伝わり、二期作などで小麦の生産が盛んで、同時に、海塩の産地も近い瀬戸内海沿岸に広がっていったみたい。
西日本では摂津の「灘素麺」というのがメジャーだったみたいなんだけど、近代に入って市街化が進んだこともあり、その後塵を拝していた播州素麺がトップに躍り出たようだよ。
素麺というと「播州手延べ素麺揖保乃糸」が真っ先に思い浮かぶよね。

素麺の伝統的な製法は、もむ擬古に塩を足して水で練って生地を作り、休ませながらちょっとずつ延ばしていくのだ。
日本の小麦はグルテンが少ないので、一気に延ばそうとすると切れてしまうので、寝かせながら、段階的に伸ばしていく技術が必要で、これには熟練が必要みたい。
このとき、麺同士がくっつかないように表面にうすく油を塗るんだよね。
素麺の場合はゆでた後に流水で洗うので基本的には食べるちょきにはその油の風味は除かれるのだ。
もともと塩が結構入っているから、スープに乾麺を入れてそのままゆでて食べる、という食べ方はできないんだよね。
三輪素麺のように温かい汁麺の「煮麺」で食べるときも、一度ゆでて洗ったものを温かいつゆに入れるのだ。

これと対極的なのは、イタリアの乾麺であるパスタ。
乾燥パスタに使われるのはデュラム小麦。
特にグルテン含有量が多い小麦なのだ。
粘りけが少ないのでパンには向かないのだけど、逆に、粘りけがないから、生地をのばしてパスタに加工できるみたい。
もともと胚乳が黄色いので、麺に加工した後も黄色いのだ。
卵の色じゃないんだね!

日本の小麦はグルテンが少ないので生地を作ったときに粘りけは少ないのだけど、それだけぼそぼそした生地なので、技術がないと生地を伸ばせないのだ。
これは完全に職人技。
今では機械化も進んでいるけど、長年培ってきた経験と知恵がそこには活かされているのだ。
うどんも含め、乾麺にしたときの状態の違いや、ゆでた後の食感の違いなどはグルテン量の差なんだよね。
パスタのカッペリーニなんかはかなり素麺に近い細い麺だけど、やっぱり食感が違うんだよなぁ。
同じような作り方をしている乾麺なのに不思議だよね。

ちなみに、今はかなり極細の素麺があるけど、これは最近になって出てきたみたい。
外国産のグルテンの多い小麦(「外麦(がいばく)」というらしいよ。)を使うことで実現しているのだ。
三輪麺の場合は細ければ細いほど高級なんだって。
これは麺をつるつるっとあまりかまずに食べる食習慣から来るんだろうなぁ。
いわゆる「のどごし」。
パスタはあくまでもかんで食べるものなので、「アルデンテ」のような食感が大事なんだよね。
でも、その「のどごし」を追求したものが外国の小麦でないと作れないというのは皮肉な話だね。

2019/07/27

速い電車

日本に戻ってきて1週間。
まだ仮住まいで生活の立ち上げもままならないのに・・・。
なぜか大阪出張に行ってきたのだ。
うちの職場はきびしいなぁ(>_<)
そのときにひさしぶりに新幹線に乗ったんだけど、これが快適音符
車内はきれいだし、ゆれないし。
フランスのTGVとは大違いだ(笑)

新幹線は言わずと知れた日本の高速鉄道で、世界に冠たるものなのだ。
その高速性・静粛性は世界トップの性能。
何より、運行側の不手際による乗客の死亡事故はこれまでゼロという「安全神話」もあるのだ。
こういう実績をひっさげて、海外にインフラ輸出もしているよね。
そのときのライバルはたいてういフランスのTGVなんだけど、実際に乗り比べてみると、TGVよりはるかによいのだけど、日本の新幹線の運行には相当の手間がかかっているから、実際に海外で運行するのは難しいのかも。

我が国最初の新幹線は先の東京オリンピックの時に開業した東海道新幹線。
在来線である東海道本線という幹線鉄道に対し、新たな幹線鉄道となるべき高速鉄道路線なので、「新幹線」と名付けられたのだ。
ちなみに、江戸時代の五街道の東海道中は江戸日本橋から京都三条大橋までの区間、東海道本線は東京駅から神戸駅までの区間、東海道新幹線は東京駅から新大阪駅までの区間とどれも微妙に終点がずれているのだ。
最初は各駅停車の「こだま」と一部駅を通過する「ひかり」の2種類だったけど、さらに停車駅が少なくなった「のぞみ」も運行されるようになったのだ。
音速、光速と来てその次はどうするかと話題になったんだけど、最終的には、希望は光を超えるという結果になったのだ。
どれも「やまと言葉」できれいな響きだよね。

もともと新幹線のような構想は戦前からあって、当時は「弾丸列車計画」よ呼ばれていたみたい。
これは新幹線の英語名称にそのまま「bullet train」として残っているのだ。
ちなみに、TGVは「Train à Grande Vitesse」の略で、「大きな速度の列車」というそのままの名前だよ。

明治期に全国に鉄道もを敷設するとき、日本ではコストの問題から「狭軌」を採用したんだよね。
このため、光速で安定的に運行できる鉄道は実現できず、せいぜい100km/hだったのだ。
これを欧米と同じ規格の「広軌(標準軌)」にして、200km/hを越える光速で鉄道を走らせようという計画が出てきたわけ。
それが実現したのが新幹線なのだ。
でも、今となっては、秋田新幹線や山形新幹線のように、在来線の「狭軌」の線路をそのまま走る「ミニ新幹線」も運行されているんだよね。
これは新たに広軌の線路を敷設するのは難しいけど、超特急はどうしても通したいというところから出てきた折衷案。
「全国新幹線鉄道整備法」では、その第2条で「その主たる区間を列車が200キロメートル毎時(以降km/hと記す)以上の高速度で走行できる幹線鉄道」を「新幹線」の定義としているので、全区間で必ず200km/hの速度を越えている必要はないのだ。
ちなみに、在来線の線路を使う区間は130km/h程度だよ。

日本の新幹線は、高速性と安全性を確保する観点から、設備面でだいぶ在来線とは異なるんだよね。
まず第一に、踏切が一切ないのだ。
基本的には高架でわたすか、道路の方を線路の上か下に通すか、ということをしているんだ。
都内では西大井に東海道新幹線の線路に近づけるところがあるけど、壁は高くて中はほぼ見えないし、新幹線の線路を横断するのは結構大変なのだ。
でも、そのおかげで安全性が高まり、高速で運行できるんだよね。
さらに、線路のつなぎ目でがたんというのをできるだけ避けるために、ロングレールというのを採用しているのだ。
線路の一つ一つの単位が長いんだ。
つなぎ方にも工夫があって、がたがたしないようになっているんだ。
高速だとその衝撃が大きくなるので、この工夫により、静かに走ることができるんだよ。
そして、路線自体もできるだけまっすぐに、カーブするときは大回りで、としてあって、ゆれないし、速度を落とさずにすむようになっているのだ!
このあたりは、がたがたゆれ、すぐに徐行するフランスのTGVとは大違い(笑)

2019/07/20

しめりけでむしむし

日本に帰ってきて一番びっくりしたのは、蒸し暑さ。
気温だけで見るとパリとほとんど変わらないのに!
でも、東京ははるかに暑い・・・。
というか、空気に重みや粘りけを感じる。
これは湿度の違いなんだよね。

欧州は夏の気温が上がっても、日差しが強くても、湿度は低め。
からっとしているので、汗をかくことでかなり体は冷却されるようなのだ。
ところが、日本は高湿度。
汗をかいても流れるだけであまり蒸発せず、そのため、気化熱を奪われることもなく。
結果として、汗をかく不快感だけが残って、あまり涼しくないのだ。

だからこそ東京では冷房が普及していて、パリでは普及していないんだよね。
ところが、この日本型暑さはまだ問題があるのだ!
それは、外で大量に汗をかいた後に冷房のきいたところに入ると一気に冷えるのだ。
冷房は原理的に湿度下げることになるので、気化熱が奪われて冷却される分さらに冷えるのだ。
一気に汗は引くけど、今度は寒いくらいに感じするのだ。
これが「体感温度」なんだなぁと実感するよ。

日本の天気予報では「不快指数」というのが出てくるけど、これはそんな温度と湿度の関係を数値化したものなのだ。
気温が低くても湿度が高いと「蒸す」と感じるし。
気温が高くても湿度が低めなら、からっとした暑さでそこまで不快ではないのだ。

最初に提唱したのは米国の人みたいだけど、日本で使われているものは次の式から算出される数字だよ。
0.4 × (乾球華氏温度 + 湿球華氏温度) + 15
乾球温度は普通の温度計のさす温度のこと。
一方、湿球温度は、百葉箱の中などで見られる、濡れたガーゼでくるまれた温度計のさす温度のこと。
濡れたガーゼで包むことで温度計表面で水分が蒸発し、気化熱で奪われる熱量が反映されるのだ。

湿度が高いときは気化熱が奪われないので乾球温度とほぼ同じ数字をさすよ。
湿度が低いと気化熱で熱が奪われるので乾球温度より低い数字をさすのだ。
 つまり、湿度が高い時の方がこの不快指数の数値が上がるし、当然、もとの温度が高いとやはり高くなるのだ。
 これってけっこうわかりやすい指標だよね。

フランスの天気予報では聞いたことはなかったけど、気温が高くなっても不快指数はそんなに高くならないんだろうなぁ。
 実際にそこまで不快ではなく、直射日光させしのげればなんとかなることが多かったからね。
日陰に入っても熱気でムンとしている日本とは大違い!

2019/07/13

サメにあらず

出張で東欧某国に行ったのだけど、キャビアが有名なんだって。
ま、出張で行くようなときは冷蔵が必要なキャビアは持って帰れないのだけど。
でも、一応名物ということで、一回は食べたのだ。
その際、チョウザメの肉もいただいたのだ。
これが白身でぷりぷりしていてなかなか美味。

チョウザメは、「サメ」という名前はついているけど、いわゆる軟骨魚類の「サメ」ではなく、硬骨魚類。
形態が似ているので「サメ」という名前がついているだけで、「サメ」とは全く異なる種類の魚なのだ。
ただし、古代魚ではあって、3億年くらいまえから生息しているとみられているみたい。
シーラカンスみたいなものなのか!

「サメ」の場合、えらがむき出しで、浮き袋がないので肝臓の油で浮力調節をしていて、体の構造的には「チョウザメ」と大きく異なるのだ。
でも、食べる場合のもっと大きな違いは、「アンモニア臭」。
「サメ」は、体液の浸透圧の調整に尿素を使っているので、鮮度が落ちるとそこからアンモニアが発生するんだよね。
それでものすごく身がくさくなるのだ。
そのため、鮮度が悪くならないうちに加工する必要があって、多くの場合、かまぼこやはんぺんのような練り物に使われたり、煮こごりにされたりするのだ。

でも、アンモニアは発生して臭くなるけど、それは腐っているわけではなく、むしろ日持ちはするので、日本の内陸部では臭いを我慢しつつ食べる習慣が残っているんだよね。
栃木の「モロ」なんかがまさにそうだよ。
腐らずに運べる「サメ」の白身は貴重だったのだ。
ただし、そうやって食べられるのは比較的アンモニア臭の少ないネズミザメなどだよ。

ちなみに、その全く逆に突き抜けているのが、韓国料理のホンオフェ。
世界に冠たる臭い料理の一つだよ。
ガンギエイの身を壺に入れて発酵させたものなんだけど、その発酵過程で実の中の尿素がアンモニアに分解され、ものすごい臭気になるのだ。
アジアでは最強のくささで、スウェーデンのシュールストレミングに匹敵すると言われるよ。
最初にこの方法で食べた人は何が目的だったんだろう?

一方で、チョウザメの方は普通の白身。
天然のチョウザメが絶滅危惧種になって養殖が進んでいることもあるんだけど、その身も食べようという動きが活発になってきているみたい。
さすがに卵巣だけとってキャビアに加工し、残りは廃棄物というのはもったいないよね。
種類によっては身もおいしいし、しかも、くさみの少ない白身なので重宝するのだ。
刺身でも食べられるんだそうだよ。

日本国内でも養殖が広まってきていて、国産キャビアというのもあるらしいのだ。
個人的にはキャビアはそこまで好きじゃないけど、チョウザメの身はおいしかったから、これが新たな食幼魚として広まったらいいと思うけどなぁ。
鮭に匹敵するような食材になれる可能性はあると思うけど。
キャビアだけじゃなくて身も売れるようになれば養殖事業ももっと盛んになるよね。
ただし、キャビアがとれるようになるまでには10年以上かかるんだって・・・。
チョウザメの養殖はけっこう息の長い話なんだね。

2019/07/06

西へ東へ

東欧某国に出張に来たのだ。
フランスから帰国する前の最後の出張だ。
本当は帰国準備があるから避けたかったんだけど(笑)
ま、仕方がないね、ということで、せめてそこでしか食べられないものを食べようと思ったんだけど・・・。
東欧って、だいたいトルコ料理に近いものなんだね・・・。
ギリシア・トルコでよく見るような、ケバブ(ヒツジなどの挽肉を香辛料とともに串に巻き付けて焼いたもの)やフムス(ひよこ豆のペースト)、そして、ダンプリング。

ダンプリングというのは日本や中国で言えば餃子。
小麦粉を練って作った皮で包んだものの総称だよ。
饅頭も入るし、チベットやネパールのモモ、イタリアのラビオリなんかもこれの仲間。
水餃子のような料理が東アジアから中央アジアを通って欧州まで広がっているんだよね。
まさに「シルクロード」とともに分布しているのだ!

コムギはオオムギに比べて少し食べづらくて、実が硬いので粉に引く必要がるんだよね。
そういう食べ方を発見して主要作物にしたのはメソポタミア。
これがパンやパスタを含む麺類に発展していくんだけど、そういう「アドバンスド」な食べ方を最初からしているわけじゃなくて、これらは工夫に工夫を重ねた末の結果なんだよね。
当然、最初はコムギをひいたものを水で練って生地を作り、それを焼く、ゆでるなどの簡便な料理法なのだ。
おそらく、メソポタミアで食べ始めて、それが西へ東へ伝播していったんだよね。
さらに、シルクロードをはじめとする交易路を通じて食文化の交流も起こって、似たような料理がいろんな地域に広がったのだ。

焼くものとして代表的なのは、今でも中東でよく食べられる「平パン」。
総称は「ホブズ」と言うみたい。
ケバブサンドに使う、いわゆる「ピタ」もそうだけど、これは発酵させてから焼いたもの。
インドにある、務発酵で焼いた平パンがチャパティ。
こっちは薄めにフライパンで焼くのだ。
発酵させてから焼くナンと違ってふっくらとはしていなくて、もっさりした食感なのだ。
で、正直、このままだとそんなにおいしくないので、発酵させることでふっくらとさせるようになったんだよね。
中国では、焼くのではなくて発酵させた生地を蒸すんだよね。
それが「饅頭(マントウ)」で、日本に伝わって「まんじゅう」になるのだ。

で、もう一つの食べ方はゆでるというもの。
単純には、生地をちぎったものをそのままゆでるんだよね。
日本のすいとんやだご汁みたいなもの。
で、もう少し工夫したのが、平たくしてから中に「餡」を入れて包むもの。
これがダンプリングなのだ。
肉や野菜だけでなく、果物や砂糖を包むようなものまで、世界中にものすごくバラエティのある料理だよ。

コムギがオオムギより優れているのは、グルテンを含んでいるので、生地を練ると「コシ」がでること。
オオムギはグルテンがないから、生地を練って焼いたりゆでたりしてもぼそぼそ、もっさりなのだ。
コムギの場合はもっちりするんだよね。
特に、ゆでた場合はつる、ぷり、といった食感が楽しめるのだ。
酵母を加えて発酵させたり、その代わりに膨張剤を入れて膨らませたりするとふっくらとした食感が出せてさらにおいしいのだけど、こっちはゆでるだけだから、水がある地域ならすぐに採用される食べ方なんだよね。
中国では、こっちもさらに蒸すことで蒸し餃子や焼売が出てくるのだ。

はっきり言って、これは中身の餡にさせ気をつけておけば、はずれはないんだよね。
食感も味も想像しやすいのだ。
なので、ボクはこの手の料理があるところではたいてい試してみるんだよね。
取り立てておいしい♪、ということはまずないけど、それなりにおいしいのだ(笑)

2019/06/29

長野のレガシーいまいずこ

海洋のマイクロプラスチックの問題がかなり国際的に議論になっているね。
正直なところ、海洋中に微少なプラスチックが浮遊していて、それが年々増えている、というのは事実。
でも、実際にそれでどんな有害な事象が起きるかはよくわかっていないんだよね・・・。
プラスチックの表面に有害な有機物質が付着し、それを誤って食べた海洋生物が・・・、みたいな話はあるけど、どこまでインパクトのある話なのかはわからないのだ。
でも、世界全体では、この海のプラスチックの問題をどうにかしようと議論が始まっているんだ。

海洋を漂う微少なプラスチックの発生源は主に3つ。
ひとつは、もともと微小な粒子として作られたプラスチックが廃棄され、海洋に流れ着いたもの。
これは歯磨き粉や洗顔剤の中に入っている微小粒子などなど。
工業用のプラスチックの研磨剤なんてのもあるみたいだよ。
あわせてプラスチックビーズと呼ばれる、「第一次マイクロプラスチック」なのだ。
ふたつめは、大きなプラスチックゴミが海洋に流れ着くまでに壊れ、破損し、断片化したもの。
これは物理的に破壊された結果のものと、紫外線などで科学的にもろくなってから砕けた結果のものとがあるよ。
これらは「二次マイクロプラスチック」と言うのだ。
最後が、合成繊維が脱落したもの。
合成繊維はプラスチックの細かい繊維がより合わさってできているわけだけど、洗濯などの過程でその微少な繊維が排水に混ざり込むことがあって、それが海に流れ着いていると考えられているのだ。

で、こんな風に発生源はなんとなくわかっているのだけど、これだ!、という解決策はないんだよね。
というのも、プラスチックがあまりにも便利すぎる素材だから。
第一次マイクロプラスチックの場合は利用を控えればいいだけだけど、代替品がないんだよね・・・。
そうなると、下水処理などでフィルターを通して回収するとか、うまく重合化させて沈殿させるとか考えないといけないんだけど、そうそううまくいかないのだ(>_<)
第二次マイクロプラスチックの場合は、とにかくプラゴミを減らすこと。
これに尽きるわけだよね。
なので、欧州連合では、プラスチックバッグやプラスチックスとローの利用が禁止されつつあるのだ。
日本でも環境省が旗を振ってそういう取組を推し進めようとしているよね。

一方、経済産業省がむかしから進めているのは3R。
リサイクル、リデュース、リユースの3つだよ。
リデュースは環境省と同じ。
残り二つについては、確かにゴミの分別は進んだし、リサイクルもリユースも進んだような気がするけど、自体が大きく改善したようには見えないよね。
回収・洗浄・リサイクル又はリユースにはコストもかかるし、多くのプラゴミは普通に焼却炉で燃やされてしまうのが現状なのだ。

そこで、経済産業省は新たな路線を打ち出すみたい。
それが、「海洋分解性プラスチックの開発と普及」だって。
つまり、海の微生物により分解されるプラスチックであれば、海洋中に蓄積することはなく、そのまま分解され、なくなっていくというわけ。
確かに実現すればすごいけど、今は、その候補となる材料を探すとともに、プラスチックを分解できそうなバクテリアを探すという、手探り状態みたい。
すでにプラスチックを分解する能力を持つバクテリアは見つかっているんだけど、あんまりそれがはびこってしまうと耐腐食性が高いというプラスチックの特性が失われてしまうので、なかなかうまく活用できないのだ。
なので、もともと生分解性を持つ材料で、陸上の空気中ではなく、海洋中でのみ分解反応が進む、というのを見つけ出す必要があるよ。

実は、長野オリンピックの時に生分解性プラスチックは話題になり、会場でもプラ容器として使われていたのだ。
乳酸が重合したポリ乳酸が有名だよ。
でも、このポリ乳酸は確かに微生物により分解されるんだけど、そんなやわではないのだ(笑)
普通に置いておいたんじゃダメで、湿気のある堆肥の中に埋めておかないとダメなのだ。
まず水により加水分解が進み低分子化し、それを微生物が分解するというわけ。
実際にはそんな環境の中に廃棄されることは少なく、せっかくの生分解性という特徴が生かせていないみたい。
最近では、もともと生物由来で二酸化炭素の循環的には増減をもたらさないから、「カーボンニュートラル」な材料としてとらえられているんだって(生物が空気中の二酸化炭素を固定して作られた糖類が原料となっているので、最終的にまた二酸化炭素まで分解されても二酸化炭素の送料に変化はない、ということだよ。バイオ燃料とかと同じ考えだね。)。
確かに堆肥の中に捨てないといけないとなると、大量には使えないよね。

で、また東京オリンピックに向けて同じようなことを考えているわけで(笑)
環境省はプラスチック利用をできるだけ減らし、経済産業省は生分解性プラスチックの利用の拡大をしようとしているみたい。
でも、けっきょく長野オリンピックのレガシーは今にあまり生きていないんだよなぁ。
そのときだけ話題になるけど。
今回の話がそうならないことを祈るばかりだよ。

2019/06/22

茶色い木の実

フランスで「カフェ・ノワゼット(café noisette)」というと、エスプレッソに少しだけミルクを加えたもの。
コーヒーの色がノワゼット=ハシバミの実=ヘーゼルナッツの色になるからなのだ。
ここで言うノワゼットの色は、ナッツ自身の色じゃなくて、その外側の殻の色だよ。
ハシバミの実はドングリのようなずんぐりした形でドングリより少し大きく、少しクリームがかった茶色い色をしているのだ。

日本でヘーゼルナッツと言われているのはカバノキ科のセイヨウハシバミの実。
これは欧州・地中海地域の原産で、欧州では非常にメジャーな木の実なんだ。
古代の地層を見ても相当広い範囲で分布していたことが確認されているので、きっと古くから食用にされて人間が広めていったのだ。
グリム童話に掲載されている「灰かぶり姫(シンデレラ)」では、魔法使い(いわゆる「フェアリー・ゴッドマザー)」は出て来ず、小鳥たちがお母さんのお墓の横に生えているハシバミの木の枝からドレスや靴を落としてくれるんだよ。
小鳥たちがよってくる木だから選ばれたんだろうけど、その辺どこにでもあるような木なんだろうね。
和名の「ハシバミ」は東洋原産で、ロシア沿海地方から東アジア北東部に生えていたもの。
早いうちに日本にも渡ってきていて食用にもされていたようだけど、ヘーゼルナッツほどはメジャーにならなかったみたい。
ちなみに「ハシバミ色」というのはこの東洋のハシバミの色ではなくて、セイヨウハシバミの色のことのようだから、やっぱりあまり好まれていなかったんだろうね。

ところが、欧米の人たちはヘーゼルナッツが大好き。
そのまま煎ったものを食べるし、砂糖を加えてカラメル化したプラリネはお菓子によく使われる材料でもあるのだ。
アーモンドも多いけど、欧米のナッツ風味のお菓子の多くはこのプラリネを使っているよね。
チョコレートとも相性もよく、チョコレートに焙煎したヘーゼルナッツを粉にしたものを混ぜたのがジャンドゥーヤ(アーモンドの場合もあるよ。)。
もともとはナポレオン時代にカカオ不足を補うために考案されたらしいけど、このナッツ風味のチョコレートは今や基本中の基本だよね。
そして、欧米人が大好きなのは、イタリアのフェレロ社が作り出した大ヒット商品のヌテラ。
これはただのチョコレート・スプレッドではなく、ジャンドゥーヤ風味。
ただのチョコレート風味じゃ物足りないのかな?

そして、ノワゼットと言えば、「カス・ノワゼット(Casse Noisette)」。
これは日本語では「くるみ割り人形」だけど、仏語だと「ハシバミ割り」なのだ。
英語では「Nutscracker」で対象がかなり広いんだよね。
もともとは木の実類の固い殻を割る道具なので、英語の表現が正しいんだけど、フランスでは代表的な木の実として「クルミ(noix)」ではなく、「ヘーゼルナッツ(noisette)」が選ばれたということなんだろうね。
それだけ好かれているのか。
逆に、日本だと「ハシバミ」がマイナーだから、なじみのある「クルミ」が選ばれたんだろうね。
日本ではナッツというとピーナッツだけど、これは豆であって厳密にはナッツではないし、そもそも殻を剥くのに道具は必要ないからね。
こういうところにも文化の違いが出てきて面白い。

2019/06/15

フランスの子供がもらってくるもの

日本ではもうほとんど聞くことはないけど、フランスでは普通に子供の間に「シラミ」が流行るらしいのだ!
ウィキペディアで見ても、「先進諸国ではDDTなどの有機塩素系殺虫剤の使用によってその発生は激減した」とあるんだけど、フランスって先進国じゃなかったんでしたっけ?
子供のいる人に聞くと、普通に「シラミ発生中」というお知らせが学校から配布されるらしいし、テレビでもシラミとりシャンプーのCMを普通にやっているし。
フランスではまだ当たり前のもののようなのだ。
日本だと戦後すぐはひどかったようだけど、高度経済成長期以降はほぼ見ることがなくなっているのに・・・。

ヒトにつく「シラミ」は大きく2種類あって、ヒトジラミとケジラミ。
ヒトジラミはさらに2つに分かれて、主に頭髪につくアタマジラミと衣服につくコロモジラミがいるみたい。
ケジラミは性感染症でもあるから、不衛生な性的交渉でもらってきたりすることがあるんだよね・・・。
これは海外でそういうすることをする人が出てきていることなんかもあって、日本でも感染者が増えているみたい。
ヒトジラミの方はまず聞かないんだけど。

それもそのはずで、ヒトジラミの方は、毎日お風呂に入って頭を洗い、服も毎日交換してきれいに洗濯していれば防げるらしいのだ。
飲みの場合はヒトから多少離れても生活できるんだけど、シラミはヒトから離れては生活できないので、公衆衛生が改善されると自然と大流行はしなくなるんだよ。
日本でも戦後すぐは衛生上の問題が大きかったので学校でシラミ対策(今から考えるとすごいけど、頭にDDTを振りかけるなど)が行われたけど、それが改善されるとごくたまに感染者が出てくる程度になったのだ。
でも、フランスの場合は、毎日シャワーすら浴びない人も多いし、洗濯もあやしいからなぁ・・・。
それが原因か(笑)

子供たちの間で問題になるのはアタマジラミ。
感染して吸血されると無性にかゆくなるのだ。
で、頭をぼさぼさかくんだけど、その際に頭皮を傷つけてしまって血が出ることも。
そこから細菌の感染もあったりするので、けっこうまずいのだ。
そこで、殺虫剤入りのシラミとりシャンプーで駆除する必要があるのだ。
むかしむかしはまさに物理的にシラミを指などでとってつぶしたわけだけど、これが「しらみつぶし」の語源。
でも、到底取り切ることはできないので、今は普通に駆除剤を使うのだ。
ちなみに、コロモジラミの方はいったん衣服を煮沸消毒すればそこについているシラミは完全に駆逐で着るみたいだよ。
後は清潔な衣服を着るだけでよいのだ。

問題の感染経路だけど、フランスではよく「プールでもらってくる」と言われているみたい。
そのため、夏がシラミ対策のホットシーズンで、シラミとりシャンプーのCMも夏によく見るのだ。
でも、水を介しての感染はまず心配しなくてよいレベル。
もともと昆虫だしね。
問題は、タオルや水泳帽の貸し借りみたい。
キャンプでもうつされるというから、感染経路は同じようなものだろうね。
とにかく、シラミに感染した子が一人でもいたら、気をつけないといけないのだ。
その子が頭をかいた後に触ったものにはシラミやその卵が付着している可能性があるので、それは避けないといけないんだよね。
ま、学校じゃそういうのは無理だろうけど。

こういう話を聞くと、フランスの公共施設は使いたくなくなるよね(笑)
ま、地下鉄でさえ汚いから、もともと使う気もあまりないのだけど。
先進国の一因として、もう少し公衆衛生の概念を持ってほしいよ。
とにかく、毎日お風呂に入って清潔にしてほしい!

2019/06/08

でる前にはじく

最近「不良品」という言葉がちまたをにぎわせているね・・・。
どうしても出てきてしまうものだから、それをどうするかを考えなきゃいけない、と。
で、本来的な意味において、これは製造業における大きな課題なのだ。
できるだけ「不良品」がでないようにする、でも、そうしても確率的に出てくるので、それを流通に乗せる前に事前にはじくようにする、さらに、そのチェックもすり抜けてしまうやつがいるので、製品の品質保証をする、とたいていは三段階。

最初の段階の、「不良品」がでないようにする、というのは確かにそうなんだけど、実は、コストとの兼ね合いなんだよね。
粗製濫造であっても大量に安く作って、その中から「使えるもの」だけ選んだ方が安くつくこともあるのだ。
ある程度の工夫は必要なんだろうけど、どこまでお金をかけて精度を高めたとしても、完璧にエラーをなくすことは不可能なので、多かれ少なかれ、どこかで妥協することが大事なのだ。
そのときに重要になってくるのが「歩留まり」という概念。
できた製品のうち、「不良品」を引いたもので、通常は百分率で表すのだ。
歩留まり95%で10倍のお金がかかるのと、歩留まり80%で1/10のお金で済むのとでどっちを選ぶのか、みたいな感じ。

伝統的には、鋳造品なんかがわかりやすいんだけど、型に溶融させて金属を流し込んでねじや歯車を作ったりする場合、どうしても空気が入り込んだり、十分に金属が流し込めなかったりして「欠けた」ものができるのだ。
こういうわかりやすいやつだと、ほぼ見た目でできているか、できていないか判断できるんだよね。
実際には、中空になっていないか、などを調べるため、打検といってたたいて反響音を調べたり、重量を量って中まで詰まっているか確かめた理が必要なんだけど。
それでも、これくらいの検査ならかなり楽にできるのだ。
なので、こういうのは多少歩留まりが悪くても、早く安く作れるような製造方法が適しているわけ。

一方で、例えば半導体などのような製品だと、実際に電子材料として使ってみるまできちんとできているかどうかがわかりづらいものもあるんだよね・・・。
決勝レベルときちんとドーピングができているかどうかが性能の鍵になるから。
なので、こういうやつはできた半導体の一部をサンプリングして、実際に半導体としてきちんと性能を有しているかどうかを試験する必要があるのだ。
これにはそれなりの設備やコストがかかるし、全数検査もできないので、やっぱり最初にいかに品質が高いものを作れるか、というところにフォーカスした方がよいんだよね。
検査は「最終的にできていることを確認する」といった位置づけにして。
歩留まりを高めるには、より高い目標値を設定して製造して、実際の品質基準はもう少し低めのもので良品・非良品を判断する、というやりかたもあるよ。
いわゆる「高いタマを投げる」というやつだね(笑)

これを逆に利用して、たくさん製造する中で、規格外のもの、基準を満たさないものを不良品、基準を満たしているものを良品、特に優れたできになっているものを超優良品として更に別に分けることもあるのだ。
下手な鉄砲数打ちゃ当たる、で、千三つでいいものもできてくるので、それは別扱いにしようというもの。
半導体のようなものではそういうことはないけど、例えば、金属を磨いて鏡面を作る、みたいなものの場合、そもそも鏡面に大きなゆがみがあったり、くすみがあるようなものは不良品、普通に鏡面ができているものが良品、課なら胃高い精度でゆがみのない鏡面ができているのが超優良品、といった感じ。
良品は普通の材料として使われるだけだけど、超優良品は高い精度の求められる精密機械に回したりするのだ。
ロケットの部品なんかの場合だと、一品ものでそういうグレードの製品を職人技で作り上げていく必要があるんだけど、ある程度の量の需要があってそこまでお金がかけられないものなんかの場合は、こういうやり方を使うと効率的になるのだ。

というわけで、こういう良品・不良品の選別みたいな話は、その用途やコスト・時間の制約などでやり方が大きく違ってくるわけ。
単純に人の育て方には当てはめられないものなんだよね。
ものはもの、人は人ってことで。

2019/06/01

使い方いろいろ

現役官僚が覚醒剤と大麻の不法所持で逮捕されたのだ・・・。
職場が家宅捜索されて、机の引き出しの中から注射器が見つかったとか。
っていうか、職場で「キメ」てたの?
なんだかすごい話だよね。

覚醒剤って、いろんな形のものがあって、摂取の方法も様々みたい。
よくテレビドラマとかで見るのは白い粉だよね。
そのほか、粒の大きな結晶もあるし、カフェインなどもまざった錠剤になったもの、注射ですぐ打てるように水溶液になっているものなどなど。
どうも、摂取の仕方で「キマリ」方に差が出てくるようで、いろんな形態があるみたい。
でも、これは覚醒剤だけじゃなくて、薬物一般でそうなのだ。
市販薬でも病院で処方される薬でも、錠剤やら塗り薬やらいろいろあるよね。
あれは服用の仕方によって薬の効き方に差が出るからなのだ。

もっとも一般的なのは、「飲み薬」。
経口投与というやつで、錠剤になっていたり、カプセルに入っていたり、或いは、シロップ状だったりとこれもいろんなものがあるのだ。
でも、どれも口から摂取して胃から腸へ行く間に吸収されるものなのだ。
食前や食後に水で飲むだけでもっとも単純な摂取方法なので、原則としてこの形態が好まれるのだけど、欠点もあるんだよね。
その一つは、酸性条件下で分解されてしまうような薬剤には使えないということ。
胃を通るときにどうしても胃酸の影響を受けるので、酸で分解される薬は飲み薬にできないのだ。

もうひとつは、薬物の代謝の問題。
腸管から吸収された薬物は門脈という静脈に入って、まずは肝臓に送られるのだ。
肝臓は解毒の役割を担っているんだけど、薬物を分解する酵素をたくさん持っているところ。
ここでせっかく吸収された薬物が分解されことになるんだよね。
分解される分を織り込んで大量に服用すればいい、というときはそれでもいいんだけど、薬物の微妙な差で効果に大きな差が出る場合(例えば、少しでも多いと副作用が強く出るとか)は、この不確定要素は排除したいのだ。
こういうときは「飲み薬」にできないんだよね。
何より、錠剤などの「飲み薬」に適した形態にできない薬物(例えば油にしか溶けないなど)の場合も使いづらいよ。

そんな場合どうするか。
すぐに思いつくのは注射剤。
注射にも何種類かあって、一般的なイメージは、静脈に薬物の水溶液を入れるものだよね。
点滴とか麻酔薬とかそういうやつ。
これは肝臓を通らずに血流に回るので、肝臓での最初の分解を避けることができるのだ。
血液中の濃度をモニターしながら微妙なバランスで使わないといけないような抗がん剤なんかはこれ。
一方で、直接血管の中に薬液を入れない注射もあるんだ。
それが筋肉注射や皮下注射。

筋肉注射はその名前のとおり、筋肉に注射で薬液を入れるもの。
これは「痛い」注射だよ。
ワクチンなんかはこれを使うんだよね。
皮下注射というのは、皮膚をつまんで持ち上がったところ、筋肉と皮膚の間に薬液を入れるもの。
インスリンなんかがこれだけど、これは徐々に毛細血管に薬液が染みこんでいくのだ。
すぐに薬効はでないけど、じわじわときかせたいとき、局所的にきかせたいときなんかに使うよ。

で、経口投与の内服薬と注射して使う注射薬をのぞいたものが「外用薬」。
これにはいろんな種類があるよ。
まず、ぜんそくの人におなじみなのが吸入薬。
プシュっと薬液を噴霧させて、それを吸い込むのだ。
これは口腔内、鼻腔内、気道の粘膜から薬液が吸収されるよ。
この方法も肝臓を通らずに薬物を血流にのせられるという利点があるのだ。
ただし、粘膜からの吸収がよい薬でないと使えないし、粘膜からの吸収は量的なコントロールは正確にできないので、吸収量をそんなに厳密に考えなくてよいときにしか使えないのだ。
ただし、けっこう吸収が早いので、ぜんそくやその他のアレルギーの発作によく使われるよね。

同じように粘膜から吸収させるものには、点鼻薬、舌下錠(トローチ)、座薬などがあるのだ。
点鼻薬は名前のとおり鼻の穴にさして薬液をちゅっと出すもの。
主に耳鼻科でしか使わないね(アレルギー性鼻炎の薬とか)。
舌下錠は心臓の薬のニトログリセリンなんかに使うけど、口の中で徐々に溶かしてじわじと口腔粘膜から薬物を吸収させるのだ。
かんで飲んだらダメだよ。
座薬はおしりに入れるもので、腸管粘膜から吸収させるよ。
実は、経口投与で腸管から吸収される場合と血流への入り方は変わらないんだけど、口から腸管まで移動する時間が短縮でき、すぐに薬物が吸収されるので即効性があるのだ。
子供の急な高熱を下げたいときに座薬を使うのはこのためだよ。
「飲み薬」だときくまでに時間がかかるのだ。

「目薬」、点眼薬というのもあるよね。
これは目の表面から吸収させるもの。
でも、ちゃんとした目薬のさし方をしないと、涙管を通って鼻に抜け、のどから胃に行ってしまうのだ・・・。
目薬をさしたときにちょっと苦いと感じる場合は、余分な目薬を「飲んで」しまっているので注意が必要だよ。
目薬は一滴だけさして、指した後すぐに目頭を軽く指で押さえ、のどに行かないようにしなくていけないのだ。

最後は「塗り薬」や「貼り薬」。
これは皮膚の表面に薬物を塗るもの。
皮膚表面から吸収させる場合はほぼほぼ血流にのるまでは浸透しないので、塗った周辺に局所的にきくのだ。
筋肉痛に使う痛み止めのシップ(インドメタシンなど)や皮膚を切開するときなどの局所麻酔などなど。
どの家庭にもだいたいある「オロナイン」は抗菌作用のある塗り薬だよ。
血流に入らないというのがポイントで、全身作用はないけど、局所的に作用させられるところがミソなのだ。

というわけで、薬はものによっていろんな使い方をするんだよね。
それぞれの薬の形態にはきちんと意味があるのだ。
副作用につながるおそれもあるので、正しく使わないと!

2019/05/25

ウィーンからリエージュへ

フレンチのデザートの定番の一つに、カフェ・リエジョワやショコラ・リエジョワというのがあるのだ。
なんてことはなくて、コーヒーアイス又はチョコレートアイスを使ったパフェのような冷たいデザートだよ。
たっぷりの生クリームが添えられていて、そこにコーヒーシロップやチョコシロップがかけられるんだ。
思った以上に大量に出てくるから、かなりの食べ応え・・・。

「リエジョワ(léigeois)」とは、ベルギーの都市であるリエージュの形容詞形。
つまり、「リエージュ風の」という意味だよ。
でも、このデザートはフランス発祥で、ベルギーは全く関係ないんだって!
この名前になったのには、歴史があるようなのだ。

最初は、カフェ・ヴィエノワ(café viennois)、つまり、ウィーン風コーヒーという名前だったのだ。
日本ではウィンナー・コーヒーと言えばホットコーヒーに生クリームを浮かべたものだけど、フランスではコーヒーフレーバーのアイスに生クリームを添えたデザートを指していたみたい。
これが、第一次世界大戦を契機として名前が変わったんだ。
当時、フランスはドイツに攻め込まれようとしていたんだけど、フランスとドイツの間にあって、フランス国境にも近いリエージュの街がドイツ軍が想定していた以上の抵抗を見せたため、攻めあぐねていたのだ。
この当時、ベルギーは中立国で、実は軍隊はぼろぼろ。
ドイツ軍は最初からなめてかかっていたようで、それが侵攻計画を狂わせる要因にもなったようだよ。
で、この時間稼ぎによりフランス軍は体勢を立て直すことができ、パリまでは攻め込ませず、ドイツ軍を退けたのだ♪

このことに敬意を表し、また、ドイツの友軍であるオーストリアの都市名を嫌って、カフェ・ヴィエノワのことをカフェ・リエージュと呼ぶようになったんだって。
なので、もの自体はリエージュやベルギーとは全く関係ないのだ。
でも、その後ドイツ軍に占領されたリエージュでは、いまだにカフェ・ヴィエノワと呼んでいるそうだよ(笑)
フランスの一方的な片思いだね。

で、そのコーヒー・フレーバーをチョコレート・フレーバーに応用したのがショコラ・リエジョワ。
こっちは派生型だね。
ちなみに、ショコラ・ヴィエノワというのもあって、これはホットチョコレート(chocolat chaud)の上に生クリームを載せたもの。
つまり、ウィンナー・コーヒーのコーヒーがホットチョコレートになったもの。
これはややこしい。

ちなみに、「リエジョワ」と言えば、ワッフルにもあるんだよね。
ベルギー・ワッフルには2種類あって、ブリュッセル風とリエージュ風があるんだ。
ブリュッセル風はやわらかい生地を薄く長方形型に焼いて、上にクリームやフルーツを載せた食べるようなやつ。
生地はさっくりふわふわという感じ。
リエージュ風は硬めの生地をまるく厚く焼いたもので、マネケンとかのワッフルはこれだよ。
もちっとした生地の中に中に粗目なんかも入っていて、その食感も楽しめるのだ。

2019/05/18

粒入り紅茶

なんでも、パリにもタピオカ・ミルクティーの店ができて繁盛しているらしいのだ。
やっぱり台湾系のお店のようだよ。
テレビでも見たんだけど、繁体字の感じでもメニューが書いてあったのだ。
パリの中華はベトナム系の人たちが経営しているものが一番多く、次いで、中国本土から戦前に安価な労働力として移民してきた人たちのもの。
中国人がやっているお店は四川料理とか山東料理とか地域色がしっかり出ているのが特徴。
でも、ニセ寿司店を経営している場合のが多いけどね(笑)
で、台湾系は正直あんまり見ないのだけど、進出してきているのかな?

純粋にタピオカという食材だけで言えば、中華とかベトナム料理のお店には「タピオカ・ココナッツミルク」が「Perles de Coco」という名前であるのだ。
小粒の透明タピオカが甘くしたココナッツミルクに入っているやつだよ。
日本でもよく見るよね。
なので、おそらく存在は知られていたんだよね。

タピオカは、ブラジル原産のキャッサバの根茎からとられるデンプンのこと。
キャッサバ自体には皮などにシアン化合物が含まれていて有毒なので、むかしからデンプンだけをとりだして食べていたようなのだ。
コンニャクみたいなものかな?
で、その製造法のことを現地語で「トピオカ」と言うらしく、そこから名前がついたみたい。
デンプンを抽出した後に回転させながら乾燥させると粒状のタピオカ(タピオカパール)になるんだって。
おそらく回転速度とか乾燥時間で粒の大きさが変わるんだろうね。

タピオカの特徴は、グルテン・フリーで、タンパク質もほとんど含んでいないこと。
非常にもちもちした食感が出せるので、グルテン・フリーの麺類に練り込まれたりもするみたい。
ポン・デ・リングのようなもちもち系ドーナツの生地にも入っているよ。
一時期はやった白たい焼きの生地にも。
タピオカ入りのもちもちワッフルなんてのもあるよね。

デザートやミルクティーに入れる場合は、乾燥している粒状タピオカを水につけた後で煮てもどすよ。
温かい状態では表面がねばねばしているんだけど、これを水で「しめる」とぷりっとした食感の粒になるのだ。
粒の大きさで戻す時間は変わるらしいけど、ミルクティーに入れるような大きな粒はかなり時間がかかるみたい。
ゆでるときのお湯が少ないと粒同士がくっついてしまうんだけど、逆にこれを利用して、型に入れてつぶつぶの食感があるゼリー状に加工されることもあるのだ。
それがタピオカ・プディング。

タピオカ・ミルクティーと言えば、タピオカの粒をそのまま吸える太いストローが特徴だけど、EU地域ではプラスチック・ストローを廃絶する方向だから、今後どうするんだろう?
さすがにあの太さの紙ストローというわけにもいかないと思うけど。
意外とストローのせいで欧州では消えてしまうかもしれないね・・・。
どうなることやら。

2019/05/11

パリの道

日本の住所表記は「街区方式」という世界的には珍しいもので、街の名前の後に丁目と番地が続くのだ。
つまり、まず、「町」として一定の範囲が指定され、その中で番号が振られているわけ。
「町」の名前さえ聞けば大体どのあたりに住所があるのかがわかりやすいのが特徴。
でも、「町」の中での丁目と番地の振り方には規則性はあるとは言え、わかりづらいんだよね。
特に昔ながら狭い路地があるところだと特に。
でも、この住居表示が一般化する前は、登記簿と同じ地番で管理していたので、もっとわかりにくかったんだよね・・・。

一方、フランスをはじめとして、欧州各国は基本は「道路方式」。
建物の正面玄関が接している道路の名前と番地で指定するのだ。
「○○通り××番地」という感じ。
この場合、「道路」の長さにもよるんだけど、住所を聞いただけではどのあたりに住所があるのかはっきりとはわかりづらいんだよね。
ま、その「道路」をずっと行けばいつか行き着くわけだけど(笑)
パリ市内の場合は1区~20区まで区割りもあるので、それも会わせるとそれなりには絞れるのだ。
でも、「町」という割と狭い範囲での指定になれている日本人には正直わかりづらい。
最寄りのメトロの駅とか目立つ建物とかとあわせて聞かないとぴんとこないんだよね。

その住所表記に使われる「道路」にはいくつか種類があるのだ。
基本は「rue(ルー)」。
これは道の両側に建物がある通りのことで、通常はそこまで道幅は広くないのだ。
フランスの場合は路駐が基本なので、日本で言うところの二車線の幅はあるんだけどね。
行き止まりになると「impasse(アンパス)」、少し広くなった広場に面しているところは「place(プラス)」になるよ。
建物の「中」を通るようなものは「passage(パッサージュ)」、これは「抜け道」という意味。
それにしても、この住所表記を維持するためには、どんな狭いものでも、すべての「道路」に名前をつけないといけないんだよね・・・。

で、広い道路になると、「avenue(アブニュー)」や「boulebard(ブールバール)」というのがあるのだ。
これらはともに街路樹が植えてあるような広い道。
「avenue」はもともと大通りのことで、語源は、ラテン語の「a(英語で言うto)」+「venue(近づく)」ということで、「~へ至る道」ということのようなのだ。
家々が並んでいる道と言うよりは、街中の基幹的な道ということなんだろうね。
パリの場合、オスマン知事による再開発後は、基本的には放射状の街路を「avenue」と呼ぶことになっているのだ。
シャンゼリゼ通りは凱旋門から放射状に伸びる道の一つなので「avenue」だよ。
江戸市中で言うと「街道沿い」がこれに近いのかな?
東京で言うと、靖国通り(旧青梅街道)、本郷通り(旧日光街道)、玉川通り(旧大山街道)などなど。

もうひとつの「boulevard」は環状の街路。
もともとは街区を囲む城壁を壊して、その跡地を道にしたところを指していたのだ。
パリの街は何度も拡張されていて、そのたびに城壁も外へ外へと広がっているんだよね。
最終的な城壁後は「périphérique(ペリフェリック)」という、パリの外周を回る高速道路になっているよ。
その内側にも古い城壁後の道があって、それが「boulevard」なのだ。
でも、現在「boulevard」と呼ばれている道の中には、必ずしも城壁があったわけではないところもあるみたい。
こういうのがややこしいよね。
東京の場合、ご存じのとおり城壁なんかなかったのでぴったりと当てはまるものはないんだけど、イメージ的に近いのは環状の主要道路だね。
内堀通り、外堀通り、外苑東通り・三ツ目通り、外苑西通り・四ツ目通り、明治通り、山手通り、環七、環八、東京外環・・・ってな感じ。

ボクが1年だけ住んだことのある米国の首都、ワシントンDCなんかは何もないところに計画して作られた都市なので、かなり「道路方式」でも住所がわかりやすいんだ。
連邦議会議事堂(US Capitol)を中心としてNE(北東)、SE(南東)、NW(北西)、SW(南西)の4つの地区にわけ、そのそれぞれで、東西方向の道はA、B、C、D、・・・と、南北方向は、1、2、3、4、・・・と道の名前を振っているのだ。
格子状の構造なので、どの地区のどの道とどの道の交差するあたり、と指定されればすぐに住所が特定できるシステムだよ。
札幌に近いのかな?
ちなみに、放射状の道もあって、それは州の名前がついているのだ。
大統領官邸のホワイトハウスは「ペンシルバニア通り1600」だよね。

ただし、これとは別に、古い地区名も残っていて、ヴァージニア州のアーリントン郡とポトマック川を挟んだ向かい側にあるあたりはジョージタウン、その先はフォギー・ボトムなどなど。
これらは植民地時代の小さい街だった頃の名残みたい。
今でも地下鉄の駅名なんかに残されているよ。
これはパリも同じで、モンパルナスだとかモンマルトルだとかはそういう古い地区名なんだよね。
「道路方式」の住所表記を使うと言っても、やっぱりそういうのがあった方がわかりやすいから残っているんだろうなぁ。

2019/05/04

五月待つ祭り

日本では5月1日は即位・改元の日だったけど、おフランスでは労働者の権利要求の日であるメーデー。
モンパルナスからイタリア広場までデモ行進が行われたんだけど、まじめに示威活動をしながら行進している人々の横で暴れている連中が・・・。
警官隊と衝突し、車を破壊し、発煙筒をともし、何かに火をつけ、とやり放題!
さんざん毎土曜日に「黄色ベスト」で暴れているのに、まだ暴れるか、とあきれるよ。
今回は左岸がメインだけどね。

フランスは長らく社会党が政権を担っているだけあって、メーデーは「労働者の日」として祝日なのだ。
なので、デモ行進が行われるわけ。
もともとは、欧州全域で行われていた「五月祭」が起源で、夏の訪れを祝うものなんだとか。
確かに、欧州は冬が長く、くらい時期が多いから、明るく、あたたかくなってきた5月くらいにお祝いをするのもうなづけるよ。
で、このお祭りは割と重要な位置づけだったらしく、近代に入ってからは、労使双方が休戦し、このお祭りの日だけはともに祝う、という感じになったんだって。
それが転化して、「労働者の祭り」、現在のメーデーになったようなのだ。

そのきっかけは、1886年にシカゴで行われた労働者のストライキ。
国際的な連携を持って労働者の権利を訴えようと欧州にも広がり、1890年には欧米で一体的に第1回国際メーデーが実行され、今に至るようだよ。
で、おそらく欧米の各地で労働者のデモは行われるんだけど、毎年のように逮捕者が出るのはおそらくフランスくらいではないのかなぁ。
なんか過激に暴れるんだよね。
日本はそもそも祝日でもないから、日比谷公園でデモ集会があるくらいのイメージしかないけど。

実は、欧州において5月頃に夏の到来を祝う、というのには、もうひとつ大きな意味があるのだ。
それは、麦の収穫。
古代ローマの5月祭は、豊穣の女神マイアに供物を捧げ、夏の豊穣を予祝するお祭りだったようだよ。
小麦も大麦も、基本は秋に種をまき、越冬の後に初夏に収穫するのだ。
だから初夏のこの時期のことを「麦秋」と呼ぶんだよね。
なので、5月1日はちょうど実が実り始める頃。
しっかり実るように神に祈っていたわけなのだ。
今となってはまったく関係のない日になっているような・・・。
でも、この頃の習俗も欧州各地に残ってはいるようだよ。

ちなみに、日本の場合は主に秋祭りがメインだよね。
これは稲の収穫が終わった後、神に今年収穫した稲を捧げ、来年もまたよろしくと更なる豊穣を願うのだ。
なので、「収穫祭」に当たるもので、収穫の前に豊穣を願う5月祭とは少し毛色が異なるよ。
夏祭りもあるけど、こちらはどちらかというと無病息災を願うもの。
京都の祇園祭がその最たるものだけど、かつては「御霊会」と呼ばれ、疫神を退け、健康を願うものだったのだ。
衛生状況のよくなかったむかしは夏場に疫病が流行りやすかったのがあるんだろうね。

一方、地方にこの疫病払いの習俗が広がって行くにつれ、一部では、秋の収穫に向けて豊穣を願う、というのも混ざってきたようなのだ。
米作には、梅雨と夏の台風による降雨がマストでもあり、リスクでもあったから、適度な降雨をお願いします、っていうのにちょうどよい時期でもあるんだよね。
田植えも終わり、その労をねぎらうとともに、これから上げしくなる農作業に備えることも重要だったのだ。
青森の「ねぶた」や弘前の「ねぷた」、秋田の竿灯、なんかは、夏期に襲ってくる眠気を払い、厄災を水に流す、という意味合いらしいけど、ちょうど疫病払いと秋の収穫に備える、というのが混ざり込んでいる感じだよね。

ちなみに、欧州にも秋の収穫祭はあって、果物や木の実の収穫を祝ったり、ワインやビールのできを祝ったりとそれぞれの地域でいろんなお祭りがあるみたい。
古代ローマでは、11月1日に果物の女神ポーモーナを祝う祭りがあって、リンゴをシンボルとしていたようなのだ。
これがケルト人に伝わると、ケルトにお新年祭りと習合し、ハロウィンが生まれるんだよね。
ハロウィンの方も全くもって収穫祭のイメージはなくなっているけど。

2019/04/26

火気厳禁

パリのノートルダム大聖堂の火災はいまだに大きなニュース。
パリの街のあちこちでも再建のための寄付を求めるポスターをよく見かけるよ。
すでにけっこうお金は集まっているみたいだけど、あれってどれくらいの費用がかかるんだろうね。
どこまでどう復原するかとかでも変わってくるんだろうけど。

そんな中、火事の原因について、新情報が!
やっぱりというべきか、火気厳禁だったはずの改修現場で喫煙していた事実が発覚したって!
その業者はたばこが火事の原因ではないと言い張っているけど、こっちはポイ捨て文化だからなぁ。
火がついたままたばこの吸い殻をすてて、かつ、それを踏んだりしないので、火のついた吸い殻が風でころころと移動する可能性もあるのだ・・・。

当初疑われていた、作業用エレベーターの漏電という線はなさそうとのこと。
燃え方を見ると、火の元はどうも大聖堂内部じゃないかと見られていて、そのエレベーターはちょっと距離があるようなのだ。
ま、まだわからないけど、
で、とりあえず作業関係者とかにさらに話を聞いているらしいよ。

フランスでは、EU指令に従い、公共の場所では原則として喫煙は禁止。
レストランとかカフェも中は禁煙なんだけど、テラス席は喫煙可としているのだ。
でも、パリなんかは条例で路上喫煙も禁止されているんだけどね・・・。
オープン・スペースで灰皿が設置されているからよいという判断なのだろうか?
きわめてグレーだと思うんだけど。

パリで最初に路上喫煙が禁止されたとき、まだ街中には吸い殻捨てがあったんだよね。
通常はゴミ箱の横に「つば」のようなものがついているのだ。
そこで火をもみ消して、吸い殻を捨てる感じ。
でも、これがあるからか、一向に路上喫煙が減らなかったんだって。
そこで、この吸い殻捨てをなくしたところ・・・。
ポイ捨てが激増した!

っていうか、路上喫煙をやめるわけじゃないんだ。
なので、パリは街中ポイ捨ての吸い殻だらけ。
せっかくきれいな街並みと言われているのに非常に残念な感じ。
犬たちの「落とし物」とともに、パリの道の害悪なのだ。
そして、前にも言ったように、火がついたままぽいっと捨てるんだよね。
横にベビーカーがいようとお構いまし。
っていうか、ベビーカーを押している親が喫煙しながらだからね。

そんあわけで、ポイ捨てされたばかりの吸い殻はまだ火がくすぶっているのだ。
それが風でころころと建物の方に行くこともしばしば。
だけど、こっちの建物は基本は石造りなのでそれくらいじゃ燃えないみたい。
日本だったらすぐに火事になるだろうけど。
そんなのもあって、基本的に「火の気」に対しての注意が散漫なような気がするよ。
日本では古来より「付け火(放火)」の罪は極めて重いけど、こっちではそうでもないみたい。
デモとかでもすぐにゴミ箱に火をつけて燃やすしね。
これを機に、ポイ捨てをやめる、最低限火は消す、ってことを徹底しないとダメだと思うんだけどなぁ。

2019/04/20

浄財

パリのシンボルともなっているノートルダム大聖堂で火災があったのだ!
リアルタイムで尖塔が焼け落ちるのが中継されていたんだよね・・・。
まだ原因は究明中とのことだけど、世界中で文化財の火災対策の総チェックが行われているみたい。
日本でも、戦後すぐに放火で金閣寺(鹿苑寺舎利殿)が焼失したけど、これはひょっとするとそれ以上のショックな出来事なのかも。

ノートルダム大聖堂は12世紀に建設が着工されたもので、所在地であるシテ島はガリア人の街だったルテティアの中心地でもあったところ。
まさにパリの古代以来の中心地に建つシンボリックな教会だったのだ。
パリの大司教座でもあるんだよね。
世界遺産「セーヌ河岸」の重要な構成要素でもあるので、観光にもダメージがあるかも。
でも、すでに再建に向けて莫大な寄付が集まっているんだよね。
「黄色ベスト」の人たちは、自分たちは貧困にあえいでいるのに、なぜこの件ではそんな大金がすぐに集まるのかと憤っているらしいよ。

日本でも、宗教施設の修復や再建のために寄付を集める、というのは伝統的に行われてきているんだよね。
宗教者が布教・伝教しながら寄付を集めて回るのが「勧進(かんじん)」。
人々が自主的に寄付するのが「寄進(きしん)」。
これら2つはそうやって使い分けているらしいよ。
確かに、お寺や神社の修復・再建の費用をまかなうために開催される相撲興行は「勧進相撲」だよね。
「勧進」の場合は「寄付(donation)」というよりも、「資金調達(fund raising)」という意味合いが強いのかも。

同じようにお寺や神社が資金集めに行っていたのは「富くじ」。
東京では、谷中感応寺(現「天王寺」)、目黒瀧泉寺(目黒不動)、湯島神社(湯島天神)の3つが有名だよ。
寺社の大収入源なんだけど、はっきり言えばギャンブルなので、幕府はたびたび禁令を出していたようなのだ。
で、その流れで、官営の宝くじにつながるんだよね。
今でも刑法上は私的に富くじを興業すると罰せられるよ(刑法第187条)。
でも、阪神淡路大震災の後も、東日本大震災の後も、「復興宝くじ」が販売されたから、伝統的な「勧進」の伝統は息づいている気がするね。

すでにフランスでは大金が集まっているから関係ないけど、せっかくだから、売り上げをそのまま寄付するチャリティのオペラやバレエ公演とか、フランスらしいものを考えてみてもよいかもね。
そうすれば、毎土曜日に暴れている「黄色ベスト」の人たちもあまり怒らないかも。
いずれにせよ、この後十数年かけて修復するそうだから先が長い話で、お金があるだけあった方がよいはずなのだ。

2019/04/13

つけこんで、つけこんで

日本ではわりと有名なシャリアピン・ステーキ。
でも、これって日本オリジナルなんだって。
あらかじめタマネギのみじん切りに肉をつけておくことでやわらかくするんだよね。
来日していたオペラ歌手のフョードル・シャリアピンさんの求めに応じて作られたそうなんだけど、歯の調子が悪くて柔らかいステーキが食べたかったそうな。
そんな状態でも肉なんだね・・・。

欧米では、基本的には肉は赤身が好まれることもあり、基本的にはかたいもの。
それをがしがしと食べないと食べた気がしないとか。
日本に来ると薄い肉ばかりで肉を食べた気がしない、という感想も出るほど。
でも、最近は和牛が出回っていて、霜降りでやわらかいのもあるから、意識は変わっているのかなぁ?
でも、肉を事前に処理してやわらかく焼く、というのはあまりない発想のようなのだ。

一方で、酢やつけ汁につけ込む、という調理法は一般的なんだよね。
フランス料理で言う「マリネ」がそれだよ。
これはフランス語のマリネにするの過去分詞から来ているようなんだけど、フランス語では、つけ込んだものは「marinade(マリナード)」と呼ばれるのだ。
酢漬けだけじゃなくて、レモン汁でも塩水でも油でも、なんでもいいみたい。
香草や香辛料と液体で下味をつけたり、香りをつけるのもマリネなんだって。
日本的な感覚で言うと、お酢ベースのつけ汁で漬けたものがどうしても頭に浮かぶけどね。

酢で漬けた場合、まずは殺菌作用で長期保存が念頭にあるんだよね。
これが野菜類の酢漬け=ピクルスだよ。
日本のなますもそうだよね。
肉の場合は、酢を入れた水で煮ると軟らかくなることが知られているのだ。
これは、筋肉と筋肉をつないでいる結合組織のコラーゲンがが熱により変性し、酢の効果により水に溶け出しやすくなるため。
変性コラーゲンは酸性条件下で水に溶けやすくなるんだよね。
ちなみに、水に溶け出したコラーゲンを集めたのがゼラチンだよ。

塩水などの塩分を含むつけ汁の場合は、浸透圧の違いで過剰な水分を取り除いてくれるんだよね。
野菜の場合は水分が少なくなってしゃきしゃきに(キャベツの塩もみなど)、肉や魚の場合は身が引き締まってぷりぷりに。
肉や魚の場合は、余計な水分が輩出されるときに水に溶けやすいくさみ成分も一緒に出て行ってくれるので、くさみ取りにもなるのだ。
ステーキを焼く前に塩を振るのはこのためだよ。

インドのタンドーリチキンなんかの場合だと、ヨーグルトにつけこむんだよね。
この場合は、くさみをとると同時に、ヨーグルト中の乳酸菌の働きでタンパク質がbんかいされてアミノ酸が遊離し、肉が軟らかくなってうまみも出るのだ。
実は、お酢やレモン汁でつけ込んでも肉はやわらかくなるんだけど、この場合は、肉の中が酸性になって、肉本来が持っているタンパク質分解酵素の活性が上がり、自己融解で筋繊維が切れていってやわらかくなるのだ。
最初は酸性条件下で加水分解が起こっているのかと思ったんだけど、加水分解って胃酸のような強酸の存在下でしか起こらない反応で、酢やレモン汁に含まれるクエン酸のような弱酸ではダメなのだ・・・。
そうだよね、そうでないとお酢を触っただけで手がただれることになってしまうから!

シャリアピン・ステーキの場合は、タマネギに含まれるタンパク質分解酵素の力で肉をやわらかくしているよ。
青パパイヤやパイナップルでも同じようなことができるのだ。
熟成肉の場合は、外の酵素でなく、じっくり時間をかけてもともと中にある酵素でタンパク質の分解を進めるんだけど、そのまま放っておくだけだと腐敗するので、冷涼で湿度の低いところで熟成させるのだ。
原理的には、日本の干物と同じで、乾燥と熟成が進んでうまみが増すんだけど、なんかイメージが違うよね(笑)

2019/04/06

R0

いよいよ新元号「令和」が発表されたのだ。
個人的な乾燥はともかく、慣れるまでは少し違和感はあるよね。
これは「平成」の時もそうだったから、仕方ない話だけど。
難癖みたいなのは別として、けっこう前向きな評価が多いよね。

この「令和」、確認されている中では史上初の「国書」を典拠とするもの。
これまでは、漢籍を典拠とする場合が多く、実際、「平成」を選ぶ際もその大原則に則っていたんだけど、今回は「万葉集」からとられたのだ。
ちなみに、ここで留保がついているのは、初期の頃の元号は根拠・典拠がよくわからないものも多いから(笑)
元号が使われ始めた飛鳥時代から奈良時代初期なんかは非常にシンプルというか牧歌的で、例えば、穴門(あなと)の国(現在の山口県)から白い生地が朝廷に献上されたから「白雉(はくち)」(最初の元号の「大化」の次)、縁起の良い雲が見えたから「慶雲」(「大宝」の次)、瑞亀(アルビノの白い亀?)が元正天皇即位に当たって献上されたので「霊亀(れいき)」などなど。

時代が下っていくと、文章(もんじょう)博士と呼ばれる専門職貴族が勧申(かんじん)という形で考案したものを上申していたのだ。
やはり複数案をあげて選んでもらっていたようだよ。
このように形式化してくると、その典拠もわりとしっかりと記録に残るんだけど、その前の話だと、よくわからないんだよね(笑)
一説には、日本書紀などの正史からとったものもあったのではないか、なんて言われているけど、不明な点も多いみたい。

今回の「令和」については、万葉集巻の5の「梅花の歌三十二首併せて序」からとられた言葉だよ。
万葉集の場合は万葉仮名という独特の表記表で書かれていて、和歌本体は漢語+表音文字としての漢字(万葉仮名)が入り乱れているんだけど、序文はすべて漢文。
今回の場合は、「于時、初春令月、氣淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香。」(読み下し「時ニ、初春ノ令月ニシテ、気淑(よ)ク風和(やはら)ギ、梅ハ鏡前ノ粉(こ)ヲ披(ひら)キ、蘭ハ珮後(はいご)ノ香(かう)ヲ薫(かをら)ス」)の「令」と「和」だよ。
奈良時代には花と言えば梅を指していて、日本人に最も愛されていた花だったのだ。
特に、まだ寒い時期から咲き始め、その色と香りで春を告げるところが好まれていたんだよね。
今回の元号にも新たな平和の時代の幕開けの意味が込められているようなのだ。

この三十二首の和歌というのは、太宰帥(だざいのそち)として太宰府に下向していた大伴旅人の邸宅での宴会で詠まれた歌と言われているんだよね。
ちょうど同じ頃、山上憶良は筑前守として同じく下向していて、その場に参加していたようなのだ。
旅人の歌は、「わが苑に梅の花散る久方の天より雪の流れくるかも(5-822)」、憶良の歌は、「春されば まづ咲くやどの 梅の花 独り見つつや はる日暮らさむ(5-818)」だよ。
旅人の歌では梅の作事気でありながら雪の降る情景が歌われているし、憶良の歌では、春に先駆けて咲く梅の花を愛でる様が詠まれているのだ。
こういう歌が三十二首並んでいるところの序文からとられたわけで、太宰に左遷されていた大伴旅人の主催とは言え、春の訪れを言祝ぐ場の歌を並べた箇所の序文なので、幸先がいいように思うのだ。

で、ついでに、御一新後、一世一元の制になってからの元号の出典も簡単に振り返るよ。
記憶に新しい「平成」は、「史記」五帝本紀の「帝舜」にある「内平外成(うちたいらかにそとなる)」や「書経」の偽古文尚書の大禹謨にある「地平天成(ちたいらかにてんなる)」からとったとされているのだ。
「帝舜」は古代中国五帝の一人の「舜」のことで、後に夏王朝を創始する禹を採用した聖君として知られる人物。
つまり、実在性もあやしい夏王朝ができる前の時代の神話的世界の物語なのだ。
偽古文尚書というのは、古文尚書の偽物なのでその名前があるんだけど、古文尚書は孔子の旧宅から発見された古典籍のうち先秦時代に使われていた蝌蚪文字(かともじ)という字で書かれた尚書のことで、これ自体は散逸してしまって現代に伝わっていないのだ。
ところが、その古文尚書を見つけたとして、東晋時代(4世紀初頭)に朝廷に献上されたものがあって、それが偽古文尚書。
古文尚書ではないとわかってはいるのだけど、それ自体古いものだし、貴重な文献として構成に長く伝えられているものだよ。

史上場最も長く使われた元号である「昭和」は、「書経」堯典の「百姓昭明、協和萬邦」(読み下し「百姓(ひゃくせい)昭明ニシテ、萬邦(ばんぽう)ヲ協和ス」)から来ているのだ。
実は、全く同じ文章から「明和」という元号が江戸時代中期に制定されているんだよね。
この後壮絶な戦争に突入していくとは思えないのだけど、国民の平和および世界各国の共存繁栄を願う意味を込めたんだって。
ちょうど「五族協和」とか言っている時代だからね・・・。
ちなみに、書経は中国古代の歴史書だけど、その中でも堯典は最も古い時代に対応する部分だよ。

その前の「大正」は、「易経」彖伝(たんでん)の「臨」卦の「大亨以正、天之道也」(読み下し「大イニ亨(とほ)リテ以テ正シキハ、天ノ道ナリ」)から。
当たるも八卦、当たらぬも八卦の、古代中国の卜辞(つまりは占い)のテキストである易経の解説書である彖伝からとられているのだ。
彖伝は六十四卦の卦辞(その卦の意味するもの)の注釈書のこと。
文庫本易経を読むとわかるけど、易経本文の解説として、「彖伝に曰く・・・」とか「象伝(しょうでん)に曰く・・・」と注釈書の記述も一緒になっているのだ。
ちなみに「臨」の卦は、「兌下坤上」というもので、「¦¦¦¦||」を右90度回転させたものだよ(笑)
これは明治帝から引き継いで次代の天皇も正しく治める、と言う意味が込められてそうなのだ。

最後に「明治」。
「大正」と同じく易経を典拠としていて、そのうち、天地雷風水火山沢の8つの卦(小成八卦)の説明をしている「周易説卦伝」という書物からとられているのだ。
「聖人南面而聴天下、嚮明而治」(読み下し「聖人南面シテ天下ヲ聴キ、明ニ嚮(むか)ヒテ治ム」)より。
古代中国では皇帝は時空の運行を司るものとされていて、極星(北半球では北極星)がそのシンボル。
自らは中心に座してそのまわりを星々が巡る、というイメージだったのだ。
ここから、支配者は北極星が他の星々を見るのと同様に、自らが北にあって南を向く、ということになっていたんだよね。
そうしてどっしりと南面して向かっていれば自ずと天下は明るく治まる、ということなのだ。
これも新たな時代の天皇の役割を意味しているんだろうね。

2019/03/29

芳香第一

おいしいと評判のバルサミコ酢をもらったのだ。
こういうのって日本で買うと高いんだよねぇ。
もちろん、パリで買ってもいいやつは高いんだけど(笑)
でも、まだ試してみようという気になる値段なのだ。
たしかに、外食していてサラダとか肉とかにかけてあるのはおいしいのだ。

「バルサミコ」というのは、イタリア語で「芳香のある」って意味なんだって。
つまり、香りの良いお酢、ということ。
原料はブドウの濃縮果汁で、長期にわたって樽の中で熟成させることで、少しとろみのある、濃い茶色の薫り高いお酢ができあがるのだ。
普通のワインビネガーはワインを徐々に酢酸発酵させていくんだけど、バルサミコ酢の場合は、ブドウ果汁をじっくりとアルコール発酵、酢酸発酵と進行させて行くみたい。

そのバルサミコ酢の中でも最高級の格付けのものが「トラディッツィオナーレ」と呼ばれるもの。
すなわち「伝統的」なものなのだ。
原産地標記規制(DOP)が法律で定められていて、エミリア・ロマーナ州のモデナ又はレッジョ・エミリアで作られた、12年以上熟成されたものだけが名乗れるんだって。
日本に入ってきているものの多くはモデナ産で、モデナ産の中でも25年以上熟成させたものは「ストラヴェッキオ(とても古い)」と呼ばれ、珍重されているらしいよ。
うちにも古くなってちょっと粘度が高くなってきたバルサミコ酢があるんだけど、あれは水分が飛んだだけか(笑)
ちなみに、これに準ずる製品というのがあって、それらは熟成期間が短いもの。
さらに、大量生産品では、着色料や香料、カラメルなどを添加してそれっぽく作っている熟成機関のさらに短いもの(数年)もあるとか。
これらは厳密に言うと類似品でバルサミコ酢じゃないよ。
これらは本物に比べると安いけど、それでも一般的なお酢よりは高級品みたい。
知らずにそれを使っている場合もあるかもね。

トラディッツィオナーレの場合は、原料は100%ブドウで、かつ、モデナ周辺で栽培される甘味の強い白ブドウのトレッビアーノ種だけが使われるんだって。
ぎりぎりまで収穫せずに甘味を増したブドウから果汁を搾り取り、布で漉してから水分が30~70%になるまで煮詰めるらしいのだ。
この時点で相当糖度を高くしているんだね。
この煮詰めた果汁は「マスコット」と呼ばれ、そのまま甘味料として使われるらしいよ。
これをお酢にするには、煮詰めた果汁をオークなどの樽に詰め、発酵させるのだ。
モデナ地方というのは冬には雪が降るけど、真夏は40度を越える暑さになるという寒暖の激しい土地柄。
この温度差で良いお酢ができるそうだよ。

そして、いったんお酢になってからは、樽の詰め替え作業を行っていくのだ。
詰め替えの際は、半量を次の樽に移し替えるんだけど、古くなったものに新しくなったものを加えていくんだって。
ウナギとか焼き鳥のタレみたいに継ぎ足していくイメージ。
こうして樽の移し替えをしつつ、さらに水分を飛ばしていき、さらに、熟成を行うのだ。
この際、樽から香りが移るので(これはウイスキーと一緒だね)、どの木材の樽にどう移していくかもポイントで、それで仕上がりの香りが変わってくるらしいよ。
通常は、オーク、クリ、サクラ、トネリコ、クワと徐々に小さい樽に移し替えるみたい。
最終的には、100kgのブドウが1kg弱のバルサミコ酢になるんだって!
これは高級品だ。

でも、なんだか製造法を見ていると、熟成だけなら日本でもできそうだよね。
寒暖差はばっちり。
でも、湿度が違うから酢酸発酵は厳しいのかな?
山梨で国産バルサミコ酢を作っている人たちもいるようだけど、味と香りの方はどうなんだろう。

2019/03/23

ダレトク?

時期的なものか、3月の後半になるとよくビジネスマナー関連の記事をネットで見るような気がするのだ。
4月から働く人たちがいよいよ迫ってきて気にするからなのかな?
実際入ってしまうと、ごくごく当たり前なものは別として、業界ごとにルールやマナーは異なるから、習うより慣れろなんだろうけど。

で、こういうのが出てくると、同時に、「こんなマナー必要か?」という意見も出てくるのだ。
マナーはもともと「他人を気遣う」というところから出てきているもので、その場にいる人がみんな不快にならないように互いに気を遣って、というのが定型化したものなんだよね。
その最たる例は食事の作法。
これは洋の東西を問わず、正しい食事作法というのがあるよね。
日本だと箸の使い方にうるさいし、イスラム世界だと食事には右手しか使っちゃいけないとか。

ところが、ビジネスマナーとなると怪しいものが多くなるようなのだ。
最近特にたたかれたのは、日本酒のとっくりを使う際、注ぎ口の切り込みを上に向けて注がなくてはいけない、とかいうもの。
注ぎ口って、液体を注ぎやすいように切り込みが入っているのに、それをわざと使わないなんて・・・。
これにはとっくり業界も苦い顔したわけだよ。

でも、一応もっともらしい理由があって、切れ込みが入っているので「縁が切れる」だとか、戦国時代は注ぎ口に毒を塗られることがあったのでそれを避けるのだとか。
なんとなくそれっぽい理由はあるのだけど、そもそもの「他人を気遣う」っていう観点ではないような・・・。
これをしてもらっても誰も喜ばないし、逆に、これをしなかったら不快に思うということもないよね。
まだビールを注ぐときはラベルを上に、の方がましなのだ(笑)

これと同じようなのが、取引先でお茶を勧められても飲まない(「空いてからの条件を飲む」につながるから)、座ることを勧められても三度までは座らない(三顧の礼か?)、稟議書のはんこはお辞儀をしているように少し傾けて押す、などなど。
これがきちんと定型化してみんなが従っていればまだ様式美にもなるんだけど、そこまで広まっていないからね。
もちろん、イスにかける場合は勧められてから、っていうのは就活でも基本中の基本の当然であるわけだけど、なぜ三度?

おそらく、これはビジネスマナーの普及に原因があるのではないかと思うのだ。
むかしからビジネスマナーの本というのはあるけど、正直そこまでまじめに広く読まれていたわけじゃないよね。
なので、その普及力には限界があったはずなのだ。
ところが、ネットで広まるとあっという間。
そもそも自分でお金と時間をかけなくてもかってにSNSで情報が入ってくることもあるし。
何より、こういうちょっと「意味不明」系のマナーは「なんだこれ?」ということで拡散されやすいんだよね。
また、テレビなどの媒体でもよく「マナー講師」を取り上げて、解説したりするよね。

さかのぼってみると、とっくりの注ぎ口や稟議書のはんこのマナーは昔からあったようなのだ。
あったいうのは広く行われていた、というのではなく、古いマナー本にそういう記述があったりする、ということ。
でも、本に書いてあるだけだと、それを見て変なマナー(?)があるものだ、と思うくらいで、知り合いにちょっと話す程度で終わり。
でも、SNSだと簡単に他の人と情報をシェアできるし、テレビで紹介されたりするとすぐに動画がアップされたりして、拡散力が違うのだ。

でも、一部の人はそれがマナーと思って実践しているから本などにも紹介されていたわけで、これが「地雷」要素なんだよね。
その点でいえば、今のようにすぐに拡散されて「これはおかしい」なんて意見が出てきた方が良いのだ。
それによって意味不明なマナーが駆逐されていくかもしれないから。
その方がむしろ健全化もね。

2019/03/16

フォンジュ

仏教の五戒の一つに「不飲酒(ふおんじゅ)戒」というのがあるのだ。
読んで字のごとく、お酒を飲んではいけない、というもの。
お酒がダメなのはイスラム教もそうだよね。
実は、ヒンドゥー教もお酒を飲むことを忌避する傾向があるんだって。
なので、どうしても東南アジアや南アジアの「地酒」と言われるとよくわからないのだ。
タイやベトナム、インドでは今はビールが有名のような気がするけど、これは暑くて蒸しているからだよね・・・。
キリスト教のように酒(ワイン)が宗教儀式と一体化していれば古代から伝わるものが残ったんだろうけど、そうはいかなかったのだ。

一方で、お釈迦様の時代の紀元前5世紀の原始仏教においてすでに「お酒を飲んではいけない」なんて戒律が作られているくらいで、何かアルコール飲料はあったはず。
それがあまりよろしくないということで禁止しているはずだよね。
では、それが何かが気になるのだ。
ヒントは、インド神話にあるみたい。

インドの神話には、どうも2種類の「酒っぽいもの」が出てくるんだよね。
ひとつは、神々の飲料である「ソーマ」。
何かの植物の汁から作るようなんだけど、詳細は不明。
古代インドの祭祀に用いられていた興奮性のある飲料のようで、「ソーマ」というのは原料となった植物に由来する名前みたい。
栄養と活力を与え、寿命をも延ばすという霊薬なのだ。
インド神話のヴェーダによれば、植物の知ると牛乳やバターを混ぜて攪拌して作るらしいんだけど、どうもアルコールっぽくはないんだよね。
高揚感や幻覚作用が主なようなので、ドラッグ系に近いのかも・・・。
効用的にはエナジードリンク的だけど。
植物の汁というのがポイントで、おそらく、カフェインやコカイン、興奮性、神経刺激性のある植物アルカロイドを含むものだと思うのだ。
後に、神々の飲み物で、飲んだものに不死を与えるアムリタ(仏教の漢語訳では「甘露」)と同一視されているので、神聖で、貴重で、素晴らしいもの、というニュアンスがあるよ。

もうひとつは、スラーと呼ばれるもの。
こちらは人々を酩酊させる飲み物で、特に悪性の酔いをもたらすものとされているのだ。
なので、スラーを飲むことは忌避される傾向もあったみたい。
これは今のアルコール忌避につながるかも。
ただし、古代インドの一部の祭祀ではソーマのように使われることも。
でも、飲み方を誤ると良くないなんて伝承があるそうなので、やっぱり悪いイメージがつきまとっているのだ。
おそらく、これが古代インドの酒なんだよね。

今となっては詳細は不明なんだけど、原料は、穀物系のデンプン、糖蜜(サトウキビの汁)、花の蜜なんかが想定されているよ。
東アジアだともっぱら穀物系の複発酵酒(デンプンを糖化し、その後アルコール発酵させるもの)がメインだけど、南インドまで来ると熱帯性気候なのもあって、糖蜜や花の蜜のようなものがそのまま自然発酵してできた酒があるようなのだ。
欧州には蜂蜜酒(ミード)があるけど、東アジアにはそこまで糖度の高い液体が手に入らなかったのかな?
果物が自然発酵する「猿酒」みたいなのはあったけど。

そこで注目したいのが、ネパールのどぶろくの「チャン」。
インド北部にも同じものがあるようだけど、コメ、ムギ、ヒエなどの穀物を煮た後、種麹となるムチャ(餅麹、穀物の粉と植物の汁を練って団子状にしてカビ=麹をはやしたもの)と混ぜ、発酵させるのだ。
発酵してきたら壺に移し加水するんだって。
比較的アルコール度数の低い微発泡性のどぶろくだよ。
どぶろくは甘くて飲み口がわりとよいのに、悪酔いしやすいから、イメージ的にもぴったりなのだ。
古代日本でも「口噛み酒」が神事に使われていたから、古代インドでも新たに収穫した穀物でどぶろくを作って神に捧げるとともに、自分たちもお祝いで飲んで騒いだんじゃないかなぁ?

2019/03/09

下に向けて書こう!

ネット掲示板の有名なコピペで、米国では宇宙空間でボールペンが使えないとわかったときに必死に大金を投入して研究し、宇宙でも使えるボールペンを作り上げたが、ソ連は鉛筆を使っていた」なんて話があるよね。
これはボールペンのインクは重力を使って押し出される構造になっているので、微小重力となる宇宙空間では使えなくなるからで、本当に米国国立航空宇宙局(NASA)は、インクをガスで押し出す「宇宙でも使えるボールペン」を開発したのだ。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の売店をはじめ、宇宙グッズを取り扱っている店では売られているよ。

欧米の文化では、まず、「つけペン」があったんだよね。
ペン先にインクをつけて書くもので、羽ペンとかガラスペンとかGペンが有名なのだ。
でも、この「つけペン」の場合はペン先にインクがあまり保持できないので、安堵も何度もインク壺にペン先をつけないと長い文章が書けないのだ。
その不便を解消したのが「万年筆」。
インクカートリッジから自動的にペン先にインクが補充される仕組みで、いちいちインク壺の中にペン先を入れる必要がなくなったのだ。
「万年筆」のインクは、毛細管現象でペン先に供給されるので、微小重力空間でも問題なく使えるよ。

でも、「万年筆」の場合、毛細管現象を使う必要があるので、インクは粘性が低いものでないと使えないんだよね。
つまり、書いた後しばらく乾かさないとすぐににじんでしまうのだ。
これを解消してくれたのがボールペン。
ボールペンの場合は、むしろ粘性の高いインクを重力によりペン先(ボールのある部分)に押し出しているんだよね。
ボールの裏側に粘性の高いインクが付着し、ボールが回転することでそのインクが紙面に転写されるのだ。
ボールペンの場合は、粘性の低いインクを使うと、ボールの隙間からインクが漏れ出てしまうので、むしろ粘性が高い方がいいんだよね。

ボールペンのアイデア自体は19世紀の終わり頃にはあったんだけど、技術が追いつかずに実現できなかったのだ。
まず、ペン先のボールを加工するのが難しく、そして、そのボールをはめ込んで液漏れしないようにペン先を作ることも難しいのだ。
第一世界大戦直前くらいのタイミングでハンガリー人が英国で特許を取り、できあがったのだ。
これが「Biro」で、今でも欧州ではボールペンの代名詞として使われているよ。

このとき使われていたのは油性インク。
でも、粘度が高いので、書き味はいまいちだったみたい。
万年筆に比べてかたい、そして、書き出しがどうしてもかすれる。
それでさほど普及しなかったのだ。
インクが改良されて書き味がよくなると、だんだんと普及していったみたいだよ。
何より、カーボン複写をするとき、筆圧を加えやすいので、ボールペンの方が使いやすいのだ。

時代が下ると、水性インクも出てくるんだよね。
そのままでは漏れてしまうので、中綿式といっていったん中綿にインクを吸わせ、そこからボールに毛細管現象でインクがしみ出してくるようにしたり、直液式といって、いったんコレクターと呼ばれるところに少量のインクを保留し、それがボールのところに出てくるようにしたりするなどの工夫をしているのだ。
さらに、水性インクをゲル状にして、ボールの先のところでだけゾル化するようになっているゲルインクボールペンというのもあるよ。
水性インクはにじみやすいけど、なめらかに書けるし、発色もよいのだ。
カラフルな色のボールペンは水性インクのものが多いみたい。

ボールペンで字を書くときのコツは、完全にそのメカニズムに依存しているよ。
まっすぐ立てて書く、これだけ。
紙面との角度は60~90度がいいみたい。
これは、インクが重力で押し出されるという構造をしていることと、ペン先のボールのついている部分(カシメ部)が紙面に触れないようにすることによるのだ。
そして、天井や壁に上向き、横向きでは書かない。
これはインクが押し出されないからうまく書けないだけでなく、下手するとボールの周辺に空気が入ってしまって、次ぎに書くときにインクがうまくしみこんでこなくなるおそれもあるからなのだ。

2019/03/02

要不要

食べ物の話は身近であるだけによく議論になるよね。
おでんはおかずになるか否か。
ラーメン・ライスはありかなしか。
きのこかたけのこか。
そして、カレーにジャガイモは必要か不要か。

歴史的に言えば、日本の国民食としてのカレーには、肉に、ニンジン、ジャガイモ、タマネギの三種の神器の野菜が入ったものがスタンダードのようなのだ。
そもそも市販のカレールーの箱の裏の「作り方」にそう書いてあるしね。
これは、カレーライスが普及した背景にも関係しているのだ。

カレー自体は明治の頃に英国から伝わったんだよね。
インドのカレーが英国式になって、それが輸入された感じ。
仮名垣魯文の「西洋料理通」におけるレシピでは、肉と長ネギとなっていた模様。
当時入ってきた英国式カレーは、肉にカレー味のソースをかける的な料理とカレー味の肉の煮込み料理の間の料理だったようで、日本では、カレー味の肉入りの汁物料理になっていたようなんだよね。
おそらく、長ネギは肉のくさみ消し。
そもそも、明治の初めの頃はジャガイモやタマネギのような西洋野菜はまだ一般的ではなかったのだ!

北大の前身である札幌農学校では、「少年よ大志を抱け」のクラーク博士が学生に米繁殖を禁止し、唯一カレーライスの時のみ米食を認めた、なんて話があるんだよね。
当時の日本人の体躯は今以上に小さく、それは米食を中心とする和食のせいだと考えられていたので、学寮での食事はパンによる洋食が基本とされていたのは事実のようなのだ。
クラーク博士が本当に米食を禁じたかどうかは別として。
でも、その中でカレーだけが例外になったのは、肉と野菜が同時に効率的に摂れる食事と見なされていたからのようなんだよね。
そして、その札幌農学校があった北海道の地では、気候が米国北部と似ていることもあって、学寮での洋食に使う西洋野菜が栽培されていたのだ!
そこで収穫されたタマネギやジャガイモがカレーにも使われたんじゃないかと考えられているよ。
こうして、タマネギやジャガイモが入ったカレーが生まれるのだ。

肉と野菜が同時に効率的に摂れる、という同じ理由でカレーは軍隊の食事としても奨励されるんだよね。
最初は海軍。
その際、長持ちするニンジンやタマネギ、ジャガイモといった野菜は使い勝手が良く、必然的にそれを使ったカレーがスタンダードになるのだ。
タマネギと豚肉の組み合わせはビタミンB1が大量に摂取できるので、海洋上の難敵「脚気」にも対抗できるというメリットもあったよ。
海軍のレシピでは、三種の神器の野菜が入るものになっているのだ。

海軍従軍者が家庭に「肉じゃが」を持ち帰ったという話もあるけど、カレーの場合は第二次大戦の引揚げ軍人が家庭料理に持ち帰ったと言われているんだよね。
なにしろ、そのときは陸軍従軍者の方がはるかに多いから。
すでに洋食屋ではライスカレーは定番になっているけど、それはあくまでも、「外食で食べる料理」。
これが家庭の味になるのは、やはり戦後なのだ。

陸軍でも現場で大量に作れ、栄養的に優れているカレーは重要な位置づけで、けっこう食べられたみたい。
今の自衛隊の炊き出しもカレーだよね。
そして、多少くさい肉(現地で調達した動物、場合によってはヘビやカエルなど)でも食べられるのが大きいのだ。
くさみをとるのは非常に重要で、自衛隊もレンジャー部隊必携の調味料はカレー粉だそうだよ。
そこに保存がきく野菜のニンジン、タマネギ、ジャガイモ。

この陸軍レシピが家庭に入り、カレーが一般家庭でも食べられるようになるのだ。
さらに、カレー粉と炒めた小麦粉を混ぜるのではなく、溶かすだけでいいルウが市販されるようになると、一気に簡単に作れる料理として普及するよ。
この後更にレトルトで手軽に、という大きな波も来るんだよね。
学校給食でも古米を消費するために米飯食が導入されると、まず最初に出されたメニューはカレーライスなのだ。
こうして、明治から昭和にかけ、カレーは家庭料理に入り込んでいくわけ。
で、普及したときは、ジャガイモ入りだったので、やはりそれがスタンダードなのだ。

一方で、本格派カレーとか言って、肉とタマネギだけの欧風カレーとか、新宿中村屋の本格インド式カレー、さらには、インド人・スリランカ人・ネパール人によるインド料理店の出現など、さまざまなカレーが食べられるようになってくるんだよね。
ジャガイモ入りのインドカレー(例えば、ジャガイモとナスの入った「アルベイガン」など)もあるので、ジャガイモがカレーの具材として変だという話ではないんだけど、外食カレーの場合、ジャガイモを入れるとどうしても傷みが早くなるので、避けられる傾向にあるのだ。
「外食の本格カレーにはジャガイモが入っていないから、ジャガイモが入らないのが正解」というのはそこが逆転した言説だよ。
一方で、神田の名店ボンディのように、蒸したジャガイモが別に出てくるような店もあるし、銀座の名店ナイルカレーのように、後でマッシュポテトを混ぜて食べるものもあるので、やはりジャガイモの甘さはカレーの辛みと合うものだと思うのだ。
ボクはコロッケも載せたいくらいで、カレーにはジャガイモが入っていてほしいね。

2019/02/23

○○は突然に

なんか流行り物があって、それによくわからずのってしまう人を「にわか」とか言って馬鹿にする風潮があるよね。
でも、かつてのサッカーのように、ライト層であってもそうやって裾野が広がっていくと全体のレベルが上がることもあるから、軽視はできないのだ。
そもそもが流行り物であって、そういう人がいるから流行ったんだろうけど、昔からそのことに関心を持っているそうにすれば、「ぽっと出の素人が!」という思いがあるのかもね。
で、まさにその「ぽっと出」というところが「にわか」なんだよね。

「にわか」、形容動詞では「にわかだ(古語は「にわかなり)」の本来的な意味は、
(1)物事が急に起こるさま、だしぬけ、突然
(2)かりそめであるさま、臨時的、一時的
(3)病態が急変するさま
の3つ。
(1)の「突然」という意味が前面に出ているのが「にわか雨」だよね。
この流れで、即興で突然始まる芝居を「にわか芝居」と呼んでいて、多くは素人の人が祭礼の場などで突然始めるものだったので、「にわか」には素人による即興芸のニュアンスが加わったようなのだ。

一方(2)にあるように、「かりそめ」という意味もあって、一時的なものであって本来のものではない、的なニュアンスもある言葉。
これが「にわかファン」といった言葉につながっていくのだ。
「にわか仕込み」という言葉は「付け焼き刃」とほぼ同意だけど、「その場しのぎでかりそめに仕込んだ」というネガティブな意味を持っているんだよね。
で、この二つのニュアンスが合わさると、「素人」+「かりそめ」となって、現代のネットでよく見られる罵倒語の意味につながっていくようなのだ。
考えてみると意外とちゃんとした流れがあるものだ。

現代での「にわか」は、「にわかブーム」のような使い方だと、「かりそめ」の「一時的」な「ブーム」という意味もあるけど、むしろ「突然降ってわいた」といったニュアンスもあるよね。
本来の「ブーム」というのはそういうものでしかないような気もするけど・・・。
少しだけ否定的なニュアンスが弱まると、「突然」の意味が強くなってくるみたい。
「にわか雨」のような「ブーム」は意味が通るけど、「にわか雨」のような「ファン」というのは少しわかりづらいから、やっぱり「突然」「と「かりそめ」が融合している中にグラデーションがあるんだろうなぁ。

ちなみに、(3)の意味は古語でしか使われないようだけど、「にわかになる」と言うと、「危篤状態に陥る」という意味になるんだって。
これはおそらく(2)からの派生で、「残りの生命ももうかりそめのようなもの」というところから来ていると思われるよ。
こっちの場合は否定的なニュアンスというよりは、「はかない」といったものさみしいイメージだけどね。
このイメージも更に追加して、間もなく消え去りそうなものに対して「にわか」という言葉を使うのもありなのかも。
「あの人は今」的な芸能人を「にわかタレント」と呼ぶとかね(笑)
だれかが使い始めれば広がるかもしれないなぁ。

2019/02/16

光あれ

フランスに来て2回目の歯医者にかかっているのだ。
東京で作った高級な歯のクラウンが割れてしまったんだよね(>_<)
なかなかこわれない、というから高い買い物をしたのに・・・。
でも、割れてしまったものは仕方ないので、現在修復の最中。
で、こういうことがあると、いろいろと歯科治療について調べちゃうんだよね。

そこで気になったのが、レジンによる修復法。
日本では公的保険適用なんだけど手間がかかるということであまりつかわれないみたいなんだけど、欧米では一般的のようなのだ。
いわゆる「銀歯」はアマルガム合金を歯の穴につめたものだけど、その詰め物をプラスチックに代えたもの。
見た目が白くできるので、修復の跡が目立ちにくいんだ。
それで好まれるみたい。

つめものに使うのは、コンポジットレジン(複合材合成樹脂)で、とろっとした液体状のものを穴に流し込み、その後、紫外光を当てると固まるという仕組み。
光を当てるまではかたまらないし、熱などをかけて乾燥させる必要もないので、わりと簡便に固められるのだ。
それも魅力の一つ。
ただし、紫外光を当てる装置が届かないところだと使えないんだよね。

ここで使われるレジンは光で固まる光硬化樹脂。
特に紫外線で固まるものなので、紫外線硬化樹脂というものが使われているよ。
固まる前はモノマー(一つ一つの分子が独立した状態)で、光を当てると重合してポリマー(多くの分子がくっついて大きな構造を作っている状態)になるのだ。
多くの場合、不安定な炭素・炭素二重結合があって、そこにエネルギーの比較的強い紫外線が当たると、その二重結合のうちの一本がきれ、となりの分子の同じようにきれたところと新たな結合を作ることでつながるのだ。
もちろん、もとのように自分の中で二重結合が復活することもあるけど、確率的に、まわりにいっぱいフリーの結合の切れている分子がいるので、他の分子とくっつくことが多くなるよ。
こうして一つの大きな分子につながっていくのが重合反応。

紫外線硬化樹脂の場合、この結合の切れ方に大きく分けて二通りあるのだ。
一つは、両方の炭素がそれぞれ電子を一つずつ持って電気的な中性な状態できれるもの。
これはラジカル型と言うよ。
電子対になっていない中性的な電子は非常に不安定で反応性が高く、似たようなラジカルを見つけるとすぐに反応するのだ。
もう一つは、片方が電子を持っていってしまって、2:0の割合で電子が分かれてきれい場合。
つまり、電子対をそのまま持って行ってしまうのだ。
切れ方として、真ん中できれいに切れるのか、片方は端から切れてしまうのかの違いかな。
この場合、電子対がある方はわりと安定的で、まわりの水素イオンと水素結合して電気的に中性になるんだけど、電子を全てとられてしまった方はとても不安定。
負の電荷を持っているものとすぐに反応しようとするのだ。
で、たまたまとなりに別の分子で電子対ごと持っていった切れ端が来ると、そこに新しい結合を作ってしまうわけ。
このときは、反応の中心が正の電荷を帯びているので、カチオン(陽イオン)型と呼ばれるよ。

いずれにしても、二重結合のうちの一本が切られ、そのままでは不安定なので、近くにいる同様に切れたものとくっつくという寸法。
紫外線を当てるとどんどん切れていって、すぐにまわりの同じようにきれたものとつながっていくのだ。
歯の修復に使うレジンの場合は十数秒ほどで固まるよ。
歯の型を取るときよりもはるかに楽なのだ。

でも、このレジンにも弱点はあるんだよね。
それは、割れやすいことと着色しやすいこと。
つまり、もろくてすぐに見た目が悪くなるのだ・・・。
でも、高くないものなので、定期的に入れ替えればいい、という意見もあるよ。
あまりに詰め物が固すぎると歯のかみ合わせに悪いから、詰め物の方が摩耗する方がいいんだよね。
それと、銀歯(アマルガム修復)の場合、どうしても水銀を使っていてそれが唾液中に微量に溶け出すという問題があるし、それ以外の金属イオンも溶け出して金属アレルギーの原因にもなるから、レジンの方がその点でも優れているのだ。
でも、日本だと高価なセラミックのクラウンを勧めてくるんだよね。

2019/02/09

オオカミに一番近いイヌ

パリの街中では、雨の日だろうが、風の日だろうが、犬を散歩させているんだよね。
しかも、リードを外して。
そう、ほとんど放し飼い。
でも、イヌの方がおりこうさんで、ちょっと飼い主から離れると後ろを振り返ったりするのだ(笑)
そのまま逃走したりはしないみたい。
で、そんな中、けっこう柴犬を見かけるんだよね。
欧州でも人気なんだって。
こっちで買うと日本以上に高いらしいけど。

柴犬は、言わずとしれた代表的な日本犬。
秋田犬や甲斐犬に並んで6大日本犬種のひとつなのだ。
あまり大きくならないこともあって、一番の人気種で、飼育頭数も多いんだよね。
飼い主にはなれるけど、見慣れぬ人には警戒心を持つので、番犬にも適していると言われるのだ。
日本人が犬と聞くと真っ先に思い浮かべるのは柴犬のイメージだよね。

ところが、あなどるなかれ、実はオオカミに一番近いイヌが柴犬だったのだ!
イヌの起源についてはずっと研究されていて、見た目からオオカミだろうとは思われていたんだけど、なかなか確たる証拠がなかったんだよね。
他に似たようなイヌ属の動物(ジャッカルやコヨーテなど)もいるし、何より、プードルからゴールデンレトリバーまで、イヌと言っても幅広いからね。
で、最近になった、ミトコンドリアのDNAの変異で系統樹のどのあたりで分岐したのかをさかのぼる研究が行われたのだ。
その結果、タイリクオオカミ(ハイイロオオカミ)がおそらく起源で、柴犬はかなり初期の方で分岐した犬種。
かなりオオカミの遺伝子を色濃く残す古代犬種だったのだ!
日本は島国で他と交雑しにくかったのがよかったのかな?

はっきりとしたことはまだわからないようだけど、おそらくイヌの家畜化が始まったのは東アジアで、それが広まっていったみたい。
日本でもすでに縄文時代にはイヌが人と一緒に埋葬されているそうだから、その頃にはもう狩りのお供だったのだ。
今でもイヌはオオカミと交配可能なんだけど、この広がっていく過程で、アラブや欧州に行く際に、その地方のオオカミの血も混ざったりして、さらに複雑に系統樹が分岐していったみたい。
系統樹をまともに作ろうとすると、どうしてもオオカミとイヌが混ざってしまうというのはそういうことなのだ。

その結果、一見一番オオカミに近そうに見えるシベリアンハスキーは、実は柴犬ほどはオオカミに近くはないのだ!
途中で他のオオカミの血とかが入っているのかな。
それでも、かなりオオカミに近い方の犬種ではあるんだけどね。
他にオオカミに近い犬種(=オオカミに近いDNAを持っている犬種)としては、チャウチャウ(赤犬)、アフガン・ハウンド、シャー・ペイ(中国原産のしわしわ犬)、秋田犬、ペキニーズなどなど。
シャー・ペイやチャウチャウのような中国犬種もわりと早い時期に分岐したもののようなので、そのときの古い血(遺伝情報)が残っているのかもね。
その中国犬から派生しているからペキニーズみたいなのもオオカミに近いとされてしまうのだ。
逆に言うと、欧州犬種は途中でいろんな血が混ざっているんだろうね。

最近では豆柴なんてのもあるけど、これは正式な犬種ではないんだよね。
比較的小型の柴犬同士を交配させたもので、小柄な柴犬というだけなのだ。
なので、突然大きくなったりもするんだよ。
豆柴だから大きくならないというのはあまり当てにならないのだ。
まだ小型になるという遺伝的形質が固定化できていないんだよね。
これもオオカミの血のなせるわざか?

2019/02/02

雨水を吐く怪物

パリの街ではカサをさす人が少ないんだよね。
さーっと降ってすぐにやむことが多いのもあるんだけど。
なので、基本は雨宿りか、フードをかぶるか、そのまま歩くか。
ボクはカサを持っていればさす方が多いけど、小雨ですぐやみそうなときなんかは、軒下から軒下へと雨宿りしつつ移動しようとするんだけど・・・。
思わぬところから水が降ってくる!
これは、雨粒ではなくて、バルコニーなどからしたたってくる水滴なのだ。

よくよくバルコニーの構造を見てみると、日本のような雨樋がしっかりと着いていないことが多いんだよね。
屋上に水がたまらないようにする雨樋はついていることもあるけど、バルコニーに至っては、何もないか、あってもそのままバルコニーから水を吐き出す管が出ているかだけ。
パイプで地面近くまで導くような雨樋はないのだ(>_<)
このため、雨が降ったいる最中や、雨がやんでからのしばらくの間は、建物の突起部分から水がしたたってくるんだよね。
これは地味にいらつくのだ。

どうも、ローマ時代には雨樋(rain gutter)はすでにあったそうだよ。
雨水を効率的に集めたいというニーズと、壁面や柱に自由に雨にぬれると傷みが早くなるので、それをさけるために「雨の通り道」を作りたいというニーズがあったようなのだ。
ところが、問題となったのはデザイン性。
どうしてもとってつけたようなものになるので、それをいかに工夫するか、ということで発達するみたい。
解決法は二つで、壁の内側に見えないように作る、というのと、開き直って装飾的に作ってしまう、というもの。
ま、フランスの場合は、鉄筋コンクリートなら雨で痛むこともないからいっそのことつけない、という選択肢があるようだけど・・・。

そんな流れで出てきたのが、大聖堂と呼ばれるようなよく大きな教会などで見る「ガーゴイル」。
あれは水の吐き出し口に悪魔のような形の像をつけ、その口から雨樋で集めた水が吐き出されるようになっているのだ!
出てきたのは12世紀のゴシック建築の時代。
なんと、フランス発祥だって。
ま、この「ガーゴイル」は地面まで水を導くわけではなく、かなりの高さのところから水を吐き出すだけなので、建物の近くに行くと思わぬところから水が降ってくる、というのは変わらないのだけど(笑)

ガーゴイルはフランス語ではガルグイユ(gargouille)。
これはラテン語の「のど(gurugulio)」から来ていて、もともとは水が流れるときのゴボゴボ言う音から来ている言葉なんだって。
「うがいをする」の「gargle」もここから来ているそうだよ。
ゴボゴボと集めた雨水をはき出すからガーゴイルなのだ。
ゴシック様式の建物とともにこの装飾が欧州十に広がったそうだよ。

ところが、ルネサンス期になってゴシック様式が廃れると、ガーゴイルも作られなくなってくるんだって。
これが復活するのは18世紀後半からの「ゴシック復興期」の時代。
ちょうどパリのノートルダム大聖堂の修復のときに活躍した、フランスの建築家のヴィオレ・ル・デュクさんなどが大きな役割を果たしたのだ。
こうして、18世紀~19世紀にかけては、中世の教会を修復したり、新しい教会を作るときにゴシック風に建造されたんだ(これを「ネオ・ゴシック」と言うよ。)。
さらに、いつしかガーゴイルは雨樋の水の吐き出し口という機能も失われ、塔の四隅にある、デザインにアクセントを与える突起状の装飾物になってしまうのだ!
これは米国に建てられた高層ビルなんかに見られるそうだよ。
っていうか、やっぱり欧米人はまじめに雨樋を作って雨水を集める気はないのか・・・。

ちなみに、「ノートルダムの鐘」に出てくる「ガーゴイル」は本当はガーゴイルではないのだ。
あれは単なる彫像で、雨樋の吐き出し口にはなっていないんだよね。
これはガーゴイルの意匠から発展した装飾物だよ。
19世紀の修復の時に加えられたもので、フランス語では「シメール(いわゆる「キメラ)」とか「グロテスク」と呼ばれているのだ。
形から「ガーゴイル」と呼ばれてしまっているけどね。
これもヴィオレ・ル・デュクさんが付け加えたもの。

というわけで、ゴシック様式で雨樋は装飾に進化したのはいいんだけど、いつしかその機能が失われ、ただの装飾品になってしまったのだ・・・。
やっぱりフランス人には雨樋の必要性というのがいまいちぴんときていないのかなぁ。
でも、建物の近くによれば上から水が降ってくるし、建物から離れればイヌの「落とし物」がいたるところにあるし、パリの街は歩きにくいところだ(>_<)

2019/01/26

塩漬けいろいろ

フランスではなかなか売っていない加工肉があるのだ。
それは、薄切りのベーコン。
イングリッシュ・ブレックファストでは定番中の定番なのに、大陸側のフランスではほとんど売っていないんだよね。
むしろ、普通のハムの方が好きみたい。
ホテルの朝食でもハムの種類は多いよ。

そして、ベーコンの代わりとしては、ラルドンという細切りの塩漬け豚肉を使うのだ。
これは、牛のバラ肉や背脂の部分を塩漬けにしてから短冊状に切ったもの。
ラルドンの「ラル」の部分は「ブタ脂」の「ラード」だよ。
なので、見た目的にも半分以上が脂という感じ・・・。
これをカリカリに炒めてサラダの具にしたり、ゆっくり熱して脂を出してスープや煮込み料理にコクを与えたりするのに使うのだ。
本来的には塩漬けにしただけのものがラルドンなんだけど、最近は更に君背資したものまであるよ。
そうなると、ほぼベーコンと同じようなものだよね。

で、なんかに似ているなぁ、と思っていたら、それはイタリアのパンチェッタ。
あの、カルボナーラに入っている肉。
あれは豚バラ肉を塩漬けにしたものだよね。
カルボナーラに入っているやつはラルドンと同じように細切りのものだけど、本来的には豚バラ肉を塩漬けにしたものなので、ブロックみたい。
それを薄切りにしたり、細切りにしたりして使うようなのだ。

パンチェッタというのはもともとバラ肉の意味で、イタリアではブタのバラ肉を塩漬けにしたものがよく食べられていたので、いつしかその塩漬け肉もパンチェッタと呼ぶようになったみたい。
で、塩漬けにするのがもも肉の場合はプロシュット。
つまり、「生ハム」。
そして、ブタのほほ肉(豚トロ)を塩漬けにしたのがグアンチャーレ。
アマトリチャーナに入っているほろほろする肉だよ。

これらはどれも塩漬けにした豚肉の表面を乾燥させつつ熟成させたもの。
乾燥させずに燻製にするとベーコンやハムになるのだ。
たぶん、これって気候の違いなんだろうね。
陽の当たらない乾燥した風が吹くところでは塩漬けの後に乾燥・熟成ができるけど、そうでないところだと塩漬け肉が腐ってしまうので、煙でいぶして燻製にする必要があったはずなのだ。
燻製には燻製で独特の香りがついて味があるから、それはそれでよいのだ。

で、ボクが気になったのは、ラルドンとパンチェッタの関係。
結論から言うと、よくわからない(笑)
フランス語のラルドンは、もともとは「背脂(lard=ラール)」から来ているのだけど、どうも最初はこの背脂を拍子木に切ったものがラルドンだったようなのだ。
何でそんなことをしたかというと、赤身肉に差し込んで、肉を軟らかく、ジューシーにするため。
そのうち、この拍子木に切った脂を焼いて脂を出して料理に使われることも行われるようになるのだ。

で、ブタ胸肉(バラ肉)は「胸の脂(lar de poitrine)」と呼ばれているんだけど、これを拍子木に切ったものもラルドンと呼ばれるようになったのだ。
こちらはもう赤身肉に指すものではなく、その後に発生したであろう、脂を出すためのもの。
でも、これをカリカリに焼くと、肉の方もクリスピーでけっこうおいしいんだよね。
それでサラダなどの料理に使われるようになったと考えられるのだ。
おとなりの国イタリアでは、すでにパンチェッタをそのように使っていたように!

ということで、なんとなくだけど、結果として似てきただけで、イタリアのパンチェッタをまねてラルドンを作ったわけではなさそう。
当時は食肉の保存技術が未発達だったし、冷蔵庫もないから、塩漬けにするか、乾燥させるかしかなかったんだよね。
で、ブタの脂を使うにも、まずは塩漬けにしていいたはずなのだ。
それが料理の下ごしらえに使われ、いつしか料理の具材になり、となって、最初から食材だったパンチェッタに近づいていったと思うんだよね。
でも、実際に使ってみると、やっぱりラルドンはパンチェッタの代用にはなっても、パンチェッタとは違うんだよね。
乾燥・熟成の過程が違うのかな?

2019/01/19

濃いのが人気

なんでも「若者のビール離れ」でビールの売り上げが落ちているんだそうで。
っていうか、それは単純に人口減少とかが影響しているのでは?
そもそも若者が少なくなっているから、若者が消費するビールの量も減るよね。
でも、おそらく、それに加えて、選択肢が広がったことも大きいと思うのだ。
むかしはそれこそビールだけ飲むことが多かったように思うけど、最近では、ノンアルコール系飲料もあるし、ハイボールを含むウイスキー、各種サワー、ワイン、日本酒、焼酎、・・・とそれぞれの好みに合わせて好きなものを飲むようになったよね。
とりあえずビールで乾杯、とか、生中じゃない人?、なんてのはもう時代遅れなのかも。

そんな中、売れ行きが好調で、社会的問題にもなりつつあるお酒が。
それは、高アルコール度数の缶チューハイ。
ストロングゼロとかそういうのだよ。
これらはアルコール度数が9%。
日本のビールは5%、ワインが10~15%、日本酒が15%くらい。
ワインよりちょっと低いだけなんだね・・・。
それで一缶500mlあって、2~3本飲むとかいうんだから、ワインのボトルを1~2本飲んでいるのと同じなのだ!

でも、値段は全然安いよね。
しかも、果汁の風味などで飲みやすい。
というわけで、アルコールを飲み過ぎるおそれがある、ひいては、依存症につながりかねない、と問題視され始めたのだ。
元アイドルが飲酒運転事故を起こした際に飲んでいたのもこれだよね・・・。
時代の要請には応えているのかもしれないけど、危険なものではありそうなのだ。

もともとチューハイは、焼酎ハーボールの略と言われているよ。
ウイスキーに炭酸水を加えてハイボールにするように、アルコール度数の高い焼酎を炭酸水で割ったものということ。
戦前からシロップを加えて飲みやすくするというのはあったそうなんだけど、ハイボールをまねてそこに炭酸水を入れて飲むようになったんだよね。
どうも、昭和30年代の東京のドヤ街の山谷地区(あしたのジョーの舞台でもおなじみ、南千住と浅草の間だよ。)で生まれたようなのだ。
それが居酒屋チェー点のメニューになってから全国的に広がり、その人気から缶飲料として缶チューハイが発売されるようになったのだ。

チューハイは、明確な定義はないんだけど、焼酎やウォッカなどの蒸留酒をベースとしていて、アルコール度数が比較的低い(10度未満)なものを指すと言われているよ。
この「10度未満」というのがミソで、酒税法上、10度を越えると酒税が高くなるので、ここで「打ち止め」にしているのだ。
9%のストロングゼロは、今のアルコール飲料の分類の中で最大限アルコール量を増やしたもの、ということになるよ。
その前は「ほろ酔い」とかの1%程度の低いアルコール度数のものがはやったこともあったけど、今はノンアルコールから9%までレンジが広くなっているのだ。
ちなみに、エグザイルの公式飲料としても有名なレモンサワーなどの「サワー」は、実はチューハイと明確な線引きはなくて、ほぼ同一のものと考えられているよ。

この高アルコール度数の缶チューハイが売れているということは、アルコール飲料の消費が減っているというわけではないのだ。
外の居酒屋でビールの後焼酎を飲むというスタイルから、安価に飲むために、家で高アルコール度数の缶チューハイを飲むようなものに変わってきているんだよね。
これってやっぱり若い瀬田の経済的余裕がなくなってきていることが大きいのかなぁ。
「車離れ」なんかもそうだよね。
平均的な若者はもはや都市部で自動車を維持できるような生活は難しいから。
そうなると、この手の商品が悪いと言って規制するのではなく、もっと根本的な社会問題としてとらえる必要がありそうだね。

2019/01/12

ニューウェーブ和菓子

この前、おみやげで人形焼をもらったのだ。
あんこのお菓子はフランスではきちょうだからうれしいね♪
日本茶と合わせるとほっとする味だよ。
でも、これってカステラ生地でもあるからちょっと洋風。
ということは比較的新しいものなのかな?、と調べてみたのだ。

で、けっきょくいつからあるのかはよくわからない(笑)
わかったのは、日本橋人形町で作られ始めたってこと。
今でも老舗があるけど、どうも対象機になってから始めたっぽいよ。
で、のれん分けで浅草仲店にも店ができて、そっちも今では浅草名物になっているよね。
人形町でも浅草でも焼きたてのやつが食べられるよ。

人形焼の起源がよくわからなかったので、似たものを調べることに。
やっぱり一番似ていてメジャーなのは、安芸の宮島名物のもみじまんじゅうだよね。
あれも宮島で焼きたてを食べたけどおいしかったのだ。
やっぱりカステラ生地の中にあんこを入れて焼いたもの。
こちらは、まことしやかな起源譚があって、宮島が好きでよく来ていた大勲位・伊藤博文が、給仕の娘さんのかわいらしい手をほめて、「焼いたらさぞうまかろう」、と言ったので、それをヒントに紅葉の葉の形のまんじゅうを作ったというのだ。
どうも女性が好きな好々爺だったみたい。
で、これは明治の終わりの頃の話。

ちょっと違うけど、味的には似ているどら焼きはどうかというと、今のようにホットケーキ用の皮ではさむようになったのはやはり明治の終わり頃。
「どら焼き」というお菓子自体は江戸時代からあったようなんだけど、その頃は小麦粉の薄い生地であんこをつつんだようなもので、1枚の生地で端を折って包んでいたのだとか(そのため形も四角で、裏側の真ん中はあんこが丸出し。)。
あんこのクレープ包みのようなもの。
味的にはむしろきんつばに近かったんじゃないかな。
これが明治になって、西洋から「パンケーキ」が入ってくると、これに強い影響を受けて今の形に進化したようなのだ。

もともとはけがをした武蔵坊弁慶に、鳴らす方の銅鑼の上で小麦粉の生地を薄く焼き、それをシップのように貼って治療した、というところからきていて、どら焼きというのはそのまま銅鑼の上で焼いたという意味。
ところが、今の形のどら焼きは、銅鑼のような形に焼いた生地であんこを挟んだものだよね。
今の形の方がイメージはしやすいけど(笑)

カステラ自体は戦国時代には入ってきていて、江戸時代にはふんわりと焼き上げる今のようなカステラの原型はできていたのだ。
でも、あくまでもパウンドケーキ状の四角い形で焼き上げるものだったみたい。
おそらく、明治の中頃以降に、このカステラの生地を使って別のお菓子を作ってやろう、そうだ、まんじゅうのようにあんこの種を包んだらどうだろ、と考えたんじゃないかと思うのだ。
で、おそらく最初はパンケーキにインスピレーションを受けてどら焼きとか1枚の生地で半月状に包む「やぶさめ」のようなものが生まれたんじゃないかと思うんだ。

もう一つの流れとして、同じ頃に今川焼きから派生してたい焼きが出てくるんだよね。
鋳物の方で生地を焼いて、その中にあんこをいれたもの。
今でも麻布十番の浪花家総本家(泳げ!たい焼き君のモデルの店)や四谷の若葉なんかはそうだけど、ひとつひとつハサンで作るタイプの型で焼いているよね。
金属を流し込む代わりに小麦粉の生地を流し込んで火にかけて焼いて、決まった形に生地を焼き上げるようになったのだ。
ここにたい焼きや今川焼きに使う小麦粉の生地ではなく、もう少しどろっとしたカステラ生地を使えば・・・。
人形焼のようなお菓子になるよね。
おそらく、どら焼きの流れとたい焼きの流れが合流してできたんじゃないかと想像されるよ。

こうやって見てみると、やっぱり名物になってきたのは大正期なんだろうなぁ。
いろんな新しい西洋文化を取り入れて日本独自の改良を加えていった時期だし、さもありなんとう感じ。
でも、大正時代だとしても、もう100年以上前!
いわゆる練り物のお茶菓子は室町時代以降だから400年くらいの歴史だから当然かなわないけど、けっこうな歴史だよね。

2019/01/05

おせちの中の赤いやつ

お正月と言えばおせち料理。
最近は洋風のがあったり、そもそも食べなかったりするけど、縁起物だし少しは食べたいよね。
今は海外にいるけど、年末に救援物資が送られてきて、その中には、おせちセットもあるのだ。
紅白なます、栗きんとん、田作り、昆布巻き、黒豆などなど。
最近は100円ローソンでも個別に売っているみたいだね。

そんなおせちの中で、まさにこの時期にしか見かけないものがあるのだ!
それはクワイ、もそうなんだけど、それ以上に見かけないのが「チョロギ」。
よく黒豆と一緒に入っている、赤いねじねじのやつだよ。
かりっとした食感で、酢漬けになっているから酸っぱいのだ。
「長老木」或いは「長老喜」と当て字にできるので縁起物なんだって。
「まめに働く」という意味の黒豆と一緒にすると、「まめに働いて長寿」ということみたい。
働き続けろってことか・・・。

このチョロギ、シソ科の多年草の塊茎部分。
「塊茎」というのは、地下茎が丸まってふくらんだもので、ジャガイモも塊茎部分を食用にしているよ。
サツマイモは根なので、ちょっと違うのだ。
原産は中国で、今食べられているものの多くはやっぱり中国からの輸入品みたい。
日本には江戸時代に伝わり、国内生産もしているのだけど、収穫すべき塊茎部分が小さすぎて機械が使えず手作業になるので、生産量は下がっているみたい・・・。
ちなみに、欧州にも伝わっていて、フランスでは普通にサラダやスープに使われる、と言うのだけど、フランスに来て2年経つけど見たことないや(笑)

チョロギは6~7月に薄い青紫の花を咲かせ、10~11月になると塊茎を膨らませるようになるらしいのだ。
これを収穫し、きれいに泥を落としてあげると、白いねじねじのチョロギ(生)が収穫できるよ。
この時期にとれるのでお正月似向けてちょうどいいわけだね。
チョロギは数日塩漬けにした後、梅酢やシソ酢に漬けて赤くするのだ(本当に真っ赤なのは多くの場合着色料を使っていて、梅酢などで漬けた場合は淡い紅色なのだ。紅ショウガと同じだね。)。
それがおせちに入っているアレ。
レシピ的にはショウガの酢漬けのような感じだね。

現代のおせち料理の原型ができてきたのは江戸時代。
重箱に詰めるスタイルになったのは明治以降と言われるので、比較的当たらし習慣だよ。
チョロギはちょうどそのおせち料理ができあがる時代に日本に入ってきたことになるね。
当時は珍しかっただろうし、薬用植物的な見方もあったのだ。
江戸時代の本草学の基本書である本草綱目に「からの病の侵入から身体を守り、血の滞りを治し、気を静め精神を安定させる効果がある」とされているよ。
名前と相まっておせち料理に組み入れられたのかもね。

ちなみに、家庭菜園でも育てられるみたい。
春に横で寝かせる形で植えると、芽が出てきて、最終的には60~70cmくらいの高さになるとか。
秋口に葉が枯れてくるので、そうなると土の中にはチョロギができているらしいよ。
これはもう、再来年は家で育てたチョロギをおせち料理に使うしかないね(笑)