2021/04/24

ちょっと先では甘かった

 最近、いろんなところで台湾パイナップルを見つけるのだ。
なんでも、中国本土が台湾パイナップルの輸入を禁止したため、行き場がなくなって困っていたところ、これまで他の場面で台湾にはお世話になったし、友好的感情も持っている日本が引取りを申し出た、ということのようなのだ。
西友で売り始めたのをきっかけに、いろんなところで見かけるようになった。
ボクはもともとパイン好きなので、ちょっと気になっていたんだ。

そして、ついに買ったのだ!
最初は、「ああ売ってるな」という印象しかなかったんだけど、テレビで「台湾のパイナップルは品種改良が進んでいてとても甘い」というのを見てから気になって、気になって(笑)
これまで、フィリピン産はわりと甘いけど、台湾のすぐ近くの沖縄産はそこまで甘くなくて、加工専門だったんだよね。
なので、台湾産も草だと勝手に思っていたんだけど、そうではなかったのだ。
台湾ではかなり進化していた、というわけだね。


もともとは南米はブラジル原産の果物。
「新大陸発見」後、15世紀に欧州に渡り、そこからたちまち世界に広まっていったらしい。
酸味が強いものもあるとはいえ、当時の果物としてはかなり甘かったんだろうね。
フィリピンはスペインの植民地だったので16世紀半ばには伝わり、ポルトガルの植民地だったマカオ経由で中国には17世紀初めに入ったようなのだ。
南国フルーツなので復権で栽培されるようになり、それが17世紀半ばに台湾にも流れていったみたい。
ただし、これは伝わったと言うだけで、大々的に栽培が始まったわけでもないようなのだ。
台湾でパイナップルが盛んに作られ始めたのは、どうも日本統治時代からのようなんだよね。
そこからは世界三大産地の一つに数えられるほどに!

当初は主要輸出産物として主に缶詰に加工されて海外市場に出され炊いたのだ。
ところが、台湾が経済成長していくと人件費などのコストが上がり、価格競争力が弱くなっていき、かつ、田の東南アジア諸国でも生産が盛んになって輸出が減っていったみたい・・・。
そこで、目を内需に向け、国内消費用の果物に替わるのだ。
甘さが追求されるようになるのはここが転換点。
現在のパイナップルは、糖度が高く、芯も柔らかいので切り分けて皮をむけば食べられるんだ。
へたとおしりを切り落とし、縦に等分して皮をそぐようにむけばOK。
自分で切ってみるとわりと簡単。

一方で、いわゆる普通のパイナップルは、そのままだと酸味が強いので、多くはシロップ漬けにするとか加工品になるんだよね。
熱をかけると甘さが引き立つし、パイナップルの中に含まれるタンパク質分解酵素のおかげで肉が軟らかくなるので、酢豚に入ったり、ハンバーグに載せられたりするのだ。
(パインを食べ過ぎるとしびれたり、ぴりぴりするのは、アレルギー反応ではなくて、タンパク質分解酵素で口腔内の粘膜の表面が傷ついているのだ・・・。)。
で、この通常パインは、芯は硬いし、甘さもなくて食べられないので、円柱状にくりぬくんだよね。
その後に皮をむくと、いつも見る輪っか上のパインができあがるのだ。
あれはもともと中心に穴があるわけでも何でもなく、可食部でない芯を取り除いた跡に過ぎないのだ。
世の中にはパインカッターなる便利な道具もあって、へたとおしりを切り落としたらそれで芯をくりぬきつつ、皮をむけるんだ。
そうすると、真ん中に穴の空いた円柱状のパインができるので、それを輪切りにすればいいというわけ。
ちなみに、沖縄産では「スナックパイン」という甘みの強い品種があって、これはちぎりながら食べられるという優れもので、切り分ける必要すらないよ。
台湾だけがすごいわけじゃないのだ。

そして、台湾でメジャーな果物となったパイナップルはお菓子界にも進出。
台湾土産と言えば、「パイナップルケーキ(鳳梨酥)」が有名だよね。
これも内需拡大の結果生まれたもののようだよ。
甘さの中身さわやかなパインの酸味があっておいしいよね。
今はなかなか海外に行けないから、こっちのおかしも日本に来てくれるといいんだけどなぁ。

2021/04/17

さんこいち

復興庁が作ったキャラクター「トリチウムちゃん」があっという間に撤回されたのだ。
正直なところ、センスを疑うものだったので、早めに引き上げたのはよかったと思うけど。
もともと、福島のアルプス処理水の海洋放出の是非の問題があって、その理解を助けるために、と作られたものなんだろうけど、なんだかねぇ。
昭和のにおいのする広報のやり方なんだよなぁ。
けっきょく、こうして話題になっても、テレビなんかで報道するときは、そもそもトリチウムとは何か?、というのには行き着かないんだよね。
ただただおそろしい放射性物質という印象しか与えないのだ。
わざとかもしれないけど。

トリチウムは、和名では三重水素。
この名前からもわかるとおり、最も単純な構造の元素である水素の同位体なのだ。
陽子ひとつでできた核のまわりをひとつの電子が回っているのが水素原子。
陽子ひとつと中性子ひとつでできた核のまわりをひとつの電子が回っているのが重水素(デューテリウム)。
そして、陽子ひとつと中性子ふたつの核のまわりをひとつの電子が回っているのが三重水素(トリチウム)なのだ。
陽子と中性子はほぼ質量が同じで、電子は陽子・中性子に比べてきわめて質量が小さいので、いわゆる普通の水素の三倍近い重さを持った特殊な水素ということになるよ。
なお、中性子が三つ以上入った核を持つ水素の同位体もあるんだけど、いずれもものすごく短い半減期で崩壊するので、天然では見られないのだ。

質量という物理的な性質は大きく違うわけだけど、反応性などの化学的性質はほぼ同じ。
なので、普通に酸素と結合して水になったりするのだ。
重水素でできた水は重水、トリチウムができたミスはトリチウム水(三十水素水)だよ。
ただし、重水素でも存在比率は1%ほど、トリチウムは天然ではごくごく微量にしか存在しないので、自然界には、ふたつtomoが重水素又はトリチウムになったような水はあまり存在せず、ふたつの水素の内野どちらかが置き換わったものがあるのだ。
そうすると、水としての分子量は、普通の水(H2O)が18、半重水(DHO)が19、重水(D2O)が20、トリチウム水が20(THO)、21(TDO)又は22(T2O)となるんだけど、最大の22と最小の18を比べても、2割強増しくらい。
水素原子単独で見るより差はかなり小さくなるよね。
※実際には、酸素にも同位体がいるので、もっとバリエーションがあるよ。

トリチウムは、半減期12.32年でβ崩壊(電子を一つ外に放出)してヘリウム3になるのだ。
天然ヘリウムの多くは、陽子×2+中性子×2の書くからなるヘリウム4なので、それより少し軽いヘリウム原子になるわけ。
質量数が小さい原子にしてはわりと長い半減期で、ごく微量ながら天然にも存在しているのだ。
それは、宇宙船の中性子又は陽子が大気中の酸素や窒素と反応し、原子番号を2落とした元素とトリチウムが生成されるから。
窒素14の場合は炭素12とトリチウム、酸素16の場合は窒素14とトリチウムだよ。
こうして次々に自然界でも供給されていて、それが水の中に溶け込むので、常にほぼ一定の比率で自然界に存在しているんだ。

今回問題視されているのは原子力発電所由来のトリチウム。
自然界でもできているんだけど、それよりも遙かに多くの了が原子炉の中でできているんだよね。
で、他のもっと有害な核種(放射性同位体)を除いた後でも、水の中に混じり合ってしまうトリチウムは除ききれないので、福島のアルプス処理水の中にはトリチウムが大量に入っているのだ。
これを十分に希釈した上で海洋放出する稼働がもんだいだったわけ。
現実的には、トリチウムは生体濃縮はないと考えられていて、普通に見ずとして代謝されていってすぐに体から抜けていくのでそこまで危険視はされていなくて、基準値以下まで希釈して海洋放出mというのが各国の原発で行われてきているのだ。
今回もその考え方にならっているんだけど、事故由来のものであるということ、事故時に海に一部の放射性物質が漏れ出てしまってそれが問題視されてたことなどのもろもろの経緯が積み重なって、原発の排水と全く同じようにはできなくなっているのだ。

つまり、十分に希釈されていれば科学的には問題ないはずなんだけど、事故由来の「汚染された水」がまた海洋を汚染する、ととられかねないことが問題なわけ。
したがって、「風評被害」を抑える必要があって、隣国に声高に騒がれたくないし、「親しみやすい」キャラクターを作って理解を促したい、となったと思われるのだ。
これはうまくいかなかったわけだけど、
地手レアシーの問題は結構深刻で、こういうときにクリティカルにきいてくるんだよなぁ。

2021/04/10

まみれたものたち

ネットで、ダイソーの油漬けカキの缶詰が話題になっているのだ。
110円(税込)でおいしいんだって、中国産らしいけど。
日本ではあまりなじみがないけど、欧米では油漬けってわりとメジャーな保存方法なんだよね。
肉や魚介だけでなく、野菜やキノコなんかもあるのだ。
日本でもっとも家庭に浸透しているのはシーチキンの油漬けかな?

日本では江戸後期になるくらいまで植物油は貴重品。
すでに平安時代にはゴマは伝わっていたけど、ごま油は高級品だったのだ。
当時は明かりのための燃料としても重要で、そのためには安価なものだと鰯の魚油なんかがつかわれたんだけど、なにぶん燃えるとくさいので、むしろ良い香りがする植物油は高級品だったのだ。
江戸時代に合って、菜種油が普及してきて、ゴマやワタの栽培が盛んになると食用油として植物油が使われるようになり、天ぷらのようなファストフードも生まれるんだよね・
それまでの日本式の保存食は、天日乾燥(干物や干し柿、かんぴょうなど)、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、ぬか漬け等々。
乾燥させるか高濃度の塩分で水分を吸い取ったものか、発酵系のものに漬け込んで腐敗じゃない、人間にとって都合の良い微生物を繁殖させたもの。

一方、欧州ではかなり早い段階でオリーブから油がとられていたんだよね。
紀元前数千年という古い時代からっちちゅうかいちいきで栽培が始まり、ローマ帝国の拡大によって、欧州、北アフリカ、アラブなどにも広まっていくのだ。
新約聖書の世界では何かと油をぬる、かける、なんて描写が出てくるけど、これらの油はオリーブ油だと考えられているよ。
日本との大きな違いは、むかしから食用油としても利用されていたこと。
そいう背景の中で、保存食を作るときにあぶらにつける、という発想が出てくるのだ。

最大のポイントは、油自体は腐らないということ。
油の中では腐敗性の微生物は繁殖できないんだよね。
おそらく、むかしから油は腐らないことはわかっていたので、その中に食べものを入れておけばいいんじゃね?、というのは自然な流れなのだ。
基本、水分があると腐りやすいのだ。
なので、乾燥させたり、塩分で水分を吸い取ったりして保存性を高めるわけだけど、水に触れないように油に入れるのでもいいわけなのだ(あまり水分が多いものをそのまま入れるとドレッシングのように水と油が分離するので、ある程度水気を切ったもの、すなわち、軽く干したものや塩漬けにしたものを油漬けにすることが多いのだ。)。
かつ、油には様々な香味成分が溶け出すんだよね。
香辛料やハーブを入れた油は良い香りや味がつけられるのだ。
それが漬け込む過程で食べ物にも移るんだよね。

では、油漬けに弱点がないかというと、そういうわけでもないんだよね。
油は腐敗しないけど、参加して劣化するのだ。
透明でさらさらな油が濁ったり粘ついたりするのだ・・・。
紫外線、空気(酸素)、熱の3つが劣化の要因。
なので、冷暗所で密閉して保存するのが油を長持ちさせるこつ。
イコール、油漬けをおいしく保つこつなのだ。
オリーブ油が多くの場合濃い色の瓶に入っているのは酸化を防ぐため。
おしゃれな油漬けの野菜なんかは透明な瓶に入っていることもあるけど、これを明るいところに置いておくとどんどん油が酸化してきて、味が落ちるよ。
要注意!

ネットで調べると、様々な油漬けレシピが見つかるのだ。
ジャムと違って、原理的には瓶を煮沸消毒しなくてもよいのだけどできるだけきれいなものをつかうのは言うまでもないとして、できれば色のついた瓶の方がいいわけ。
透明な瓶のバイ愛は光の当たらない場所で保存が原則。
漬け込む前に水分が多いと油もしみていかないので、野菜やキノコなら軽く干してから、肉や魚なら軽く火を通したり、燻製にしたり、塩漬けにしたりして水分をあらかじめ抜いておくとうまくいくみたいだよ。
ネットのレシピでは余ったお刺身を「ヅケ」ではなく油漬けにしましょう、なんてのがあったけど、そのまま切り身を油に入れてもおそらくそんなにうまくいかないのだ。
塩をしてしばらく放置してからキッチンペーパーでよく水分をふきとってから漬け込むと良いよ。

2021/04/03

焼けた鉄の板の上でおどれ!

うちは記念日とかの特別な日にちょっとゴージャスに外食しよう、となると鉄板焼きを選ぶことが多いのだ。
目の前で手際よく焼いてくれるのは見ているだけで楽しいよね。
米国に留学しているときは、向こうに伝わって鉄板焼きの「ヒバチグリル」に連れて行ってもらったことがるんだけど、さらにパフォーマンスが派手なんだ。
エビのしっぽを高く上げてシェフ帽に載せてみたり、ぐちゃぐちゃとまわりにまき散らしながら豪快にガーリックライスを作ったり・・・。
そんなことしているから肉はたいてい焼きすぎなんだけど(笑)

でも、日本のものはなかなか見事で、注文したとおりに焼き具合で仕上げてきてくれるよね。
鉄板の上でさっさっと肉を切っていくのもすごいのだ。
さすが職人技の国。
そのむかし、グルメ漫画の王道「美味しんぼ」では、鉄板焼きをかなりこき下ろしていたけど、いつものように言いがかりみたいな所もあるんだよねぇ。
山岡さんが問題視してたのは、鉄板の上で作業をし続けるので肉にどんどん余計な日が入ってしまうし、そもそも絶妙な温度調節ができないので、表面にさっと焼き目をつけてあまり高くない温度でゆっくり中に火を通す、なんてことができない、というもの。
ところが、一流と言われるような鉄板焼きのお店では、鉄板の温度にグラデーションができていて、温度が高いところと低いところがあるんだ。
なので、ちゃんとじっくり火を通す、高温でさっと火を通す、なんてこともできるのだ。

そもそも、鉄板の厚さとかにも工夫があって、肉や魚介をのせたときに鉄板表面の温度が下がらないよう、かなり分厚いものになっているんだよね。
家庭用のフライパンやホットプレートでうまくいかないのはこのせい。
肉をのせた瞬間に表面の温度が下がってしまうのだ。
これはその後の加熱も同じで、鉄板が熱いがゆえに温度を上げづらくもあるので、焼いている最中に温度を一定に保ちやすいのだ。
フライパンだとこの温度管理はけっこう難しいんだよね。
なので、海外では焼き目をつけた後はオーブンに入れてじっくりと火を通したりするのだ。

今のような鉄板焼きのスタイルを始めたのは神戸の「みその」と言われていて、寿司屋におけるカウンターから客に提供するスタイルからヒントを得たとか。
どちらも料理人がその場の作ったものを出してさっと食べてもらうというのは確かに同じだよね。
寿司でも草だけど、料理人さんとの会話も楽しめるのだ。
フランス料理のジョエル・ロブションは世界で一番たくさんミシュランの星をもっているシェフとして有名だけど、ジョエル・ロブションのレストランのうち「ラトリエ」の名を冠しているところがまさにこのスタイル。
ゲストに対して料理人さんが張り付いて、目の前で最後の仕上げをして料理を提供するのだ。
厨房でシェフが作ったものをギャルソンが運んでくるスタイルとはかなり異なるよね。
この料理はおいしかった、シェフを呼んで、とか言わなくても、目の前の料理人さんと会話も楽しめるわけ。この日本式鉄板焼きは海外にも広がっているんだ。
最初は日系ホテルの中のレストランで提供されたようだけど、そのスタイルが気に入られ、普及していったようなのだ。
米国ではパフォーマンスに特化する方向に魔進化したところもあるけど、世界に広く受け入れられた日本のソフトパワーの一つなんだ。
ステーキなら生魚の苦手な外国の人も食べやすいし、寿司より抵抗感がないかもね。