2021/07/31

切って食べるパン

 フランスでしばらく過ごしてからというもの、日本のパンがあまり楽しめなくなってしまった・・・。
フランスのバゲット(フランスパン)やクロワッサン、パンのショコラなんかは安くてもおいしいからね。
それだけはぜいたくだった!
なので、本場の味を謳う日本の高級クロワッサンとか見てもあまりひかれないんだよなぁ(>_<)
味的にはいけているのもあるんだけど、とにかく高い。
パリで1ユーロだったものが500円を越えるなんて。

そんな中でも、日本独自のパンというのはたのしめるのだ。
カレーパンとか、あんパンとか、蒸しパンとか。
そして、ボクが子どもの頃は給食でもおなじみだったコッペパン。
なんか、この頃はおしゃれなコッペパンのお店もできていて、様々な具を挟んだものを提供して暮れるみたいだね。
テレビで見たけどおいしそうだったよ。
そう、これがコッペパンの魅力で、切って間に何か挟む、というのが真骨頂なのだ。

もともとコッペパンは、明治末期に米国でパンの製法を学んで、大正時代にイーストを使った製パン法を日本で初めて開発した田辺玄平さんが考案したもの。
それが日本で好まれ、独自の発展をしていったのだ。
「コッペ」の語源は不明で、一説には、フランス語で切られた(過去分詞)を意味する「クーペ」からとも言われているんだけど、よくわからないみたい。
たかだか百数十年前のことなんだけど。
日本人が好むような味と食感で、ちょっと甘みが合って、おかずと一緒に食べられる主食パンなのだ。
欧米では、主食とおかずという概念がそもそもきちんと確立されていないので、サンドイッチのようなものは食べるけど、主食とおかずを交互に食べることはあまりないんだよね。
料理は料理、パンはパン。
でも、日本人は白飯と同じように置かずと一緒にパンを食べたかったのだ!
そのすでにできあがったのがコッペパンだよ。

戦時中の主食の配給品として国民に広く浸透し、戦後は学校給食に採用されることで多くの日本人に食べられることになったのだ。
これは、ララ物資で大量に米国から送られてきたのが小麦粉と脱脂粉乳で、それをもとに給食が始まったから、
給食の最も古い携帯は、コッペパンにあるまいとの器に入った、表面に膜の張った脱脂粉乳だったんだよね。
その後も、米食は給食として供給するには課題が多く、コッペパンだと一度に大量に焼成して簡便に運べるので、給食の本流を維持してきたのだ。
古米消費のために米飯給食が奨励されるようになるまでは、カレー-ライスやまぜごはんの時くらいしか米飯給食はなかったんだよね。
今やほぼほぼ米飯給食に移行してしまったけど。
それもあって、ミドル世代にとっては給食と言えばコッペパンで、コッペパン自体にもノスタルジーを感じるわけ。

給食におけるコッペパンの醍醐味と言えば、間におかずを挟んで食べる、という食べ方。
ボクが子どもの時に人気だったのは、なんといっても、焼きそばやスパゲッティ(という名のソフト麺みたいなやつ)。
もちろん、ハンバーグやらフライやらも挟むのだ。
魚系のおかずとか、煮物とかだと挟めないからがっかりするんだよね。
こういう食べ方は給食だけでなく、広く浸透しているのだ。
そのむかしは、サンドイッチ的なものより、コッペパンに何かを挟んだもの(コロッケパン、焼きそばパン、ジャムコッペなどなど)の方をむしろよく食べていたような。
コンビニができてサンドイッチはよく食べるようになたtけど、それまでは街のパン屋さんによく置いてあるのはコッペサンドで、耳を落とした食パンで挟んだサンドイッチはちょっとこじゃれた存在だったような気がするよ。

少し毛色の違うのが、揚げパン。
間にものを挟むのではなく、コッペパンを油で揚げて方砂糖ときなこをまぶすのだ。
カレーパンのような「ドーナツ」系惣菜パンは、オーブンで焼成せずに上げて日を入れるんだけど、揚げパンは一度焼成したコッペパンを揚げているんだよ。
少し古くなって固くなってしまったコッペパンをおいしく食べるための工夫、という発想で考案されたみたい。
これがまた学校給食では人気なんだよね。
今でも時々食べたくなってしまう・・・。
カロリーのお化けみたいなものだけどね(笑)

2021/07/24

登録抹消

 つい先日、オンラインで開催されている第44回世界遺産委員会で、英国の世界遺産のひとつが登録抹消になったのだ。
「海商都市リヴァプール」だよ。
原因は都市の再開発で、もともと問題視されていて「危機遺産」登録はされていたんだよね。
それがいよいよ挽回できないところまで来たので、今回登録抹消ということになったのだ。
これで完全抹消は3例目。

最初の抹消はオーマンの「アラビアオリックス保護区」(自然遺産)。
ここのオリックスはユニコーンのモデルにもなったと言われる動物なんだって。
ところが、油田などの資源開発をするために保護区を1/10に縮減したいという要請がオマーン政府から出てきて、もめたのだ。
なんとか保護区を維持しようと世界遺産委員会で議論が行われたんだけど、なかばけんか腰になってしまっていたオマーン政府はその改善策を拒否し、登録抹消になったのだ。

次は独国の「ドレスデン・エルベ渓谷」(文化遺産)。
川を挟んだ地域が登録されているんだけど、渋滞解消のために川に架橋する計画がもともとあったんだよね。
でも、その橋が景観を損なわれるということで、世界遺産委員会からはトンネルにするなどの代替案も提案されたんだけど、地元での住民投票の結果、橋を架けることになったので晴れて登録抹消・・・。
これは当初から独国側がけんか腰で、地元住民に不便を強いるなら世界遺産でなくてもけっこう、という感じだったらしく、まだ同情的な議論があったオマーンの礼とは違って、「見せしめ」的に抹消されたようだよ。

3例目が今回の「海商都市リヴァプール」(文化遺産)。
やっぱり都市の再開発の問題で、景観が損なわれるということなのだ。
ずっと議論をしてきたけど、再開発計画側が寄り添うことはなく、ここまで来てしまったんだよね。
似たような状況に陥りつつアルのが「ウィーン歴史地区」(文化遺産)。
ここの緩衝地帯と言われる、世界遺産登録された地区を取り囲む地域に大型複合施設を建設する計画があって、そんなのができると景観が損なわれるのでダメ、という話。
やはりウィーンの地元民は建設に賛成で、世界遺産でなくても世界的な音楽都市であるウィーンには観光客は来るし、世界遺産にこだわりすぎて生活が不便になるのはいやだ、ということのよう。
世界遺産センター長みずからが現地訪問して議論をしているようだけど、おそらく登録抹消は時間の問題なのだ(>_<)

これらは今後の大きな課題なんだよね。
日本の文化財でもそうだけど、古民家や武家屋敷が文化財に指定されると、雨漏りなどをしても勝手に回収できなくなって不便と言われているよね。
それのもっと規模の大きなものと考えるとわかりやすいのだ。
真正なものを後世に残していくというのは大事なことだけど、以下に現代に生活している人々と折り合いをつけるかが問題。
日本の場合は「歴史地区」みたいな登録がないので身近ではないけど、すでに京都なんかでは景観条例と都市の再開発の問題は出てきているよね。
世界遺産登録抹消には結びつかないけど、我が事としても考えていかないといけないのだ。

ちなみに、現在登録されたけどこのままでは危ないとされている「「危機遺産」のリストには、32カ国51件が登録されているようなのだ。気候変動の影響による支援環境の変化のようなどうしようもないのもあるにはあるんだけど、周辺情勢の不安定さ、密漁による希少動物の減少などの人為内戦内線による政情不安で全部が「危機遺産」入りしているよ・・・。

2021/07/17

そばの真正性

 暑くなってくるとおそばがおいしいのだ。
つるつるっと食べやすいしね。
汁やたれを作っておけば、後はそばをゆでるだけで、それも乾麺を使えばかなり簡単。
我が家ではけっこう朝ごはんのメニューに登場するよ。
そんなそばだけど、けっこう価格帯に広がりがあるよね。
当初は、国産そば粉か海外産そば粉か、生産地が国内か中国か、くらいの差だと思っていたんだけど・・・。
実はそれだけではなく、「そば粉の含有量」というのも大きなファクターだったのだ!

どういうことかというと、そばとは名乗っていながら、そば粉より小麦粉の方が多く使われている商品が多いのだ!
特に、価格帯の安い乾麺や、チェーンの立ち食いそばなどがそう。
口が悪い人は、色つきの細いそば風味うどん、なんて呼んだりも。
一応、「そば」と標記するにはルールがあって、景品表示法に基づく業界団体が作成する自主規制ルールである「公正競争規約」において、「そば粉が30%以上含まれるもの」でないと「そば」と標記してはいけないのだ。
でもでも、逆に言うと、小麦粉が7割でも「そば」という名称で販売が可能なのだ。
つなぎとして小麦粉を2割使うのが「二八そば」だけど、この場合は、「七三そば」になってしまうね・・・。

なので、本格的なそばを食べたい、より濃厚なそばの風味を味わいたい、乾麺であってもそば湯を楽しみたい、なんて希望があるのであれば、そば粉がどれくらい入っているかをきちんと確認して商品を選ぶ必要があるよ。
でも、実はこれは割と簡単。
「原材料表示」の欄を見て、「そば粉」が最初に登場しているかどうかを見ればよいのだ。
最初に登場するのが「小麦粉」の場合は、そば粉は5割未満というのが自動的に決定するのだ。
そのわけは、食品表示における原材料表示のルールにあるんだ。

原材料表示のルールは、自主規制ルールの公正競争規約とは違って、食品表示法に基づく内閣府の布令「食品表示基準」によって定められているよ。
こちらは府省令なので、法令の一部なのだ。
第3条で原材料名表示のルールが出てくるんだけど、「原材料に占める重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称をもって表示する」となっているのだ。
つまり、そばの場合はほぼほぼそば粉と小麦粉だけでできているはずなので、そば粉と小麦粉のどちらが最初に出てくるかが重要ということ。
ために階層などを練り込んだそばもあるけど、単純化してそば粉と小麦粉だけでできていると仮定すれば、原材料表示で「そば粉、小麦粉」の順で出てきたら、5割以上そば粉が使われていることが確定するわけ。
少なくとも「五五そば」以上は保証されるよ(笑)

ただし、簡単に見抜けるのはそこまでで、その先そば粉が本当にどれだけ使われているかは自主的な表示内容に頼らざるを得ないよ。
「十割そば」のような名称で売っている商品もあるし、「本格二八そば」みたいなのも。
でも、こういう割合がわかりやすいものだけではなくて、「そば湯も楽しめる」なんていう微妙な表現だと、「そば粉が何割以上になるとそば湯として楽しめるのか?」という感覚的な受け止め次第になるのだ・・・。
こういうのって、そば粉が多い方が売りになることが多いので、本当にそば粉を多めに使っていれば、「そば粉○割使用」と書いたりするんだよね。
さすがに虚偽表示はダメだから。
でも、何も書いていない、ちょっと曖昧な用言の場合は、原材料表示でぎりぎりそばがトップに出てくるような割合で、みたいな場合が多いのかも。

とはいえ、そば粉が多ければ良いというわけでもなくて、そば粉が多いとどうしてもぼそぼそしがち。
だからこそむかしから「つなぎ」をつかっているわけで。
なので、あとは食感の好みなどで選べばいいんだよね。
もちろん、小麦粉が最初に出てくるものでも気に入っていればそれを食べればいいわけだけど。
ただ、そばの方が健康に良いからそばを食べたい、なんて思っている場合は、きちんとそば粉割合の高いものを見極めた方がよいのだ。
そば色のうどんだと、けっきょくGI値(食後の血糖値の上昇度合いを示す数値)が高いからね。

2021/07/10

冷凍だけど、熱い

いま、冷凍食品が熱いのだ。
コロナ禍で外食が減り、家庭で食べることが増えたけど、毎回手間暇かけて料理をしていられない・・・。
そこで注目を集めたのが冷凍食品。
レトルト食品もあるけど、今や冷凍食品の方がバリエーションが広いからね。
チャーハンなんかは下手なお店で食べるより冷凍食品の方がおいしいといわれるくらいだし。
しかし、ここまで来るには技術の発展が必要だったのだ。

最初に冷凍食品は普及したのは米国。
しかも、当時はオーブンで焼くのが主な調理法。
アルミ製の皿とかに盛り付けられていて、それを予熱したオーブンで温めるとできあがり、というものだったのだ。
フランスの冷凍食品専門店のピカールが日本にも進出してきているけど、ほぼほぼ電子レンジで調理可能な日本の冷凍食品とは違って、オーブンで焼いたり、フライパンや鍋で加熱する必要がルものが多いよ。
日本は凝り性だし、食べ物への執着は異常なほどだから、冷凍食品でもそれが生かされ、電子レンジだけで簡単に調理できて、しかもおいしい、というのを常に目指しているのだ。
こうやって需要が増えてくるとさらに進化が進むかも。

さて、話は日本の冷凍食品にもどるけど、電子レンジが普及する前は、オーブントースターであたためる、お湯でゆでる、油で揚げる、なんてのが標準的な調理法。
むかしは冷凍のコロッケを揚げる、冷凍のピザトーストを焼く、冷凍うどんをゆでる、といったもの。
バリエーションもそんなにあるわけではないので、限定的な普及だったのだ。
潮目が替わるのは電子レンジの普及以降。
電子レンジはマイクロ波照射により食品中の水分子の運動を活性化し、それで発熱させる仕組み。
なので、表面を温めて中まで熱を浸透させていくオーブンとは違って、中から温まるのが特徴。
ただし、マイクロ波が当たらないと加熱できないので、かつての電子レンジは中でターンテーブルが回っていたのだ。
今はマイクロ波自体をいろんな方向から照射できるようになったので、フラット型が多いよ。

とはいえ、この特徴的な温め方には問題もあったのだ。
中の水分を加熱していくので、温められた水は蒸気になって出て行くんだよね。
なので、そのまま温めると水分が飛んでぱさぱさになって固くなるのだ。
それを防ぐためにラップをかけるわけだけど、ラップをかけると蒸しているような状態になるので、シュウマイのような料理ならよいのだけど、揚げ物なんかはびちゃびちゃになるんだよね。
さらに、水を加熱していくという原理上、食品を温める熱は気化熱で奪われていくので、水分がある限りはせいぜい100度までなのだ。
ラップをして蒸し焼き状態になっ散れば多少温度は上がるんだろうけど。
そうすると、焼き目・焦げ目はつけられないんだよね。
焼き目や焦げ目は、加熱表面が200度とか300度になったときにできるものなので、そもそも表面から温めていないし、温度もそこまで到達しないので、電子レンジをそのまま使っただけでは難しいのだ。

でも、今はこれもある程度克服しているのだ。
ラップをかけずに温めることでびちゃびちゃにならないようにしたのがチャーハンや揚げ物系。
揚げ物については衣に工夫することで、衣の中に微細な油の粒子を混ぜ込んでおいて、加熱したときにその油でちょっとかりかり感が出せるまでになっているのだ。
そして、少し蒸気を逃がしながら温められるような特殊な包装の開発により、しっとり感は保っているけどびちゃびちゃにはならないように温められる、というものも出てきた。
すでに焼いてある焼き餃子とか冷凍パスタなんかがそうだよね。

最後の問題は焦げ目。
むかしからある冷凍グラタンは、あらかじめ御下目をつけた調理済みのグラタンを温め直すだけ、という形式のものだったんだけど、焦げ目の部分が蒸気でびちゃびちゃになってそれっぽくないのだ。
なので、電子レンジで温めた後に少しだけオーブンで焼く、なんて工夫もあったんだよね。
ところが、最近は焦げ目をつける技術ができているみたいなんだよね。
もともと、電子レンジでも温めすぎると水分がなくなって、かりかりに焦げ、最後には発火する、なんてことがあるのだ。
おそらく、これを逆に利用しているんじゃないかと思うんだよね。
あらかじめ焦げやすい部分を作っておいて、全体は温まる程度だけど、そこだけは少しかりかりに焦げる、というように持って行ければ完璧なのだ。
そこまで技術的に完全に到達できているのかどうかはよくわからないけど、確実に進歩はしているみたいだよ。

ちなみに、焼き魚とかハンバーグなんかで焦げ目をつけたいときは、専用の容器やシートを使うことで焼き目をつけることができるようになっているよ。
これは食品だけでなくて、容器やシート自体も加熱されるようになっていて、その熱が表面からも温めるので焼き目がつく、ということみたい。
フライパンやグリルで焼いたのと同等とはいかないけど、こっちも進化しているのだ。
あくなき探究心だなぁ。

2021/07/03

ジャパニーズ・ミックス

一時期廃れたと思われた大食い番組が復活してきているのだ。
これはYouTubeの影響なんかもあるのかな。
自分は食べられないけど、合成に食べるのを見たい、という趣向はあるみたい。
そして、それと同じくらいよく見かけるようになったのが激辛チャレンジ。
一昔前は罰ゲーム的な扱いだったけど、今となっては、最初から辛いものに挑戦し、完食できたらすごいと褒められる、みたいな感じで、大食いのプロットがそのまま援用されているような感じなのだ。
確かに激しく辛いものを食べられるのはすごいけど、自分で食べるなら、辛さはそこそこでうまみがほしいよね(笑)
っていうか、辛いだけじゃいやだよね。

食欲をそそる、とかそういう意味においては、辛さだけでなく、香りが重要と思うのだ。
うちは一味と七味を使い分けているけど、単純に唐辛子の辛みがほしいときは一味だけど、そばに入れたり、焼き鳥につけたりするなら風味付けのために七味だよね。
探してみると、世界中に同じようなコンセプトと、辛みと風味が一体化した混合スパイスがあるのだ。
七味唐辛子は日本代表だけど、中国には五香粉、インドにはガラムマサラ、米大陸にはチリパウダーなどなど。
これを使うだけで、結構本場の味に近づくんだよね。
五香粉なんかは入っていると本格中華の風味になるよ(笑)
チリパウダーもそうで、ただ唐辛子で辛いだけだと無国籍だけど、そこにオレガノやクミン、ディルなんかの風味が加わってチリパウダーになると、とたんにテクス・メックスに。
ガラムマサラも香り付けに加えると、カレーが家庭料理からインド料理に変わるよ。
そういう意味では便利だよね。

そういう意味では、日本代表の塩地味は少し毛色が違うのだ。
七味はあくまでも風味付けで、日本らしい風味にするのは醤油だったり、味噌だったり、昆布や鰹の出汁だったりするよね。
そこにアクセントを加えるもので、七味を使っても日本らしくはならないのだ。
でも、そばにチリペッパーを入れると日本らしくはなくなるけど・・・。
おそらくこれはそもそもの香辛料の使い方の違いなのかも。
香辛料はもともと、風味付けと言うよりは臭み消しに重要な意味があったのだ。
欧州で胡椒をはじめとした香辛料が珍重されたのも、鮮度が落ちて多少悪くなった肉をおいしく食べるためだよね。
欧州でも、新鮮な食材は塩と香草だけで食べたりするし。
イタリアのアクア・パッツァなんかは塩と魚貝から出る出汁でおいしく食べるもの。

日本はというと、仏教が普及して以降、そもそも獣肉をあまり食べなくなっているのだ。
海産物の場合は鮮度が落ちるとすぐに食べられなくなるから、鮮度のよい打ちに食べるか、干物や塩漬けなどの加工品にするかなので、香辛料を使ってちょっと傷んだものを食べる、ということもまずないし。
たまに食べる獣肉(イノシシ、シカ、ウマ、ウサギ)なんかでも、臭み消しはショウガと味噌程度だよね。
頻繁に食べるものではないし、食材の調達地と消費地がそこまで離れていないので、それで足りたのかも。
なので、香辛料的なものはアクセントとして風味をつける、という方向で使われることが多かったのだ。
ジャパニーズ・ペッパーと呼ばれる山椒なんかはまさにそうで、ぴりっとはするけど、その辛さを前面に出すことはあまりなく、やっぱりさわやかな香りを期待するものだよね。
紫蘇や葱、茗荷、山葵なんかと同じで薬味なのだ。

それが凝縮しているのが七味。
7種類のスパイスを混ぜることにはなっているけど、何を混ぜるかは厳格に決まっていないし、そもそも7種類じゃない場合も。
「七味唐辛子」という名前なので「唐辛子」は絶対に入るとしても、常勤メンバーは、山椒、麻の実、胡麻、陳皮など。
これに紫蘇や青のり、生姜、芥子なんかがくわわるけど、ブレンドはむしろそれぞれのお店の腕の見せ所なのだ。
ボクは祇園の原了郭の黒七味が好きだけど。
老舗もあって、日本最大七味と呼ばれるのは、浅草のやげん堀(元は両国薬研堀にあった)、京都三年坂の七味屋、長野善光寺門前の八幡屋礒五郎の3つなんだって。

起源の説はいろいろあるんだろうけど、江戸初期に両国薬研堀で唐辛子に山椒や胡麻、陳皮などを混ぜた「なないろ」というい名の混合スパイスが販売されるようになったのが最初と言われるよ。
この店が浅草仲店に移転したのが今の「やげん堀」。
当時は、お祭りの露店に来ている店のように、客の要望に応じてブレンドを買えてくれたようで、山椒多め、とか、胡麻抜き、とかもできたとか。
これが名物になって各地に広まっていったんだけど、特に有名になったのが、残りの二つだったみたい。
京都の清水寺に行ったついでに七味を買うのは定番だし、善光寺の最寄り駅であるJR長野駅にはそれこそいろんな七味が売られていて、今でも人気なのだ。

現在は海外にも展開されているんだよね。
海外で日本食というと寿司や天ぷらが定番だったけど、いまは「焼き鳥」もメジャーなのだ。
材料的にも作りやすいしね。
で、この焼き鳥の普及とともに、七味も使われるようになっていったみたい。
ところが、海外の人には「しちみ」というのが発音しづらいし、「いちみ」ともまぎらわしいので、スパイス大手のS&Bは、海外販売用は「nanami」という名称で販売しているんだよ。
今はコロナで行けないけど、海外に行ったらスーパーなどにもあるので、確かめてみると面白いよ。