2020/05/29

DEMAE

コロナによる自粛ムードの中、よく見かけるようになったのが各種デリバリー。
マックやKFCはドライブスルーも好調のようだけど、そういう専用の設備を持っていない場合は、店に来てもらえない以上は、届けるしかないよね。
そのむかしは、そば屋や寿司屋なんかの特定の業種で、いわゆる「出前」や「仕出し」が行われていて、その後、宅配ピザを皮切りに中華や弁当屋、ファミレスなどのデリバリーも増えてきたのだ。
そして、今やUber Eatsによって、それこそ多種多様なお店の料理が自宅で食べられるようになったよね。

日本における出前の歴史は江戸中期頃までさかのぼれるらしいんだよね。
もともと江戸という年は、そのほとんどの土地が武家の屋敷で、商人を含む町人が居住できるスペースは限られていたのだ。
で、すでに江戸時代に百万都市で、それにもかかわらず、基本的には平屋建築しかないわけで、とかなり込み入った都市だったんだよね。
そんな都市で繁栄したのが、露店や行商という業態。
露店としては、そばや天ぷら、寿司なんかがメジャーで、人が集まる場所・時間にそこにお店を開いて商売するんだよね。

さらにサービスがカスタマーよりになっているのが行商で、これで居住場所近くまで売りに来てくれるのだ。
当時は「棒手振り(ぼてふり)」と呼ばれて、豆腐や納豆のような昭和の時代まであったものから、野菜、魚、惣菜なんかもあったようだよ。
当時の江戸は妻帯者が少なく、とういうより、男性人口が圧倒的に多かったので独身男性が多く住んでいたんだよね。
かつ、長屋なんかの場合は居住スペースもせまく、さらに、便利な家電もないから、ごはんを宅だけでもかまどに火を入れないといけないという状況。
そんな中で独身男性が自炊するのは非常に厳しいわけで、外食産業が発達していたのだ。

そして、やっぱり店舗の外食は高いので、露店でそばや寿司を立ち食いしたりするファストフード形態が人気。
とはいえ、これらはあくまで軽食なんだよね。
家でごはんを炊くにしても、おかずだけ買うことが多くて、そのときは行商人から買うことが多かったのだ。
納豆なんかは味をつけた上でネギも混ざっていて、ごはんにのせればすぐ食べられるような状態で売られていたみたい。
このほかにも、煮豆や佃煮なんかも売りに来たようだよ。

そんな外食文化の中江生まれたのが、できた料理を家まで運んでくれる「出前」。
おそらく庶民にはなかなか手が届かないもので、ある程度余裕がある人だけだけどね。
ウナギの蒲焼きなんかはすでに江戸時代に出前がなされていて、その際、ウナギが冷めないように炊きたてのごはんの中にうずめて運んだらしいのだ。
そのときのウナギのたれのしみたごはんがおいしいというので鰻丼が生まれた、という説もあるよ。
また、花街には「仕出し」があって、遊郭で遊ぶ際は酒や料理はその店舗内で用意されているわけではなく、料理屋からの仕出しだったのだ。
こうして、料理を運ぶ文化が築かれてきたわけ。

昭和になるとそばや寿司、ラーメンなんかの出前はかなり庶民にも浸透しているんだよね。
カブで運ぶ際に揺れないようにする専用の装置まで開発されるくらいに。
おそらく、あんまり欧米ではない状況なんだよね。
無効は食べに行くか、持ち帰るの2択だったわけで。
そこで状況が変わってくるのが、「デリバリー」という概念。
べいこくでもおそらくピザが最初なんじゃないかと思うけど、家に料理を届けてもらう、という業態が出てきたのだ。
もともと「ケータリング」という形で料理を外注することはあったんだけど、「ケータリング」の場合はできた料理を持ってくる、というシンプルなものではなく、サーブする人や料理人も混みでやってきて、その場で仕上げや盛り付けをするようなものだたんだよね。
なので、持ってきて終わり、というのはなかったようなのだ。

これが日本にやってくると、日本でもピザに始まって様々なデリバリーが生まれたわけ。
それまでは店舗でも食べられるし、出前もできるし、という業態が多かったけど、ここに来て「デリバリー専門店」というのが出てくるんだよね。
ただし、これらの業態においては自前でデリバリー・スタッフを用意する必要があって、誰でもが手を出せるものではなかったのだ。
だからこそ専門店という形態をとったんだろうけど。

さらに自体が大きく変わるのが、配達行為のアウトソーシングという発想。
もともとUberは、携帯アプリを通じていわゆる白タクの斡旋・仲介を行うサービス形態を始めたわけだけど、それをデリバリーの配送部分に当てはめたのがUber Eatsなのだ。
これまでの出前やデリバリーは配達に要するコストがあらかじめ原価に乗っていたわけだけど、配達の外注によって別途配達料を取ることにしたんだよね。
で、手数料を除いて配達をした人に対価として支払うシステムにしたのだ。
欧米ではもともとかなり普及していたんだけど、独自の出前文化もあり、また、コンビニやスーパーに行けばすぐに弁当が手に入る日本においてはあまり広まっていなかったのだ。
それが、コロナによる外出自粛要請で一気に広まったんだよね。
テイクアウトするにも家から出ないといけないわけで、全く家を出ないのなら届けてもらうしかないわけで。
これまでの出前やデリバリーと比べると配達料が上乗せになるので割高感があったんだけど、既存の出前やデリバリーだとやっぱり食べられるものが限られるので、自由に外食できなくなったこのタイミングで火がついたと考えられるのだ。

自粛ムードが終わった後にどこまで根付いているかはよくわからないけど、確かに便利は便利なんだよね。
その一方で、配達をする人たちは完全に出来高制なので、配達数をかせぐために無茶な運転をしたりして事故なども増えているようなのだ・・・。
そうなると、規制やらなんやらという話が出てきて、抑制方向にいくんだよね。
とはいえ、育児や介護などの理由で家から離れられない人には非常に便利なサービスでもあるわけで。
ポスト・コロナの中でどこまでUber Eatsが生き残っていくのかはなかなかおもしろそうなのだ。

2020/05/23

HEROの世界

なんだか一気に検察庁への注目度が高まったよね。
検察庁法改正を含む「国家公務員法等の一部を改正する法律案」は今国会ではこれ以上審議されないことになったのだ。
そして、最後の最後で黒川さんが文春砲で辞任するとは思わなかったけど・・・。
でも、これって多くの人がそうだと思うけど、そもそも検察庁法ってなんだ?、という疑問があったので、少し調べてみたよ。

霞が関の中央省庁の中で、各省の下に設置されている「○○庁」や「○○委員会」という組織の多くは「外局」と呼ばれるもの。
国家行政組織法は、内閣補助機関(内閣官房や内閣府、復興庁など)を除く行政機関の在り方を規定している法律だけど、その第3条の第1項~第4項までに省、庁及び委員会の基本的な考え方が示されているよ。
別表第一には各省に外局としておかれる庁及び委員会の一覧が示されているんだけど、その中には「検察庁」は入っていないんだ。
文部科学省の下の文化庁や、国土交通省の下の海上保安庁、環境省の下の原子力規制いい内なんかは外局なので、しっかりと入っているよ。
では、「検察庁」の位置づけは何か、というと・・・。
国家行政組織法第8条の3に来ている「特別の機関」なのだ。
同条では「第三条の国の行政機関には、特に必要がある場合においては、前二条に規定するもののほか、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律の定めるところにより、特別の機関を置くことができる。」としているよ。

「特別の機関」としてどんなものがあるかというと、外務省の在外公館、文部科学省の日本学士院、国土交通省の国土地理院などなどだよ。
これらは、専門的な行政実務を担う「準外局」的な位置づけの組織。
「庁」とするまでもないけど、一定の独立性を持って業務を行うと言うことのようなのだ。
一方で、総務省の中央選挙管理委員会のような合議制機関の特別の機関については、外局である原子力規制委員会ほどではないけど、格が高いもの、ということで「特別の機関」になっているみたい。
いずれにせよ、「外局」より下に位置づけられているのだ。
でも、「検察庁」の場合はこれらと少し色合いが違うんだよね・・・。
「外局」だと完全に「省」の下部組織になるんだけど、法務省と検察庁の関係はそれとは少し異なるのだ。
「外局」よりさらに下の下部組織的な位置づけの他の「特別の機関」との並びで言うと据わりはよくないのだけど、「特別の機関」になっているみたい。
そのあたりは、「検察庁法」の中にも明確に表れているのだ。

まず、法務省設置法第14条に検察庁についての規定があって、第1項で別の法律で検察庁を設置することを定め、第2項で検察庁については検察庁法の規定によることが規定されているのだ。
つまり、検察庁の設置も検察庁の業務のやり方もすべて検察庁法によるとされているのだ。
で、検察庁法の方に様々な検察組織の規定があるんだよね。
今回問題になった定年に関する規定は第22条だよ。
ここで定年を過ぎても必要であれば業務を継続させる云々の話があって、直前に行われた黒川さんの定年延長の特殊事例との関係が問題視されたのだ。

検察庁法の話に戻ると、まず、ボクがあまり認識していなかったのは、「検察庁」というのは各種検察組織の総称であって、文化庁やら資源エネルギー庁のような組織体があるわけじゃないこと。
検察庁は、各種裁判所に対応する組織で構成されていて、最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁及び区検察庁になっているのだ。
で、これら全部をまとめて「検察庁」と呼ぶのであって、「検察庁」の下に地方組織がぶら下がっているわけではないんだね。

検察官で一番偉いのが検事総長で、この人は最高検察庁の庁でもあって、すべての検察官の指揮監督を行うよ。
その下が次長検事で、各高等検察庁の長となるのが検事長、各地方検察庁の長となるのが検事正なのだ。
で、法務大臣との関与で言うと、第14条に規定があって、大臣は一般的な指揮監督権限は持っているのだけど、捜査や処分に関する指揮監督権は検事総長のみが持っているのだ。
これにより、行政機関の中でも内閣と一定の独立性を持って業務の遂行ができることになっているよ。
騒動の時には「三権分立が」なんて話もあったけど、検察はあくまでも行政の一部で、司法ではないのだ。
でも、政治からは独立性が必要なのでこういう規定が存在しているわけ。
本当に内閣が恣意的に検察幹部の人事に介入することこことの関係が問題になる、というのが本質だよ。

ちなみに、検事総長は英語で「Attorney General」なんだけど、米国だとこれって「司法長官」なんだよね。
つまりは閣僚級の政治任用ポスト。
大統領は検察のトップを任命しているのだ。
ただし、米国の場合は政治任用ポストの任命には上院の承認が必要なので、そこで「恣意的」な人事はできないように睨みをきかせているのだ。

というわけで、おそらく秋の臨時国会ではもう一度この検察庁法改正案を含む「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が審議予定。
こうやってちょっと中身を知ると、より理解しやすいはずなのだ。
夏休みを挟んで覚えていなくちゃいけないけど(笑)

2020/05/16

ひろがりにくくなっている?

日本でもやっとコロナが落ち着いてきた感があるね。
でもでも、すでに海外でもそうなっているように、制限が緩和された瞬間にまたぶり返すこともあるから、油断はできないのだ。
いきなり元の生活に戻るのはまだ難しそうだよね。
で、そんな状況なんだけど、欧米と比べると、どうも東アジア一帯は重症化例や死者が少ないんだよね。
最初はBCGによる自然免疫活性化の効果か、なんて話も出たけど、最近になって、日本を含むこれらの国ではすでに「集団免疫」が獲得されているのではないか、という説が出てきたのだ。


「集団免疫」という概念は、社会やコミュニティやそういった大人数のグループの中で、一定数以上の人が免疫を獲得すると、それ以上感染が広がらなくなる、というもの。
今回のコロナで有名になったもので、「再生産数」というのがあるけど、これは一人の人が感染した後、どれだけの人にさらに感染させるかを数値にしたもの。
これが1より大きい数だと、まさにねずみ算式に感染者が増えていくんだよね・・・。
逆に、これが1以下になると新規感染者数が減っていくので、やがて収まるというわけなのだ。
で、これは数学モデルを当てはめるとある程度計算できるもので、グループの規模や人口密度、人と人の接触の度合い等々を勘案すれば、どれくらいの割合で免疫が獲得されていれば再生産数が1未満になるのかはわかるのだ。
これは「閾値(いきち)」と呼ばれるよ。
集団免疫が確立するまでは、隔離によって強制的に感染の広がりを抑えるしかないんだよね。

この集団免疫を人工的に獲得させる手段が予防接種。
インフルエンザなんかがよい例で、予防接種でしっかり多くの人が免疫を獲得できれば、壊滅的なアウトブレイクは発生しないのだ。
ボクの子供の頃は有無を言わさず予防接種をしていた記憶があるけど、今では希望性なので、ちょっと危ないんだよね。
新生児や妊婦、免疫系の疾患のある人などなどはもともと予防接種ができないので、義務化しても摂取率は100%にはならないのだけど、集団免疫の考え方で行けば、閾値を超える割合の人が予防接種で免疫を獲得していればいいので、それ自体は問題ではないのだ。
でも、予防接種が任意になると、十分な割合で免疫が獲得されないので、「はやってしまう」おそが高くなるのだ。
予防接種の場合、自分では予防接種を受けずに集団免疫のおかげで恩恵を受ける人は俗に「フリーライダー」とも呼ばれるのだけど、「ただ乗り」が多ければ集団免疫が獲得できなくなる、ということなのだ。
ただし、インフルエンザの場合は、流行しそうな株を3種混合して予防接種しているんだけど、この予想は必ずしも当たるわけではないので、予防接種しておけば流行しない、というわけでもないので、難しいんだよね。
インフルエンザ脳症などの重篤な副反応のリスクがある中、子供に対する予防接種を義務化できない、という流れになっているのだ。

今回のコロナで言うと、新しい説では、武漢で最初に流行した重症化しづらい(弱毒)ウイルスを早々に輸入した国・地域では、それに対して免疫が獲得できたので、どこかで変異して欧米で流行したより症状が重い(強毒)ウイルスの感染がそこまで広がらないのではないか、としているよ。
日本や韓国はそれこそ春節の時期にたくさんの中国人観光客を迎えていて、その際に、弱毒ウイルスも入ってきていて、重症化しづらいので目立たないけど、広く感染が広まって集団免疫につながっていたのではないか、とのこと。
確かにそう言われると説得力があるんだよね。

これから抗原検査も始まるけど、ウイルスのキャリアをより補足しやすくなるのだ。
抗原検査はPCR検査に比べれば時間も短く、より簡便にできるので、期待されているよ。
一方で、抗体検査というのもあって、これはコロナウイルスに対する交替の有無を調べるもの。
これって一度でも感染して免疫ができた人であれば陽性になるので、特に症状は出なかったけど陽性の人が非常に多く出てくれば、集団免疫獲得説はさらに信憑性が増すのだ。
新規感染者のサーベイも重要だけど、疫学的には本当にどれだけ感染していたのかもよくよく調査した方がよいかもね。
集団免疫が獲得できているかどうかで、制限解除後の対応もかなり変わってくるはずだから。
それにしても、今回のコロナでみんな伝染病に関する知識レベルは相当上がったよね。

2020/05/09

虫下しが効く?

新型コロナが日本でも落ち着きを見せつつあるよね。
もちろん、ここで油断するとまたぶり返すので、しっかりと収束させることが必要。
そのためにノーベル賞科学者の山中先生なんかもPCR検査の増強などの提言をしているのだ。
もちろん、現状では確立した治療法がないのでむやみに検査すればいいというわけではないのだけど、重要なのは、ウイルスのキャリアをしっかりと隔離する体制を作ることのようなのだ。
新規感染者数が減ってくればこれも現実的なわけで、PCR検査数を増やして可能な限り感染者(無症状を含む。)を隔離し、新たな感染を発生させないようにしよう、ということみたい。
それならやっと意味が通るよね。

で、隔離だけだと対症療法や自然治癒だけで治してもらうしかないわけだけど・・・。
「軽傷」と言いつつ、人工呼吸器を使わないだけでインフルエンザ並みの症状が出たり、間質性肺炎で修復不可能な傷が肺に生じたりするので、そうもいかないわけで。
そうなると、やっぱり効果的な治療法がほしいわけ。
今はアビガンがすっごい期待されていて、政府としては、米国で緊急に承認されたレムデシビル(抗エボラ出血熱薬)の特例承認が大きく報道されているよね(先進国で一度承認された薬剤はより簡便な審査で国内承認がとれる制度があるのだ。)。
その中で、全く毛色の違うものも注目を集めているのだ。
それが、駆虫薬のイベルメクチン。

イベルメクチンは、やはりノーベル賞受賞科学者の大村智先生は発見した抗生物質をもとに作られた、マクロライド系の経口駆虫薬。
静岡のゴルフ場にいた放線菌で発見した抗生物質がもとになった、とノーベル賞受賞の時に話題になったもの。
抗生物質でありながらいわゆる通常の細菌(バクテリア)にはほぼ抗菌活性がなかったんだけど、線虫や回虫、糸状虫などの寄生虫駆除には非常に有効だったのだ。
なので、最初は動物医薬として使われ、犬のフィラリア予防薬なんかでブレイクしたんだよ。
その後、ヒトにも使われるようになり、熱帯地域の寄生虫に由来する様々な風土病に有効だったことからノーベル賞につながったのだ。
で、豪州のグループが試したところ、この薬が新型コロナに効くかもしれない、ということなんだよね。

イベルメクチン自体はわりと大きめの化合物で、寄生虫駆除に機能していると言われているのは、無脊椎動物の神経・筋細胞に存在するグルタミン酸作動性塩化物イオンチャネルに特異的かつ高い親和性を持つことにゆらいしているのだ。
常にスイッチがオン状態になることで神経や筋肉が麻痺してしまうようになるんだよ。
でも、ウイルスへの作用はこれとはまた違ったもので、あまり詳細はわかっていないのだ。
でも、もともとHIVやインフルエンザのようなRNAウイルスに対して抗ウイルス活性がある、という報告があって、それで豪州のグループが試してみたらしいよ。

例えば、アビガンはRNAウイルスの増殖の根幹となるRNA合成酵素の働きを阻害するんだよね。
レムデシビルも同じような感じだよ。
これはウイルス活性がわかりやすい。
よくわからないけど効いてそうと言われているのがBCGワクチンや抗マラリア薬のクロロキン。
これらは、自然免疫を活性化するからでは?、と考えられているのだ。
なので、治りが早くなるかも、重症化しないかも、というもの。
さらに、ドイツでは、カモスタットとかナファモスタットというセリンプロテアーゼ(活性中心にセリン残基を持つタンパク質分解酵素)の阻害薬が試されているよ。
コロナウイルスは細胞内に侵入するときに宿主側のセリンプロテアーゼをうまく利用することが知られていて、これらの薬剤はそれを阻害するので、感染を邪魔すると考えられているのだ。

イベルメクチンについてはよくわからないのだけど、細胞内に侵入したウイルスが細胞核内へ移行するのを防ぐのではないか、と一部で考えられているようなのだ。
コロナウイルスはやっぱり宿主の細胞内にあるタンパク質の力を借りて核内へ入っていこうとするんだけど、このウイルスがくっつくタンパク質に先にイベルメクチンがくっついてしまうことで、ウイルスが細胞核内にたどり着けないようにしている、ということ。
核内まで行けなければ自分のウイルスゲノムRNAを複製したり、ウイルスタンパクを合成したりできないので、ウイルスが増えないというわけなのだ。
とはいえ、そもそもイベルメクチンの各種作用はよくわかっていないので、なんとも言えないのだけど。

いずれにせよ、すでに使われている薬で副作用もわかっているものなので、イベルメクチンが新型コロナに効くとなれば福音なのだ!
作用機序はよくわからなくても使われている薬はあるし(特に古い薬)、とりあえずは治療の手段が持てると言うことが大事だよね。
もちろん、効くメカニズムがわかれば、もっと
抗コロナウイルス活性に特化した薬剤が作れる可能性があるので、そっちの研究も大事なんだけど、まずはイベルメクチンが使える薬なのかどうかが大事だよ。

2020/05/02

特効薬か?

コロナは少し収まってきたようなデータになっているけど、緊急事態宣言は延長されそうだね。
ここで気を抜くとぶり返すおそれもあるし、第二波も来るかもしれないからね。
特に、自粛の反動で連休中に外出が増えるとまずそうなのだ・・・。
今年はもう我慢するしかないよね。
そんな中で、大きな希望となりつつあるのが、特効薬として期待されるアビガン。
これは富士フイルムの子会社の富山化学工業が富山大と共同で開発したインフルエンザ用の抗ウイルス薬。
タミフルよりも治療効果が高く、薬剤耐性も生じないと言われている薬だよ。
これが新型コロナウイルスにも効くかもしれない、ということで世界中で期待されているのだ。

アビガンというのは登録商標で、化合物名は「ファビピラビル」。
これはリボ核酸(RNA)のプリン型の核酸(アデノシンやグアノシン)に形が似ていて、RNA合成を阻害するのだ。
インフルエンザウイルスやコロナウイルスはRNAウイルスと呼ばれるもので、遺伝情報をRNAの形で保存しているんだよね。
で、感染した後、そのRNAを鋳型に複製を作らせるんだけど、この世の生物の遺伝情報はのきなみデオキシリボ核酸(DNA)の形で保存されていることもあって、そのまま感染した生物(宿主)の中に元来あるメカニズムでは複製できないのだ。

そこで出てくるのが、ウイルス特有のRNA依存性RNA合成酵素というやつで、これはRNAウイルスにとって非常に重要な遺伝子となっているよ。
まず、この合成酵素を宿主に作らせ、自分を複製していくことになるのだ。
つまり、この酵素が働かなくなれば、ウイルスは増殖できなくなる、ということで、それがこの薬の抗ウイルス作用のもとになっているよ。
もともとはインフルエンザ用に開発されたわけだけど、ノロウイルスのような他のRNAウイルスにも有効だという知見がもともとあって、それで今回の新型コロナウイルスにも使えるのでは?、と試されるようになったわけ。
まだ十分に科学的な証拠が集まっているわけではないけど、なんとなく効きそうなんだよね。
実際に石田純一さんや宮藤官九郎さんはアビガンの服用で治ったと言われているよね。

かなり細かい話になるんだけど、RNAウイルスには、どのような形で遺伝情報としてのRNAを持っているかでさらに分類されるのだ。
まず、二本鎖なのか、一本鎖なのか。
一本鎖の場合はさらに分かれて、+か-かというのがあるのだ。
これはRNAのオス・メスみたいな話で、+というのは、そのままタンパク質の設計図になる配列を持つRNAのこと。
逆に、-の方は、自分自身は鋳型にはならず、それに相補的なRNAが設計図になるもの。
つまり、+鎖を持っている場合はそこからいきなりタンパク質が作れるんだけど、-鎖の場合はいったん相補的RNAが作られないとタンパク質の合成はできず、何よりもRNA依存性RNA合成酵素がないと何もできないんだよね。
なので、インフルエンザウイルスのような一本鎖-鎖RNAウイルスの場合は、最初からウイルスの中にこの酵素が入っているんだよ。
+鎖だと感染してから作らせればいいんだけどね。

なお、+鎖はさらに二つあって、コロナウイルスやノロウイルスはそのまま自分のRNAをタンパク質の設計図にも使うし、遺伝情報の総体(ゲノム)にも使うんだけど、中には、逆転写と言っていったんゲノムRNAに相補的なDNAを作り、そのDNAからmRNAを作らせてタンパク質を合成するものもあるのだ。
この逆転写を行うものをレトロウイルスと呼ぶんだけど、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)なんかが代表例だよ。
逆転写させる場合は、ゲノムRNAに相補的なDNAを作った後、それを二本鎖にし、さらに、宿主のゲノムDNAの中に挿入するのだ。
こうすることで、宿主のゲノムにコードされている遺伝子制御領域なんかを転用できるわけ。
そして、プロウイルスとしてサイレントに細胞内に潜伏するのだ・・・。
HIVの潜伏期間が異様に長いのはこのためだよ。

で、ノロウイルスはコロナウイルスと同じ一本鎖+鎖RNAウイルスなので、ノロに効くならコロナに効くかも、という発想が出てくるわけだよね。
インフルエンザの場合は、上で見たように最初にRNA依存性RNA合成酵素が働かないと感染が成立しないから、本当の入口を押さえるわけ。
でも、+鎖の場合は、最初にすでに設計図のRNAを持っているので、それをもとにウイルスタンパク質は多少は作られてしまうんだよね。
これが感染・症状にどこまで影響を及ぼすのか、というのがおそらく鍵なのだ。
でも、+鎖でも、RNA依存性RNA合成酵素さえ阻害してしまえばそこまで増えないので、有効ではあるはずなのだ。
これが本当に特効薬だとよいのだけれど。