2011/07/30

ワーラーを吸うわら

日本全国が肉牛(「にくうし」と読むんだよ。)のセシウム汚染で大騒ぎ!
これまで日本の牛肉は世界的にも安全・安心でおいしいと評判だったんだけど、その信頼も失われつつあるのだ(ToT)
当然すべての肉牛が汚染されているわけではないけど、いわゆる「風評被害」で日本の牛肉全体が危険と思われてしまうんだよねorz
しかも、東北の国産牛って関東地域ではブランド牛として扱われていただけに、畜産農家のショックも大きいだろうねぇ。
なにしろ、これまで高値で取引されていたものが値がつかなくなるんだから。
これは将来的な影響もあるので、かなり深刻な問題だよ。

で、その原因となったのが、飼料として使われていた稲わらの汚染。
農林水産省も震災後に「気をつけるように」という通知を出していたんだけど、そこには「乾牧草」とは書いてあっても、「稲わら」とは明記されていなくて、「など」に含まれるとして解釈する必要があったんだって。
ま、それはよくあることのような気もするけど、周知徹底の方法に問題があったんじゃないか、とも言われているよね。
結果として起きてしまっていることなので、犯人捜しや責任の追及をするよりも、まずはすでに流通してしまった汚染わらを追跡して、飼料として使われないようにすることが大事だと思うけど。

で、この稲わら、宮城県から出荷されたものが汚染されていたんだよね。http://www2.blogger.com/img/blank.gif
ところが、文部科学省で発表している航空機モニタリング(米国のエネルギー省の協力を得て空中から線量分布を測定しているものだよ。)の結果をみると、宮城県内はさほど高い数値は出ていないのだ!
すると、考えられる原因としては、少し前に話題になった「特定避難勧奨地点」、いわゆる「ホットスポット」のように局地的に線量の高い場所があって、そこにたまたまわらがあった、というもの。
でも、これって偶然が重ならないとそうならないし、今では他の地域でも汚染されたわらが見つかったりしているので、そういう話ではないはずなのだ。

そこで考えられているのが、稲わらでは放射能が濃縮されてしまう、という説。
もともと東北地方では、開きに稲を刈り取り、稲わらは水を抜いた田んぼに並べてしいておくんだって。
で、冬に雪が降って、それが融けてまた乾燥したころにロールして出荷されるそうなんだ。
これが「春わら」と呼ばれるもので、東北地域は一大生産地だとか。
それで東北から出荷された稲わらが全国的に広がってしまったようなんだよね。
でも、稲わらが汚染されているのがわかっているので、それを追えば二次被害は防げるはずで、稲わらの流通をしっかり抑えれば次の犠牲(まさに牛偏だね・・・。)はでないはず。

では、なぜわらの放射能が濃縮されたか。
稲わらは、田んぼ一面に並べてあって、本来地表に付着するはずだった放射性セシウムを吸着してしまうんだ。
空から降ってくる放射性セシウムは、大気中を漂っていたのが雨や雪と一緒に降下してきたもので、水をよく吸う性質のある稲わらはこれをたくさん吸収するわけ。
地表面だと一部の雨水は表面を流れていってしまうし、地下にも浸透していくけど、稲わらはその分も含めて全部吸っているのだ。
で、それが乾燥すると、稲わらにだけ放射性セシウムが残るわけ。

で、その放射性セシウムを吸った稲わらをロール状に巻いていくと、1カ所に集められるので放射能が高くなるのだ。
これは福島県の小学校で汚染された校庭の表土を削って、校庭の隅に置いておいたら、そこだけ空間線量が高くなった、というのと同じ。
一様にうすく分布していたものがまとめられると、単位体積当たりの放射能が高くなるのだ。
さらに、稲わらは体積のわりに軽い(比重が小さい)ので、単位重量当たりの放射能で見ると数字が大きくなるのだ。
報道でよく使われる「○Bq/kg」という単位がそれだよ。
稲わら1kgって相当あるんだよね。

こういうようにして放射能が濃縮されていくので、地表面の放射能(空間線量率)を測定するとたいして高くないのに、そこに並べてあった稲わらの線量は高くなってしまうのだ。
地面から生えている牧草も同じようなことが言えると思えるんだけど、牧草は生えている間は縦になっているので、意外と雨に振れる面積が少ないし、何より稲わらのように雨水を吸収しないのだ。
なので、震災後に刈り取った牧草を乾燥させた乾牧草は稲わらほど線量が高くないんだって。

これで本当にすべてが説明できるかどうかはわからないけど、かなり説得力のある説明だと思うんだよね。
そして、汚染された稲わらがあった地域は危ない、といういい加減な流言の否定にもつながるのだ。
大事なのは、稲わらは汚染が濃縮されるから線量が高いだけで、それがあった地域は必ずしも線量が高くない、ってことなんだ。
汚染された稲わらが見つかったからといってすぐに逃げ出すような話ではないのだ。
ただし、逆に、そんなに汚染されていない地域でも、今回の稲わらのように汚染が濃縮される可能性はあるわけで、そこは気をつけないといけないんだよね。
すでに雨樋の下や下水の汚泥は放射能が濃縮されていることが知られているけど、そういうのが事前にわかっていれば気をつけようがあるからね。
それと、稲わらは有機農法に使う堆肥の原料にもなるので、そっちも気をつけないといけないのだ!

2011/07/23

「エセ」に気をつけろ!

なんだか原発の事故以降、ネットに玉石混淆の情報が蔓延しているのだ(ToT)
勘違いとか理解が足りないくらいならまだよいんだけど、科学的な説明のフリをしてさも説得力を持たせようとしているものはたちが悪いのだ。
リテラシーが十分に高くないといいようにだまされちゃうからね。
これは政府とか公的な発表も同じなんだけど、やっぱり情報は自分で吟味して峻別しないといけないのだ!

そんな中で少しびっくりしたのは、「人間が化石燃料を燃やすぐらいで増えたCOは、むしろ雲の発生を促し地球を冷やす効果もある」とかいう主張。
実際、エアロゾルが増えると雲が増え、それで日射が遮られて寒冷化する、という話はあるのだ。
これを日傘効果と言うらしいんだけど、恐竜の絶滅の原因と考えられている巨大隕石の落下(グレート・インパクト)はまさにユカタン半島への巨大な隕石の落下でで空中にたくさん粉塵が舞い上がり、それで日光が遮られて寒冷化したと想定されているんだ。
そのせいで植物は枯れ、草食恐竜がいなくなり、肉食恐竜も絶えたのだ・・・。
これは大規模な火山噴火でも同じようなことが起きると考えられていて、噴煙や火山灰で空が暗くなるほどの噴火だとそういうことが起きる可能性があるのだ。

ただし、これはエアロゾルの話で、二酸化炭素だとまたちょっと事情が変わってくるはずなんだよね。
まず、二酸化炭素が増えることによって雲が増えるという部分から怪しいんだけど、これって、二酸化炭素により大気の温度が上がるのできやすくなる、というところから来ていると思われるのだ。
でも、それってそのまんま地球温暖化だよね?
二酸化炭素で地球の気温が上がる、という前提が成立しない限り、二酸化炭素が増えて雲が増える、ということにはならないはずなのだ。

よしんば二酸化炭素の増加で雲が増えたとしても、おかしな話があるんだよね。
確かに雲が大量にできれば日光が遮られて地表面の温度は下がるけど、太陽から来るエネルギーが変わらない限りは大気はその分余計に温まっていることになるはず。
すると、地球全体で見れば気温は下がることはないのだ。
さらに、二酸化炭素などの温暖化ガスは熱をため込む性質(正確には、放射熱として出される赤外線を吸収する性質)があるので、地球から宇宙への熱放出(輻射)は減るはず。
すると、全体的には地球の温度は上がるはずだよ。

もともと地上は太陽光で昼間温められ、夜になると熱(赤外線)を放射して冷めていくのだ。
このサイクルで温められるのと冷めるのとが釣り合っているので地上での気温がズーと上がり続けたり、下がり続けたりすることがないわけ。
地表から放出された熱=赤外線は大気の中をとおり、複雑なプロセスを経て最終的には宇宙空間へ放出されるんだ。
で、この熱の放出量が太陽から受けるエネルギーと釣り合うから地球の温度がほぼ一定に保たれるわけ。
受ける熱量の方が多ければ温度が上がりすぎて地球は融けてしまうし、出す熱量の方が多ければ氷の惑星になってしまうよね(>o<)

で、二酸化炭素の増加は、このバランスを少し崩すのだ。
二酸化炭素に熱がトラップされる分だけ放出量が減るので、徐々に地球が温まるというわけ。
ただし、地球の温度は常に一定というわけではなくて、長期的に見ると変動しているのだ。
それが氷河期と間氷期というやつで、今の温度上昇もその変動の中のものでしかない、という考え方もあるんだよね。
一方で、化石燃料を使い始めてからは急激に温暖化が進んでいるので、自然な変動では説明できない、人為的な要素がある、というのが地球温暖化問題を考える上での原点だよ。
こればかりはなかなか決定的な証拠がないわけだけど、一般的には二酸化炭素が増えることが温暖化につながるという認識だよね。
地球温暖化問題に関して、政治的な理由も含めて懐疑論があるけど、物理的な性質や状況証拠から多くの懐疑論は反論できるのが現実だよ。
ただし、どんなものでもきちんと科学的に反論していくのが大事なので、そういうものに耳を傾ける姿勢は大事なのだ。

ちなみに、原子力発電は発電過程で二酸化炭素を出さないから地球温暖化問題に貢献する、という説明がよくなされていたけど、これも正直あやしいんだよね。
まず、原子力発電所は設計基準が厳しいので、他の発電所に比べると建設にエネルギーがかかるから、そこでは他の発電所より多くの二酸化炭素を出しているはずなのだ。
さらに、原子力発電特有の問題として、放射性廃棄物の処理の問題があるんだよね。
まだ最終処分の方法も処分場所も決まっていないけど、数千年とか数万年のオーダーで管理しないといけないんだよね・・・。
すると、その管理の分のエネルギーも必要なわけで、そこには当然二酸化炭素の排出が伴うのだ(そのときまでにすべてのエネルギーが二酸化炭素の放出なしに得られるようになっていれば別だけど・・・。)。
というわけで、「発電プロセスで」という仮定があれば正しいんだけど、本当に原子力発電が温暖化問題に貢献するかどうかは微妙だと思うのだ。
ま、もともと廃棄物問題があるから決してクリーンとは言えないと思うんだけど。

さらに余談だけど、じゃあ原子力発電をやめるか、というと、なかなかそうもいかないんだよね。
現在の電力需要を支えるためのベース電源としては有力であることは確かだと思うのだ。
太陽光や風力で代替なんて言うけど、そういう発電量が一定しない発電方法だと「使う分だけ発電する」という電力消費の特性に対応できないのだ。
これを同時同量というんだけど、発電量が多すぎても送配電網に障害が起きるし、発電量が少ないと瞬時に停電するから、厳密な発電量の制御が必要なのだ。
今は原子力や石炭火力、水力でほぼ一定量の発電を続けてベースを作り、その上で発電量制御が比較的容易な天然ガス火力や石油火力で調整しているんだよ。
太陽光や風力は微々たるものなのでさほど影響は与えないけど、こういう天気任せの発電方法のシェアが増えると同時同量の達成が非常に難しくなるのだ。
なので、現在の技術の延長線上では原子力の代替とはなり得ないんだよね。

いやな話でも、それが現実なのだ。
というわけで、脱原発をするのであれば、徹底的に電力消費を抑える必要があって、それこそ昭和30年代くらいのくらしにもどるとかしないとダメなんだよね。
で、二酸化炭素を出さないように火力も絞るとなると、江戸時代のような日が昇ったら起きて、日が沈んだら寝る見たいな生活をしないといけなくなるかもしれないってわけ。
生活の利便性とウラハラの関係であるということは頭に入れておかないといけないのだ。

2011/07/16

熱い汁を固めてぷるるん

やっぱり夏は水ようかんの季節だね!
ぷるるん、つるるんとさっぱりした甘さでおいしいのだ♪
でも、夏の和菓子には水ようかんだけじゃなく、色とりどりの寒天で固めた涼しげなお菓子があるのだ。
梅酒を固めた梅酒羹とか、夏みかん果汁を固めた夏柑糖とか。
寒天で水を表して中に金魚型の練り菓子が入っているような和菓子(琥珀羹)もあるよね。
ボクは正直あまり好きではなかったけど、むかしおじいちゃんの家に行くと牛乳を寒天で固めた牛乳羹がよく出てきたのだ。

どうも羊羹に引きずられてか、こういうたぐいの餡や果汁などの液体を寒天で固めたものは「~羹」と呼ばれるよね。
寒天の「かん」のような気もするけど、これは漢字から羊羹の「かん」のようなのだ。
でも、これって本当はおかしな話なんだ。
というのも、「羹」はもともと羮に懲りて膾を吹く」の「あつもの」と読む漢字で、肉や野菜を煮込んだ熱いスープを指すのだ!
ということは、「~羹」だと「~のスープ」ということになってしまうよね(笑)

日本に羊羹の原型が伝わったのは鎌倉のころと考えられているんだけど、禅宗と一緒にやってきたのがポイントだったみたい。
中国の本来の羊羹は字義通り羊の肉を使ったスープなんだけど、冷めると煮こごりになってゼリー状に固まったようなのだ。
肉食が禁じられている禅宗では、その代わりに小豆なんかを使って似たようなものを作ったんだって。
小豆を煮て、小麦粉やくず粉と混ぜて蒸して固めたようなのだ。
これが蒸し羊羹の原型。

ちなみに、もう一つ説があって、羊の肝臓を模したお菓子に羊肝こうというのがあって、それが日本に伝えられる際に「かん」の字が間違ったというもの。
ちなみに、羊肝こうは点心で食べられていたもので、小豆を使った蒸し餅菓子だったようだよ。
これももともとは羊の肝臓が食べられていたんだけど、精進料理では肉食が厳禁なので、代わりに小豆で似せて作ったもののようなのだ。
いずれにせよ、本当は羊料理だったわけだね。

で、なんだかんだで蒸し羊羹が日本に伝来したんだけど、ここでもまだ「~羹」とは大きく違って寒天が出てこないのだ。
寒天を使った羊羹が出てくるのは江戸時代。
米粉を混ぜて蒸して作るういろうは蒸し羊羹の一種だけど、寒天で固める羊羹に比べるともっさりしているのだ。
ねっとりした食感がないよね。
寒天で固める煉り羊羹が出てきて、だんだんと近づいてくることになるよ。

でも、「~羹」に行き着くにはもう1ステップ必要。
今度は、よりつるんとした食感を出すために、水分量を多くした水ようかんが作られるようになるのを待たなければいけないのだ。
はっきりした年代は不明なようだけど、だいぶ時代をくだらないといけないみたい。
こうなると、小豆あんを寒天で固める、というテンプレートができあがるよね。
ちなみに、重要な材料である寒天も江戸時代の発明。
すでにところてんは食べられていたけど、それをいったん凍結させることで不純物を取り除いた寒天が広まるのは江戸時代になってからなのだ。

で、その水ようかんのバリエーションとして、小豆あん以外のものを寒天で固め始めるのだ。
これはもう明治に入ってからみたい。
牛乳羹なんかはもっと最近だろうけど。
同時に、寒天を使った甘味も明治から広まり出すのだ。
浅草の舟和がみつ豆を売り出したのが明治30年(1897年)で、ここからあんみつ、みつ豆、豆寒などの甘味が広まっていくんだ。
こうして、寒天を使った菓子が夏の風物詩となっていったのだ。

いやあ、もともとは熱いスープだったはずなのに大きな変革だよ。
もはやもとの意味はまったく痕跡もないし、むしろ熱いから冷たいだから逆になっているからね!
ちなみに、すでに辞書によると「羹」で餅菓子を意味すると載っているのだ。
これは蒸し羊羹などを念頭に置いたものだけど、九州のかるかんは「軽羹」で蒸した餅菓子だから、確かにその意味は生きているのだ。
とは言え、あんまり餅菓子の意味で「羹」を使っている例は少ないけどね。
そのうち、辞書的な意味でも、「羹」=「寒天を使った冷たいお菓子」というところに行き着くはずなのだ。

2011/07/09

クールビズのおともに

最近クールビズを実践して、ノーネクタイの開襟シャツで働いているんだけど、正直断然涼しい、っていう感じにはならないよね(笑)
ボクはシャツが張り付いて気持ち悪くなるのでYシャツの下にTシャツを着るようにしているんだけど、汗がたっぷり出るとやはりびしょ濡れになって着心地は悪くなるのだ・・・。
Yシャツだけの場合よりはましなんだろうけど。
でも、最近は技術力でそこもかなり改善されるんだよね。

それが、速乾シャツ♪
汗をぐんぐん吸い取って、でも、すぐに蒸発させるので常にさらさらの着心地。
ボクも持っているけど、確かにこれはすごいのだ。
シャツがべとつかないので涼しさもアップだよね。
やっぱりクールビズはこっちもセットじゃないと。

で、この速乾シャツだけど、ものすごく細い化学繊維でできているのだ。
通常ポリエステルやナイロンといった化学繊維は水を吸わないので、汗をかくと着心地がめちゃくちゃ悪くなるよね。
シャツと体の間を汗が流れていく感じ・・・(ToT)
ところが、この速乾シャツの場合は、細い繊維で編み上げることで、毛細管現象を利用してぐんぐんと汗を吸い上げるのだ。
顕微鏡で見たらわかると思うんだけど、細い繊維がからまって細かな隙間がたくさんできているのだ。
そこに水(汗)がしみこんでいくというわけ。
さらに、繊維が十字型になっていたり、繊維に細かい溝がほられていたりと、毛細管現象による吸水力をアップする工夫がしてるんだって。

ところが、速乾シャツのすごいところは汗を吸うだけではないのだ!
吸った汗をどんどん蒸発させていくからこそさらっとしているんだよね。
その秘密はやはり化学繊維を使っているところにあるんだ。
化学繊維は綿なんかの天然繊維と違って繊維自体が水を吸わないのだ。
なので、吸った汗は繊維と繊維の間にたまるわけ。
で、この繊維は細かったり、十字型だったり、溝がほってあったりして表面積を稼いでいるので、より蒸発しやすくなっているんだ。
すると、すったそばから蒸発をしていくというわけ。
繊維の中に水が残らないから、すぐに乾くんだよ。

さらに、多くの速乾シャツは生地が多層構造になっていて、吸った汗はどんどん表面に近い層に移っていくのだ。
すると、肌に触れている面はそんなにぬれていないんだよね。
さらに、表面加工もしてあって、細かい凹凸があるので、多少ぬれていてもべっとりと肌につくことはなく、さらっとした肌触りになるのだ!
最近では、繊維に表面加工して抗菌にしたりもしていて、汗のにおいの原因となる微生物の繁殖を防いでいるんだ。
もともと汗のにおいは、汗に含まれる皮脂などが微生物に分解されて出てくるにおい物質が原因なんだけど、水分がどんどん飛んでいくだけでかなり雑菌の繁殖は抑えられるんだよね。
なので、においも抑制できるのだ。

で、すごいようだけど、これって実はステテコと同じ原理(笑)
ズボンの下にはくステテコは、綿を平織りにして横糸を強くねじっておくことで「ちりちり」に縮ませたもの。
これにより、生地表面に凹凸があるので、肌にべっとりとくっつかないし、表面積も稼いでいるので、吸水性に優れているのだ。
さらに、比較的水分を蒸発させやすいので、わりとさらっとしているんだよね。
化学繊維でなくても、ほぼ同じ原理で速乾性と涼感を実現しているのだ!

確かにこの時期はYシャツが張り付くのもいやだけど、ズボンがべっとりとくっつくのもいやなんだよね(>o<)
なので、今年の夏は、上半身は最新技術の速乾シャツ、下半身は明治からの伝統のステテコで涼しく過ごすのがよいかも。
それにしても、意外とむかしのものって科学的に妥当なんだよね。
それをわざわざ最新技術を駆使して再現するっていうのもおもしろいのだ。
さすがに上半身はちりちりのシャツを上に着るわけにはいかないので、やっぱり速乾シャツが必要だけどね。

2011/07/02

まもなく最終便です

今月、いよいよスペースシャトルの最後の打上げが行われるのだ!
1981年4月にコロンビア号が打ち上げられて以来、30年もの長きにわたって運用され続けてきたんだよね。
30年前と言えばインターネットも携帯電話もない時代・・・。
最先端技術が駆使される宇宙開発の分野でそのころからの宇宙機が継続して運用されているというのはある意味すごいよね。
でも、さすがに米国も限界を感じていて、今回でいよいよラスト・フライトとなったのだ。

もともとはブッシュ(息子)政権が2004年1月に打ち出した宇宙探査構想(Vision for Space Exploration)の中に示された方針で、2010会計年度まで(2010年9月中)にスペースシャトルを退役させ、まずは有人月探査を再開した上で将来的な有人火星探査を行うための新しい有人ロケット・宇宙船を開発する、という方向性が打ち出されたのだ。
これを受けて始まったのがコンステレーション計画で、有人ロケットのアレスI、貨物運搬用ロケットのアレスV、カプセル型有人宇宙船のオリオン、月着陸船アルタイルなどが含まれていたんだ。
ところが、次のオバマ政権になって2010年に新しい宇宙政策が出されると、この方向性は中止されて、コンステレーション計画もキャンセルになったのだ。
ただし、この件では予算を作る連邦議会ともめていて、決着がついていないんだ・・・。
とりあえず次世代型の大型ロケットと多目的カプセル型宇宙船を開発する方向では合意しているみたいなんだけど。

で、もともとは去年の夏には退役しているはずのスペースシャトルだったんだけど、諸般の事情で退役できなかったのだ。
その大きな理由は「代替の手段がない」こと。
人の運搬についてはロシアのソユーズに頼らざるを得ないんだけど、物資の運搬は独自に民間の輸送サービスを調達することでまかなおうとしていたんだよね。
それが商業軌道輸送サービス(COTS:Commercial Orbital Transportation Services)というやつで、米国航空宇宙局(NASA)が民間企業を資金援助しながら、宇宙輸送系を開発してもらい、それを使って国際宇宙ステーション(ISS)へ物資の輸送をしようという計画だよ。
これにはOrbital Sciences社やSpace X社が参加しているんだ(それぞれ、トーラスIIロケット&キグナス輸送機、ファルコン9ロケット&ドラゴンカプセル輸送機)。
開発は進んでいるけど、スペースシャトルが退役するまでには間に合わない、というのが最大のネックなんだよね。

その間はロシアのプログレス、日本の宇宙ステーション補給機(HTV)、欧州の欧州補給機(ATV)などで補う予定だったんだけど、スペースシャトルに比べると輸送量がはるかに違うのだ!
さらに、スペースシャトル関連には大きな雇用問題がからんでいて、一気にリストラするわけにもいかず、できるだけ運用を延長したいという地元の意向(特にフロリダ、テキサス、アラバマなど)もあったんだよね。
さらに、スペースシャトルの不具合問題もあって、打上げが延期され、さらに、緊急用として確保していたアトランティスの打上げも正規に行うこととして、今回の135回目の打上げが最終となったのだ。
ちなみに、今回打ち上げられるアトランティスは初期に作られたオービターなので、30年以上前のもの。
といっても、打ち上げるたびに改修しているし、改造もしているので、まるで同じものではないんだけど。

ポスト・アポロ計画の中で出てきた「往還型宇宙機」の構想では、全部を再使用する予定だったんだけど、予算的な制約などもあって、現在の一部再使用型のスペースシャトルになったのだ。
実は、一部再使用と言いつつ、使い切りのロケット以上の運用経費がかかるもので、あんまり効率的じゃないんだよね・・・。
完全再使用ならまた別なんだろうけど。
さらに、チャレンジャーとコロンビアの二度の大事故を経て、チェックや改修の基準がきびしくなったので、ますます運用コストは上がったのだ。
もともとオービターと呼ばれる飛行機型の機体(宇宙空間に出るスペースシャトルの本体)と固体補助ブースター(打上げの時にオレンジの外部燃料タンクの両脇につける2本の固体ロケット)が再使用の対象。
一番大きな外部燃料タンクは使い切りだよ。

オービターはもどってきた時点でほぼオーバーホールの大改修。
コロンビアの事故では、宇宙空間で機体表面の耐熱タイルに傷がつき、それがもとで大気圏突入児に大爆発をしたので、入念なチェックが行われるのだ。
それ以降は、宇宙空間に出た後、ロボットアームの先につけた鏡で傷がついていないかどうかを確認しているんだよ。
固体補助ブースターは会場に落ちたものを改修するんだ。
固体ロケットは花火みたいなものなので、筒の中に火薬がつまっているだけなんだよね。
その筒を拾いに行くわけだけど、実際には、傷がついていたり、さびが出たりするとそれがもとで変な飛び方をしたり、場合によっては爆発するおそれがあるので、慎重にチェックして再使用するのだ。
ま、あんまり再使用感はないよね。

最初の構想では、人工衛星の打上げなんかもすべてスペースシャトルで行う予定で、必ず宇宙飛行士がついて行くので、場合によってはちょっと故障した人工衛星の修理なんかもできるんじゃ、と機体があったんだけど、現実はそんなに甘くなかったのだ。
それが端的に表れたのはチャレンジャーの事故。
ロケットの打上げというのが本来危険な作業で、必ずしも人がいなくてもいいような場合でも、人が乗り込んで宇宙に行かなければならないスペースシャトルでの人工衛星の打上げはキャンセルされることになったのだ。
そうなると、スペースシャトルは必然的に有人ミッションのためだけに使われることになり、ISSの建設が始まるまでは各種の宇宙実験を行うくらいのものだったんだよね。
そして、スペースシャトルを人工衛星の打上げに使えなくなったので、代わりに米国空軍が使い切りの人工衛星打上げ用のロケットを開発したのだ。
それがデルタIVとアトラスVだよ。

というわけで、当初想定していたほど効率もよくないし(これはそもそも打ち上げる回数が予定よりもはるかに少ないというのも大きいんだけど)、二度の大事故もあったこともあり、次世代の有人輸送系が求められることになったのだ。
2003年のコロンビアの事故の事故調査委員会の報告書ではすでに次の有人輸送系を開発する計画を明らかにするべき、という勧告が出ているんだけど、新しいものを開発するにも時間も労力もお金もかかるので、ブッシュ(息子)大統領が宇宙探査構想を打ち出すまではそれは棚上げにされていたんだ。
それでようやく次世代型の有人輸送系の開発がスタートしたと思ったら、政権交代もあってまだもめているのだ・・・。
政権交代で混乱しているのは日本だけじゃないんだね(笑)

ちなみに、開発時に大気中での滑空試験などに使っていたエンタープライズはワシントンDCの空の玄関、ダレス国際空港横の国立航空宇宙博物館ウドバー・ハジー・センターに展示されているんだけど、退役した各オービターもいろんな場所で保管・展示される予定なんだって。
なので、実際に宇宙から帰ってきたスペースシャトルをもうすぐ見られるようになるのだ。
二度の大事故を引き起こしたスペースシャトルだけど、世界的に有人宇宙船はこう、というイメージを植え付けたスペースシャトルが退役するというのは感慨もひとしおなのだ。
宇宙に興味ない人でも知っているものだからね。
最後のフライトを無事に終えることができるよう、陰ながら応援したいのだ。