2009/10/31

かぼちゃの日

今日はハロウィンだねぇ。
街中でも黒やオレンジの飾りをよく見かけるし、関連イベントも目にするようになって、日本でもだいぶ浸透してきているのがわかるよ。
で、この時期におなじみになりつつあるのがカボチャのお菓子。
もともとはカボチャのランプのジャック・オー・ランタンから来ているんだろうけど、ちょうど新カボチャが出てくる時期でもあるから、というのもあるんだろうね。
というわけで、今回はカボチャについて調べたよ。

カボチャはウリ科のつる性の植物で、ヘチマやきゅうり、メロン、スイカの仲間だよね。
南北アメリカ原産の新大陸野菜で、16世紀以降に一気に世界に広まったのだ。
というのも、とにかく丈夫で、寒冷や乾燥にも強く、カボチャの実はデンプン質に富むだけでなくてビタミン類やカロテンも豊富なので、栄養面でもばっちり!
日本でも戦時中はさつまいもやカボチャばかり食べていたというけど、主食にもなり得る野菜なのだ。

カボチャは新大陸のものだけど、当時東南アジアに拠点を持っていたポルトガル人がカンボジア経由で持ち込んだのだ。
ポルトガル人は「カンボジャ・アボボラ」と呼んでいたのだけど、この前半が略されてカボチャになったというわけ。
この最初に伝わったのは中米地域で栽培品種になった東洋カボチャで、日本古来のカボチャはこれ。
デコボコしたかたくて黒い皮を持っているやつだよ。

一方、スーパーなどでよく見かけるのは西洋カボチャで、こっちはアンデスの高地で栽培品種になっていたもの。
比較的皮はやわらかくてつるんとした表面、皮の緑色も明るい鮮やかな色だよ。
ハロウィンで見かけるオレンジ色ものは米大陸の乾燥地帯で栽培品種になったもので、通常小型で変わった形のものが多いのだけど、よく話題になる巨大カボチャもこれなのだ。
ズッキーニやそうめんカボチャとも言われる繊維質が豊富な金糸カボチャもこの仲間。
形状に特徴があるので、食用だけでなく、装飾用にも使われているよ。
ハロウィンのカボチャもそのむかしは翌日にパンプキンパイにして食べたらしいけど、最近は飾り用のおいしくないものなので食べないようなのだ・・・(>_<)

日本で現在よく食べられているのは西洋カボチャで、甘みも強く、生ではかたいけど煮ると皮までやわらかくなるのだ。
ほくほくして甘い栗カボチャなんてのもあるよね。
ニョッキやカボチャクリームのように崩して食べるのに向いていて、様々なカボチャのお菓子に使われるけど、逆に言うと煮くずれしやすいので、煮物にするとぼろぼろになってしまうのだ。
ダシでじっくり煮る場合は、皮もしっかりしていて煮くずれしにくい東洋カボチャの方がよいんだって。
でも、一部のブランドカボチャを除いてほとんど作られなくなってきているし、徐々に消えつつあるそうだよ。
ブランドカボチャもほとんど一般には流通しないしね。
なかなか口にする機会はないのだ。

カボチャが甘いのは、中にデンプンを糖に分解する酵素が含まれているからで、収穫直後よりは1ヶ月くらい間をおいた方が甘くなるのだ。
これはさつまいもなんかと同じだね。
カボチャを食べる人言えば冬至だけど、むかしは冬の時期には新鮮な野菜や果物が手に入らず、ビタミン類の不足に陥りがちだけど、そのときに、長期保存が利いてビタミンが豊富なカボチャはうってつけなわけ。
しかも、収穫してから置いておいた方が甘みが増すので、ちょうど食べ頃というわけなのだ。
カゼをひきにくくなる、なんて言うけど、それなりに合理性があるんだよね。
むかしの人は経験的に知っていたのだ!

カボチャは頑丈なだけあって栽培も容易で、間違ってタネを落としただけでも普通に発芽して成長するくらい!
気をつけないといけないのは、他のウリ科植物と同様に雄花と雌花が分かれているので、実をならせるには受粉させないといけないのだ。
チョウやハチがいればまかせておけばよいけど、そうでない場合は朝のうちに巡幸受粉させる必要があるんだって。
さらに、よく成長するので、実ができてからもその重さに耐えられるように下から支えてあげたりなどのサポートが必要なのだ。
ほぼ放っておいてお成長するのだけど、成長しすぎて実が自重に耐えられずに落ちたり、茎が折れたりするのでそれに気をつけないといけないのだ。
地をはわせて栽培する場合はそんなに気をつけなくてもよいけどね。

と、ここまで調べてくると、なんだかカボチャが食べたくなってくるねぇ(笑)
せっかくのハロウィンだし、何かカボチャのものを食べようかな?

2009/10/24

肌砂漠

秋になって空気も乾燥してきたねぇ。
寝て起きると口の中が乾いているのがよくわかるよ。
これは口を開けて寝ているからだけど(笑)
でも、この時期もっと気になるのは、乾燥肌によるかゆみと皮膚のかさつき。
ボクはわりと乾燥しやすいようで、秋冬は肌がかゆくなりがちだし、指先なんかはすぐにざらつくのだ・・・。
で、その原因が気になったのでちょっと調べてみたよ。

いわゆる「乾燥肌」という状態は、皮膚の表面にある角質層でセラミドなどの皮脂成分が欠乏してかさかさになっている状態。
皮膚細胞の表面には、細胞から剥離したタンパク質のケラチンなどが積み重なって角質層を形成しているんだけど、この角質の間にセラミドなどの皮脂があったり、ヒアルロン酸やヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸などのプロテオグリカンと呼ばれる糖タンパク質があるのだ。
この糖タンパク質は水分を保持することで「肌の潤い」を与えるんだよ。
ヒアルロン酸入り化粧水などはこれを外から補給するわけ。

セラミドなどの皮脂はかたいタンパク質であるケラチンの間に入って、角質層にやわらかさ、なめらかさを与えるのだ。
よくひじやかかとの角質化によるかさつき・ざらつきの対策の話があるけど、もともとケラチンなどのタンパク質は爪と同じ成分でかたいものなのだ。
その間に油が溶け込んでなめされると皮膚の柔軟さが出てくるわけ。
逆に言うと、皮脂が不足してくると角質層がかたくなってくるというわけ。
これが肌のかさつきという状態だよ。

さらに、皮脂が減ってくると、糖タンパク質に保持されている水分も蒸発しやすくなるのだ。
これが乾燥の原因で、特に湿度が低くなる秋冬に問題になるわけだよね。
水分と皮脂が少なくなると、それまで角質層が果たしていた皮膚を守る機能が弱まって、真皮が傷つきやすくなってしまうのだ。
その最初の状況がかゆい状態で、かゆみというのはごくごく弱い痛み刺激なんだよね。
角質層が薄くかたくなると、痛覚神経も敏感になってきて、ちょっとした刺激で反応するのでかゆくなるのだ。
通常では気にならない衣服とのすれとかの刺激でも反応するようになるのでかゆくなるんだよ。
で、さらにひどくなるとそれがひりひりとした痛みになるけど、そこまでくるとかなり乾燥肌が進んでいるよ。

美容業界で言うケミカル・ピーリングは皮膚の外にある角質層を無理矢理薬品ではがして薄くすることで、皮膚にごく近いやわらかでなめらかな角質層を表面に出す技術なのだ。
でも、これって防御してくれている角質層を薄くするので肌が傷つきやすく、すぐに皮膚が赤くはれてしまったりするようになるのだ・・・。
重度のやけどやひどい乾燥肌と同じ状況で皮膚の細胞のある真皮が外に出てくる状態だよ。
そういう病的な状態を引き起こすものなので当然注意が必要。
真皮は傷がつくと跡が残ってしまうけど、ケミカル・ピーリングをした後にかゆくなってかいてしまって皮膚が傷つくと、その跡も残ってしまうよ。
やけどなんかもすぐに重傷化するので大変なのだ。

話を乾燥肌にもどすと、では、なんでそもそも皮脂の分泌が減るか、というのが問題だよね。
遺伝的にもともと少ない人もいるみたいだけど、不規則な生活や肌のこすりすぎ(ケミカル・ピーリングもこれと一緒だよ。)、洗剤の使いすぎによる皮脂の減少、冷暖房の使いすぎによる代謝異常などなのだ。
健康的なバランスのとれた食事をとり、あまり冷暖房を効かせすぎずに自然に近い生活を送ればよいというのは他のこととも共通だよね(笑)
洗剤の使いすぎというのは、秋冬に中性洗剤で手先が荒れるというのが代表例で、これは手袋をするとか、比較的手に優しいものを使うという工夫でなんとかなるのだ。

と言っても、どうしても秋冬は空気が乾燥しているので肌も乾燥しがち。
気をつけるにしても限度があるので、対処療法も必要なのだ。
単純なのは手に油脂などを加えてやって保湿する、という方法だけど、その代表例がハンドクリームや保湿クリームだよね。
セラミドやスクワレン、ワセリンなどの皮脂と同じような油脂が主成分で、そこに保湿効果のある尿素やヒアルロン酸が入っていたりするよね。
よく入っているα-トコフェロール(ビタミンE)は抗酸化作用で抗酸化作用による肌へのダメージを軽減するのだ。
とりあえずは、そういうものでケアしつつ、根本的な原因の方の生活習慣も改めるというのが重要なんだろうね。

2009/10/17

ひしゃげた菜

昨日、スーパーで買い物をしていて、たまたま見かけて「タアサイ」という菜っ葉を買ったのだ。
緑の野菜で葉っぱ系がほしいな、と思って、コマツナやチンゲンサイなどを物色していたところで見つけたんだ。
意外と新しもの好きなので、ついつい購入。
アクも出ないし、煮物、炒め物、おひたしなんでも合うよ、という説明も気に入ったんだよね。
とは言え、素性がわからないと気になるので、少し調べてみたよ。

タアサイは日本では如月菜、瓢児(ひさご)菜、縮み雪菜などとも呼ばれる野菜で、白菜やコマツナと同様に冬野菜の菜っ葉。
アブラナ科アブラナ属で、白菜、コマツナ、チンゲンサイ、野沢菜、・・・といった他の菜っ葉と同様にカブの変種なんだそうだよ。
原産地は不明だけど、長江流域で栽培がはじまり、霜や寒さに強いので中国の華中・華北でよく栽培されているんだとか。
寒さの中、地をはうようにひしゃげて生えるのだそうで、「タア」はそういう意味なんだって。
白菜と同様に霜が降りてから冷え込むと甘みが増すので年を越えてからの方が旬のようだけど、今はその出始めのようだよ。

日本には白菜なんかと一緒に一度戦前に入ってきたようなんだけど、あまり定着せず、戦後は一度栽培も廃れてしまったようなのだ。
それが、1972年に日中の国交が正常化すると再上陸して栽培が再開されるようになったんだって。
そこから徐々に普及して、東京でも見かけるようになったのだ。
実は耐暑性も強いということで周年栽培が可能で、一年中作れて、しかも、株間をそんなにあけなくても栽培できるので、コマツナ同様に作りやすい作物みたい。
プランターなんかでもわりと簡単に栽培できるようだよ。
あたかかいうちは葉っぱが立っていて、それが寒くなると徐々に広がってくるらしいのだ。
花は菜の花(アブラナ)と同じような黄色い花が咲くようだよ。

クセがなく、アクも出ない上に、葉が厚いのにやわらかくて煮くずれしないので、煮物、炒め物、おひたし、スープとなんでも合うと言われているのだ。
火の通りが早いのでさっと料理するのがよいようなのだ。
しかも、コマツナと同様にβ-カロテン(β-カロチンのもと)、ビタミンC、鉄分が豊富で、栄養面でもばっちりのようなのだ。
これは冬にはうれしい野菜だねぇ♪
ただし、鮮度が落ちるのが早いので、浅漬けにしてもあまり長期保存には向かず、早めに使い切ることが重要なようだよ。
ここは白菜とは違うね。

おいしいタアサイは葉に光沢がつやがあるもので、もちろん、葉先がしおれていなくてみずみずしいのが重要。
さらに、霜が降りてから甘みが増したものは葉が紫がかった濃い緑色になるそうなので、そこもチェックなのだ。
高温や乾燥に弱いので、買ったらすぐに調理した方がよいということなので、食べるときに買うのがよいわけだね。
というわけで、今晩ボクも料理に使ってみよう!

2009/10/10

天気が決まっている日?

今日は旧体育の日の10月10日。
今回の招致にはしっぱいしたけど、45年前には東京オリンピックが開催された日なのだ。
一般に、日本の夏は高温多湿で秋口の方が都合がよいことと、10月10日が晴れの「特異日」なので開会式が開かれたと言われているよね。
これは毎年のように言われていることだけど、特定の天気になりやすい、くらいにしか理解できていないので、ちょっと特異日について調べてみたのだ。

特異日というのは、前後の日と比べたときに偶然とは言えないような有意に高い確率で特定の気象状態が現れる日、と定義されるらしいんだ。
この気象状態というのは、晴れ・くもり・雨のいわゆる天気だけでなく、気温の高低、日照時間でもよいらしく、暑くなる特異日、寒くなる特異日、台風が来る特異日なんてのもあるそうだよ。
1930年代にドイツの気象学者のシュマウスさんが研究して知られるようになったらしいんだけど、英語ではシンギュラリティ(singularity)というらしいのだ。
この特異日は、長期的な気象データを多変量解析で統計的に検定することができて、それで偶然とは言えないような高確率になること=特異性が見られることが証明された日が特異日なのだ。

ただし、梅雨の時期なら雨が降りやすいし、梅雨明け後なら晴れになりやすいのは当たり前。
なので、「前後の日に比べて」という部分が重要なんだって。
そういう季節的な要因を越えてなお特定の気象条件が発生しやすい、というのが特異日なのだ。
実際の気象データから計算して特異日を探している人もいるみたいだよ。

で、肝心の10月10日なんだけど、実は晴れの特異日じゃない、とも言われているんだよね。
気象庁の資料でも「晴れの特異日だから」開会式の日に選ばれた、と書いてあるんだけど、むしろ逆で、選ばれたから晴れの特異日と誤解されたようなのだ(>_<)
こればかりは実際の気象データから調べればわかる話なので、おそらく、晴れの特異日ではないんだよね・・・。
もともと秋雨前線も停滞して晴れやすい時期ではあるし、何より、10月上旬は気候がおだやかだから、それで夏季オリンピックの開催時期になって、たまたま10日が開会式にあたったんだろうね。

よく平年に比べて・・・、という言い方をするけど、この比較の基準が平年値と呼ばれるもので、これは過去30年分の気象データを平均したものだそうだよ。
平年より2度気温が高い、という場合は、過去30年の同日の気温の平均と比べて2度高いというわけで、その中には暑い日も寒い日もあるはずで、例えば、暑い日と寒い日がそれぞれ半々の確率で発生するような場合は比較の基準にはならないんだよね。
でも、この平年値というのはけっこう使い勝手がよいらしく、世界気象機関で決められている世界基準のようなのだ。
短期でもないし、超長期でもないので、気候を見るにはよいみたい。
平年より暑い日が早く来ると早く夏になるように気候が進行しているな、とか考えるらしいよ。

で、この平年値を見ていくときに常に気象が安定した点として見えてくるのが特異日なのだ。
なので、逆にこの特異日を起点として、どれくらい季節の移り変わり、気候の変化が進んでいる/遅れているかがわかるらしいよ。
晴れの特異日に雨が降ったけど、その翌日が晴れだった場合、1日ずれているのでは?、ということになるわけ。
あくまでも目安に過ぎないけど、週間予報や月間予報のような長期予報をする際に役に立つのだとか。
もちろん、特異日自体も長期的に一切ずれない、というわけではないらしいので、徐々に徐々に長期的にずれてくることはあるんだろうけどね。

で、気になるのがこの特異日という現象が発生する理由だけど、端的に言えばよくわからない、というのが正直なところみたい。
なんとなくもっともらしい説は、太陽系の仲間でもある長周期で太陽のまわりを楕円軌道で公転している彗星は太陽の近くで痕跡として宇宙塵(氷やほこりのようなものなど)を残しているんだけど、その中を公転している地球が通るときに影響を受けるのではないか、というもの。
確かに周期的に特定の気象状態が発生する、という点ではよいのだけど、それが天気や気温にどう影響するのかはよくわからないし、宇宙塵がそれこそそう長い間残っているかどうかも不明なので、完全に説明できるわけではないのだ(そもそも地球がその中を通ったら宇宙塵もかき回されるはずだから、翌年同じ現象が起きるとは限らないよね・・・。)。
その一方で、単なる偶然で、より長期的に見ればたまたまそこに固め打ちで集中していただけで、実際はランダムな変化に過ぎない、という見方もあるのだ。
とは言え、けっこう長期間のデータをもとに検定しても「特異日」となってしまう日も存在するようだから、それがごくごく偶然的な確率でたまたま起きている事象なのか、起きるべくして起きている事象なのかはよくわからないんだよね(笑)

2009/10/02

つける方も食べる方も元は一緒?

日本人にとってごちそうというとすぐに思い浮かぶのが「寿司」。
うちの実家ではそうでもないんだけど、今でも法事や祝い事があって人をもてなすときにはよく出てくるよね。
で、同じ「すし」と名前がついていても大きく違うのが、滋賀の名物の「鮒鮨」。
強烈なにおいで苦手とする人が多いことで有名だけど、これはだてに「すし」の名がついているだけではなくて、「すし」という食べ物の歴史を物語っているものなのだ。

もともと「鮨」というのは魚を保存のために塩漬けにしたもののことで、「すし」というのは「酸し」で酸味があることを指しているのだ。
いわゆる「塩辛」のことで、自己消化や内在している微生物によって乳酸発酵が起きて、体内のデンプンが分解されてブドウ糖ができ、それが乳酸に参加されて酸味が出てくるのだ。
古代の保存食品と言えば、酢漬けの「なます」と塩漬けの「すし」が二大勢力だったとか。

時代がもう少し進むと、よりおいしく発酵させるために、炊いたお米である「めし」と一緒につけ込むようになったのだ。
そうすることによって、「めし」の中で麹菌が繁殖し、より発酵が進み、乳酸発酵だけでなくタンパク質の分解も進むようになるので、アミノ酸が出てきてうまみが増すのだ。
これがいわゆる「なれ鮨」で、鮒鮨はまさにその一種。
他にも、日本では鯛や鯖、鮑なんかをつかったなれ鮨があるそうだよ。

これらのなれ鮨は、一緒につけ込んだ「めし」がどろどろの粥状になるまで発酵させるので、つけ込んだ魚だけを食べるのだ。
当然、それだけ発酵が進んでいるのでかなりにおいも強烈になるというわけ。
このなれ鮨は漢字で言うと「鮓」の字に当たるそうで、ただの塩辛だった「鮨」と、なれ鮨の「鮓」が混同されて、今では両方が「寿司」の意味に使われるようになったそうだよ。
どちらにしても、全国的に普及するほどのメジャーな食品にはなれなかったので、そういう混同が起こってしまったみたい。

さらに時代が下ると、そんなに発酵する前に引き上げて、「めし」ごと食べる、ということが行われるようになったんだとか。
これは「半生」な状態で引き上げることから「生なれ」と呼ばれる食べ方で、逆に従来のなれ鮨は「本なれ」と区別されるようになったのだ。
中間状態の「半なれ」というのもあるみたい。
「生なれ」の場合、「めし」の部分は甘酒を作る際に使う「米麹」のようになっていて、ほのかな甘み(デンプンが分解されてできる麦芽糖やブドウ糖によるもの)とさわやかな酸味(ブドウ糖が乳酸発酵してできる乳酸に由来するもの)があって、なかなかおいしいんだそうだよ。
こうして酸味がついた魚とご飯=「めし」を一緒に食べる「寿司」の基本形態ができたのだ。

江戸時代になると、発酵させて酸味を出すのがまどろっこしい、ということで、酢で酸味をつけるようになったのだ。
で、「めし」の方に酢で酸味をつけておいて、それと魚や貝をあわせて食べるようになったのだ。
これが現在の寿司の直接の御先祖になる「早鮨」で、熟成させないで食べるから「早」なんだよ。
最初は関西にあるいわゆる「箱鮨」や富山名物の「ますの寿司」のような「押し寿司」の形態で、塩漬けにしたり、酢でしめたり、調味ダレにつけ込んで「ヅケ」にしたりして多少保存性を上げた魚介類と酢飯の組み合わせだったみたい。
これが江戸に移ると、江戸時代から食べられ始めた刺身の文化と融合し、にぎり寿司が生まれるのだ。
にぎり寿司を江戸前鮨というのは江戸で生まれた食べ物だからだよ。
こうして、発酵食品から、刺身と酢飯の組み合わせの寿司へと大変換をとげたのだ。

で、寿司を食べるのに欠かせないのは醤油。
この醤油も実は魚を発酵させたものに由来があるんだよね。
今でもしょっつるやいしるなんていう魚醤が日本にもあるけど、ヴェトナムのニョクマムやタイのナンプラーはメジャーな調味料だよね。
これらはもともと「醤(ひしお)」と呼ばれる肉や魚、穀類なんかを塩漬けにして発酵させたものからにじみ出た液体成分で、「醤」の液体成分=油だから「醤油」という名前のようなのだ。
「醤」の場合は、塩辛よりもさらに発酵を進ませて、タンパク質をアミノ酸に分解し、うまみを出すんだよね。
で、そのうまみがにじみ出た液体にも溶け込んでいるので、調味料となるわけ。
時代が下って調味料をとるのが目的になると、保存食品として食べるわけではなくなるので、原形を留めないほどになるまで発酵させるのだ。
ミソがまさにそうだよね。

日本では仏教の伝来で肉食が禁止されたので、大豆や麦を使った味噌が中心となっていくのだけど、この味噌を造るときに出てくる液体成分の「たまり」が現在の日本の醤油の御先祖というわけ。
江戸時代になると、液体部分だけを調味料として使うために今につながる醤油の製法が開発されるのだ。
押し寿司は基本的に味が付いているので何もつけずに食べることが多いけど、刺身と酢飯を組み合わせたにぎり寿司は刺身を醤油につけるように、寿司を醤油につけて食べることになるよね。
こうして、寿司と醤油が切っても切れない縁となることに。
で、この寿司も醤油もどちらも最初は塩漬けにして発酵させた食品由来。
そういう意味では相性ばっちりな組み合わせなのかもね(笑)