2016/10/29

イカとイカ

この前、お仕事の関係で外国人のゲストを迎える食事会の準備をしていたのだ。
その際、「何か食べられないものはあるか?」と聞いていたんだけど、その中に、「cuttlefishは食べない」という回答が。
これってなんだっけ、と辞書で調べると、「コウイカ」とあったのだ。
え、イカって「squid」じゃないの?、と思って調べてみると、日本語では区別していない区別を英語でしていることがわかったんだ。

「squid」はイカの総称でもあるんだけど、狭義には「ツツイカ」を指すのだ。
で、「コウイカ」は「cuttlefish」。
そんなこと言われても、どのいかがどっちかにわかにはわかりづらいよね(笑)
日本人ほどイカを食べないと思っていた英語圏の人々が区別していたというのが一番の驚き。
でも、この言葉の違いは、イカの分類上の大きな2つのグループをそれぞれ指しているんだよね。

「コウイカ」というのは、モンゴウイカやコブシメなどが属する分類。
コウイカ目、ダンゴイカ目、トグロコウイカ目とさらに三種類に分かれるようなのだ。
その特徴は、体の中に軟骨上の「殻」がしっかりと残っていること。
だから「甲イカ」なのだ。
イカは元々オウムガイのような殻を持った軟体動物で、カタツムリがナメクジになるように、殻がなくなって今の形になるんだけど、その名残が強く残っているというわけ。
見た目的にも特徴があって、ずんぐりした体の側面全体にヒラヒラとひれがついているのだ。
イカと言われてイメージするのとはちょっと違った形。
コウイカの仲間は、皮膚の色を変色させることもできて、砂地や岩場に退色を変色させて潜り込んでカムフラージュをするのだ。

もうひとつの「ツツイカ」というのは、スルメイカやアオリイカが属する分類で、今では、目のところに薄い膜のある「閉眼目」と、膜のない「開眼目」に分かれているんだって。
特徴は、胴体が細長く、「えんぺら」と呼ばれる三角形の「耳」が胴体の先端についていること。
日本人が一般的にイメージするイカの形そのもののイカだよ。
スルメや駄菓子の剣先イカの形。
コウイカではしっかりと軟骨上の「殻」が残っているんだけど、こちらはビニールシートのようなフィルム状の殻の痕跡があるのみ。

ちなみに、イタリアでよく食べられているのはコウイカ。
イカスミパスタはコウイカで作るのが本場の味。
それと、江戸前でもイカと言えばコウイカ。
天ぷらや寿司に使ってたのはコウイカだったのだ。
一方、西日本では伝統的にツツイカを食べてきているんだよね。
スルメはかなり古くまでさかのぼれる加工食品で、かつては朝廷への献上物でもあったんだとか。
内陸にある京都なり奈良なりに海産物を届ける上で、日持ちするスルメは重要だったんだろうね。
ちなみに、中国では、スルメを重曹を入れた水で戻してぷりぷりした状態にして料理に使うそうだよ。

最近の安めのお寿司屋さんで見かける「スミイカ」はコウイカで、アオリイカとかスルメイカはツツイカだよ。
そして、100円寿司などで回っている何も種類に言及していないイカは多くの場合「ソデイカ」と呼ばれる巨大なツツイカ。
食用では最大の種類で、体長1m、重量は20kgにもなるような大型の種類。
そのまま食べるとかたいので、いったん冷凍してから回答すると、もっちりとした食感になるんだって。
テレビで回転寿司の仕込みの様子を見たことがあったけど、確かに巨大なイカのシートを切り分けていたけど、あれがソデイカだったのか。

2016/10/22

冬の果物

フランスのスーパーで、オレンジ色の小さな果物を見かけるようになったのだ。
米国では日本のみかんが「サツマ・オレンジ(カリフォルニア産)」として売られていたので、フランスにもあるのかな、と思って近づいてみると・・・。
それはみんかんではなく、クレメンタイン!
フランス語の発音だと、クレモンティーヌ(この表記だと、日本では歌手の名前の方がメジャーかな?)。
クレメンタインは欧州産のマンダリンオレンジで、タンジェリンと植物学分類上は同一種。
栽培品種としては、より色が濃い(オレンジ~赤)がタンジェリンで、より色が薄い(黄~オレンジ)がクレメンタインだって。
どちらも皮が手でむきやすく、ほどよい酸味と高い糖度で生食に適しているのだ!
日本のみかんに比べると、果汁の量は変わらないけど、袋の皮が薄いのでよりジューシーに感じるよ。
味も日本のものより少し酸味が強く、さっぱりした感じかな。

もともとミカン類はインドのアッサム地方が原産と言われていて、それが東洋と西洋に伝播しているのだ。
東洋に渡ったのが日本の温州みかん(ウンシュウミカン)で、中国経由。
中国のものは「橘」とか「桔」と呼ばれるけど、いわゆるマンダリン・オレンジなのだ。
マンダリンというのは、中国清朝の官吏のことで、当時紫禁城では官吏は濃いオレンジ色の服を身につけていたのでそう呼ばれるようになったみたい。
一方、中東を経て地中海沿岸に渡ったのが地中海マンダリン。
品種改良がなされて、クレメンタインやタンジェリンになるのだ。
タンジェリンの名称はタンジール人(モロッコ人)から来ているそうで、北アフリカで生まれたことがわかるのだ。

クレメンタインについては、諸説はあるようだけど、1906年にアルジェリアのクレマン神父が地中海マンダリンとスイートオレンジを交雑させて作ったと言われているのだ。
この神父さんの名前が取られているというわけ。
基本的にあたたかい地方で育つものなので、フランスで流通しているのは、北アフリカやスペインのもの。
ボクが食べたのはスペイン産だったよ。

フランスでは、オレンジは主にジュースやマーマレードなどの加工食品にするのが一般的なようだけど、このクレメンタインは皮が簡単にむけることもあって、日本のみかんのようにテーブルに置いておいて生で食べるみたい。
日本のみかん同様、ほぼ種がないというのも生で食べられることが多い理由の一つ。
やはりビタミンCが豊富で、どんどん寒くなる秋口に出始めるので、風邪の予防で食べられるようなのだ。
これはこたつの上に置いてあってもまったく違和感がないね(笑)

ちなみに、今ではおなじみの温州みかんは、実は江戸後期から明治になって普及したんだって。
紀伊国屋文左衛門さんが江戸に運んで大もうけしたのは紀州みかん(キシュウミカン)というやつで、中国浙江省から伝来した小さいミカンを日本で改良した品種。
かつては「高田(こうだ)みかん」と呼ばれていたのだ。。
温州みかんは種がないので、武士社会では縁起が悪いとされていたようなんだけど、栽培の利便性や食べやすさから広まることになったんだって。
でも、伝統的に日本で食べられてきたのは、タチバナの系統を引くキシュウミカンなので、こっちが「ホンミカン」らしいのだ。
朝廷にも献上されていたんだそうだけど、今では温州みかんに押されてしまってまず見ないんだよね。

2016/10/15

鳥みたいなもの?

フランスのレストランに行くと、いちいち名前がわからないので、辞書を引きながらそれが何の材料を使った料理なのか調べるんだよね。
幸いにして、「○○を××した~~」とか説明口調の料理名が並んでいるので、これで十分(笑)
でもでも、やっぱり食材の違いがあるんだよねぇ。
魚介類なんかはむしろ日本よりは種類が少ないけど、肉類は日本より種類が豊富なのだ!
さすがは肉食の肉。

よく目にするのは、カモ、ウズラ、ハト、イノシシ、シカ、ウマ、そしてウサギ!
そう、フランス人はけっこうウサギを食べるのだ。
しかも、ウサギを伝統的に食べ続けてきただけあって、日本にはない種類分けもあるんだ。
すなわち、養殖物か、天然物か。
日本の場合だとブリとかがそうだよね。

フランス語では、養殖物のウサギ肉は「lapin(ラパン)」、天然物(ジビエ)のウサギ肉は「Lièvre(リエーブル)」と明確に区別されていて、ジビエは狩猟の季節にしか食べられない貴重なもの。
普段から食べるのはラパンの方だよ。
普通にソテーしたりもするんだけど、粘着性の高い肉質なので、ソーセージなどの加工食品の結着剤なんかにも使われるようなのだ。
背中から腿にかけての肉が食べられるほか、内臓も食べるみたい。
と言っても、大きくはないから、あまり食べるところはないんだよね。

実は日本もむかしはよくウサギを食べていたのだ。
誰でも聞いたことがあることだけど、ウサギを一羽、二羽と数えるのは、仏教的思想から肉食が厳禁だった時代に、ウサギは鳥の一種だから食べてよい、というロジックに基づいているんだよね。
つまり、その頃はウサギを貴重な動物性タンパク源として食べていたのだ。
でも、このとき食べていたのは、フランスで食べられているウサギとはちょっと違うんだ。

欧米で食べられているウサギはアナウサギ。
いわゆるラビット(rabbit)という種類で、耳が長いタイプのウサギなのだ。
でも、このラビットが日本に入ってきたのは16世紀前半というから、戦国時代より少し前。
オランダ人がペットとして持ち込んだと言われているみたい。
ペットとしてのウサギが飼われるようになるのは近世に入ってから、江戸時代中期のことのようなのだ。
でも、それ以前にもウサギを食べていたはず・・・。

そう、縄文時代から日本人が食べていたウサギは、ヘア(hare)、つまりノウサギの方。
耳が比較的短いウサギだよ。
待ちぼうけ♪の歌で、木の根っこで転んだウサギはこっちのノウサギであったはずなのだ。
海外から輸入されたアナウサギはペット用、むかしから日本にいるノウサギは食用というわけ。
並べてみるとけっこう違うからね。

明治になると、耳の長い外国ウサギのブームが来て、ジャパニーズ・ホワイトと呼ばれる品種も日本で生まれたのだ(いわゆる赤い目の白いウサギだよ。)。
当時は「南京兎」なんて呼んでいたんだよね。
そのブームの少し後、明治中期になると、食肉と毛皮用に農家が副業でウサギを飼育するようになり、かなり盛んだったようなのだ。
ウサギは軍事物質としても利用され、肉は兵站(レーション)に、毛皮は防寒具になったみたい。
今では家畜としてウサギが飼われているってあまり想像できないよね・・・。

戦後になると、家畜としてのウサギ飼育は衰退していって、手間のあまりかからない、しかも、鳴かないペットとして普及することになるのだ。
耳のたれたロップイヤーだとか、小さな個体のウサギを交配させて作ったミニウサギなんてのがあるよね。
情操教育の一環といって学校でもよく飼育されていたのだ。
そうなると、だんだんと食材としては見なくなるんだよね。
つい数十年前は食べていたはずなのに・・・。

というわけで、ウサギ肉を食べること自体は日本でも普通にしていたことなのだ。
本場フランスでも、ウサギ肉の料理は伝統料理で、あまり食べられなくなってきているというから、いつか同じようになってしまうかも。
でも、ジビエは珍重されているので、そっちの線では残るかな。
日本人が旬の魚や野菜・果物をありがたがるように、フランス人は狩猟時期のジビエをことさら愛しているみたいだから。

2016/10/08

談合(?)の結果

パリに来てからは、仏語がわからないというのもあって、毎日BBCワールドニュースを見ているんだよね。
で、いやになるくらいトランプおじさんが出てくるのだ(笑)
でも、きのうはちょっと違って、別の人の良さそうなおじさんが出てきたよ!
何かと思ったら、国連の事務総長選のニュースだったのだ。
そう、ポルトガルの元首相で、国連難民高等弁務官を務めたこともある、アントニオ・グテーレスさんが次期の事務総長に事実上決まった、という話だったのだ。

で、気になったのが、どうやって事務総長を選ぶのか、というスキーム。
ちょっと調べても、日本語で簡単に説明したものが見つからないんだよね(>o<)
で、英語のページとかも見つつ、自分なりにまとめてみたのだ。

まず、国連憲章上では、事務総長は総会で任命することになっているんだけど、「安全保障理事会の推薦」を踏まえることになっているのだ。
これまでの総会では、安保理が推薦した人を否決したことはないので、事実上安保理で決められているというわけ。
で、この安保理の議論の中身というのはなかなか表に出てこないので、事務総長選出のプロセスが不透明だと批判を受けているんだよね・・・。
しかも、安保理として誰を推薦するかを決めるということは、5つの常任理事国が拒否権を発動してはいけなということと同じ。
つまり、米英仏露中のどこかの国に不評な候補は事務総長には選ばれないのだ!

それでは、安保理で決めるまでにどうやって候補を絞り込んでいくかというと、ストロー・ポールと呼ばれる模擬投票が繰り返されるんだ。
事務相当は地域のローテーションで回すことが寒冷化していて、次はだいたいどのあたりから選ばれる、というのがあるんだけど、そうすると、その地域の中でこの人という候補が出てくるのだ。
今回はさらに初の女性事務総長を、と言って女性候補が注目されていたけどね。
で、事務総長が当たりそうな地域はそれぞれに独自の候補を探して、立候補させた上で、非常任理事国を含む安保理のメンバーに働きかけ、というか、票集めのための工作をしかけるのだ(笑)

もの模擬投票では、支持、不支持又は意見なしのどれかを投ずることになっていて、一応は、どの国がどの票を入れたかはわからないようになっているんだ。
なので、「票読み」というのがあって、ブラックボックスなんだけど、あそこの国は不支持を入れている可能性があるので挽回しなきゃ、みたいな水面下の動きを活発化させるわけ。
当然、常任理事国が不支持を入れたんじゃないか、とわかると、その候補はほとんど選ばれる可能性がなくなるんだよね・・・。
ひとつの不支持でも、それが常任理事国だったらだめなのだ。

この模擬投票を繰り返していって、不支持が多い候補が脱落していき、候補が絞り込まれていくんだよね。
今回はなかなか絞り込みができなかったようだけど、6回目の投票で、グテーレス候補が不支持なし、意見なし2、残りは支持という結果になったので、事実上決まったのだ。
実際には、この最後の模擬投票の翌日に安保理で決議をして、安保理としてグテーレスさんを事務総長候補に推薦する、と正式に決定しているみたい。
それが今度の国連総会で諮られ、きっとそのまま承認されるのだ。

このように、ただでさえ議論が見えない安保理が決めていて、しかも、その絞り込みの模擬投票は匿名で行われていて、各候補陣営は表に裏にと票集めの働きかけをして、と、きわめてポリティカルな過程を経て選ばれるんだよね。
確かにこれは不透明だ(笑)
一応、事務総長を選ぶ手続も含めて、安保理を改革しようという動きはあるみたいだけど、常任理事国の思惑もあるし、なかなかうまくいかないみたい。
しかも、こういうプロセスで選ばれる事務総長が、その動きに対して本当にイニシアティブを発揮できるかどうかは微妙だよね。

2016/10/01

Manna-Be

今住んでいるアパルトマンのすぐ近くに小学校があって、出勤時間前くらいからがやがやと声が聞こえるんだよね。
でもでも、よくよく聞いてみると、子供の甲高い声だけじゃなく、低めの声も聞こえてくる・・・。
なんでかと思っていたら、親が送りに来ているのだ!
で、その親たちも話しているので、さらにがやがやしているわけ。
日本とは違うなぁ。

なんでも、フランスの小学校(5年生まで)では、保護者が登下校の送り迎えをしなきゃいけないことになっているんだって。
共働きやシングル世帯も多いので、ベビーシッターが来ることも多いみたい。
日本にも集団下校みたいなのはあるけど、それも低学年だけだよね。
子供の安全性についてはかなり慎重なお国柄みたい。
ちなみにおもしろいのは、近くの横断歩道にはちゃんと交通整理の人がいること。
「緑のおばさん」みたいなもので、信号のない横断歩道で交通整理をして、子供たちの登校をサポートしているのだ。
ま、こっちの人はもとから信号も守らないし、横断歩道でないところでも横断するような習慣がついているのだけど・・・。

調べてみると、フランスの小学校では落第・留年があるんだって!
日本でも病気などで長期入院した場合なんかは例外的にあるけど、これはびっくり。
しかも、フランスの子供たちは学習塾には原則通わないし、まず家庭教師もつけないので、学校が唯一の勉強をするところ。
そのため、親たちも学校の授業内容や子供の習熟度にすごい関心があるんだとか。
なので、学力が伴わないまま進級するよりは、留年してでもしっかり学んでから、と考えるんだそうだよ。
これも文化的な違いなんだろうなぁ。

子供のいる同僚に聞くと、授業やカリキュラムはわりとゆったり目のようなんだけど、幼稚園のときからフランス語の読み書きを教えていたり、学校の授業では自分で考える力を養うような教え方をしたりと日本の学校とは様子が違うみたい。
そして、学校の先生から保護者にいろいろと子供の習熟度や学校生活について連絡があるようだよ。
保護者の側も、先生の教え方に目を光らせているみたい。
それだけ学校が大事な場所と名手いるのだ。
やっぱり塾がないことが大きいんだろうなぁ。

そして、噂には聞いていて、ボクもかなり興味を寄せているのが、フランスの学校の給食。
ネットで調べてもすぐに出てくるけど、ちゃんとコース仕立てになっているのだ。
通常は、前菜、主菜、チーズ又はヨーグルト、デザートという構成になっているみたい。
パンの代わりにライスになる場合はチーズがないこともあるのかもしれないけど。
日本の給食も一汁三菜+主食という構成でわりと豪華なんだけどね。
でも、日本の場合はキャベツの塩もみとか小松菜のおひたしでも「一菜」だから(笑)

で、食べ方も全く違うようなのだ。
そもそもフランスの学校の昼休みは2時間と長いらしいので、ゆったりと食べるというのもあるかもしれないけど、前菜=>主菜=>チーズ又はヨーグルト=>デザートとコースの順番に食べていくんだって。
最近は聞かなくなったけど「三角食べ」とか言って、おかずと主食と汁物を交互に食べるよう指導する日本とは大違い。
これも文化で、そういう順番で食べるものとしみついているから、ワンプレートに載っていてもそう食べるみたい。
たぶん、日本の子供だと、前菜のサラダを少し食べ、主菜の肉又は魚を食べ、またサラダを食べ、となるだろうね。
日本式の食事ではそれが自然だから。
たまに順番に出てくる会席料理なんかだと、いっぺんに出してくれたらいいのに、なんて思うしね(笑)

ちなみに、この給食は学校で食べなくてもいいみたい。
昼休みが長いので、いったん家に帰って、家族と食事をする子もいるみたい。
親たちの昼休みも長いので、一緒に食べられるんだって。
パリは意外と狭い地域なので、通勤時間はさほどかからないのも大きいよね。
日本で郊外から都心に通勤すると2時間以上かかることもあるから・・・。