2019/03/29

芳香第一

おいしいと評判のバルサミコ酢をもらったのだ。
こういうのって日本で買うと高いんだよねぇ。
もちろん、パリで買ってもいいやつは高いんだけど(笑)
でも、まだ試してみようという気になる値段なのだ。
たしかに、外食していてサラダとか肉とかにかけてあるのはおいしいのだ。

「バルサミコ」というのは、イタリア語で「芳香のある」って意味なんだって。
つまり、香りの良いお酢、ということ。
原料はブドウの濃縮果汁で、長期にわたって樽の中で熟成させることで、少しとろみのある、濃い茶色の薫り高いお酢ができあがるのだ。
普通のワインビネガーはワインを徐々に酢酸発酵させていくんだけど、バルサミコ酢の場合は、ブドウ果汁をじっくりとアルコール発酵、酢酸発酵と進行させて行くみたい。

そのバルサミコ酢の中でも最高級の格付けのものが「トラディッツィオナーレ」と呼ばれるもの。
すなわち「伝統的」なものなのだ。
原産地標記規制(DOP)が法律で定められていて、エミリア・ロマーナ州のモデナ又はレッジョ・エミリアで作られた、12年以上熟成されたものだけが名乗れるんだって。
日本に入ってきているものの多くはモデナ産で、モデナ産の中でも25年以上熟成させたものは「ストラヴェッキオ(とても古い)」と呼ばれ、珍重されているらしいよ。
うちにも古くなってちょっと粘度が高くなってきたバルサミコ酢があるんだけど、あれは水分が飛んだだけか(笑)
ちなみに、これに準ずる製品というのがあって、それらは熟成期間が短いもの。
さらに、大量生産品では、着色料や香料、カラメルなどを添加してそれっぽく作っている熟成機関のさらに短いもの(数年)もあるとか。
これらは厳密に言うと類似品でバルサミコ酢じゃないよ。
これらは本物に比べると安いけど、それでも一般的なお酢よりは高級品みたい。
知らずにそれを使っている場合もあるかもね。

トラディッツィオナーレの場合は、原料は100%ブドウで、かつ、モデナ周辺で栽培される甘味の強い白ブドウのトレッビアーノ種だけが使われるんだって。
ぎりぎりまで収穫せずに甘味を増したブドウから果汁を搾り取り、布で漉してから水分が30~70%になるまで煮詰めるらしいのだ。
この時点で相当糖度を高くしているんだね。
この煮詰めた果汁は「マスコット」と呼ばれ、そのまま甘味料として使われるらしいよ。
これをお酢にするには、煮詰めた果汁をオークなどの樽に詰め、発酵させるのだ。
モデナ地方というのは冬には雪が降るけど、真夏は40度を越える暑さになるという寒暖の激しい土地柄。
この温度差で良いお酢ができるそうだよ。

そして、いったんお酢になってからは、樽の詰め替え作業を行っていくのだ。
詰め替えの際は、半量を次の樽に移し替えるんだけど、古くなったものに新しくなったものを加えていくんだって。
ウナギとか焼き鳥のタレみたいに継ぎ足していくイメージ。
こうして樽の移し替えをしつつ、さらに水分を飛ばしていき、さらに、熟成を行うのだ。
この際、樽から香りが移るので(これはウイスキーと一緒だね)、どの木材の樽にどう移していくかもポイントで、それで仕上がりの香りが変わってくるらしいよ。
通常は、オーク、クリ、サクラ、トネリコ、クワと徐々に小さい樽に移し替えるみたい。
最終的には、100kgのブドウが1kg弱のバルサミコ酢になるんだって!
これは高級品だ。

でも、なんだか製造法を見ていると、熟成だけなら日本でもできそうだよね。
寒暖差はばっちり。
でも、湿度が違うから酢酸発酵は厳しいのかな?
山梨で国産バルサミコ酢を作っている人たちもいるようだけど、味と香りの方はどうなんだろう。

2019/03/23

ダレトク?

時期的なものか、3月の後半になるとよくビジネスマナー関連の記事をネットで見るような気がするのだ。
4月から働く人たちがいよいよ迫ってきて気にするからなのかな?
実際入ってしまうと、ごくごく当たり前なものは別として、業界ごとにルールやマナーは異なるから、習うより慣れろなんだろうけど。

で、こういうのが出てくると、同時に、「こんなマナー必要か?」という意見も出てくるのだ。
マナーはもともと「他人を気遣う」というところから出てきているもので、その場にいる人がみんな不快にならないように互いに気を遣って、というのが定型化したものなんだよね。
その最たる例は食事の作法。
これは洋の東西を問わず、正しい食事作法というのがあるよね。
日本だと箸の使い方にうるさいし、イスラム世界だと食事には右手しか使っちゃいけないとか。

ところが、ビジネスマナーとなると怪しいものが多くなるようなのだ。
最近特にたたかれたのは、日本酒のとっくりを使う際、注ぎ口の切り込みを上に向けて注がなくてはいけない、とかいうもの。
注ぎ口って、液体を注ぎやすいように切り込みが入っているのに、それをわざと使わないなんて・・・。
これにはとっくり業界も苦い顔したわけだよ。

でも、一応もっともらしい理由があって、切れ込みが入っているので「縁が切れる」だとか、戦国時代は注ぎ口に毒を塗られることがあったのでそれを避けるのだとか。
なんとなくそれっぽい理由はあるのだけど、そもそもの「他人を気遣う」っていう観点ではないような・・・。
これをしてもらっても誰も喜ばないし、逆に、これをしなかったら不快に思うということもないよね。
まだビールを注ぐときはラベルを上に、の方がましなのだ(笑)

これと同じようなのが、取引先でお茶を勧められても飲まない(「空いてからの条件を飲む」につながるから)、座ることを勧められても三度までは座らない(三顧の礼か?)、稟議書のはんこはお辞儀をしているように少し傾けて押す、などなど。
これがきちんと定型化してみんなが従っていればまだ様式美にもなるんだけど、そこまで広まっていないからね。
もちろん、イスにかける場合は勧められてから、っていうのは就活でも基本中の基本の当然であるわけだけど、なぜ三度?

おそらく、これはビジネスマナーの普及に原因があるのではないかと思うのだ。
むかしからビジネスマナーの本というのはあるけど、正直そこまでまじめに広く読まれていたわけじゃないよね。
なので、その普及力には限界があったはずなのだ。
ところが、ネットで広まるとあっという間。
そもそも自分でお金と時間をかけなくてもかってにSNSで情報が入ってくることもあるし。
何より、こういうちょっと「意味不明」系のマナーは「なんだこれ?」ということで拡散されやすいんだよね。
また、テレビなどの媒体でもよく「マナー講師」を取り上げて、解説したりするよね。

さかのぼってみると、とっくりの注ぎ口や稟議書のはんこのマナーは昔からあったようなのだ。
あったいうのは広く行われていた、というのではなく、古いマナー本にそういう記述があったりする、ということ。
でも、本に書いてあるだけだと、それを見て変なマナー(?)があるものだ、と思うくらいで、知り合いにちょっと話す程度で終わり。
でも、SNSだと簡単に他の人と情報をシェアできるし、テレビで紹介されたりするとすぐに動画がアップされたりして、拡散力が違うのだ。

でも、一部の人はそれがマナーと思って実践しているから本などにも紹介されていたわけで、これが「地雷」要素なんだよね。
その点でいえば、今のようにすぐに拡散されて「これはおかしい」なんて意見が出てきた方が良いのだ。
それによって意味不明なマナーが駆逐されていくかもしれないから。
その方がむしろ健全化もね。

2019/03/16

フォンジュ

仏教の五戒の一つに「不飲酒(ふおんじゅ)戒」というのがあるのだ。
読んで字のごとく、お酒を飲んではいけない、というもの。
お酒がダメなのはイスラム教もそうだよね。
実は、ヒンドゥー教もお酒を飲むことを忌避する傾向があるんだって。
なので、どうしても東南アジアや南アジアの「地酒」と言われるとよくわからないのだ。
タイやベトナム、インドでは今はビールが有名のような気がするけど、これは暑くて蒸しているからだよね・・・。
キリスト教のように酒(ワイン)が宗教儀式と一体化していれば古代から伝わるものが残ったんだろうけど、そうはいかなかったのだ。

一方で、お釈迦様の時代の紀元前5世紀の原始仏教においてすでに「お酒を飲んではいけない」なんて戒律が作られているくらいで、何かアルコール飲料はあったはず。
それがあまりよろしくないということで禁止しているはずだよね。
では、それが何かが気になるのだ。
ヒントは、インド神話にあるみたい。

インドの神話には、どうも2種類の「酒っぽいもの」が出てくるんだよね。
ひとつは、神々の飲料である「ソーマ」。
何かの植物の汁から作るようなんだけど、詳細は不明。
古代インドの祭祀に用いられていた興奮性のある飲料のようで、「ソーマ」というのは原料となった植物に由来する名前みたい。
栄養と活力を与え、寿命をも延ばすという霊薬なのだ。
インド神話のヴェーダによれば、植物の知ると牛乳やバターを混ぜて攪拌して作るらしいんだけど、どうもアルコールっぽくはないんだよね。
高揚感や幻覚作用が主なようなので、ドラッグ系に近いのかも・・・。
効用的にはエナジードリンク的だけど。
植物の汁というのがポイントで、おそらく、カフェインやコカイン、興奮性、神経刺激性のある植物アルカロイドを含むものだと思うのだ。
後に、神々の飲み物で、飲んだものに不死を与えるアムリタ(仏教の漢語訳では「甘露」)と同一視されているので、神聖で、貴重で、素晴らしいもの、というニュアンスがあるよ。

もうひとつは、スラーと呼ばれるもの。
こちらは人々を酩酊させる飲み物で、特に悪性の酔いをもたらすものとされているのだ。
なので、スラーを飲むことは忌避される傾向もあったみたい。
これは今のアルコール忌避につながるかも。
ただし、古代インドの一部の祭祀ではソーマのように使われることも。
でも、飲み方を誤ると良くないなんて伝承があるそうなので、やっぱり悪いイメージがつきまとっているのだ。
おそらく、これが古代インドの酒なんだよね。

今となっては詳細は不明なんだけど、原料は、穀物系のデンプン、糖蜜(サトウキビの汁)、花の蜜なんかが想定されているよ。
東アジアだともっぱら穀物系の複発酵酒(デンプンを糖化し、その後アルコール発酵させるもの)がメインだけど、南インドまで来ると熱帯性気候なのもあって、糖蜜や花の蜜のようなものがそのまま自然発酵してできた酒があるようなのだ。
欧州には蜂蜜酒(ミード)があるけど、東アジアにはそこまで糖度の高い液体が手に入らなかったのかな?
果物が自然発酵する「猿酒」みたいなのはあったけど。

そこで注目したいのが、ネパールのどぶろくの「チャン」。
インド北部にも同じものがあるようだけど、コメ、ムギ、ヒエなどの穀物を煮た後、種麹となるムチャ(餅麹、穀物の粉と植物の汁を練って団子状にしてカビ=麹をはやしたもの)と混ぜ、発酵させるのだ。
発酵してきたら壺に移し加水するんだって。
比較的アルコール度数の低い微発泡性のどぶろくだよ。
どぶろくは甘くて飲み口がわりとよいのに、悪酔いしやすいから、イメージ的にもぴったりなのだ。
古代日本でも「口噛み酒」が神事に使われていたから、古代インドでも新たに収穫した穀物でどぶろくを作って神に捧げるとともに、自分たちもお祝いで飲んで騒いだんじゃないかなぁ?

2019/03/09

下に向けて書こう!

ネット掲示板の有名なコピペで、米国では宇宙空間でボールペンが使えないとわかったときに必死に大金を投入して研究し、宇宙でも使えるボールペンを作り上げたが、ソ連は鉛筆を使っていた」なんて話があるよね。
これはボールペンのインクは重力を使って押し出される構造になっているので、微小重力となる宇宙空間では使えなくなるからで、本当に米国国立航空宇宙局(NASA)は、インクをガスで押し出す「宇宙でも使えるボールペン」を開発したのだ。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の売店をはじめ、宇宙グッズを取り扱っている店では売られているよ。

欧米の文化では、まず、「つけペン」があったんだよね。
ペン先にインクをつけて書くもので、羽ペンとかガラスペンとかGペンが有名なのだ。
でも、この「つけペン」の場合はペン先にインクがあまり保持できないので、安堵も何度もインク壺にペン先をつけないと長い文章が書けないのだ。
その不便を解消したのが「万年筆」。
インクカートリッジから自動的にペン先にインクが補充される仕組みで、いちいちインク壺の中にペン先を入れる必要がなくなったのだ。
「万年筆」のインクは、毛細管現象でペン先に供給されるので、微小重力空間でも問題なく使えるよ。

でも、「万年筆」の場合、毛細管現象を使う必要があるので、インクは粘性が低いものでないと使えないんだよね。
つまり、書いた後しばらく乾かさないとすぐににじんでしまうのだ。
これを解消してくれたのがボールペン。
ボールペンの場合は、むしろ粘性の高いインクを重力によりペン先(ボールのある部分)に押し出しているんだよね。
ボールの裏側に粘性の高いインクが付着し、ボールが回転することでそのインクが紙面に転写されるのだ。
ボールペンの場合は、粘性の低いインクを使うと、ボールの隙間からインクが漏れ出てしまうので、むしろ粘性が高い方がいいんだよね。

ボールペンのアイデア自体は19世紀の終わり頃にはあったんだけど、技術が追いつかずに実現できなかったのだ。
まず、ペン先のボールを加工するのが難しく、そして、そのボールをはめ込んで液漏れしないようにペン先を作ることも難しいのだ。
第一世界大戦直前くらいのタイミングでハンガリー人が英国で特許を取り、できあがったのだ。
これが「Biro」で、今でも欧州ではボールペンの代名詞として使われているよ。

このとき使われていたのは油性インク。
でも、粘度が高いので、書き味はいまいちだったみたい。
万年筆に比べてかたい、そして、書き出しがどうしてもかすれる。
それでさほど普及しなかったのだ。
インクが改良されて書き味がよくなると、だんだんと普及していったみたいだよ。
何より、カーボン複写をするとき、筆圧を加えやすいので、ボールペンの方が使いやすいのだ。

時代が下ると、水性インクも出てくるんだよね。
そのままでは漏れてしまうので、中綿式といっていったん中綿にインクを吸わせ、そこからボールに毛細管現象でインクがしみ出してくるようにしたり、直液式といって、いったんコレクターと呼ばれるところに少量のインクを保留し、それがボールのところに出てくるようにしたりするなどの工夫をしているのだ。
さらに、水性インクをゲル状にして、ボールの先のところでだけゾル化するようになっているゲルインクボールペンというのもあるよ。
水性インクはにじみやすいけど、なめらかに書けるし、発色もよいのだ。
カラフルな色のボールペンは水性インクのものが多いみたい。

ボールペンで字を書くときのコツは、完全にそのメカニズムに依存しているよ。
まっすぐ立てて書く、これだけ。
紙面との角度は60~90度がいいみたい。
これは、インクが重力で押し出されるという構造をしていることと、ペン先のボールのついている部分(カシメ部)が紙面に触れないようにすることによるのだ。
そして、天井や壁に上向き、横向きでは書かない。
これはインクが押し出されないからうまく書けないだけでなく、下手するとボールの周辺に空気が入ってしまって、次ぎに書くときにインクがうまくしみこんでこなくなるおそれもあるからなのだ。

2019/03/02

要不要

食べ物の話は身近であるだけによく議論になるよね。
おでんはおかずになるか否か。
ラーメン・ライスはありかなしか。
きのこかたけのこか。
そして、カレーにジャガイモは必要か不要か。

歴史的に言えば、日本の国民食としてのカレーには、肉に、ニンジン、ジャガイモ、タマネギの三種の神器の野菜が入ったものがスタンダードのようなのだ。
そもそも市販のカレールーの箱の裏の「作り方」にそう書いてあるしね。
これは、カレーライスが普及した背景にも関係しているのだ。

カレー自体は明治の頃に英国から伝わったんだよね。
インドのカレーが英国式になって、それが輸入された感じ。
仮名垣魯文の「西洋料理通」におけるレシピでは、肉と長ネギとなっていた模様。
当時入ってきた英国式カレーは、肉にカレー味のソースをかける的な料理とカレー味の肉の煮込み料理の間の料理だったようで、日本では、カレー味の肉入りの汁物料理になっていたようなんだよね。
おそらく、長ネギは肉のくさみ消し。
そもそも、明治の初めの頃はジャガイモやタマネギのような西洋野菜はまだ一般的ではなかったのだ!

北大の前身である札幌農学校では、「少年よ大志を抱け」のクラーク博士が学生に米繁殖を禁止し、唯一カレーライスの時のみ米食を認めた、なんて話があるんだよね。
当時の日本人の体躯は今以上に小さく、それは米食を中心とする和食のせいだと考えられていたので、学寮での食事はパンによる洋食が基本とされていたのは事実のようなのだ。
クラーク博士が本当に米食を禁じたかどうかは別として。
でも、その中でカレーだけが例外になったのは、肉と野菜が同時に効率的に摂れる食事と見なされていたからのようなんだよね。
そして、その札幌農学校があった北海道の地では、気候が米国北部と似ていることもあって、学寮での洋食に使う西洋野菜が栽培されていたのだ!
そこで収穫されたタマネギやジャガイモがカレーにも使われたんじゃないかと考えられているよ。
こうして、タマネギやジャガイモが入ったカレーが生まれるのだ。

肉と野菜が同時に効率的に摂れる、という同じ理由でカレーは軍隊の食事としても奨励されるんだよね。
最初は海軍。
その際、長持ちするニンジンやタマネギ、ジャガイモといった野菜は使い勝手が良く、必然的にそれを使ったカレーがスタンダードになるのだ。
タマネギと豚肉の組み合わせはビタミンB1が大量に摂取できるので、海洋上の難敵「脚気」にも対抗できるというメリットもあったよ。
海軍のレシピでは、三種の神器の野菜が入るものになっているのだ。

海軍従軍者が家庭に「肉じゃが」を持ち帰ったという話もあるけど、カレーの場合は第二次大戦の引揚げ軍人が家庭料理に持ち帰ったと言われているんだよね。
なにしろ、そのときは陸軍従軍者の方がはるかに多いから。
すでに洋食屋ではライスカレーは定番になっているけど、それはあくまでも、「外食で食べる料理」。
これが家庭の味になるのは、やはり戦後なのだ。

陸軍でも現場で大量に作れ、栄養的に優れているカレーは重要な位置づけで、けっこう食べられたみたい。
今の自衛隊の炊き出しもカレーだよね。
そして、多少くさい肉(現地で調達した動物、場合によってはヘビやカエルなど)でも食べられるのが大きいのだ。
くさみをとるのは非常に重要で、自衛隊もレンジャー部隊必携の調味料はカレー粉だそうだよ。
そこに保存がきく野菜のニンジン、タマネギ、ジャガイモ。

この陸軍レシピが家庭に入り、カレーが一般家庭でも食べられるようになるのだ。
さらに、カレー粉と炒めた小麦粉を混ぜるのではなく、溶かすだけでいいルウが市販されるようになると、一気に簡単に作れる料理として普及するよ。
この後更にレトルトで手軽に、という大きな波も来るんだよね。
学校給食でも古米を消費するために米飯食が導入されると、まず最初に出されたメニューはカレーライスなのだ。
こうして、明治から昭和にかけ、カレーは家庭料理に入り込んでいくわけ。
で、普及したときは、ジャガイモ入りだったので、やはりそれがスタンダードなのだ。

一方で、本格派カレーとか言って、肉とタマネギだけの欧風カレーとか、新宿中村屋の本格インド式カレー、さらには、インド人・スリランカ人・ネパール人によるインド料理店の出現など、さまざまなカレーが食べられるようになってくるんだよね。
ジャガイモ入りのインドカレー(例えば、ジャガイモとナスの入った「アルベイガン」など)もあるので、ジャガイモがカレーの具材として変だという話ではないんだけど、外食カレーの場合、ジャガイモを入れるとどうしても傷みが早くなるので、避けられる傾向にあるのだ。
「外食の本格カレーにはジャガイモが入っていないから、ジャガイモが入らないのが正解」というのはそこが逆転した言説だよ。
一方で、神田の名店ボンディのように、蒸したジャガイモが別に出てくるような店もあるし、銀座の名店ナイルカレーのように、後でマッシュポテトを混ぜて食べるものもあるので、やはりジャガイモの甘さはカレーの辛みと合うものだと思うのだ。
ボクはコロッケも載せたいくらいで、カレーにはジャガイモが入っていてほしいね。