2023/11/25

くさいものには・・・

 「デスマフィン」なるものがネット上をにぎわせているのだ。
そう、デザフェスで3,000個販売されたというマフィン。
納豆のようなにおいがした、糸を引いていた、食べたらおなかを壊した、などの報告が相次ぎ、食中毒事案として報告され、回収されることになったんだよね。
その回収と返金の対応が、ということでさらに炎上しつつあるけど。
どうも、個人でやっているお店のようで、対応にも限界はありそう。
だからこそ、そういうイベントで大量販売というのはリスクがあったわけだけど。

厚生労働省の食品リコール情報のページで公開されているものはこれ
「食品衛生法違反のおそれ」という名目になっているんだけど、回収数・回収率なんかも公開される仕組みなんだね。
こんなのがあるの初めて知った。
消費者庁の方は食品以外も含めてリコールのあったものについて情報を公開しているけど、やはり厚生労働省の方のサイトの方が情報量が多い。

で、この厚生労働省の方のサイトで、今回のリコール事案が「CLASS I」になっていることも話題なのだ。
最悪死亡事例も出るおそれがある、という最上位クラスらしい。
今回報告されているのは「腹痛、嘔吐、下痢」なんだけど、こういう食中毒は、老人や子供がなくなるケースもあるからね。
で、このクラスは最強の毒と言われているボツリヌス毒素やフグ毒のテトロドトキシンと同じ分類になるので、「デスマフィン」なんて呼ばれ始めたのだ。
せいぜい「腐敗したマフィン」だとは思うんだけど。
まずはものを回収したうえで今後分析してから、ということなんだろうけど、おそらくは普通に「雑菌が繁殖して腐っている」だけだとは思うんだ。
ボツリヌス菌があるのかどうかは今のところ不明。

すでに情報があふれているけど、このお店は個人で回しているようで、こういうイベントに参加する際は、普段やっているお店を閉め、「作りだめ」して臨むようなんだよね。
本人がSNSで発信していた内容によれば、5日間朝から晩までお菓子を作り続けていたらしい(マフィン以外にもクッキーなどの商品あり。)。
で、この先に作っておいた商品の保存状態が悪くいて、ダメになってしまったのだ。
これも本人が発信しているところによると、冷房を聞かせた常に18度以下を保った部屋に置いておいた、というんだけど、4度の冷蔵ならまだしも、それって温度高すぎじゃない?、と直感的に思うよね・・・。
買った後は冷蔵保存を推奨しているみたいだし。
しかも、放送されているラップの状態などを見るに、完全に冷め切っていない、まだ温かい状態でラップでくるんでいるのではないか、とみられているのだ。
そうなると、ラップで保温・保湿が保たれて、まさに雑菌が繁殖しやすい環境になっている。
過去にも同様のイベントに出店していたみたいだけど、そのときはこういう話は出なかったのだろうか?

大企業の工場で作られる食品の場合、衛生管理がめちゃくちゃ厳しくて、可能な限り雑菌に触れないように製造されるんだよね。
例えば、防腐剤がたっぷり入っているからなかなか腐らないといわれているヤ〇ザキのパンだけど、実際はほぼほぼ無菌状態で製造されているので、未開封状態であればほぼ雑菌フリーで腐りにくいのだ。
一方で、街中にあるパン屋さんの場合はそこまで衛生管理ができないわけで、どうしても雑菌に触れてしまうから腐りやすいのだ。
つまり、防腐剤の有無の問題じゃなく、製造過程の腐敗の原因となる菌の有無の問題なのだ。
今回のマフィンの場合、本人がSNSで発信していた画像を見る限り、正直、5日間常温で放っておいていいような環境ではなさそう。
これはもう知識不足からくる「人災」なんだよなぁ。

ちなみに、ボツリヌス菌の場合は、そこらへんの地面に普通にいる「芽胞」の状態だと熱に強く、いわゆる「オートクレーブ」(密閉容器に入れて120度で4分以上加熱)しないと常温保存可にはならないのだ。
普通に焼き菓子として招請してラップにくるんだけじゃなねぇ・・・。
しかも、金は死んでも、毒素は毒素として残っていて、この毒素を失活させるには、80度で30分以上(100度なら数分以上)の過熱が必要。
今回の場合で言えば、焼く直前まで作業したものを低温で冷蔵又は冷凍しておいて、当日焼いてその日のうちに消費、というのが正しいみたいだ。
でも、イベントでは「焼きたて」として売られていたみたいなんだよなぁ。

2023/11/18

反省してまーす

 タカラジェンヌのいじめの問題で、運営側が調査結果を会見で発表したのだけど、案の定というか、やっぱり炎上したのだ。
そもそもやる気なさそうだったけど、「いじめはなかった」というのは終始言い訳するような形だったからね。
そりゃあ、反菅感情を抱かれるよ。
おそらく、後世に語り継がれる「失敗謝罪会見」の例のひとつになってしまったね。

欧米式だと、「謝罪する」=「自らの非を認める」で、会見でもなんでも謝ってしまうとその時点で賠償することをコミットすることになるので、絶対に謝らないんだよね。
それはそういう文化だから仕方ない。
そもそも基本的にもめごとは司法で判断して決着させる、というのが基本の人たちだから。
訴訟する、ということに躊躇がないし、下手に和解などせず、自らの正当性を主張するんだよね。
で、バックグラウンドがそうであればいいわけだけど、日本は違うのだ。

日本の場合、一般的にさいばんいなる、ということ自体がハードルが高いんだよね。
訴訟を抱えている、というのがネガティブに受け取られるのだ。
しかも、民事でも刑事でも裁判には数年かかるのが通例なので、できるだけ訴訟を避け、調停に臨んで和解・示談を目指すわけ。
その意味では、裁判で白黒つけることが目的ではないので、いかに誠意を見せて少しでも自分に有利なように和解・示談をまとめていくか、という方が大事。
基本的には和解でも示談でもお互いに歩み寄るわけだけど、謝罪会見が必要な場合は往々にして自分の方が悪いと思われているわけで。
ここで「自分は悪くない」という態度をとるのは日本の文化の中では「悪手」にしかならにのだ。

多くの失敗謝罪会見はそうなのだけど、ぼうとう頭を下げてすぐに「言い訳」を始めてしまうんだよね。
そうすると、形式上謝ってはいるけど、けっきょく悪いとは思っていないんだな、形ばかりの反省・謝罪なんだな、と受け取られ、かえって印象が悪くなるのだ。
今回の宝塚の件についても、「こういう不幸な事態が発生したことの責任を運営側としても強く感じており、今後二度とこうしたことが起きないよう最善の努力をしていきたい」といった話から始めるべきだったわけ。
そのうえで、「第三者により内部調査をした結果、かならずしもいじめがあったのかどうかは明確に確認できなかったが、実際にそこまで悩んでいた生徒がいたことを重く受け止め、〇〇など対応策を講じるとともに、さらなる対応策についても検討していきたい」みたいに続けないといけないのだ。
「いじめは確認できなかった」とだけ言うと、運営側には非はない、と開き直っているようにしか見えないからね。
っていうか、本心では「自分は悪くない」と思っていて、それが前面に出てしまっているのだろうけど。

こういうのは組織の危機管理の一環で、リスク・コミュニケーションという分野なんだよね。
そういうのが得意なコンサルもいるんだけどなぁ。
阪急ほどの大手の会社ならそういう専門スキルを持った部署もあるだろうに。
例えば、欧米式の「決して非を認めない謝罪会見」でも、まず頭を下げて、「(自分に非はないんだけど)このような形で関係各所に御心配・ご迷惑をおかけしたことについては申し訳なく思っています」と、謝罪する中身をうまくすり替えるのだ。
やっぱり何かトラブルや不祥事が起きている中で、開き直っているように見えるのは得策ではない、ということなんだよね。

そういう意味では、自分は悪くないという説明に終始するような会見だと、スノボの國母選手の「反省してまーす」という受け答えと大して変わらないことになるのだ・・・。
で、突っ込まれると逆切れして「ち、うるせーな」となるわけで。
少なくとも人がなくなっているんだし、もうちょっとやりようがあったなんじゃないかとは思う。
ま、後からだから言えることかもしれないけど。

2023/11/11

いつの間にか闇バイト

 ネットの記事でおそろしいものを発見したのだ!
X(旧ツイッター)の「お金配り」が特殊詐欺の闇バイトの入口だった、という話。
某社長が本当に配ったりしているから「全部詐欺」とは言わないけど、普通に考えればそんなうまい話はないよねぇ。
せいぜい銀行口座ほかの個人情報を抜かれる程度かと思っていたら、いつの間にか詐欺に加担させられていたんだって。
当然、本人にその意識はないので警察に逮捕されても否認・・・。
拘留が長引くのだ(>_<)

単純化した図式はこういうことらしい。
よくわからないアカウントが「お金配り」を実施。
「このアカウントをフォローしてリツイートしてくれたアカウントから抽選で〇名様に〇万円が当たります」とかなんとか。
フォローだけならとやってみると、「当選したので振込先の銀行口座を教えてください」との連絡が来る。
やったー!、と思ってそれに返信すると、確かに〇万円が振り込まれた♪
詐欺かと思ったけど本当だったんだ、とここで安心する。
その後、よく知らない人からいきなり大金が銀行口座に入金されてびっくり。
ほどなくして、〇万円くれたアカウントから、「誤ってそちらの口座にお金を入金してしまったので返してほしい、大金なのでできれば手渡しで、持ってきてくれたら謝礼は払う」とかなんとか連絡が来る。
前に〇万円くれた人だし、またなんかもらえそうだし、と思って言われた通り、自分の口座に振り込まれた大金を引き出し、指定された場所までもっていく。
すると、そのうちのいくらか(〇万円よりさらに多いくらいの金額)を謝礼でもらえた、ラッキー。
ところが、しばらくして警察がやってきて詐欺容疑(受け子)で逮捕。

特殊詐欺の場合、被害者に振り込ませる銀行口座から身元が割れるので、多くの場合はそれを避けるように金のやり取りをするのだ。
ひとつあるのは、借金などで首の回らなくなった人に持ち掛け、その人の口座を詐欺の振込先に使うこと。
その人は被害者から振り込まれると現金を下ろして元締めのところに持っていくと、いくらか分け前がもらえる、という仕組み。
これがいわゆる「出し子」。
長続きしないし、基本はトカゲの尻尾きりで、本当の元締めが誰かもわからず、という感じなんだよね。
銀行口座を使わずに、被害者に指定場所まで現金を持ってこさせて、それを代わりに受け取るのが伝統的な「受け子」。
こっちは特殊詐欺の形態によって少し演技が必要で、「オレオレ詐欺」で「興津事故を起こして示談金が必要」とか「会社の金を横領して補填しないと首になる」みたいなやつはそれ相応の受け取り方をしないといけないのだ。
そういう意味でちょっと難しいんだけど、詐欺グループからすれば、やはり使い捨てにしないとまずいポジション。

そこで、この二つのいいとこどりで組み合わせたのが、うえで照会したような新たな手法。
そもそも本人は詐欺の片棒を担いでいるという認識もないし、むしろ、間違って入金されたお金を返してあげてる、いいことした、くらいに思っているのだ。
実際は、詐欺の被害者から入金された金を詐欺グループのもとへと運んでいるだけなんだけど・・・。
捨てアカで最初の「お金配り」をしておけば足もつきづらいし、最初にちょっと必要経費はいるけど、あまり考えなしに引っかかってくれる人が次々と現れるしで、闇バイトを募集するよりはいいみたいだ。
ルフィ一味も場合も、闇バイトにスマホで指示していた内容がばれて捕まるに至ったわけで、そもそも相手に犯罪行為に加担していると意識させずに行動させれば足がつきにくいのだ。
いやあ、巧妙になっていくなぁ。

もうこういうのはイタチごっこで次から次へと新しい手法が開発されるわけで、恐ろしいことこの上ないよね。
自分がいつの間にか犯罪者になるんだから。
やっぱり、世の中に早々うまい話はない、ということで、そういうのには飛びつかず、地道にやる、というのがよさそうなのだ。

2023/11/04

100時間後に食べるワニ

 広島県の山間部には「ワニ料理」というのがあるのだ。
かつてヤクルト・スワローズにいたパリッシュは本物のワニの肉を食べていたけど、こっちはサメの肉。
サメは古語で「ワニ」と言うんだよね。
記紀神話の「因幡の白兎」に出てくるやつ。
これももともとは出雲の話だけど、山陰地方ではワニを食材として獲っていたみたい。
ただ、なぜ山間部?

答えは単純で、サメやエイなどの軟骨魚類は体内の浸透圧調整のために尿素を用いているんだけど、これが死後に分解されて出てくるアンモニアが身を腐りにくくしているのだ。
アンモニアが発生すると臭くはなるけど(世界で最も臭い料理のひとつであるホンオフェはエイの肉をツボの中で発酵させたものだよね。)、これにより身がアルカリ性になるので、腐敗菌の繁殖を妨げるのだ。
なので、可能などせず、生の肉のまま比較的長距離運べるのだ。
若狭湾でとれたサバを京都に届ける鯖街道というのが有名だけど、輸送に丸一日かかるので、塩をしてから運んだんだよね。
そうすると京都につく頃ちょうどよいつかり具合で、それを使って京料理の代表でもある鯖寿司が作られたりしたのだ。
京の都は海に面していない内陸なので、川魚以外の魚介類は基調で、非常に丈夫で生きたまま運べるハモが珍重され、塩サバや身欠きニシンのような加工食材が京料理によく使われていたんだよね。

サメを食べる習慣は実は栃木にもあって、こっちでは「モロ」とか「サガンボ」と呼ばれるんだよね。
普通にスーパーでサメ肉が生で売っているほど。
ちなみに、栃木で売られているサメ肉の「モロ」は、気仙沼で水揚げされたサメのフカヒレをとった後のものが流通しているみたい。
無駄がないけど、宮城はほかに雄々しい魚介がたくさんあるから自分たちは別のものを食べるのだ(笑)
今は冷蔵輸送ができるので臭くないけど、当時はちょっとアンモニア臭がするけど生で食べられるサメ肉は貴重な食材で、臭みけしにショウガを薬味に使ったりしたみたいだよ。
川魚はサケ・マス類を代表に寄生虫がいて生食がきついから、どうしても刺身を食べたい場合はサメになるんだよね。
北海道まで行けば半分凍らせて「ルイベ」のような形で食べることはできるのだけど。

で、その頃の食習慣が現在も残っている地方が山間部に残っている、というわけなのだ。
サメ肉は低脂質・高たんぱくでヘルシーなんだけど、火を通すとパサつきがちなので、伝統的な食べ方は刺身か湯引き(ちょっと臭みが抑えられる)にするか、いっそよく煮込んで煮凝りにしたんだよね。
現在ではフライなんかの揚げ物にもするみたいで、あまり火を落としすぎないとプリッとした良い歯ごたえの白身フライになるそうなのだ。
工業的には練り物の材料に使われているくらいで、臭みがなければ白身魚としては優秀な食材なのだ。

実は、サメはわりと簡単に獲れるものなので、むかしから食べられてはいるみたい。
三内丸山遺跡からもアブラツノザメを食べていた痕跡が見つかっているくらい。
他の魚を取る場合も「外道」として一緒に取れてくるので、干物にしたり、山間部に流通させたりと無駄なく食べていたようなのだ。
特に食味が良いのは、「サガンボ」と呼ばれるアブラツノザメと、「モロ」と呼ばれるネズミザメで、臭みが少なく身がおいしいとされているよ。
こういうのを聞くと、見かけたら食べてみたくなるよね。