2010/05/29

Sail away to the Universe

5月18日に金星探査機「あかつき」(Planet-C)と一緒に、小型セーラー電力セイル実証機「IKAROS」が打ち上げられ、現在のところ、順調に航行しているようなのだ。
宇宙で帆を拡げて太陽風を受けて広い宇宙を航行しようというものなのだ。
太陽系大航海時代の幕開け?
とにかく、これから幕を展開して金星を向かうようなので、動向が気になるのだ。
で、もうひとつ気になるのが原理。
ということで、調べてみたよ。

まずは普通のヨットが進む原理から。
ヨットも帆を拡げ、そこに風を受けて進むわけだけど、大風の日に背中を押されて前のめりになる、なんていう単純な原理ではないのだ。
ヨットは、風が吹いてくる方向に対して斜めにしか進めないんだよ!
風に後ろから押されているのではなくて、斜め前から吹いてくる風を帆に受け、そこに発生する揚力を推進力としているのだ。

ヨットの帆は、風を受けるとふくらむけど、そこがミソ。
すると、ふくらんだ方とふくらんでいない方で流れる空気の速度が変わり、密度の差が生まれるわけ。
ふくらんでいる方はより長い距離を空気が進むことになるのでそれだけ速く、速度が速いと空気の密度は低くなるのだ。
すると、密度の高い方から低い方に対して「揚力」が発生するわけ。
※俗に飛行機が翼に発生する揚力で浮いている、と言われるのと同じ原理だよ。

帆は風を受けているので、基本的に風が吹いていく方向にふくらむため、風向きと逆の方向に揚力が発生するのだ。
そのままだと風が吹いてくる方向に進みそうだけど、そうではないのだ。
ヨットの船底には進行方向に立て板が差し込まれていて(センターボードと言うのだ。)、これによってヨットの進行方向以外の揚力の成分(つまりヨットを「横」方向に動かそうとする力)が打ち消されるんだ。
そうすると、揚力の進行方向成分のみが残って、前に進むというわけ。
さらに、センターボードの船尾側はいわゆる「舵」になっていて、ここを動かすと進行方向が少しだけ変えられるんだよ。
でも、ヨットの場合は帆で風を受ける向きを変えれば進む方向が変えられるのだ(ウィンドサーフィンだと帆の向きだけで進行方向を変えることになるよ。)。
帆は風が吹いてくる方向に立てなければ帆がふくらまないから揚力が発生しないだけど、完全に風向と並行にしてしまうとまったく揚力が発生しないので、こういう仕組みが必要なんだ。

ヨットがわかったところでIKAROSのソーラーセイルにもどると、実は全然原理が違うんだよね(笑)
ソーラーセイルは強風の日に後ろから押される、というのと全く同じで、太陽風による光圧によって押される力を利用して前に進むのだ。
帆はいわゆる鏡みたいなもので、これに太陽風である光が当たると反射するんだけど、そのときに帆を後ろに押す力がかかるのだ。
進行方向の後ろ側に光を反射させるとスピードアップするし、逆に進行方向に光を反射させるとスピードダウンする仕組みなんだよ。
ヨットのように帆がふくらんでそこに揚力が、というわけではないんだね。
単純と言えば単純。
地上では太陽の光が当たってもあたたかいなぁ、当たっているなぁ、くらいにしか感じないけど、宇宙空間ではそれなりに強い力みたいだよ。
太陽の近くにいれば、という話で、当然太陽から遠く離れれば弱くなるけど。

光圧という概念が発見されてから、構想自体はあったようなんだけど、軽量でありながら広く拡げられ、それなりに強度もある薄膜の鏡面というのが技術的に難しくてずっとできなかったのだ。
それが炭素繊維などの材料技術が進んでIKAROSにつながったというわけ。
さらに、IKAROSの場合は、その膜の表面が太陽電池になっていて発電もできるのでソーラー電力セイルと言うんだよ。
将来的にはそこで発電した電気で「はやぶさ」で使っているようなイオンエンジンをふかそうという構想もあるのだ。

今でも発電した電気は姿勢の制御に使っているのだ。
膜の表面には電気を通すと「曇る」機能がついた箇所があって、そこを曇らせると光が鏡面反射でなく乱反射をするようになるので、光圧が弱くなるのだ。
例えば、右側だけ曇らせると、左側により強く光圧がかかることになるので、左に傾くことになるんだ。
これで光の反射方向を制御できるので、加減速ができるようになるんだ。
なかなかかしこいよね。
これを使うことで、一切推進剤を使わず、太陽の光の恩恵だけで宇宙を旅しようというわけ。

とは言え、まだ帆が開いていないのでなんとも言えないんだけど(笑)
できれば、ばっちり帆を拡げ、広い宇宙を太陽の光だけで航行してほしいものなのだ。
ツイッターでたまにつぶやいているようなので、関心のある人は応援しよう♪

2010/05/22

仰げば尊し・・・

ボクは前から甘いものが好きなんだけど、最近気になってきているのは和菓子。
ようかんやまんじゅう、大福なんかはむかしから好きだったんだけど、気になり始めたのはいわゆる「季節の和菓子」なのだ。
洋菓子もカラフルだったり、かわいいデザインで見た目がよいけど、和菓子はシンプルなデザインながら洗練された美があるような気がするんだよね。
甘すぎない、上品な甘さも魅力的なのだ。
というわけで、今回はそんな和菓子についてちょっと調べてみたよ。

ここでボクが言及している和菓子というと「ねりきり」。
白あんに求肥やつくね芋を加えて練った生菓子だよ。
もともとの色は白いので、これにクチナシや食紅などのむかしながらの色素で淡い色をつけていくのだ。
中に包むあんで工夫の余地はあるけど、だいたいの味は一緒なんだよね(笑)
ゆずとか抹茶で色だけでなく香り(フレーバー)がつくこともあるけどね。

白あんは白インゲン豆や白小豆をゆでてからつぶし、裏ごししたものに砂糖や蜜で甘みをつけたもの。
とろっとした淡いクリーム色のあんなのだ。
求肥は白玉粉や餅粉に砂糖や水飴を入れて練ったもので、全部の材料を混ぜてから加熱しながら練る水練り、生地を練ってゆでてから甘みを加えるゆで練り、生地を蒸してから甘みを加える蒸し練りなどがあるんだって。
それぞれ食感や日持ちが変わってくるみたい。

伝統的と言われる和菓子はお茶とともに発展してきたので、今のような姿になったのはおそらく室町末期から江戸時代にかけての間。
でも、このころには上白糖は精製できないかあってもほとんど手に入らないので、使うとしたら黒砂糖や粗糖のような精製度の低い糖か、発芽玄米や麦芽から作る水飴。
江戸時代も下って糖の精製技術が上がってくると、和菓子用の高級な糖として知られる和三盆が登場するのだ。
和三盆は、サトウキビの茎から搾った甘い汁を石灰で中和しながら精製・結晶化して原料となる白下糖というものを作るのだ(黒砂糖と同じで糖蜜を多く含むので独特の香りと味だよ。)。
これに少し水を加えてお盆の上で練り上げていくと糖の結晶の粒子が細かくなって、糖蜜と分離できるのだ。
この「研ぎ」が終わった後に麻袋に入れて圧搾すると黒い糖蜜が絞り出されて、だんだんと白くなっていくわけ。
3回繰り返すから和三盆と言うそうだよ。

それでも、上白糖と比べると精製度が低いので少し色がついていて独特の風味があるんだけど、「研ぎ」をすることできめ細やかで口の中でさっと溶けるという特質があるのだ。
それに、微量の糖蜜のおかげで甘さもくどくなく、後味がよいとも言われているよ。
砂糖などの甘味料があまり手に入らない時代に発達した和菓子は、干し柿と同程度以下の淡い甘さが特長だけど(日本で当時食べられる果物では柿が一番糖度が高く、さらに乾燥させることで糖度を高めた干し柿が日本で食べられる一番甘い食材だったのだ!)、それによく合うのがこの和三盆というわけ。
むかしは甘みが出せなかっただけなんだけどね(笑)
逆に、今の精製の進んだ砂糖で作ると甘さが際だって野暮ったい味になることもあるのだ。

話を「ねりきり」にもどすと、そうやって淡い甘みのあんと求肥を合わせて適度な柔らかさ、粘度の生地に練り上げていくんだ。
ここにツクネイモを入れるとまたやわらかさが変わってくるのだ。
そんな生地を粘土細工のように木型に入れて成形したり、手と小さなへらで形を整えたりしていくわけ。
花びらの形なんかも全部手とへらだけで作っていくんだよね。
ここが職人芸なのだ。
さらに、そこに色の組み合わせもあって、伝統美ができあがるのだ。

一方、水分量が少ない和菓子が干菓子。
若い人にはとんと人気のない落雁が代表的だよね(笑)
金平糖なんかも干菓子の部類に入るのだ。
落雁は米粉などのデンプン質の粉と砂糖や水飴をまぜ、それを着色してから型に入れて乾燥させたもの。
一般的には、すでに蒸した米の粉を使って、甘みを加えて練った後、型にはめて「焙炉(ほいろ)」と言われる下から加熱する作業台の上で乾燥させるのだ。
材料的にはねりきりと同じなんだけど、だいぶ味わいは違うよね。
ただし、こっちは水分量が少ないだけあって、生菓子のねりきりと違って日持ちするのだ。
むかしは流通も発達していないから、干菓子の需要もあったのだ。
今みたいに甘いものがあふれているわけでもないから、甘いだけでありがたかったのかも。

季節の移り変わりを重視する日本人は季節ごとにいろんなデザインの和菓子を作っていて、お茶の席などではその和菓子でも季節を楽しむんだよね。
和菓子の歳時記なんでカレンダーもあるけど、こういうところでも季節感を出そうとする日本人の心は大事にしたいよね♪
季節の和菓子には、水ようかんとかも入ってくるので必ずしもねりきりだけじゃないんだけど、いろんな色・形に整えられると言う点で一番応用が利くのはねりきりなので、やはり重要な位置づけなのだ。
そろそろこの季節だから、あのお菓子が食べたいなぁ、なんていう風流人になりたいね!

2010/05/15

はぁぷ~ん

ネットを見ていて知ったんだけど、最近体脂肪計付体重計で有名なタニタからコンパクトな携帯タイプの口臭測定器(ブレスチェッカー)が発売されたんだって。
はぁ、と息をセンサーに吹きかけると、呼気中の揮発性硫化物(硫化水素やチオール基-SHが含まれている炭化水素類)や芳香性のある炭化水素系ガス(アセトン、アセトアルデヒド、イソ吉草酸などの低級脂肪酸など)を検出して、数値化してくれるのだ。
携帯型では無臭からきついまで五段階に分けているみたい。
気にする人がそれだけ増えているんだろうね。
というわけで、ちょっと調べてみたのだ。

口臭は口からはき出される呼気に不快なにおいが含まれている状態を指していて、その原因は様々。
例えば、人間でも腸の中では常在菌が消化・吸収中の食物を分解・発酵しているけど、その過程でメタンガスなどの炭化水素系ガスやアンモニアやアミンなどの窒素が入った有機化合物、硫化水素揮発性硫化物などが出てくるのだ。
口から胃・腸はつながっているので、そこで発生した悪臭物質のうちの一部は呼気中にも排出されるわけ。
牛やラクダの反芻する草食動物では、発酵途中の食物を口にもどしているので口がとてもくさいんだ(>_<)
胃腸の調子が悪いと口臭がきつくなるというけど、これは通常の発酵過程とはまた違った発酵が起こるようになって、より悪臭物質が発生しやすくなったりしているからだよ。
また、口から出ると口臭だけど、おしりから出たらおならなのだ(笑)

次によく言われるのはニンニクやニラなどのにおいの強いものを食べた後の口臭。
これは歯磨きで軽減できると言われるけど、実はそうでもないのだ!
これはニンニクやニラに含まれる硫黄の入った成分が代謝の過程でにおいの原因となる揮発性硫化物になってしまうんだけど、これはそのまま吸収され、血液中にとけ込んでしまうのだ。
それが肺でガス交換しているときに呼気に排出されてしまうので、口臭になるのだ。
口の中だけでにおいっているわけじゃなくて、体臭としても出ているんだよ。

これはアルコールを飲んだ後のすえたにおいも一緒。
二日酔いでくさい人がいるけど、あれはアルコールの分解過程の途中で出てくるアセトアルデヒドのにおいで、やっぱり肺でのガス交換の時に呼気中に出てくるし、体臭としても汗とともに皮膚の表面から出てくるのだ。
この場合はアルコールの代謝が進めば原因物質が減っていくので、たくさん水分と糖分をとって、分解に必要な水とエネルギーを供給してあげるとよいのだ。


糖尿病になると独特の口臭が出ると言うけど、それは血液中にケトン体が出てくるため。
糖尿病のようなエネルギー代謝に不具合が出る病気になると、ブドウ糖などの糖類の分解で十分なエネルギーが確保できず、脂肪酸代謝が活性化されるのだ。
すると、その代謝の結果としてケトンが出てくるわけ。
独特の甘酸っぱい香りがするそうだよ。
実は、これは病気の時だけではなくて、過度なダイエットの際にも現れてくるのだ。
やっぱり糖代謝だけでは十分なエネルギーが得られない状態になるので(よくやられる炭水化物抜きダイエットで起こりがち)、脂肪酸代謝が進んでケトンで出てくるわけ。
あまりにひどいと血液中のケトンが増えすぎて、液性が酸性に傾くケトアシドーシスという危ない状況にもなるので注意が必要なのだ。

そのほか、通常時の口臭の原因としては喫煙、加齢、膿栓(のどの奥にたまっている「におい玉」とも呼ばれる膿が固まったようなもので、くしゃみをすると時々出てくる非常にいやなにおいのするものだよ。)などがあげられるよ。
特に膿栓がきつい口臭の原因であることが多いみたい。
舌の上の白い舌苔も食べ物のかすや細菌などが集まったものでにおいの原因になるので、気になる人はきれいに掃除をした方がよいとか。
このほか、女性の場合は性周期によるホルモンバランスの変動で口臭が出ることがあるんだとか。
これは代謝が変わるからみたい。

病的状態に起因する口臭というのもあって、よく認識されているのは歯槽膿漏などの歯周病に由来するもの。
口の中で膿ができてしまうんだからにおっても仕方がないよね。
これは普段から歯磨きなどをしっかりして、口の中を清潔にしておけばある程度防げるのだ。
歯間ブラシを使ったりするのも有効だし、歯石を取り除いたりするのもいいみたい。

最近になって注目されているのはドライマウス。
口の中が乾く状態をさすわけだけど、そうするとこれまで唾液で「洗われて」いた効果がなくなり、口の中で雑菌が繁殖しやすくなるのだ。
寝ている間は唾液の分泌が抑えられるので、朝起きると口の中がなんかいやな感じがしたりするけど、それがずっと続くイメージ。
ストレスがかかると唾液分泌が抑制されるけど、それはいわゆる仕事などの精神的なストレスだけじゃなくて、ダイエットで食べたいものを我慢している、慢性的な寝不足などの身体的なものもあるので、けっこうな頻度で発生しているみたい。
本人では気づきにくいので、クッキーなどの乾いたお菓子が食べづらくなったなどがあれば注意した方がよいのかも。

2010/05/08

もともと食べているんじゃなかったでしたっけ?

GW期間中だと普段見られないテレビ番組を見る機会があるけど、たまたまテレビ東京のレディス4を見たのだ(笑)
すると、ちまたでブーム(というか遅くない?)の「食べるラー油」を自宅で作る、という特集をやっていて、中華の神の子こと陳建一さんが家でも作れるおいしい「食べるラー油」の作り方とそれを使ったレシピを公開していたんだ。
それは八丁味噌、コチュジャン、豆板醤に砂糖、唐辛子、昆布茶を加え、ネギとショウガで香り付けした熱した油(ごま油1+サラダ油3)を徐々に加えて混ぜていくというもの。
最後に仕上げとして、ニンニク、レンコン、ゴボウ、干しエビを電子レンジで乾燥させてから軽く素揚げして作るチップを加えるんだそうな。
意外と面倒くさいね(>_<)

で、気になったのがラー油とはそもそも何か。
自分では餃子を食べるときに使ったり、時にラーメンのスープに入れるくらいしか接点がなかったので、辛い香味油という以外は実のところはよくわからないんだよね。
というわけで、ちょっと調べてみたよ。

ラー油は漢字で書くと辣油で、「辣」は辛いという意味なのでそのまま辛い油ということ。
ただの唐辛子入りのごま油と思っていたら、実はそうではないらしいのだ。
中国のラー油は、唐辛子や中華山椒(花椒)、八角、茴香(ういきょう)、桂皮、陳皮、丁子などの香辛料を油に入れて徐々に加熱して辛み成分や香り成分を油に移していくのだ。
化学的には香り成分や辛み成分の素である脂肪酸、エステル、高級アルコール、アルカロイドなどを油の中に抽出しているんだ。
実はアロマオイルと作り方は似ているんだよね(笑)
唐辛子なんかを入れるとカプサイシンが油に溶け出して赤く色がつくけど、まさにあんな感じで他の成分も溶け出していっているわけ。
で、香りと辛みが移ったら油だけを使ってもよいんだけど、中国では入れた香辛料の沈殿ごと使うことが多いみたい。
ちなみに、辛み成分はほとんど油に溶け出しているので、沈殿を入れた方が辛くなる、ということはあまりなくて、その他の苦みなどの味が増す可能性が高いのだ。

一方、日本でのラー油は最初は冷凍餃子についてくるような赤からオレンジ色の辛い油という認識で、そんなに香り成分も強くなかったみたい。
工業的には、唐辛子、山椒、ニンニク、ネギ、ショウガを高温の油にさっと漬けて一気にいろと香りをつけるんだとか。
ざるのようなものに香辛料を入れてさっと上げるので油だけが取り出せ、かつ、苦みなどの雑味も出てこないんだとか。
安価なものでは唐辛子も使わずに色素と香辛料を混ぜるだけ、というのもあるみたい!

でも、ちょっと本格化して中国のもののように沈殿があるものが出始め、現在では具材が入った食べるラー油になってきているのだ。
2000年に発売され、現在でも人気の石垣島ラー油が火付け役で、これまでのラー油と違って、島唐辛子などの香辛料や具材がそのまま沈殿して入れ、さらにそれを食材としても使ってしまう、というところが転換点だったのだ。
中国ではもともと具材の入ったラー油があって、その具材を食べるタイプのラー油を作ろう、ということで開発されたみたい。
これに触発され、桃屋が「辛そうで辛くない少し辛いラー油 」を発売すると、各社が一斉に「食べるラー油」を出し始め、一気に大ブームとなったのだ。
このタイプは、油よりむしろ具材が多めで、ニンニクやタマネギなどの具材が辛い油で漬けられているような状態なのだ。
素人でも使いやすいそのまま使える調味料として開発されたらしいんだけど、実際にはそのままごはんにかけて食べられる、ということで人気が出たのだ。
メーカー側は必ずしも想定していた使い方ではなかったようだけど。

こうして、日本でもラー油は独自の進化を遂げることとなったのだ。
四川料理に欠かせない調味料として中国で広く使われていたラー油が、日本では「ふりかけ」的に使える調味料として生まれ変わったわけだよね。
でも、それに伴って、味の方もだいぶ変わっていて、中国ではむせかえるほど辛いものが多いのに対し、日本の「食べるラー油」はマイルドな辛さのものが多いみたい。
食の好みの問題もあるけど、ごはんにちょっとかけて食べるという使い方だと、辛すぎると困るからね。
というわけで、中国のラー油とはかなりかけ離れてきたので、そろそろ日本独自のものとして別の名前をつけてもよいのかも。
いわゆる餃子のたれに入れるラー油とも使い方が変わっているからね。

2010/05/01

氷の国のハイじ

GW前になんとか回復したようだけど、アイスランドの火山噴火は欧州に大きな影響を与えたよね。
単純に噴煙で視界が悪くなる、火山灰が降ってくる、というだけでなく、航空機が飛べなくなるという大事に至ったのだ!
これにより人と物の航空輸送が止まり、短期間ながらかなりのインパクトがあったよね。
海外旅行者が取り残されたり、チーズやチョコレートなどの輸入品が品薄になったり。
で、気になったのが、その原因ともなる火山灰。
せいぜい鹿児島の桜島のイメージしかなかったんだけど、この際、ちょっと調べてみたのだ。

火山灰は「灰」とは言ってもものを燃焼させた後の燃えかすの「灰」とは成分的にもまったく違うもの。
定義としては、火山が噴火などをしたときに出てくる火山噴出物のうち、固体で直径2mm以下のものを指すのだ。
直径64mmまでが火山礫で、更に大きいのは火山岩塊というのだ。
火山礫以上のものが空から降ってくるとかなりの物理的ダメージになるよね。
このほか、気体として噴出する火山ガス(硫化水素のようないわゆる火山性のガスだけでなく、水蒸気もここに含まれるよ。)や液体の状態で噴出する溶岩(後に固まるけどね。)や熱水(これは温泉とも言うのだ。)も出てくるのだ。

燃えかすの方の灰の主成分は炭素だけど、火山灰の方はむしろ鉱物由来のもので、火山ガラス、鉱物結晶、古い岩石の破片に分けられるんだとか。
火山ガラスというのは噴火に伴ってできる微粒子のガラスで、地下で高圧力で保たれていたマグマが噴火によって上昇してくると一気に圧力が下がり、そこに溶解していた水や二酸化炭素などの揮発成分がガスとなって発砲するために、飛沫となって飛んだマグマが急激に冷却されてガラスとなるのだ。
まさに炭酸飲料の栓を抜いたときと同じで、シュワシュワと発砲するけど、その際、泡が破裂するときに出てくる飛沫が由来というわけ。
炭酸飲料の場合はそれが水だからちょっとぬれるだけだけど、火山の場合はもともと高熱で融けているマグマなので、一気にまわりを冷やされてガラスとして固化されてしまうのだ。
なので、顕微鏡で見てみると半透明できらきらとしているのだ。

鉱物結晶はもともとマグマの中で小さな核として結晶化していたもので、溶岩が冷えるとそのまわりから固まっていくのだ。
溶岩が急速に冷えると火山岩になるけど、そのときは、班晶と呼ばれる粒の小さな鉱物結晶のまわりにガラス質の石基がとりまいているのだ。
その班晶と火山灰の中の鉱物結晶はともにマグマの中ですでに結晶化していたものというわけ。
マグマがゆっくり冷えると深成岩になるけど、その際、この鉱物結晶が核となって徐々に結晶化していくことになるよ。
最後の古い岩石の破片はそのままで、火口をふさいでいた岩石が噴火の衝撃で細かく粉砕されてまき散らされたもの。
そんなに粉々になるのかとも思うけど、それだけの衝撃なんだろうね。

大きな噴火が起きると、今回のように火山灰が広範囲にまき散らされるんだけど、これが地質学的には年代を調べるひとつの大きな手がかりになるのだ。
浅間山や富士山のような大きな火山が噴火するとそれこそ本土全体に火山灰が降り積もることになるんだよね。
この火山灰は同時に勝つ均一に降り積もるので、この火山灰が出た層が同じ時期に積もったということがわかるので、そこが年代特定の決め手となるのだ。
このために「鍵層」とも呼ばれているらしいよ。
これがあると、地震や地滑りで地層がゆがんだりしても年代特定がしやすくなるのだ。

この火山灰、鹿児島の例を見るように、はっきり言って邪魔ものなんだよね。
栄養分に乏しくて水はけがよすぎる(保水性が低い)ので農業にはまず向かず、サツマイモやお茶などの特定の作物しか栽培できないのだ。
また、水分含有量が増えるともろくなるので地滑りしやすく、宅地としても向かないんだよね。
さらに、鉱物由来だけあって重いので、少し積もっただけでも屋根がゆがんだりするのだ。
雪でもひしゃげることがあるけど、そんなに積もらなくてもかなりの重量があるらしいよ。

さらさらはしているけど粒子の細かいガラスや鉱物なので、けっこうごつごつしていて、そのまま拭き取ろうとすると傷がつくのだ(特に「降りたて」はまだ角が取れていないので余計注意が必要みたい。)。
これが自動車などに付着したときに問題になるんだよね。
逆にクレンザーとして利用されることもあるようだけど。
古代ギリシアではコンクリートにも使われていたようなんだけど、すでにその技術は失われていて、現代には伝わっていないのだとか(またコンクリートの骨材としての使用が実用化に向けて研究されているそうだよ。)。
そのほか、エステでクリームに混入されたり、甲子園のグランドの土として利用されたり、焼き物の釉薬に入れられたりと利用方法はいくつかあるようだけど、そんなに有用というわけでもないんだね(笑)

そして、問題は航空機との関係。
航空機のジェットエンジンに火山灰が取り込まれると、致命的な損傷を与える可能性があって、それで欧州の航空便がストップしたのだ。
航空機エンジンの内部は1,000度を超えるような高温なので、取り込まれた火山灰の粒子は内部で溶解し、タービン翼や出口付近で冷やされてガラス質化してたまっていくのだ。
すると、そのためにジェット推進の推力が失われるんだけど、最悪の場合はエンジン停止もあり得るので、危険だというわけ。
粒子が細かいこともあってフィルターでも防げないし、困ったちゃんなのだ。
これはジェットエンジンだけでなく、プロペラ機(レシプロエンジン)でも同じで、空気と一緒に燃焼室に取り込まれてしまうと、中で融けて固まってシリンダーやピストンを痛めてしまうのだ。
同じことは自動車のエンジンでも言えるよね。

これが今回の騒動の原因だけど、航空機以外にもけっこう大変そうなのだ。
噴煙で日光が遮られると農作物の方も不安だし、まだまだその被害は尾を引きそうだね。
牧草が育たないと畜産にも影響が出て、チーズなどの乳製品にも影響が出るおそれがあるのだ。
飛行機は飛び始めたけど、これからも注視していかないといけないのだ。