2008/11/30

よく「使う」漢字

世間では常用漢字の見直しがけっこう話題になっているよね。
あんまり生活には直結しないような気もするんだけど、新聞なんかのメディアではかなり騒いでいる、というのが印象なのだ。
ま、おそらく実生活にはほとんど影響がないんだろうけど、新聞などの文字メディアでは漢字表記の仕方が変わったりするだろうし、何より、「文字を書く、文字を読ませる」という国語については一家言あるようだから取り上げるんだろうね。
で、ボクも気になったので調べてみたよ。

いあゆる常用漢字というのは「普段使う」漢字のことで、戦前から何度か定められているようだけど、現在のものは昭和56年に国語審議会の審議を経て1945文字からなる常用漢字表が告示されたのだ。
その前にあったのが、戦後すぐに定められた当用漢字1850字で、これに出し入れする形で常用漢字は定められたんだよ。
で、今回また常用漢字の見直しをして、あまり使わないであろう漢字は除き、逆にけっこう使う漢字は載せようということなのだ。
その見直しの議論で、あまり使うことがない、というか、ある一語でしか使わないのに残っているとか、よく見かけるのに常用漢字の候補にすらなっていないとか、そういうことが報道されているわけなのだ。

この常用漢字は、いわゆる「よく使う漢字」なんだけど、法令や公文書などの場合はこの常用漢字に従って表記にする必要があるのだ。
常用漢字表にない漢字は、別の常用漢字で表記可能な言い換えをする、常用漢字表にない漢字を平仮名書きにして「まぜ書き」にする、または、最初に出てくるときだけふりがなをふる、ということになっているのだ。
刑法や民法のような明治の古い法律の場合は難しい言葉が多かったんだけど、最近全文を海棲してカタカナ書きから平仮名書きに改めたので、その際難しい言葉も改めたみたい。
で、一般にはまぜ書きが多かったんだけど、これはかっこわるいとか、表記方法として不自然であるとか、そういう理由で徐々に使われなくなってきているのだ。
代わりに多く使われるようになったのがふりがなで、これだとかなり自然な表記になるのだ。

一般の人はこれに必ずしも従う必要はないんだけど、新聞や出版社は常用漢字表を基にして独自のカニ湯金ルールを持っていて、それに従って漢字を使っているのだ。
新聞や文庫本でふってある「ルビ」はこれに従っているのだ。
で、そういう独自ルールを定めるくらいで、常用漢字の見直しにもうるさいというわけ。

この常用漢字の特徴は、漢字自体だけでなく、読み方や異体字についても定めている点なんだ。
簡単な漢字でも常用漢字表にない読み方をする場合はふりがなをふらないといけないことがあるのだ。
それとうかしからけっこう漢字には異体字があって、よくあるのは偏と旁で横に並べるか、それを縦に並べるかがあるけど(例えば、「群」と「羣」)、その中で正字体を定めたのだ。
中には、もともと略字体として使われてたものが普及して、常用漢字表で正字体になったものもあるそうだよ。
旧字体と新字体の関係はそういうことなのだ。

一方、これとは別に人名用漢字が定められていて、人名に使える漢字の幅はもっと広いのだ。
最近では「苺(いちご)」が使えるようになったなんて話題になったよね。
これは法務省所管の戸籍法施行規則の別表第二に定められていて、基本的に読みは自由で、異体字も使えることになっているのだ。
でも、当たり前といえば当たり前で、名前はすでに使っているものだから、いきなり使えなくなっても困るわけで、それなりに幅を拡げないといけないのだ。
でも、当然使えない漢字は出てくるわけで、その場合は、すでに使われている場合は別として、新規に使うことができないのだ。
もともとは当用漢字表の中に、人名によく使う漢字が落ちていたので、別に定めることにしたんだそうだよ。

こういうようにいろいろと漢字の使い方のガイドラインができているわけだけど、現在はもっと問題が複雑化してきているんだよね。
その大きな原因はワープロの普及で、自分では書けないけど読める漢字が多くなってきているのだ。
すると、読むだけならできる漢字の幅が広がり、書くことができない漢字が増えているのだ。
もともと常用漢字は社会の変化に合わせて適切に見直しをしていくべきものだろうけど、こうなってくると話は単純じゃないよね。
読めるけどかけない漢字をどうするか、それが「常用」と言えるかは大きな問題なのだ!
本来は読める漢字は書けるようにするというのが基本だろうけど、こればかりは生活様式から来ている話だからそうそう簡単にはいかないよね。
将来的には大きな問題になりそうなのだ。
韓国のように漢字を使わないようにする、というのもひとつの考え方だけど、日本独自の漢字である国字なんかも創作して、漢字が文化の中に入り込んでいる日本ではむずかしいよね。
ただでさえ変体仮名が使われなくなって江戸期以前の文字がyめなくなってきているのに、漢字までなくしたら目も当てられないよ(>o<)

2008/11/23

勤労をたっとび、生産を祝い、国民互いに感謝しあう日

今日は勤労感謝の日だねぇ。
勤労感謝の日は今でもハッピーマンデー法が適用されていないので日付指定なんだけど、今回はたまたま日曜日当たったので月曜日が振替休日になって三連休になったのだ(^o^)/
やったね!
で、今日はせっかくなので、勤労感謝の日について調べてみたよ。

日本の祝日はすべて「国民の祝日に関する法律」、通称「祝日法」に定められていて、さっき出てきた「ハッピーマンデー法」は「祝日法」を改正する法案の名前だったんだよね。
日付が指定されている祝日を「○月の第○月曜日」にするものなのだ。
これで三連休が増えたというわけ。
勤労感謝の日は別だけどね。

祝日法では、「勤労をたっとび、生産を祝い、国民互いに感謝しあう」日として定められているんだけど、実際には、戦前の新嘗祭を戦後に看板の掛け替えをしたものなのだ。
文化の日や建国記念の日ほどは問題視されないけど、宮中行事と密接に関係した祝日なんだよね。
もともとは旧暦の11月の2回目の卯の日に行われていた宮中行事なんだけど、明治4年に太陽暦が採用されるときに新暦の11月に移ったのだ。
というのも、旧暦の11月の日付を優先すると、翌年の1月になってしまったからだそうなのだ・・・。
で、太陽暦に移行した2年目の明治7年(1874年)からは11月23日に固定されたのだ。
これは前年の2回目の卯の日がたまたま11月23日で、日付が変わるとややこしいのでそれを踏襲することにしたみたい。
というわけで、実は日付に深い意味はないので、ハッピーマンデー法が適用されてもおかしくない祝日なのだ!

そのもととなった新嘗祭というのは、天皇が五穀の新穀を天神地祇(天津神と国津神)にすすめ、自らも食して収穫の感謝をする祭儀なのだ。
今は新暦になってしまったので五穀の収穫の時期に比べるとちょっと早い感じがするけど、旧暦でいけばちょうど刈り取りをして乾燥させて、収穫が終わるころになるのだ。
新嘗祭は天皇が行う祭儀の中でもかなり重要な位置付けだったんだけど、それが稲作関係のものだということは、それだけ日本では稲作が重要なものだったっていうことだよね。
今では「勤労」全般にまで拡げられているわけだけど、「生産を祝い」ときちんとそのあたりの意味も入っているんだよね(笑)

新嘗祭の中でも特殊なのが大嘗祭で、これは即位してからはじめて行う新嘗祭のことなのだ。
戦前までは祭政一致だったので、この大嘗祭を行うことが践祚・即位の実質的な儀式だったそうなのだ。
践祚というのは天子の位を継承することで、即位はその継承したことを公にすることを指すそうなのだ。
祭政一致の時代は区別しなくても済んだんだけど、問題は戦後初の即位の礼となった今上天皇のときなのだ。
新嘗祭は祭礼儀式なので国事行為ではなくて、皇室の行事とされていて皇室の私費でまかなわれるんだけど、そうすると、大嘗祭と即位を切り離さないといけなくなるのだ!
で、史上初の即位の礼のみを国事行為で執り行うという必要性が出てきたんだよね。

そもそも昭和天皇は在位が長かったので誰もそのときの即位の礼を担当したことはないし、資料もまばらだったらしいけど、さらに、やり方も戦後式の祭政分離の方式で執り行う必要があったから、政府もかなり苦労したようなのだ。
時の内閣官房内閣主席参事官(現在の内閣総務官)で、後に内閣官房副長官となる古川貞二郎さんの本を読むと、そのときの苦労話が出てくるよ。
で、古川さんは後進にきちんと伝えるために、資料をよく整理して残したそうなのだ。

そんな今上天皇即位の礼が行われたのは平成2年(1990年)の11月12日。
やっぱり大嘗祭と関連しているので、11月にこだわったみたいだね。
大正天皇も昭和天皇も11月に即位しているのだ。
これに関連して話題になっているのが、来年の11月12日を臨時で祝日にしようとする動き。
議員立法で祝日法を改正することを考えているみたいだけど、今上天皇の即位20周年を祝う祝日にするそうなのだ。
でも、来年の11月12日は残念ながら木曜日なんだよね。

2008/11/15

キャベツにクリームをつめこめ

ボクの好きな洋菓子のひとつにシュークリームがあるのだ。
最近ではコンビニでも売っているから手に入りやすいよねぇ。
しかも、カスタードクリームだけじゃなく、生クリームやチョコクリームなど種類も増えてきているし、アイス入りのものもあるのだ。
ちなみに、ボクの好みはビターチョコクリームだよ。

そこで、ちょっとシュークリームについて調べてみたのだ。
シュークリームという言葉は和製英語の代表選手で、「シュー」は仏語でキャベツや白菜などのまるまる野菜の総称、「クリーム」は英語だよね。
仏語では「シュー・ア・ラ・クレーム(chou à la crème)」で、英語だと「クリームパフ(cream puff)」というんだそうだよ。
仏語がその名前の由来だけど、キャベツ状のシュー生地の中にクリームを入れたもの、ということなのだ。
ちなみに、よく英語で「シュークリーム」というと靴磨き用のクリームと間違えられると言うけど、それもあんまり正しくなくて、靴磨き用のクリームは「シュー・ポリッシュ(shoe polish)」と言うことが多いので、単に意味が通じないだけみたい(笑)

むかしはカスタードクリームの保存がむずかしかったので、冬場のお菓子だったんだそうだよ。
粉糖なんかを雪みたいにふっているのもそのせいかな?
でも、冷蔵庫が普及してクリームが保存できるようになると、1年中食べられるようになったとか。
とは言え、あんまり長時間保存するとシュー生地のさくさく感が失われてべっちゃりするから、やっぱりできたてを食べるのがふんわりサクサクでおいしいかも。
コンビニとかで売っているやつは時間がたってもべっちゃりしないように工夫がしてあるんだろうね。
ま、さくさく感はないけど。

シュー生地を細長くして、チョコでコーティングするとエクレアだけど、これは仏語で「エクレール・オ・ショコラ(éclair au chocolat)」と言うそうなのだ。
エクレールというのは「稲妻」という意味らしいんだけど、名前の由来にはいくつか説があるだって。
ひとつは細長いシュー生地を焼いたときに表面にできる割れ目が稲妻状だというもの。
確かにその割れ目にクリームを入れたのが始まりと考えると納得いくよね。
そのほかには、コーティングしたチョコクリームがぎらぎら光るからとか、チョコが溶けたり、中身のクリームが飛び出さないようにさっと瞬間的に食べる必要があるから、というのもあるんだけど、なんだかあんまり説得力ないよね。

シュークリームやエクレアの醍醐味はシュー生地なわけだけど、これが自分で焼くとなるとけっこうむずかしいんだよね。
スポンジケーキなんかはベーキングパウダー(主に重曹)でふくらませるのでよいんだけど、シュー生地の場合は、水分が多い生地をプレートの上にしぼって、あらかじめ温めておいたオーブンでさっと焼いて、ふくらんだところで取り出すのだ。
このシュー生地の材料は、薄力粉、無塩バター、卵、塩、水といった単純なもので、シュー生地をふくらませるのは焼いたときに出てくる水蒸気なのだ。
なので、とろっとした生地を焼くわけだけど、あんまり焼きすぎると今度はしぼんでくるから、ふくらんだところで取り出す必要があるんだよ。

さらに、ふわふわ感とともにさっくり感を出すためには混ぜすぎてもいけないのだ。
だから薄力粉を使うわけだけど、これは天ぷらの衣も同じで、タンパク質のグルテンが多いともっちりした食感になるので、グルテンの含有量が少ない薄力粉を使うのだ。
そして、混ぜ方も重要で、冷たい状態でさっくりと混ぜるのが重要で、そうでないとデンプンがのり状にかたまって粘ってしまうので、うまくふっくら・さくさくにならないそうなのだ。
材料が単純なわりには難しいと言われるのはこういうのが原因なのだ。
やっぱり、買って食べる方がよいのかもね。
うちにはオーブンがないから買うしかないけど(笑)

2008/11/09

こだまは音の速さで

今日はコンサートに行ってきたんだけど、こういう会場って防音・遮音がしっかりしているから、ドアを閉めてしまうとほとんど外に音が漏れないんだよね。
すごい技術なのだ。
壁が薄くてとなりの音がまる聞こえなんてこともあるけど、そういうのはトラブルのもとだからね。
そこで気になったのが音の性質なのだ。
ということで、音にまつわることをちょっと調べてみたよ。

音は空気の振動で、耳で聞くことができるものを通常「音波」と読んでいるのだ。
耳で聞こえないほど高周波なものは「超音波」なんて言うよね。
波というと「~~」というイメージだけど、音波は縦波で、こういう波が来るわけではないのだ。
進行方向に対して出たり引いたりするので、空気の粗密が波として伝わって来るんだよね。
それが音の衝撃波のもとにもなっているし、耳の中の鼓膜はその縦波の震動でふるえて音を感知しているのだ。

で、防音・遮音するにはこの空気の縦波を反射したり、波の振幅自体を弱めればよいというわけ。
単純に跳ね返すのは「ヤッホー」のこだまの原理で、高速道路の遮音壁なんかがそうなのだ。
内側にまいたような形にすることで、外でなく中に音が跳ね返えるようになっているので、外側が静かになるのだ。
むかしはコンクリなどの思い素材で作っていたけど、最近は強化プラスチックの透明なものも見るよね。

で、コンサートホールやスタジオなんかで使われているのは合板系の防音壁。
いろんなやり方があるみたいだけど、単に薄い板をかさねただけの合板でもけっこう防音効果はあるみたい。
その間にスポンジや発泡スチロールをはさんでやると、空気の縦波の震動が伝わりにくくなるので、外に音が聞こえにくくなるのだ。
ようは空気の振動を伝えにくくすればよいわけなのだ。

最近では、位相が逆、つまり波の山と谷が真逆になった音波をぶつけることで音波自体を消滅させるような方法もあるのだ。
でも、音波は通常いろんな周波数の音が重なり合っているから、これをやるにはかなり大変なのだ。
一定の音が出るってわかっていたり、耳には聞こえないような低周波の音波を打ち消すのにはいいんだけどね。
低周波の音波は耳で感じなくても触覚では空気の振動として完治できていて、その影響が体に出るとも言われているのだ。

音が重なり合うと言えばハーモニー。
基本は和音だけど、うまいこと音階を組み合わせるときれいに聞こえるけど、それが少しずれただけできれいに聞こえないんだよね。
これはおそらく「うなり」という現象と関係しているのだ。
周波数が近い波が重なり合うと、ひとつの大きな波が微妙に震動しているような特殊な状態になるのだ。
これが「うなり」の状態で、音の場合は、きれいに「うなり」ができると人間の耳にはひとつの音のように聞こえるんだって。
それが心地よい感じにゆらぐとハーモニーになって、そうでないとずれているように感じるというわけなのだ。
和音に音階が決まっているというのはつまり、周波数の組み合わせということなんだよね。
そういってしまうと身もフタもないような気がしないでもないけど(笑)

それと、音と言えば有名なのは救急車のサイレンのドップラー効果。
ドップラー効果は音以外でもよいんだけど、音がわかりやすいんだよね(光の場合は高速が一定なのでちょっとドップラー効果の見え方が違ってくるのだ。)。
音の場合、近づいてくる音は見かけ上音速が早くなるのだ。
そうすると、音速=周波数×波長の関係から、音速が大きくなって波長は一定なので周波数が大きくなる=音が高くなる、ということになるのだ。
逆に、離れていくときは音速が見かけ上遅くなるので、その逆で周波数が小さくなる=音が低くなる、となるよ。
そうすると、近づいてくるときは音が音が高くて、真横に来るとちょっと低くなって、遠ざかっていくと音が低くなっていく、というあの独特の聞こえ方になるのだ。

逆に、動いているものであれば、音の聞こえ方の違いでその動いている早さも求められるんだよね。
絶対音感のある人であれば、周波数がどれくらいずれたかわかるので、そこからその速度がわかるはずだよ。
この原理を使うのがドップラー・レーダーというやつで、通常のレーダーは電波で位置情報だけを観測するんだけど、ドップラー・レーダーはこの原理を使って市と移動速度の両方を観測するのだ。
ちなみに、ドップラー・レーダーは電波(光)のドップラー効果なので、音のドップラー効果ほど単純じゃないんだけどね。
(光の場合は、ドップラー効果いより、近づいてくるものは波長が短く、遠ざかるものは波長が長くなるので、その差から速度を計算するのだ。)

2008/11/01

ふたつの辛さ

今日はお昼に前から気になっていた「陳麻飯」を食べてみたのだ。
最近は気温も下がってきて、熱いもの・辛いものがついつい食べたくなるのだ。
で、食べた結果は、なかなか辛くて、お値段も手頃でよかったよ。

日本では麻婆豆腐やエビチリ、回鍋肉、担々麺なんかの四川料理はかなりポピュラーになっているけど、これは四川飯店初代の「四川の神様」陳建民さん(中華の鉄人、「四川の神の子」陳建一さんのお父さんだよ。)がテレビの料理番組に出て紹介したからなのだ。
でも、四川料理のそのままの味では当時の日本人の口には合わなかったので、独特のアレンジを加えたんだよね。
それが今の日本の四川料理のベースになっているんだけど、最近では本場四川の味をほぼそのまま出す本格派の店が増えてきて、その中でも特に特徴的なのが麻婆豆腐なのだ。

日本の麻婆豆腐は辛さも控えめで、しかも、その辛さは主に豆板醤、唐辛子で出したものだけど、本場の四川の麻婆豆腐は「麻」と「辣」の2つの辛さが特徴なのだ。
「麻」は中華胡椒(華椒)のしびれるような辛さで、これが日本の麻婆豆腐では弱いもの。
「辣」は「ラー油」の「らー」で、唐辛子の辛さなのだ。
この2つがあわさってこそ本格派の麻婆豆腐なんだって。
食べた後もひりひりするだけでなく、しびれたような感じになるのだ。

「辣」の唐辛子の辛さの正体は最近有名になってきているカプサイシンで、これは発汗作用なんかもあるんだよね。
味覚としては「辛い」と言われているけど、実際には痛覚に作用していて「痛い」というものなのだ。
痛覚が弱く刺激されると「かゆく」感じるんだけど、それがもう少し強くなった刺激が舌に来ると辛く感じるわけ。
あまりに激辛のもの(唐辛子系)を食べると本当に舌が痛くなるのは当たり前といえば当たり前の話なのだ。

山椒の辛さの正体はサンショウオールやサンショウアミドという物質で、日本の山椒と中国の華椒は同属異種で辛さは少し違うんだけど、辛さ成分自体は同じようなものなんだって。
なので、「麻」のしびれるような辛みもそれなのだ。
で、こっちもやっぱり痛覚に作用しているんだけど、カプサイシンとは異なって同時にしびれるような感覚を与えるんだよね。
カプサイシンには特異的に作用する受容体(レセプター)が見つかっているということなので、その違いなのかもしれないけど、おそらく、山椒系のしびれるような辛さは、一度痛覚の受容体に作用すると、なかなか離れないでその痛覚自体がしばらく麻痺したような状態になるのではないかと思うのだ。
生姜の辛み成分のショウガオールも同じようなものなんだそうだよ。

暑い地域ではよく辛いものが食べられるけど、これはカプサイシンに代表されるように辛いものには発汗作用があることと、塩分が少なくてもしっかりとした味を感じることが大きいのだ。
夏場に汗をたくさんかくと塩辛いものがほしくなるけど、これは体の中の塩分が抜けて、体がほしがっているからなんだよね。
そうすると、いつもはちょうどよい塩加減のものでも味が薄く感じてしまうのだ。
暑い地域ではそんな状況が日常茶飯事なわけで、薄い塩味だと味がぼやけて感じてしまうわけ。
そこで辛みをつけると塩味が適度に感じられて味がぼやけず、おいしく食べられるというわけ。
暑いときでも辛いものなら食べられるというのはこういうことなのだ。

四川料理は辛いけど、四川はそんなに暑いわけではないんだよね。
蒸し暑くはあるんだろうけど、温暖といった方が適切で、むかしから米作にとても適した肥沃な土地であると言われているのだ。
インドやタイ、ヴェトナムみたいに熱帯っていう感じではないんだよね。
でも、辛いものを食べているのは内陸にあって塩が手に入りにくいからだと考えられるのだ。
これは朝鮮半島やブータンでも同じなんだけど、塩が貴重品なのでたくさん使えないけど、それでもおいしいものを食べたいと思うと辛い味がちょうどよいのだ。
高地にあるブータンなんかは世界一辛い料理を食べると言われているしね。

で、そんな辛さを求めた四川地方で出てきたのが「麻」の辛み。
ただの「辣」の辛さに飽きたらず、新しい辛さを求めrところが、食にこだわる中国らしいよね。
日本の辛い料理はまだあだ「辣」のものがほとんどだけど、本場の四川風麻婆豆腐がはやってきたということは、日本の辛い料理もやっとそこまでの高みに来たということなのかもね(笑)