2013/11/30

放るもんちゃうで!

この季節になってくると宴会メニューでよく出てくるのがもつ鍋。
BSE問題の時に一時下火になったけど、まだまだ根強い人気があるのか、もつ鍋の店は消えないのだ。
一時期はやったけどすぐに姿を消してしまったジンギスカンとは違うね・・・。
肉なのに安価だし、あたたまるし、居酒屋の宴会にはちょうどよいのかも。

「もつ」は、一般に内臓肉のことで、小腸・大腸や、胃、肝臓、心臓、横隔膜なんかがメジャーだよね。
タン(舌)やテールも含めることがあるので、日本畜産副産物協会というところでは、鳥獣肉のうち、正肉を除いた部分の可食部で、臓物や舌、皮、尾、血液などをまとめて「畜産副産物」として定義しているよ。
なんか内臓の名前がそのまま出てくるとあれだけど、ミノ、ハチノス、レバー、ハツ、ハラミなんて言われると焼き肉が食べたくなるよね(笑)
現代ではもつ鍋だけじゃなく、いわゆるホルモン料理がかなり市民権を得て、国民の間に広まっているのだ。

牛肉なんかだと正肉は枝肉としてつるしておいて熟成してから食べるんだけど、内臓部分はいたみが早いのですぐダメになってしまうのだ。
ブタやトリのようなすぐに正肉として流通させるものでも、内臓部分はやはり腐りやすいので、むかしは捨てていたんだよね。
なので、と殺場で手に入れてすぐに下処理をする必要があったのだ。
このため、あまり一般には流通せず、一部の人(主に在日系の肉体労働者と言われているよ。)の食べ物とみなされていたんだ。
ただし、流通経路に乗らずにと殺場からそのまま持ってくるため、極めて安価に入手でき、きちんと処理して臭みを抜けばおいしいので、食べている人の間ではソウルフード的になっていったみたい。
実際、中華料理では普通に内臓肉も使うし、欧州でもイタリアなんかでは内臓肉の料理でメジャーなものがあるよね(トリッパとか。)。

日本でも古代から食べていないわけではなかったんだけど、広く普及するまでには至っていなかったのだ。
明治になって肉食が一般化していっても、内臓肉は安いけど独特のにおいがあるし、外見も悪いので避けられる傾向にあったらしいのだ。
それが、終戦後になって、安いという理由で大衆酒場でもつ煮込みやどて煮などの料理として親しまれるようになったのだ。
もともと焼き鳥の代用品としてもつ焼きなんかもあって、もつ料理がちょっと一般化してくるんだよね。
関西のおでん(関東炊き)に使われるすじ肉も本来は食材として不適格とされてきたものなんだけど、長時間煮込んで柔らかくするとおいしく食べられるので、使われるようになったのだ(ただし、煮ている間にすごいにおいがするよ・・・。)。

一気にもつが食材として広まったのはもつ鍋ブームから。
関東ではもつの味噌煮込み、関西ではどて煮がもつの煮込み料理として親しまれていたんだけど、にんにくをきかせた醤油ベースのスープでニラやキャベツと一緒にもつを煮込んだ鍋が博多からやってきたのだ!
安くておいしい、と一気に広まっていったんだよね。
これに続いて、焼き肉でも、従来はカルビやロースが中心だったのが、ホルモンも注目されるようになり、ミノやレバーだけでなく、ハラミとかタンなどもよく食べられるようになったのだ。
で、こうして一度食べる習慣がつくと、他の場面でも登場するようになるんだよね。
それまで日本ではあまり任期がなかった欧米の内臓肉料理も普通に食べられるようになるんだよね。

もつと言えば、広く「ホルモン」という言葉は「放るもん(=本来捨てるもの)」から来ているという言説が流布しているよね。
でも、どうもこれは正しくないようで、もともとは、「栄養満点な料理」という意味で、本来のホルモンの意味をひっかけていたようなのだ。
そのときの「ホルモン料理」というのは、内臓肉の料理だけでなく、卵、納豆、山芋なども含め、精力を増強する料理ということだったみたい。
「ホルモンがみなぎっている」という言い方のホルモンに近いわけ。

今でももつにはコラーゲンがたっぷり含まれているので美容によい、なんて言われるけど、これはちょっと微妙なんだよね。
確かに大量のコラーゲンは含んでいるけど、経口で摂取した場合、しっかりアミノ酸まで分解されてから吸収されるので、別にコラーゲンとして摂取されるわけではないのだ。
一般に内臓肉系は消化があまりよくなく(よくかまないと飲み込めないしね)、プリン体も多いので、生活習慣病には悪影響があるとの意見も・・・。
肉食獣が獲物を仕留めたときに真っ先に内臓を食べるので、そういう「栄養満点」的なイメージがあるんだろうけど、それはその場で生で食べる場合。
内臓に栄養があるのはそこに大量の血が通っているからで、血液にはビタミンや糖分、脂肪など栄養素がたっぷり入っているのだ。
でも、処理した内臓肉だと、そういうわけにもいかないんだよね。

別に栄養価が低いとかいうわけじゃないけど、いわゆる普通の正肉に比べて格段によい、というものではないのだ。
腸や肝臓なんかだと脂肪分も多いし、それを理解した上で食べる必要があるんだよね。
何はともあれ、おいしく食べられればよいのだけど(笑)
今では甲州もつ煮とか、B級グルメとしても広がりを見せてきているから、さらにおいしいもつ料理を食べる機会は増えるかもね。

2013/11/23

ふところもあたたまる

11月になって一気に寒さも増してきた気がするなぁ。
昼間はまだ日差しがあるとあたたかいんだけど、朝晩が冷え込むよね・・・。
こういう時期にほしくなるのはあたたかい缶コーヒー!
寒さでかじかんだ手がじわじわ、ほわほわとあたたまるのだ♪
でも、それでも足りないときは、もう使い捨てカイロしかないね。
一生懸命もんで、発熱させるのだ。

「かいろ」は「懐炉」で、もともとはふところに入れておく暖房器具。
古くは「温石(おんじゃく)」と言ってあたためた石を入れたらしいけど(懐石料理の懐石なのだ。)、江戸時代に入ると、印籠くらいの大きさの通気孔の空いた金属容器の中に木炭末と灰を入れて、ゆっくりと燃焼させるタイプの懐炉が出たのだ。
懐の中で燃やしているからまさに「懐炉」だね。
この灰式懐炉にはなすの茎や麻殻の灰なんかが使われたんだけど、桐の灰もメジャーだったのだ。
使い捨てカイロのメーカーでもある桐灰の名前はここから来ているみたい。
今でもカメラレンズの結露防止用に使われていて、現役の器具なんだって。

対象になって出てくるのが白金触媒式懐炉。
金属容器の中で白金触媒による炭化水素燃料の酸化発熱を起こさせるものなのだ。
ベンジンを使うハクキンカイロが有名だよ。
燃焼ではなく、触媒を介したゆるやかな酸化反応なので、300~400度という低温域で反応が進むのだ。
今でも金属ライター状の回路を使っているナイスミドル、というか、老紳士はいるよね。
オイルラーたーのように燃料を補充する必要があるので、今の使い捨てカイロになれてしまった世代には使いにくいのだ。
ちょっとかっこい感じはして、あこがれはするけど。

昭和も50年代に入ってから登場するのがおなじみの使い捨てカイロ。
もともとは米陸軍が朝鮮戦争時に使っていた携帯保温機(フットウォーマー)らしいのだ。
基本特許は明治の頃にもあったようなんだけど、直接は米軍の器具にヒントを得ているみたい。
仕組みは簡単で、鉄がさびるときに熱であたためるというもの。
鉄粉とおがくず、塩を混ぜ、水を垂らすと鉄粉がさびて熱が発生するのだ。
これは小学生でもできる実験だけど、それを袋の中で起こるようにしているわけ。
化学式で言うと、Fe+3/4O2+3/2H2O=Fe(OH)3+96kcal/mol
いわゆる赤さびはFe3O2で、黒さびはFe3O4だけど、このカイロの反応でできているのは、黒さびと同じ酸化数の水酸化鉄(III)なのだ。
1モル(鉄は原子量は約56だから、約56g)で96kcalの熱を発することになるよ。

使い捨てカイロの場合、不織布の袋の中に、さびて発熱する鉄粉、さびを進行させる水と塩、空気中の酸素を吸着して反応を早める活性炭、保水作用を持つバーミキュライト(観葉植物の保水土にも使われる人工土)なんかがまざっているのだ。
袋の通気量と中身の配合比率で発熱量や発熱持続時間が変わるので、そこを工夫して様々な製品が出ているのだ。
テレビで使い捨てカイロを作っている工場を見たことあるけど、中身を混ぜるところからすでに発熱は始まっているんだって!
で、それを袋に詰めて、真空包装したり、無酸素包装することでやがて反応が止まり、開封されたときにまた発熱反応が始まるというわけ。
あらかじめ発熱しないように作っているのかと思いきや、途中で発熱していようが、さっさと混ぜて空気に触れないようにして反応を止めているだけなんだね(笑)

この使い捨てカイロは、低温やけどの恐れはあるけど発熱量も低く、袋から出せば勝手に発熱するので、子供でも扱えるし、何より安価なので広まったのだ。
湿布式に貼るタイプとか、靴の中に入れるタイプとか、用途も広がってきているよね。
袋に粉が入っているだけの構造なので、大きさや形が変えやすいというのも大きな利点なのだ。
ただし、「使い捨て」と言われるように再利用はできないのだ・・・。
さびて酸化した鉄をもう一度還元してあげれば再利用できないことはないけど、鉄を還元するのは大変で、この袋に入ったままでは無理なので、そういう製品はできていないのだ。
(製鉄はまさに酸化鉄として採掘される鉄鉱石を還元して鉄を作るけど、大型の炉でコークスと反応させてたりと大変な工程が必要だよね。)

で、最近では使い捨てでないカイロも出てきているのだ。
ひとつは、電子レンジでジェルをあたためるタイプのもの。
日本では湯たんぽとしてよく使われているのだ。
もうひとつは、充電式の電池式カイロ。
使いたいときだけスイッチを入れてあたためられるのが利点。
技術の進歩で大容量で軽い充電池ができたので実現したのだ。
車のバッテリー並みに重い充電池じゃ持ち歩けないしね(笑)

そして、最後に登場してきたのがエコカイロと呼ばれるもの。
酢酸ナトリウムの凝固熱(液体が固体に変わるときに発生する熱)を利用したもの。
酢酸ナトリウムは高濃度で過飽和を起こしやすく、かつ、室温以上の凝固点で過冷却状態も安定なんだけど、過冷却状態でどろどろっとしている酢酸ナトリウムの高濃度溶液に刺激を与えると、一気に結晶化が進行して熱が発生するのだ。
この熱を使うんだけど、放熱後にまたお湯であたためてあげると過冷却状態が復活し、再び使えるようになるというわけ。
ただし、使い捨てカイロほどの発熱量はないみたいなので、取って代わるほどのものではないかな?
ボクはまだ見たことないんだけど、ちょっと興味あるねぇ。

というわけで、カイロも進化してきたのだ。
でも、よくよく見てみると、灰式懐炉、白金触媒式懐炉、使い捨てカイロはどれも酸化熱を利用したものなんだよねぇ。
多くの発熱反応は酸化反応だからかもだけど。
今ではその酸化反応を飛び越えた技術が出てきているみたいだから、この先さらに進展があるのかもね。
使い捨てカイロが過去の遺物になる日は来るのか!?

2013/11/16

下からほんわか

今週は一気に寒くなってびっくり!
部屋も冷え切ってしまって、暖房を入れる季節になったのだ(>o<)
でも、エアコンの暖房って上からあたためられるからちょっと気持ち悪くなるというか、頭がぼーっとしちゃうんだよね・・・。
でも、我が家は床暖房装備なので、下からぽかぽかなのだ♪
まだ今季は使っていないけど。

あたたかい空気は空気が膨張するので密度が低くなり軽くなるのだ。
なので、基本的には上に行こうとするわけ。
ストーブのように床に設置している器具なら、そこから出た熱が上昇していくんだけど、エアコンだと最初から上から温風が出るので、いくら下向きに風を出しても、なかなか床表面はあたたまらないんだよね。
それで部屋の空気の上はあたたまるけど、下は冷たいままになるのだ。
なので、なんだかあたたかいような気はするけど、足下が寒いままなのであんまり「あたたかい」と感じないんだよね。

こたつや石油ストーブなんかは下からあたためる器具なのである程度解消されるんだけど、やっぱり熱はどんどん上に上昇していくので、床すれすれのあたりはあまりあたためられないのだ。
オイルヒーターは別にしても、ストーブは火事の危険があって小さい子供や老人だけだと危ないし、こたつも中はあたたかいけど、外はあたたかくならないんだよね。
そこで、床から直接あたためる方法が考案されるわけなのだ。
まず広がっているのはホットカーペット。
電熱器が編み込まれたじゅうたんで、カーペット自体があたたかいので、下からあたたまるよ。
最近ではホットカーペットの上にふとんをかけたテーブルを載せてこたつ代わりにすることもあるよね。

でも、あたたかくて気持ちいいからとホットカーペットの上でうとうとすると低温やけどのおそれがあるのだ・・・。
ホットカーペットの上にさらにカバーを掛ければかなり安心だけど、そうなると今度は暖房効率が落ちるんだよね(>o<)
そこで、最近新築やリフォームではやっているのが床暖房。
工事が必要なので初期費用はかかるんだけど、省エネタイプのものも多いし、エアコンの暖房をがんがんつけ続けるよりはコストはかからないみたい。

朝鮮半島や中国東北部(満州地方)では古くから床下に台所の竈の煙(熱)を通して、床下からあたためるオンドルがあったのだ。
日本にも仏教の伝来とともに伝わったみたいだけど、その後普及はしなかったみたい。
そこまで冬の寒さが厳しくないからか、オンドルだと家屋の構造に制限がかかるから、木造平家建てが基本の日本には合わなかったのか。
平安時代になると今とあまり変わらない畳が普及するようなんだけど、畳があると、夏は蒸れず、冬は熱(床の冷たさ)を遮断してあたたかいので、そういうので足りていたのかもね。
でも、現代になって、やっぱり床下からあたためる手法がとられるようになったのだ!
畳敷きの和室が減ってフローリングの洋間が増えてこともかんけいあるんだろうなぁ。

床暖房の主な様式は、温水式、電気式、温風式。
温水式というのは床下にパイプラインを張り巡らせて温水を循環させるタイプ。
電気式は電熱器を床下に置いておいて、その熱であたためるもの。
ともに、深夜電力を活用して夜間に蓄熱しておいて昼間に使ったりすると省エネになるのだ。
小型ヒートポンプ(高効率エアコンと同じ熱交換機)を使って、少ない電力で大気から熱を取り出すのもあるよ。
太陽光発電で熱を作るタイプもあるし、最近がガス式で、ガス給湯器と一体的になっているものもあるよね。
温風式はオンドルがまさにそうだけど、家庭用だとあまり使わない方式なのだ。
大きなビルとかだとパイプラインに熱蒸気を循環させる蒸気ヒーターがわりと効率よく使えるので、全体の熱供給システムに組み込むのはやりやすいんだよね。

床暖房は床下から直接床をあたためて、そこからの輻射熱で部屋をあたためるのだ。
あまり熱伝導がよい床材だとすぐに低温やけどになってしまうので、通常は木やセラミックが使われるんだよね。
セラミックだと床暖房を切っている間にひんやりと冷たくなってしまうんだけど、あたためると遠赤外線が出るメリットもあるのだ。
ともにまず床材をあたためなくてはならないので、あたたまるのに時間がかかるんだよね。
そこはすぐに温風が出るエアコンやストーブに比べると弱いところ。
ただ、徐々にあたためていくので、体にはやさしいのだ。

床暖房が普及した重要な点のひとつに、浴室やトイレが寒いと心臓が弱い人は温度差でヒートショックを起こすリスクがあるんだよね。
そこで高齢者対応住宅では床暖房が普及していったのだ。
法要に参加してびっくりしたけど、最近ではお寺の本堂にも導入されているんだよ!
確かにお寺って寒々しいからね・・・。
床暖房が入っているとかなり快適なのだ。

今冬がどこまで寒くなるかはわからないけど、床暖房があるから安心。
雪がしんしんと降るような日だと、芯から冷えてくるから、そういうときにこそ床暖房が活躍するんだよね。
いやあ、よい時代に生まれたなぁ。

2013/11/09

寄せて、集めて、偽造?

ホテルや百貨店における食品偽装問題がものすごい広がりを見せているのだ!
車エビが実はブラックタイガーだったり、芝エビが実はバナメイエビだったり。
普段家庭ではなかなか食べられない国産食材を外食でぜいたくに食べる、と思っていたら、実はスーパーでいつも買っているのと同じ食材だったわけだ・・・。
エビはまだましな方だけど、野菜とかが中国産っていうのはかなりショックな人もいるよね。

より悪質に見えるのは、「肉」の偽装。
和牛や国産牛と表示されたメニューが実は別の牛肉を使っていた、なんてのはエビの話と同じだけど、切り身の肉だと思っていたら、それが実は葛肉などを寄せ集めた成型肉だった、っていうのはちょっとひどいよね・・・。
前にステーキのチェーン店で同じような問題が発覚したけど、業界では引き続きそういうことをしていたということになるのだ。

一般に、格安で提供されているステーキは、実はハラミ(横隔膜)なんだよね。
焼き肉なんかではカルビよりむしろハラミが好き、という人もいるけど、ハラミはあくまでも内臓扱いなので、多少安いのだ。
もう少しお金を出すと米国産や豪州産の肉になるけど。
いずれにせよ、日本人が好む脂のサシの入った「霜降り肉」に比べるとかたいのだ。
今回の問題となった奈良の旅館の例だと、お客さんから肉がかたいとのクレームが入ったので、食感が柔らかい成型肉に変えたって言うんだけど、確かに下手な肉よりは成型肉の方がおいしく感じたりはするのかも。

いわゆる成型肉というのは、食肉加工品の一種で、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)にしたがって「加工品」と表示上明記する必要があるんだよね。
それを怠っているのが問題なのだ。
成型肉の場合は、切り身の肉を切り出した後の残りや骨や筋についたまま残った肉などのくず肉やハラミなどの内臓肉を軟化剤で柔らかくし、結着剤で固めて形を整えたもの。
ハンバーグみたいなものだよね。
軟化剤として使われるのはソルビトールやグリセリンで、食肉加工品の表示を見るとよく見かけるものなのだ。
結着剤、つまりは「つなぎ」として使われているのはカゼインナトリウムなど。
これも食品添加物として表示上明記する必要があるよ。
ちなみに、乳アレルギーの人は乳タンパクの一種であるカゼインに反応する可能性があるので、結着剤にカゼインナトリウムが使われている成型肉と知らずに食べると大変なことになるおそれも・・・。

切り身の肉のステーキと成型肉のステーキは、いわばそのばばジャガイモをスライスして揚げたポテトチップスと、チップスターやプリングルスのようにフレーク化したジャガイモをつなぎで固めて成型してから揚げたポテトチップスとの関係と同じなのだ。
そのまま揚げたものだと外からしか味付けができないけど、成型してから揚げたものは、あらかじめ調味料を混ぜ込むことができるんだよね。
なので、ジャガイモの出来・不出来に大きく左右されることなく、味的にも品質的にも一定の質が確保できるのだ。
成型肉も同じで、適量の脂などを混ぜ込むことで、肉汁が適度に出る、とか、食感が柔らかいなどの質が確保できるんだ。
安い赤身肉よりおいしくなるわけ。

だから、成型肉と割り切って食べる分には問題ないんだけど、だまして、とか、偽って、ってなると問題なんだよね。
ま、値段設定からして明らかにわかる場合もあるけど。
また、切り身の肉の場合、内部に雑菌がいることはまずないけど、成型肉の場合はくず肉などを寄せ集めるので、内部に雑菌がいる可能性があるのだ。
くず肉の表面についていた雑菌が成型肉の内部にいってしまうことがままあるからね。
なので、成型肉はレアで食べてはダメで、よく火を通す必要があるんだ。
この点でもあらかじめきちんと成型肉であることを言っておかないと食中毒のリスクが高まってしまうんだよね。

さらに、近年の食肉加工技術の向上により生まれたのが、人工霜降り肉。
赤身のかたい肉に、インジェクション加工という方法で牛脂や調味料を赤身肉の中に「サシ」のように入れ込むのだ。
具体的にどのようにして注入し、まるで霜降り肉であるかのように肉の中で分散させるのかはよくわからないんだけど(まさにそこが技術の粋であって、特許とかとってるんだろうね。)、見た目には極上の霜降り肉に見えるのだ。
雪華肉というブランドがメジャーなようだけど、これはかたくておいしくない肉を加工することで、天然の霜降り肉以上においしいものを作ろうとしたんだとか。
もともと加工肉と断ってそういう技術を駆使しておいしい食肉加工品を作るのはすばらしいんだけど、できたものを「天然物」と詐称するのは大問題だよね。
いいものができるとそういう悪いことを考える人がどうしても出てきてしまうのだ。
ちなみに、このインジェクション加工においても肉の内部に雑菌が混入するおそれがあるので、やっぱりレアではなく、しっかり焼いて食べないとダメなんだそうだよ。

個人的には食肉加工品が悪いとは言わないし、安くておいしいものが食べられるのは技術の成果なのでむしろ喜ばしいことだと思うんだよね。
なので、きちんと法令に従って「加工品」と明記した上で、正しく、おいしく消費したいものなのだ。
そのためにも、だます人をうまく取り締まれるようにしないとダメなんだよね。
それもなかなかに難しいことなんだけど。

2013/11/02

アルカンターラは電気牛の夢を見るか?

最近新しく革靴を買ったのだ。
まだはき慣れてないのでちょっと硬いし、足にもフィットしていない感じ。
でも、天然皮革の靴の場合、履いているうちに徐々になじんできて、履き心地がよくなるんだよね♪
その分手入れなどで面倒なことがあるわけだけど・・・。
一方、数年前に買った合皮のダウンジャケットは表面が少しぼろぼろになってきたんだよね。
合皮の運命とは言え、悲しいのだ(>o<)

天然皮革より安価で、手入れや加工がしやすいものとして登場したのが「人造皮革」というもの。
合成皮革と人工皮革に分かれるんだって!
合成皮革は天然の布地の表面に合成樹脂を塗布したもの。
人工皮革はマイクロファイバー(ナイロンやポリエステルなどの極細の合成繊維)の布地(通常は不織布)に合成樹脂を含浸させたもの。
そのまま使うか、表面にさらに合成樹脂を塗布するのだ。

合成皮革の方が歴史的には古く、19世紀中頃には登場したんだって。
最初は布地にニトロセルロースを多層にわたって塗布したもので、自動車のシートや屋根に使われたんだって。
でも、ニトロセルロースはよく燃えるので、第二次大戦後は難燃性のポリ塩化ビニルが使われるようになるのだ。
この頃の合成皮革はとにかく通気性が悪いので、衣服や靴だと蒸れに蒸れてしまうので使えず、やっぱり自動車のシートとかそういうものに使っていたみたい。
さらにその後、人工皮革が登場するんだけど、その頃にはかなり改良されていて、通気性や耐久性がよくなり、衣服や靴を含む様々な分野に進出するようになったんだ。
日本初の人工皮革としては、自動車のシートに使われる東レのエクセーヌ(ブランド名はアルカンターラ)や、ランドセルでもおなじみのクラレのクラリーノなんかがあるよ。
アルカンターラはスウェード状の表面加工で、クラリーノはつるつるぴかぴかの銀面加工というやつなのだ。

一般に人造皮革は、品質が均一で、動物由来ではないのでどんな形にも対応可能、染色も容易と、加工性に優れたところが大きなメリット。
安価で水をはじき、手入れも簡単。
ドライクリーニングもできるのだ。
でも、天然皮革に比べると劣化が早いと言われているのだ。
天然皮革も何もしなければかびたり、硬くなってひび割れたりするけど、保革油という油をしみこませて手入れをすることで長持ちするわけで、そういう手入れをしない人造皮革は長持ちしない、というのは当たり前なのかも。
特にポリウレタンを塗布したものは劣化が早く、数年で表面がひび割れ、ぽろぽろと樹脂がはがれてくるのだ。
これはもう運命的なものなので、そういうものとして使わないといけないんだよね。

そのほかにも、やっぱり肌触りや通気性では劣るところがあるのだ(>o<)
天然皮革だと多少ながらも水分や油を吸い取るから、「手になじむ」んだよね。
これが独特の手触りになるのだ。
また、触れたときにあたたかみがあるんだよね。
これは熱伝導の違いかな?
ポリ塩化ビニルだと、長時間接触した状態にするとくっついてしまい、表面がはがれたり、色移りしたりするから、しまい方も気をつけないといけないんだ。

何よりの違いは、使い込んでいくうちに「なじみ」や「風合い」が出てくることだよね。
人造皮革は布地や不織布が基材になっているので、基本的に形状が変わることがないのだ。
逆に、天然皮革だとタンパク質の繊維が三次元でからみあっているんだけど、使い込んでいくうちにフィットするように変形していくんだよね。
これは革靴や革手袋でよく言われる話なのだ。
「風合い」も油がしみたり、色が落ちたりの積み重ねで出てくるもの。
人造皮革は水をはじき、汚れにくいが故にこういう変化もないのだ。
変化が出るほど長く使えるわけでもないしね。

というわけで、なんだか天然皮革の方がいいような気もするけど、やっぱり手入れが楽で安価というのは大きな魅力なんだよね。
だからこそ今でも人造皮革が使われるわけで。
用途用途で使い分けるっていうのが賢い使い方かな。