2017/05/27

移動する祝日

フランスでは、今週後半は昇天祭があったので人が少なかったのだ。
必ず木曜日に設定される祝日なので、金曜日も休んで4連休にする人が多いんだよね。
復活祭に連動して日が決まる祝日で毎年日が変わるので時期は変わるのだけど、たいてい春の気候のよい時期なので、プチバカンスになるようなのだ。
イースターは日本に入ってきたものの、こっちはまだなじみが薄いよね。

キリストは、磔刑の3日後に復活したのだ。
というか、「女たち」が墓を見に行ったらもぬけの殻だったんだよね。
で、その40日後(復活当日が1日目になるので正確には39日後)に天に昇ったので、昇天祭が復活祭の40日後に設定されるわけ。
復活祭は、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」と決められているので、その39日後=5週と4日後なので、必ず木曜日になるんだよ。
ちなみに、処刑は金曜日に執行され、その3日後に復活なので、復活は必ず日曜日なのだ!

もともと復活祭は古代の太陽信仰との結びつきが指摘されていて、それで、春分の日と月の満ち欠けをもとに設定されているんだよね。
ちょうど春分の日を越えて昼の時間が長くなっていく時期で、太陽の精力が増していくタイミング。
それを祝うものなのだ。
クリスマス(降誕祭)も、冬至祭りとの関係が指摘されているけど、やっぱり太陽信仰が関係しているみたい。
こういう古代の太陰暦で設定されていた祭りを太陽暦のキリスト教の中に取り入れていった結果、毎年日付が変わってしまう「移動祝日」ができあがったのだ。

実は、西方教会と東方教会で復活祭の日付が変わるので、当然のことながら昇天祭の日付も変わるのだ。
理由は簡単。
西方教会が復活祭の日付の算出にグレゴリオ暦を用いているのに対し、東方教会はユリウス暦を用いているため。
今年2017年はたまたま一致しているんだけど、昨年2016年は、西方教会では3月27日、東方教会では5月1日と1ヶ月以上のずれが生じていたのだ!
2024年に再度1ヶ月以上のずれが生じた後、2025年に再び一致するよ。
実にややこしい。

この「40日間」の根拠は、新約聖書のルカの福音書に続く使徒言行録にあるのだ。
そこでは、復活後のキリストは、40日の間各地で「神の国」について説いて回り、その後、ベタニア北部のオリベト山頂から天に帰ったとされているんだ。
ところが、おおもとであるルカの福音書では、弟子に会って会話した後、すぐに昇天したかの用の記述なんだよね。
もちろん、どれくらいの期間の話かは明示的に書いていないのだけど。
でも、逆に、使徒言行録には数字が書いてあることもあり、こっちが採用されているみたい。
復活自体が不思議な話なんだけど、これも不思議な話だ。

日本ではなじみがうすい昇天祭も、キリスト教においてはとても重要な祝日なんだって。
特に、キリストの「死と再生」による神格化というプロセスを完結させるものなので、大事なのだ。
というのも、新約聖書のうち降誕について触れているのはマタイの福音書とルカの福音書のみ。
ヨハネの福音書に至っては、「はじめにロゴスありき」とか言っているけど、降誕の下りはないのだ。
一方で、復活については全部の福音書が触れているんだ。
なので、特に復活祭は重要視されているんだよね。
ちなみに、昇天まで書いているのはマルコの福音書とルカの福音書のみ。
ルカの福音書は降誕から昇天まで全部が盛り込まれているのだ。

いずれにせよ、キリスト教において非常に重要な祝日なんだよね。
ただし、イースターのような飾りとか、独特の食習慣とかはないので、地味に街から人がいなくなっているだけなんだけど(教会では何かやっていりるのかな?)。
なので、日本にはイースターは浸透していっても、昇天祭まで無理だろうね。
こればかりは宗教色を排除して取り入れられないだろうから。

2017/05/20

過保護に育てればやわらかい

フランスでは、ちょうどアスパラガスが旬を迎えているのだ!
日本だとどんな野菜も通年見かけるけど、フランスではけっこう野菜の旬を大事にしているみたいなんだよね。
で、この時期のフランスの名物と言えば、ホワイトアスパラガス。
日本ではついこの間まで缶詰がメジャーだったけど、もちろんフランスでは生。
ゆでただけでほんのりとあまくておいしいのだ♪
ゆで汁にもうまみが溶け出すので、それを料理に使うんだって。

そんなホワイトアスパラガスも、ものとしてはグリーンアスパラガスと同じもの。
育て方が違うだけ。
普通に日光に当ててt育てるとグリーンアスパラガスになるんだ。
放っておくとどんどん太く、固くなっていくので、ある程度のところで収穫するのだ。
一方、ホワイトアスパラガスは、芽が出てきたところで土をかぶせたり、最初からトンネルの中で栽培されたりして、日光を遮って育てられたものなのだ。
すると、葉緑素が作られず、皮もあまり固くならず、苦みも少ないホワイトアスパラガスになるんだよ。
苦みがない分だけ甘みを感じるんだよね。
ちなみに、ビタミンなどの栄養面としては、やっぱり日に当てたものの方がよいみたい。

この栽培方法は「軟白栽培」と呼ばれる手法なのだ。
実はアスパラガスだけではなく、いろんな野菜に使われている手法だよ。
同じくフランスでよく見かけるのはチコリー。
イタリアで言うラディッキオ。
白菜のように葉がかたまっているけど、野生のものは普通に伸びて行くみたい。
これを軟白栽培することで、スーパーで見かけるあの形の野菜になるのだ。
苦みもあるけど、やわらかく、甘みもあるよね(熱を通すとより甘みを感じるのだ。)。

もちろん、これは欧州だけの栽培文化じゃないよ!
日本でもおなじみなのは、ウド。
酢の物にしたり、きんぴらにしたりするあの白いウドは、室の中で日光を遮って育てられたものなのだ。
山菜としての山ウドというのがあるけど、これは普通に日光を受け手育ったもの。
うどの大木じゃないけど、放っておくと太く固くなるので、若いうちに摘むのだ。
白ウドに比べると、苦みもあるし、あくが強いんだよね。
これは日光が当たっている結果。
でも、天ぷらなんかにすると山ウドもおいしいのだ。

もっとよく見かけるもので言えば、もやし。
大戦中は海軍が潜水艦の中で栽培していたなんて話もあるけど、豆を暗闇の中で発芽させて育てたのがもやしだよ。
普通に畑にまいたら双葉が出て育っていくけど、日光がないからひょろひょろと伸びていくのだ。
もともと豆に蓄えられている栄養だけで伸びるんだよね。
ビタミンが豊富だし、暗く、かつ、狭いところで育てられるので海軍にとっては帰朝だったみたい。

そして、根三つ葉。
ひょろっと白く長く太い茎を持つ三つ葉。
これはある程度成長した後に「根寄せ」と言って茎の周りに盛り土をして、そこに日光が当たらないようにして育てるのだ。
そうすると、土に覆われている部分が白く、やわらかくなるわけ。
長ネギの白い部分もそうだよ。
九条ネギのような全体が青いものが本来のもので、白ネギは根寄せしてその部分を軟白栽培しているのだ。

さらに、中華料理などで見かけるようになった黄ニラ。
これも日光を遮って育てられたニラで、柔らかく、臭みも少ないのだ。
ニラは鮮やかな緑色だけど、葉緑素が抜けるとちょと黄色っぽいってことだね。
普通のニラより少し高いのは、栽培に手間がかかっているからなのだ。

というわけで、そのまま育てると固くなったり、苦くなったりするものを、 日光を遮って育てることで柔らかく育てるというのはいろんな野菜で適用されている手法なのだ。
こういうのも人類の食へのあくなき追求だよね。
最初に考えた人はすごいと思うよ。
きっと、たまたま日陰で育ってものが柔らかかったり、苦みが少なかったりして、そういうのをヒントにしてやってみたんだろうね。
そして、植物の方も、日光を遮られてもなお育とうとするからこそできるわけで、その生命力もすごいのだ!

2017/05/13

どっちが起源

フランスに来てから、豚ひき肉が手に入らなくて困っていたんだよね。
ところが、実は普通にスーパの精肉コーナーになったのだ!
でも、それをよくよく見てみると・・・。
「ファルシ用」豚肉と書いてある!
そうか、ファルシに使うものか、ってファルシってなんだ?、となったわけ(笑)

ファルシというのは、いわゆる肉詰め料理。
日本ではピーマンの肉詰めがおなじみだけど、フランスでは、トマトのファルシをよく見かけるよ。
ナスやズッキーニなんかもあるのだ。
さらに、葉ものでひき肉のたねを包んだものもファルシ。
つまり、ロールキャベツもファルシで、フランスでは、シュー・ファルシというのだ。
フランスってあんまり豚肉を食べないみたいなんだけど、ファルシには使うんだね。

で、このファルシとうのは「farcir(詰める)」という同士から来た名前で、もともと「詰め物料理」ということのようなのだ。
西欧では、古代ローマの時代だから、ウサギや鶏などの内臓を除いて、そこにハーブや香辛料を詰める料理があったそうなのだ。
そう、韓国の参鶏湯(サムゲタン)のようなイメージ。
内側に香りのものを詰め込んで、おいしく食べようというものなのだ。
これがファルシという料理の起源だと言うのだけど・・・。
あれ、なんか今のものと違う。

むしろ、ギリシアにあるブドウの葉で肉などのフィリングを包む料理の方が近いよね。
これはドルマというのだけど、実は中東生まれの料理。
現在のギリシア料理はトルコ料理を通じてアラブ世界の影響を強く受けているのだ!
ギリシアだけでなく、東欧で、トルコの影響があったような国には似たような料理が残っているらしいよ。
今のフランスの野菜の肉詰めのファルシは、これがさらに西欧まで伝播してきたものじゃないかと思うんだよね。
同じ「詰め物」料理だから、名前がファルシになっただけで。

中東のドルマはと言うと、トルコ語の「dolmak(詰める)」の過去分詞(=「詰められた」)から来ているんだって。
そう、語源もフランス語のファルシと同じなのだ!
これはますますあやしい。
ちなみに、アラビア語でも「詰められたもの」を意味する「マハシー」という名前なんだって。
日本語の「肉詰め」も同じだけど、どこでも同じような名付け方なんだね。
ちなみに、英語で肉詰めピーマンは「stuffed pepper」なので、やはり「詰められたピーマン」だよ。

中東のドルマは、すでにササン朝ペルシアの時代にあったようなのだ。
6~7世紀くらいみたいだよ。
このときの料理法は、まさにブドウの葉で何かを包む、というものだったみたい。
中世になると、イスラム世界ではすでにマハシーは一般的な料理になっていて、それがトルコ帝国によってさらに幅広く伝播されたんじゃないかと思うんだよね。
野菜と肉の取り合わせというのが万国共通で好まれているんだろうね。

一方で、古代ローマの肉にハーブなどを詰める料理法も現代に生き残っていいるよね。
今でもローストチキンを作るときは、内臓を除いた腹腔にハーブなどをつめるし、サンクスギビングの七面鳥もそうなのだ。
ジビエ料理では、臭みをとるためにこういう料理が特に大事なのだ。
英国料理として名高いハギスは、羊の胃の中に羊の他の内臓の詰め物をするものだけど、詰めるという発想は同じかもね。
詰める中身が斜め上の発想なだけで(笑)

でも、こうやって考えてくると、不思議なのは、フランスで売られているファルシ用の肉が豚肉であること。
中東から来たものなら、豚はダメだよね。
フランスのファルシも必ずしも豚ではないのだけど、スーパーで売られるくらいメジャーな詰め物用の肉であることは確か。
素材との相性の問題で、クセが比較的弱い豚肉の方がおいしい、ということなのかな?
これは、ムスリムでない国の発想だよね。

2017/05/06

仏の終戦記念日

5月と言えば、日本では大型連休!
でも、フランスはもともとバカンスの国なので、そうやって休日が連続することってないんだよね・・・。
普通に休めばいいだけ、ということなんだろうけど。
でも、5月はフランスでも祝日が多い月なのだ!
5月1日がメーデー、5月8日が第二次大戦戦勝記念日、そして、5月25日が昇天祭(復活祭と連動するので移動休日だよ。)。
って、あれ、フランスでは5月が終戦記念日なの?

というわけで、ちょっと調べてみると、この5月8日という日付は、ドイツが連合国軍に無条件降伏し、降伏文書に調印が行われた日なのだ。
英国首相のチャーチルさんが群衆に「Vサイン」を出した日でもあるよ。
欧州戦勝記念日、VEデーとも呼ばれるのだ。
でも、ちなみに、欧州地域で完全に戦闘したのは、プラハの戦いが終結した5月11日で、その3日後なんだって。
で、フランスもこの日を戦勝記念日に指定し、祝日にしているわけ。
フランスでは第一次大戦の休戦記念日も祝日だよ(11月11日)。

歴史を振り返ってみると、フランスはナチス・ドイツの侵攻を受け、パリは陥落していたんだよね。
それは1940年の6月17日。
ロンドンに亡命していたシャルル・ド・ゴール将軍はBBCの放送でレジスタンス活動を呼びかけたのだ。
これが後の「自由フランス」。
徐々に勢力を増していき、1944年には、ド・ゴール将軍は「フランス共和国臨時政府」を名乗り出すんだけど、連合国はこれをフランス政府としては承認しなかったんだよね。
このとき、名目上のフランス政府は、フランス南部を統治していたヴィシー政権。
パリなど北部はドイツの占領下にあって、パリはフランス政府自らが統治できなくなっていたのだ!
フランス中部の街に「ヴィシー」を首都としたのでこの名があるんだけど、ドイツ及びイタリアと休戦協定を結び、枢軸国の支配下に入ったのだ。

1944年に連合国軍がノルマンディー上陸作戦で北フランスに上陸し、パリへと南進をしていって、8月にドイツ占領下のパリを陥落し、解放したのだ。
このとき、ド・ゴール将軍の「フランス共和国臨時政府」が先にパリに入り、名実ともにフランス政府としての機能を果たしていくこととなるのだ。
パリ市庁舎(オテル・ドゥ・ヴィル)でパリ解放の宣言も行っているよ。
連合国軍も10月になって、ヴィシー政権でなく、臨時政府を正式なフランス政府と認めたんだよね。
こうして、4年間にわたるパリの占領は解かれたのだ。

シャルル・ド・ゴール将軍は非常にカリスマを持った人だったようで、戦後すぐに首相に就任し、その後大統領になるのだ。
パリの玄関であるシャルル・ド・ゴール国際空港にも名前が残っているよね。
大統領になったのは1959年と遅く、1890年生まれなので、すでに70歳になろうとしている頃だったのだ!
でも、この後11年間大統領職にあって、アルジェリア戦争で混乱していたフランスの政局を安定させ、今のフランス第5共和制を確立した大物政治家なのだ。
やっぱりすごい人なんだよねぇ。

こうやってみると、やっぱりフランスという国にとっては、自国を占領していたドイツ軍を完全に降伏させた日の方が大事なんだよね。
世界史的には最後まで戦った日本が降伏した日が本当の終戦なんだろうけど。
正直、欧州的にはドイツが降伏していれば事実上戦争は終わっているよね。
後は南洋とかアジアの話だから・・・。
植民地問題はあるんだけど。

でも、実は、日本では8月15日と思っている日付も、受け止めが違うようなのだ。
8月14日、日本はポツダム宣言の受諾を連合国各国に通知し、翌15日未明に、玉音放送により日本が連合国に無条件降伏することを国内に公表したのだ。