2016/02/27

江戸のランドマーク

2月23日は「ふじさん」の日!
安直な語呂だ(笑)
でも、日本のイメージって、やっぱり「富士山」なんだよね。
奈良時代の歌人である山部赤人さんがすでに富士山に関する長歌・反歌ですでに歌われていて、万葉集にも載っているのだ。
古代から霊峰として崇められ、実際に修験道の聖地でもあるんだよね。

で、この富士山は、江戸の人たちにも人気で、「富嶽三十六景」なんていう浮世絵シリーズもあるくらい。
そればかりか、「名所江戸百景」のような江戸の風景を描いた作品にもたびたび登場するのだ。
これは、実際に江戸からよく富士山が見えたからなんだよね。
江戸城から富士山まではだいたい100kmくらいで、当時は高い建物もなく見晴らしがよいし、何より空気が澄んでいたからよく見えたはずなのだ。

その証拠に、東京の地名で「富士見」というのがけっこうあって、これは西から東に上る坂のある場所が多いんだよね。
富士山がよく見える場所だったから「富士見」なのだ。
そのまま坂の名前としても「富士見坂」というのはたくさんあって、飯田橋から九段に向かう富士見坂や、日暮里から西日暮里に向かう富士見坂なんかは有名だよ。
今ではほとんど見えないのだけど・・・。

それでも、ビルの高層階からは、天気がよければ富士山が見えることが多いのだ。
冬だと空気も乾燥しているからよりくっきり見えるよね。
小学校の時は教室から富士山が見えるとうれしかったものだよ。
今ではマンションやビルなど高層の建物が増えてきて司会が遮られるから、天気がよくても見えないことがあるのが残念(>o<)
東京タワーですら見えづらくなってきているのだから仕方がないのかもしれないけど・・・。

人の目線の高さをAmと仮定して、地球の半径をRとすると、地平線までの距離は、三平方の定理を使って、(A+R)-Rの平方根で求められるのだ。
地球の半径に比べて、目線の高さはものすごく小さいので、近似値としては、2ARの平方根にほぼ等しくなるよ。
ここで、Aを1.5m、地球半径を6,371kmとすると、だいたい4.37kmになるのだ。
高い建物にいればそれだけ目線の高さは高くなるので遠くまで見通せるんだけど、例えば、地上約200mの高さにある新宿都庁の展望台から見ると、約38.8km先まで見えるのだ!
新宿起点で言えば、八王子、横浜、柏、市原、川越、春日部なんかでも見渡せているよ。

で、富士山の場合は、そもそも高さがあるので、もっと遠くにあっても見えるのだ。
富士山の高さをHmとすると、同じように三平方の定理から、富士山の山頂がぎりぎり地平線の先に見える限界点(地平線からの距離)は、(H+R)-Rの平方根になるはず。
これは約220kmになるんだよ。
なので、何も障害物がなければ、普通の人の目線の高さであっても、200km離れた地点から富士山は見えるというわけ。
東京は100km圏内なので余裕。
200km圏内と言えば、水戸、宇都宮、前橋・高崎、松本、名古屋なんかまで入るよ。
150km圏内まで入ると、上半分くらいは見えるので、京から下って豊橋まで出れば拝めたはずで、伊勢物語の東下りでも、三河の八橋(現在の豊田市)を過ぎたらもう見えていておかしくなくて、駿河まで出なくても見えていたはずなんだよね(笑)

ちなみに、目線が高いところもあれば、当然さらに遠くにあっても見えるはずで、100mの高さの展望台に上れば、地平線まで36km+富士山の限界点220kmで250km離れてもOK。
こうなると、金沢まで範囲が広がるんだけど、残念ながら石川県庁の19F展望ロビーは高さ約80mなので足りないのだ(ToT)
でも、日本アルプスの山々なら標高が2,000m級なので、当然のことながら富士山がよく見えるよ。
何も、目線の高さは人工の建物でなくても上げることはできるのだ(笑)

2016/02/20

そう言えば、なんか違和感を感じていた(笑)

米国の研究チームが、つに重力波の検出に成功したと発表したのだ!
重力波というのは、質量を持つ物体が加速度運動するときに生じる空間(重力場)のゆがみのことで、アインシュタイン博士が一般相対性理論に基づいて予言していたんだけど、長年直接的な観測ができなかったもの。日本もカミオカンデのある網岡鉱山跡に大型低温重力波望遠鏡(LCGT)「KAGRA」を整備していて、まもなく観測を始めるところだったのだ。
欧州でも観測をしていて、今後、米国以外のチームが重力波を観測することができるようになると、先の米国の発表は本当だったのかがまずわかり、その後、重力波の謎が徐々に解明されるかもしれないんだって。

実は、ボクたちも質量を持っているので、走ったりするとその周りの重力場はゆがんでいるんだ。
動くとなんか歪みを感じるよねぇ(笑)って、そんなわけはなくて。
この重力場のゆがみというのはものすごく小さなものなので、よほど大きな質量を持つようなものが動く場合でないと重力波として観測することは不可能なんだよね。
そこで、世界中の研究者は、ブラックホールやパルサーやらの宇宙空間にある巨大質量の天体の動きに起因する重力波を検出しようと競争していたのだ。
でも、それでも「さざ波」程度のものなので、技術的に観測が難しかったんだって。

間接的な証拠としては、互いに引き合いながら回転運動をしている連星パルサーという天体の周期を精密に観測することで、重力波というものがあるらしい、というのはわかっていたのだ。
連星パルサーは名前のとおり、ふたつのパルサーが互いに引き合いながら一体となってくるくる回転しているんだけど、どうも天体の間の距離が微妙に縮まっていて、それで回転の周期が変化していることがわかったのだ。
これは、それぞれのパルサーが共通の重心を中心に引き合いながら書いてぬんどうをするときに重力波が発生していて、その重力波の分だけエネルギーが失われることにより、徐々に近づいていく、ということのようなんだよね。
(仮に何もエネルギー損失がない場合には天体間距離は変わらないはずなのだ。)

で、この間接的証拠からエネルギーとしてどの程度の重力波が発生するかが予測できるわけだけど、これがごくごく小さなもの。
重力波は減衰することなく光の速さで伝わるんだけど、あまりにも小さすぎるのでノイズとの区別がつかず、観測できなかったみたい。
それを技術で工夫して、今回検出にこぎ着けたんだよ。

その検出方法の世界的なトレンドはレーザー干渉計(マイケルソン干渉計)を使ったもの。
光源から出たレーザーをビームスプリッターという装置でそのままの方向に進む光と、直角に曲がった方向に進む光に分けるのだ。
それぞれの光の進む先には鏡があって、レーザー光が反射され、その反射光を検出するんだけど、反射光もビームスプリッターで分離されてしまうので、実際には、もともとまっすぐだった光は反射してから曲げられた光が来て、先に曲げられた光は反射してからは直進する光が来るのだ。
何も起こらなければ光の進む距離の違いで干渉が起こるんだよね。
すなわち、光に「山」と「谷」の波があるので、「山」が重なれば強い光が検出され、逆に「谷」が重なると暗くなる。
「山」と「谷」が合わさると相殺してしまって光が弱くなるのだ。
これが「干渉縞」として観測されるんだよね。

重力波が到達すると、空間がゆがんでしまうので、それぞれの光の進む距離が伸びたり縮んだりするのだ。
理想的には片方は縮んで、片方は伸びるんだそうだよ。
でも、その大きさが、太陽と地球の距離に対して原子1個分くらいのゆがみ・・・。
なので、観測が難しいのだ。
KAGRAではレーザー光が進む距離が片道で3km、米国で重力波の観測に成功したLIGOの場合は4kmだよ。
地球が丸いので、どんなにがんばっても片道4kmとるのが限界なので、これ以上の長さでやるとなると、宇宙空間に出て人工衛星を使ってやるしかないんだけど、そういう構想もあるみたい(人工衛星の位置を精密に制御できないので実現はまだまだのようだけど。)。

我が国のKAGRAの場合は、工夫をすることで観測精度を上げているのだ。
ひとつは、地下深くに置くことで、地面の振動によるずれのノイズを下げること。
実は、国立天文台の三鷹キャンパスの地下にも小型の重力波望遠鏡のTAMA300というのがあるだけど、近くの産業道路を大型車両が通っただけで観測データがダメになるらしいんだよね・・・。
もうひとつの工夫は、徹底的に冷やすことで観測装置の熱振動を抑えること。
熱があると鏡も検出器も振動しているので、それがノイズとしてきいてくるのだ。
なので、KAGRAの場合は液体ヘリウムで冷やしながら観測するんだよ。

昨年ノーベル賞を受賞した梶田先生は、このKAGRAを整備している東京大学宇宙船研究所の所長だけど、米国の成果を賞賛していたよね。
初の観測実績は逃したけど、これからは国際共同で観測を進め、各地の観測装置でデータを集めることで、重力波の発生源の方向や距離などもわかる可能性があるので、まさに研究としてはこれから、ということのようなのだ。
なので、まだまだ挽回のチャンスがあるので、日本もKAGRAを使って研究をしてきたいってことなんだって。
本格稼働は来年になるみたいだけど、期待が高まるね。

2016/02/13

本当はメインなんです!

「なます」という料理があるのだ。
イメージとしては、お正月のおせち料理に入っている紅白のやつだよね。
さっぱりするのでボクは意外と好きなんだ。
ゆずをきかせてあるのがおいしいよね。
でも、実は、これは「精進なます」と呼ばれるものの一種で、もっと歴史があって、奥が深いものなのだ。

ことわざに出てくる「羮に懲りて膾を吹く」の「なます」なんだけど、「羹」というのが熱い料理で、「膾」は冷たい料理なんだよね。
具体的には、生肉や生魚を細切りにしたものを中国では「膾」と言うのだ(本当は魚の場合は「鱠」)。
時代劇なんかに出てくる「なます切りにする」というのは細かく切り刻む、ということだよ。
孔子さんも肉のなますを好んだと言われているけど、肉をあぶった「炙」とともに古代中国のごちそうだったんだって。
「人口に膾炙する」というのは、「炙」や「膾」のようなごちそうは人々に好まれてよく口にされるけど、それと同じように人々が口にする、ということなのだ。
酢の物の一種というイメージとはだいぶ違うよね・・・。

我が国にも「なます」は古くからある料理で、おそらく最初は本場中国のものが伝わったんだろうけど、「膾」ではなく、大和言葉の「なます」は独自の料理になっていたのだ。
平安後期の院政期には、魚や野菜を刻んだものを調味料と和えたものが「なます」と呼ばれていたようで、すでに仏教の影響からか、「生肉」はなくなっているのだ。
やがて、単に酢を使った調味料で和えたものを「なます」と呼ぶようになり、野菜だけを使ったなますも登場するんだ。
一応、野菜のみの場合は「精進なます」とよばれるのだけど。
このあたりになると、ほぼ現在の酢の物の概念だよね。

でも、江戸時代まではなますは「一汁三菜」の「菜」のひとつで、煮物・焼き物と並んでメインの料理の一つであったのだ。
通常お膳の中央より奥の「向こう側」に置かれたので、「向付(むこうづけ)」と呼ばれるようになるよ。
たぶん、この頃はまだ魚肉が入ったもので、今で言うところの「ぬた」や「カツオの土佐造り」に近い料理だと思うんだよね。
時代が下ってくるとこのなますはだんだんと刺身・お造りに置き換わっていくのだ。
もともとは刺身やお造りもなますの一種だったんだけど、はじめから調味料と和えるんじゃなくて、切り身だけ並べておいて、好きな味で食べた方がおいしくない?、ってなったんじゃないかと思うのだ。
江戸時代になると、江戸のような比較的海に近い年では新鮮な生魚が得られるようになり、さらに、醤油が普及してきて、あえてあらかじめ酢を使った調味料で和えなくてもよくなったのだ。

で、本来の酢を使ったなますはと言うと、会席料理では止め肴の酢の物・和え物として出るものに成り下がったのだ。
もちろん、ほぼ野菜だけが使われる料理に変わってはいるけど。
メインだったはずが、刺身に座を奪われてしまった・・・。
この結果、刺身のようなメインになるなます由来の料理がごそっとイメージから抜け落ちたので、いわゆる酢の物のイメージになっていくのだ。
しかも、「なます」の名前をそのまま使うのもおせち料理の「紅白なます」くらいだしね。

タルタルステーキもそうだけど、基本的には家畜の品種改良も進んでいないし、場合によっては狩猟で獲た獲物の場合もあったので、生肉はそのままではかたいもので、刻んで柔らかくする必要があったんだよね。
しかも、保存技術もよくなくてどんどん悪くなっていくのでくさみも出やすく、薬味や香辛料を混ぜることがおいしく食べるこつだったのだ。
酢を使うのは、味を調えるとともに、殺菌効果も狙っているよね。
傷みやすい鯖をしめさばにするのと同じ。
でも、江戸時代くらいまで下ると、そんなことをしなくても素材のママの味を楽しめるくらいの新鮮なものが手に入るようになったので、刺身文化が花開くのだ。
そういう意味では、「なます」という調理法は一定の役割を終えたんだよね。
ただし、味として好まれている部分は確かにあるので、酢の物のとして生き残っているのだ。

2016/02/06

製法が大事!?

文部科学省が定期的に改訂している「日本食品標準成分表」で衝撃が走ったのだ!
これは、カロリー計算やビタミンやミネラルなどの栄養素量の換算の基礎データになるものなんだよね。
料理のレシピで、塩分量が○○、カロリーが○○というのはこの表のデータから算出している例が多いのだ。
(逆に、そうでないと個別に熱量や成分を分析しないといけないから・・・。)
で、ニュースなどで話題になったのが、「ひじき」の鉄分量。
今時改訂から大幅に減ったんだよね・・・。

よく、鉄分が不足している場合は、ほうれん草やレバー、ひじきなどを食べましょう!、と指導されてきたけど、それが根底から変わるわけ。
スーパーで売っている乾燥ひじきを食べてもあまり鉄分が補えない可能性があるのだ。
学校給食とか病院食とかは栄養のバランスをすごく気にしているから、ひじきで鉄分がまかなえないとつらいかも。
女性の場合は特に鉄分の摂取が重要だから、気をつけないといけないよね。

その原因というのも明らかになっているから、今回大きく報道されているのだ。
それは、乾燥ひじきの製造過程で鉄釜が使われなくなったから。
ひじきは鉄鍋でにられてから乾燥させることで、鉄分が豊富になっていたのであって、海の中にある状態では鉄分が豊富なわけではなかったのだ!
ほうれん草とは違うわけだね。
なので、どうやって加工されたひじきかが重要なんだ。

近年では、さびにくくてメンテナンスが容易なのと、鉄より軽いのとで、ステンレス製の釜が使われるようになったんだって。
鉄の釜を使っていたときは、ひじきをにている間にその煮汁の中に鉄分が溶け出して、それをひじきが吸収していたんだけど、ステンレスの場合は鉄分の溶出はないので、本来ひじきが「地力」で持っている鉄分しかないわけなのだ。
実は、一般生活でも同じようなことが起こっていて、鉄のフライパンや鍋、鉄瓶・鉄のやかんなどが使われなくなったので、かつてに比べると意識して鉄分を摂取しないとダメになってきているんだよ。

鉄は熱伝導性も高く、加工しやすいので、古来より鍋や釜などに使われてきたんだけど、とにかく重いんだよね。
しかも、さびやすいのでメンテナンスも手間がいるのだ。
フライパンや鍋の場合は、油のなじみがよいことと、中華鍋のように重いことがかえって意味があることもあるので、業務用では使われているけど、一般家庭ではなくなりつつあるよね。
アルミなら、熱伝導性が高くて加工もしやすく、さびにくく軽いのだ。
かつては視点レスは熱伝導性が悪いので火にかける調理器具にはあまり使われなかったけど、「全面多層鋼」といって、ステンレスの間に鉄のような熱伝導性の高い金属をサンドイッチしたような材料にすることで、それを克服したのだ。
なので、ある程度の大きさが合ってアルミでは強度に問題が出るような場合は、ステンレスが使われるようになったのだ。
ひじきを煮る釜もそれでステンレス製に置き換わっているんだ。

はっきり言って、ひじきの加工業者さんもいまさら鉄釜に戻すわけにもいかず、正直困惑しているみたい。
今後は「鉄釜で煮ました」とか「ステンレス釜で煮ました」という標記が加わるようになるかもね。
でも、そうなると、「鉄釜」のやつばかりが売れてしまう可能性があるので、業界としてはつらいかな?
けっきょく、鉄の釜に戻すか、ステンレスの釜で煮るんだけど、煮るときに「鉄卵」みたいなのを入れて鉄分を補給するとかしないといけないもんね。
いずれにせよ、ひじき加工は何かが変わるはずなのだ。

そういうわけで、現代人は普段から鉄分の摂取により気をつけないといけないのだ。
鉄分は2価の鉄イオン(Fe2+)の状態で吸収されることから、よくビタミンCと一緒に摂取するといいと言われているよね。
それよりも簡便な方法は、お茶などを飲むときに鉄瓶で沸かしたお湯を使うとよいのだ。
鍋とかだと重いと料理が大変になるけど、お湯を沸かすやかんくらいならたいして気にならないからね。
地が頃ではカラー南部鉄瓶が海外で流行していたりするけど、日本でも鉄瓶にまた注目が集まるかも。