2023/04/29

砂も水も

 あたたかくなってくると、公園でぼーっとするのもよいものなのだ。
そうすると、いきなり砂場にスズメが乱入してきて暴れ回ったりするんだよね。
かといえば、カラスは噴水で行水をしていたりするのだ。
これが「砂浴び」とか「水浴び」と言われる行為。
暑いからやっているわけではなくて、体表面についている寄生虫を落としたり、羽についた汚れを落としたりするんだって。
砂まみれになるとかえって汚れそうな気もするけど。

鳥の羽は基本的には水をはじく構造になっていて、それは、羽毛表面に脂粉(しふん)というのがついているのだ。
これは尾脂腺から出る脂が粉状になって分布したもの。
固形油脂なので当然古くなると酸化してべとべとしてくるので、それは落とさないといけないのだ。
それが汚れをくっつけるので、まとめて落とす、ということだよね。
畳の掃除にお茶っ葉を膜のと同じような感じ。

スズメの場合は砂浴びも水浴びもするんだけど、もともと水をはじくので砂をさらにくっつけて重量を増して落とすこともできるわけ。
多くの鳥は水浴びをするので、分泌されている脂の質の差もあるような気はするけど。
人間も古い皮脂が残っているとよくないので、それを取り除くという意味では同じなのだ。
このとき、鳥の羽の構造の問題もあると思うんだよね。

ボクたちがいわゆる「羽」としてイメージするような形の羽は「正羽(せいう)」と呼ばれるもので、これは表面にある羽。
その下に「綿羽(めんう)」と呼ばれる不定形のふわふわの羽毛があるのだ。
そう、羽毛布団の中に入っているやつ!
この綿羽が高温動物としての鳥類にとっては重要で、空気で断熱することで保温効果をもたらしているのだ。
その恩恵にあずかるのが、羽毛布団やダウンジャケット。

おそらく、体表面の汚れを落とすだけならきっと砂浴びでも十分なんだけど、この中の綿羽について汚れまでとる、となると、水にくぐらないとダメなのだ。
スズメの場合は砂浴びも水浴びもするようだけど、多くの場合は砂浴びか水浴び課のどちらかなんだよね。
そうすると、おそらく汚れ方というのも影響してきそうなのだ。
生息環境に水のあるなしは当然大きいけど、飛んで移動できるわけで、それが決定的というわけでもないはずなのだ。

で、よくカラスの行水なんてたとえがあるけど、鳥たちからしてみれば、水浴びは汚れを落とすためのもので、がっつり羽毛に水がしみこんでしまってもらっては困るんだよね。
実際に羽毛布団やダウンジャケットを水で洗濯するとくぁくの二めちゃくちゃ時間がかかるし。
なので、表面の汚れだけをさっと水で払いたい、ということなんだろうね。
なので、カラスは何も悪くなくて、瞬間的にしか水の中に入らないのが当然なのだ。

2023/04/22

暑くなくても熱さに注意

春はそんなもののような気もするけど、気温が乱高下しているのだ。
寒いと感じる日もあれば、暑い日もある。
実際、すでに何度か東京は夏日になっているんだよね。
で、すでに熱中症アラートも出ているんだよね。
その日その日の気温もあるんだけど、寒暖差が激しいと発生しやすいんだって。

というのも、もともと熱中症というのは体温が上がりすぎて体に不具合が出る状態なんだけど、その原因は端的に言えば二つ。
もともと人間に備わっている体温調節機能を超えるほどの暑さなのでどうやってもダメ、というのが一つ。
これは猛暑日とかだよね。
気温がそもそも体温を越えていれば日陰で休むくらいでは足りなくて、冷房に頼るしかないのだ・・・。
もう一つは、本来ならキャパ内のはずなんだけど、体温調節機能が不調で発生する場合。
これは体調が悪かったり、水分や塩分が不足しがちだったすると起こるケースなんだけど、ここに寒暖差が激しい、というのも入るのだ。
というのも、体温調節機能はいきなりフルスロットルでマックスまでいけるわけではなく、エアコン同様に試運転がいるのだ。

暑いときの体温調節機能は、基本はどうやって熱を発散するか、だよね。
普通に体表面から熱輻射として熱を発散しているけど、これは熱勾配があるから出て行くわけで、体温と周囲の温度差が小さければこれだけではあまり熱は発散できないのだ。
そうなると出てくるのが汗。
汗は、蒸発するときに気化熱を奪っていってくれるので、それで冷却するんだよね。
なので、水分をぐんぐん吸ってどんどん蒸発させていく対応の布地は厚いときに来ていてひんやりと気持ちよいのだ。
それがユニクロのエアリズムとかそういう肌着。
でも、原理的に蒸発しないと熱を奪わないので、そもそも湿度が高いと冷却効果ががくんと落ちるわけだよね。
蒸し暑いと汗がだらだら出るけどあんまり涼しく感じない。
なので、扇風機やうちwで風を送ってあげると多少蒸発が促進されて少し涼しく感じるのだ。

これが熱中症のリスク要因にもなっていて、特に気をつけるのは、気温よりも湿度なんだよね。
気温が大して高くなくても、湿度が高い場合は気をつけないといけないんだ。
これは梅雨の時期によくある話で、雨が降っていて気温はそこまで高くないと、冷房つけないでも大丈夫かな、と油断していると危ないのだ。
そうすると、春先の寒暖差の大きな時期、気温はそこまで高くないけどとにかく高湿な時期が危ないということ。
ということは、4月や6月が要注意ということだね。

熱中症には症状により3つのグレードが設定されているんだけど、一番軽度なI度はめまいがしたり気持ち悪くなったりするくらいの症状。
この段階で日陰に入ったり、水分補給をしたりすればよいのだけど、それをせずにさらに症状が悪化していくと中等症のII度になるのだ。
こうなると、強い疲労感、頭痛、吐き気、倦怠感、脱力感、大量発汗、頻脈、と外から見てもヤバいとわかるような状況。
これは休むだけでは回復は難しくて、基本は病院に運んで輸液の注入など治療が必要になるよ。
これを越えて重度のIII度になってしまうと、深部体温が上昇し、意識混濁、譫妄状態に陥るのだ。
このとき、体の中では肝機能や腎機能にも障害が出始めてしまうんだ。
こうなってしまうと救急車で緊急搬送が必要で、脳や腎臓に後遺症が残ることもあるのだ。
これは独居老人がいつの間にか熱中症で倒れていた場合とか、自動車の中に閉じ込められてしまった子どもがぐったりして意識を失う場合みたいなやつ。
こうなる前に気をつけることはできるので、まずはよくリスクを知って、対策をしておくことが大事なのだ。

2023/04/15

黄色い風

 黄砂の季節になったのだ。
天気予報ではかなり詳しく到達予測をしているよね。
ま、来るのは防げないから、対策をするしかないのだけど。
それにしても、はるか中国の内陸部から砂が飛んでくるというのはすごいことだよね。
それがひどい場合には大気もけぶるんだから。

黄砂は、東アジア中央部、主に中国の砂漠地域の砂が風に巻き上げられ、偏西風ジェット気流に乗って東に飛来していくもの。
重い砂粒から落ちていくこともあり、日本海を越えて日本列島まで来るのはかなり小さな砂粒。
花粉の数分の1の大きさだそうなので、目の粗いマスクでは防げないのだ。
砂粒自体はただの砂なんだけど、これが飛んでくる間に大気中の汚染物質などを付着させてくるらしく、健康被害にもつながると言われているのだ。
空気がきれいな頃ならそういう弊害はなかったんだろうけど、今は中国も工業化が進んでいるからなぁ・・・。

年中飛んできてもよさそうなものだけど、偏西風の強さには季節変動があって、半年間隔で強弱があるしいのだ。
夏至と冬至の頃がピークですっごい強風。
逆に言うと、春分や秋分のあたりは弱くなっているんだよね。
どうも、この弱い時期に砂が巻き上げられ、はるか上空の偏西風に乗ってしまうようだよ。
タクラマカン砂漠なんかは高い山々に囲まれた盆地的な砂漠で、そこに秒速10m以上の風が吹くと、数km上空まで砂が巻き上げられるんだって。
それが偏西風に乗るのだ。
偏西風が強すぎるとうまく偏西風に砂が乗らないなんてことがあるんだろうね。
そうすると、秋にも飛んできそうだけど、秋くらいになると東アジア中央部はの内陸地域は相当冷え込んでいて、すでに積雪が始まっているらしく、砂が巻き上がりにくくなっ手いるんだって。
なので、風の条件と砂地の条件が合わさった春に多い、ということみたい。
春の風物詩なんだよね。

かつては、黄砂が来ると環境放射線が上がるというデータが出て、中国による核実験の影響ではないか、と見られていたのだ。
その影響はゼロではないのかもしれないけど、黄砂が環境放射線の数字を上げている主な原因になっているセシウム137を調べてみたところ、どうも核実験由来のものではなく、過去の原子力事故等で上空に舞い上がり、地上に降下したセシウムの残りだったようなのだ。
通常は水分とともに地中に吸収されていくのだけど、降水がほとんどない砂漠地方では表面にうっすらつもったままになっていて、それが風で巻き上げられる、ということみたい。

ここまではネガティブな話ばかりだけど、黄砂が飛来すること自体は悪いことでもないみたい。
例えば、日本海に落ちる砂もあるんだけど、それは海に貴重なミネラル分をもたらす存在であり、日本海における豊富なプランクトンの栄養素になっているみたい。
陸域では、今では有害な微粒子扱いだけど、人間を無視すれば、土壌にミネラル分をもたらす存在として意義があるみたい。
桜島の火山灰も人の生活だけで見ると邪魔なものだけど、周辺の生態系にとっては必ずしもデメリットばかりのものではないのだ。
来るのは拒めないので、そういう広い視点を持って、広く受け止めるしかないね。

2023/04/08

うっすぃいなぁ

 スーパーでセールになっていたので、ペットボトル入りのブラックコーヒーを買ったのだ。
徐々に熱くなってきて、冷たいコーヒーがほしいときもあるからね。
で、いざ飲んだときにびっくり。
「コーヒー飲料」と書いてある。
これって、薄いやつなんじゃなかったっけ・・・?
と思って、少し調べてみたよ。

コーヒーの食品表示については、「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」において分類が定められていて、

(1)コーヒー:内容量100g中にコーヒー生豆換算で5g以上のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含むもの
(2)コーヒー飲料:内容量100gにコーヒー生豆換算で2.5g以上5g未満のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含むもの
(3)コーヒー入り清涼飲料:内容量100g中にコーヒー生豆換算で1g以上2.5g未満のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含むもの
(4)コーヒー入り炭酸飲料:内容量100g中にコーヒー生豆換算で1g以上のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含むものに二酸化炭素を圧入したもの

となっているのだ。
つまり、「コーヒー」となるのか、「コーヒー飲料」となるのかは、コーヒー豆をどれだけ使っているかの違い。
「コーヒー飲料って薄いやつだよね」という認識はあながち間違っていないわけ。

ミルクなしのコーヒーであれば、まさにこれでスッキリするんだけど、ミルクが入ってくるとまた複雑に。
というのも、カフェオレのようにミルクの量が多くなると、今度は乳飲料になるものが出てくるのだ。
いわゆる「乳等省令」(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)と「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の方に該当するようになるのだ。
省令で言う「乳飲料」は、「生乳、牛乳、特別牛乳若しくは生水牛乳又はこれらを原料として製造した食品を主要原料とした飲料であって、第二項から第十二項まで及び第十四項から前項までに掲げるもの以外のもの」で、ここで除かれている各号列挙のものは、2項:生乳、3項:牛乳、4項:特別乳、5項:生山羊乳、6項:殺菌山羊乳、7項:生めん羊乳、8項:生水牛乳、9項:成分調整牛乳、10項:低脂肪乳、11項:無脂肪乳、12項:加工乳、14項:クリームだよ。
液状の乳でその他、みたいな定義だよね。
で、公正競争規約の方で、省令で定義する乳飲料のうち固形成分が3.0%以上の場合に「乳飲料」と表示することになっているのだ。
で、この基準が満たされるようになると、カフェオレは、コーヒー飲料やコーヒー入り清涼飲料から外れて乳飲料になるわけ。
カフェオレは語源的に「coffee into milk」でミルク主体だからそうなんだろうけど。

で、ペットボトルコーヒーにもどるのだ。
実は、ペットボトルのコーヒーは、薄いかどうかは別として、各社ともあっさり目の飲み口で作っているようなのだ。
これはまさに飲み方の違いで、缶コーヒーが休憩期間中に飲むシーンを想定しているのに対し、ペットボトルの方は、常にそばに置いておいて飲みたいときにちょっとずつ飲むシーンを想定しているからなのだ。
米国のスタバでは超巨大なサイズのグランデやヴェンティでコーヒーやラテを買っていく人たちがいるのだけど、このひとたちは、保温タンブラーに入れて半日くらいかけて飲むんだよね。
冷温の差はあるけど、まさにそういう飲み方なんだよね。
ま、コーヒー500mlは一気飲みしないよね。

で、そういう飲み方をするときって、がつんと重い、濃厚な飲み口ではなく、あっさりとした飲み口の方がいいのだ。
このペットボトルコーヒーの先駆けになったと言われているのはサントリーのクラフトボスなんだそうだけど、こちらは表示も「コーヒー」。
だけど、浅煎りで飲み口は軽いけど、芳醇な香り、というコンセプトで作ったそうなのだ。
そのために豆も厳選して、ブレンドして、ということらしい。
一方で、普通に深入りで薄めに淹れるアメリカン的なやつでもよいわけで、そういうのだと生豆換算のコーヒー量が少なくなるので、「コーヒー飲料」になるのだ。
でも、こういうのは味の好みであって、コーヒー量が多いことが即すばらしい、というものではないので、自分が好きなものを飲めばいいんだよね。

2023/04/01

江戸のメディアミックス

 今度のだめカンタービレが舞台化されるんだって。
マンガがアニメになり、実写ドラマ・映画になり、そして舞台へ。
人気コンテンツの王道の流れだよね。
でも、中には「歌舞伎」化されるものもあるんだよね。
ワンピースやナウシカなんかは歌舞伎になっているのだ!

でも、実は歌舞伎はむかしからいろんな流行り物を取り入れてきたんだよね。
そもそも「時代物」と言われる演目は、過去にあった有名な事件をもとにしたもので、幕府の規制があるので舞台を室町時代に移したりはするけど、話の流れを見ると、「あの事件か」とわかるような作り。
興行としてやっている以上は客が入らないといけないわけで、受けるなら何でも取り入れる、という姿勢だったんだよね。
今では伝統芸能になっているけど、そもそも江戸時代においては「現代芸能」なわけだし。
その根底のところは今でも受け継がれていて、伝統的な演目でも時事的なトピックを混ぜ込んだりするんだよね。

そうした流れの中で大きなものが、人形浄瑠璃の人気演目の歌舞伎化、というのがあるのだ。
人形浄瑠璃は、浄瑠璃(三味線を伴走として太夫が物語を歌うように語る演芸)に合わせて人形劇を行うもの。
今では文楽座のみが残っているので文楽とも呼ばれるよね。
徳島や淡路には地域の伝統芸能としての人形浄瑠璃が残ってはいるけど(これは蜂須賀公の庇護によるもの)。
で、人形浄瑠璃の演目で受けたものの一部が、実写化というか、人間の芝居に翻案されて、歌舞伎の演目になっているんだよね。
そういうのを丸本物というのだ(浄瑠璃の全場面を収めた台本を「丸本」と呼ぶことから)。
有名なのは、仮名手本忠臣蔵や菅原伝授手習鑑、義経千本桜など。
義太夫の語りに合わせてストーリーが進行していくのが特徴で、今で言う、ナレーション付のドラマなのだ。
音楽的、様式的演出に富むとか言われるけど、例えば、菅原伝授手習鑑の「車曳」」のような、牛車をぐるぐる回してから藤原時平が登場して場を収めるようなシーンは人形芝居がもとだからこそ。
義経千本桜では、吉野山(道行初音旅)のような所作事、いわゆる踊りを中心とした演出もそう。

逆に言うと、純粋に歌舞伎のために作られた演目、例えば、助六由縁江戸桜や暫みたいなやつは、決めポーズとかはかっこいいし、殺陣も見応えがあるんだけど、はっきり言ってストーリーは荒唐無稽で破綻しているんだよね・・・。
もともとは浄瑠璃というストーリーテリングがもとになっている丸本物との違いがまさにこれ。
もう純粋歌舞伎の方はエンタメに振り切っているのだ。
ある意味潔い(笑)

で、人形浄瑠璃の演目が歌舞伎にもなってまた人気になると、その名場面が浮世絵になったり、そのストーリーが黄表紙(絵付きの物語本)にもなったりするんだ。
つまり、今で言うと、画集が出たり、ノベライズされたり、ということ。
まさにメディアミックス!
伝統芸能とか言われると古くさいようにも思うけど、そのエンタメの展開はツールの差こそあれ今と変わらず、いや、むしろ、もっと貪欲なのだ。