2010/12/31

今年の汚れ、今年のうちに!

いよいよ大晦日♪
今年も1年が終わろうとしているのだ。
で、その前に欠かせないのが大掃除(>o<)
すっきりした気分で1年を迎えるための年中行事だよね。
最近では掃除用具も発達したし、ハウスクリーニングサービスなんかもあるからあんまり家族総出で大掃除、というのは聞かないけど、ちょっと前までは年末の風物詩だったよね。

むかしの家だと、アニメのサザエさんに出てくるように、障子の張り替えや畳干し、納戸・押入れの整理などなどやることがいっぱいあったんだよね。
ボクが子どものころでも、あまり普段は掃除をしない窓ガラスの清掃、窓のサッシの掃除、タンスや冷蔵庫なんかをどかして掃除したり、とけっこう大がかりだったんだよね。
年末と言ってもそんなに年末ではなくて、12月の28日とか29日が多かった気がするのだ。
館長の御用納めと同じくらいのタイミング。
お正月までの間多少は休んでおきたい、っていうのがあるのかな?

大掃除をする意義としては、1年に1回くらいは大がかりに、徹底的に掃除をしてきれいにしようっていうことがあるんだけど、それだけだと年末である意味はないんだよね。
「数え年」を使っている時代だと、お正月を迎えると一つ年をとるわけで、おめでたいときには1年で一番清潔でいよう、というよいきっかけがあったのだ。
まさに1年分の汚れを精算して、新たな真っ白な心持ちで新年を迎えたいっていう気持ちだよね。

でも、実はこれははるかむかしからの習わしが影響しているのだ。
農耕民族である日本の民俗では、新年に歳神様を迎え、五穀豊穣を願うのだ。
で、その歳神様を迎えるときの依代が門松だったり、注連飾りだったり、鏡餅だったりするわけだよね。
当然、神様を迎えるに当たって掃き清めなくてはいけないわけで、それが年末恒例の大掃除につながるというわけ。
かつては「煤払い」と呼ばれていた年中行事で、今でも神社仏閣では年に一度煤払いをしている姿が報道されるよね。
行灯やろうそくを灯りに使うとどうしてもすすが出るので、1年分たまったすすをまとめて落としてきれいにしようってわけ。

さすがに長屋だとそんなに掃除するスペースもないのであれだけど、商家の大店なんかだと、小僧や手代が総出で掃除をするわけ。
でも、年末年始には里帰りもさせないといけないので、今よりだいぶ早く、12月13日ごろに行われていたんだって。
歩いて帰らないといけないから、それくらいのゆったりとした時間の流れでものを考えないとダメなんだろうね。
で、掃除の後は、滋養強壮と長寿を願って鯨汁が振る舞われたんだとか。
今ではすっかり廃れてしまっている風習なのだ。
古い瓦版(=新聞)や古い浮世絵(=写真?)を見つけて思い出にふけって時間が経ってしまう、なんてのは共通だったらしいけど(笑)

この大掃除をさぼってこたつや火鉢で温まっている悪い子どもを戒めるのが秋田のなまはげや能登のあまめはぎ。
長く火に当たっていると低温やけどで皮膚の一部が固くなって「火だこ」というのができるんだけど、それは年末の大掃除やお正月の準備をさぼっている証拠と見なされたので、その「火だこ」のある怠け者を懲らしめるものとして機能していたのだ。
出てくる次期は年末年始だけではないみたいだけど、これもある意味「歳神様」みたいなもので、きちんと迎える人には福をもたらし、そうでない人は懲らしめる、というきわめて教育的・道徳的な存在なのだ。
というわけで、大掃除をさぼると怖いなまはげが出てくるので、さぼらないで働かないとね!

2010/12/25

月が欠けて月食よ!

今週21日の火曜日は日本では全国的に皆既月食が観測できる好機会だったのだ。
残念ながら関東はあいにくの天気であまりよく見られなかったけど(ToT)
前回の皆既月食は2008年の8月で、次は来年の6月のようなのだ。
その間には部分月食もあるし、意外とよくあるんだね。

月食は、月が地球の影に入ることで月に太陽の光が当たらなくなることで生じる現象。
つまり、太陽と月と地球が「太陽-地球-月」と一直線に並ぶときに起こるのだ。
でもでも、これって理科の授業の時に習った満月の時の並び方と一緒だよね?
約1ヵ月に一度現れる「満月」は地球を中心にして太陽と月が逆側にあるから月の見えている面が全面に太陽の光を反射して光っているんだけど、逆に言うと、普段は「太陽-地球-月」という順番に並んでも月に太陽の光が届いているというわけなのだ!

これは地球が太陽のまわりを回る公転面と、月が地球のまわりを回る公転面がずれているからで、二つの公転面は同一平面上ではなく、ななめに交わっているのだ(約5度の傾き)。
なので、実際には「太陽-地球-月」という順番に並んでいても、月は地球の真裏にあるわけではなく、地球の真裏からは少しずれた位置にあるため、大きな太陽から出ている光を受けることができるのだ。
むしろ、地球の真裏にたまたま月が来ると、そのときが月食になるというわけ。
すなわち、月食の時は必ず満月なのだ。

天球上で考えると、太陽の見かけ上の通り道の「黄道」と月の見かけ上の通り道の「白道」が交わる2つの点に月と太陽が来ると日食又は月食が起こることになるよ。
同一の点に太陽と月の両方が来ると太陽が月の影で隠れるので日食になって(このときの並び順は「地球-月-太陽」)、それぞれが別の点に来ると月が地球の影に隠れて月食になるのだ。
本当は違うけど、やっぱり地球を中心に太陽と月がどう回っているかを考えた方がわかりやすいのだ(笑)

で、地球の影に月が入り込むのが月食なんだけど、これにもいろいろと種類があるのだ。
太陽は地球に比べてはるかに大きいので、地球の影は中心部の光がほとんど入らない本影と一部の光が入らない半影に分かれるのだ。
ちょうど目玉の形に同心円になっているんだけど、半影のところには太陽の辺縁部から出た光が水平線・地平線を回り込んで地球の裏側にも少し届いてしまうためにできるんだよ。
※絵の解説はこちらの国立天文台のページを参照。
一般に太陽の光は平行と見なすけど、実際には斜めに出ているので、天文学的な大きな視点で捉えるとそういうことが起きているのだ。

半影に月が入る状態を半影食と呼んでいて、この場合は月が少し暗くなるだけ。
素人にはよくわからないみたい(笑)
本影に入るのが月食で、月の一部分だけが本影の中にはいるのが部分月食、全部が入るのが皆既月食なのだ。
月が移動していく中で本影にさしかかると一部が影に隠れて見えなくなるので、部分月食でも皆既月食でも月の動きとともに満ち欠けが変化していくんだよね。
部分月食の時の明るく見えている部分は実は半影の中にいるので、普通の月より暗いんだねぇ。
はじめて知ったよ。
全体が暗いから目立ってかえって明るく感じるけど。

で、皆既月食になると完全に月の光が見えないかというと実はそうでもないのだ。
何もなければ太陽の光は届かないんだけど、地球表層を覆っている大気によって太陽光の一部が屈折されるので、ほんの少しだけ光が届いているのだ!
青い光(波長の短い光)は空気の分子に散乱されやすいのでほとんどとどかないんだけど(青い光が散乱されるから空は青く見えるのだ。)、赤い光(波長の長い光)は屈折されて一部が届くんだ。
それで、皆既月食の時には灰色~赤~オレンジといった色に見えるのだ。
全体がうすらぼんやり光っているイメージだよ。
この色も大気の状態によって決まっていなくて、見るときによって違うんだって。
特に火山の噴火があって火山灰が成層圏まで巻き上げられると、赤い光も散乱させられてしまってほとんど光が届かなくなり、暗い(?)皆既月食になるんだそうだよ。
今回もアイスランドの噴火があったけど、影響はそこまでではないだろう、と予想されているのだ(フィリピンのピナツボ火山の噴火の後は相当暗かったみたい。)。

というわけで、一度学校で習ったような気もするけど、月食についていろいろと調べてみたのだ。
月食はたまにしかないから、こうやって勉強するよい機会になるね♪
ちなみに、アポロ計画以来の最大の月探査計画と言われた日本の月周回衛星「かぐや」は、皆既月食のときに逆に月の側から太陽を観測したことがあるのだ!
ちょうど日食と同じように、太陽が地球の影で隠れて、きれいなダイヤモンドリングも撮影できたんだよ。
これからの宇宙時代にはこういう日食・月食の楽しみ方も出てくるのかも?

2010/12/18

渋く決めるぜ

いよいよ冬に突入して、ボクの好きな柿の季節も終わろうとしているねぇ(>_<)
果物の中では断然柿が好きなので、残念だよ。
でもでも、その一方で、この時期の楽しみは干し柿。
日本伝統のドライフルーツだけど、ボクはこの干し柿も好きなのだ。

柿はかなり早い時代の弥生時代には梅や桃、杏などとともに大陸から日本に渡来して、以来栽培が始められているようなのだ。
実を食べるだけじゃなく、木質が固いことから柿の木は家具などに使われるし、あの渋みのもとを抽出した柿渋は防腐剤や防水剤として利用されてきたのだ。
まさに日本の民俗に密着した植物なのだ。

柿は果物の中でも糖度が特に高いんだけど、これは貴重な甘味だったのだ。
サトウキビやテンサイからとれる砂糖は超希少品・高級品で、一般的には発芽玄米や麦芽から作られる水飴が主要な甘味料だったんだよね。
それも主要成分は麦芽糖なのでそんなに甘くないのだ。
それ以前、平安時代なんかはツタなんかの少し甘い樹液を煮詰めて作る「あまづら」くらいしか甘味料がないので、柿の甘さは格別!
甘味を求める日本人にとってあこがれの存在だったのだ。
(サツマイモも甘いけど、これは江戸時代中期、八代将軍吉宗公が栽培を奨励して広がったのでだいぶ遅いのだ。)
で、現在も和菓子の甘さは干し柿の甘さが基本になっているとも言われているよ。

柿にはご存じのとおり甘柿と渋柿があるんだけど、甘柿は突然変異でできたもので、たまたま渋みがなくてそのままでも生食できるようになったもの。
これ幸いと品種改良を重ねて今ではいろんな栽培種(富有柿や次郎柿など)ができているんだよね。
一方、渋柿でも、なんとか渋を抜いて食べてきた歴史があって、むしろ渋柿から渋を抜いたものの方が好き、なんて趣向もあるのだ。
干し柿にするのは一般に渋柿だよ。
ま、渋を抜くために干しているので当たり前なんだけど・・・。

渋柿の渋み成分はタンニン。
タンニンには水に溶ける可溶性タンニンと水に溶けない不溶性タンニンがあって、渋柿には可溶性タンニンが多く含まれるので渋く感じるのだ。
甘柿の場合はほとんどが不溶性タンニンになっているので渋みを感じないわけ。
で、渋柿でも、可溶性タンニンを不溶性タンニンに変えられれば甘く食べられるのだ。
そのための「渋抜き」の工夫が連綿と考案されてきたんだ。

その最たるものが干し柿で、乾燥させることで水分量を減らし、果実中に含まれるタンニンを凝集させることで不溶性にするのだ。
渋柿に含まれるタンニンはもともとポリフェノールの一種がいくつも結合してできている縮合型タンニンなんだけど、結合している数が少ないと水に溶けるのだ。
逆に、結合している数が増え、分子量が増えると水に溶けなくなって、同時に渋みを感じなくなるわけ。
水分量を減らすことでタンニンの分子が近づき、縮合が進むということだよ。
さらに、干し柿の場合は乾燥させることで保存食にもなっていて、流通にも便利になるんだよね。
これで日本の甘味の代表選手が干し柿になったのだ。

渋抜きには他にもいくつか方法があって、一番簡単なのはそのまま放っておいてとろとろになるまで完熟させること(リンゴと一緒に密閉して、リンゴから放出されるエチレンガスで熟成を進めるという方法もあるよ。)。
まだ固い、しゃりしゃりした状態で食べたいときは、別に渋抜きする必要があるのだ。
有名なのはアルコール(焼酎)につけるもの(樽柿)で、エタノールが入ることで水素結合が弱まるためにタンニンが水に溶けづらくなり、縮合が進むんだ。
同じ原理でアルコールを振りかけて密封しておいておく、という方法もあるよ。
それからお湯につける、米ぬかにつけるなんて方法もあるのだ。
工業的には、二酸化炭素の超臨界流体(高温・高圧下で液体時対の中間のような性質を示す状態)に通して二酸化炭素中にタンニンを抽出する、という方法もあるのだ。
これだと大量の柿を一気に渋抜きできるのだ。

干し柿は乾燥が進むと黒く、固くなり、表面には糖分が析出してきて白い粉が吹いてくるよね。
柔らかいうちならそのまま食べられるけど、固くなってくると刻んで料理に使ったりするのだ。
時代が下ると干し柿の製法も進み、大正時代に福島県で考案されたのがあんぽ柿。
硫黄で燻蒸してから干すことで、半生で柔らかく、ジューシーになるのだ。
これは海外で柔らかい干しブドウを作るときに硫黄燻蒸することにヒントを得たそうだけど、干しているうちに硫黄は飛んでいくので、食べる段階では硫黄臭はないのだ。
戦後になると、同じような方法で長野県名産の大きな柿を使った市田柿も登場するのだ。

ちなみに、干し柿は自分でも簡単に作れるよ。
渋柿の皮をむいて、少し表面を乾燥させてからへたのところをひもでしばり、風通しのよいところにつるしておけばよいだけ。
ただし、直射日光が当たるとかぴかぴになるので、陰干しで徐々に乾燥させていくのがみそ。
それと、湿度が高いとカビが生えたり腐敗したりするので、冬のような乾燥した時期に作るのがよいのだ。
むかしは秋に収穫した渋柿を冬に干し柿にしたわけだよね。

最後に、何かと嫌われる柿の渋だけど、むかしの人はわざわざ柿渋を抽出していろいろな用途に使っていたのだ。
防腐作用があるので即身仏に塗布したり、防水作用もあるので漁網や釣り糸に塗ったり、独特の茶に染める染料として柿渋染めに使ったりなどなど。
乾燥すると固く頑丈にもなるので、うちわや傘にも塗っていたのだ。
さらに、タンパク質凝固作用があるので、清酒を造るときに入れて余分なタンパク質を除去するのにも使われているんだって(今ではこの用途が一番多いらしいよ。)。

柿渋をとる場合は、まだ未成熟な青い果実を粉砕し、二昼夜ほど発酵・熟成させてから圧搾するんだとか。
そのまま圧搾した絞り汁が「生渋」で、その上澄みをとったのが「一番渋」。
一番渋をとった残りに水を加えてさらに発酵させ、そこから圧搾してとるのが「二番渋」と呼ばれるらしいよ。
これを数年保存して、熟成させてから使うんだって。
途中で発酵させるのでかなりの悪臭だとか。
こっちも簡単に作れそうだけど、干し柿と違ってあまり作りたくないね(笑)

2010/12/11

・・・は青かった!

先日、コリラックマさんがお風呂場でつまずいて、ひざに立派な青あざができてしまったのだ(ToT)
見ているだけで痛そう!
子どもの頃はそれこそ擦り傷でかさぶたができたり、転んで青あざができたりすることが多かったよね。
大人になると頻度は減るけど、青あざだけは時々できてしまうのだ(>_<)
で、ふと気になったので、この「あざ」について少し調べてみたよ。

一般に「あざ」は皮膚に現れる変色のことで、肌の色と違う色の部分が局所的に現れるものなのだ。
これは生まれつきのもの(先天性のもの)もあれば、けがをしたり病気をしたりしてできるもの(後天的なもの)もあるんだよね。
青あざは外傷によってできる後天的なものの代表例で、誰しも一度ならずお世話(?)になるもの。
大きな外傷だけ消えないあざになることもあるんだよね・・・。
先天的なもので有名なのはアジア人によく見られる蒙古斑。
幼児の間にだけ見られるものである程度大きくなると消えていくんだよね。
人によっては消えないようなあざが生まれつきある人もいるんだって。

青あざは打ち身でできることが多いけど、その原因は内出血。
皮膚の深いところで出血すると、まずはそのぶつけたあたりが赤くなるのだ。
その後、出血した血が固まって黒くなるんだけど、これが皮膚を通して青く見えるんだって。
この血液の赤とか黒の色は血中のヘモグロビンの色なんだけど、さらに時間が経過してヘモグロビンが分解されていくとまた色が変わってくるのだ。
ヘモグロビンの中の色素のヘムから鉄イオンがはずれてビリベルジンになると緑色になるのだ。
そうすると青あざもちょっと色が緑がかってくるわけ。
さらに、ビリベルジンがビリルビンになると、黄色くなるんだけど、これがあざの治りかけの時に黄色い色だよ。
ちなみに、ヘムからできるビリルビンは黄色の色素で、尿の色の原因でもあるのだ!
見ていて痛々しいけど、やがて自然に治るからまだ安心かな。

通常は強い打ち身で内出血が起きたりするんだけど、白血病になったりすると、血小板が少なくなって血が固まりにくくなるので、ちょっとした刺激で内出血しやすくなるのだ。
それで鼻血がよく出たり、青あざが知らないうちにできていたりという症状が出てくるんだ。
特に覚えがなく、痛みもなかったのに青あざができるときは注意が必要かもね。

青あざは時間の経過とともに消えていくことが多いんだけど、なかなか消えないあざもあるのだ。
それらの多くはメラニン色素が皮下に沈着しちゃっているんだよね。
メラニン色素は肌の色や日焼けの色の原因として有名だけど、局所的に量が増えて、かつ、それが安定的に沈着してしまうとあざになるのだ。
皮膚の浅いところにたまると黒ずんで見え、深いところだと青くなるわけ。
打ち身による青あざでなく、皮膚に青いあざがある場合は、このメラニン色素が皮膚の深いところで沈着している可能性が高くて、レーザー治療で色素を焼くなどしないと消すことはできないみたい。

面的な広がりを持って色素が沈着するとあざと呼ばれるんだけど、これがもう少し範囲が狭いと肌のくすみ、しみ、そばかすと呼ばれるのだ。
皮膚の比較的浅いところにたまるので茶色から黒に見えるんだよね。
くすみやしみは老化とともに皮膚に色素が沈着してしまう現象で、これはもう普段から肌のお手入れをしっかりとして、新陳代謝を高め、可能な限り色素が沈着しないように気をつけるしかないのだ。
できてしまったらコンシーラーなどの化粧品で隠すことになるわけ。
ちなみに、色素の沈着は物理的な刺激によっても起こるので、傷跡のまわりが少し黒ずんだりするのも同じことなのだ。

思春期に悩ましいそばかすはスポット的に色素が沈着する現象で、局所的にメラニン色素を作るメラノサイトという細胞が活性化することによって起こると考えられているんだ。
白人に特に多いんだけど(黄色人種や黒人はもともとメラノサイトがある程度活性化しているのでひどくないと目立たないというのもあると思うけど。)、これは優性遺伝するものみたい。
ようは紫外線による刺激に弱い、ということのようで、光過敏症などを併発していることもあるんだけど。
できやすい体質の人は紫外線を避けるしかないけど、できてしまったものはレーザー治療もあるみたい。
ちなみに、しみやそばかすの原因も若い頃の過度な日焼けだったり、睡眠不足などのストレスだったりする(ストレスがたまると体内に活性酸素が増えて、それが悪さをするのだ。)けど、紫外線には気をつけた方がよさそうなのだ。
紫外線に当たらないとビタミンDが活性化しなくてカルシウム代謝が悪くなったりするので当たらないですませるわけにはいかないんだけど。

2010/12/04

New Islandからの贈り物

この時期はまだ銀杏並木の下でギンナン臭がするねぇ(>_<)
落ち葉の下に最後に残されたギンナンが隠れていたりするから、踏まないように気をつけないといけないのだ!
そんなギンナンのにおいをかいでいると思い出すのがくさや。
日本でもっともくさい食べ物のひとつだよね。

一般には伊豆諸島、中でも新島の名産と言われているのだ。
八丈島のものもメジャーだけど、新島から製法が伝わった、と言われているようなので、やはり新島が元祖みたい。
くさやは干物の一種で、「くさや液」と呼ばれる独特な調味液に漬けてから補干されたもの。
そのにおいから発酵食品のように思われがちだけど、発酵しているのはその調味液であって、くさや本体ではないのだ。
くさや干物なので、乾燥させることで水分含有量を少なくして雑菌の繁殖を抑制した保存食。
むしろ菌は繁殖していないんだよ。

そのくさや液というのは、長年にわたってくさやに使う魚が漬けられてきた塩水で、中には漬けた魚からいろいろな成分が溶け出し、それが発酵しているのだ。
独特の茶褐色も、あの強烈なにおいも発酵と熟成によるもの。
アミノ酸や核酸が多く含有されているので、うまみも凝縮されているんだけど、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの有機酸やそのエステル類が「臭さ」のもとになっているんだ。
そう言えば、ギンナンの臭さも酪酸などの有機酸由来だから、確かににおいが似ているはずなのだ。
もともと魚の成分が溶け出した塩水なので、ヴェトナムのニョクマム、タイのナンプラーなどの魚醤に近い風味なんだけど、もっと強烈みたい。

これはくさや製造業者が代々受け継いでいるもので、塩分濃度や漬けてきたさなかの種類などで多様性があるんだって。
まさに焼き鳥のたれと同じだけど、においがあるから大変だよね(笑)
ぬか床のように一般家庭でも受け継がれているところがあるんだとか。
それって、自宅でくさやを作っているってことだよね。
すごい世界なのだ!

発祥は詳細にはよくわからないみたいだけど、もともとは近海でとれる魚を保存食にするために塩水に漬けてから干物にしていたんだけど、塩が貴重品だったために、同じ塩水を何回も使い回したらしいのだ。
その結果、塩水には魚の成分がダシのように溶け出し、それが発酵し、熟成することでくさや液の原型ができたというわけ。
すでに江戸時代にはくさやが名物になっていたようだから、相当歴史があるんだね。
ちなみに、新島は米がほとんどとれないので、代わりに塩で年貢を納めていたんだけど、むかしは塩田法で手間ひまをかけて塩を精製しなければいけなかったので、特産品とは言え非常に貴重なものだったそうだよ。

実は、くさや液さえあればくさやを作るのは意外と簡単。
ムロアジやトビウオ、シイラなどの魚を開き、内臓や血合いを除去してていねいに洗い、十分に水気を切ってからくさや液につけるのだ。
これは一昼夜ほど漬け込んでしっかりをくさや液を浸透させるみたい。
漬け込んだ後はまたていねいに洗ってから天日干し。
最近は乾燥機なんかも使うようだけど、干物と同じで天日干しの方がおいしくなるらしいのだ。
ただし、あまり乾燥させすぎると固くなりすぎるので注意が必要。
実際に自分で釣った魚を干物にする人もいるから、何代かにわたって漬け込む塩水を使い続ければくさや液ができあがるかも(笑)

くさやはそのままでもくさいので真空パックや瓶詰めで売られているけど、これを焼くとさらににおいが拡散するのだ・・・。
最近では普通に魚を焼くのもはばかられるくらいだから、くさやを焼こうものなら大変だよね。
時と場所を選ばないと!
でも、好きな人は好きなんだよねぇ。
ちなみに、くささを数値化してみると、世界一くさいと言われる発酵缶詰のシュールストレミング(ニシンの塩漬けを缶の中で発酵させたもの)や韓国のエイを発酵させたホンオフェ(強烈なアンモニア臭)に比べるとまだまだちょろいものみたい。
だったら自宅で作って、自宅でも食べられるかな?
ボクはあえて挑戦しないけど。

2010/11/27

生ハムは「生」だけど豚肉を生食してよいのか

最近はどこに行ってもメニューに生ハムを見かけるよね。
そんなに流通していないから高級品という扱いだったと思うんだけど、それこそサイゼリヤにもおいてあるくらいなのだ!
一気に日本でも広まったよね。
それでも、スペインのハモン・セラーノやイタリアのプロシュートは今でも高級品として流通しているから、リーズナブルな生ハムが生産されるようになったということかな?
いずれにせよ、庶民でも生ハムを食する機会が増えたわけだけど、ちょっと気になったのは、豚肉って生で食べて大丈夫だったっけってこと。

一般には、豚には寄生虫がいることがあるので、生食せずにしっかり火を通してから食べないとダメ、と言われるよね。
これは有鉤条虫のことで、眼球や神経にも規制する恐ろしい寄生虫・・・。
重篤な症状につながることもあるので忌避されてきたのだ。
最近ではそういう寄生虫は減っているんだけど、寄生虫だけでなく、ヘルペスやトキソプラズマ、E型肝炎などの病原微生物がいる可能性があるので、加熱してから食べるべきと言われているよ。
というわけで、原則としてやっぱり豚肉は生で食べない方がよいみたい。

ハムやソーセージ、ベーコンなどの豚肉の加工食品は、多くの場合燻製されているんだよね。
その燻蒸効果で内部のタンパク質が変性するので、加熱したのと同じような効果が出てくるわけ。
ハムの場合はしっかり塩漬けしてから燻製するわけだけど、塩と燻製の二重の保存技術を使っているのだ!
ちなみに、よく口にするプレスハムはくず肉を集めて大豆由来のタンパク質などの接着剤でくっつけ、圧力をかけて円柱や直方体に成形してから蒸したりゆでたりして加熱しているのだ(ロースハムはもう少し高級な肉を使っているけど、肉を集めて成形して作るのは同じだよ。)。
いずれにしても、燻蒸や加熱をしているのだ。
ところが、生ハムの場合は、燻蒸せず、そのまま冷暗所で乾燥させながら熟成させるだけなんだよね。

生ハムの場合は普通のハムよりかなりきつめに塩をしているので、その保存効果は高まるんだけど、さらに乾燥させることで水分を飛ばすので、その保存効果が高まるのだ。
細菌(バクテリア)なんかは高い塩分濃度と乾燥で増殖が抑えられるので十分に効果があるんだよね。
ウイルスの場合は、自分で増えるものではなく、感染した宿主のメカニズムを使って増えるので増殖を抑えるとかそういうことでは防げないのだ。
ただし、ウイルスは乾燥状態や高い塩分濃度の環境下ではそんなに長い間活性を保てないので、生ハムのように長期間熟成させる場合にはウイルスも感染力を失っているようなのだ。
すべてのウイルスがそういうわけではないだろうけど、むかしから食べられてきて問題になっていないので、たぶん大丈夫なんだろうね(笑)

生ハムのみそはこの熟成というやつで、熟成させることでうまみが増え、凝縮するのだ。
熟成課程でうまみのもとであるアミノ酸や核酸が増え、さらに水分が抜けていくことでそれが濃縮されるのだ!
この肉の熟成は生肉でも同じで、よく牛肉なんかでは2~3週間冷蔵庫で熟成されてから出荷されるというよね。
死んだ直後は死後硬直が起こっていて肉が硬いんだけど、その後に自家消化が始まると肉がやわらかくなってくるのだ。
これは細胞の中に残っている酵素が死んだ後も働き続けることから起こる現象で、タンパク質なんかは分解されてアミノ酸が出てくるというわけなのだ。
高分子のコラーゲンも分解されて分子量が小さくなることで回りの水分を吸って膨潤するのだ。
それらの反応の結果として肉がみずみずしく、やわらかくなるのだ。
ただし、死後直後に食べるとまだグリコーゲンが分解されずに残っているので、肉は硬いけど独特の甘みを楽しめるらしいよ。

生ハムの場合は、この熟成を長期間かけて行うのだ。
塩分と乾燥で細菌の増殖を抑えているので、腐らせることなく長期間熟成させることが可能になっているんだ。
それでも、この熟成は2~4度くらいの冷暗所で行うみたいだよ。
ずっと冷蔵庫に入れておくイメージなのだ。
さらに、中華ハムとしておなじみの中華火腿は、途中までは生ハムと作り方が一緒なんだけど、乾燥させる過程で表面にカビを生えさせるのだ。
そうすることでさらに熟成が進むと言われているんだ。
高級な鰹節の表面にカビを生えさせて熟成させるのと同じみたい。

こうして、生ハムの場合は塩と乾燥で腐敗を防ぎ、長期間熟成させることで豚肉のうまみを凝縮しつつ、生食できるようにしたすぐれた加工食品だったのだ。
最近では冷蔵保存技術が高まったので、燻製食品でも塩や燻蒸が弱めであんまり保存食品になっていないものも多いけど、生ハムの場合はそういうわけにはいかないので、しっかり作らないと食べられないのだ。
低価格なものもあるけど、それなりのお値段がするのもうなづけるね。
今後は、むかしの人が積み上げてきた保存技術に敬意を表しながら食べないとね。

2010/11/20

カプセルの中身はなんじゃらほい?

小惑星探査機「はやぶさ」が地球に持ち帰ったカプセルの中に入っていた微粒子が小惑星イトカワ由来のものらしいということが判明したのだ!
連日大さわぎだね。
「はやぶさ」はもともと工学実証機として、将来の宇宙探査に向けて様々な新技術を宇宙で試すのが主目的だったんだけど、人類初の偉業を成し遂げたのだ。
その長い旅の途中にはさまざまなトラブルもあって、満身創痍での基幹だったから感動している人も多いんだよね。
でも、科学としてはこれからも大きな山があるわけで、これからその微粒子の解析をどんどん進めていかなければならないのだ。

今回イトカワのものらしい微粒子がわかったのはサンプルコンテナと呼ばれるサンプル収納容器のA室。
B室というのもあって、2つに分かれているのだ。
当初の「はやぶさ」の計画では、イトカワにタッチダウンしたときにインパクターと呼ばれる金属の弾丸を地面に向けて発射し、その衝撃で舞い上がった岩石の粒やほこりをサンプラーホーンから吸い上げて集める計画だったんだよね。
でもでも、1回目の着地ではレーザー測距(レーザーの光が反射してくる時間で距離を測る技術)に不具合があって、緩降下してソフトランディングするはずが、どーんと大きな衝撃で衝突し、横倒しになってしまったと考えられているんだよね(映像はなくて電気信号のデータしかないので実際にどういう状況下は想像するしかないのだ・・・。)。
そのせいで化学スラスタが故障してしまってまた大変になるんだけど、なんとかその後回復し、2度目の着地はうまくいったのだ。
ここでもトラブルがあって、弾丸がうまく発射されなかったのだ(ToT)
で、最初に衝突したときにサンプルが入ったのがまだ開けていないB室。
2回目の軟着陸のときに舞い上がったちりやほこりを集めたのがA室。
なので、B室にはさらに大きな粒子が入っているのではないかと期待されていたんだけど、今回、ごくごく小さなA室の粒子(100分の1mmくらいの大きさ、髪の毛の太さの10分の1くらいかな?)を調べたところ、地球のものではないと考えられる、という結論に至ったのだ!

サンプルコンテナの中にはもともと地球のほこりなんかが混入(コンタミ)している可能性があったと考えられていたので、内部からとった微粒子が本当にイトカワ由来かどうかをずっと調べていたんだよね。
で、今回の結論に至った根拠として、いくつか説明されているのだ。
まずは微粒子の鉱物種とその組成で、これは走査型電子顕微鏡や蛍光X線分析などで調べたのだ。
カプセルの中にあった微粒子を顕微鏡で見てみると、地球上でも見られるかんらん石(緑色の半透明の石で、Mg2SiO4とFe2SiO4の混合物。)と輝石(ガラス光沢をもつケイ酸塩鉱物で、XY(Si,AL)2O6という化学組成で、XやYは鉄やマグネシウムが入るのだ。)が存在していたんだって。
でも、X線を照射して蛍光として出てくる特性X線を検出する蛍光X線分析をしてみると、地球上のかんらん石や輝石に比べると鉄/マグネシウム比率がはるかに大きいことがわかったんだって。
これは地上で見つかる隕石に近いもので、宇宙由来のものである可能性を示唆しているのだ。
さらに、「はやぶさ」がイトカワのまわりを飛びながら近赤外線やX線でイトカワ表面の物質を調べたデータとも整合しているので、イトカワ由来だろう、ということになったんだ。

でも、一番最初の発見は、その微粒子の中に硫化鉄の結晶が発見されたこと。
硫化鉄自体は地上にないこともないんだけど、非常に不安定な物質で、すぐに酸化されて硫黄と酸化鉄になってしまうので、地表面では見つからないものなのだ。
「はやぶさ」のカプセルは宇宙から真空状態で地上に帰還し、そのまま地上の物質が混入しないよう真空をたもったまま中身の解析をしていたので、硫化鉄が酸化されずにすんでいたんだ。
特殊な結晶構造をとっているそうなので、専門家の人は見た瞬間に「これだ」とわかったそうだよ。
これが見つかってから本格的に分析を進めて、中で見つかったほぼすべての粒子について上記のような特徴がわかったということなのだ。

ちなみに、当初はカプセル内に地球上の物質が混入している疑いがあったんだけど、けっきょくカプセルの中からは地球上で見つかるような岩石の破片などはなかったとか。
「はやぶさ」は鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられたので、火山灰が入っているんじゃないか、とも言われていたんだけど、それもなかったみたいだよ。
豪州の砂漠に落として回収したけど、そこの砂らしきものもなかったようで、まさに宇宙のちりだけを持ち帰ったことになるのだ。
ただし、微粒子をとる課程でカプセル内部をテフロン製の特殊なへらでこすっているんだけど、その作業で生じた金属片は混ざっているみたい。

いよいよこれでアポロの月の石やスターダストの彗星のしっぽのちり以来の宇宙物質の解析が始まるのだ。
イトカワは原始天体と言われていて、太陽系の形成初期の状態が保存されている「化石」と呼ばれているのだ。
ビッグバンが起こってから冷却していく課程で様々な元素や物質が生まれ、そういったものが集まって恒星系やそれが集まった銀河が形成されていくんだけど、イトカワの場合は、太陽系ができていく中で、ちりや岩石が集まってそのまま固まって太陽の周りを回り始めたのだ。
これは「はやぶさ」が解明したラブルパイル構造という中にたくさん隙間がある構造からもわかっているのだ。
一方、惑星のように質量が大きな天体だと、岩石など集まってきた結果、その重力で中心に圧力がかかり、高温になって溶け出してしまうのだ。
地球のマントルがそれで、集まった当初とは岩石の状態・構成が変わってしまうのだ!
なので、イトカワの岩石と地球の岩石を比べてみると、もともとはどういうものが集まって、それがどう変化して固体惑星になっていくのかなんていう太陽系の進化の過程がわかるかもしれないのだ。

さらに、宇宙はX線やガンマ線などの多くの放射線にさらされている環境なんだけど、こういう放射線が当たると結晶構造が壊れたり、いびつになったりするんだよね。
それを宇宙風化と呼んでいるんだけど、イトカワでとられたサンプルの決勝がどれだけ宇宙風化を受けているかを調べられると、太陽系の年齢(太陽系の基となるちりやほこりができてからどれくらいの時間が経っているか)がわかるかもしれないんだって。
なんだか壮大な話だねぇ。

今回の発表では、とりあえず地球のものではなく、イトカワのものらしい微粒子だった、ということがわかったんだけど、本当の解析はこれから。
播磨にある大型放射光施設のSPring-8など、最先端の分析機器・設備を使って国を挙げて解析を進めるのだ。
さらに、米国航空宇宙局(NASA)なんかの海外機関とも協力も進めるらしいよ。
まだ開いていないB室にはさらに大きな粒子があるかもしれないし、今後が楽しみなのだ♪
ちなみに、もっと大きな粒子が見つかると、さらに解析の幅が広がるみたいで、関係者はわくわくしているようだよ。

2010/11/13

かさかさから守れ!

秋から冬にかけて乾燥してくる時期に欠かせないのがリップクリーム。
最近は男性でも使っている人が多いよね。
ボクなんかもわりと乾燥しがち(?)で、すぐにくちびるが切れてしまうので、けっこう使う方なのだ。
いったん切れるとものを食べるたび、口を開けるたびに痛いからね(>o<)
で、今回はこの時期から手放せなくなるリップクリームについて少し調べてみたのだ。

定義は簡単で、くちびるに塗布する軟膏剤を指すのだ。
リップバームと呼ばれることもあるよね。
「軟膏」というのは体の表面に使う薬の外用薬の形態の一種で、湿布のように貼って使うのが硬膏、クリーム状・ゲル状のものを塗って使うのが軟膏なのだ。
リップクリームは塗って使うので軟膏だよ。
タイプも二つあって、スティック状になっていて口紅と同じように塗るタイプと、チューブや容器に入っていて指につけて塗るタイプがあるのだ。
一般に「バーム」と呼ばれるのは指で塗るタイプが多いみたい。

くちびるは皮膚とは違って粘膜が直接露出しているんだよね。
皮膚だと表面にケラチンなどからなる角質層に守られているので乾燥や刺激物に対して抵抗力があるんだけど、粘膜の場合は上皮細胞が直接表面に出てしまっているので乾燥などに弱いのだ。
胃腸などの消化管の端がめくれて外気に触れている状態なんだよね。
消化管の中は粘液なんかで保護されているけど、くちびるはそうはなっていなくて、普段は唾液で湿らせたりするしかできないのだ。
そこで、薄い膜を作って保護するのが主な役割だよ。
最近では、その保護作用だけでなくて、女性用では淡く色や香りをつけたり、グロスのようにつやを出させたりする美容目的にも使われるのだ。
そのほか、口内炎や単純疱疹(口唇ヘルペス)の治療目的で使われるものもあるよ。

リップクリームの主成分となる基剤でよく使われるのはミツロウやワセリン。
ミツロウは天然成分で、ミツバチの巣の主成分。
加熱圧搾したり、熱湯に溶かし出したりして不純物を取り除いて抽出するのだ。
そのままだと黄色っぽいんだけど、精製・漂白することで白くなるんだ。
むかしはろうそくにも使われていたんだけど、ミツロウでろうそくを作るとすすが出にくいということで教会でよく使われていたみたい。
一方のワセリンは化学的に石油から取り出すもので、長鎖の飽和炭化水素が複数種類混ざったもの。
飽和炭化水素は炭素数が少ないと気体だったり、液体(油)だったりするんだけど、炭素数が増えて分子量が大きくなると常温で固体の脂になるのだ。
それを精製したのがワセリンだよ。
精製度が高いものは純白で、劣化してくると徐々に参加されて淡黄色になってくるのだ。

この基剤にメントールや樟脳などの成分が含まれるのだ。
どちらもひんやりとした爽快感を与えるもので、軽い炎症は抑える作用もあるよ。
メントールはいわゆるハッカ臭がする成分で、お菓子から化粧品までいろんなものに使われているよね。
もともとはハッカ油から抽出された成分なのだ。
一方、樟脳(カンファー)は防虫剤のイメージが強いけど、香料としても使用されているのだ。
クスノキの製油成分から抽出されるもので、クスノキの葉や枝を蒸して、水蒸気分流して製油成分を集めるんだよね。
こちらもすーすーした感じの香りが特徴的だよ。
これらに香料なんかを加えたのが一般的な保湿目的のリップクリーム。

最近では、ビタミンが配合されていて抗酸化作用を持たせたり、サリチル酸やアスピリンを加えて抗炎症作用を強めたりしたものもあるのだ。
そういうのが口角炎や口内炎、ひどいくちびるのひび割れなんかに使われるんだよね。
多くのものは「医薬部外品」だけど「薬用」と書いてあるのだ。
特にひどい症状に治療目的で使う医薬品では、ステロイド剤が配合されているものもあるよ。
これはひどい口内炎などに使うみたい。
口内炎はウイルス性や細菌性のものは抗生物質とかで対応できるんだけど、ストレスや偏食などから起こると言われている原因不明のものは治療のしようがないので、ひどくなるとステロイド剤で対症療法をすることがあるのだ。

女性が化粧品的に使う場合には、グリセリンが配合されていてつや出しになったり、顔料が入っていて色をつけたり、香料が入っていて香りをつけたりするのだ。
このほか、酸化チタンや酸化亜鉛などの成分が配合されていて、サンスクリーン剤(日焼け止め)として機能するものもあるのだ。
くちぶりに日焼け止めというと変な感じだけど、メラニン色素が沈着するとくちびるの色が黒ずんでくるので、鮮やかな赤い色を保つためには意味があるみたい。
なかなか奥深いねぇ。

というわけで、単にリップクリームと言っても今ではいろんなものがあるのだ。
用途に応じて使い分けないと。
ボクの場合は単純に保湿だけだから一番シンプルなやつでよいのだけど。

2010/11/06

とられすぎるなよ!

うちの職場では年末調整に向けての作業が始まったのだ。
毎年のことなんだけど、これがよくわからないんだよね・・・。
いっつも「こんな感じかな?」と適当に書いて出してしまうんだけど、それで特に問題になったこともなく、わからないまま来てしまっているのが現状。
もともとわかりづらいんだけど、きちんと手続きしないと税金を払いすぎてしまうことになるので、注意が必要なのだ!

この年末調整は、毎月のお給料からあらかじめ所得税などの税金を差し引いている「源泉徴収」制度において、最終的に所得税の過不足を計算して調整をすることなのだ。
本来控除となって課税対象にならない部分についても源泉徴収では課税対象として計算されていたりするので、そのままでは税金を払いすぎていたことになるんだ。
そこで、控除額を差し引いて最終的に所得税として支払うべき金額を算定し、そのために事業所等が調整をしてくれるのだ。
なので、気をつけて作業をしないと、払わなくてもよい税金を払っているおそれがあるんだよ。

これに対立する概念が確定申告。
年が明けて2月になると確定申告の時期になるのだ。
年収が多い人や、複数の事業者から給与が出ている人、大きな臨時所得があった人なんかが対象で、自分で年間所得と控除分を計算し、これだけ課税対象の所得がありますよ、と申告する制度。
よく脱税では、考え方の違いとか言いながら修正申告するけど、あれはこの確定申告の手続きの話なのだ。
控除されると思っていたり、必要経費で落とせると思っていたらそうではなくて課税対象の収入に区分される、ということなんだよね。
もっと悪質なのに所得隠しなんてのもあるけど。
まだまだ使いづらいみたいだけど、電子申請も一部できるみたい。
確定申告をすると、税金として過分に払っていたお金が返ってくることがあるのだ。
これが還付金。
でも、きちんと自分で確定申告をしないともどってこないので、注意と勉強が必要なのだ!

年末調整で計算するので有名なのは配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除などなど。
具体に年末調整の作業をするのもこれらなのだ。
配偶者控除でよく言われるのは、パート収入を103万円以内に納めるという「103万の壁」の問題。
103万円を越える収入があると配偶者控除からはずれるんだよね。
なので、むかしのパートはたいてい年収100万程度に抑える例が多かったのだ。
ただし、民主党のマニフェストでは子ども手当の財源のために配偶者控除を廃止する方針がしめされているんだよね。
同じく子ども手当の財源のために縮小が検討されているのが扶養控除。
こちらは配偶者以外の扶養家族で、年間所得が規定額より少ないと適用されるんだよね(自己収入が多いとそもそも扶養家族と見なされないのだ。)。
このふたつは年末調整で扶養家族の所得証明が求められ、控除の対象になるかどうかがチェックされるのだ。
でも、最近問題になっているのは、この二つの控除がなくなると、子どもが少ない家庭ではかえって負担増になるという問題。
現金がないからいまいち現実感がないけど、税金が免除されていた額の方が子ども手当として給付される現金より大きくなるということだよ。

生命保険料控除は、生命保険の保険料等に支払った金額のうちの一部が控除対象になるというもので、年末調整の時期になると保険会社から保険料の支払い証明書が送られてくるのだ。
これを添付して申請すると、年末調整で所得税や住民税から控除してくれるんだ。
一方、多額の医療費を払った場合などの医療費控除は自分で確定申告をしないといけないのだ。
大きな手術などをした場合は対象になる可能性があるので、いろいろと調べてみると還付があるかも。
生命保険等に入っていて、そこからお金が給付されている場合は、その分を除いて計算する必要があるのだ。
けっこうわかりづらいので、まずは国税庁のHPで説明を見るのがよいかも。

もともと日本の源泉徴収は、戦費を効率よく集めるために1940年にナチス・ドイツの例にならって導入されたものだそうで、その徴税効率の高さから、多くの先進国で現在でも導入されている制度なのだ。
米国でも第二次大戦中に導入されたとか。
徴税する方は各個人ではなく、その個人に給与を支払っている事業者だけを相手にすればいいので楽だし、とりっぱぐれも少ないよね。
ただし、いつの間にか税金を払っているので、いまいち納税の実感が薄れるという問題もあるんだ。
確かに、消費税なんかと違って、給料から天引きで支払われていると、トータルでどれだけ納税したかって実感がつかめないよね(>_<)

とまあ、ざっと見た感じはこういうことなのだ(笑)
自分については課税対象の所得がどれだけあって、という計算なんだけど、源泉徴収ではそれすらも機械的な手続きで事業所でやってもらえるんだよね。
手続きは毎度悩むけど、確定申告に比べるとはるかに楽ではあるのだ。
でもでも、やっぱりどれだけ税金払っている、という納税意識は薄いから、一度は確定申告に挑戦してもよいのかもね。

2010/10/30

New Comer

そろそろ「新米」の季節♪
とれたて、というか、今年収穫された新米が食卓に上るのだ。
この時期になると新米フェアなんてのもあるよね。
ただでさえ秋で食欲がわいているのに、おいしいお米でますます太ってしまうかも・・・。

そんな「新米」だけど、これはその年に収穫されたお米を指すのだ。
もっと古いのが古米で、これは前の年に収穫されたもの。
さらにさかのぼると1年前になるごとに「古」が増えて、「古々米」、「古々々米」となっていくのだ。
むかしの学校給食では、国が備蓄していた古米や古々米を使うことが多かったんだよね。
米の流通が国がしっかり管理していたころの名残なのだ。
今の給食はもっとおいしいお米を食べているのかもしれないけど。

食糧庁がしっかりと管理をしていたころは、11月1日から始まる米穀年度で管理をしていて、11月1日を基準に新米と古米を分けていたのだ。
これは主に10月に米の収穫が行われていたからなんだけど、水郷地域などでとれる早稲(わせ)なんかだと9月くらいに収穫できてしまって(これを早場米と言うのだ。)、もともと合わないんだよね。
しかも、一時期主流になったコシヒカリは典型的な早場米なので、この区分で考えると適切ではなくなってきたのだ。
さらに、米の備蓄計画上は7月からの1年間を単位としているので、これまたずれているんだよね・・・。
なので、ざっくりと今年とれたお米、去年とれたお米くらいの認識の方がよかったりするのだ(笑)
ちなみに、日本農林規格(JAS)法に基づく「玄米及び精米品質表示基準」では、新米と表示できるのは収穫年の年末までに精白・包装された精米に限られるので、そもそも玄米の状態だと新米と表示できないし、買える時期も限られるみたい。

一般に新米はみずみずしくて香りもよく、光沢があって粘り気があると言われていて、古米はその逆で、水分が少ないために硬く、古米臭という独特のにおいがして、黄色っぽくて光沢もなく、粘り気も少ないのだ。
玄米の状態だと数年保存できるので米は食糧として重要だったんだけど、やっぱり保存期間が長くなると味の方は劣化していくのだ(>_<)
これは水分が少なくなることで細胞壁が硬くなって水を吸いにくくなっていたり、中に含まれる脂質が分解されて脂肪酸になり、さらにそれが酸化されて古米臭と黄ばみの原因物質ができたりするからなんだって。
さらには、脂肪酸がデンプンと混ざることで粘り気のもとである糊化が妨げられたり、デンプン分解酵素やタンパク分解酵素の活性が落ちて甘みやうまみが少なくなったりもしているんだ。
こういう複合的な要因で味や香りが落ち、なんだかぱさぱさで硬いお米になってしまうわけ。
当然、古米より古々米の方が質が落ちていて、保存時間とともにどんどん劣化していくのだ。
そんなわけで新米が珍重されるんだよね。

でも、古米もそんなに悪いばかりじゃなくて、寿司飯なんかの場合は水分が少ない方が酢がなじむといってわざわざ古米を使ったりすることもあるみたい。
ピラフやチャーハンなんかの場合もぱらっと仕上げるためには古米の方がよかったりするのだ。
もともと粘り気の少ない、ぱらぱらのお米を食べている東南アジアの人たちからすると、むしろ新米の方がねばねばしていて気持ち悪いみたい・・・。
後はカレーとかドリアとか雑炊とかにおいやぱさつきが気にならないような料理に使うというのも手なんだよね。

一方で、古米をおいしく炊きたいというニーズもあるわけで、いろんな方法があるみたいだよ。
有名なのはもち米を1割程度まぜて炊く方法で、こうすると足りなくなった粘りが増強されるのだ。
それから、単純なことだけど、しっかり研いでよく水につけてから炊く。
しっかり研ぐことで表面の少し黄色くなったにおいのある部分を削り取り、さらに、よく水につけてしっかり膨潤させてから炊くとぱさつきにくいのだ。
ほかにも、寒天を少し入れて炊く、はちみつを混ぜて炊くなど、ぱさつきを押さえつつ、においもごまかして、という方法があるみたい。
中には「にがり」を入れて炊くなんていうのもあって、こうすると浸透圧が高くなるのでよりお米に水が浸透しやすくなってつやつやに炊けるそうなのだ。

というわけで、日本では古くからお米を主食にしてきていたこともあって、新米と古米を区別したり、古米をおいしく食べる工夫をしたりといろいろと考えてきたのだ。
やっぱりお米の文化のくになんだねぇ、と感心するよ。
でもでも、最近は保存技術も向上してきているので、むかしほど古米は劣化していないんだって。
低温で湿度管理して保存するので、おいしさを持続できるのだ。
これもまたすごいことだよね。

2010/10/23

木はむかしを知っている!

先週テレビでインディー・ジョーンズを見たのだ。
言わずと知れた考古学者が主役のアドベンチャーだけど、あんな行動的な考古学者って想像がつかないよね。
実際はもっと地味に、土をはらったりしながら発掘してそうなのだ(笑)
そもそも、あんな迷宮みたいな遺跡はほとんどないだろうし。

で、そんな(?)考古学分野で重要なのは年代測定。
それがいつの時代のものかを判別することなのだ。
ときどき、世界最古が変わったりしてニュースになるよね。
思ったより古い時代よりこの文化があった!、なんてのは大発見だし、年代を詳細に測定してみると実は案外新しいものだった、なんてのも。

この年代測定として現在広く行われているのが炭素年代測定。
遺跡から発掘された木材や木製の道具、土器などに付着している穀物のかすや炭なんかに含まれる炭素原子から年代を測定する方法だよ。
金属とかだけじゃわからないのが難点だけど、炭素はいろんな形で存在しているので、そんなに困らないのだ。

その方法というのは、自然界にわずかに存在している放射性同位元素の14Cの量を測定すること。
14Cは大気の上層部で宇宙線から発生する中性子が窒素に当たり、水素を放出してできるのだ。
この14Cは半減期約5,730年というスピードでゆっくり崩壊して、β線を出しながらもとの窒素にもどるんだ。
植物は生きている間は光合成をして大気中の二酸化炭素を取り入れていくので14Cの存在率は大気中と同じなんだけど、死んでしまうと新たに取り込まれないので、このゆっくりとしたスピードで減っていくのだ。
大気中の14Cの存在率はほぼ一定なので、どれだけ減ったかでどれくらい前に死んだか新たに14Cを取り込まなくなったかがわかるわけ。
切り倒されて木材として使われたり、収穫されて煮炊きして食べられた時代がわかるということなのだ。

14Cの検出にはβ線を測定するわけだけど、どうしても検出限界があるので数万年前くらいまでしかさかのぼれないんだって。
また、ごく微量のβ線を検出しているので誤差もあって、数十年~百年ほどずれることもあるのだ。
(今では加速器をつかって直接14Cの数を数える方法もあって、それだとより性格に測定できるそうだよ。)
さらに、実際には大気中の14Cの存在率は一定ではないので、その値で較正する必要があるのだ。
1950年代以降は核実験のせいで大きく14Cの存在率が変わっているとのことで、基本は1950年の値をもとに、そこから何年さかのぼるか、という調べ方をするんだって。
ちなみに、この原理を発見したリb-博士はノーベル化学賞を受賞しているのだ。
日本では理化学研究所と学習院大学で最初に研究が始められて、今でも拠点になっているみたい。
学習院って意外だよね。

で、年代の較正に使われているのがやっぱり木を使ったもので年輪年代測定というもの。
温帯や冷帯に生えている樹木には年輪ができることが知られていて、その年輪を数えると樹齢がわかる、というのは小学生でも知っていることなのだ。
この年輪を使って年代を測定するのが年輪年代測定(そのままだけど・・・。)。
年輪を数えるだけだと樹齢しかわからないけど、年輪の幅のパターンを比べることで、その年輪がいつくらいに形成されたものかわかるようになるというのだ。

年輪の幅はその年に成長して太くなった部分だけど、これは日当たりや雨量などの気候や、樹木の種類によっても変わってくるよね。
これを複数の資料を調べて年輪のパターンを平均して標準化していくと、もっとマクロな気候の影響だけが抽出できるのだ。
これは猛暑とか冷夏とか、、暖冬とか厳冬とかそういうレベルの大きな気候の影響だよ。
で、そのパターン曲線と、年代を調べたい年輪の幅のデータをつき合わせると、一番パターンが合致するところがその年輪の年代だとわかるわけ。
これをクロスデーティングというそうなのだ。

これを繰り返していくと、新しい方、古い方ともにパター曲線を延長していくことができて、現存しないような古い樹木の年輪パターンもわかるんだ。
年輪だと1年刻みで年代がわかるわけだけど、その年輪の部分から試料を取り出して炭素年代測定をすると、14Cのレベルも較正できるというわけ。
これでかなり正確に年代が測定できるのだ!
技術の進歩はすごいねぇ。

ただし、木材にしても穀類にしても、伐採や収穫した時期にすぐに使う・食べるというわけじゃないので、そこでも年代がずれるのだ。
食べ物の場合はせいぜい数年のレベルなので大きくきいてくることはないけど、お寺や神社などの建築物にはわざと古い材木を使ったりすると、仏像や神像は流木や朽ち木を使うことも多いので、そういうものはどうしても正確に製作年代は特定できないのだ。
ま、これは仕方がないんだけどね。
それでも、どのくらい古い木が使われているのかだけはわかるのだ。

2010/10/16

この時期は足下に気をつけろっ!

すっかりこの季節となったねぇ。
何かって言うとギンナン。
せっかくキンモクセイのよい香りがしてきたなぁ、なんて思っていると、街路樹の近くではあの独特の異臭が・・・。
普通に道に落ちているので、誤って踏むと1日中くさくなるのだ!
このギンナンがひとしきり落ちると今度は黄葉してすっかり秋の色合いに変わるんだよね。

ギンナンはイチョウのみなんだけど、見た目はオレンジ色のサクランボのような形。
外側にある果肉のように見える部分(実は外皮)がにおいの素で、その中に堅いからに包まれた淡い緑色のギンナンが入っているのだ。
火を通すとうっすらと黄色になって、秋の料理の彩りによく使われるよね。
ほんのり苦くて、大人の味なのだ。

調べてみて知ったんだけど、ギンナンっていうのは気になっている状態ではくさくないのだ!
で、これが地上に落ちて、軸が外れるとそこからにおいがしてくるのだ。
当然、踏まれて実がつぶれるともっとにおいが立ちこめるよ。
つまり、軸がついたままならそんなにくさくないので、もし拾うなら軸つきのままで集めるのがよいよ。
肉質化した外皮の表面以外が空気に触れると独特の異臭が発生するのだ。

この異臭の主な成分は酪酸。
実は足のくさい人のにおいの成分と同じで、ウシなどの反すうする草食動物のゲップのくささにも関与している物質なんだ。
もともとはバターの中から発見されたのでこの名前があって、ナチュラル・チーズの独特のにおいもこれ。
皮膚や粘膜に対して腐食性があるので、ギンナンを素手でさわってつぶれたりするとかぶれることがあるよ!
拾うときは要注意。
ちなみに、揮発性が低くてなかなかにおいがとれないので、その点でも注意が必要だよ。

このにおいのせいでニホンザルやネズミ、タヌキなどは忌避して食べないんだけど、なぜかアライグマなんかはそのまま食べてしまう見たい。
雑食界の横綱?
人間もくさいのを我慢して中身を取り出して食べているんだから、大関くらいはいっているかな(笑)
進化の過程で(といっても古代からそのまま残っている植物だけど)、実を食べられないようにくさくなったみたい。
でも、その戦略がうまくいったのか、中国大陸には原生代まで生き続け、それが日本にわたり、日本から世界各地に広まったのだ。

よく公園とかで拾っている人を見かけるけど、拾った後の後処理が大変なんだよね。
標準的には、水につけて水中でごしごし外皮をはいでいく、水につけたり土中に埋めたりしてしばらくまって外皮が腐ったところで水で洗い流す、などの方法で外皮を取り除くがあるのだ。
どちらにせよ、においを我慢しての作業だよ。
その後、から付きのまま乾燥させ、固いからを割って、薄皮をとって、とやると見慣れたギンナンになるよ。
しかも、外皮をとってしまうとけっこう実が小さいのだ(ToT)
売られているのは食品用に栽培されている種で、中粒~大粒らしいんだけど、一般的には小粒なんだよね。
ちなみに、農家の場合は大量に処理する必要があるので、洗濯機に入れてがっしゃんがっしゃんと洗って、その後からのまま天日干しするみたい。

ギンナンが好きな人はけっこういるけど、気をつけなくてはいけないのは中毒。
中にビタミンBの類似物質が入っていて、これが体内でビタミンBのじゃまをするのだ。
そうすると、ビタミンBの欠乏症の症状が出てくるわけ。
大人だとそんなに大量に食べなければ大丈夫だけど、子どもとかは気をつけた方がよいらしいよ。
食べ過ぎるとけいれんなどを起こすそうなのだ。
というわけで、秋の味覚を楽しむのもほどほどに。

2010/10/09

「学」の館

今回はノーベル賞が出たねぇ。
日本のお家芸とも言える有機合成の分野なのだ。
野依先生の研究成果もそうだけど、純粋な科学的な成果と言うだけでなく、生活に身近なものを作る化学工業プロセスにも使われている反応ということなので、まさに暮らしの中に生きている成果なんだよ。

で、今回気になったのは、ノーベル賞関連の報道の中にたまに出てくる日本学術振興会やら、日本学士院やら、日本学術会議などという組織。
同じような名前だけど、それぞれやっていることは違うのだ。
というわけで、普通の人はあんまり気にしないだろうこれらの組織についてちょっと調べてみることにしたのだ。

最初は日本学術振興会。
現在は文部科学省所管の独立行政法人になっていて、その前は、文部省の特殊法人。
科学研究費補助金(科研費)をはじめとした研究費による学術研究の助成(科研費については、文部科学省から事務委任を受けて交付事務などを実施しているのだ。そのほかにも、文部科学省からの委託を受けて様々な競争的資金等の業務を実施しているのだ。)や、学術の国際交流、研究者養成のための助成なんかを主な事業としているよ。
さらに、日本学術振興会賞や昭和天皇在位60周年を記念して創設された国際生物学賞などの顕彰もやっているよ。

もともとは、昭和7年に昭和天皇から御下賜金150万円をいただいた創設された財団法人日本学術振興会が前身。
これが昭和42年に特殊法人になり、特殊法人改革の中で現在の独立行政法人という形態になるのだ。
ちなみに、独法化するまでは、大学などと同じ「ac.jp」をURLに使っていたんだけど、独法化してからは「go.jp」になったんだよ(豆知識)。
イメージとしては、米国の全米科学財団(NSF)に近いかな?

この日本学術振興会が密接に連携をとることと、と法律上定められているのが次に出てくる日本学術会議。
これは内閣府に置かれた特別の機関で、日本学術会議法によって設置された「科学者の国会」なのだ。
もともとは文部省にあったんだけど、在り方の見直しが行われ、科学技術政策担当大臣のいる内閣府の所管に移ったんだって。
法律によれば、「科学者の内外に対する代表機関であり、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的」としている機関で、任期6年で再任なしの210名の会員と任期6年で再任ありの約2,000人の連携会員、それに事務スタッフで構成されているのだ。
もともとは終身会員制をとっていたようなんだけど、上がつまることもあって在り方の見直しをしたときに任期を定めたんだって。
ちなみに、現在の会長は、宮内庁の御典医としても知られる金澤一郎先生なのだ。

ここは人文・社会科学を含む全学術分野の科学者・研究者が一堂に会し、研究者コミュニティとしての意見をまとめ、政策提言する組織なんだよ。
米国で言うと全米科学アカデミー(National Academy of Science)に置かれている研究評議会(National Research Council)が近い機能かな?
科学技術基本計画策定に当たっての提言などをまとめるのが代表的な例だけど、最近では、ホメオパシーに関する会長談話なんかが注目を集めたよね。
前まではそんなに動きは活発じゃなかったように思うんだけど、前の会長の黒川清先生の頃から積極的に提言をするようになってきているのだ。
研究者コミュニティ、科学界の声を国に届けるというのは大事なことだよね。

これと似て非なるものが日本学士院。
こちらは正真正銘の日本のアカデミーで、英国の王立協会(Royal Society)や米国の全米科学アカデミーと同列のもの。
「科学者の殿堂」とも表される栄誉機関としての機能と、研究機関としての機能があるのだ。
日本の場合は研究会をやったり、科学誌を発行したりしているくらいだけど。
それと、日本学士院賞や恩賜賞などの顕彰もやっているよ。

文部科学省設置法と日本学士院法に基づいて設置される文部科学省の特別の機関で、もともとは福沢諭吉先生が初代院長を務めた東京学士会院が前身。
その後帝国学士院に改組され、戦後に日本学士院として再スタートしたのだ。
こちらは今でも終身会員で、定員は150名。
会員には、非常勤の特別職の公務員として年間250万円ほどの給与が支払われるのだ。
文化的な貢献をした文化功労者の年金は年間350万円なので額面上もちょっと少なくて、かつ、給与として支払われるので課税対象ということなのだ。
手取りはもっと少ないってことだね。

似た組織が日本芸術院。
どちらも上野にあるんだけど、日本芸術院は文部科学省設置法に基づいて文化庁に設置された特別の機関で、個別法のある日本学士院とは位置づけが違うのだ。
また、日本芸術院は日本芸術院賞や恩賜賞などの顕彰と、「芸術の殿堂」としての栄誉機関の位置づけは同じなんだけど、自ら研究活動などは行っていない点は違うのだ。
こっちは終身会員で定員は120名、こちらは年金なしだよ。
これが一番大きな相違点かもね。

というわけで、似たような組織だと思われがちだけど、それは名前だけどけっこう役割は違うのだ。
こうやって知ってから報道とかで名前を目にするとまた印象が違ってくるかも。
周りの人にも教えてあげよう♪

2010/10/03

食べたその後に

餃子っておいしいよねぇ。
でも、ニンニクが入っている餃子だと、においがどうしても気になってしまうのだ(>_<) とはいえ、あのにおいが滋養強壮にききそう、というイメージもあるんだけどね(笑)
それでも、そのにおいのメカニズムを知ると、なかなかおもしろいのだ。

いわゆる「にんにく臭」のもとはアリシンという物質。
これはにんにくに含まれているアリインという物質が、にんにくの細胞中にあるアリナーゼが作用してできる物質なのだ。
このアリインとかアリナーゼはネギ類によく含まれているもので、ネギやニラなんかのにおいも基本的には同じだよ。
にんにくでもニラでもネギでも、切ったりして細胞が傷つくとアリナーゼが出てきてにおいが発生するのだ!
ネギやニラは切ったとたんににおいがしてくるのはそのためだよ。

で、口の中でにんにくやネギ、ニラをかむと、同じようにアリインとアリナーゼが出会ってアリシンが生まれるんだけど、アリシンはわりと不安定な物質ですぐにほかの物質に変わっていくのだ。
そのひとつがアリルメチルスルフィドと呼ばれる物質で、これがにんにくを食べた後の不快な口臭の原因と言われているよ。
ところが、この物質は口臭だけでなく、実は汗の中にも分泌されたりするので、実際には体中がにおっているんだよ!
というのも、このアリシンから派生していく物質はのきなみ脂溶性が高いもので、すぐに粘膜から吸収され、血流にのってしまうのだ。
で、揮発性も高い物質なので、血液を介して呼気や汗の中に出ていったとき、においのもとになるというわけ。
にんにくを食べた後はいくら歯磨きをしてもそんなに意味はないのだ。
むしろ、コーヒーや緑茶に含まれるタンニン、牛乳に含まれるタンパク質など、におい物質を吸着するものが含まれているものを食後すぐに飲む、という方が効果があるみたい。
でもでも、すぐににおい物質はできているので、緊急の対処(?)が必要だよ。
あ、においが出てる、と気づいたときにはもうだいたい遅いのだ。

逆に、このにんにくのにおいをありがたがる人たちもいるんだよね。 その典型がにんにく注射。 名前だけ見るとにんにくのエキスを注射しているみたいだけど、実際には、注射をした後ににんにく臭がするのでそう呼ばれているだけで、注射されている薬剤はビタミンBの誘導体なんだ。
ビタミンB誘導体は活性型ビタミンBとも呼ばれるもので、普通のビタミンBより吸収率が高いのだ。
胃腸が弱っているときや、強度のビタミンB欠乏(いわゆる「脚気(かっけ)」)だとビタミンBが吸収しづらいので使われるんだ。
普通の食生活を送っている限りは水溶性ビタミンのビタミンBが欠乏することはそんなにないので、注射してまで補給するものかどうかはちょっと疑問なんだよね。
ちなみに、水溶性ですぐに尿中に排泄されるから、そんなに過剰摂取を気にしなくても大丈夫だよ。

このビタミンB誘導体で有名なのがアリナミン。
にんにくを研究していて生まれたと言われているんだけど、これは、にんにくに含まれるアリシンがビタミンBが結合してアリアチミンになると吸収率が上がる、という発見がもとなのだ。
さらに研究をして、薬として安定性を高めたのがプロスルチアミンというやつで、これが初代のアリナミン。
当時は錠剤だったのだ。
でも、このプロスルチアミンは、にんにくのにおい成分をもとに開発しただけあってにんにく臭が強かったんだよね。
そこで、にんにく臭を減らす研究が進められ、コーヒーの香り成分を結合させた「におわない」ビタミンB誘導体を開発したのだ。
それが今のアリナミンのフルスルチアミンだよ。
最初は黄色い錠剤だったけど、やがて黄色いドリンク剤になったのだ。
(黄色い色はビタミンBの色だよ。)

にんにく注射で使われているビタミンB誘導体も似たようなもので、だいたい黄色いんだよね。
でも、まだにおい成分が残っているものを使っているので、打った後ににんにく臭がするのだ。
にんにくを食べた場合よりもひどくて、すぐに血中に入るので、打った直後からにおいがするよ。
普通なら否定的にとらえられてもおかしくないのに、にんにくはむかしから滋養強壮にきくと言われていたので、肯定的に受け取られているみたい。
アリナミンならにおいなしで同じ効果だけど。
でも、どのみち普通にちょっとつかれているくらいの人なら、注射してまで補給する必要はないので、ほとんどが精神的な効果(プラセボ効果)じゃないのかな?

2010/09/25

安くおいしく

ついこの間、厚木で第5回B-1グランプリが開催されて、山梨の甲府鳥もつ煮が優勝したのだ。
砂肝やレバー、「きんかん」などの鳥のもつを少量のタレで煮込んだものなんだそうだよ。
甲府あたりの居酒屋さんでは定番メニューとのことなのだ。
優勝してさっそく人気が出ているみたい。

このB-1グランプリはB級グルメの祭典という位置付け。
全国各地の安価でおいしい御当地グルメを集め、投票で優勝を決めるのだ。
B級というとAの次なので二流以下、ということで、もともとは映画界でなんだか安っぽい映画や、いかにも低予算で作られている映画に使われていた言葉。
B級ホラーなんてのが一時期はやったよね。
そう聞くとマイナスイメージなんだけど、最近では肯定的にとれられていて、低予算ながら良くできている、とか、安っぽいが故に味があるなど、費用対効果が高いという意味でも使われがちなんだよね。
確かに低予算でも質の高い映画が出始めていることもあるんだろうね。

これが他の分野にも影響して、いわゆる高級なグルメに比べると安っぽいけどおいしい、庶民でも楽しめる安くておいしい食べ物として注目を集めるようになったのだ。
もともとはフリーライターが本で「B級」と冠して紹介したのがはじまりのようだけど、かなり浸透しているよね。
そのはやりに乗じて5年前から始まったのがB-1グランプリ。
初回と第2回は富士宮焼きそばが優勝し、一気に有名になったのだ。
これを皮切りに町おこしにもつながると、自治体も含めてかなり真剣に取り組まれるようになったのだ。

御当地グルメと言いつつ、郷土料理のようにむかしからその土地の食材を活かして、或いは、その土地柄を活かして作られ、食べられてきた料理とはちょっと違うんだよね。
八戸のせんべい汁は郷土料理っぽいけど、もともと南部せんべいを汁物の具に使ってきた郷土料理が町おこしをかねてB級グルメとして売り出されるようになったもの。
静岡おでんみたいに郷土の食材を活かしたものもあれば、行田のゼリーフライみたいにその土地で生まれ、その土地でだけ食べられてきたようなものも多いのだ。
富士宮焼きそばや横手焼きそば、今回準優勝だった蒜山(ひるぜん)焼きそばなんかだとまったく郷土食はないよね(笑)
地元ローカルで食べられてきた料理というイメージなのだ。

今回のB-1グランプリは初の関東開催で、三連休の最初の2日間だったけど、約45万人もの人が集まった大イベント。
ゆるキャラといい、地方の魅力というのが高まっているのかも。
必ずしも住むのではなくて、行ってみるだけ、というところがまだまだなんだけどね。
それでも、地方活性化にはかなり貢献しているし、地元の人たちの結束力を高める上では大きな意義があると思うのだ。
やっぱり国が上から押しつけるより、こういうじわじわと民間ベースで広まってくるものの方が効果がありそうだよね(笑)

伝統的な郷土料理は文化として認められ、保存会なんかもあるけど、将来的には御当地B級グルメもそういう扱いを受けるようになるかな?
ただし、B級グルメの中には御当地と関係のない、単に安くておいしい料理も含まれるので、今後は差別化が進むのかもね。
世の中不景気で安くておいしいものは人気が出てきているし、安近短で国内旅行が見直されているから、これからもぐんぐん伸びていくかもね。
そのうち、デパートでやるのは駅弁フェアじゃなくて、御当地B級グルメフェアかもしれないのだ(笑)

2010/09/18

店内でお召し上がりですか?

外食をするとよくそのお店の名刺大のカードをもらって帰ったりするんだけど、この前見たやつには、カタカナで「テイクアウト」、英語では「Take Away」と書いてあったのだ!
よく、テイクアウトは和製英語なので英語圏では通じなくて、正式にはテイク・アウェイと言う、なんて言われるけど、そういうことかな?
とは言え、ちょっと気になったので調べてみたのだ。

調べてみると、一般的に言われているのは、Take Outは米語で、Take Awayが英語というもの。
米国ではTake Outと言い、その他の英語圏である英国や豪州ではTake Awayが使われるというのだ。
一部ではCarry Outも使うみたい。
でもでも、ボクが米国にいたときは、Take Outという語はほとんど聞かなかったのだ。
だいたい持ち帰りかどうかを聞くときは「Stay or Go」と聞かれて、「To Go」というのが持ち帰り。
一般的にTake Outは「持ち出す」といった意味があるから、通じないと言うことはないのだ。
このあたりは英語の辞書的な意味と、実際のコミュニケーションの場での使われ方の差なんだろうね。

ちなみに、いわゆる持ち帰り用の食品でも、道ばたにワゴンで出ているホットドッグなどはストリート・フード=歩きながら食べるもので、テイクアウトにはあたらないみたい。
定義は曖昧だけど、きちんと店舗があって、そこで売っているものを持ち帰るのがテイクアウトのようなのだ。
持ち帰り専用のスタンドやウィンドウであってもそれはいいみたい。
持ち帰り専用だったらわざわざ「テイクアウトで」とは言わないけど、持ち帰りの食品のことを「Takeout」と言うので、一応区別が必要なのだ。

そのテイクアウトの一種がドライブスルー。
こっちは英語でもDrive Throughなんだけど、米国では日本よりも多くのドライブスルーがあるのだ。
日本的なイメージだとどうしてもファストフードを思い浮かべがちだけど、自動車大国の米国では、車に乗ったまますませられるものはなんでも車に乗ったまま、というわけで、その種類も多種多様。
ドラッグストア(調剤もあり)や銀行(いわゆるATMでなく、窓口業務もあるのだ!)、日用品などなど。
場所によっては、ドライブスルー・チャペルなんてのもあるようだし、なぜかアルコール販売もあるようなのだ。
日本でも郵便業務や銀行、クリーニング受け渡しなどが一部でやられているようだけど。
町中だったら歩いていった方が便利だよね(笑)

テイクアウトと対立する概念がEat-in。
まさに中で食べていく、ということだけど、明確にテイクアウトと区別するときにしか使わないよね。
持ち帰りが多いようなファストフードをその場でも食べられるよ、というような時に使うことが多いのだ。
米国でもサンドイッチとかハンバーガーとか(特にフードコートにあるもの)はそうなんだよね。
いわゆるイートイン・コーナーっていうやつ。
で、Eat-inに対して、Eat-outという表現もあるようなのだ。
中では食べないよ、ってこと。
あんまり使われないようだけど。

もうひとつの対立概念はデリバリー。
テイクアウトは自分でお店から持ち帰るけど、自分のところにお店から持ってきてもらうのがデリバリー。
日本でもおなじみの出前だよね。
もともとそばやラーメン、寿司などで出前の文化があるので、ピザのデリバリーが始まったときにはあんまり違和感はなかったけど、最近はファミリーレストランやオードブルなんかのデリバリーが増えているよね。
こっちは「仕出し」というイメージが強いけど。

ちなみに、あんまり厳格ではないけど、店舗内に飲食スペースがない場合をデリバリーと呼ぶことが多いそうなのだ。
寿司の出前とデリバリーの違いを考えるとそうかもね。
でも、なんだかむかしからあるものが出前で、新たな業種がデリバリーという方が実態に即している気がするけど。
それと、似たサービスのケータリングとの違いは、完成品を運んでくるのが出前・デリバリー、現場で調理をするのがケータリングなんだとか。
ケータリングの場合、注文主の台所を借りて調理したり、現地に移動調理車を持ってきて仕上げたりするのが基本なんだそうだよ。

2010/09/11

一体誰が・・・

奈良県明日香村の牽牛子塚(けんごしづか)古墳を調査した結果、天智天皇(中大兄皇子)や天武天皇(大海人皇子)のお母さんで、日本史上初の重祚(ちょうそ)したことでも知られる斉明天皇(皇極天皇)の墓所である可能性が高まったのだ。
その時期の天皇・皇族の陵墓に特徴的な八角構造があることがわかったんだとか。
でも、現在宮内庁書陵部が斉明天皇陵として指定し、管理しているのは別の古墳。
続日本紀によると、斉明天皇陵はある時期に修理されたと読める記述があるんだけど、そのときに改装されたのかどうかが論点になるみたい。
今のところ宮内庁は指定し直そうとしていないみたいだけど。

実は、現在でも歴代天皇や皇族の陵墓は宮内庁が管理をしているのだ。
皇室関係の基本法規である皇室典範第27条によると、「天皇、皇后、太皇太后及び皇太后を葬る所を陵、その他の皇族を葬る所を墓とし」とあって、合わせて陵墓として書陵部で管理しているのだ。
明治維新以降は、天皇・皇后は高尾の武蔵野陵墓地(多摩御陵)に、その他の皇族は護国寺に隣接している豊島岡墓地(豊島ヶ岡御陵)に埋葬されることになっているんだ。
それ以前の陵墓については、むかしからずっと朝廷に管理されているものも少数はあったけど、ほとんどは平安時代以降に十分に管理されず、荒れ放題になってしまったいたんだ。
これを、江戸時代後期に尊皇思想が勃興した頃、本居宣長さんほかの国学者が延喜式や日本書紀等の歴史書をもとに比定していったんだって。
その作業は明治までずれこんだんだけど、今の書陵部が管理している陵墓がそれなのだ。

ただし、この宮内庁管理の陵墓は現在でも皇室が祭祀を執り行っていて、自由に調査研究ができないのだ。
以前は奈良の箸墓古墳が卑弥呼の墓ではないか、という話が出たときに話題になったけど、けっきょく調査許可が出ないんだよね・・・。
最近では修復の時に研究者が立ち会える、くらいのことはできるようだけど。
で、そういう状況なので、本当に誰がそこに埋葬されているかがよくわからないものが多数あるわけ。
今回の発見も、これを踏まえて現在斉明天皇陵に指定されている「越智崗上陵(おちのおかのえのみささぎ)」こと車木ケンノウ古墳を調査できないので、確かめられないんだよね。
宮内庁はどう動くのかは見物だけど。

ちなみに、日本でもっとも有名な前方後円墳の百舌鳥耳原中陵(もずのみみはらのなかのみささぎ)こと仁徳天皇陵の大仙陵古墳も、実際に仁徳天皇陵かどうかはわからないそうだよ。
文献資料での記述の調査や出土品の年代特定なんかから調査をするんだけど、古代の超有力者の墓という以上にはわからないのだ。
ま、中を調べればわかるというものでもないんだけど。
ただし、世界最大級の墳墓として歴史の教科書に載っているくらいのものなので、きちんと調べたい気持ちはあるよね。

宮内庁書陵部は皇室が持っている資料や文献の管理・保存と陵墓の管理を行う部署。
旧宮内省の図書寮と諸陵寮が統合化され、戦後に書陵部になったのだ。
この書陵部の建物は一般参賀などでしか見る機会のない宮内庁の本庁舎にはなくて、普通の人がいつでも入れる皇居東御苑の旧江戸城本丸の一角、天守台の近くにあるよ。
そういう意味では、近くまで見に行けるのだ(当然中には入れないけど。)。
宮殿から離れた位置にあるのは、直接皇室のお世話を担当する他の部署とは役割が違うからかな?
ちなみに、当然陵墓を管理する地方事務所も持っていて、東京に一カ所(八王子)、京都に二カ所(伏見区と東山区)、奈良に一カ所(橿原市)、大阪に一カ所(羽曳野市)にあって、そこがある程度地域ブロックでまとめて管理しているんだ。
地図上で見ると、確かに「陵墓銀座」みたいな密集している地域があって、そこにうまく配置されているみたいだよ。

というわけで、一気に気になる存在になったよね。
高尾の武蔵野寮墓地は多摩森林科学園のすぐ近くでちょっとした散策には向いているところ。
京都や奈良の陵墓も多くは観光地になっているので、近くに行ったら気にして見るようにしてみるとおもしろいかもね。
古代のロマンに思いをはせるのだ!

2010/09/04

Wooden Fish

正座をしていると足がしびれるから耐えられるけど、単調なお経を聞いていると眠くなるよね(笑)
それに大きく貢献しているのが、あの単調なリズムを刻んでいる木魚。
ぽくぽくぽくとなかなか心地よい音なのだ。
最近は楽器としても使われたりするんだよね。

この木魚、実は読経のリズムを整えるだけでなく、眠気防止の意味もあるというのだ。
確かに音は大きいけど、リズムが単調だから心地よい響きになってくるんだよね・・・。
でも、魚はまぶたもなく、眠らないものと認識されていたので、居眠りせずにしっかり励め、という意味が込められているのだ!
とは言え、現在の木魚を見ると、魚っぽい鱗のモチーフはあるものの、必ずしも魚の形はしていないよね。
木製の鈴のような形で、施されている彫刻も竜だったりすることもあるのだ。
日蓮宗で大音声の読経の時に使う木柾(もくしょう)なんかも似たような機能のものだけど、こちらは完全に木製の鉦=柾で、音を鳴らすものに徹しているのだ。

この木魚が日本で広く使われるようになったのは江戸時代からで、そんなに古くはないのだ。
持ち込んだのは日本黄檗宗の開祖である隠元禅師。
中国の禅宗の大本山で、臨済宗を開いた臨済義玄さんの支障に当たる黄檗希運さんも住した黄檗山萬福寺では、魚板と呼ばれる魚の形をした板が使われているのだ。
これはたたいて音を出すことで、人を集める合図に使ったりするんだって。
禅寺では1日のすべての行為が修行で、いちいち動きが決まっているので、こういう合図が重要なのだ。

この魚板は、魚は目を閉じない=眠らない、ということと、魚の腹をたたくことで煩悩をはき出させるという意味が込められているらしいよ。
修行に精進する象徴として使われていたわけだけど、いつしか読経のリズムを整え、同時に眠気を覚まする楽器のような使われ方をするようになり、明代になると今の木魚の原型が完成していたようなのだ。
それは日本にも少しは伝わっていたようだけど、江戸時代に隠元禅師が持ち込むまではあまり広まらなかったみたい。
逆に、江戸時代以降は禅宗だけでなく、天台宗や浄土宗でも使われるようになったのだ。
ちなみに、黄檗宗では他にも仏具としていろんな楽器を使うことで有名だそうだよ。

魚は眠らないというのはまぶたがなく、目を閉じないからなんだけど、これは水中に棲む魚は目を乾燥から守る必要がないので、まぶたがなくてもなんとかなるのだ。
でも、サメの一部では瞬膜と呼ばれる目を守る半透明の膜があって、エサを食べるときなどは一瞬閉じて目を保護するのだ。
これは物理的な刺激から守るため。
まぶたは皮膚と連続的で開閉可能な目を保護する器官で、皮膚と目の間にある瞬膜とは別物なのだ。
まぶたが上下に動くことが多いのに対し、瞬膜は水平に動くことが多いのも特徴なのだ。
カエルなんかだと、まぶたと瞬膜の両方があることもあるのだ。
カラスも瞬膜を持っていて、光っていた目がくもった瞬間が瞬膜が閉じたタイミングなのだ。

ちなみに、魚は眠らない、というのは厳密にはウソなのだ。
目を閉じない、というか、閉じられないだけであって、「原始睡眠」という脳が体を休ませている状態はあるのだ。
人間で言うとレム睡眠にあたるようなもので、この間は泳ぎ方も「覚醒」状態とは違うんだよね。
こっくりこっくりじゃないけど、沈んでは浮かび直し、といった動きをするよ。
金魚なんかを飼っていると時々見られるのだ。

マグロやカツオなんかは体の構造上泳ぎ続けないとえら呼吸できないので、休息しているときも止まれないのだ。
なので、ぶつ切りで意識が吹っ飛んでいるような状態を繰り返して、止まらない程度に体を休ませるわけ。
隠れてじっとしている魚も「寝ている」のかもしれないね。
ということは、目を開けながら寝るのは木魚の意味合い的には許されるのかな?
たまにそういう人を電車で見かけたりするけど(笑)

2010/08/28

あめちゃん

職場のおみやげで「フグ雑炊ドロップ」というのがあったのだ。
これはまさしくその味で、しゃれにならないもの・・・。
よくそんなものを本当に作るよ、味見しないのかな?、なんて思うよね。
で、気になったのが、「ドロップ」というもの。
いわゆるキャンディとは何が違うのか。
気になったので、調べてみたよ。

ドロップはハードキャンディの1種類で、砂糖80%、水飴20%の基材を140~150℃で煮詰め、そこに酸味を加えるクエン酸や香料、着色料などを加えて冷やしかためたもの。
非常に単純な材料で作られたあめだったのだ!
水飴と混ぜるところがポイントで、こうすることで砂糖の再結晶かがふせげて、透明感を残したままかためることができるんだって。
確かに色がきれいだよね。

もともとはオランダに甘草を使ったリコリス菓子の「ドロップ」というのがあって、それが語源と言われているのだ。
通常欧米のリコリス菓子は紐状だけど、オランダのものだけは動物やコインなどいろんな形にかためたもので、本場オランダでは親しまれているんだって・・・。
日本人にはリコリスの味と香りは苦手とする人が多いけど。
で、このいろんな形状にかためるところから名前が来ているのではないか、と言われているそうだよ。

じゃあ、キャンディは何かというと、砂糖や水飴を主原料とし、煮詰めた後に冷やしかためたお菓子の総称みたい。
かちっとかたくかためたものがハードキャンディ。
ドロップのほか、ペロペロキャンディのロリポップや、三温糖とバターを煮詰めたものをナッツと混ぜてかためたタフィやバタースコッチなんかがこれにあたるそうだよ。
やわらかくかためたものがソフトキャンディで、キャラメルやマシュマロ、ヌガーなどはこのソフトキャンディになるのだ。
ボンタン飴や森永ハイチュウもソフトキャンディだよね。

タフィなんかはキャラメルに近いような気がするけど、がりっと歯が砕けるかと思うほどかたいこともあるから「ハード」なのかな?
バタースコッチはとろっとしたソースのイメージだけど、かたく作ったチップもあるそうなので、やはりかたいものなのかも。
ちなみに、タフィとバタースコッチの違いはどこまであたためたかで、バタースコッチの場合はとろみがつく程度にまでしか加熱しないのに対し、タフィはカラメル化が起きるまで加熱するのだ。
なので、タフィの方が苦みと風味が出るわけ。
もともとタフィやバタースコッチの茶色は主に三温糖の色なんだけど、キャラメルの場合はカラメル化した砂糖の色で、さらに、バターでなく生クリームを加えるのでよりやわらかいのだ。

翻って、日本の飴がどうかというと、けっこう歴史が古いみたいなんだよね。
砂糖自体はむかしの日本では超貴重品だったので、基本はデンプンを酵素で分解して糖化したものが使われていたようなのだ。
今でも麦芽水飴というのがあるけど、それと同じように、米を発芽させ、その発芽した芽に含まれる酵素でデンプンを糖化して作っていたのではないか、と言われているよ。
これを精製していくとできるのが水飴。
むかしはこれも貴重品で、それで「附子(ぶす)」なんて狂言が生まれるのだ。
これはかくしておいた水飴が食べられないように毒だと言ってうそをつく話だよね(砂糖と言われるけど、どう考えても動作的に水飴をなめているのだ!)。

江戸時代くらいになって砂糖が手にはいるようになると、この水飴に少量の砂糖を加えて練って作るさらし飴が登場するんだよ。
これはよく寝ると空気が入り込んで白くなるのだ。
柔らかいうちに棒状に丸めてトントントンとこぎみよく切るのだ。
今でも神社やお寺の前ではそういう飴屋さんがあるよね。
ちなみに、やわらかいうちは加工が可能なので、飴細工にしたり、金太郎飴にしたりと色鮮やかにできるんだよ。

日本的な飴と思われるべっこう飴はもっと後の時代に出てくるもので、これは砂糖水(ザラメを水に溶かしたもの)を熱してから冷やしかためただけのもの。
加熱しているときにカラメル化が起きるので、黄金色に色づくのだ。
これがべっ甲の色に似ているのでべっこう飴と呼ばれるんだ。
色づいてから型に流し込むだけだけど、自分で作ろうとするとけっこう難しいんだよね。
焦げ付いたり、色がきれいにつかなかったりするのだ。
色がつかないと風味もないので、おいしくもないのだ。

というわけで、実はあめの世界も奥が深いみたい。
口ざみしいときについつい口に入れてしまうあめだけど、これは何のあめかな?なんて思いをはせると、食べ過ぎずにすむかも(笑)
いろんなあめで舌触りが違ったりするけど、それも長年の工夫の上に立っているんだねぇ。

2010/08/21

希釈でまろやかに

ここ最近はハイボールがはやっているみたいだねぇ。
一時期地酒や焼酎がはやったけど、不況だからか、安くて酔えるお酒に人気が集まってきたのかな?
宣伝がうまくいったというのもあるんだろうけど。
サントリーでは急激に消費量が増えたので角瓶の出荷量を制限する措置までとりだしているのだ。
ウィスキーの場合は熟成に時間がかかるので、すぐに生産量を増やせないという問題があるんだよね。
企業側としては、売れるのはうれしいけど、ということで痛しかゆしなのかも。

で、その最近のハイボールだけど、これはウィスキーをソーダ(炭酸水)で割ったもの。
広義にはアルコール度数の高い蒸留酒を炭酸水やソフトドリンクで割ったカクテルの総称なんだそうけど、日本では完全にウィスキーのソーダ割りだよね(笑)
ちなみに、酎ハイは焼酎をソーダで割ったもので、焼酎ハイボールなので酎ハイなんだとか。
でも、ハイボールを広義の意味で使う例は他にはあまり見ないのだ。

ウィスキーはアルコール度数が高いこともあって、もともとそんなにアルコールに強くない日本人としては、水割りやソーダ割りで飲むのが好まれているんだよね。
ところが、これはおよそ日本独特の飲み方で、海外ではストレートかロック(オン・ザ・ロック)が一般的な飲み方のようなのだ。
それをちびちびやるのが本道で、飲みやすくしたハイボールは「カクテル」という扱いなんだろうね。
むしろ、日本では、ウィスキーは割って飲むのが普通だから、「カクテル」扱いしたくないんだろうね(笑)

でもでも、この「割る」という行為はアルコール度数を薄める以上にメリットもあるのだ。
薄めることで飲み口がすっきりして飲みやすくなるんだけど、それとともに、アルコールの強い香気を弱め、ウィスキー独特の風味を楽しめる、ということもあるのだ。
ストレートで飲む場合もチェイサーで水を続けて飲んだりすることで、アルコールの香気を洗い流してウィスキーの風味を楽しむものだそうなのだ。
水割りの場合、水との配合比率でいろんなまろやかさ、飲みやすさに調整できるんだけど、ウィスキーの風味が際だつ黄金比というものがあるようなのだ。
ソーダ割りのハイボールの場合はさらに清涼感・爽快感がまして飲み口がさっぱりするというわけ。
暑い時期にはただの水割りより魅力的かもね。
で、ロックの場合は、徐々に氷が溶けていくので味の変化が楽しめるので、一粒で何度もおいしい、という飲み方になるのだ。

同じようにいろんな割り方をする熟成させた蒸留酒と言えば、沖縄の泡盛(古酒)があるよね。
泡盛は現地でもあんまりストレートで飲むことはなくて、割って飲むのが一般的。
やっぱり割り方に黄金比があって、泡盛の風味がもっとも引き立ち、甘みを感じる割り方があるらしいのだ。
普通の蒸留酒だと雑味を除いてアルコール度数を高めているだけなので、その引き立たせる風味があまりないので気にならないわけだけど、ウィスキーや泡盛のように熟成させる蒸留酒ならではなんだよね。

ところが、ウィスキーと泡盛ではまったく熟成の中身が違うんだよね。
ウィスキーは蒸留したての透明なものを樽に入れて熟成させるのだ。
そうすると、樽に使われているオーク材などからタンニンやリグニンなどのポリフェノールが溶け出していって、色と風味がついていくんだ。
重要なのは、風味を与えるのは樽なので、どの樽で熟成させるかが重要なわけ。
一報、泡盛はウィスキーほどには蒸留が進んでいなくて、まだ中には多くの雑味(エタノール以外のアルコールや脂肪酸エステルなど)が含まれていて、これが熟成過程で独特の風味を出していくわけ。
分解したり、結合したりとゆっくりと化学反応が進んで、味や香りのもととなるんだ。
泡盛の場合はかめに入れて熟成させるけど、内部の成分が熟成していくので、どのかめで熟成させるかは問題にならないというわけ。

同じ蒸留酒でもウォッカやジンなんかの徹底的にアルコール度数を高めるとカクテルの原料として使われるのが多くなるよね(ロシア人はウォッカをぐいっといくみたいだけど・・・。)。
一方、ラムやテキーラなんかはウィスキーと同じように樽で熟成させてから楽しんだりするのだ。
日本の焼酎はまだ風味が残る程度の蒸留なので、その風味を楽しみつつ、ストレートだったり、お湯割り、水割りで飲むよね。
これがブランデーまで行くと、その高貴な風味を楽しむためにストレートで飲むのが原則になるのだ。
というように、同じ蒸留酒でも飲み方は様々。
むかしから人類はアルコールを楽しむためにいろいろと工夫してきたんだなぁ、と感心するよ。

2010/08/14

Bon Vacation!

世間はすっかりお盆休みシーズンだねぇ。
街中から人は減り、帰省ラッシュのニュースが流れているのだ。
かくいうボクも今回はこのお盆の時期に夏休みを取得しているのだ。
お仕事の相手先もお休みのことが多いから休みやすいんだよね。
なんだかんだでまだ国民的な季節行事なのだ!

お盆というのは仏教で言う盂蘭盆会(うらぼんえ)から来ているもので、祖先の霊がもどってくるので、それを迎え、供養して、また送り出すというのが一連の流れ。
一説には、釈迦の十大弟子の一人、神通第一と言われた目連尊者が夏の修行(夏安吾)の最中に亡き母親の姿を探したところ、餓鬼道に落ちていることを発見したことから始まるのだ。
それをどうしたら救えるかとお釈迦様に相談すると、安吾の最後の日(解夏の日)にすべての比丘(仏教の修行者)に食べ物を施せば母親にも届くだろう、と教えられ、すべての比丘に布施をしたところ、餓鬼道にいた母親の口にも食べ物が届いたんだとか。
これが施餓鬼とも言われる所以だよ。
この話は中国で成立した偽経にあるものなので、中国由来なんだそうで、インドでは盂蘭盆の習慣はないんだって。

もともと中国では初春と夏の盛りに二度祖先の霊をまつる習慣があったようで、その夏の祖霊供養の習慣が仏教とまざってできたのが盂蘭盆なんだと考えられているようだよ。
中国の習慣は広く東アジアに広まるので、これは日本にも入ってきていて、さらに仏教とともに盂蘭盆が入ってくると、日本で独自に進化した夏の祖霊供養の民俗習慣と、仏教とともに入ってきた盂蘭盆が習合して現在のようなお盆になったのだ。
そういう意味で、仏教色が強いけど、純粋な仏教行事とはいえないんだよね。
お墓参りやお経をあげたりするほかにもお盆の行事があるのにはそういう事情があるのだ。
ちなみに、初春の行事は後にお正月の民俗につながっていって、中国では爆竹を鳴らしたり、日本では門松を立てて年神様を迎えたりするけど、それももともとは祖先の霊の供養だったんだって。

お盆が特殊なのは他の夏の行事とも密接に関係していること。
特に夏祭りが行われる地域だと、盆踊りとお祭りは密接不可分だよね。
夏祭り自体は疫病が流行しないように祈ったり、収穫前にしっかり雨が降るよう祈ったり、逆に台風の被害がないように祈ったりするもの。
これももともとは祖先の霊をまつって、感謝の気持ちを表すとともに、そういう祈願をしていたのかもしれないのだ。
もともと日本の神様は祖先的な意味合いもあるから、神仏混淆の世界ではそれでよいのかも。

盆踊りは地獄での受苦を逃れた亡者が喜んで踊る姿を燃したなんてことも言われるけど、むしろ祈願の踊りと考えた方がすっきりするかもね。
雨乞いの踊りのようなものなのだ。
沖縄のエイサーも盆踊りの一種だそうだけど、太鼓や鉦を大音量で打ち鳴らすのは疫病払いのお祭りの特徴だよね。
東北のねぶたも疫病払いと言われるけど、こっちもお盆と大きく関係しているようなのだ。
秋田の竿灯祭りは豊作祈願だけど、やっぱりお盆と関係しているよね。
やっぱり夏祭りとお盆は民俗行事としてつながっていそうなのだ。
ちなみに、これらのお祭りや盆踊りはむかしでは一大イベントでは、田舎の地域では重要な出会いの場だったんだよね(笑)

お盆によく見るのは迎え火や送り火。
これは祖先の霊を迎え、送り出すときのもの。
京都五山の送り火も祖霊を送るものだそうだよ。
灯籠流しや精霊流しも同じ意味があるそうなのだ。
むかしは海の彼方に常世=あの世があるとも考えられていたので、川に流すという発想が出てくるのだ。
そして、お盆の名物と言えばキュウリとナスに割り箸をさした馬と牛。
来るときは馬に乗って早く、帰るときは牛に乗ってゆっくりと、という意味が込められているんだって。
ちなみにこれは精霊馬と呼ばれるのだ。

で、現在はお盆というと8月中旬、終戦記念日と同じ15日に当てられることが多いよね。
この前後がお盆休みシーズンとなるのだ。
でも、もともとは旧暦の7月15日で、それが新暦になると約1ヶ月ずれるわけだけど、そのまま旧暦の日付に合わせ続けると新暦では毎年日が変わってしまうので、そのまま1ヶ月ずらした8月15日固定されるようになったんだ。
今でも旧暦の7月15日に旧盆をやる地域もあるよね。
さらに、新暦の7月15日という地域もあたりするから混乱するのだ。
とは言え、なんとなく、8月中旬、夏休みも折り返しを過ぎて、そろそろ休みも終わるなぁ、と思いをはせるこの時期がお盆っぽいよね。
お盆が終わるとヒグラシも鳴き始めて、夏の終わりを感じるのだ。
やっぱり日本人の季節感と密接に関連した民俗なんだね。

2010/08/07

清濁併せ呑む

最近韓国の濁り酒のマッコリがはやっているよね。
韓国料理屋さんだけじゃなく、普通の焼き肉屋さんでも見かけるようになったし、居酒屋でもときどき見かけるのだ。
特有の香りがあって苦手にしている人もいるみたいだけど、独特の甘みとほのかな酸味で飲みやすいとも言われているのだ。
アルコール度数もビール程度だからぐびぐびっといきがちだけど、濁り酒だけあって悪酔いしやすいので注意が必要なのだ(>_<)

韓国のマッコリと日本酒と同じお米のお酒で、麹でデンプンを糖化させてから酵母でアルコール発酵をさせる並発酵。
このとき、雑菌の繁殖を抑えるために乳酸菌発酵もさせているので、ちょっと酸味が出てくるんだ。
ただし、日本酒とは違って原料に小麦を加えることが多いんだとか。
芋焼酎のようにサツマイモからつくるマッコリもあるみたいだ。

発酵させたそのままを飲む生マッコリは微炭酸状態。
軽く発泡しているのだ。
その方がさわやかな飲み口と言われるけど、発酵が継続していて日持ちがしないので、加熱して発酵を止めたものが広く流通しているようだよ。
夏場に冷やしたものを飲むのが好まれているようだけど、この点はmかしの甘酒の飲み方に近いかも。
マッコリの方が発酵期間が長いのでアルコール度数が高いけど。

このマッコリに似ているのは日本のどぶろく。
どぶろくも甘みとほのかな酸味が特長の濁り酒だけど、すっきりした飲み口のわりにアルコール度数が高いのだ。
普通に上澄みをとって濾過して加熱処理すれば清酒にになるので、アルコール度数は日本酒並みなんだよね。
基本的に材料や起こっている発酵現象は同じなんだけど、作り方に工夫があるんだ。
どぶろくの場合、米と麹を複数回に分けて加えていく複発酵という方式で、これによりアルコール度数が高いお酒が造れるのだ。
一度発酵させたものにさらに麹と米を加えてさらに発酵させ、というのを繰り返すわけ。

マッコリと同じく、発酵途上では二酸化炭素が出てくるので、発泡性なのだ。
密閉した容器で作らないと雑菌が繁殖するおそれがあるけど、適度にガス抜きしないといけないんだ。
さらに、発酵を止めないので、早く消費しないと引用に適さないものになるので注意が必要なんだって。
と言っても、現在は酒税法の関係で勝手にどぶろくを作ると密造酒になるので、自分で作ることはまずないと思うけど。

このどぶろくの状態のものを静置しておくと白い沈殿ができるのだ。
これがもろみで、こしてから乾燥させると酒粕。
さらにこしたものを濾過して、「火入れ」と言われる加熱処理で発酵を止めると清酒になるのだ。
すごいことに、日本ではすでに平安時代には濾過して、火入れしてある程度の透明度を持った日本酒を造っていたようなのだ!
この火入れも難しくて、あまり高い温度で加熱してしまうと風味も飛んでしまうので、風味を極力残すように発酵を止める必要があるんだよね。
それを温度計なんてない時代から技術の伝承で培ってきた技なのだ。
日本は酒造を通じてむかしからすぐれた醸造技術を持っているというけど、本当にすごいんだよね(笑)

2010/07/31

今年は緊縮?

今週、いよいよ民主党政権で始めてとなる国の予算のシーリングが公表されたのだ。
民主党政権は昨年9月に発足したので、概算要求までは自民党政権でやっていたんだよね。
その後に予算案の見直しなんてのをやっていたけど、最初から予算を作るのは今回がはじめてなので注目を集めているという分けなのだ。
で、注目されるのはよいけど、国の予算プロセスってそもそもどうなんだっけ?、というのが気になるところでもあるので、ちょっと勉強してみたのだ。

国の予算は、政府が予算案を作り、それを国会が承認して決まるのだ。
米国なんかだと予算は法律として作られる仕組みなので、大統領が予算教書でプロポーザルはするんだけど、実際の予算編成は、それを踏まえて議会スタッフが作るんだよね。
上下両院で可決したものに大統領が署名すると予算が歳出法という法律としてと成立することになるのだ。
これが米国の予算が政治主導で作られる、と言われるわけ。
ただし、実際には大統領府(ホワイトハウス)内にある行政管理予算局(OMB)が各省から出されている要求を精査して作られている予算教書は細部までよくできているので、そこに議会としての「味付け」をするという感じみたい。
とは言え、大統領直属の部局が予算を作るというのは、これまた日本と違うのだ。

一方の日本はどうかというと、憲法上、予算は法律とは別の扱いを受けていて、憲法第86条で「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」とあるので、必ず内閣が案を作成し、国会に諮る必要があるんだ。
法律の場合は議員立法が可能だけど、予算はそうはいかないわけ。
当然、国会の審議で修正はできるんだけど、多くの場合、政府の作った予算案がそのまま承認されるのだ。
ここは米国とはもっとも大きく異なるところだよね。

予算については憲法でもうひとつ規定があって、憲法第60条で衆議院の予算先議と優位性が規定されているのだ。
法案だと衆議院でも参議院でもどちらの議員から審議を始めてもよいのだけど、予算案については必ず衆議院から審議を始めないといけないのだ。
また、衆議院の議決の優先についても、法案と予算は扱いが違うんだよ。
法案だと閉会期間を除き、参議院が衆議院で可決された法案を受け取ってから60日以内に議決をしないと参議院が否決したと見なされ、さらにその後両院協議会でもまとまらなかったときは、衆議院で改めて議決をして、3分の2以上の賛成があれば法案は成立するのだ。
一方、予算はもっと簡便で、参議院が衆議院で可決された予算を受け取ってから閉会期間を除いて30日以内に審議をしないときは、衆議院で可決した予算が成立するのだ。
これは予算がないと国の仕事ができなくなることに配慮した規定と言われているよ。

ちなみに、日本の会計年度は4月から始まるけど、それまでに予算が成立しない場合は前年度予算をベースとした暫定予算が組まれるのだ。
すべての支出が止められると国の仕事がまったくできなくなるので、新しいことは始められないけど、定常的にしなければならないお仕事は前年度予算ベースでできるようにするという制度だよ。
これは経済全体が混乱するということもあって、さすがにここ最近では見なくなったけどね。

以上は政府が年末に予算案をとりまとめて国会に提出してからの話で、その前に政府部内で予算案をとりまとめる作業があるのだ。
その最初がこの前閣議決定された「平成23 年度予算の概算要求組替え基準について」。
いわゆるシーリングで、国が予算案を作るときの基本的な考え方や要求の上限を設定するものだよ。
これがないとみんな青天井で要求してしまって、予算が膨張の一途をたどり、後で調整もしにくくなるので、あらかじめ要求額はここまで、と一定の制限を設けるものなのだ。
自民党政権では「概算要求基準」と呼ばれていて、それが鳩山内閣ではいったん廃止されたんだけど、やっぱり上限を決めないと予算がふくらむ一方だということで、「概算要求組替え基準」という名で復活したのだ。

各省では、春くらいから予算要求に向けて検討をして、シーリングが示されたところから具体的に数字の調整に入るのだ。
で、それを8月いっぱいでまとめ、各省で作った予算要求が財務省でまとめられるのが概算要求。
この時点ではまだ予算の詳細がつめられていないので、あくまでもシーリングの枠内で大まかなところを示している、という意味で「概算」と言われるんだよ。
9月からは、財務省が各省にヒアリングをし、予算要求の査定が始まるのだ。
そうして財務省が調整した結果作られるのが政府予算案。
最近では財務省による調整だけじゃなくて、官邸主導の名の下に「特別枠」が設けられていて、各省が概算要求するときに減要求させて浮いた分を原資として、重点分野に再配分するのだ。
今回は、原則として対前年度1割減という深掘りで、それを原資とした「1兆円を相当程度超える額」を特別枠に設定し、政策コンテストを実施して国として重点的に対応すべき分野に予算を再配分するのだ。
政策コンテストが具体的にどういうものかはまだ決まっていないみたいだけどね(笑)

で、現在はシーリング枠が示されたところで、これから各省が要求の検討を行いい、財務省で概算要求がまとめられるわけ。
年末までの間に「政策コンテスト」があるわけだけど、その前に民主党代表選がはさまるから、けっきょくどうなるのかな?
秋以降の動向に注目なのだ!

2010/07/24

暑中お見舞い申し上げます

昨日は二十四節気の大暑。
梅雨も明けて晴れの日が続き、夏の間でももっとも暑い季節と言われる約2週間が始まるよ。
その後の立秋を過ぎると徐々に暑さも和らぎ、徐々に過ごしやすくなっていくのだ。
で、この時期の名物と言えば暑中見舞い。

暑中見舞いは一つ前の小暑から立秋までの約1ヶ月間の暑中のうち、梅雨明け以降に出すものなのだ。
直接相手を訪問することもあるようだけど、基本的には手紙を出すのが一般的だよね。
年賀状ほど広まってはいないけど、くじ付きの「かもめ~る」なんかも販売されているのだ。
むかしの人は通信手段が限られていたからこういう季節の行事を大事にしていたけど、携帯電話も含めていつでも簡単にコミュニケーションがとれる現代では徐々に失われつつある文化だよね。
だからこそ、大事な人に出したいものでもあるんだけど。

ちなみに、立秋を過ぎてから出すのは残暑見舞い。
一番暑い時期は過ぎたとは言えまだまだ暑いので、ということで相手を見舞うという分けなのだ。
立秋って7月中にあるので意外と早いんだよね。
そういう意味では気をつけないと暑中見舞いと残暑見舞いを間違ってしまうのだ(>_<)

狭義では、ウナギでおなじみの夏の土用の期間、つまり立秋までの約18日間が暑中で、その間に相手の体調を見舞うのだ。
広義の暑中は約1ヶ月だけど、その間でも特に暑いのが夏の土用なんだよね。
梅雨が明けるのもこのころで、本格的に暑さを感じる時期なので、体調を崩しやすいのだ。
いわゆる夏バテというやつで、そうやって体調を崩す人が多いので見舞うのが本来の意味だよ。
で、夏バテにならないように栄養をつけようとこの暑い時期にウナギを食べましょう、となるのだ。
土用自体は、立春、立夏、立秋、立冬のそれぞれの直前の期間のことなので、「土用の丑」と言っても春夏秋冬あるわけだけど、やっぱりウナギを食べるのは夏の暑い時期、暑中の土用というわけなんだよね。

このころに気をつけたいのは夏バテだけでなくて、土用波もそうなのだ。
夏の土用の時期に見られるのでそう呼ばれているんだけど、一見おだやかな海なのに土用波にさらわれて沖まで流されてしまう、なんて事件がよく起こるんだよね。
土用を過ぎてからの海水浴には注意が必要なのだ。
この土用波、むかしから知られていたんだけど、その正体ははるか遠洋にある台風が起こす波のうねりが伝わってきたもの。
三角に波頭がとがっている並みは波長も短く、そんなに遠くまでとどかないのだけど、波頭に丸みがあって、波長が長い波のうねりは減衰しづらくて遠くまで届くのだ。
秋の手前が台風のシーズンだけど、やがってやってくる台風は遠洋ではすでに発生していて、その影響が土用波として先に来ているのだ。
夏の最盛期は太平洋高気圧が発達しているので台風が近づけなくてなかなか上陸しないだけで、南洋では熱帯性低気圧がたくさん発生しているのだ。

いずれにせよ、土用というのは季節の変わり目。
特に夏の土用は、体調を崩したり、気候も大きく代わったりするので、いろいろと気をつけたいのだ。
そういうときに、身の回りのお世話になっている人を気遣うっていうのはよい文化だよね。
すたれさせるにはおしいのだ。

2010/07/17

いかろす君もびっくり?

先日、ソーラーセイルを使って金星に向けて航行中の小型ソーラー電力セイル実証機(IKAROS)がガンマ線バーストを観測したのだ。
これは太陽よりもはるかに質量が大きな恒星が爆発してブラックホールになる際に放出されると考えられている放射線で、うまく観測できれば、更なる宇宙の謎の解明につながるんだとか。
で、このニュースを聞いて思い出したのが、ガンマ線とX線の違い。
両方とも波長がとても短い電磁波なんだけど、いまいち違いがよくわからないんだよね。
というわけで、改めて調べてみたよ。

ガンマ線は放射線の一種で、ヘリウム4の原子核のアルファ線、電子のベータ線に続いて見つかったもので、正体は原子核崩壊に伴い出てくる波長の短い電磁波だったのだ。
これは原子核内のエネルギー準位の遷移によるもので、アルファ崩壊で原子番号が小さくなったり、ベータ崩壊で陽子と中性子の比率が変わったりした後、原子核内に残っている余分なエネルギーが電磁波として放射されるものなんだって。
ま、意味不明だよね(笑)
ガンマ線は電磁波だけに放射線の中でも一番遮蔽がしづらくて、完全に遮蔽するには10cm以上の鉛の板がいるのだ。
アルファ線なら紙1枚で遮蔽できるし、ベータ線なら1cmのアクリル板で遮蔽ができるので大きな違いなのだ!
電離作用は弱いけど、透過力が高いのでめんどくさいんだよね。

一方、X線は高速の電子が金属などのターゲットに当たったときに発生する電磁波で、軌道電子の遷移に由来するものなのだ。
一番外側のエネルギーの低い軌道の電子がはじき飛ばされ、そこによりエネルギーの高い軌道にいる電子が落ちてくるとき、エネルギーの差分が電磁波として放出されるわけ。
電磁波を当てて励起した後に基底状態にもどるときのエネルギー準位の遷移で発生するものは相対的にエネルギーの差分が小さいので可視光領域になって、それは「蛍光」と呼ばれているのだ。
外から高速電子を当てたり、X線くらいのエネルギーの大きな電磁波を当てたりする場合はエネルギーの差分が大きくなって、波長の短いX線が出てくるのだ(X線を照射したときに出てくるX線は蛍光X線と呼ばれるよ。)。
このとき出るX線(蛍光X線を含む。)は原子核の種類ごとに波長が決まっているんだけど、特性X線と呼ばれ、未知の物質の同定にも使われるんだよ。
「はやぶさ」のカプセル内で採取された微粒子が小惑星イトカワ由来のものかどうかを確認する際にも蛍光X線分析が使われるみたい。

ちなみに、放射線の遮蔽というとすぐに鉛板が思い浮かぶけど、ベータ線がなまり板に当たるとX線が出てしまうので、先にアクリル板で遮蔽しておく必要があるのだ。
放射線防護をする場合(?)には、まずアクリル板、その次に鉛板の順だよ!
間違えるとガンマ線は遮蔽していても、新たにX線が発生していて被爆してしまうのだ(>_<)

X線の発見者はご存じドイツのレントゲン博士で、その功績でノーベル賞をとったのだ。
未知の電磁波と言うことで「X]線と名付けたんだって。
で、調べてみると波長の短い電磁波だったわけだけど、さらに調べてみると、実はガンマ線と波長領域が重複していたのだ!
これが混乱のもとで、発生機構の違いで定義しているので、電磁波の波長だけを調べてもどっちがどっちかは区別できないんだよね。
ただし、X線よりさらに波長が短いものを便宜的にガンマ線と呼ぶこともあるようなのだ。
こういうことをするから混乱に拍車がかかるんだけど・・・。

X線はレントゲン写真に使われるほか、いわゆる非破壊検査や結晶解析なんかに使われるのだ。
このときは金属製のターゲットに電子線を当てるX線源が使われているんだよね。
ガンマ線の場合は、放射性同位体のコバルトから放射されるものがガンマ線滅菌や放射線医療、放射線育種(放射線を照射して行う品種改良)などに使われるんだ。
工業的なX線写真と呼ばれるものの中にはガンマ線を当てて撮影されているものもあるようだよ(笑)

というわけで、どっちも波長の短い電磁波なわけだけど、出自も違うのできっちり区別してあげたいものなのだ。
他の電磁波の場合は波長又は周波数で一義的に定義されるからややこしいんだよね。
いっそのこと、波長領域で区別するときは「第三の名前」をつけてしまった方がすっきりするのかも。

2010/07/10

電波でさぐれ!

最近は天気が不安定だよねぇ(>_<)
前の日の予報が当たらないことが多いのだ・・・。
さすがに当日予報はそんなにはずれないけど。
で、そんな中でよく耳にするようになったのは雨レーダーだよね。
電磁波を使って雨や雪の位置や密度を観測しているんだそうだよ。
そこで気になったのがレーダーの原理。
というわけで、いつものように少し調べてみることにしたのだ。

レーダーは、電磁波を対象物に向けて発信し、その反射波を測定することで対象物までの距離や方向を調べるもの。
Radio Detection and Ranging(無線探知測距)の略なんだよ。
電波法施行規則という総務省令の第2条第1項第32号では、「決定しようとする位置から反射され、又は再発射される無線信号と基準信号との比較を基礎とする無線測位の設備をいう」と定義されいるんだって。
よくテレビとかで丸い画面を時計回りにまわりながら位置を調べている装置があるよね。
あれがレーダーで測定した位置と方向を画面表示にしたもので、レーダーを全方向に加点させながら照射して、それぞれの方向のどの位置に電磁波を反射するものがあるかどうかを調べているのだ。
大きな船や飛行機の管制塔でくるくる回っているアンテナのやつだよ。

これと同じよな原理が水中で使われるソナー。
こっちは水中で音波を発信して、その反射波を分析して対象物までの位置と距離を測るのだ。
Sound Navigation and Rangingの略でソナーなんだって。
こっちも似ているね(笑)
水中では電磁波が遠くまで届かないので、今でもんぱを使ったソナーが重要なんだよ。
電磁波に比べると波の進む速度が遅いから、レーダーよりはゆっくり探知することになるのだ。
潜水艦の映画でぴ~ん、ぴ~んと音が時々するのはソナーの音だよ。

で、レーダーにもどって、使う電磁波の話。
主に使われるのはマイクロ波とかミリ波と呼ばれる電波。
波長がmm、μmのオーダーなのでそう呼ばれるんだよね。
こたつなんかであたたかい(?)遠赤外線のすぐ外側にある電波だよ。
でも、この波長でけっこう調べられるものが変わってきて、波長が長い(=周波数が低い)と電波の減衰も少なくて遠くまで探知できるんだけど、波長が長いので分解能が低いのだ(分解能はどれだけ離れていれば2つのものが区別できるか、という指標だけどこれは波長に比例するのだ。)。
一方、波長が短い(=周波数が高い)と分解能は上がるけど、空気中の水分や雨粒などに吸収・反射され、減衰が大きいので、遠くまで調べられないのだ。
というわけで、調べる用途ごとに波長を変えて使っているんだよ。

最近の天気予報で出てくる気象レーダーは地上に置いてあるマイクロ波のレーダーで、パルス状のマイクロ波を照射し、雨や雪で散乱される電波を受信するんだ。
で、照射してから散乱波を受信するまでの時間計ると距離がわかるというわけ。
散乱波の強度を調べると雨や雪の密度もわかるので、降水量もわかるんだ。
各地点のデータを地図上に当てはめていくと、いつも見るよな雨レーダーの画像になるよ。
建物などの障害物があるとそれ以上先が調べられないので、通常はビルの上とか何もないところにあるのだ。
富士山レーダーは山の上から遠くまで見わたせるようになっているよ。
ちなみに、より波長が短いミリ波を使うとより小さい粒子を観測できるので、霧も見られるんだって。

さらに、このレーダーを航空機や人工衛星に搭載することもあるのだ。
それが合成開口レーダー(SAR)と言われるもの。
レーダーで分解能をあげようとするとどうしてもアンテナを大きくする必要があるんだよね。
でも、そんな大きなものは空中や宇宙に持って行けないので工夫されたのがこの方法。
移動しながら電波を発信し、反射波を受信するんだけど、ドップラー効果による波長のずれを計算して合成することで、複数のアンテナを並べたよな状態をバーチャルに作り出せるようになるのだ。
小さなアンテナ(開口)を合成して大きなアンテナ(開口)を実現するので合成開口(Synthetic Aperture)と言うのだ。

これもやっぱり電波の波長によって特徴があって、日本の「だいち」に搭載されているものはL波と呼ばれる波長の比較的長い電波を使うSARで、中程度の分解能だけど一度に広範囲を観測することができるのだ。
一方、海外の偵察衛星なんかに搭載されているのは波長の比較的短いX波を使うSARで、こっちは公分解能で細かくわかるけど、一度に狭い範囲しかわからないのだ。
こっちもやっぱり得意不得意があるので、用途によってどの波長のSARを使うのかを変えるんだよ。

というわけで、もっと難しい原理かと思っていたら意外と単純。
でも、最近は使い方も進化していてもっと複雑なものもあるみたい。
よく耳にするものだから、この程度知っておくとよいかもね。

2010/07/03

緑黒い卵

職場の歓送迎会で中華の食べ放題に行ったんだけど、事前にメニューが配られていたので、行く前からみんなで何を食べるのかけっこう盛り上がっていたのだ。
中でも、なぜか人気があったのが皮蛋(ピータン)。
苦手な人も多いけど、好きな人は「絶対食べたい!」っていう意見。
においにくせはあるけど、納豆やくさやと同じように人気があるところには人気があるのだ。
でも、ピータンってなんなんだっけ?、ということがよくわかっていなかったので、ちょっと調べてみたよ。

ピータンがアヒルの卵から作られていることは割と知られているけど(鶏卵に比べて少し大きいよね。)、一般には発酵しているかのように受け取られているように感じるのだ。
ところがどっこい、ピータンは「熟成」させているだけで「発酵」させていないのだ。
微生物の力を借りているわけではないんだよ。
魚の干物やハムなどの熟成に近い感じかな?

ピータンの作り方は変わっていて、石灰を混ぜた泥をアヒルの卵の表面に塗り、卵同士がくっつかないように籾殻をその上にまぶし、冷暗所において2~3ヶ月熟成させるのだ。
泥を落とすと殻も黒くなったピータンができあがっていて、殻をむいても黒いのだ(笑)
うまくいくと、白身(だった部分)の表面には白い針状の結晶が浮き出ているんだけど、それは熟成の過程で出てきたアミノ酸の結晶。
でも、殻をむくと強烈なアンモニア臭と硫化水素臭(いわゆる卵の腐ったにおい)がするので注意!

実際にこの熟成の過程で何が起こっているのかというと、タンパク質の変性と加水分解が進行しているのだ。
石灰中のアルカリ成分が徐々に卵の内部に浸透していくと、卵の中のタンパク質が変性して固化してくるんだよね。
ゆで卵が熱によるタンパク質の変性で固まるのと同じ。
変性の仕方が違うので、ゆで卵に比べて少し過多さが違うのだ(ピータンだと白身の部分がゼリー状だよね。)。
で、編成と同時に加水分解も起きていて、タンパク質がペプチドに、ペプチドがアミノ酸にとどんどん分解されていくよ。
このとき、卵の中の水分が使われるので、少し中身が減ったように(殻から浮いているように)見えるわけ。
ちなみに、ここで溶けきれなくなったアミノ酸が析出したのが殻をむいた時に見られることがある結晶なのだ。

酸性条件下での加水分解だと、ペプチドからアミノ酸になるくらいで止まるんだけど、アルカリ性条件下だとさらに加水分解が進んで、アミノ酸も分解されてアンモニアも発生してくるのだ。
これがにおいの原因その1。
さらに、システインやメチオニンなどの硫黄を含むアミノ酸が加水分解されると硫化水素が出てくるんだ。
これが腐卵臭と言われるもので、においの原因その2だよ。
アンモニアも硫化水素もしばらくすると空気中に拡散していくので、においが苦手な人は殻をむいてしばらく置いてから食べるとよいのだ。

さらに、硫化水素はにおいだけでなくて独特の色の原因にもなっているんだよ。
ピータンの黒い色の主な原因は硫化鉄の色。
ゆで卵もゆですぎると黄身のまわりが緑~黒色に変わることがあるけど、それは熱分解で発生した硫化水素と卵の中の鉄分が反応してしまっているのだ。
それがもっと進んだのがピータンで、白身は主に硫化鉄の色なので黒~褐色、黄身はもともとの黄色と混ざるのでもっと深い色になるというわけ。
微量に含まれている亜鉛や銅の硫化物の色も混ざるので、もっと複雑な色になるんだけどね。

さらに、生の状態ではもう少し黄身は透明感があってつやつやだけど、ピータンの黄身はゆで卵と同じように不透明なくもっと感じになるのだ。
これは、リン脂質のレシチンとタンパク質がうまくまざって乳化して、水の中にきれいに分散していたものが、タンパク質の変性のせいで脂質が分散できなくなって浮き出てしまうため。
マヨネーズを作るのに失敗して油分と水分が分離してしまっているような状態なのだ。
でも、リン脂質や脂肪分がアルカリ性条件下で加水分解されると、いわゆる「けん化」という現象が起こって、界面活性剤ができるんだよね。
すると、この界面活性剤が水と油を結びつけて入荷させるのだ。
なので、ピータンの黄身は固まっている部分ととろとろの部分があるんだよ。
ゆで卵の場合は熱変性が進めないうちに取り出してしまうのが半熟で、ピータンの黄身のとろとろとはちょっと様相が違うのだ。

というわけで、意外とピータンって科学的に考えてみるとおもしろいんだよね。
それと味の好みはまた別だけど(笑)
鶏卵で同じように石灰入りの泥を塗りつけてみて、経時的変化を追ってみるなんていうのも、ピータン好きの家庭では夏休みの自由研究としておもしろいかも。

2010/06/26

吹けば飛ぶような?

最近ちょっと困っているのがゴミ捨て。
ボクの住んでいる地域では、可燃ゴミと資源ゴミがメインで、洗ってもとれないような脂などが付着したプラスチックは可燃ゴミになり、洗ってきれいになるプレスチックは資源ゴミ。
当然、ペットボトルや空き缶、ビンも資源ゴミ。
で、はたと困ったのがスプレー缶。
さすがに空き缶とは扱いが違うんだろうけど、と思っていろいろ見ていると、どうも超レアものの「不燃ゴミ」だったようなのだ。
カテゴリはなくなっていたと思ったんだけど、電池や電球、蛍光灯などと並んで、高性能な焼却炉でも燃やせないゴミとして残っているみたい。

で、このスプレー缶、なんで不燃ゴミになるかというと、中に液化ガスが充填されているからなんだよね。
捨てる前にできるだけ中身を空にして、とは言っても、確実に履行されるわけではないので、中身が残った状態で燃やそうとすると缶が破裂して危険なのだ!
むかしは缶に穴を開けて捨ててください、なんて言われた時期もあったけど、ペットボトルでさえラベルをはがして、軽く水洗いをしてという下処理せずに出す人が多いので、それが実行されることは期待できないのだ(>_<)
というわけで、不燃ゴミになっているみたい。

このスプレー缶に入っている液化ガスについては、一時期フロンが問題になったよね。
一番最初は液化石油ガス(LPG)が使われていたようなんだけど、これは圧力をかけると簡単に液状になるし、石油の副産物として入手もしやすいから。
ところが、可燃性のガスなので扱いがむずかしいのも事実。
むかしは殺虫剤のスプレーなんかに使われていたけど、火気厳禁とはいいながら事故があったりしたのだ。
火が近くにあると火炎放射器のようになるからね・・・。

そこで出てきたのがフロンガス。
簡単に液化し、かつ、不燃性、無味・無臭で、人体にも無害というわけで使い勝手がきわめてよかったので一気に広まったのだ。
ところが、そこにも落とし穴が。
フロンは空気中に拡散した後、徐々に上昇していって、上空のオゾンと反応してしまい、有害な紫外線から地上を守っているオゾン層を破壊する性質があることがわかったのだ。
そこで使用が見直され、もともと気をつけて使われるようなところでは可燃性のLPGにもどり、そうでないところは代替フロンと呼ばれるものが使われ始めたんだよね。
ところが、この代替フロンも強力な温室効果ガスであることが判明したので、やはり使いづらいものになってきたんだよね。
で、最近では、もともと空気中にあるような二酸化炭素や窒素、或いはそのままの圧縮空気が使われているみたいだよ。

スプレーの中には、高圧をかけて液化してあるガスが詰め込まれているんだけど、これはノズルから噴射されると一気に常圧にもどされて気化するのだ。
そのとき爆発的に体積が膨張して拡散していくだけ。
ノズルの形状で前方向にだけ広がるように設計されているので、ぷしゅ~と吹き出してくるのだ。
このとき基本的には断熱膨張となるので、スプレーから出てくるガスは冷たいのだ。
最後にガスを出しきろうとがんばると缶が異様に冷たくなるのもそのせいだよ。

中身の成分は液化されて封入されているガスに溶かし込んであるか、懸濁された状態。
噴射されて液化ガスが気化するときに一緒に膨張しながら細かい粒子となって拡散されるのだ。
もともと液化ガスに溶けているものなのならそのまま噴射してかまわないんだけど、懸濁してあるだけのものだと、「よく振ってから」ということになるわけ。
均一に分散した状態で吹き出させないと缶の中にその成分だけが残っていってしまうのだ。

実は、同じような原理がカフェインの抽出に使われているんだよね。
二酸化炭素に高温で圧力をかけていくと、気体でも液体でもない超臨界流体という状態になるのだ。
気体の拡散性と液体の溶解性を持ち合わせていると言われていて、液体のようにもどを溶かすけど、粘性がなく広がっていくものなのだ。
この二酸化炭素の超臨界流体とコーヒーを混ぜると、コーヒーの中のカフェインが二酸化炭素中に溶け出すんだよね。
で、コーヒーの液体自体は混ざり合わないので、そこからコーヒーを取り出すと脱カフェイン(デカフェ)のコーヒーができるのだ。
これを使っているのがデカフェのインスタントコーヒーだよ。
カフェインが溶け込んだ超臨界流体の二酸化炭素を常温常圧にもどすと二酸化炭素は気体にもどるので、そこにはカフェインの粉末が残されるのだ。

スプレーからはだいぶ外れたけど(笑)、液状化したガスに溶かし込んで、というところは同じだよね。
イメージ的に普通気体だと思っているものに溶かすので不思議な感じがするのだ。
水もちょっと温めればすぐに蒸気になるから、それを考えるとある程度わかる部分もあるんだけどね。

2010/06/19

イオンの力ですいすい

工学実験実証探査機(MUSES-C)の「はやぶさ」が6月13日に地球に再突入し、7年にわたる宇宙の旅を終えたのだ。
機体本体は大気圏突入とともに分解し、燃えてしまったけど、それはきれいなファイヤーボールとして観測されているよ。
多くの流星の下の方でひとつだけ分かれて光っているのが熱シールドに守られた着陸用カプセル。
うまくいけば、試料回収カプセルには小惑星イトカワの砂が入っているかもしれなくて、それを地上に届けるものなんだ。
入っていなくても、7年にわたって約60億kmの宇宙の旅をしただけでもすごいんだけどね。

で、そのたびを支えたのが我が国のNECが開発した電気推進系。
最近有名になったイオンエンジンで、電気の力でイオンを加速して推進力にするものなのだ。
なかなか実用までは道のりが険しいと言われていた技術なんだけど、今回の「はやぶさ」の成果で長時間の運用実績が蓄積し、惑星間航行に使えることが証明されたんだ。
トラブルはいくつもあったけどね(笑)

通常、宇宙探査機の推進力というとヒドラジンなどの化学燃料を燃焼させ、その熱で爆発的に膨張した排気ガスを噴射することで進む化学推進系が一般的なのだ。
でも、宇宙には空気がないから、燃焼させるためには酸化剤を年長と一緒に積んでおく必要があるし、遠くに行くためには燃料もたくさんいるので、どうしても重くなってしまうんだよね。
NASAなんかは原子力電池と言って、放射線を出しながら原子崩壊する放射性同位体(RI)を熱源として積んで、そのエネルギーを推進力に換えている探査機も作っているよ。
外惑星探査のボイジャー・シリーズや木星探査機ガリレオ、土星探査機カッシーニ、冥王星の先まで行っているニュー・ホライズンズなんかはみんなそうで、燃料としてプルトニウムを積んでいるのだ!
熱源となるRIはそんなに大量じゃなくてよいので探査機も小型化できるし、何より、太陽から遠ざかると太陽光発電が使えなくなるので有効な手段なんだ。

でも、今回「はやぶさ」で採用されたのは、イオンエンジン。
火星の手前の小惑星が行き先なので、太陽光発電で発電しつつ、その電気を使ってイオンを加速するのだ。
具体的には、燃料として積んでいる希ガスのキセノン(Xe)にマイクロ波を放射し、電離させるんだって。
で、そこで発生したキセノンの正イオンに電圧をかけ、後方に加速して噴射するのだ。
でも、このときに噴射口付近で同じく電離した電子を中和機から噴射して電気的に中性にしてから噴射する必要があるんだ。
そうしないとどんどん本体が負の電荷を帯びていってしまい、まわりが真空で接地(アース)できない宇宙ではその電荷がそのまま残ってしまうのだ。

さらに、電子を噴射することで全体としてキセノンの噴射方向を絞ることができて、そのままだと正の電荷同士の反発力で広がっていろんな方向で出てしまうものを後方に絞って噴射できるようになるんだよ。
このとき、電気的には中和しているけど、キセノンはプラズマという状態になっているのだ。
プラズマは、正イオンと電子が電離している状態のガスで、よく「はやぶさ」のイオンエンジンの絵で青く光っているものがあるけど、あれがプラズマ発光の色だよ。

この方法だと、加速自体は電気の力なので、後は燃料の質量と加速された速度をかけた運動量の反作用分だけ前に進むのだ。
とは言え、比推力(単位重量当たりの推進剤で単位推力を発生させられる秒数、推進剤の効率の指標だよ。)は高いものの、加速に長時間を要するのだ。
つまり、時間をかけてちょっとずつ加速をしていくというもので、一気に爆発的な推力を産み出す化学エンジンとは大きく特長が異なるのだ。
これを長距離の宇宙航行に使おうという発想こそが「はやぶさ」では斬新だったというわけ。

これまでは静止軌道にある通信衛星の姿勢制御のためのスラスタに使われている例もあったようなんだけど、それも化学エンジンのスラスタが一般的だったみたい。
化学エンジンだとその分燃料をたくさん積んでおく必要があるんだけど、イオンエンジンはまだ動作が不安定で、扱いも難しいというのが原因みたい。
今回も長期間の運転は実現しているけど、途中で止まって、最後は2つの不調になったエンジンの生きている部分を組み合わせて使うという荒技まで使っているんだよね。
そういう意味ではまだまだ課題が残っていそうなのだ。

今回の「はやぶさ」の場合は、イオンエンジンによる加速だけじゃなくて、実際には惑星の重力を活用したスイングバイもやっているので遠くまで行けたんだよ。
何にせよ、頭を使ってより小さい探査機でどこまで遠くに行って帰ってくるか、という発想がよかったのだ。
そこがまさに「工学実証」だったんだけどね。
これである程度実証されたわけで、次はどういう展開になるか、ということなのかな?

2010/06/12

USI

ここのところ口蹄疫の問題が大きくなっていて心配だけど、そこでどうしても気になったのが「エース級種牛」という言葉。
エース級になるには、肉質がよいだけでなく、性格が穏やかで育てやすい、ということも必要なんだって。
なかなか畜産の世界も奥が深いなぁ、と感心したのだ。
そこで、今回は少し牛肉について調べてみたよ。

ボクもそうなんだけど、スーパーで牛肉を買う際にまず目がいくのが国産かどうか。
BSE問題以来国産指向が強まっているよね。
ボクもそんなに量を食べるわけでないので、多少高くても「国産牛」の表示があるものを買っているのだ。
ところが、「国産牛」とあっても、日本生まれの牛じゃないことがあるんだって!

基本的に日本国内で生まれ、肥育された牛は国産牛なんだけど、外国で育った牛でも、日本で3ヶ月以上肥育されると国産牛という表示になるそうだよ。
さらに、日本でと殺・精肉すると国産牛と言われることがあるそうなのだ。
そうすると、外国でのみ育て、外国でと殺・精肉されてから輸入されるのが外国産牛になるのだ(>_<)
これがからくりなんだね。
なので、国産牛というのはそんなにあがめ奉るようなものではないようなのだ。

一方、もっと高級品として見かけるのが和牛。
こっちは牛の品種のことで、黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の4種類と、この間の交雑種のことを指すのだ。
品種だけの話で、ホルスタイン種とかジャージー種とかと同じで、どこで育てても和牛なんだけど、実際に流通している和牛のほとんどは国内産。
理論的には外国で育てた和牛も存在するはずだけど、食肉流通業界の自主規制と農林水産省の指導(ガイドラインで国内で飼育されたものであること、という条件があるのだ。)により、日本国内では外国産牛が和牛として流通することはまずないみたい。
なので、和牛と表示されていればほぼ間違いなく日本で育てられた牛。
こっちは安心して帰るわけ、高いけど(笑)

さらに牛肉の表示で書いてあるのは等級。
A3だとかA4だとかあるよね。
アルファベットは歩留まりの等級でA~Cの三段階で、Aが最高級。
歩留まりというのは、冷蔵庫に吊してある枝肉と呼ばれる状態から、各部位を切り出すときの割合で、等級が高いものほど多くとれるというわけ。
早い話が肉付きがよいのだ。
後ろの数字は肉質の等級。
こっちはさし(脂)の入りや光沢、やわらかさ、しまりなどを総合的に判断するみたい。
いわゆる霜降りの特上肉だと5で、赤身に脂が所々はいる固い肉は数字が小さいのだ。
欧米ではそういう赤身肉の方が好まれるんだけどね(笑)

2004年12月からは、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(牛肉トレーサビリティ法)の施行によって、国産牛肉には10桁の個体識別番号がついているのだ。
これによってその牛がどこで生まれ、どこで育ち、どこで精肉されたかなんていう履歴がわかるようになっているだって。
小間切れや挽肉などの一部の例外を除き、インターネットで調べればわかるそうだよ。
携帯でも見られるそうなので、国産牛表示で疑問に思ったらこういうのを調べてみるのもよいかも。
ボクは面倒なのでやらないけど・・・。

というわけで、牛肉の見方ががよくわかったのだ。
これからはスーパーの食肉売り場でも気をつけて見てみようかな?
とりあえず和牛を飼えば安全そうなので、急いでいてお金に余裕があるときは何も考えずに和牛を買うけど(笑)

2010/06/05

夏期軽装励行の候

うちの職場では6月から「夏期軽装の励行」、いわゆる「クール・ビズ」が始まったのだ。
ノージャケット、ノーネクタイに開襟シャツというラフなスタイルが認められるわけ。
ボクなんかはお仕事中はネクタイをしていないと落ち着かない方なので軽装にならないんだけど、かなりのマイノリティ。
なぜかみんなネクタイを外したがるんだよね(笑)

最近ではかなり浸透してきた感があるクール・ビズだけど、始まったのはつい最近の2005年。
小泉政権下で地球温暖化対策のひとつのシンボルとして開始されたんだ。
小泉元総理から「軽装による冷房の節約」についてアドバイスを受けた時の環境大臣の小池百合子さんが、持ち前のアピール戦術を使ってみごとに認知度を高めたんだよね。
閣議でも閣僚が沖縄の半袖開襟シャツの「かりゆし」を着るなんて慣例もできていて、この前は亀井大臣だけスーツにネクタイと「造反」したのだ。
前からクール・ビズをだらしないと批判していたんだよね。

でもでも、もともとはネクタイを外すことが目的ではなくて、冷房の設定温度は28度に上げる代わりに、その環境下でも快適に過ごせる服装にしましょう、ということ。
必然的に室温が上がるので、開襟シャツでいいよね?、というものなんだよ。
中央官庁なんかでは確かに冷房の設定温度を上げて、それに合わせてクール・ビズにしているんだけど、けっこうネクタイを外すだけ、と思っているところが多いような・・・。
冷房に使う消費電力を減らすことが目的なので、本当はそれでは困るのだ!

これに対してはネクタイ業界からは当然批判が出ていて、スーツの売上げも下がったようなんだよね。
でも、逆に開襟シャツ、特にクール・ビズ用の少しおしゃれな男性ものは売れ行きがよくなっているのも確か。
もともとクール・ビズという言葉自体も服飾メーカーのグンゼが公募で提案したものなんだとか。
どのみちスーツやネクタイは冬に必要だから、開襟シャツの新規需要が伸びた方がよいのかな?
夏用の薄手のスーツは売れなくなるけど。

これが一気に広まったのは小池大臣の手腕もあるんだけど(宣伝上手だからね。)、それ以上に、業界からの支援もあったからなのだ。
グンゼのようなクール・ビズのスタイルを売る服飾メーカーはもとより、電力会社からの賛同も得られていたのだ。
もともと電力会社では夏の電力ピークを抑える取組をやっていて、それにこれが合致したわけ。
電力会社は、夏の最大ピークを満たせるように発電所などの設備を整える必要があるんだけど、ピーク時にしか使わないから余剰な設備でもあるんだよね。
ピークが抑えられれば、設備投資に回す資本が節減できるので、ピークカットにむかしから取り組んでいるのだ。
でんこちゃんも冷房の設定温度を少し高めにしましょう♪って宣伝してたよね。

この差が如実に出たのは、クール・ビズと対照的なウォーム・ビズ。
冬に暖房の設定温度を下げて、その分あたたかい格好をしようということなんだけど、こちらは言葉自体もあまり普及していないのだ。
電力会社からすれば、冬は電力設備に余裕があるので、別に電力消費を抑えてもらう必要がなく、むしろ、電気を使ってもらった方が売上げも伸びるし、発電所の投資効率もよくなるので、このウォーム・ビズには乗ってこなかったのだ。
服飾業界としても、ベストやセーター、ひざかけなんかが売れるにしても、開襟シャツのように毎日変えるものでもないので、そんなに売上げが伸びないんだよね・・・。
というわけで、ウォーム・ビズの方は業界があまり乗ってこないので普及しないというわけ。

コンセプトは同じなのに、おもしろいものだねぇ。
ちなみに、クール・ビズのはるか前に、省エネルックという半袖のスーツを着ましょう、というものもあったのだ。
羽田元総理でおなじみだけど、はっきり言ってかっこわるいということで当時としてもほとんど浸透しなかったんだよね(笑)
そこ行くと、クール・ビズは打ち出しがよくて、おしゃれなものも出てきているので続いているのだ。
やっぱりそういう部分も大事なんだね。
あとは、それに合わせてしっかりと電力消費の節減をしてもらわないと!

2010/05/29

Sail away to the Universe

5月18日に金星探査機「あかつき」(Planet-C)と一緒に、小型セーラー電力セイル実証機「IKAROS」が打ち上げられ、現在のところ、順調に航行しているようなのだ。
宇宙で帆を拡げて太陽風を受けて広い宇宙を航行しようというものなのだ。
太陽系大航海時代の幕開け?
とにかく、これから幕を展開して金星を向かうようなので、動向が気になるのだ。
で、もうひとつ気になるのが原理。
ということで、調べてみたよ。

まずは普通のヨットが進む原理から。
ヨットも帆を拡げ、そこに風を受けて進むわけだけど、大風の日に背中を押されて前のめりになる、なんていう単純な原理ではないのだ。
ヨットは、風が吹いてくる方向に対して斜めにしか進めないんだよ!
風に後ろから押されているのではなくて、斜め前から吹いてくる風を帆に受け、そこに発生する揚力を推進力としているのだ。

ヨットの帆は、風を受けるとふくらむけど、そこがミソ。
すると、ふくらんだ方とふくらんでいない方で流れる空気の速度が変わり、密度の差が生まれるわけ。
ふくらんでいる方はより長い距離を空気が進むことになるのでそれだけ速く、速度が速いと空気の密度は低くなるのだ。
すると、密度の高い方から低い方に対して「揚力」が発生するわけ。
※俗に飛行機が翼に発生する揚力で浮いている、と言われるのと同じ原理だよ。

帆は風を受けているので、基本的に風が吹いていく方向にふくらむため、風向きと逆の方向に揚力が発生するのだ。
そのままだと風が吹いてくる方向に進みそうだけど、そうではないのだ。
ヨットの船底には進行方向に立て板が差し込まれていて(センターボードと言うのだ。)、これによってヨットの進行方向以外の揚力の成分(つまりヨットを「横」方向に動かそうとする力)が打ち消されるんだ。
そうすると、揚力の進行方向成分のみが残って、前に進むというわけ。
さらに、センターボードの船尾側はいわゆる「舵」になっていて、ここを動かすと進行方向が少しだけ変えられるんだよ。
でも、ヨットの場合は帆で風を受ける向きを変えれば進む方向が変えられるのだ(ウィンドサーフィンだと帆の向きだけで進行方向を変えることになるよ。)。
帆は風が吹いてくる方向に立てなければ帆がふくらまないから揚力が発生しないだけど、完全に風向と並行にしてしまうとまったく揚力が発生しないので、こういう仕組みが必要なんだ。

ヨットがわかったところでIKAROSのソーラーセイルにもどると、実は全然原理が違うんだよね(笑)
ソーラーセイルは強風の日に後ろから押される、というのと全く同じで、太陽風による光圧によって押される力を利用して前に進むのだ。
帆はいわゆる鏡みたいなもので、これに太陽風である光が当たると反射するんだけど、そのときに帆を後ろに押す力がかかるのだ。
進行方向の後ろ側に光を反射させるとスピードアップするし、逆に進行方向に光を反射させるとスピードダウンする仕組みなんだよ。
ヨットのように帆がふくらんでそこに揚力が、というわけではないんだね。
単純と言えば単純。
地上では太陽の光が当たってもあたたかいなぁ、当たっているなぁ、くらいにしか感じないけど、宇宙空間ではそれなりに強い力みたいだよ。
太陽の近くにいれば、という話で、当然太陽から遠く離れれば弱くなるけど。

光圧という概念が発見されてから、構想自体はあったようなんだけど、軽量でありながら広く拡げられ、それなりに強度もある薄膜の鏡面というのが技術的に難しくてずっとできなかったのだ。
それが炭素繊維などの材料技術が進んでIKAROSにつながったというわけ。
さらに、IKAROSの場合は、その膜の表面が太陽電池になっていて発電もできるのでソーラー電力セイルと言うんだよ。
将来的にはそこで発電した電気で「はやぶさ」で使っているようなイオンエンジンをふかそうという構想もあるのだ。

今でも発電した電気は姿勢の制御に使っているのだ。
膜の表面には電気を通すと「曇る」機能がついた箇所があって、そこを曇らせると光が鏡面反射でなく乱反射をするようになるので、光圧が弱くなるのだ。
例えば、右側だけ曇らせると、左側により強く光圧がかかることになるので、左に傾くことになるんだ。
これで光の反射方向を制御できるので、加減速ができるようになるんだ。
なかなかかしこいよね。
これを使うことで、一切推進剤を使わず、太陽の光の恩恵だけで宇宙を旅しようというわけ。

とは言え、まだ帆が開いていないのでなんとも言えないんだけど(笑)
できれば、ばっちり帆を拡げ、広い宇宙を太陽の光だけで航行してほしいものなのだ。
ツイッターでたまにつぶやいているようなので、関心のある人は応援しよう♪

2010/05/22

仰げば尊し・・・

ボクは前から甘いものが好きなんだけど、最近気になってきているのは和菓子。
ようかんやまんじゅう、大福なんかはむかしから好きだったんだけど、気になり始めたのはいわゆる「季節の和菓子」なのだ。
洋菓子もカラフルだったり、かわいいデザインで見た目がよいけど、和菓子はシンプルなデザインながら洗練された美があるような気がするんだよね。
甘すぎない、上品な甘さも魅力的なのだ。
というわけで、今回はそんな和菓子についてちょっと調べてみたよ。

ここでボクが言及している和菓子というと「ねりきり」。
白あんに求肥やつくね芋を加えて練った生菓子だよ。
もともとの色は白いので、これにクチナシや食紅などのむかしながらの色素で淡い色をつけていくのだ。
中に包むあんで工夫の余地はあるけど、だいたいの味は一緒なんだよね(笑)
ゆずとか抹茶で色だけでなく香り(フレーバー)がつくこともあるけどね。

白あんは白インゲン豆や白小豆をゆでてからつぶし、裏ごししたものに砂糖や蜜で甘みをつけたもの。
とろっとした淡いクリーム色のあんなのだ。
求肥は白玉粉や餅粉に砂糖や水飴を入れて練ったもので、全部の材料を混ぜてから加熱しながら練る水練り、生地を練ってゆでてから甘みを加えるゆで練り、生地を蒸してから甘みを加える蒸し練りなどがあるんだって。
それぞれ食感や日持ちが変わってくるみたい。

伝統的と言われる和菓子はお茶とともに発展してきたので、今のような姿になったのはおそらく室町末期から江戸時代にかけての間。
でも、このころには上白糖は精製できないかあってもほとんど手に入らないので、使うとしたら黒砂糖や粗糖のような精製度の低い糖か、発芽玄米や麦芽から作る水飴。
江戸時代も下って糖の精製技術が上がってくると、和菓子用の高級な糖として知られる和三盆が登場するのだ。
和三盆は、サトウキビの茎から搾った甘い汁を石灰で中和しながら精製・結晶化して原料となる白下糖というものを作るのだ(黒砂糖と同じで糖蜜を多く含むので独特の香りと味だよ。)。
これに少し水を加えてお盆の上で練り上げていくと糖の結晶の粒子が細かくなって、糖蜜と分離できるのだ。
この「研ぎ」が終わった後に麻袋に入れて圧搾すると黒い糖蜜が絞り出されて、だんだんと白くなっていくわけ。
3回繰り返すから和三盆と言うそうだよ。

それでも、上白糖と比べると精製度が低いので少し色がついていて独特の風味があるんだけど、「研ぎ」をすることできめ細やかで口の中でさっと溶けるという特質があるのだ。
それに、微量の糖蜜のおかげで甘さもくどくなく、後味がよいとも言われているよ。
砂糖などの甘味料があまり手に入らない時代に発達した和菓子は、干し柿と同程度以下の淡い甘さが特長だけど(日本で当時食べられる果物では柿が一番糖度が高く、さらに乾燥させることで糖度を高めた干し柿が日本で食べられる一番甘い食材だったのだ!)、それによく合うのがこの和三盆というわけ。
むかしは甘みが出せなかっただけなんだけどね(笑)
逆に、今の精製の進んだ砂糖で作ると甘さが際だって野暮ったい味になることもあるのだ。

話を「ねりきり」にもどすと、そうやって淡い甘みのあんと求肥を合わせて適度な柔らかさ、粘度の生地に練り上げていくんだ。
ここにツクネイモを入れるとまたやわらかさが変わってくるのだ。
そんな生地を粘土細工のように木型に入れて成形したり、手と小さなへらで形を整えたりしていくわけ。
花びらの形なんかも全部手とへらだけで作っていくんだよね。
ここが職人芸なのだ。
さらに、そこに色の組み合わせもあって、伝統美ができあがるのだ。

一方、水分量が少ない和菓子が干菓子。
若い人にはとんと人気のない落雁が代表的だよね(笑)
金平糖なんかも干菓子の部類に入るのだ。
落雁は米粉などのデンプン質の粉と砂糖や水飴をまぜ、それを着色してから型に入れて乾燥させたもの。
一般的には、すでに蒸した米の粉を使って、甘みを加えて練った後、型にはめて「焙炉(ほいろ)」と言われる下から加熱する作業台の上で乾燥させるのだ。
材料的にはねりきりと同じなんだけど、だいぶ味わいは違うよね。
ただし、こっちは水分量が少ないだけあって、生菓子のねりきりと違って日持ちするのだ。
むかしは流通も発達していないから、干菓子の需要もあったのだ。
今みたいに甘いものがあふれているわけでもないから、甘いだけでありがたかったのかも。

季節の移り変わりを重視する日本人は季節ごとにいろんなデザインの和菓子を作っていて、お茶の席などではその和菓子でも季節を楽しむんだよね。
和菓子の歳時記なんでカレンダーもあるけど、こういうところでも季節感を出そうとする日本人の心は大事にしたいよね♪
季節の和菓子には、水ようかんとかも入ってくるので必ずしもねりきりだけじゃないんだけど、いろんな色・形に整えられると言う点で一番応用が利くのはねりきりなので、やはり重要な位置づけなのだ。
そろそろこの季節だから、あのお菓子が食べたいなぁ、なんていう風流人になりたいね!

2010/05/15

はぁぷ~ん

ネットを見ていて知ったんだけど、最近体脂肪計付体重計で有名なタニタからコンパクトな携帯タイプの口臭測定器(ブレスチェッカー)が発売されたんだって。
はぁ、と息をセンサーに吹きかけると、呼気中の揮発性硫化物(硫化水素やチオール基-SHが含まれている炭化水素類)や芳香性のある炭化水素系ガス(アセトン、アセトアルデヒド、イソ吉草酸などの低級脂肪酸など)を検出して、数値化してくれるのだ。
携帯型では無臭からきついまで五段階に分けているみたい。
気にする人がそれだけ増えているんだろうね。
というわけで、ちょっと調べてみたのだ。

口臭は口からはき出される呼気に不快なにおいが含まれている状態を指していて、その原因は様々。
例えば、人間でも腸の中では常在菌が消化・吸収中の食物を分解・発酵しているけど、その過程でメタンガスなどの炭化水素系ガスやアンモニアやアミンなどの窒素が入った有機化合物、硫化水素揮発性硫化物などが出てくるのだ。
口から胃・腸はつながっているので、そこで発生した悪臭物質のうちの一部は呼気中にも排出されるわけ。
牛やラクダの反芻する草食動物では、発酵途中の食物を口にもどしているので口がとてもくさいんだ(>_<)
胃腸の調子が悪いと口臭がきつくなるというけど、これは通常の発酵過程とはまた違った発酵が起こるようになって、より悪臭物質が発生しやすくなったりしているからだよ。
また、口から出ると口臭だけど、おしりから出たらおならなのだ(笑)

次によく言われるのはニンニクやニラなどのにおいの強いものを食べた後の口臭。
これは歯磨きで軽減できると言われるけど、実はそうでもないのだ!
これはニンニクやニラに含まれる硫黄の入った成分が代謝の過程でにおいの原因となる揮発性硫化物になってしまうんだけど、これはそのまま吸収され、血液中にとけ込んでしまうのだ。
それが肺でガス交換しているときに呼気に排出されてしまうので、口臭になるのだ。
口の中だけでにおいっているわけじゃなくて、体臭としても出ているんだよ。

これはアルコールを飲んだ後のすえたにおいも一緒。
二日酔いでくさい人がいるけど、あれはアルコールの分解過程の途中で出てくるアセトアルデヒドのにおいで、やっぱり肺でのガス交換の時に呼気中に出てくるし、体臭としても汗とともに皮膚の表面から出てくるのだ。
この場合はアルコールの代謝が進めば原因物質が減っていくので、たくさん水分と糖分をとって、分解に必要な水とエネルギーを供給してあげるとよいのだ。


糖尿病になると独特の口臭が出ると言うけど、それは血液中にケトン体が出てくるため。
糖尿病のようなエネルギー代謝に不具合が出る病気になると、ブドウ糖などの糖類の分解で十分なエネルギーが確保できず、脂肪酸代謝が活性化されるのだ。
すると、その代謝の結果としてケトンが出てくるわけ。
独特の甘酸っぱい香りがするそうだよ。
実は、これは病気の時だけではなくて、過度なダイエットの際にも現れてくるのだ。
やっぱり糖代謝だけでは十分なエネルギーが得られない状態になるので(よくやられる炭水化物抜きダイエットで起こりがち)、脂肪酸代謝が進んでケトンで出てくるわけ。
あまりにひどいと血液中のケトンが増えすぎて、液性が酸性に傾くケトアシドーシスという危ない状況にもなるので注意が必要なのだ。

そのほか、通常時の口臭の原因としては喫煙、加齢、膿栓(のどの奥にたまっている「におい玉」とも呼ばれる膿が固まったようなもので、くしゃみをすると時々出てくる非常にいやなにおいのするものだよ。)などがあげられるよ。
特に膿栓がきつい口臭の原因であることが多いみたい。
舌の上の白い舌苔も食べ物のかすや細菌などが集まったものでにおいの原因になるので、気になる人はきれいに掃除をした方がよいとか。
このほか、女性の場合は性周期によるホルモンバランスの変動で口臭が出ることがあるんだとか。
これは代謝が変わるからみたい。

病的状態に起因する口臭というのもあって、よく認識されているのは歯槽膿漏などの歯周病に由来するもの。
口の中で膿ができてしまうんだからにおっても仕方がないよね。
これは普段から歯磨きなどをしっかりして、口の中を清潔にしておけばある程度防げるのだ。
歯間ブラシを使ったりするのも有効だし、歯石を取り除いたりするのもいいみたい。

最近になって注目されているのはドライマウス。
口の中が乾く状態をさすわけだけど、そうするとこれまで唾液で「洗われて」いた効果がなくなり、口の中で雑菌が繁殖しやすくなるのだ。
寝ている間は唾液の分泌が抑えられるので、朝起きると口の中がなんかいやな感じがしたりするけど、それがずっと続くイメージ。
ストレスがかかると唾液分泌が抑制されるけど、それはいわゆる仕事などの精神的なストレスだけじゃなくて、ダイエットで食べたいものを我慢している、慢性的な寝不足などの身体的なものもあるので、けっこうな頻度で発生しているみたい。
本人では気づきにくいので、クッキーなどの乾いたお菓子が食べづらくなったなどがあれば注意した方がよいのかも。

2010/05/08

もともと食べているんじゃなかったでしたっけ?

GW期間中だと普段見られないテレビ番組を見る機会があるけど、たまたまテレビ東京のレディス4を見たのだ(笑)
すると、ちまたでブーム(というか遅くない?)の「食べるラー油」を自宅で作る、という特集をやっていて、中華の神の子こと陳建一さんが家でも作れるおいしい「食べるラー油」の作り方とそれを使ったレシピを公開していたんだ。
それは八丁味噌、コチュジャン、豆板醤に砂糖、唐辛子、昆布茶を加え、ネギとショウガで香り付けした熱した油(ごま油1+サラダ油3)を徐々に加えて混ぜていくというもの。
最後に仕上げとして、ニンニク、レンコン、ゴボウ、干しエビを電子レンジで乾燥させてから軽く素揚げして作るチップを加えるんだそうな。
意外と面倒くさいね(>_<)

で、気になったのがラー油とはそもそも何か。
自分では餃子を食べるときに使ったり、時にラーメンのスープに入れるくらいしか接点がなかったので、辛い香味油という以外は実のところはよくわからないんだよね。
というわけで、ちょっと調べてみたよ。

ラー油は漢字で書くと辣油で、「辣」は辛いという意味なのでそのまま辛い油ということ。
ただの唐辛子入りのごま油と思っていたら、実はそうではないらしいのだ。
中国のラー油は、唐辛子や中華山椒(花椒)、八角、茴香(ういきょう)、桂皮、陳皮、丁子などの香辛料を油に入れて徐々に加熱して辛み成分や香り成分を油に移していくのだ。
化学的には香り成分や辛み成分の素である脂肪酸、エステル、高級アルコール、アルカロイドなどを油の中に抽出しているんだ。
実はアロマオイルと作り方は似ているんだよね(笑)
唐辛子なんかを入れるとカプサイシンが油に溶け出して赤く色がつくけど、まさにあんな感じで他の成分も溶け出していっているわけ。
で、香りと辛みが移ったら油だけを使ってもよいんだけど、中国では入れた香辛料の沈殿ごと使うことが多いみたい。
ちなみに、辛み成分はほとんど油に溶け出しているので、沈殿を入れた方が辛くなる、ということはあまりなくて、その他の苦みなどの味が増す可能性が高いのだ。

一方、日本でのラー油は最初は冷凍餃子についてくるような赤からオレンジ色の辛い油という認識で、そんなに香り成分も強くなかったみたい。
工業的には、唐辛子、山椒、ニンニク、ネギ、ショウガを高温の油にさっと漬けて一気にいろと香りをつけるんだとか。
ざるのようなものに香辛料を入れてさっと上げるので油だけが取り出せ、かつ、苦みなどの雑味も出てこないんだとか。
安価なものでは唐辛子も使わずに色素と香辛料を混ぜるだけ、というのもあるみたい!

でも、ちょっと本格化して中国のもののように沈殿があるものが出始め、現在では具材が入った食べるラー油になってきているのだ。
2000年に発売され、現在でも人気の石垣島ラー油が火付け役で、これまでのラー油と違って、島唐辛子などの香辛料や具材がそのまま沈殿して入れ、さらにそれを食材としても使ってしまう、というところが転換点だったのだ。
中国ではもともと具材の入ったラー油があって、その具材を食べるタイプのラー油を作ろう、ということで開発されたみたい。
これに触発され、桃屋が「辛そうで辛くない少し辛いラー油 」を発売すると、各社が一斉に「食べるラー油」を出し始め、一気に大ブームとなったのだ。
このタイプは、油よりむしろ具材が多めで、ニンニクやタマネギなどの具材が辛い油で漬けられているような状態なのだ。
素人でも使いやすいそのまま使える調味料として開発されたらしいんだけど、実際にはそのままごはんにかけて食べられる、ということで人気が出たのだ。
メーカー側は必ずしも想定していた使い方ではなかったようだけど。

こうして、日本でもラー油は独自の進化を遂げることとなったのだ。
四川料理に欠かせない調味料として中国で広く使われていたラー油が、日本では「ふりかけ」的に使える調味料として生まれ変わったわけだよね。
でも、それに伴って、味の方もだいぶ変わっていて、中国ではむせかえるほど辛いものが多いのに対し、日本の「食べるラー油」はマイルドな辛さのものが多いみたい。
食の好みの問題もあるけど、ごはんにちょっとかけて食べるという使い方だと、辛すぎると困るからね。
というわけで、中国のラー油とはかなりかけ離れてきたので、そろそろ日本独自のものとして別の名前をつけてもよいのかも。
いわゆる餃子のたれに入れるラー油とも使い方が変わっているからね。

2010/05/01

氷の国のハイじ

GW前になんとか回復したようだけど、アイスランドの火山噴火は欧州に大きな影響を与えたよね。
単純に噴煙で視界が悪くなる、火山灰が降ってくる、というだけでなく、航空機が飛べなくなるという大事に至ったのだ!
これにより人と物の航空輸送が止まり、短期間ながらかなりのインパクトがあったよね。
海外旅行者が取り残されたり、チーズやチョコレートなどの輸入品が品薄になったり。
で、気になったのが、その原因ともなる火山灰。
せいぜい鹿児島の桜島のイメージしかなかったんだけど、この際、ちょっと調べてみたのだ。

火山灰は「灰」とは言ってもものを燃焼させた後の燃えかすの「灰」とは成分的にもまったく違うもの。
定義としては、火山が噴火などをしたときに出てくる火山噴出物のうち、固体で直径2mm以下のものを指すのだ。
直径64mmまでが火山礫で、更に大きいのは火山岩塊というのだ。
火山礫以上のものが空から降ってくるとかなりの物理的ダメージになるよね。
このほか、気体として噴出する火山ガス(硫化水素のようないわゆる火山性のガスだけでなく、水蒸気もここに含まれるよ。)や液体の状態で噴出する溶岩(後に固まるけどね。)や熱水(これは温泉とも言うのだ。)も出てくるのだ。

燃えかすの方の灰の主成分は炭素だけど、火山灰の方はむしろ鉱物由来のもので、火山ガラス、鉱物結晶、古い岩石の破片に分けられるんだとか。
火山ガラスというのは噴火に伴ってできる微粒子のガラスで、地下で高圧力で保たれていたマグマが噴火によって上昇してくると一気に圧力が下がり、そこに溶解していた水や二酸化炭素などの揮発成分がガスとなって発砲するために、飛沫となって飛んだマグマが急激に冷却されてガラスとなるのだ。
まさに炭酸飲料の栓を抜いたときと同じで、シュワシュワと発砲するけど、その際、泡が破裂するときに出てくる飛沫が由来というわけ。
炭酸飲料の場合はそれが水だからちょっとぬれるだけだけど、火山の場合はもともと高熱で融けているマグマなので、一気にまわりを冷やされてガラスとして固化されてしまうのだ。
なので、顕微鏡で見てみると半透明できらきらとしているのだ。

鉱物結晶はもともとマグマの中で小さな核として結晶化していたもので、溶岩が冷えるとそのまわりから固まっていくのだ。
溶岩が急速に冷えると火山岩になるけど、そのときは、班晶と呼ばれる粒の小さな鉱物結晶のまわりにガラス質の石基がとりまいているのだ。
その班晶と火山灰の中の鉱物結晶はともにマグマの中ですでに結晶化していたものというわけ。
マグマがゆっくり冷えると深成岩になるけど、その際、この鉱物結晶が核となって徐々に結晶化していくことになるよ。
最後の古い岩石の破片はそのままで、火口をふさいでいた岩石が噴火の衝撃で細かく粉砕されてまき散らされたもの。
そんなに粉々になるのかとも思うけど、それだけの衝撃なんだろうね。

大きな噴火が起きると、今回のように火山灰が広範囲にまき散らされるんだけど、これが地質学的には年代を調べるひとつの大きな手がかりになるのだ。
浅間山や富士山のような大きな火山が噴火するとそれこそ本土全体に火山灰が降り積もることになるんだよね。
この火山灰は同時に勝つ均一に降り積もるので、この火山灰が出た層が同じ時期に積もったということがわかるので、そこが年代特定の決め手となるのだ。
このために「鍵層」とも呼ばれているらしいよ。
これがあると、地震や地滑りで地層がゆがんだりしても年代特定がしやすくなるのだ。

この火山灰、鹿児島の例を見るように、はっきり言って邪魔ものなんだよね。
栄養分に乏しくて水はけがよすぎる(保水性が低い)ので農業にはまず向かず、サツマイモやお茶などの特定の作物しか栽培できないのだ。
また、水分含有量が増えるともろくなるので地滑りしやすく、宅地としても向かないんだよね。
さらに、鉱物由来だけあって重いので、少し積もっただけでも屋根がゆがんだりするのだ。
雪でもひしゃげることがあるけど、そんなに積もらなくてもかなりの重量があるらしいよ。

さらさらはしているけど粒子の細かいガラスや鉱物なので、けっこうごつごつしていて、そのまま拭き取ろうとすると傷がつくのだ(特に「降りたて」はまだ角が取れていないので余計注意が必要みたい。)。
これが自動車などに付着したときに問題になるんだよね。
逆にクレンザーとして利用されることもあるようだけど。
古代ギリシアではコンクリートにも使われていたようなんだけど、すでにその技術は失われていて、現代には伝わっていないのだとか(またコンクリートの骨材としての使用が実用化に向けて研究されているそうだよ。)。
そのほか、エステでクリームに混入されたり、甲子園のグランドの土として利用されたり、焼き物の釉薬に入れられたりと利用方法はいくつかあるようだけど、そんなに有用というわけでもないんだね(笑)

そして、問題は航空機との関係。
航空機のジェットエンジンに火山灰が取り込まれると、致命的な損傷を与える可能性があって、それで欧州の航空便がストップしたのだ。
航空機エンジンの内部は1,000度を超えるような高温なので、取り込まれた火山灰の粒子は内部で溶解し、タービン翼や出口付近で冷やされてガラス質化してたまっていくのだ。
すると、そのためにジェット推進の推力が失われるんだけど、最悪の場合はエンジン停止もあり得るので、危険だというわけ。
粒子が細かいこともあってフィルターでも防げないし、困ったちゃんなのだ。
これはジェットエンジンだけでなく、プロペラ機(レシプロエンジン)でも同じで、空気と一緒に燃焼室に取り込まれてしまうと、中で融けて固まってシリンダーやピストンを痛めてしまうのだ。
同じことは自動車のエンジンでも言えるよね。

これが今回の騒動の原因だけど、航空機以外にもけっこう大変そうなのだ。
噴煙で日光が遮られると農作物の方も不安だし、まだまだその被害は尾を引きそうだね。
牧草が育たないと畜産にも影響が出て、チーズなどの乳製品にも影響が出るおそれがあるのだ。
飛行機は飛び始めたけど、これからも注視していかないといけないのだ。

2010/04/23

立体視の偽

ついこの間デジタル・ハイビジョンが出てきたと思ったら、今度は立体テレビが出てきたねぇ。
これまでは専用のメガネが必要だったりしたけど、ついに裸眼でも立体的に見えるディスプレイが開発されたのだ!
なんでも、次世代型のDSではその立体視ディスプレイが装備されるのだとか。
なんだかむかしアニメで見たようなホログラフィーが浮き上がってくるディスプレイのようだねぇ。
で、こうなると気になるのが、なんで立体的に見えるか、ということで、さっそく調べてみたよ。

まずおさらいをしておかないといけないので、人間がどうやって立体視をしているかという話。
人間や多くの猿、一部の鳥では、目が顔の正面に並んで二つついているので、ものを立体的に見ることができるのだ。
これは、右目で見たときと左目で見たときでは入っている映像情報が異なり、その「差」(ずれ)を脳内で「奥行き」として処理しているからなんだ。
このずれのことを両眼視差と言っていて、近くにあるものであれば差が大きく、遠くにあると小さくなるのだ。
簡単にイメージしてみると、右目で見ればものの右側がより深く見えるし、左目だとその逆になるので、両目で見られる中心の共通領域と片目でしか見えない領域との見え方で奥行きを判断しているということになるよ。

草食動物や魚のように顔の側面に目がある場合はあまり立体視が得意じゃないんだよね。
目が顔の前方に並んでいると目だけで見渡せる範囲は狭くなるけど(そのために首の運動で顔の面を動かす必要が出てくるのだ。)、立体視ができるので奥行きや距離感をつかみやすく、遠近感覚に優れるのだ。
一方、目が顔の側面にある場合、立体視がしにくいので、対象が自分からどの程度離れているかは見える大きさだけで判断する必要があるんだけど、その分一度に広範囲を見渡せるんだよね(自然界では外的などは当然大きさがあらかじめわかっているものなので、さほど不自由はしないみたい。)。
これは進化の過程でどちらがその動物の生活環境に有利だったか、ということにつながるんだよね。

これが人間が立体視をしている原理なんだけど、逆に、左右の目にずれのある画像情報を送ることができると、脳内で勝手に「奥行き」があるものと処理して立体的に見えるようになるのだ!
これは一種の錯覚で、遠近法を使った絵に奥行きが感じられるようなものがさらに高度化されているようなものかな?
で、右目用の情報と左目用の情報をどうやってそれぞれの目に届けるかで、立体映像の方式が変わってくるわけ。

ホログラフィーのように三次元像を再現する技術もあるようだけど、ディスプレイに使う場合は、平面の画面に映し出された映像を見て、それを立体的だと錯覚するようにし向けているんだよ。
もっとも古典的なのは赤と青のメガネを使うもので、赤いセロファンを通すと青色の映像情報だけが目に入り、青いセロファンを通すと赤色の映像情報だけが目にはいるので、これを右と左に振り分ければよいのだ。
雑誌の付録にもよくついていたようなものだよね。
でも、このままだとモノクロ映像になってしまうのだ。
最近はカラー情報を残すこともできるようになっていて、それを使った立体映像のアニメなんかもあったよね。
でも、青と赤のフィルターを通すという原理を使う限り、どうしてもカラーバランスは崩れてしまうのだ。
その分技術的に簡単で安くすむようだけど。

ここからもう少し進化したのが偏光を使ったもの。
一般に偏光と呼ばれるのは、電場(又は磁場)の振動方向がそろった光のことで、直線的に振動するのが直線偏光、振動面が回転していくのが円偏光と呼ばれるのだ。
自然光の場合はいろんな方向に振動している光(=電磁波)が混ざっているんだけど、偏光子と呼ばれる素子を通すことで振動面をそろえて偏光に変換することができるんだ。
この偏光子は逆方向から見ると偏光フィルターにもなっていて、特定の振動面を持つ偏光しか通さない性質があるので、これを利用して左右の目に別の映像を振り分けることができるのだ。
右用・左用それぞれの映像を異なる振動面を持つ偏光で作っておいて、偏光フィルターのついたメガネをかけると片側の偏光の映像だけが目に入ってくるという仕組みだよ。
遊園地などにある立体映像のアトラクションは主にこの原理を使ったもので、入るときにわたされるサングラスのようなメガネが偏光メガネで、あれがけっこう高価なんだよね(笑)

最近出てきているのは液晶シャッターメガネを使うもの。
これは、画面上は右目用映像と左目用映像が高速で入れ替わっていて、それに合わせてメガネのレンズにシャッターが下りて片目だけに映像情報が入るという仕組み。
左目用映像を映し出しているときには右目のシャッターが下りているのだ。
実際には何かが物理的に下りてくるんじゃなくて、鋭気称になっていてそこに電圧をかけて一時的に見えなくするというメカニズムみたい。
すぐれた仕組みで、二重にぶれた映像を流していないので裸眼でそのまま画面を見ても気持ち悪くないのだ(笑)
ただし、メガネの方を無線で画面に合わせて駆動させなくてはいけないので、けっこう大がかりなものではあるし、けっきょくメガネが必要なのだ。

そこで出てきているのが裸眼で立体視できるもの。
現在報道などで出てきているのは2つで、メガネなしでも左右の目に別の映像を届けようとする手法と、そもそも普段目から入ってくる視覚情報のように映像情報を光線として再現する手法なんだって。
前者は、画面に細かなスリットが入っていて、二重に映像を映し出しても、スリットによる解説で右目用の映像は右方向に、左目用の映像は左方向に出てくるというもの。
まもなく量産も開始されるそうだけど、メガネがいらないとは言いながら、画面を正面から見ないとうまく立体的に見えないのが難点なのだ。

そこも解消する技術がNHK放送技術研究所なんかでやられているインテグラル立体テレビシステムというもので、屈折率の異なる複数のレンズを通して撮影し、それをやはり屈折率の異なる複数のレンズを通して映像として映し出すことで、普通に目に入ってくる視覚情報と同じような光線の波面が再現されるんだとか。
簡単に言うと、普通にものを見たときの視覚情報を擬似的に再現して映し出してくれということだよ。
これだと、側面から見ても、寝転がってみても立体的に見えるそうなのだ!
すごい技術だねぇ。

というわけで、立体テレビはどんどん技術が進歩していて、そのうちに浸透していくみたい。
ゲーム機にまで採用されれば、立体放送が標準化されるのも近いかな?
でも、地デジですら導入が遅れているのに、またすぐに立体テレビじゃなかなか浸透しないだろうけど。
とりあえずは、裸眼でその映像を見てもぶれて見えないけど、対応テレビで見ると立体的に見える、というのから始めるとよいのかもね。

2010/04/15

直接描く絵の具

たまたまつけていたテレビでクレヨンとクレパスの違いを紹介していたのを見たのだ。
実は同じものだと思っていたので「目からウロコ」の興味深い話。
で、自分でももう少し掘り下げて調べてみたよ。

最大の違いは、クレヨンは一般名称だけど、クレパスはサクラクレパスの登録商標なんだって。
つまりは商品名で、その一般名称はオイルパステルというらしいのだ。
見た目の違いとしては、クレヨンはかたくて先がとがっているけど、クレパスはやわらかめで先がとがっていないのだ。
で、ここまでわかるともう区別はつくよね。

で、まずはクレヨンの正体だけど、もともとは顔料をろう(固形ワックス)で固めたもので、色鉛筆よりもなめらかに紙に描くことができる画材として使われるのだ。
顔料というのは水や油に溶けない色のついた細かい粒子のことで(逆に水や油に溶けるものを染料と言うよ。)、その細かい色のついた粒子がろうの中で分散しているというわけ。
紙の上で滑らせると、紙の表面のでこぼこによって顔料入りのろうがけずられ、紙の上に付着するんだ。
顔料だけだと紙に付着しづらいけど、ろうによって定着するというわけなのだ。
ちなみに、現在国内で販売されているクレヨンは顔料とろうだけでなく、そこに体質顔料(水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタンのような白い不溶性の粉末に染料で色をつけたもの)と液体油も付加されていて、よりしっとり(?)、よりやわらかく、描きやすくできているそうだよ(海外のものはいまだに顔料とろうのみなので、日本のものに比べて固いそうなのだ。)。

一方、クレパスというのは、一般に固くて描きにくいというクレヨンを改良したもので、海外でデッサンなどに使われるパステルのようなやわらかい書き味を実現しようと発明されたものなのだ。
具体的には、クレパスでは体質顔料と液体油の含有量が多くなっていて、よりなめらかに紙の上に描けるようになっていて、それで混色したり、色をのばしてぼやかしたり、なんてことができるようになっているんだ。
ただし、輪郭線をしっかりと描きたい場合はクレヨンの方がしっかり描けるので向いているみたい。
クレパスの先がとがっていないのは、クレヨンのような線描ではなく、パステルのように面描するのに向いているということがあるみたい。

で、そのパステルはというと、顔料を粘着剤でゆるく固めたもので、よくデッサンに使われるのだ。
でも、顔料を紙に塗りつけるだけで粉がぼろぼろ出るし、きちんと定着させるためには定着液を噴霧しないといけないなどのプロ仕様の画材なんだよね。
とは言え、パステルカラーなんて言葉があるように、原色だけでない、中間的な淡い色合いを出すことができるし、重ね塗りで混色もできるしと、色合いに広がりを持った画材なんだよね。
で、クレヨンのような定着の良さでパステルのような色合いを出せる、ということでクレパスが誕生したのだ。

似たようなものに、やはり同じサクラクレパスが開発したクーピーペンシルというのがあるよね。
こちらは全体が色鉛筆の芯というモチーフで考案されたもので、顔料を合成樹脂やワックスで固めたものなんだそうだよ。
色鉛筆と違って消しゴムで消せるという特徴があって、折れづらい、削りやすい、手に色がつかないなどのメリットもあるのだ。
最近はその使いやすさからクレヨンやクレパスに取って代わって子どものお絵かきに使われることが多いよね。

クレヨンやパステルはそのまま描ける絵の具として考案されたもののようだけど、それがさらに進化して使いやすいものになってきているのだ。
その一方で、芸術家の観点からは、使いやすさだけでなく、色合いや色の定着の特性などもあるので、どれもなくなることはなく、棲み分けているんだよね。
大人になったらそういう特性もふまえながら画材を選ばないとね(笑)
最近は100円ショップなんかでも売っているし、ひさびさにお絵かきをしてみたくなったよ。

2010/04/08

重力で回す

宇宙航空研究開発機構の発表によると、火星と木星の間にある小惑星イトカワにタッチダウンしてきた「はやぶさ」がまもなく地球に帰ってくるのだ。
小さな探査機ながら、火星より遠くまで行き、そして、もどってくるんだよね。
しかしながら、その旅路は決して順調ではなく、姿勢制御に使うリアクション・ホイールは不調、推進剤をスラスタで噴射する化学推進系も不調、バッテリーも不調で太陽電池パネルが頼り、唯一残された電気推進系のイオンエンジンも万全ではなく、ギリギリの運用で満身創痍でもどってくる、というイメージなんだそうだよ。
しかも、最初はサンプルが回収できているんじゃないか?、と期待されている試料回収カプセルを地球に射出する計画だったようなんだけど、現在の計画では、本体ごと豪州に着陸するものに変更になっているのだ(本体のほとんどは大気圏で燃えてしまうけど・・・。)。

で、この「はやぶさ」の一連の探査で話題になったのは「スイングバイ」という航法。
太陽系探査機でよく使われる航法で、燃料をほとんど消費せずに進行方向の変更とともに加減速を行うことができるのだ。
いろんな機能が不全になってしまった「はやぶさ」も、詳細な軌道計算の結果、スイングバイなどを活用して小惑星イトカワまで到達し、そして、地球まで帰ってくることができるようになるのだ。
燃料をほぼ消費せずにできるというのがポイントで、だからこそ使える技なんだよね(笑)

宇宙空間を移動する場合、基本的にはほとんど何も抵抗となるものがない状態なので、一度力を与えると慣性で等速度運動をするのだ。
なので、加減速だけでなく、進路変更をする場合にもスラスタを噴射して軌道修正のための「新たな力」を加えてやる必要があるわけ。
ところが、ロケットの打上げ能力に限界があるので、探査機に積載できる燃料には自ずと制限があって、できれば燃料を使わずに軌道修正をしたい、ということになるのだ。
そこで考え出されたのがこのスイングバイで、近傍の天体の重力を使って進行方向を変えるので、重力ターンとも呼ばれるよ。
近傍を飛行するだけだと「fly by」だけど、近傍を飛行しつつ進行方向を振るので「swing by」なのだ。

スイングバイのミソは探査機よりはるかに巨大な天体の重力を使うということ。
探査機が天体の近くを通ると、探査機とその天体の間での重力が無視できない大きさになり、互いに引っ張られるのだ。
2つの物体の間に働く重力はその物体の質量に比例するので、相手側の天体の質量が大きければ大きいほど重力も大きくなるし、相手側が大きいと、探査機が一方的に天体側に引き寄せられることとなるんだ。
この天体に向けて引き寄せられる力をもとにして探査機の進行方向を変えるんだよ。
ベクトルで考えるとわかりやすいけど、近づいた天体をくるっと回る形でターンをすることになって、どこまでその天体に近づくかで回る度合い=進路変更の度合いも変わってくるよ。
探査機ももともと動いているので、天体に近いところではより強く、遠いところではより弱く重力の影響を受けることになって、そのためにブーメラン型に曲がることになるんだ。
完全に重力圏にとらわれてしまうとその天体の周回軌道を回ることになるよ。
さらに、あんまり近づきすぎるとその天体と衝突してしまうのだ。
一度重力圏にとらわれてしまうと脱出速度まで加速する必要があるんだけど、逆に一度着陸した天体から飛び立つ場合は、この脱出速度を超える速度まで加速すれば再び宇宙空間に出られるのだ。
地球から飛び立つ場合、この速度を「第二宇宙速度」と言うんだよね(この速度を超えない限り、地球を周回する人工衛星になってしまうのだ。)。

スイングバイの場合、ただ進行方向を変えるだけでなく、探査機の速度も変わっているのだ。
制止している天体の近くを通るのであれば進行方向が変わるだけなんだけど、その天体が動いている場合、重力の働く方向が常に変わるので、その影響を受けるというわけ。
太陽の周りを公転している惑星でスイングバイをする場合、その公転速度の分が上乗せになれば加速するし、逆の場合は減速になるのだ。
実際には、公転方向に対して航法から近づいてスイングバイすると、探査機の進行方向と惑星の公転の進行方向に重なる部分が出てくるので、公転速度が上乗せになって加速になるのだ。
逆に、公転の進行方向に前方から近づくと、探査機の進行方向と惑星の公転の進行方向がバッティングするので、逆に減速してしまうよ。
ちなみに、公転面に対して垂直方向から近づいた場合、この加減速は影響しないけど、公転方向に引きずられて弧を描いて曲がることになるのだ。
実際には三次元的なのでもっと難しいはずで、しかも、スイングバイによる軌道修正は近づくときの小さなずれが大きく増幅される可能性もあるので、高度な軌道制御技術と精密な運用が必要なんだって。
そうそう簡単に燃料なしでターンをさせてもらえるわけではないのだ(笑)

燃料を使わずに加減速をしているわけだけど、エネルギー保存の法則は成り立っているわけで、探査機はどこからかエネルギーをもらっていることになるんだよね。
実際は、近くを通る天体からもらっているのだ!
スイングバイをするのに探査機が天体に近づいたとき、天体が巨大なので一方的に天体の重力で探査機が引き寄せられると考えがちだけど、実際には両物体の間に働いているのは万有引力なので、天体の探査機に引き寄せられているのだ。
加速スイングバイの場合、探査機は天体の公転方向の後ろから近づくけど、そうなると、天体は公転方向と逆向きに引っ張られるというわけで、その分の公転の減速分のエネルギーが探査機の加速分のエネルギーに振り替えられているのだ。
ただし、天体があまりにも大きいので、その変化分はほぼ無視できるというだけ。
エネルギーは質量と速度の二乗に比例するので、同じエネルギー変化でも質量が大きいと変化がごくごく微細なものになるのだ。
そうでないと惑星の公転軌道が変わってしまって大変だけど(笑)

で、「はやぶさ」はそんなスイングバイを活用して宇宙を旅して帰ってくるのだ。
でも、その成果は、火星に行こうと必死の努力をして、けっきょく届かなかった「のぞみ」の上に立っているんだよね。
日本は、月に行った「ひてん」のときにスイングバイ技術を習得して、「のぞみ」の運用でノウハウを蓄積し、それを活用して「はやぶさ」の奇跡的な運用につなげているのだ。
その積み重ねがなければここまでこられなかったというわけで、火星には行けなかったけど、「のぞみ」の成果はきちんと活かされているんだよ。

2010/04/02

春眠暁を覚えず?

いよいよ本格的に春がやってきたのだ♪
それにしても、春になると心地よい陽気で眠くなるねぇ(=o=)zzZ
ぼーっとしているとついついうとうとしてしまうのだ!
でも、動物の世界ではむしろ逆。
冬眠していた動物たちが目覚めて活動し出すんだよね。
実は、この冬眠もただ眠っているだけ、ではないのだ。

冬眠する代表的な動物と言えば両生類やは虫類のような変温動物。
気温が一定温度以下になると、越冬すべく土の中や池の中で「冬眠」するのだ。
でも、これは「眠っている」というよりはむしろ「仮死状態」になっているだけで、ギリギリ生きているという状態まで代謝が低下している状態。
体温は外気温に並行してぐんぐんと下がって、冷たくなっていくのだ。
それであたたかくなると体も温まり、代謝が再び活性化されて目覚めるというわけ。
もともと変温動物は体温を一定に保たない代わりにエネルギー消費が抑えられていて、エサを頻繁に食べる必要がないんだけど、その絶食期間が長くなっただけ、とも考えられるのだ。

体温が下がっていくと言っても、体の中の水分が凍結して氷になってしまうと細胞が破壊されていくのでさすがに生きていけないのだ。
液体窒素なんかで一気に冷凍するとそれが避けられることもあるけど、自然界で徐々に周囲の気温が下がっていくような場合ではそうはいかないんだよね。
でも、氷の張った池の中でカエルが冬眠していることがあるよね。
これは、凝固点降下のおかげで、電解質(ナトリウムやカリウムなどのイオン)や糖分に富む細胞中の水分は0度より低い温度にならないと凍結しないから。
氷の張った水の下でワカサギが泳いでいられるのもそのおかげだよ。

さらに、両生類・は虫類の場合は、冬眠前にエサを食いだめしないのだ。
もともと変温動物の場合は、太陽熱や地熱なんかを利用して体を温めて生体機能を維持していて、食物の消化も例外ではないのだ。
イグアナは低温になると死んでしまうことが知られているけど、これは代謝が低下してエサが消化できなくなるため。
まさに冬眠前の変温動物もそうで、寝ながら消化して食物をエネルギーに変換することができないので、しっかり食べて消化してから冬眠する必要があるのだ。
ペットのは虫類を冬眠させるとき、エサを大量に与えてから冬眠させようとすると死んでしまうこともあるそうなので注意が必要だよ。

冬眠するのは変温動物だけでなく、ほ乳類であるネズミやリスの仲間なんかも冬眠するよね。
でも、そのメカニズムは当然のことながら変温動物とは違っていて、こっちは意図的に代謝を低下させてエネルギー消費を押さえることで冬を乗り切ろうというものなのだ。
体が小さいと体重に比して体表面積が大きくなるので、体温を維持しようとするとそれだけ多くのエネルギーを消費する必要があるんだ。
ネズミが常にエサを食べているのはそういう理由があるのだ。
でも、冬の間は体温を維持できるほど大量のエサが確保できず、さらに、いつも以上に熱生産が必要になるので、いっそのことエネルギー消費をできるだけ抑えて眠っているというわけ。
こっちはまさに「冬眠」なんだよね。

変温動物とは違って、一定程度の体温は保っていて、常に気温より高い温度になっているみたい。
それで必要最小限のエネルギー変換をするんだって。
ほ乳類の場合は、冬眠前に食いだめをして、体にしっかり脂肪を蓄え、それをちょっとずつ燃焼させて生きながらえるんだよ。
普通に生活しているときに比べて代謝のレベルは数十分の一にまで低下するというんだからおどろきだよ!

冬眠をするほ乳類としてはクマのような大型のものもいるけど、実は、その冬眠は小型ほ乳類の冬眠とはまた違ったものなのだ。
クマなどがするのは「冬ごもり」と呼ばれるもので、普通に眠っている状態が長く続くもの。
おなかがすいたりすると途中で起きてエサを食べたりもしていて、飲まず食わずで春を待つわけではないのだ。
リスなんかでも時折目覚めてエサを食べることがあるそうだけど、クマの場合は体温の低下も数度程度で、外気温より少し高い程度まで下がる小型ほ乳類とはやはり違うのだ。
ちょっとした刺激でもすぐに目が覚めるらしいよ。

SFでよく出てくるコールドスリープなんていうものは、人間の体を冷やすことで極限まで代謝を抑え、より長期間生きながらえさせようとするもので、よく不治の病にかかった人が未来に治療を受けられるように、というので出てくるよね。
これはまさに冬眠に発想のヒントを得たものだけど、ずっと安定して冷やし続けることは大変だし(途中に停電があったら大変なのだ!)、どこまで冷やしていいものか実験しないといけないなどの問題もあるんだよね。
いっそのこと冷凍する手もあるけど、細胞の中の水分が凍結してしまってはいけないので、それも簡単ではないのだ。
現在では、精子や卵子、受精卵などの生殖細胞を冷凍保存する技術はほぼ確立されているようだけど、それも100%復活させられるわけではないので、体丸ごとを冷凍して復活させるというのは相当難しいのだ!

2010/03/27

不毛地帯?

職場に置いてあった日経サイエンスをちらちらと見ていたら気になる記事を発見。
それは、なぜサルの仲間のうち、人間だけが「裸」なのか、というもの。
確かに、人間に一番近いとされるサルの類人猿もみんな毛深いよね。
で、気になったので中身を読んでみたのだ。
今回はその紹介だよ。

これまでけっこう信じられていた説のひとつは、人間への進化の過程でいったん半水棲生活を送っていて、その名残で毛がない、というもの。
これは、水棲ほ乳類の中でも、イルカやクジラの仲間には毛がない、という事実から発想を得たものなんだとか。
水の抵抗を少なくするために毛がなくなり、体も魚と同様に紡錘形になっているよね。
でもでも、ここで忘れちゃいけないのが他の水棲ほ乳類たち。
水の中に棲んでいると言っても、また陸上に生活の場を移したということは、水中と陸上を行き来していたはずなのだ。
で、そういう動物でいうと、ラッコ、アザラシ、アシカ、カワウソなどなどがいるわけだけど、どれも毛皮があるんだよね(笑)
イルカやクジラみたいに魚類と同様の生活を送るのならまだしも、陸上にもどった人間が毛をなくすのは考えがたいのだ。
体の形はサルのままだしね。

で、そこで研究者たちは考えたらしいんだけど、着眼点は至ってシンプルで、「裸」である方が毛皮があるよりも有利なことはないか?、ということ。
つまり、毛がない状態の方が有利な生活形態になったので、自然選択で毛の少ない個体が選ばれ、現生人類のような「毛のないサル」になった、という考え方だよ。
一般的な進化生物学の考え方で、当たり前と言えば当たり前なんだけど、これまではどうしても、「毛が必要なくなったからなくなった」と考えがちだったようなのだ。
そんなこと言っても、進化の過程では必要だったけど、今となっては不要なものが「進化の痕跡」として残っていることもあるから、やっぱり無理がある考え方なのだ。

で、結論から言うと、「毛のないこと」のメリットは、発汗による冷却機能が向上すること、なんだそうな。
動物の場合、人間のように汗をかくことはまれで、イヌやネコは暑いときに舌を出して「はぁはぁ」して放熱しているよね。
人間のように汗をかいて体を冷やしているのはウマくらいなのだ。
これは、毛皮にくるまれているとそこに汗が貯まってしまって乾きにくい=蒸発して気化熱を奪ってくれない、ということ。
お風呂に入った後、体はタオルでふけばすぐに乾くけど、髪の毛はなかなか乾かないのでドライヤーを使うよね。
それと同じで、毛皮は体温を保つために保温機能は高めるけど、そのために発汗による冷却機能は下がっているのだ。
つまり、人間はあるときから、体を温めるよりも、冷やすことの方が重要になる生活形態に移行した、と考えられるわけ。
ちなみに、ウマの毛皮をみるとわかるけど、非常に短髪でその上を汗が流れるのだ。
なので、走らせた後のウマはよくワラで汗をふいてあげないとカゼを引いてしまうんだよ!

では、なぜ保温よりも冷却が重要になったのかだけど、それは、人間が森を出て、草原で暮らすようになったことと関係している、と書かれていたよ。
森の中にいる限りは、食べ物もそれなりにあるので、基本的には採取生活ですむのだ。
すると、できるだけエネルギーを節約して、時々食べ物を食べる、という生活の方が有利なわけ。
一方、草原の場合は、食べ物も豊富でなく、何より身を隠すところもないので、常に狩猟や隠れるために動き続けなければならないのだ!
これが冷却機能が重要になった理由で、長時間動き回るからこそ、体から適切に排熱することが求められたんだよ。
人間は短距離走ではほとんどどの動物にも勝てないほど足が遅いけど(100mを10秒で走れても時速は36km/hで、カバの最高時速の40km/hより遅いのだ。)、長距離となると断然人間が有利なんだって。
実際にマラソンのように長時間走り続けることができるのは人間くらいで、それも汗をかいて体を冷やしながら動けるからなんだそうだよ。

記事の中では、この冷却機能の向上がもうひとつの恩恵をもたらした、と考察しているのだ。
それは脳の発達。
あまりにも高熱になると脳機能に障害が出ることが知られているけど、それくらい脳という組織は熱に弱いそうなのだ。
ところが、きちんと体を冷却できるようになったので、熱に弱い脳を大きく発達させることができるようになるのだ。
実際、森に棲んでいたと思われる猿人は脳の容積がかなり小さく、ほとんど類人猿と変わらないけど、草原に棲んでいたと思われる原人まで来ると格段に脳の容積が大きくなっているそうなのだ!
走り回るために毛をなくしたことで、ついでに脳が発達してより高次で複雑な脳機能を持つに至ったというわけ。
これってなんだかすごいよね。

というわけで、なかなか興味深く読めて、感心するところもあったのでついつい紹介したくなったのだ。
こういう研究は考えを巡らせるだけで、検証できないことだけど、いかに矛盾なく説明できるかという点で考えていく、というのは非常におもしろいのだ。
これこそ人間の思考力の極みだよね。

2010/03/20

マグロ問題はマクロな視点で

最近ニュースでよく取り上げられている食材と言えばクロマグロ。
日本人の食生活には欠かせない存在が禁輸措置で価格が高騰するかも、ということだったんだけど、なんとか回避できたみたいだね。
でも、クロマグロって超高級品だから、もともと庶民が口にする機会はごくごくまれだったような・・・。
更に手が出せなくなるってことかな?
で、せっかくなので(?)、今回はマグロについて調べてみたよ。

マグロはあたたかい海を回遊している大型肉食魚類のひとつで、海の食物連鎖でも最上位に位置する海の王様。
日本近海でもとれるけど、多くはインド洋や太平洋、大西洋といった外洋で水揚げされるのだ。
広い海を悠々と、というか、かなりの超スピードで泳いでいるんだよね。
その時速は最大で100ノットと言われるから、時速180kmを超える速さだよ!
おそろしく速く泳いでいるのだ。

でもでも、よく言われるように、マグロは泳いでないと死んでしまうんだよね・・・。
これは、自分でえらぶたを動かして呼吸することができないためで、えらぶたを開いた状態で泳ぎ続けることでえらに海水を通し、呼吸をしているのだ。
止まるとえらに海水が入らなくなり、呼吸できなくなるというわけ。
これはサメも同じだよ。

そのため、マグロは持久力に優れていて、その証拠があの独特の赤身なのだ。
赤身の肉質は筋肉中にミオグロビンが多い証拠。
これは有酸素運動に必要な酸素と結合するタンパク質で、人間でも長距離走のランナーは筋肉が赤いというのだ。
逆に、スプリント型の瞬発力が必要とされるアスリートは筋肉中にミオグロビンが少なくて肉質が白っぽくなるよ。
これが白身の魚で、普段はゆったり泳いでいるけど、とっさの時にさっと急加速や急展開して逃げ回るような魚に多いのだ。
さらに、マグロの場合は独特の紡錘形の体型による水の抵抗を抑え、より少ないエネルギーで泳げるようになっているんだ。
しかも、トロに代表されるように脂肪も蓄えているので、その脂肪を有酸素運動で燃焼させながら長時間の運動ができるようになっているよ。

ただし、常に泳いでいるためか、マグロは水揚げされてからも脂肪の燃焼が続いていて、放っておくと体温が上昇していってしまうのだ。
それにより、すぐに冷やしたり、尾の付け根を切って血を抜いて「活け締め」しめないと身が白っぽくなってしまうのだ。
これがいわゆる「身焼け」という現象で、せっかくの味が損なわれてしまうんだよね。
なので、つり上げられたマグロはすぐに氷水につけられたり、冷凍されたりするのだ。
そうしないと鮮度と味が保てないんだ。
泳いでいる間は海水でどんどん冷やされているようで、この体温上昇は侮れないもののようなのだ。

このマグロにもいくつか種類があって、その中でも最上等のものと言われるのが本マグロ。
今回まさに話題になったクロマグロだよ。
希少価値が高く、なかなか本物にはお目にかかれない高級魚なのだ。
次に高級なのはクロマグロとして市場に並ぶタイセイヨウクロマグロ。
本マグロが日本近海から太平洋にかけて生息しているのに対し、こちらは名前のとおり大西洋に生息していて、大きさもちょっと大きめみたい。
そして、インド洋のあたりにいるのがミナミマグロで、これが寿司屋でもよく名前を見かけるインドマグロ。
身に脂が豊富なので、寿司ネタのトロとして珍重されるのだ。

以上が高級マグロで、そのほかが庶民的(?)なマグロ。
その代表格は目が大きいことから名付けられたメバチマグロ。
日本での流通量は最大で、スーパーなんかで見かけるお刺身はこのメバチマグロが多いよ。
ツナ缶として加工されることが多いのはビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)やキハダマグロ。
小型のマグロで、赤身が多く脂肪分が少ないのでツナ缶に加工されるんだけど、その中でもビンナガマグロはホワイトミートと呼ばれ高級品なのだ。
生食需要の高まりでビンナガマグロが「ビントロ」としてトロの部分が寿司ネタに使われることも増えてきたみたい。

いずれも世界的に食用に供されるようになったのでだんだん漁獲量が減ってきていて、それで絶滅危惧種に指定されているものもあるのだ。
今回のクロマグロの禁輸措置もそういった乱獲を抑制する意味合いがあったわけだけど、マグロを食べている国と輸出している国の意向が合致して賛成・可決に至らなかったようなのだ。
とは言え、そのままとり続けたら減っていくわけで、漁獲量を制限したりする必要はあって、その調整の枠組みはあるのだ。
さらに、ハマチなどの魚のように養殖の技術も開発されつつあって、現在では幼魚を育てるだけでなく、卵を孵化させてからの完全養殖にも成功しているみたい。
ただし、もともと長距離を回遊する性質があるし、皮が弱く、すぐに傷ついて死んでしまう、成熟に時間がかかるなどの課題があって、コスト高みたい。
ただし、とれなくなれば重要な技術にはなるんだよね。
ちなみに、稚魚から育てる養殖の場合、逆に稚魚の乱獲にもつながるので、生体数の維持という点では問題があるのだ。

マグロは日本ではかなりむかしから食べられていたことが知られていて、縄文時代の貝塚からも骨が見つかったりしているんだって。
でも、すぐに実が腐敗してしまって扱いづらく、今のように全国各地で食べられるというようなものではなかったようなのだ。
江戸時代には赤身を長期保存されるために醤油ベースの調味ダレにつけた「ヅケ」がメインで、それが寿司ネタにも使われていたようだけど、今とは違って下魚扱いで庶民の食べ物だったそうだよ。
お金持ちは鯛などの白身の魚を珍重していたのだ(落語の「目黒のさんま」もそうで、むかしは脂がのった魚はどちらかというと下品な食べ物だったのだ。)。
それが戦後になって冷蔵・冷凍保存技術が進んで流通が可能になると全国的に食べられるようになり、更に、味覚の変化で脂ののった身が好まれるようになると、トロがもてはやされるようになり、現在のように高級魚になっていったのだ。
近代化後もツナ缶に加工されることが多かったわけで、大きく扱いが変わったみたい。

ちなみに、俗にカジキマグロと呼ばれるカジキ類はマグロとはまったくの別種で、身の肉質や味がマグロに似ているのでそのように呼ばれるみたい。
カジキは口先が剣状に鋭く延びている分だけマグロより体長は大きいけど、ほぼ同じくらいの大きさの大型肉食魚類。
やはり海の食物連鎖では最上位に位置しているのだ。
カジキの場合、新鮮なものなら刺身も食べられるようだけど、主には焼いたり揚げたりと火を通すことが多いよね。
身は蛋白でありながら適度に脂ものっていてぱさつかないので、普通にソテーにしてもおいしいのだ。

マグロやカジキでもうひとつよく話題になるのは水銀等の生物濃縮の問題。
食物連鎖の頂点に立つので、水質の汚染があると、水銀などの有害物質が体内に貯まってしまうのだ。
これは水銀などの有害物質はなかなか排出されないので、体の中に蓄積されてしまうからなのだ。
マグロなんかは大量の小魚を食べるので、その分がどんどん貯まっていってしまうんだ。
なので、妊婦さんにはできるだけマグロやカジキなどの大型魚類を食べさせない方がよい、と指導されているよ。
最近はそういうところも気をつけないといけないから大変だよ(>_<)

2010/03/12

なめしてガッテン

新婚旅行でイタリアのフィレンツェに行ってきたんだけど、フィレンツェの名産と言えば革製品。
確かに街中にも自分の工場で革製品を作って売っているお店を見かけるのだ。
いわゆるブランドものではないけど、けっこう人気の品みたい。
かく言うボクも、お財布を購入してしまったのだ!
で、気になったのは革製品を作る前段階の皮なめし。
なんかしていることはわかるんだけど、いまいち何をしているかがよくわからなかったので、調べてみたのだ。

皮なめしというのは、動物などからはぎとった生の「皮」を加工して、製品原料となる「革」に加工することを指すんだって。
生きている間は伸縮性も柔軟性もあるけど、死んだ後の皮をそのままにしておくと当然腐ると、徐々に硬化してきてぼろぼろになってくるので、手を加えて腐敗を防ぎ、柔軟性と伸縮性を維持させる技術なのだ。
さらに、水や熱に対する耐性も高め、長持ちするようにするんだよ。
確かにハンドバックやベルト、お財布が腐ってきたらやだよね・・・。

具体的には、生皮から腐敗しやすい動物性油脂やタンパク質を除去し、網目のシート状構造を構成している繊維タンパク質のコラーゲンを安定化させるんだ。
でも、そのままだと少し固いので、そこに後から油脂を加えてしなやかにし、場合によっては表面加工をしたり、染料を加えて色を付けたりするよ。
古い加工法では、火の上で皮を拡げて煙でいぶし、薫製と同じように皮のタンパク質を変質させて長持ちさせるということをしていたようだけど、これだとどうしても固いまま固まってしまうんだよね。
で、できたものをよくたたいたりしていると多少やわらかくなってきて、やっと製品加工できるようになるのだ。
でも、そんなにしなやかな仕上がりとはいかないのは当然だし、煙でいぶしているだけなので中までタンパク質を変質させることはできず、そのためにそんなに長期間もたないのだ。

そこで発明された加工法が皮なめしで、まず生皮を水に浸して柔らかくし、川に着いている肉や脂をよくそぎ落とし、脱毛した後に消石灰を加えるのだ。
そうすると液中で水酸化カルシウムができるんだけど、これにより液性が塩基性(アルカリ性)になって、コラーゲンのような繊維状でない余計なタンパク質を溶かし出すんだ。
これはタンパク質中のアミド結合を加水分解し、より水にとけやすい分子量の小さなポリペプチドに分解する作用があるためだよ。
水酸化ナトリウム溶液を触ると指の表面がぬるぬるするけど、あれは指の表面のタンパク質が水酸化ナトリウムで溶かされているためで、あれと同じようなことが起こるのだ。
さらに、水酸化カルシウムによって皮の中に含まれる脂肪酸が鹸化され、水に溶けるようになるのだ。
こっちは手作り石けんと同じ原理で、脂肪酸と水酸化カルシウムが反応して石けん用の物質ができるんだけど、それは水によく溶けるので皮の中から脂肪分が除去されるということなのだ。

余計なタンパク質と脂肪を取り除いたら、今度は脱灰。
これは酸を加えて中和するとともに、液中からカルシウムを除くのだ。
一般にカルシウム塩は水に溶けにくいものが多く、酸を加えていって液性を酸性にまで持っていくとカルシウム塩が沈殿するんだ。
最初に入れて消石灰由来のカルシウムを除くので脱灰というわけ。
さらに、液性を酸性にしておくと、次のなめし工程に使うタンニンが皮に浸透しやすくなるのだ。

今では工業的に作られたものが使われることが多いようだけど、むかしは柿渋などの天然植物由来のタンニンを使ってなめしを行っていたのだ。
酸性溶液でもタンニンはなかなか皮に浸透していかないので、薄い溶液から徐々に濃い溶液に何度もつけていくことで、皮の中までタンニンがしみ込んでいくようにするんだって。
タンニンがしみ込んでいくと、繊維状のコラーゲンなどのタンパク質と反応し、網目状に絡み合っている繊維タンパク質同士をさらに化学反応で結びつけて、その網目構造を安定化させるのだ。
これにより熱に強く、丈夫で長持ちする革になるというわけ。

でも、このままではまだ固いので、この後に油脂を加えてなめらかさ、しなやかさを出すのだ。
シャンプーした後にリンスをすることでとりすぎてしまった油脂を補充するのと同じようなものだよ。
なめしが終わったら、液性を中和し、よく水洗い。
その後、半乾きのうちにヒマシ油などの加脂剤をまんべんなく塗り込んでいくのだ。
染料をしみ込ませたいときはこの工程と合わせて行うみたい。
で、引っ張ってよく乾かしたら、たたいて伸ばしてやわらかくするのだ。
最後に表面を磨いてできあがり。

このタンニンなめしの場合、何度も溶液につけないといけないのでどうしても工程数が多くなるのだ。
そこで考案されたのが化学的になめしを行うクロムなめし。
これはタンニンの代わりに塩基性硫酸クロムなどの化学薬品(いわゆるミョウバンのようなもの)を使ってなめすんだけど、よく浸透するので一度ですむのだ。
この場合、クロムイオンが間にはさまって繊維タンパク質同士を錯体として架橋することで、網目構造を安定化させるのだ。
タンニンでなめすと自然と仕上がりは茶色くなり、型くずれしにい、染料で染めやすい、吸湿性がよい、使い込んでいくうちにつやが出てなじんでくる(柔らかくなってくる)などの特徴のある革ができあがるんだけど、クロムなめしの場合は、仕上がりが青白く、伸縮性が翼柔軟でソフト、吸水性が低く水をはじく、耐久力があり熱に強い、といった特徴の革になるんだって。
ただし、クロムなめしをした革を焼却処分すると有害な物質が出てくるので、最近では原点回帰でタンニンなめしが見直されているらしいよ。

ようは余計なタンパク質と脂肪を除いてから、繊維タンパク質を変性させて安定化させればよいので、他にもアルデヒド・ホルマリンやジルコニウムなどの金属イオンでなめすこともできるみたい。
さらに、むかしながらの手法としては、油をよくしみ込ませてなめす方法もあるのだ(ただし、耐久力などは低め。)。
さらに、日本の伝統的な白なめしという方法では、生皮を川に着けてバクテリアの力を借りて脱毛し、その後塩入れ、菜種油による油入れを経て、天日干しをしながら足でもんで徐々に柔らかくしていく、という一切のなめし剤を使わない方法もあるんだって!

さらに、なめした革の加工法としては、表面にエナメルペイントを施したエナメル皮(靴などにうよく使われるつやつやのやつ)、毛でなくて肉が付いていた内側の方の表面をヤスリなどでけずって起毛させたスウェード(表面がビロード状になったやつ)、逆に毛のついていた外側をヤスリなどでけずって起毛させたヌバック(いわゆるデザイン目的のダメージ加工)などなどがあるのだ。
上からロゴなどをプレスして型押しもするし、クラッキングと称してわざと最初から表面にひび割れを入れることもあるのだ。
加工品を作ってから脱色・染色をするものもあるみたい。
スプレー缶なんかもあるけど、表面に樹脂の膜を吹き付けてはっ水・防水加工をすることもあるよね。
と、様々な目的・用途に向けて加工されていくのだ。

この天然皮革の対極にあるのが人工皮革。
いわゆる合皮、合成皮革で、これはベースとなる布地に樹脂などを付着させて皮革のようにしたもので、天然皮革に比べて手入れが簡便、品質が安定、水に強いなどの特徴があるよ。
ただし、やっぱり色合いがチープな印象を与えたり、使い込んでいくうちになじんでくる、ということもないので、人工皮革の方がもてはやされるのだ。
さらに、むしろ合成皮革の方が劣化が早い携行があるんだよね。

というわけで、皮なめしについて調べてみたけど、けっこう奥が深い技術だよね。
今となってはどういう化学反応が起こることで丈夫で長持ちな革になっているかがわかっているけど、それを経験的に試行錯誤の末に培ってきたんだからすごいものだよ。
革製品って身近なものだけど、あなどれないよね。

2010/03/06

とろっとした乳

春が近づいてきて、八百屋さんやスーパーでもイチゴをよく見かけるようになってきたのだ。
お菓子でもイチゴ味のものが季節限定で増えるんだよね。
で、イチゴと言えば日本人におなじみなのがコンデンスミルク。
ボクは酸味があるのが好きなのでそのまま食べることが多いけど、コンデンスミルクをかけて濃厚な甘みを楽しむ人も多いよね。
でも、このコンデンスミルクって、加工乳なんだろうな、ということはわかるんだけど、どういうものなのかよく知らなかったので、ちょっと調べてみたのだ。

いわゆる「コンデンスミルク」と呼ばれている缶やチューブに入ったどろどろの乳製品は、食品衛生法に基づく厚生労働省令の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(通称「乳等省令」)」においては「加糖練乳」と定義されているのだ。
乳脂肪分8%以上、乳固形分28%以上、かつ、すべての糖分58%以下というのが成分規格なんだとか。
これを見ただけでも、カロリーが高そうだよね、半分以上が糖分なわけだし。
英語ではsweetened condensed milkというらしいので、コンデンスミルクというのは和製英語みたい。

甘みの強い乳製品というイメージがあるけど、もともとは糖分を加えて浸透圧を高くすることで雑菌の繁殖を抑え、保存性を高くするために作られたらしいのだ。
一般的には牛乳に砂糖を加えて煮詰め、液体に光沢が出てきたくらいで加熱を止めて冷却。
しばらく寝かせておくと粘性の高いコンデンスミルクができあがるのだ。
しょ糖(砂糖)は結晶化せず、乳糖は最小限の結晶となる限度まで糖分を添加しているそうで、ぎりぎりでざらつき感のない、粘度の高い乳液にしているんだって。
もともと保存用なのでむかしのものは容器に充てん後の加熱殺菌は行っていなかったようだけど、今は耐熱式のチューブなんかもあるので加熱殺菌後に出荷することが多いみたい。

日本ではイチゴにかけたり、かき氷にかけたりというのが一般的だけど、ベトナムコーヒーではコーヒーミルクの代わりに使うんだよね。
生クリームを入れるウインナーコーヒーよりもさらに甘く、濃厚なミルク感のコーヒーになるのだ。
今はジョージア・ブランドの一員になっているマックスコーヒーもコンデンスミルクを入れることで甘さと濃厚さを売りにしていた缶コーヒーだったんだよね。
当初は新鮮な牛乳が得られないところで水やお湯で割って飲んだりしていたらしいんだけど、さすがに流通が発達してたいていの地域では生乳が手にはいるようになったので、今ではそういう使い方をすることはないのだ。
粉状の脱脂粉乳だと食品材料としてよく使われるんだけどね。

コンデンスミルクは、加糖練乳というくらいなので、糖を加えない練乳もあるのだ。
それが無糖練乳。
こっちは乳等省令で「濃縮乳であって直接飲用に供する目的で販売されるもの」とされていて、その規格は「乳脂肪分7%以上、乳固形分25%以上、かつ、細菌数0」なのだ。
コンデンスミルクと違って過剰な糖分で雑菌の繁殖を防げるわけでないので、「細菌数0」という基準が加わるんだよね。
一般的には、牛乳を加熱殺菌して半分くらいになってとろみがつくまで煮詰め、それを感などの容器に封入してさらに加熱殺菌をするのだ。
生乳を煮詰めるだけでなく、脱脂粉乳やカゼイン(乳タンパク)などの粉末乳製品や植物性脂肪、増粘多糖類(いわゆる寒天のようなもの)を加えて風味を付けるものが多くなってきているとか。
そのものを見かける機会はあまりないけど、ホワイトソース(ベシャメルソース)やミルク風味のお菓子の原料に使われることが多いみたい。
これは英語でevaporated milkと呼ばれるので「エバミルク」と呼ばれることもあるけど、ときどき飲食店で業務用の「エバミルク缶」を見かけることがあるよね。

練乳はさらに奥が深くて、糖を加える・加えないだけでなく、生乳原料が脱脂乳原料かの違いもあるのだ。
脱脂乳に糖を加えて煮詰めれば加糖脱脂練乳、そのまま脱脂乳を煮詰めれば無糖脱脂練乳。
コンデンスミルクもエバミルクも規格上乳脂肪分の基準があるので、脱脂乳由来の練乳は別のカテゴリーにわけないといけないんだよね。
乳脂肪少なめ或いは脂肪0とうたった乳製品・ミルク風味食品に使われるみたい。

日本ではあまりなじみがないけど、コンデンスミルクをさらに火にかけて煮詰めていくとできるのがミルクジャム。
南米ではドゥルセ・デ・レチェとして知られるキャラメル風味の乳製品なのだ。
キャラメル風味だけど茶色くなるのは糖同士が重合反応をしていくキャラメリゼ(カラメル化)ではなく、糖とアミノ酸が反応するメイラード反応なんだって。
トーストやごはんのおこげ、黒ビールやチョコレートの色素と同じようなものだよ。
キャラメルは生クリームに水飴、砂糖、バターなどをまぜて加熱しながら練り上げるので、できあがった姿は似ているけど別物なのだ。
キャラメルがソフトキャンディとして主に食されるのに対して、ドゥルセ・デ・レチェはそのまま固めて食べるだけでなく、スプレッド(ピーナッツバターのようにパンにぬるもの)として使ったり、お菓子の原料にしたりするみたい。

というわけで、意外に牛乳を濃縮しただけのように見えても広がりがあるのだ。
乳製品は発酵させたり、乳脂肪分を分離させたりといろいろと加工されるけど、加熱濃縮に糖分添加でさらにバリエーションが広がるんだねぇ。
日本ではそんなに乳製品を食べてこなかったのでよくわからない部分も多いけど、それこそ欧米の文化では牛乳を使い尽くす的な発想があったんだろうね。
感心するのだ。