2017/12/30

ひーひー鍋

フランス人は辛いものが苦手なようで、あんまり辛い料理がないんだよね・・・。
インドカレーを食べても、タイ料理を食べても、かなり辛さがマイルド!
日本のインドカレーやタイ料理も本場に比べれば辛くないんだろうけど、フランスのものは全く辛みがないと言っても過言ではないのだ。
そんな中、フランスで食べられるめちゃくちゃ辛い料理があるんだ。
それは、中国の火鍋。
中華料理は比較的多いんだけど(ベトナムやカンボジアの人がyっている偽中華も多いけど)、その中でも、四川風の火鍋を提供している店がわりとあるんだよね。

火鍋は中国式の鍋料理で、辛いスープに肉や魚介類、野菜を入れ、煮えたところで取り皿にとってたれや薬味をつけて食べるもの。
最近のメジャーは、鍋の真ん中に式があって、2種類のスープが入っているものだよね。
たいていは赤い辛いスープと、白い白湯スープなのだ。
食べているうちに混ざっちゃうんだけど(笑)
ボクがパリで食べたのもこの方式。
でも、スープはいろんな種類が選べて、劇辛、中辛、微辛、タイ式、とんこつ、トマトなどから選べたよ。

火鍋の起源には諸説あって、ひとつは、内モンゴルの 羊肉料理から発達したというもの。
日本でもチェーン展開をしている「小肥羊」はもともと「内蒙古小肥羊餐飲連鎖有限公司」という中国の会社。
辛いスープの中にニンニクやショウガに加え、クコの実や ナツメ、竜眼などの生薬を入れたもの。
「医食同源」もうたっていて、体によい鍋と宣伝しているよ。

もうひとつの起源は、四川省。
フランスはこっちかな?
四川では、船乗りが牛や豚の内臓に塩や山椒を振りかけて鍋にしていたそうで、それが「重慶火鍋」の原型。
新大陸から唐辛子が伝わるまでは、中華山椒のしびれる辛さの料理だったのだ!
 でも、すでに殷の時代から「鼎(かなえ)」に肉とスープを入れて火にかける料理があったようで、鍋料理はあったようなのだ。
辛い味付けになったのがいつか、食べ方としてたれや薬味をつけて食べるようになったのはいつか、ということなんだろうね。

清朝の時代には今の形に発達し、満願全席にも加えられて、豪華なものとなったようなのだ。
庶民は2種類のスープなんて使えないし、生薬系の材料も簡単には手に入らないよね。
もともとはクセの強い羊肉をおいしく食べるための 料理なわけだけど、今では牛や豚も普通に使われるよね。
これもグローバル展開かな?

とりあえず、フランスでどうしても辛いものが食べたい場合は中華が手っ取り早いのだ。
四川系の店だと麻婆豆腐や辛いソースの蒸し鶏なんかもあるしね。
でも、フランスに来てから辛いものをあまり食べないので、辛さにだいぶ弱くなってきた・・・。

2017/12/23

祝日も移動

今上天皇陛下の御退位の準備が着々と進んでいるようなのだ。
その中で、最近話題になっているのが、12月23日の天皇誕生日の今後の扱い。
次に測位される皇太子殿下の誕生日は2月23日なので、天皇誕生日はそちらに移る予定。
で、問題は、12月23日が別の祝日に指定されるのか、平日になるのか、という点。
クリスマス直前という非常にありがたいタイミングの祝日だっただけに関心が高いのだ。

官房長官の会見でも質問が出たようで、そのときの政府の見解は、天皇誕生日は12月23日から2月23日に移るので、そのままだと12月23日は平日となる、というもの。
加えて、今後引き続き12月23日を祝日とするかどうかは広く国民の間での議論が必要、とも付け加えているのだ。
日本は国民性としてあまり休みを取りたがらず、有給休暇の取得率も低いので、現状で祝日・休日は世界でもトップレベルの数なんだよね。
なので、このタイミングでまた祝日を増やすかどうかは議論の必要あり、ということのようなのだ。

官房長官の言っている天皇誕生日の移動というのは、先の通常国会で成立した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成29年法律第63号)」による「国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)の改正のことなのだ。
皇室典範特例法の附則第10条が祝日法の一部改正になっているんだ。
祝日法では、第2条で「国民の祝日」を1月のものから順番に列記していて、現在は12月23日の天皇誕生日が最後なのだ。
で、今回の改正では、「春分日」の「春分の日」の前に2月23日の「新」天皇誕生日を挿入し、12月の「旧」天皇誕生日を削ることにしているのだ。
ちなみに、「春分日」と「秋分日」は年によって変わるので、前年2月の「歴要項」の中で確定され、官報で公告されるよ。

で、上記の改正内容から明らかなように、天皇誕生日そのものが2月23日と変わってしまうので、12月23日は平日になってしまうのだ。
仮に、昭和天皇誕生日が「昭和の日」(最初は「みどりの日」)になったように祝日としたい場合は、また祝日法を改正して新しい祝日を法律に追加する必要があるのだ。
で、まだそういう動きはないから、きっと来年1月の通常国会には出てこないはず。
早くて秋の通常国会かな?
ちなみに、皇室典範特例法の附則第10条の施行日は、平成31年5月1日。
あと2年ちょっとあるわけか・・・。
祝日を追加する場合は相当期間の周知期間が必要だけど、そこで問題なく成立すれば、おそらく、平日の12月23日を迎えなくてすむかも。
ちなみに、多くの場合祝日法は議員立法で改正されてきていて、いきなり通常国会出てこないとも限らないのだ。

でも、通常は議員立法だとしても、祝日の話は国会議員の間でしっかり議論が行われるのが通例で、一番最近出来た「山の日」については、平成25年4月に超党派の議員連盟ができて、議論に紆余曲折があり、議員立法の中身がまとまって国会に祝日法改正案が翌平成26年3月28日。
つまり、1年近く議論しているのだ。
このときはどの日を休みの日にするかの議論があったからもめたからそのまま適用はできないけど、それなりに議員立法を出すのにも次官はかかるよね。

そして、法律が国会で可決され、成立したのはその年の5月。
でも、施行は平成28年、つまり今年からで、実際に最初に「山の日」が休みになるまでに成立から2年はかかっているんだよね。
ということは、来年秋の臨時国会に議員立法で祝日法が改正されると、その翌々年の1月1日に施行というのが濃厚と考えられるので、最初に12月23日を祝日にできるのは平成31年!
というわけで、もうすぐにでも動かないと間に合わなさそう。

でも、せっかくなら、12月23日の休みは残してほしいよね。
年末年始の休みをそこから開始できる、ちょうどよい祝日になっているし。
というわけで、国会議員の先生方におかれてはぜひぜひがんばってもらいたいものなのだ(笑)

2017/12/16

後ろから、前から、どうぞ

ボクもニュースで知っているだけなんだけど、最近の小学校の算数の授業では、「かけ算」の順番にうるさいらしいね。
なんでも、「5×2」と「2×5」は意味が違うので、文章題では、答えである「10」を導き出すのに、どちらの計算法を使ったかで○×が変わるんだって!
っていうか、意味不明なんでけど・・・。
自分が小学校のころはどうだったかなぁ?

曰く、その理由は、「かけ算の順番には意味があるから」なんだって。
例えば、「2人にリンゴを5つずつ配る場合、リンゴはいくつ必要か?」という問題があった場合、リンゴ5つのセットが2人分なので、5×2=10にしないとダメなんだって。
2×5では同じ答えになっても×なんだそう。
え!?、って思うよね。

というのも、実際の日常生活では、2人に5つずつリンゴを配る場合、5個のセットを2人に1セットずつ配る場合もあれば、2つとって一人に1つずつ渡すのを5セットやって配る場合もあるよね。
っていうか、けっこう後者のやり方をする場合が多いんじゃないかな?
でも、この後者の場合だと、計算方法は2×5だよね。
だとすると、2×5でも間違いではないはずなのだ!

これは数学的には当たり前で、自然数、整数、有理数(分数で表せるもの)、無理数(平方根や円周率のように無限に小数点以下の数字が続くもの)、複素数(虚数iが入ったもの)に至るまで、足し算(加算)とかけ算(乗算)については、「交換法則」が保存されているのだ。
「交換法則」とかいうと難しそうだけど、ようは、「+」と「×」の前後を入れ替えても答えは同じになる、ということ。
5に2を加えるのも、2に5を加えるのも数学的には同じ。
同様に、5に2をかけるのも、2に5をかけるのも数学的には同じ、なのだ。
「かけ算の順序には意味がある」とか言われも、さっきのように配り方次第ではかけ算の順序が変わることもあるわけで、ほとんど意味がないんじゃないかなぁ、と思うんだよね。

前後を入れ替えても答えが同じになるというのはその後の数学ではけっこう重要なことで、複雑な足し算・かけ算をするときに、計算しやすいように並べ替えたりできるのはこのおかげ。
さらに、中学校に入って文字式が出てくると、a×bとb×aが同じであると理解できないと、(a+b)×(a+b)=a+2ab+bという展開ができなくなるのだ。
下手に「かけ算の順番に意味がある」なんて染みこませちゃうと、ここでa×bとb×aが同じであるということを改めて説明しないといけなくなるんだよね・・・。
かえって面倒なような気もするんだけど。

高等数学になって行列の計算が出てくると、そこではじめて乗算について交換法則が保存されなくなるんだよね。
それを先取りしているんだ!、とか言うのかもしれないけど、多くの人は行列の計算なんてしないわけで・・・。
むしろ、これまでの数学では一般的に成り立ってきた乗算の交換法則が行列では成り立たない、と教えて方がわかりやすいとも思うのだ。
実際に、ボクが教わったときはそうだったし。
ま、行列のかけ算なんてもはやイメージできないんだけど(笑)

それにしても、もうちょっと柔軟に教えられないものなのかなぁ、とは思うよ。
こういう教え方をしちゃうと、型にはまった頭になっちゃって、形式が整ったテストには回答できるけど、現実の課題に算数・数学を応用する力は衰えるような気がするんだよね。
むしろ、さっきのリンゴの例みたいな話をしながら、かけ算の場合は、前後を入れ替えても意味が同じ、というような説明をした方が、子どもたちの興味も引けると思うんだけど。

2017/12/09

よ~く考えよう、予防は大事だよ~

先日、日本人の村中璃子さんがジョン・マドックス賞を受賞したのだ。
これは、Nature誌が主催しているもので、「多くの困難に遭いながらも科学的なエビデンスに基づき公益に寄与する仕事をした科学者・ジャーナリスト」に贈られるものだよ。
村中さんはもともと医師で、医療関係のジャーナリスト活動もしている人なのだ。
今回の受賞のきっかけになったのは、多くの批判を受けながらも常に「子宮頸がんワクチン」に関する情報発信を行ったことなのだ。
残念ながら、日本のマスコミはあまり報道しないのだけど、海外でが大きく報道されているし、日本国内でもツイッターなどのSNSを通じて情報が広まっているよ。

「子宮頸がん」は、そのほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)への慢性的な感染に起因すると考えられていて、このHPVへのワクチンを投与することで、未然に予防できるのだ。
このため、世界保健機関(WHO)も世界的に接種を呼びかけているし、多くの国で接種が推奨されているのだ。
ところが、日本だけは、公費補助がありながらも積極的には接種が推奨されておらず、そのことが国際的にはハンされているんだ。
かなり例外的な措置なんだけど、WHOから名指しで批判されるほど!
確実に予防できる「子宮頸がん」に対する対策を講じず、若い女性を危険にさらしていると言われているよ。
村中さんはこの件について、マスコミをはじめとして日本国内では「誤った」危険性ばかりが喧伝され、HPVワクチンの接種が阻害されているので、「正しい」知識を広めようと尽力してた、ということなのだ。

でも、こういう国内事情にはそれなりに経緯があるのも事実。
HPVワクチンが日本で導入されたのは平成21年。
まだこの頃は公費補助もなく、高価なものだったので普及しなかったんだけど、翌年、厚生労働省が市区町村が行う接種事業の助成を始めたことを受け、無料又は低額での接種が可能となり、広まっていくのだ。
平成24年には摂取率が2/2を越えるところまで行ったんだよ。
ところが、ここで問題が発生したのだ。

薬に副作用があるように、ワクチンにも「副反応」というのがあって、ワクチン接種後に何か「よくない事象(頭痛、発熱などなど)」が発生したとき、ワクチン以外の要因に特定できないものはワクチンの副反応として報告される仕組みになっているんだよね。
それがワクチン接種のせいなのか、ほかの要因に基づくのかはその時点ではよくわからないのだけど、事例が積み重なって、統計的に処理できるようになると、ワクチン接種と統計的に有意に関係しているかどうかがわかる、というもの。
たまたまほかの要因で発生した事象は頻繁には翁から、統計処理をすると外れる、ということなんだけど・・・。
実際には、「議事相関」というのがあって、本当は直接的には相関がないんだけど、第三の要因とそれぞれ相関関係があるために、見かけ上相関があるように見えてしまう、という場合があって、これが否定できないんだよね。
今回のケースもこれに当てはまっているおそれがあるのだ・・・。

HPVワクチンの重篤な副作用として問題視されたのは、「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」というもので、とにかく体中が痛くなって力が入らなくなる、というもの。
後遺症で障害が残ったという人も。
これがマスコミによって広まり、HPVワクチンの接種が危険視されるようになり、この世論に対して厚生労働省も、公費補助はやめないけど、自治体に対して積極的に接種を呼びかけるのをやめてもらう、という対応に出たのだ。
このため、摂取率は数%まで下がることに!
これが海外で批判されることになったんだよね。

問題なのは、この副反応がワクチン接種に起因しているかどうか、確実な科学的な証拠が全くないこと。
そして、日本以外ではこのような副反応が問題にされていないので、ワクチンとは別のところに原因があるんじゃないか、と考えられるところなのだ。
この点をジャーナリストとして村中さんは発信し続けたんだ。
実際、ワクチン接種が始まる前から、CRPSに似た症状は「心因性疾患」として思春期の女性のものとして報告されていて、ワクチン接種がちょうど思春期に当たるので、「思春期の女性」というファクターが重なることで、ワクチン接種とCRPSが見かけ上相関しているように見えている可能性があるのだ。
っていうか、海外ではワクチンとCRPSの関係は科学的証拠がないという理由で問題にされていないんだけど・・・。

今回も、本来であれば村中さんの受賞をきっかけにマスコミがこの件を取材し、広めてくれればいいんだけど、ほとんどそういうのがないんだよね・・・。
危険性を喧伝するのは「売れる」ネタなんだけど、「自分たちはまつがってました、本当はこうでした」というのはそもそも自分たちではあまり出したくないし、「売れる」ネタではない、ということなんだろうね。
なんだか闇の深さを感じるよ・・・。
でも、SNS等の発展もあって、「草の根」的に広まっているようだから、これをきっかけにして、ワクチンの摂取率が上がることを祈るばかりだね。

2017/12/02

何肉が正解か

よく地方ネタで話題になるのが、「肉じゃが」に入れる肉は何肉か、という問題。
父親が神奈川、母親が静岡の我が家は牛肉の薄切りを入れていたけど、関東では豚肉を使うのも多いと言われるよね。
そうすると、関西の人が、「肉と言えば牛」とか言ってくるのだ(笑)
地方や好みによっては「鶏肉」もあり得るよね。
諸般の事情で肉が入らない場合もあるんだけど・・・。

半ば都市伝説化している発祥譚として、東郷平八郎元帥が英国留学中に食べたビーフシチューを再現させようとしたが、和風の味付けでできあがったのが「肉じゃが」だった、というもの。
このエピソードを下に、鎮守府のあった京都の舞鶴と広島の呉がそれぞれ「発祥の地」を主張しているのだ。
今では互いに認め合って、双方が発祥地ということになっているらしいけど(笑)
でも、東郷元帥が司令長官になるころには、デミグラスソースは普通に洋食屋に普及していてハヤシライスもあったし、ビーフシチュー自体も安くはないけど洋食屋で食べられるものだったのだ。
なので、よくわからないから和風の味で再現しようとした、というのはあやしいんだよね・・・。
どうも、舞鶴が発祥地を主張するときに使っていたプロモーションの中でそういうことを言っていたのが広まってしまったみたい。

ところが、肉じゃがが日本を代表する家庭料理となるには、軍の貢献が大なのだ。
カレーライスとほぼ同じような話なんだけど、従軍しているときに食べた肉じゃががおいしかったといって各家庭で復員した人が食べるようになったのが広がったきっかけ。
そもそも「肉じゃが」という名称が一般的になったのも70年代中盤以降なんだとか。
これには学校給食での採用なんかも影響しているじゃないかな?
それまで各家庭で作っているだけだから名称はどうでもよかったわけだけど、学校給食になるとメニュー表に名前を載せないといけないからね。
にんじんやサヤインゲンの有無、糸こんにゃくなのか白滝なのか、などの些細な違いはあるものの、総体として学校給食のメニューに習って「肉じゃが」と呼ばれるようになったと推測できるのだ。
ちなみに、海軍経理学校で使われていた教科書のレシピでは、単に「旨煮」となっていたみたい(ちなみに、このレシピでは「牛肉」。)。

「肉じゃが」は軍隊にとっては非常にありがたい料理で、基本的にカレーとほぼ同じ材料なので、補給上有利なのだ。
でも、味付けは全然違うから、カレーとかぶるわけでもないし。
ジャガイモもタマネギも基本的には長期保存がきくし、熱量(カロリー)も高めなので、軍隊にもってこい。
カレーも肉じゃがも味付けがシンプルだから、調味料の量さえ間違えなければそんなに大きく失敗しないしね。
よく考えられたメニューではあるのだ。

それにしても、高度成長期以降に広まった料理なのに、いつの間にか家庭料理の代表選手になっていて、「おいしい肉じゃがを作る女性と結婚したい」なんて昭和男の願望にもなったんだからすごいよね。
ボクの世代は「お袋の味」的な受け止めなんだけど、言われ始めたときは「ハイカラな家庭料理」だったのかな?
いずれにせよ、家庭料理の人気メニューではあったんだろうね。

2017/11/25

信じても救われないことはある

フランスに来てからびっくりしたことがあるのだ!
それは、普通の街中の薬局で堂々と「ホメオパシー」という字を見ること。
なんと、フランスでは、一般的な「レメディ」は市販されていて、薬局によってはホメオパシー相談なるものまであるらしいのだ・・・。
日本ではすでに「ホメオパシーには科学的根拠はなく、プラセボ(偽薬)以上の効果はない」と日本学術会議、日本医師会、日本医学会などが見解を出しているので、信じられない光景なんだよね。
どうも、フランス社会にはかなり受け入れられているものらしい。

ホメオパシーというのは、18世紀末から19世紀初期にかけてドイツのハーネマン医師が提唱した代替医療のひとつ。
欧州では一時期非常にはやって、英国でも保険適用になっていた時期もあるんだけど、公式に
「科学的根拠がない」という調査結果が公表され、それも終焉を迎えようとしているのだ。
ところが、フランスではまだ保険適用もあるし、なんと、医師が処方箋にホメオパシーにおける基本的な錠剤である「レメディ」を処方することすらあるというのだ・・・。
なんと時代錯誤な。
日本にもあやしい民間療法や健康食品で詐欺まがいの事件があるから人のことは言えないけど、そこまで社会に浸透しているというのは本当に衝撃的だよ。

ホメオパシーの基本的な概念は、「病気は症状を起こす原因のもの」を使って病気や症状を治療するというもの。
少量の原因物資によって本来体に備わっている抵抗力が上がり、病気や症状が治る、ということなのだ。
具体的には、原因物質を極度に希釈し、その希釈液を砂糖玉に染みこませるのだ。
その希釈液の染みこんだ砂糖玉が「レメディ」で、これを服用することで、ごく少量の原因物質を体内に取り込み、「ならす」ということになるんだよね。

これだけ聞くと、現在わりとメジャーになったアレルギーの「減感作療法」に似ているんだよね。
花粉症を治すのに微量のスギ花粉に触れるようにして徐々に「ならし」、アレルギー症状がでなくなるようにする、とか。
これも危険性が指摘されていて、アナフィラキシー・ショックが出かねないし、全員に有効な方法でもないので、懐疑的に見ている人も多いよね。
でも、レメディについて言えば、安全性の面でははるかに上なのだ。
だって、希釈度合いが大きすぎて、もとの原因物質はほぼ含まれていないから(笑)

通常使われているレメディの場合、希釈度は10の60乗と言われているんだよね。
例えば、食塩(NaCL)の場合、分子量が23+35.5=58.5なので、1モルで約60gなのだ。
1モルは、アボガドロ定数なので、6.02×10の23乗。
つまり、1Lの水に食塩を1モル溶かした、約6%の食塩水の中には、6.02×10の23乗個の食塩分子が存在しているわけ。
ところが、これは10の60乗まで希釈するので、多く見積もっても、希釈された液中に存在する食塩分子の個数の期待値は10の36乗分の1個!
つまり、ゼロと見なしてよいわけ。
これはもうただの水なので、「減感作療法」で問題になるような問題は生じ得ないのだ(笑)

では、ホメオパシーを信奉している人はどう考えているかというと、例え原因物質が含まれていなくても、希釈の過程で原因物質の「型(パターン)」、「オーラ」、「波動」といったものが水の中に「記憶」されていて、それによって体の抵抗力が高まる、とかなんとか言うらしいんだよね・・・。
「水の記憶」まで出てきちゃったもう大変。
似非科学は相互に引き合ってしまうんだねぇ。
根拠がないのに互いに見た目上の「根拠」になってしまうのだ(>_<)

ちなみに、レメディを服用してまったく効果がないかというとそういうわけでもないのだ。
世の中には「プラセボ効果」というのがあって、偽薬であっても信じて服用していると、効果が見られるんだよね。
これはまさに「病は気から」というか、心理的な効果で本当に抵抗力が高まっていると考えられているけど、その効果はあるわけ。
でも、それ以上には効果がないというのが科学者の見解であって、であれば、レメディなどと言わず、普通に砂糖玉だけ服用すれば済む話。
さらに、こういう代替療法が悪質なのは、正規の、科学的根拠に基づく現代医療を受ける機会を結果として喪失していまう、ということなんだ。

山口で起きた悲しい事件として、新生児に与えられるべきビタミンKシロップが与えられず、代わりにレメディが与えられていたのでビタミンK欠乏症で赤ちゃんがなくなってしまうというものがあったのだ(山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故)。
これをきっかけに、日本学術会議や日本医師会・日本医学会が公式に見解を出すことになったのだけど、これは目も当てられない惨事だよね・・・。
でも、ここまでホメオパシーが社会に浸透してしまっているフランスでは、こういうことが影で怒っているんじゃないかと心配になるよ。

2017/11/18

千葉来た!

新たに「千葉時代(チバニアン)」が生まれそうなのだ!
これは、千葉県市原市で発見された地層で、地球の地磁気が逆転した痕跡が明確に残っていることから、国立極地研究所ほかが申請していたものが通りそう、とううことみたい。
イタリアからは、イオニア海近くの地層をもとに「イオニアン」という名称が申請されているらしいんだけど、日本の方が証拠が決定的なものだそうで、一次審査では有利だったんだって。
こうなると、地質学に「チバ」の名前が残ることになるよ。

地磁気が逆転するなんてすごいことだけど、過去360万年の間に11回起こっているとわかっていて、その最後が約77万年前。
で、その痕跡が千葉で見つかったというのだ。
その地層の中で見つかった鉱石などでそれがわかるんだって。
ちなみに、国際地質学連合に各時代の境界となる代表的な地層として「国際標準模式地」に選ばれると、地質年代の命名権が獲得できるとともに、その地層の場所にそれを示す「黄金の杭」が打たれるらしいよ。
観光資源になるかも。

この時代は、中期更新世と呼ばれる時代で、78万1000年~12万6000年前までの期間。
当時は気候が温暖で、海水面が高かったので、まだ日本列島が大陸と地続きで日本海が大きな湖だったころ。
千葉を含む関東平野にはかなり海が入り込んでいたみたいだよ。
東京23区なんかはほとんど海なんじゃないかな?

中期更新世のはじめの頃は原人(ホモ・エレクトゥス)の時代。
その後ネアンデルタール人が出てきて、中頃から現生人類(ホモ・サピエンス)も現れてくるのだ。
原人やネアンデルタール人は更新世の末期にはいなくなって、現生人類の世界になったみたい。
当時はいろんなヒト属が共存していたんだね。
やりとりとかはあったんだろうか?

動物の世界では、まだ巨大ほ乳類が跋扈している頃。
更新世末期から次の完新世にかけて大型ほ乳類が次々と絶滅して言ってしまうんだけど、これは更新世の後記に寒冷期に入ったためと考えられているよ。
大型のほ乳類は燃費が悪いので、寒い時代を生き残れなかった、ということなのだ。
でも、この時代の中頃には現生人類はすでに出てきているので、ギャートルズのように、マンモスを狩っていたいたかもしれないんだよね。
巨大ナマケモノのメガテリウムも狩りの対象だったようなのだ。

すでに恐竜はいない時代だけど、現生人類が現れる一方でまだ他のヒト属がいたり、大型ほ乳類が消えていったりと大きな変革の時だったんだね。
そんな時代の名前が「千葉時代」になるかもというのはなんかうれしいのだ。
それと、こういう機会があると調べて勉強になるから、いいよね。
教科書とかでも取り上げるのかな?

2017/11/11

江戸の味

米国に留学しているときはさほど恋しくならなかったのだけど、パリに来てからはアジア料理が無性に食べたくなるんだよね・・・。
やっぱりフレンチの味付けはしつこいから?
もちろん、東京ほど選択肢はないんだけど中華やベトナム料理、タイ料理、そして、「エセ」も含めて日本料理があるのだ。
ところが、ちゃんとして日本料理の店に行かないと、ただ単に醤油で味付けただけの料理が出てくるんだよね(>_<)

でもでも、ちょっと調べてみると、実は江戸時代だとそんな感じだったようなのだ。
料理屋では鰹節や昆布から出汁をとっていたみたいなんだけど、庶民には高級品なのでそんなものは使えず、基本の味付けは味噌と醤油。
江戸の豆腐料理として有名な八杯豆腐というのは、水・酒・醤油を6:1:1の割合で混ぜた煮汁で豆腐を煮たもの。
っていうか、出汁が入っていないんだよね。
で、この作り方をそのまま再現するとそんなにおいしくないのだ。

江戸時代の初期には味噌を造るときの副産物(味噌の上澄み液)である「たまり」が使われていたんだよね。
とろみが少しあって、色が濃く濁っているもの。
味噌の副産物なので「本格醸造醤油」とは違って原料はほぼ大豆のみで、けっこう塩気があるものだったようなのだ。
香りは本格醸造醤油の方がいいらしいよ。
ただ、味噌の上澄みなので、アミノ酸などのうまみ成分はしっかりあって、これが料理に調味料として使われていったようなのだ。

江戸の人口が増えてくると、たまり醤油だけでは足りなくなって、酒蔵の設備を使って醸造醤油が作られるようになったみたい。
関東の穀倉地帯で、水運も便利だった千葉で発達したのだ!
なので、野田なんかがまさにそうだよ。
このとき、原料に小麦が使われるようになり、澄んだ、薫り高い醤油が得られるようになったのだ。
関東式なので濃い口醤油で、色はたまりと同じくらい黒いものだよ。

で、江戸時代の料理と言えば、基本は味噌か醤油か塩で辛めにあじつけて、ごはんが進むようになっているのだ。
庶民はたくさんおかずを食べられないので、料理があっても何か一品、漬け物だけの時も、なんて感じ。
めざしであってもそんなに頻繁には食べられなくて、主なタンパク源は納豆や豆腐だったようなのだ。
で、さっきの八杯豆腐のようなおかずや、厚揚げを焼いたものなんかが食卓に並ぶわけ。

でも、ただ塩辛いだけではないんだよ。
納豆も漬け物もそうだけど、発酵の過程でそこにうまみ成分がちゃんとできているのだ。
江戸時代の味噌汁は出汁をとっていないのだけど、アサリの味噌汁だとアサリからうまみが出るし、人気だったと言われる納豆汁(すりつぶした納豆を入れる)も納豆のうまみが出るのだ。
さらに、江戸名物の佃煮なんかは、酒と醤油で煮るだけだけど、素材の方から出汁が出るので、しょっぱいけどうまみがあるものだったのだ。
こうして、現代にもつながるうまみ文化を享受していたわけ。
海外のエセ日本料理のようにただたんに醤油でいろと塩味がついているだけではないよ(笑)

さらに、現在使われているような醤油は大正年間になってから科学的手法も取り入れて大量生産されるようになったもの。
それまでの手工業で作られていた醤油は少し違うのだ。
今でも手作り醤油なんてのがあるけど、うまみが多いというよね。
なので、醤油自体がうまみをより多く持っていた可能性もあるのだ。
なので、出汁が入っていなくても、そこそこのうまみはあったはず。

とはいえ、やはり江戸時代の庶民料理はそこまでおいしいものじゃなかったみたい。
池波正太郎さんの小説にはおいしそうな江戸料理がたくさん出てくるけど、現代人が食べたらおいしいとかじるかどうかは微妙なのだ・・・。
しかも、現在手に入る材料でそのまま作っても味は再現できないんだよね。
醤油や味噌も違うし、豆腐なんかも江戸時代はもっと固い木綿豆腐だったはず。
なので、一般人には、江戸時代の料理の再現というのはなかなか難しくて、味の評価もしづらいんだよね。

2017/11/04

オトナ用の白い粉

大人用の粉ミルクがはやっているんだそうだよ。
赤ちゃんの完全栄養食なので、きっと栄養満点で体にいいだろうと段階の世代で粉ミルクを摂取する人が増えてきて、そこに目をつけたメーカーが改めて大人用のものを発売し始めたみたい。
団塊の世代だと、ララ物資の苦い思い出があるので脱脂粉乳を嫌うんだけど、それ以降の世代だとそういうこともないみたい。
むしろ、赤ちゃんが飲んでも大丈夫なものだと安心と感じているらしいのだ。

ところが、乳幼児用の粉ミルクは、赤ちゃんにとっては完全栄養食になっているんだけど、大人に対しては必ずしもそうではないんだよね。
例えば、赤ちゃんはミルクしか飲まないので、乳脂肪分が多く、カロリーが高くなるようになっているのだ。
必要な栄養素も赤ちゃんと大人では違うので、そのまま飲めばいいってものじゃないみたい。
さらに、牛乳だとおなかがゆるくなるから、と粉ミルクにする人がいるみたいんだけど、乳幼児用粉ミルクには乳糖がたっぷりと入っているので、乳糖不耐症の人がそのまま飲むとやはりおなかがゆるくなるのだ・・・。

なので、現在市販されている大人用の粉ミルクは、成分調整がしてあって、ビタミンが多く入っていたり、高齢者向けにはカルシウムが多く入っていたりと、製品ごとに特徴があるみたい。
よく成分表示を見て、自分にとってはどれがいいかを選ぶ必要があるようだよ。
中には脂肪が多かったりするのもあるから、注意しないといけないんだよね。
とりあえず、乳幼児用をそのまま使うのはダメだというのは基本なんだけど。

そして、もっと一般的な注意点として、粉ミルクはできるだけ水道水を使うのがよいようなのだ!
というのも、水道水のミネラル分を踏まえて成分調整されているので、ミネラル・ウォーターをへたに使うとミネラル分が多すぎたりする可能性があるんだって!
特に欧州系の硬水には要注意だね。
そして、赤ちゃんにあげるときも、よく人肌に冷ますと言うけど、70度の高温のお湯で溶かす必要があるみたい。
一昔前は、もっと低い温度、40~60度で溶かすこととされていたようなんだけど、粉ミルクにどうしてもコンタミしてしまう雑菌が繁殖するおそれがあるので、雑菌が死滅する70度にして、それを冷ます必要があるのだとか。
世界保健機関(WHO)からもそう推奨されているんだそうだよ。
ほ乳瓶の殺菌も大事だけど、ミルクの調整温度にも気をつけないといけないのだ・・・。
ま、大人が使う場合はそこまで神経質にならなくても大丈夫かもしれないけどね。

もともと粉ミルクは、生乳のままでは保存性が低く、かつ、液体でかさばるので、保存性が高く、容易に移送できるもの、として発達してきたのだ。
ほ乳類であれば、どの動物も母乳で育つのが基本なので、栄養に富んでいるのは確かなんだよね。
でも、腐敗も早いので、古来より、バターやチーズ、乳酒などの各種加工品が作られてきたのだ。
その中でも、最も保存性が高く、移送が容易なのが粉ミルクだよ。
しかも、水分がほとんどないので、乾燥した状態であれば、雑菌の繁殖の可能性も低いのだ。
戦後日本にララ物資で脱脂粉乳が大量に持ち込まれたのも、運ぶのが容易で栄養が豊富だからなんだよ。

工業的には、殺菌、均一化(ホモジナイズ=乳脂肪の粒の大きさをそろえる)をしてから、濃縮し、その濃縮した乳を噴霧しながら乾燥させるのだ。
そうすると、パウダー状の顆粒ができるんだよ。
そのままだと水に溶けづらい場合があるので、ほんの少しだけ湿り気を与えて、乾燥直後の粉末を顆粒状にすることもあるのだ。
殺菌する前に乳脂肪を取り除いているのが脱脂粉乳。
濃縮・噴霧乾燥する前に、乳糖を除いたり、逆にビタミンやミネラルなどの栄養素を足したりして成分調整も行われるのだ。

つまり、この過程で赤ちゃん用と大人用がわかれるんだね。
でも、足すものが変わるだけだから、実は大人用粉ミルクの製造ラインを作るのはそんなに大変じゃないのかも。
だからこそいろんな会社が乗り出してきているのかもね。
少子化だし、次のターゲットは大人だ!

2017/10/28

赤い香辛料

先日、ハンガリー料理を食べる機会があったのだ。
ちゃんとしたレストランじゃなくて、レセプションに並んでいた料理なんだけど。
でも、どの料理もみんな赤いような・・・。
それもそのはずで、ハンガリー料理の特徴は、香辛料のパプリカを多用することなんだって!

日本ではパプリカというと大きくて肉厚のピーマンを思い浮かべるけど、その野菜のパプリカと、香辛料に使うパプリカは別なんだとか。
もう少し小さいもので、鮮やかな赤い色をしているものを、乾燥させ、粉末にしているようなのだ。
日本ではパプリカ・パウダーというとまったく辛みがないけど、いろんな料理に多用するハンガリーにおいては、少し絡みのあるパプリカも存在するみたい。
日本で言うシシトウみたいな?

ちなみに、野菜のパプリカも、香辛料のパプリカも、ハンガリーで品種改良されたものなんだそうだよ。
スペインが新大陸から持ち帰った唐辛子やピーマンを改良したのだ。
「パプリカ」というのもハンガリー語から来ているんだって!
知らなかった。
ハンガリーの研究者により、パプリカには大量のビタミンCが含まれていることが発見され、そのビタミンCを抽出した功績でハンガリーの研究者、セント=ジェルジ・アルベルト博士が医学・生理学賞を受賞しているのだ。
そこかたパプリカ人気が高まって、料理にも積極的に取り入れられるようになったとか。

ハンガリーの名物というと、パプリカの入ったシチューのグヤーシュ。
でも、ハンガリーでは味噌汁のような扱いで、他国のシチューと違ってメインという位置づけにはないみたい。
でも、毎日のように飲むスープがもうパプリカ入りなんだよね。
どれだけ好きなんだか。

パプリカの色素は主にカプサンチンと呼ばれるエステル(脂肪酸とアルコールが脱水結合したもの)。
これは油によく溶ける性質があるので、パプリカを使う場合は、油があると色が鮮やかになるのだ。
また、この色素は熱に安定なので、焼いたり煮たりしても大丈夫。
天然色素だし、赤やオレンジは食品に彩りを与えるから、けっこう添加物としても使われているよ。
ソーセージとかハムとかの加工肉も赤みを増すために入れたりするのだ。
風味も加わるし、その方がおいしく見えるからね。

新大陸の野菜が食文化に深く食い込んでいるのは、イタリアやスペインのトマト、イギリスやドイツのジャガイモなんかが有名だけど、パプリカも中欧にはけっこう食い込んでいるんだねぇ。
中欧の料理はあまり食べる機会がないので気づかなかったよ。
他にも探してみると、もっとおもしろい発見があるかも。
それにしても、中世のころのこのあたりの人たちは一体何を食べていたんだろう?
きっと色味も風味もよくないものだったから、パプリカがはやったんだろうね。

2017/10/21

フライには・・・

先輩がパリに出張に来ていたので、一緒にカフェレストランで食事をしたんだよね。
で、まったくフレンチじゃないんだけど、ついつい気になっていた「フィッシュ&チップス」を頼んでしまったのだ(笑)
フランスのやつはフライドポテトとタルタルソースがおいしいから!
実際、イギリスのより洗練されている気がする。
この白身魚のフライには、レモン汁や酢、タルタルソースが合うよね。
でも、どうしても、日本式のソースも恋しくなるのだ。

米国にいたときは、スター・ソースという揚げ物用のソースがあって、見た目は日本のウスターソースそのものなんだけど、ものすごく酸っぱい!
欧米ではフライは酸味で食べるみたい。
日本式のちょっと甘めのソースがいいんだよなぁ。
もちろん、自宅でフライの時は中濃ソースさ。

いわゆる「ソース」の発祥はイギリスのウスター・シャー。
19世紀初頭に、とありう主婦が、食材のあまりと調味料を一緒に入れて保存していたら、ソースが出来ていたんだって。
って、どれだけ保存していたんだろう・・・。
現代の冷蔵庫の奥地にあるミイラ食品のようだね・・・。
それはそれとして、工業的に作られ始めたのは19世紀前半。
インドのソースの作り方が伝えられ、イギリス式に改良して、ちょっとスパイスのきいた黒いソースが作られるようになったのだ。
これがウスターソースのはじめ。

イギリスのウスターソースのレシピでは、モルトビネガーに漬けて発酵させたタマネギ、ニンニクに、タマリンド、アンチョビなどを加え、そこに各種香辛料を入れたもの。
日本ではアンチョビは入れず、スパイスも抑えめ。
イギリスのソースはフライにどばどばかけるものではなくて、シチューやスープに数滴垂らして隠し味に使うものだとか。
コクを加えるということかな。

日本にこのウスターソースが伝わったのは明治になってから。
当初は受け入れられなかったものの、日本人の舌に合わせたものが開発され、徐々に広まっていったみたい。
戦後になると、粘度を高めてとろっとさせた「とんかうソース」が出回るようになり、定番になっていくのだ。
中濃ソースはウスターソースととんかつソースの間で、どちらにもいける、ということで更に後になって開発されたみたい。
俗に、東日本ではブルドックの中濃ソースが好まれ、西日本では、カゴメやイカリのとんかつソースが好まれると言われているのだ。
もちろん、広島はオタフクソースじゃけん!

現在では、日本農林規格(JAS)で分類がきちんとされていて、粘度が0.2パスカル秒未満のものがウスターソース、0.2~1.9パスカル秒の間のものが中濃ソース、2.0パスカル秒以上のものが濃厚ソースとなっているんだ。
濃厚ソースというのがいわゆるとんかつソースだよ。
デンプンを加えて粘度を高めているのだ。
このほか、個別にお好み焼きソース、焼きそばソース、たこ焼きソース、どろソースなど用途別のソースが生み出されたそうだよ。

しかしながら、歴史を見ると、世界的にも出てきたのはほんと200年ほど前で、それがけこうすぐに日本にも来ているんだね。
でも、一般家庭に常備されるようになるのは戦後からというのもまたおどろきなのだ。
当初は洋食屋さんのものということだったのかな?
今ではソース味のものは「和」という感じだけどね。

2017/10/14

混ぜるな、危険?

この前はじめて知ったんだけど、コンビニやスーパのレシートでもらう感熱紙は、リサイクルに回しちゃいけないんだって。
古紙回収の注意書きにも、感熱紙やのりのついた紙、防水加工された紙(紙皿、紙コップなど)、印画紙などなどは、「禁忌品」とされているのだ。
普通にもらったレシートは紙の資源ゴミに混ぜていたんだけど、実は混ぜちゃいけなかったのだ!
普通に燃えるゴミにしないといけないみたい。

感熱紙は、印刷面に特殊な物質が塗布してあって、独特の光沢をもっているのだ。
熱をかけたところだけ変色して、それが字として浮き上がるようになっているんだよね。
インクカートリッジやトナーがいらないので、印刷機が小型化できるのだ。
スーパーのレジでいちいちインクの交換とかは大変だよね。
感熱紙ならロールだけを交換すればよいのだ。
また、熱源だけなので、インク詰まりとかそういうトラブルも少ないよ。

表面に塗布された物質の熱による発色を使っている関係で、長期間保存すると劣化してきて、使えなくなるのだ。
基本的には冷暗所で保管し、消費期限内に使わないとダメみたい。
劣化したものは黄ばんでくるみたいだよ。
そして、感熱紙の印字は、時間が経つと薄れてきたり、全体が黒くなってきたりして、不鮮明になるのだ。
財布にレシートをためる人なら、古くなって何が書いてあるかわからなくなった、黄ばんだレシートを見たことがあるはず(笑)

かつては、ファックスやワープロによく使われていたんだよね。
やっぱりインクやトナーを使うと小型化できないから。
でも、印刷した紙の耐久度の問題もあるし、最近は小型のプリンタも技術的に可能になったので、減ってきているみたい。
見たらもうその場ですぐ捨てるような用途のものであればよいのだけど、長期間保存しておくための印刷には向かないんだよね・・・。
所得税の確定申告にはレシートを貼り付ける必要があるけど、あれはせいぜい2年持てばよいから。

感熱紙に印字を行うプリンタは、熱源を使うプリンタということでサーマルプリンタと呼ばれるのだ。
一方で、インクリボンを使用して、熱をかけてそのインクリボンの塗料を紙に転写する熱転写プリンタもサーマルプリンタに分類されるんだって。
ようは、熱を使って印字するプリンタということなのだ。
ちなみに、感熱紙プリンタは、熱源があるヘッドを直接紙に当てるので、ダイレクト・サーマルプリンタという言い方もするらしいよ。
簡単な形状で小型軽量化しやすく、コストも安いので、レジスターみたいな機械に向いているんだよね。

感熱紙って何かにイメージが似ているな、と思っていたんだけど、これって「あぶり出し」なんだよね。
紙にミカンの汁で絵や文字を書いて乾かした後、火であぶって熱を加えると茶色い絵や文字が浮かび上がってくるのだ。
まさに、熱で発色しているわけ。
紙の全面にミカンの汁を塗っておいて、温めた金属の棒で絵や文字を書けば、感熱紙と同じ原理なのだ(笑)
ミカンの汁を塗ったところは、何も塗っていないところに比べて発火点が低くなるので、より低い温度で焦げるんだって。
なので、何も塗っていないところは焦げず、塗ったところだけ焦げるような熱をかけてやると、あぶり出しになるのだ。
もともと感熱紙プリンタは米国で開発されたみたいだけど、日本にも同じような原理は庶民の遊びの中にあったわけだね。

2017/10/07

冷やして、固めて、電子で見る

今年もノーベル賞の季節がやってきたのだ。
残念ながら、自然科学三賞については日本人受賞者なし。
ま、毎年出るというものじゃないからしかたないけどね。
でも、やっぱり日本人がイルかもしれないと注目しちゃうよね。
で、今年の自然科学三賞のうち、ボクが気になったのは、ノーベル化学賞の「極低温電子顕微鏡法による液中の生体分子の高解像度構造決定法の開発」というもの。
物理学賞のLIGOによる重力波の間出というのは難しすぎるからね(笑)

この方法の画期的な点は、電子顕微鏡により、液中のタンパク質などの生体高分子の構造決定ができるようになったこと。
電子顕微鏡でのタンパク質の構造決定はむかしから行われていたんだけど、伝統的な方法だと、いったんタンパク質を結晶化させないとダメだったのだ。
なので、どうやって安定的な結晶を作るかが大きな課題だったんだよね。
その際、膜貫通型受容体については、生体膜の構成成分であるリン脂質と一緒に結晶化させるという方法が生み出され、その高次構造が分析されるようになったりしたのだ。
でもでも、やっぱりリジッドに固まった状態のタンパク質の構造決定しかできなかったんだよね。

一方で、実際の酵素や受容体などのタンパク質は、水溶液中でその機能を発揮しているのだ。
つまり、溶液中でどういう構造をしているのか、その構造がどのように機能に関係しているのか、が知りたいわけ。
そこで、核磁気共鳴法(NMR)を使った解析法なんかも出てきたんだけど、NMRだと、あまりに大きな分子量のものは解析できないんだよね。
情報量が多すぎて処理できず、高次構造が決定できないのだ。
なので、タンパク質の一部分だけを取り出して構造を見るとか、そういうやり方をしていたのだ。

そこで出てきたのが、極低温電子顕微鏡法という手法。
平たく言うと、液中のタンパク質を、液体ヘリウムや液体窒素で凍らせ、固めてしまって、それを極低温環境下で電子ビームを当てて解析するというもの。
透過型電子顕微鏡と同じように、試料に電子ビームを当てて、その影(射影)を見ているのだ。
そのままだ二次元情報なんだけど、角度・方向を変えて像をとり、それをまとめてコンピュータで処理してあげると三次元情報が復元できるのだ。
もちろん、その復元にもものすごいコツがあるみたいだけどね。
こうして、氷の中で、そのタンパク質がどういう立体構造をしているのかがわかるようになったわけ。

この方法のすごいところは、液中であってもリジッドな構造体の部分と、液中ではフレキシブルに動いていて、おそらく機能に関係していると思われるところが分けて見られるということ。
可動部分はぶれて見えるので、そこがまさに目をつけるべきところということになるのだ。
コンピュータによる解析は必須だし、直接見られるわけではないんだけど、かなり光学顕微鏡に近い感覚でタンパク質などの生体高分子の観察ができるようになったんだよ。
グラフィックスで三次元モデルが作れて、それを動かしたりもできるしね。
タンパク質の機能に関係している部分を研究することは、病気の解明や薬の開発に直結しているので、非常に重要な成果なのだ。

ただし、この方法だと、立体的な輪郭はわかるんだけど、どのアミノ酸残基がどういうように相互作用して・・・、という情報までは当然得られないんだよね。
立体的な形がわかるのみ。
なので、伝統的な結晶化による構造決定も必要で、例えば、突然変異である特定のアミノ酸残基が変わったときにそのタンパク質にどういう影響があるか、というような研究をしようと思ったら、まず立体的な構造が維持されているのか、変な形になってしまうのかを観察した上で、実際に分子レベルでどういうことが起こって形状が変わってしまうのか、といったことを突き詰めていく必要があるわけだよね。
そうなると、両方の解析法が必要になるので、これができたから従来の解析方法に取って代わる、というものでもないんだ。

それにしても、技術の進歩はすごいよね。
見えなかったものを可視化し、検知できなかったものをとらえられるようにし、それで更に謎が深まっていくのだ(笑)
人類の知的好奇心ていうのは果てしがないのかも。
ま、ここから先はないよ、というのも夢がないけどね。

2017/09/30

国外にも清き一票

衆議院が解散したのだ。
ということは選挙。
ボクは「在外選挙人名簿」に登録をすませてあるので、今回の選挙は投票できるんだ!
というわけで、在外選挙の制度について調べてみたよ。

「在外選挙」はその名のとおり、日本国外に在住している人が選挙に参加できる制度。
平成10年の公職選挙法改正により、翌平成11年5月の国政選挙から適用されたのだ。
意外とまだ新しい制度なんだね。
当初は、在外選挙では比例代表制にしか投票できなかったのだけど、訴訟が起こってこれが違憲だと判決が出たので、平成19年から選挙区にも投票できるようになったんだ。
ということは、東京にいたときと同じように投票できるのか。
ちなみに、憲法改正のための国民投票にも参加できるんだけど、通常総選挙と同時に行われる最高裁の裁判官国民審査には在外選挙制度は適用されないんだって。
これは、公職選挙法の改正と同時期に「日本国憲法の改正手続に関する法律」ができていて、あらかじめ「織り込み済み」にできていたからで、一方、国民審査の根拠法令の「最高裁判所裁判官国民審査法」はあわせて改正がされなかったからみたい。

在外選挙人名簿に登録するには、選挙権を有する日本国籍の18歳以上の国民で、現在の居住地である国外の国・地域に3ヶ月以上住んでいることが条件。
通常は、国内で直前まで住んでいた住所に基づいて、該当する市区町村の選挙管理委員会に登録をするのだ。
なので、割り当てられる選挙区は、その住所に従うよ。
東京23区内はけっこうひとつの区でも選挙区が分かれていら大変そう・・・。
ちなみに、海外で生まれた場合や、所定期間以前に住民票登録が抹消されている場合はそれができないので、在外選挙人名簿への申請時に記載されている本籍地の選挙管理委員会になるんだって。
本籍地って住んだことがないような場合もあるけど、それで選挙区投票するのはなんか変な感じ。

在外選挙人名簿への登録は、在外公館、つまり、大使館や領事館を通じて行うのだ。
在外公館から該当の選挙管理委員会に書類を送って、そこで手続をして、在外選挙人証というのが送り返されるんだ。
でも、当然のことながら、往復で海外との紙のやりとりになるので、通常は2ヶ月くらいかかるよ。
全部デジタル化して、在外選挙認証も在外公館で印刷できるようになればもっと早くなるとは思うけど、設備の導入とか、「公印」の問題とかを考えるとむずかしいかもね。
なので、在外公館によっては、在留届という当該国・地域に在住することになりました、という届け出と同時に申請できることもあるのだ。
で、3ヶ月経ったところで登録が正式に決まるというわけ。
在外公館がすぐ近くにない場合なんかは便利なサービスだよね。

実際の投票は、在外公館における直接投票か、郵送による投票になるそうだよ。
直接投票の場合、在外公館に投票所が設置されるんだけど、基本的には国内で行われている「期日前投票」と同じような感じだとか。
また、選挙当日には投票できず、その前までに投票しなくてはならないみたい。
これは、選挙当日の投票締切までに投票用紙が該当の選挙管理委員会に必着でなければいけないためで、送るのに時間がかかるところほど締切が早くなるみたいだよ。
郵送の場合は、投票を希望する人が、該当する市区町村の選挙管理委員会に在外選挙認証を同封して郵送で選挙用紙を請求するんだとか。
で、返送されてきた投票用紙に記入して、投票締切までに必着するようにまたその投票用紙を郵送。
これってなんだかめんどくさい手続だなぁ・・・。

何はともあれ、選挙になったのだ。
ボクの場合は在外公館が遠くはないから、直接投票かな。
それにしても、選挙公報とかってネットでも見られるのかな?

2017/09/23

何石器

この前、たまたま飲み会の席で、考古学の話題になったのだ。
確か、箸墓古墳が発掘調査できれば歴史の教科書が変わるとかなんとか、そんな話題。
ちょうど次の世界遺産候補として「百舌鳥・古市古墳群」が推薦されることになったしね。
あの中には、鍵穴型=前方後円墳の仁徳天皇陵が含まれているのだ!
でも、あそこが本当に仁徳天皇の陵墓かどうかは実は定かじゃなくて、大山(だいせん)古墳とか、伝・仁徳天皇陵とか呼ばれていたような・・・。

で、そんなこんなで歴史の話になったんだけど、やっぱり覚えていないものだよね。
そんなとき、ふと頭に思い浮かんだのが、「旧石器時代」というターム。
そこでどうしても気になったのが、「旧石器」と「新石器」って何が違うんだっけ?、ということ。
忘れないうちに調べてみたよ。

まず最初に、石器時代、青銅器時代、鉄器時代という区分はわかりやすいよね。
どんな素材の道具を使っていたかで分けているのだ。
でも、よくよく見てみると、石器の作り方には技術的な変遷があったのだ!
そこで出てきた概念が、「旧石器」と「新石器」だよ。
最初に19世紀に英国の考古学者が石器時代を二つに分けることを提唱し、ここに新旧の別が生まれたんだ。

旧石器とは、打製石器、すなわち、石を砕いて作られた石器で、黒曜石のような薄い板状に割れる性質の硬い石で作られたんだ。
この頃はまだ絶滅したような動物種がいた時代で、地質時代で言うと氷河時代の洪積世(更新世)のころだって。
約1万年前くらいまでだから、マンモスや巨大ナマケモノのメガテイルムがいた時代かな?
一方、新石器は、石を砕いた後にさらに磨きをかけることで鋭く、なめらかにした石器のこと。
よく博物館とかで見る黒曜石の石ナイフとか石鏃(やじり)なんかはこれだよ。
磨製石器が出ることはもう現生動物種の時代で、間氷期になった沖積世(完新世)。
ちなみに、現代も沖積世だよ。

この古典的な時代区分をもとに調べてみると、おおよそ新石器に移行するくらいのタイミングで農耕や牧畜が始まったことが確認されたんだって。
生活・文化的な区分としてもちょうどよくて、狩猟生活の旧石器時代、定住・農耕生活の新石器時代というように使われるようになったんだ。
ところが、こういうのは調べれば調べるほど例外が出てくるもの・・・。
日本でも縄文時代にすでに稲作が始まっていたことがわかったけど、旧石器時代の終わり頃に農業が始まっていたり、新石器時代になっても農業や畜産が始まっていなかったりというのが出てきたのだ。
そこで、過渡期としての「中石器時代」というのも提唱されているみたい。

旧石器時代は、人類(ヒト科)の種別でさらに前期・中期・後期に分けられていて、前期旧石器時代はホモ・エレクトスや北京原人、ジャワ原人が活躍(?)した時代。
現生人類のホモ・サピエンスやネアンデルタール人は出始めくらいだって。
火や言語の使用が始まった頃と考えられているよ。
ここで動物であるサルと人類が分かれるのだ。
中期石器時代は原人類が絶滅し始め、ネアンデルタール人が活躍した時代。
死者への畏敬の念が生まれ、埋葬が始まった頃と考えられているのだ。
時代的には氷河期の真っ最中で、動物・植物は少なく、かなり過酷な時代だったみたい。
後期石器時代は現生人類の時代。
ネアンデルタール人が絶滅し、ヒト科はホモ・サピエンスだけになるのだ。
衣服や装身具などが使われ始め、洞窟の壁画などが登場する頃だよ。
だいぶ複雑な思考ができるようになってきていて、呪術のような行為も発生が認められているみたい。
でもでも、こうしてみると、旧石器時代ってまだ原人とかの時代なんだね・・・。
それにびっくり。

後期石器時代を過ぎると、気候も穏やかになり、農業ができるようになるのだ。
それでさらに文化が発達するわけだね。
中石器時代が入ったり、入らなかったりするけど、新規石器時代は四大文明が出てきた時代でもあるよ。
土器も作られるようになるし、食糧生産能力も上がり、貯蔵や交易(物々交換)ができるようになるので、だんだんと社会が複雑化してくる頃なのだ。
集団の中でそれぞれの役割が出てきて、リーダー的な存在の人が治めるようになって、と社会が組織がされていくのだ。
でも、それったたかだか6~8千年前。
後期石器時代でも1万年以上前だから、その後はかなり加速度的に文明が発達していくことになるのだ・・・。

2017/09/16

ケトルの中が、鍾乳洞やぁ

フランスの水道水は硬水。
日本と比べてめちゃくちゃ大量のカルシウムイオンが含まれているのだ。
なので、洗濯物はごわごわになるし、髪はばさばさになるし、軟水に慣れた日本人には悩みの種・・・。
でも、カルシウムがたくさん含まれているんだなぁ、と何より実感できるのは、電気ケトルの中にできる「水垢」(ライムスケイルと呼ばれるみたい。)。
っていうか、「水垢」というより、石灰の結晶が析出しているんだよね!
まるで鍾乳洞の形成を見ているようだよ。

水道水中のカルシウムは、多くの場合炭酸水素ナトリウム(Ca(HCO3)2)の形で溶けているのだ。
すなわち、二酸化炭素が溶け込んだ炭酸水の中にカルシウムが溶け込んでいる状態。
ところが、この水を熱すると、二酸化炭素の溶解度が下がって水の中から抜けていってしまって、炭酸イオンがすくなくなるため、不溶性の炭酸カルシウム(CaCO3)=石灰になってしまうのだ。
これが「水垢」の正体。

内面に石灰が析出しているわけだけど、これが意外とがっつりと張り付いているんだよね。
洗い物用のスポンジでこすった程度ではなかなか落ちなくて、メラミンスポンジを使ったり、クレンザーをつけてがりがりこすれば落ちなくはないんだけど、内面に傷がついてしまうのだ(>_<)
しかも、そうやって傷ができると、その凹凸のあるところにまた石灰が析出しやすくなるんだよね・・・。
というわけで、物理的にはがすのはあまりよい方法ではないわけ。

では、どうすればよいかというと、化学的な反応で出てきたものなら、化学的な反応で除去すればよいのだ。
炭酸カルシウムは水には溶けないけど、酸には溶けるし、水中に炭酸水素イオンが大量にあれば、炭酸水素カルシウムとして再び水に溶けるようになるので、それを使えばいいわけ。
酸としては、手軽に使えるのはお酢。
食用酢に含まれる酢酸と炭酸カルシウムが反応して、水溶性の酢酸カルシウムと炭酸になるので、石灰を溶かすことができるよ。
酸性雨が石灰岩やコンクリートを溶かしていくのと同じ。
でも、反応はそんなに早くないし、強くもないので、できれば熱を加えた方がよいのだ。
少量の酢を溶かした水をケトルに入れて、沸騰させてからしばらく放っておくわけ。
においは酸っぱいけど、けっこう落ちるよ。

炭酸水素イオンを添加する簡単な方法は重曹(炭酸水素ナトリウム=NaHCO3)を使う方法。
こちらの場合、あまり熱をかけると炭酸水素イオンが二酸化炭素として抜けていってしまうので、ぬるま湯程度がおすすめ。
ぬるま湯にたっぷりの重曹を溶かしたものを入れて、がしがしと振るとよいのだ。
これは、小学校の理科の実験で、石灰水に息を吹き込むと最初は白く濁るけど、さらに息を吹き込み続けると又透明になるのと同じ原理だよ。
石灰水は水酸化カルシウムの水溶液で、ここに息を吹き込むと呼気中の少量の二酸化炭素が水に溶け込み、炭酸カルシウムが析出して、白濁するのだ。
さらに二酸化炭素を加えると、水に不溶の炭酸カルシウムが水に可溶の炭酸水素ナトリウムになるので、濁りが消えるわけ。

実は、この方法は水垢だけでなく、茶渋にも有効なんだよ。
茶渋は茶に含まれるポリフェノール類とカルシウムが反応して固まったもの(カルシウムを中心にポリフェロールがキレートで重合するのだ。)。
なので、ここからカルシウムをはがしてやればよいわけ。
やっぱりカルシウムイオンが水により溶けやすい状況を作ればいいので、お酢や重曹が有効だよ。
がっつりと茶渋がついてからだとなかなか落ちないけど、初期の段階でケアしてあげればかなりきれいに落とせるみたい。
やっぱり早め早めの対応が大切だよね。

2017/09/09

ひょっとすると北よりこわい?

日本時間の9月6日夜、太陽表面で大規模なフレアが観測されたのだ!
太陽の表面で起こっている爆発現象で、水爆の10万~1億倍の威力と考えられているよ。
大きな爆発が起きると、それに伴って大量の電磁波や放射線が発生し、それが地球に届くと様々な影響があるのだ。
まずは光である電磁波が数分で届くんだけど、通信障害などが起こるのだ。
数時間のレベルでは放射線(ガンマ線を除く粒子線)が届き、数日後には荷電粒子が届くのだ。

放射線や荷電粒子の影響は、フレアの規模によって変わってくるんだけど、通常は驚くほどのものではなくて、オーロラの原因になったりするくらい。
ところが、今回くらいの大規模なフレアが発生すると、その影響は無視できないレベルになることも考えられて、ニュースになっているのだ。
こういうことがあるから、日本や米国は太陽観測衛星を飛ばしているし、地上からも常に太陽の活動を観測しているんだよね。

実際には、放射線や荷電粒子が来ると、空気中の分子と反応して「電磁パルス」が発生するのだ。
そう、最近北朝鮮が攻撃に使おうとしているやつだよ!
「電磁パルス」というのは、ごく短時間で発生する大規模な電磁気のことで、自然界で言えば雷がそれに当たるよ。
雲の中で分子が衝突したりして静電気が発生し、電位差(電圧)が一定以上になったところで短絡(ショート)し、瞬間的な大容量の電流が流れるのだ。
太陽フレアによる「電磁パルス」はそれが静電気ではなく、外から来る放射せにゃ荷電粒子により引き起こされるものだよ。
太陽表面の爆発で瞬間的に大量に放出された放射線や荷電粒子が地球に届き、届いた瞬間に周りの空気分子と反応し、電磁場の大きな乱れが発生するというわけ。

雷による電子機器の被害もわりと知られているけど、これは、雷が落ちた瞬間、そこに瞬間的に大きな電位差が生まれ(まさに「パルス」)、本来流れないような量の電流が発生するため。
これは「サージ電流」と呼ぶのだ。
通常電子機器の中野半導体や電子回路には、電流が流せる上限というのが決まっているので(これは材料的に大量に電気を流すとジュール熱で溶けてしまうなどの理由だよ。)、それを越える電流が流れると、壊れたり、壊れなかったとしても誤作動が起きたりするんだよね。
これを防ぐため、家電でも冷蔵庫や電子レンジにはアースをつけて設置し、過剰電流が流れる場合は、電子機器の中に入らないようにしているのだ。

フレアによる「電磁パルス」も全く同じで、空中で異常な電磁場が発生し、それが地上の電子機器等に影響を及ぼすわけ。
しかも、太陽は地球よりはるかに大きいので、雷のような局所的な話ではなく、地球全体の話になってくるのだ・・・。
すると、ここの電子機器にももちろん影響が出るんだけど、送電線などの電気系統にも影響が出てくるよ。
下手すると、送電線に異常電流が流れ、系統が落ちて大規模停電になるのだ。
現代はいろんなものが電気で制御されているから、広範囲で大規模な停電というのはしゃれにならない話なんだよね。
そして、地球のまわりを回っている人工衛星も壊れる可能性があって、そうなると、気象や通信・放送、測位(GPS)で障害が発生しかねないのだ。
そう、軍事目的に偵察衛星や早期警戒衛星もダメになるので、ミサイル防衛とかにも影響が出てくるよ・・・。

今回は大規模なフレアなので、一般の人でも影響を感じる可能性があるよ、ということで大きく報道されたんだよね。
特に、GPSなんかも狂うので、飛行機や船舶の運航にも支障が出るおそれがあるので、その影響はあるかもしれないのだ。
持っている電子機器hが壊れることはないんだろうけど。
しかし、太陽がめちゃくちゃ大きいこともあって、フレアが発生すれば、必ず地球に影響があるわけでもないんだよね。
地球に電磁波や放射線が届くような場所で爆発が起これば影響は出るけど、関係ない場所なら心配する必要はないわけ。
一方で、太陽活動の指標にはなるし、どこで爆発が起きるかなんてわからないので、常時太陽の活動を観測しておく必要はあるのだ。

2017/09/02

カナブンはなに持ち?

夏休みが終わった・・・。
ま、社会人だから関係ないけど(笑)
でも、この季節になるとちょっとせつない気持ちになるよね。
やはり子ども時代にすり込まれた感情かな?
こんなときに思い返すのは、やはり自由研究。
ドリルなんかはどうにかなるけど、自由研究だけはどうしても時間がかかるもの。
自由研究の王道と言えば、適当に捕まえてきた昆虫をとりあえず標本にする昆虫採集だよね。

で、そんなときにあるニュースに目がとまったのだ!
日本のコガネムシが海外で外来種として農作物に深刻なダメージを与えていると。
ああ、あの緑のやつか、昆虫採集では雑魚だよな、と思ったんだけど・・・。
あれ?、コガネムシとカナブンってなんか違うんだっけ?、と気になりだしたのだ。
これが、当たり前のことなんだけど、調べてみると違うんだよね。

コガネムシは甲虫目コガネムシ科の昆虫で、カナブンは甲虫目コガネムシ科ハナムグリ亜科の昆虫。
種としては同じ経統だけど、けっこう離れているのだ。
見た目も似ているようだけど、コガネムシが玉虫と同じような緑を基調とした虹色に輝く金属光沢なのに対し、カナブンは地味な緑褐色の金属光沢。
どちらかというと、カナブンの方が黄色くて、黄金色に見えるんだって。
ボクは緑の方がカナブンとばかり思ってた!
形状も、カナブンが扁平で頭も角張っているのに対し、コガネムシは全体に丸みを帯びていて、頭の形状も丸いのだ。
というわけで、よく見れば写真でも十分に見分けがつくみたい。

実際に外で見たときに注目すべきは、飛ぶ姿。
コガネムシはカブトムシなんかと一緒で、固い前翅を広げて中にある透明な後翅を広げないと飛べないのだけど、カナブンは前翅を折りたたんだまま、隙間から後翅を広げて飛ぶことができるのだ。
なので、飛んでいるときに、固い羽が開いていたらコガネムシ、閉じていたらカナブンだよ。
一般にカナブンの方が飛行能力が高く、足場がないところからも離陸できるんだとか。

食性も大きく違って、コガネムシが葉を食べるのに対し、カナブンはカブトムシと同様に木の樹液を吸うのだ。
なので、カナブンは脚には鋭い爪がついていて引っかかるようになっているよ。
無理矢理木からはがそうとすると脚がとれるんじゃないかというくらいの強いグリップ力。
昆虫採集でカナブンが雑魚扱いされるのは、夜のうちに樹液に糖液などを塗っておいて早朝に見に行ったとき、カナブンもそこにいるからなのだ。
子どもだったら角があるカブトムシの方がいいよね(笑)
カナブンの幼虫についてはよくわかっていないらしいのだけど、カブトムシやクワガタ同様に腐植物を食べているみたい。

一方、葉を食べるコガネムシは、害虫なんだよね。
しかも、幼虫は根を食い荒らすらしいのだ。
幼虫でも成虫でも農作物にダメージを与えるというわけ。
コガネムシはそういう性質もあって、けっこう研究が進んでいるみたい。
駆除するのは大変みたいだけど。
たちが悪いのは、固くておいしくないらしく、あまり鳥も食べたがらないみたい。
特に、海外に渡った場合は天敵がおらず、すぐに繁殖するようなのだ!
家にブドウの木なんかがあるとよく葉や実を食い荒らしていく虫が来るけど、あれはカナブンではなく、コガネムシなのだ。

童謡では「コガネムシは金持ちだぁ♪」なんて歌われるし、カナブンは昆虫採集での雑魚という認識なので、むしろコガネムシにいいイメージを持っていたんだけど、悪い奴らだったんだね・・・。
むしろ、カナブンはなにも悪くなくて、フォルムがカブトムシやクワガタに比べてださい、というだけなのだ(笑)
これからは認識を改めて、カナブンを必要以上にさげすまないようにしないと!
カナブンは地味だけど、悪いやつじゃないのだ。

2017/08/26

保存するは我にあり

夏休みにポルトガルに行ったのだ。
いやあ、魚介類がおいしい♪
フランスもわりと魚を食べる方だと思うけど、鮮度が違うし、魚の扱いもポルトガルの方が上だよね。
きちんと「だし」概念が理解できているし、何より、火の通し方がちょうどよくて、ぱさついたり、かたくなったりしていない!
そんなポルトガル料理でメジャーな食材と言えば・・・。
タラの塩漬けの干物のバカリャウ。

内臓や骨、浮き袋をとってひらいたマダラ(タイセイヨウダラ)=codを塩漬けにしてから乾燥させたもの。
フランスでよく食べるスケソウダラ(pollock)じゃないよ。
もともとミニ水分が多くて傷みが早い魚ので干物にしたようなのだ。
スペインではバカラオと呼ばれていて、イベリア半島がメインだけど、地中海沿岸の南仏やイタリアでも食べられるようなのだ。
ラテン系の明るい連中の食べるものだよ(笑)

非常に保存が利くので、大航海時代ポルトガルやスペインが船に積んでいたので、本来北半球にいるタラの産地からは遠い、ブラジルや西アフリカでも食べられているんだって。
三角貿易でも取引されていたらしいよ。
今は北欧や北米で生産されているらしいんだけど、タラがあまりとれなくなって、庶民の安い食材から少し高級な食材へと変化しているみたい。
それでも、ポルトガルではこれでもか、というくらいバカリャウの料理が多いのだ!
実際に自宅で食べているかはわからないけどね。

保存食だけ合って大量に塩が使われているので下ごしらえとして、食べる24時間くらいまでに水で塩抜きをする必要があるんだって。
途中で水を替える必要もあって、一度塩抜きするともう保存性がないので、すぐに食べないといけないみたい。
ポルトガルでは、塩抜きしたバカリャウをオーブンで焼いたり、玉子と野菜ととじたり、グラタンやコロッケの材料にしたりと、いろいろな料理に使うのだ。
それにしても、どの料理の場合もふっくらと仕上げるんだよね。
おいしく食べる方法を熟知しているよ。

イベリア半島はカソリック教徒の多い土地だけど、謝肉祭の翌日から復活祭までの40日間(四旬節)は鳥獣の肉が禁忌になるんだよね。
そうなると、魚が重要で、それでバカリャウの料理が広まったという部分もあるみたい。
嫌々魚を食べるんじゃなくて、少しでも工夫をしておいしく食べようという精神が素晴らしいのだ!
それが中南米にも伝わっているんだって。

で、このバカリャウに似たものが日本にもあるのだ。
それは「棒鱈」。
やはりマダラの干物なんだけど、塩漬けにせず、そのまま極限前乾燥させたものだよ。
もちろんそのままでは食べられないので、何日もかけて水を替えながらあく抜きをしつつ戻して、どの後に煮物などに使うのだ。
バカリャウと違って焼いたりはしないのだけど、これは塩漬けをしているかしていないかでタラの状態が違うからだろうね。
棒鱈の場合は、戻すと実がほろほろと崩れる感じになるので、ふっくらとはいかないのだ。

それにしても、ポルトガル人も日本に到着して驚いただろうね。
なにしろ、自分たちが食べているバカリャウのようなものが日本にもあったんだから!
ポルトガルとは鉄砲伝来などでもともと関係が深いけど、これでさらに親近感がわくよ。

2017/08/19

うまみの果実

フランスではいろんな種類のトマトが売っているのだ。
赤、黄色、緑、黒。
形も様々で、大玉、中玉、小玉、細長いの、扁平なの。
それぞれに特徴があって、サラダに使ったり、ソースに使ったり、使い分けがあるみたい。
中でも、加熱調理用のトマトは、そのままで食べても酸っぱいんだけど、トマトソースにしたり、煮込み料理に使うとおいしいのだ♪
これはトマトに大量に含まれるうまみ成分「グルタミン酸」のおかげなんだよね。

実は、トマトは昆布並みにグルタミン酸を含んでいるのだ。
なので、「だし」がでるんだよ。
トマトベースのスープやソースには意味があったのだ。
肉類や魚介類に含まれるイノシン酸などのうまみ成分と一緒になることで相乗効果が出るので、まさにベースにぴったりなんだよね。
これが世界中で消費される理由。
実は、このトマトからも「だし」をとることができるのだ。

わかりやすいのはドライトマト。
イメージは昆布といっしょだよね(笑)
そのまま具に使って煮込んでもいい「だし」がでるんだけど、だしだけ使いたい場合は、常温の水又はぬるま湯にしばらくつけておくとよいのだ。
できあがりの「だし」は黄色みを帯びているよ。
そんなにトマトの風味はなく、あっさり系の「だし」で和風の料理にも使えるんだって。
「だしがら」のトマトの実は、そのままオリーブ油に漬ければまた食材として活用できるのだ。
ちなみに、すでにオイル漬けのものからは「だし」はとれないので、乾燥させたかぴかぴのやつじゃないとダメだよ。

かつおだし風のイメージなのは、煮出す方法。
へたをとってざく切りにしたトマトに約2倍量の水を加え、弱火でじっくりと煮出すのだ。
あんまり強烈に沸騰させない方がよいみたいだけど、あくをとりながら5~10分煮立たせればできあがり。
やっぱりうっすらと黄色くなるのだ。
これもトマトの風味はほとんどないので、いろんな料理に使えるよ。
ちなみに、「だしがら」のトマトはぐちゃぐちゃになっているので、せいぜいカレーに入れたりするくらいかな。
うまみをとってしまっているので、トマトソースにするにはきついのだ(>_<)

最後は一番手がかかるんだけど、トマトのうまみが凝縮された「だし」をとる方法。
フレンチの手法らしいんだけど、まず、へたを取ってざく切りにしたトマトに少し塩を加えて、フードプロセッサーでピュレ状にするのだ。
これをさらしでこして、透明な液体成分をとるのだ。
これが「トマト水」。
ドライトマトの戻し汁やトマトを煮だしたものとは違って、トマトの甘味や酸味も含めて抽出されるよ(~8時間くらい)。
生だから当たり前なんだけど。
残ったトマトはもはや「ぬけがら」状態なんだけど、カレーなんかに入れて使えるみたい。
って、カレーが多いね・・・。

どの方法でもけっこうな手間のような気もするけど、トマトの底力を改めて知ることができるので、試してみるとおもしろいのだ。
日本食材がなかな手に入らない場所でも、トマトなら手に入りやすいから、そういうときは便利なはずだよね。
どこまでそんな需要があるかはわからないけど(笑)

2017/08/12

チェコの誘惑?

夏休みにチェコの首都のプラハに行ってきたんだけど、そこにおどろきのおみやげが!
なんと、大麻キャンディ、大麻クッキー、大麻入りウォッカなどが並んでいるのだ・・・。
調べてみると、チェコでは2010年に大麻所持・栽培が「非違法化」され、個人であれば5株までの栽培、大麻たばこ20本までの所持が罰せられなくなったのだとか・・・。
オランダと違って、カフェなどで吸引できる、というところまではいっていないようだけど、衝撃的だったよ。
でも、気になったのは、こういうおみやげを買ったとしても、持って帰れるのか?、という点。
日本もそうだけど、多くの国で大麻の所持等は禁止されているはずなので、まずいんじゃないかという気がするんだよね。

日本について言えば、大麻の取扱いは「大麻取締法」により規制されていて、所持、栽培、譲り受け、譲り渡し及び研究のための使用が原則禁止されているよ。
都道府県知事の許可を受けた大麻取扱者のみが、繊維や種を取るために大麻を栽培したり、研究用の大麻の栽培・使用が認められる仕組み。
以前、総選挙で「医療用大麻解禁」みたいな公約を掲げている候補がいたけど、日本では医療用の大麻使用は禁止されているよ。
米国など一部の国では認められているみたいだけど。
それと、法律を注意して見るとわかるけど、「所持」と「研究目的使用」が禁止されているけど、「個人の使用」が必ずしも禁止されていないのだ・・・。
すなわち、森に自生している大麻草の葉っぱを乾燥させて自分で楽しんで使い切った場合、「所持」の現行犯では逮捕できなくなるみたい・・・。

ここで重要なのは、この法律で規制がなされている「大麻」というのは、第一条でしっかりと定義されているということ。
「大麻」とは、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品」とされている一方で、「大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く」という除外規定もあるのだ。
これは、繊維としての「麻」と食品として使われている麻の種(七味唐辛子に入っているよ。)はこの法律の規制対象外ということなんだ。
ただし、栽培自体は規制されているので、許可を受けて大麻取扱者となった農家しか大麻草は栽培できず、そこから繊維や種を取ることもできないというわけ。
ちなみに「成熟した」とわざわざあるのは、未成熟なものにはそれなりの量の向精神性を持った成分のテトラヒドロカンナビノールが入っているから。
製品から樹脂が除かれているのは、まさにその樹脂の中にこの成分が抽出されるからだよ。
でも、やっぱり成分が多いのは、葉と花穂で、これが国際条約でも規制対象になっているんだ(葉と花穂を乾燥させたものが「マリファナ」と呼ばれるものだよ。)。

それと、この法律の珍しいところは、国外犯処罰規定があること。
規制の実効性は別として、日本国民が大麻が課金されている海外の国で「所持」や「譲り受け」をした場合、理論的には罰せられるのだ!
オランダは合法化されているから、とかいって、そこでマリファナを買って持ち歩いたらアウト。
カフェで吸引だけする分には微妙かもしれないけど・・・。
はっきり言って、勧められたものではないよね。
海外で大麻を楽しむ指南書・サイトみたいのもあるようだけど。

で、問題の大麻入りのおみやげはどうなのか。
実は、飴やクッキーは大麻の種が入っているだけで、問題がないようなのだ。
毒々しいパッケージにはしてあるけど、七味唐辛子のついたせんべいとなんら扱いは変わらないもの。
これは持って帰ってもOK。
一方で、お酒は注意が必要で、多くの場合、乾燥した葉っぱが酒に漬け込まれているため、「大麻草の製品」と見なされるのだ。
なので、これは譲り受け、所持した時点でアウト。
海外にいる間は実際上は取り締まれないから別だけど、日本に帰国しようとした場合は「所持」の現行犯になるよ。
それと、米国なんかで売られているという大麻チョコも要注意。
これは大麻から抽出したテトラヒドロカンナビノールが入っている代物らしいのだ。
そうなると、これも「大麻草の製品」に当たるのでダメ。パッケージをよく見て、種が入っているだけなのか、葉っぱは入っていないのか、抽出成分は含まれていないのかを確認する必要があるというわけ。

ジョークグッズ的に買うのもあるかもしれなけど、やっぱりこういうものには手を出さないというのがベストなんだろうなぁ。
米国のものなら英語なのでまだわかるけど、チェコ語で書かれても読めないしね。
「李下に冠を正さず」、疑われるようなことはしない、怪しいものには近づかないのがよいのだ!

2017/08/05

もはや代用品ではない

欧米の人って、実は日本人よりカフェインに弱いと言われているんだよね。
それもあってか、カフェインレスのものがメニューにちゃんとあるのだ。
デカフィネイティッド(カフェインぬき)のカフェはどこにでもあるよ。
お茶についても、ハーブティー(infusion)を飲む人も多いのだ。
で、そんな中で、地位を上げた飲み物があるんだよね。
それは「代用コーヒー」。

名前のとおり、もともとは「代用」なので、本物がないから仕方なく飲むもの、というものだったのだ。
最初に出てきたのは18世紀のプロイセン。
当時のドイツはコーヒーの産地を植民地として持っていなかったんだけど、コーヒーの消費がどんどん上がっていたようなので。
その輸入超過のせいで、かなり外貨が失われてしまうことを憂えて、時のプロイセン王のフリードリヒ大王は、コーヒーの高い関税をかけ、庶民が飲めないようにしたのだ。
ここで発展したのが代用コーヒー。

その後、南北戦争時の米国や、第一次大戦下のドイツ(また!)、第二次大戦下の日本やドイツ(またまた!)などで代用コーヒーが飲まれるようになったよ。
いずれも、コーヒー豆が手に入らなくなったので、何か別のものでもいいからコーヒー的なものを飲みたいという発想なのだ。
それにしても、そこまで人々を引きつける嗜好品としてのコーヒーの魅力はすごいものだね。
でも、やっぱりコーヒーの代用なので、本物のコーヒーが手に入るようになると廃れていったのだ。
ところが、近年の健康ブームにより、カフェインを含んでいない代用コーヒーに注目が集まるようになったよ。
特に、大豆を煎って焙煎したものから作るものは、大豆の難い栄養価とも相まって、むしろ本物のコーヒーより高く売られているそうなのだ。
なんか、これだけ見るときなこをお湯に溶かしたもののようだけど・・・。

日本でもおなじみなのはタンポポ茶。
これは19世紀の米国で考案されたもので、刻んでから水にさらしてあく抜きしたタンポポの根を更に細かく刻んでから乾燥させ、それを煎って作るのだ。
コーヒー豆にも含まれるクロロゲン酸を含んでいるので、ちょっとコーヒーっぽい風味がするのだとか。
って、最初にタンポポの根を煎じようとした人がすごいけど(笑)
第二次大戦中はドイツでかなりメジャーだったんだって。
日本でもオーガニックにこだわってマクロビのお店とかによくあるよね。
ドングリを使ったものもあって、やはりアク(渋味のもとのタンニン)をよく抜いてから、乾燥させ、焙煎するのだ。
これもやはり第二次大戦下の日本とドイツで飲まれていたって。

欧州でメジャーなのは、「焙煎穀物飲料」としての代用コーヒー。
穀物を焙煎した煎じたものの総称で、麦茶なんかもこのカテゴリーに入るんだけど、代用コーヒーの場合は、多くは大麦を煎ったものにチコリーなどで苦味を足しているんだ。
普通に粉状のお湯に溶かすだけのものが売られていて、見た目には普通のインスタント・コーヒー。
ポーランドの引火・コーヒーなんかが有名だよ。
冷戦下の時代は、ソ連に与した東側諸国はどうしても物資が不足していたので、発展したんじゃないかな、と思うんだよね。
戦後だけどものがないところだったから。

でも、これが今や健康食品として注目を受けているのだ。
妊婦さんや子どもなどにはカフェインはよくないけど、やっぱりコーヒーが飲みたいという需要もあるんだよね。
もともとカフェインに弱い欧米の人からすると、夜にコーヒーを飲みたいけど、眠れなくなっちゃうから、と言う場合にもいいし。
というわけで、「代用品」という枠を越え、カフェインを含んでいないコーヒー的な嗜好品としての立場を築いているのだ。
たぶん、今の技術もあるから、味も調えられて、おいしくなっているというのもあるんだろうけどね。

2017/07/29

南仏の香り


フランスはまさにバカンスシーズン。
街中から人が消えたよ。
休みのお店も多いし。
びっくりするのは、普通に1ヶ月くらいお店が休むんだよね!
そんなバカンスにフランス人がこぞって向かうのが南仏。
マルセイユをはじめとするプロヴァンス地方や、ニースのあるコート・ダ・ジュールだよ。
日光が大好きだから、光を浴びに行くんだよね。

その南仏のおみやげの定番と言えば「石けん」。
特に「マルセイユ石けん」というのが有名なのだ。
ニースにもたくさん売っているけど、やっぱり「マルセイユ石けん」だよ(笑)
老舗の4店が組合を作っていて、そこが定める厳格な基準に適合していないと、「マルセイユ石けん」とは名乗れないのだとか。
オリーブ油などの植物性油脂を72%配合とか、防腐剤を使わないとかだって。
使ってよいのは精油などの天然香料だけ。
でも、決して高級品というわけでもなくて、けっこうリーズナブルに買えるのも魅力的なのだ。

マルセイユの石けん作りが盛んになったのは16世紀のこと。
もともとプロヴァンスなどのあたたかい地方はオリーブの産地であったことと、塩、炭酸ナトリウムなどのその他の原料も手に入りやすかったからなんだとか。
で、マルセイユの石けんは品質の高い高級石けんとしてメジャーになっていくんだけど、そうなると、いわゆる「ぱちもん」も出回るようになったんだとか。
これに対し、17世紀になると、石けんの質を確保するため、国王ルイ14世が、石けんに使う原料をオリーブ油に限るなどの王令を発出したため、石けん製造がますます南仏に集中する結果になったんだって。

南仏の石けんを高級品にしたのは、何も質のよいオリーブ油があったからだけではないんだ。
もう一つの秘密は香料。
マルセイユ石けんはとにかく香りがよいのだ。
しかも、鼻にいつまでも残るような強烈なものではなくて、すがすがしい感じの香り。
置いておくだけで周りがいいにおいになるよ。
ボクなんかは職場の机の上に芳香剤代わりに置いているよ(笑)

もともと、マルセイユの石けんは十字軍が中東から持ち帰った、質の高いアラブの石けんをまねして作られたんだとか。
当時は欧州よりもアラブ世界の方が文化・技術レベルが高かったからね。
そのとき、十字軍は同時にアラブ世界の様々な香料を持ち帰っているのだ。
しかも、当時のアラブ世界には、アラブ商人がインドや中国などの東洋の国と交易して手に入れた香料も出回っていたわけ。
こうして、ユーラシア大陸全体の香料が欧州で使えるようになったんだよね。
これは後に欧州における香水の発展にもつながっていくんだけど、石けんにも使われるようになったんだって。
確かに、油をけん化しただけの石けんは独特の油臭さが残るから、香料を入れることは大事だったんだよね。
香料自体は、皮革産業でなめし革のにおいを消すのに使われ始め、発展していったそうだよ。

でも、よくよく考えてみると、この香料の発達は「再発見」に近いものがあるんだよね。
もともと香料はギリシア時代に発達し、それがローマに伝わって世界に広まるのだ。
古代ローマはそれこそ中国までシルクロードでつながっていたので、その時代には、ユーラシア全体の香料が流通していたはずなのだ。
そして、マルセイユという街は、ギリシアの植民地に端を発する古い街。
マッサリアという都市だったのだ。
ガリア戦記にも出てくるそうだよ。
そのむかしも様々な香料があったかもしれないよね。

2017/07/22

年2回の大売り出し

フランスでは、今まさに夏の大売り出し期間!
いわゆる「Soldes」。
どこもかしこも割引品が並んでいるよ。
そして、海外からの観光客も含め、多くの人が買い物をしているのだ。
で、人が買っていると、自分も買いたくなる(笑)

フランスでは、この「Soldes」は夏冬の年2回と決まっていて、しかも、日程まで定められているんだ。
夏は、6月の最終水曜日から5週間(最終水曜日が6月28日より後になる場合は、その前の水曜日から5週間)。
冬は、1月の第2水曜日から5週間(第2水曜日が1月12日より後になる場合は、第1水曜日から5週間)。
そして、ともに午前8時から、と時間まで決まっているよ。
この二つ以外の「セール」は「promotion」と呼ばれていて、区別されているんだ。
時期が決まっているので、予定も立てやすいよね、買う方も売る方も。

もうひとつ、大きな違いが。
それは、セール用の品物を売るんじゃなくて、それまで売っていたものを値引きして売らなければならない、ということ。
日本の場合だと、セールで売る用の商品があることもあるけど、フランスではNG。
「Soldes」開始の1ヶ月以上前から点灯で売られているものについて、値引きをして売らなければならないとか。
ということは、セールで買ったからといって、品質が下がるわけではないのだ。
そりゃあ人気なわけだ。
多少流行遅れかもしれないけど、そのままのものが安く手に入るんだもんね。

ただし、いくら売れても、在庫品を売り切って終わり、というのもルール。
まだ仕入れ先にストックが残っていたとしても、それを新たに仕入れて売ることは許されないのだ。
なので、早く行かないと希望のサイズや色、柄、デザインのものは手に入らないよ!
日本のセールだと、期間を分けてちょびちょびと出したりするけど、そういうこともないので完全に早い者勝ち。
なので、初日に大行列ができるのだ。

ちなみに、売れるものはそれでもいいけど、値引きしても売れないものってあるよね。
そういうものは、期間中に更なる値引きがなされることがあるそうなのだ。
なので、ためてためて、期間ぎりぎりに一番安いときに買う、という戦略もあり得るよ。
実際にそういう買い方をする人もいるみたい。
まさに心理戦だ(笑)

「Soldes」の場合、価格表示にもルールがあって、元の値段を二重線などで消して、値引き後の価格と値引率(30%引きなどを表示する必要があるんだ。
多くの場合は、30%引きは赤、40%引きは緑、50%引きは青とかで色分けされたシールが貼ってあるよ。
で、元の値段と値引き後の値段が比較できるようになっているのだ。
この表示の方法については、抜き打ちでフランス当局の検査があって、不当表示とされた場合は、75,000ユーロもの罰金が科されるらしいよ。
日本でも、割引と偽って、もともと高く設定した価格を割り引く形で値段設定をして売られている商品があるけど、そういうのはアウトだね。

というわけで、フランス人の多くは、この年2回のチャンスに大きな買い物をするのだ。
それはもう必死に。
そして、夏の「Soldes」が終わればヴァカンス。
それまで貯めていた分を一気に散財するわけだね。
でも、こうすることで経済がよく回るようになるのかも。
日本も変な商品券とか配るより、一斉にバーゲンをした方がよかったりして。

2017/07/15

パリ最大の祭り

昨日はいわゆる「パリ祭」。
凱旋門前で大パレードが行われたのだ。
軍隊だけでなく、警察や消防(ポンピエ)も参加しているんだよ。
米国のトランプ大統領も来ていて大騒ぎだったのだ。
フランスでは、「Fête nationale française」と呼んでいて、「国民の祭り」といった意味なのだ。

ボクは「革命記念日」だと思っていたんだけど、実はそうではないとか。
もともと7月14日は、フランス革命のきっかけになったバスティーユ監獄の襲撃事件の日。 
なので、それを記念して革命記念日にしたと思っていたんだけど・・・。
実は、その1年後の1790年にフランス革命の締めくくりとして行われた、 建国記念祭に端を発しているようなのだ。
確かに、米国の場合は、独立宣言書に署名がなされた7月4日が独立記念日。
革命の最初の出来事の日を記念するって言うのも変な話だよね(笑)

今ではバスティーユにあるのはオペラ劇場だけど、当時は監獄があったのだ。
しかも、その監獄に収監されていたのは、国王の恣意的な拘禁令状 (lettre de cachet)で拘束された「政治犯」。
この人たちを解放することこそ、フランスの専制政治への反乱の象徴だったのだ!
今ではバスティーユ監獄の壁の一部が残るのみで、徹底的に破壊されたみたいだよ。

襲撃から1ヶ月半くらいたった後の8月26日、フランス革命の基本原則を示した「人間と市民の権利の宣言」が憲法制定国民議会で採択されるのだ。
これを起草したのは、米国独立でも活躍した「両大陸の英雄」ラファイエット。
当初は立憲君主制を前提に起草されていたなけど、実際には、その後すぐにフランスは共和制に移行したので、何度か修正されたようなのだ。
 1791年に 制定されたフランス最初の憲法のもとになっているものだよ。

バスティーユ襲撃から1年後、共和政府による大規模な国家式典が行われ、これがフランス革命の集大成と見なされたのだ。
その場所はなんとシャン・ド・マルス公園。
というわけで、 今でもエッフェル塔のまわりで花火が上がったりしているけど、このときからそうみたい(笑)
まだ凱旋門はなかったからね。
ちなみに、このときの式典には、ラファイエットのほか、ルイ16世も参加していたみたいだよ。

正式に祝日に指定されたのは、1880年になってから。
パリがナチス・ドイツの侵攻に陥落して亡命政府になってからはロンドンで開かれたこともあったようだけど、祝日に指定されてからは年に一度のフランス最大の祝賀式典が開かれる日になっているのだ。
確かに、すごい規模だよ! 

2017/07/08

いんちき高級水?

この間話していてびっくりしたのだけど、いまだに「水素水」を信じている人がいたんだよね・・・。
国民生活センターがいわゆる「水素水」について発表を行って、そのときは大きな話題になったと思ったのだけど、もう忘れられているんだね・・・。
せっかく発表した意味がない(>_<)
そして、まだ「水素水発生装置」とかにだまされる人が出てくるわけだ。

「水素水」と言われるものは、水の中に微量の水素が溶け込んだもの、と言われているのだ。
でも、正確な定義はなくて、何らかの形で水素が溶けている、というものらしいんだよね。
この時点ですでにあやしい(笑)
水素ガスを水の中に通して微量に溶かす、というのがわかりやすい方法だけど、水を電気分解することでも作ることができるのだ。
水を電気分解すると、陰極から水素ガスが発生するけど、そのガスが水の中に溶け込むというわけ。

もともとは、半導体や液晶の洗浄につかっていたんだって。
半導体などの精密工業の洗浄に使われる水と言えば、ボクとしては超純水が思い浮かぶのだけど、水素水もよいのだとか。
超純水の場合は、何も水の中に溶け込んでいないので、半導体表面についた不純物を溶かして洗い去る能力が強いと考えられているのだ。
超純水が危険なものというわけではないのだけど、少しでも水に溶けるものであれば、超純水で洗ってあげれば落ちるというわけ。

一方で、水素水の場合は、水の中にできる水素ガスの微少な泡がキャビテーションが発生して、それで洗浄力が上がるというもの。
超純水は表面に付着した汚れをはがすのに対して、水素ガスの微少な泡で汚れをこそぎ落とすイメージだよね。
半導体などの場合、洗浄液の中に洗剤を入れると、その洗剤をきれいに洗い流さなくちゃいけなくなるだけなので、できるだけ不純物のないもので洗いたいのだ。
水素水なら、洗った後に水素ガスが付着するくらいなので、問題はあまりないというわけ。
鋼材だと、金属柱に水素ガスが溶け込む「水素ぜい化」という現象で、もろくなることが知られているのだけど、半導体とか液晶ならそういうこともないのだ。

で、そういう用途で使うのなら問題ないし、実績もあるのだけど、その水素水が人体にどう影響を及ぼすかというと全く何もわかっていない、という状況に近いのだ。
っていうか、クリアカットに多っ聞く影響すればすぐにわかるわけで、あったとしても、あるかないかわからないくらいの影響しかないということなんだよね・・・。
なんだけど、水素水で体の中の活性酸素が除去されてアンチエージングになるとか、そういう効能がうたわれるのは問題というわけ。
活性酸素はガンの中で悪さをしているなんて話と合わされて、ガンに効く、とかなると、むかしからの怪しい民間療法と同じにおいがしてくるよ・・・。
「おぼれる者はわらをもすがる」につけ込むよくない商法なのだ。

国民生活センターがそもそも問題視したのは、業界においても「水素水」の定義がなくて、どの程度の溶存水素量があれば「水素水」と呼んでいいのかがはっきりしないまま、「水素水」が健康によい、的なプロモーションがなされていること。
また、すでにパッケージされて売られている水素水や、水素水発生装置で作られる水素水の溶存水素量が確認できていないこと。
本当に水素ガスが溶けているかどうかわからないのに、「水素水」と呼ばれてしまうのだ。

健康によい・悪いについては今後の研究で何かわかるかもしれないし、本当によいものである可能性も否定できないけど、そうだとしても、どれくらい水素が溶け込んでいないと効能がない、とかいうのがあるはずなんだよね。
それが生理現象に影響を及ぼすのであれば。
そういうのを置いておいて、印象論でやっているのがよくないのだ。
こういうのはやっぱり、科学リテラシーが大事なんだよね。

2017/07/01

夏にこそ温かいものを!

この前、日本酒のプロモーションのイベントを少しお手伝いしたのだ。
日本酒について簡単にレクチャーした後、試飲してもらうもの。
もちろん、来ている人たちは試飲が目的だよね。
フランスでもけっこう日本酒の人気は高まっているようで、日本食材店に買いに来るフランス人もいるくらい。
で、このとき、参加者になかなか理解されなかったのが、「燗酒」なのだ。

参加者からの質問は、「なぜ燗にするのか」や「冷や酒で飲むものと燗酒にするものの違いは何か」というもの。
なにやら、専門的には酒の中に含まれる酸味成分の違いで、クエン酸系の酸味が多いものは温めないで飲む方がよく、リンゴ酸系の酸味が多いものは温めた方がおいしいんだって。
いずれにせよ、燗をすることで揮発性の香味成分が外に出てくるので、いわゆる「香りが立つ」ということになるのだ。
これは赤ワインのデカンタージュと同じだって。

でも、科学的にはもう少し違いがあるんだよね。
実は、温度によって味覚の感じ方は変わってくるので、それも影響するのだ。
酸味の場合はほとんど影響を受けないのだけど、甘味にについては温かいと感じやすく、熱すぎるとまた感じなくなってくるという特徴があるのだ。
冷たいときも十分甘いけど、ぬるくなったコーラがより甘く感じるのはこのため。
フランスのオランジーナは常温で飲むことが多いけど、日本では冷たくして飲むので、日本のオランジーナはより甘いとか。
さらに、うまみ成分のアミノ酸や核酸も、温かいときの方が感じやすいんだよね。
冷たい味噌汁よりも温かい味噌汁の方がうまみを感じやすいのだ。
一方、渋味・苦味は単純に温められると感じにくくなるみたい。
冷たいお茶の方が渋味を感じることが多いのもこのためかな?

というわけなので、もともとそんなに甘くない、辛口の日本酒なんかは、温めると甘味が引き立つんだ。
そういえば、冷やで飲んでほしいと言われる地酒系の日本酒には甘味が強いものが多いような。
そして、渋味や苦味のような「雑味」がある場合は、温めるとそれがやわらぐことになるよ。
なので、最近では、あまり「よくない」お酒を燗にするというように受け取られているように感じるよね。
地酒の多くが冷や酒(常温だけでなく、氷で冷やすようなものも)で飲まれていて、いわゆる大量生産系の昔ながらの灘の酒が燗にされるのでそういう受け止めになってしまうみたい。
それに、燗をすると香りが強くなるんだけど、大吟醸のようなもともと香りが強いものは、温めると強烈になり過ぎてよくなんだって。
大吟醸=高いお酒だから、高いお酒は燗にしない=安いお酒を燗にする、という構図ができてしまっているのもあるかも。

ただ、むかしのサザエさんなんかを見ていると、日本酒は燗酒で出されているんだよね。
これは、江戸時代に清酒が庶民にも流通した頃からの伝統だって。
平安時代には、秋冬シーズン(重陽の節句から桃の節句まで)にはお酒を温めて飲んでいたことがわかっているんだけど、あくまでも貴族などの上流階級でのお話。
安土桃山時代くらいに清酒の製法ができて、江戸時代に一気に広まった頃から、燗酒にされるようになったようなのだ。
当時は、醸造された酒量に対して税金がかかったので、アルコール度数がほぼ最大の20度くらいの原酒を造ってそれを出荷し、仲卸や小売りの段階で水で薄めていたんだって。
庶民の口に入る頃には4~5度とかいう話もあるから。ビール感覚だったのかも。
それを温めて飲んでいたのだ。
ちなみに、今でも日本酒の多くは20度くらいの原酒を少し薄めて、14~15度くらいにして出荷しているんだよ。
これを加水調整というのだ。

当時の日本酒は雑味が多かったのか、薄めているが故に甘味が感じにくかったのか、とにかく温めて飲むが主流。
貝原益軒さんも、日本酒は温めて飲むがよい、と書いているそうだよ。
もともと日本人はお酒にあまり強い人種じゃないから、その方がアルコールもさらに少し飛んでよかったのかも。
それに、燗酒は、吸収もよいので、飲み過ぎることがあまりないんだって。
逆に、冷酒の場合は、吸収されにくいので、ついつい飲み過ぎてしまうそうなのだ・・・。
これは気をつけないといけないね。

2017/06/24

赤い魚と言えば・・・

日本で赤い魚と言えば、何よりもまずタイが思い浮かぶよね。
なんと言っても高級魚のイメージが強いのだ。
そして、めでたい(笑)
一方で、フランスでは、それに当たるのがrouget(ルージェ)なんだよね。
和名ではヒメジ。

このヒメジという魚は、実は日本近海にもたくさん生息している魚。
数m~100mくらいの深さの砂地の海底近くにいるらしいのだ。
ほとんど海底すれすれのところを泳いでいるようで、特徴的な「あごひげ」はその海底を探るセンサーになっていて、砂の中に潜むエビなどを探し当てて、えさにするそうなのだ。
そういう生態なので、底引き網漁でひっかかるらしいのだけど、市場にはあまり流通しないんだって。
それなりの量はとれるようなんだけど、小骨が多くて食べづらいのと、傷みやすいということもあって、高級な練り製品の材料になるとか。

ただし、各地でいろんな名前で呼ばれているので、昔はよく食べたようなのだ。
ヒメジというのももともとは神奈川あたりのローカルネームで、富山ではその鮮やかな色から「オキノジョロウ」なんて呼ばれるし、東京や広島では「ヒメ」、福井や三重では「アカイオ」(「いを」は古語で「魚」を指す言葉だよ。)、関西・中国・四国では「ヒメイチ」、山口から九州にかけては「ベニサシ」などなど。
どれもやっぱり見た目から来ている名前みたいだね。

脂肪の少ない白身で、唐揚げや南蛮漬けのような、多少小骨があってもそのまま食べられる料理に向いているのだ。
特に、日本産ヒメジは小型のものが多いので、そのまま食べられるようにするんだって。
ある程度の大きさがあれば、小骨は気になるけど、塩焼きや煮付けでもよいみたい。
干物にする地方もあるようだよ。
関東では最近になって天ぷらダネとして人気が出てきているんだって。
皮に独特の風味があって、それが天ぷらに向いているとか。

フランスでは、高級な白身魚のグリエ(焼き魚)やポワレ(蒸し焼き)にはよくヒメジが使われているのだ。
やはり皮の色がきれいなのと、風味があるので、多くの場合は皮付き。
熱を通しても固くなりにくく、身離れもよいので、ナイフとフォークで食べるフランス人にも食べやすいみたい。
スズキもよく食べるんだけど、日本人的感覚から言うと「火を通しすぎ」で、ぱさついていることが多いんだよね・・・。
で、ぱさぱさなだけじゃなくて、身が崩れるので食べづらいのだ。
その点、ヒメジは食べやすい!
よく出てくるタラとかスズキは身がすぐ崩れてしまうのもあって、フォークでは食べづらい・・・。
箸だと問題なく食べられるんだけどなぁ(笑)

ヒメジは地中海沿岸地域では重要な食材で、それこそ古代ローマの時代からおいしい魚として親しまれてきたんだそうだよ。
フランスでは、マトウダイ(サン・ピエール)やカサゴ(ラスカス)もよく見るけど、これらもわりと高級魚。
やっぱり火を通してもぱさつきにくいからね。
その点、タラやボラはいろいろと種類があるけど、たいていはリーズナブルで、庶民の魚なのだ。
でも、よほどおいしいところでない限りは、たいていはぱさついているよ。
少量の脂肪分があるかどうかで違うものだねぇ。
それにしても、肉には火を通したがらないくせに、魚は焼きすぎなんだよなぁ・・・。
においが気になるのかな?

2017/06/17

国にも男女の別あり

フランスに来てからも仕事は英語がメインなんだけど、さすがに多少は仏語を話さないといけない機会があるんだよね。
で、学生時代に第二外国語として習ったときの知識を最大限活用するんだけど・・・。
すっかり忘却の彼方だ(笑)
それでも、ぎりぎり覚えている単語を並べてなんとかするしかないわけで。

そんなとき、改めて面倒だなぁ、と思うのは、仏語の名詞には男女の性があること。
おおもとのラテン語だとさらに中性名詞もあるのでさらにややこしいのだけど。
でも、一つのというときも談攻め意思なら「アン(un)」、女性名詞なら「ユンヌ(une)」と使い分けないといけないし、男性名詞につく冠詞は前置詞と一体化して「au(à+le)」とか「du(de+le)」とかになるのでややこしいのだ。
そして、もっとややこしいのは、「~へ行く」というときに、その行き先が国名になる場合、男性名詞の国、例えば日本なら、「au Japon」なんだけど、女性名詞の国、例えばフランスなら、「en France」となって、前置詞すら変わってしまうのだ。
これから夏のバカンスが来るけど、よその国に遊びに行くなんて話をフランス語でするときには注意をしないといけないんだよね。

仏語の場合、国の名前はひとつに限られるので、必ず定冠詞がつくのだ。
これは英語との大きな違い。
なので、「le」とか「la」と一緒に覚えてしまうと、男女のどちらかかも同時に覚えられそうなものなんだけど・・・。
母音で始まる国、例えばドイツ(Allemagne)なんかは、エリジオンが起こってしまって「l'Allemagne」となるので、どっちかわからない(笑)
ま、たいていの欧州の国は女性名詞なんだけど。

で、つらつらと仏語の国名を見ていくと、いくつかおもしろいものがあるのだ。
まずは米国と英国。
日本ではすぐに「アメリカ」というけど、米国人は自分たちでは「the United States (of America)」と呼ぶんだよね。
これは仏語も同じで、「les États-Unis (d'Amerique)」と言うのだ。
音で言うと「レゼタジュニ(ダメリック)」なので、全く米国っぽさがないのだ。
もっと複雑なのが英国。
日本では「イギリス」と言ってしまうけど、これはもともと「イングランド」のポルトガル語名の「イングレス」に由来しているので、英国全体を指していないのだ。
通常は英語で「United Kingdom (of Great Britain and Northern Ireland)」で、「UK」と呼ばれるよね。
フランスでも全く同じなんだけど、仏語にすると、「le Royaume-Uni (de Grande-Bretagne et d'Irlande du Nord)」となるのだ。
やっぱり英国の面影がない(笑)
最初はどこの国のことを言っているのかわからなかったくらいだよ。
ロンドンも「Londre」で綴りが違うし、日本人には英国関係の地名はわかりづらいようなのだ。

米国・英国以上にわかりづらいのがオランダ。
オランダはホラント州を指す「Holland」のポルトガル語「Holanda」に由来していて、英国と同じように欧米の国名とは大きく異なっているのだ。
オランダの英語名称は「the Netherlands」なんだけど、これはオランダ語の「Nederland」から来たもの。
このネーデルラントはもともと「低地」を意味する言葉なのだ!
このため、仏語では、「les Pays-Bas」と言うのだけど、「pays」は「国」、「bas」は「低い」という意味なので、ドストレートな名前なんだ。
ネーデルラントに近い音だったらわかるけど、これは想像もつかないよね・・・。

最後に、前に出てきた「ドイツ」。
仏語の「アルマーニュ」の由来は、ゲルマ系民族の一つの「アレマン人」の地というところから来ているんだって。
英語の「German」はそのまま「ゲルマン」から。
日本語の「ドイツ」はドイツ語の「Deutschland(ドイチュラント)」から来ているので、実は一番ドイツ自身の呼び方をリスペクトしているんだよ。

逆に、「オーストリア」が「Autriche(オートリシュ)」で、「オーストラリア」が「Australie(オーストラリー)」で、けっこう音が変わるので、むしろこっちは区別しやすくなっていたりもするよ。
朝鮮は「Corée」になってしまうので、英語の時とアルファベット順の並びが大きく異なってくるから注意が必要なのだ。
これはドイツもそうだけどね。

というわけで、国名って英語と仏語ではけっこう違うのだ。
もちろん、国だけじゃなくて都市名も違うんだよね・・・。
なので、日本語・英語・仏語の対応関係はかなりややこしいよ(>_<)

2017/06/10

ついつい買ってしまう通り

日本出張で東京と福岡に行ってきたのだ。
3泊5日なのでかなりの強行スケジュール(>_<)
いやあ、タイトだった。
でも、そんな中で唯一楽しめたのは、太宰府天満宮の仲見世の見学。
名物の焼きたて梅ヶ枝餅も食べられたよ♪

「仲見世」というのは、寺院の門前町にある古い商店街の形態で、社寺の境内、特に表参道に並んでいるお店のことだよ。
特に東京の浅草寺のものが有名なのだ。
雷門からずっと続いていて、いつも賑わっているよね。
でも、同じように、大きな寺院、神社の参道には同じような感じで商店が並んでいるよ。


 織田信長さんや豊臣秀吉さんが楽市楽座で商業・経済を活性化するまでは、自由に商売ができなかったみたいなんだよね。
いわゆる「座」と呼ばれる商工業者の組合に入らないといけなかったんだって。
その組合には独占販売権や非課税特権が認められていたんだけど、これを廃して、誰もが自由に商売ができるようにしたのが「楽市楽座」だよ。
これにより、城下町や寺社の門前町のような人の賑わうところに商店が集まるようになったのだ。

こうして日本で商店街が形成されていくんだけど、 このうち、仲見世には、寺社に参拝する人目当ての商売が行われるわけ。
もう江戸時代にはおみやげものが売られていて、太宰府天満宮では梅ヶ枝餅もあったのだ!
京都の古いお寺の参道沿いなんかは、創業が平安時代にまでさかのぼるような甘味の店もあるよね。
○○団子とか△△餅とか。
その他、寺社ゆかりの縁起物、おみくじ、軽食などなど。
実は今とあまり変わらないのかも(笑)

でも、太宰府に行って気づいたけど、様相がちょっと変わってきているんだよね。
 むかしながらの民芸品やお菓子を売る店も多いのだけど、増えつつある外国人観光客目当てのお店が増えているんだよね。
漢字Tシャツとか、歌舞伎や力士のキャラクターグッズとか。
浅草なんかはだいぶ前からそうだけど、他の観光地でも似たような感じになってきているみたいだよ。
実際、太宰府に来ている観光客の人は中国人だったみたいだし(言葉からの判断だから、なんとなくだけ)。

 でも、歴史的に見れば、これは正しい方向の変化なんだよね。
もともと自由に商売が認められるようになって、売れるものを売る店が残っていって、そういうおみやげもの屋と食べ物屋主体の商店街になったはずなのだ。
それが参拝客がもとめていたものだから、
今度はそのニーズが、いわゆる「外国人から見て日本的なもの」に変わっただけなんだよね。

おそらく、仲見世が形成されつつある時代には、今のような仲見世も奇妙に移ったはずなんだよね。
その前までは、生活必需品を売るようなお店が多かっただろうから。
そういう意味では、ちょっと経済的に余裕を持った参拝客におみやげや軽食を売るというのは新たな形態で、ボクが外国人観光客目当てのお店に感じている違和感と同じようなものを感じたんじゃないかと思うのだ。

そういう意味では、これからも仲見世は進化し続けるのかもね。
日本のことがもっと海外に知られるようになって理解が進めば、今のような俗な「日本的」なものじゃなくて、また違うものを求めるようになるから。
そうなると、原点回帰でむかしのようになるのかな?

2017/06/03

今でも境界線

パリ市内を出てシャルル・ド・ゴール空港に行く場合、「ペリフェリク」という環状高速道路を通るのだ。
ここがまさに渋滞ポイントなんだよね。
この環状高速道路の内側がパリ市、外側はパリ郊外(イル・ド・フランス圏だけどパリじゃない。)ということになっているんだよね。
※実際には、ブーローニュのmoriとヴァンセンヌの森もパリ市なので、ちょっとはみ出ているところはあるんだけど(笑)
実は、この環状道路こそが、かつてパリを囲っていた城壁の跡なんだよね。

日本の都市の場合、城郭の周りにはお堀が作られるけど、城下町を囲むような城壁は作られないので、開放的なのだ。
自由に城下町に入れるし、町が発展していけば徐々に市街地を広げていくことができるのだ。
江戸の街がまさにそうで、どんどん拡張していったわけだよね。
明暦の大火の後には、かつては下総国だった隅田川の向こう側(本所・深川)も併合して、巨大な街になったんだよね。
ところが、欧州の都市の多くは、城塞として、街全体が城壁に囲まれていることが多いのだ。
今でも城壁が残っているところは少ないのだけど、かつて城壁で囲まれていた部分を「旧市街」と呼ぶことが多いよ。

パリもまさにそうで、第一次大戦後の1919年から1929年にかけて城壁が取り払われ、その跡地に公園やらスポーツ施設やら新興住宅地やらを整備してらしいのだ。
ちょうど城壁の外縁部に当たるところに環状の高速道路が整備され、それが今でもパリの境界になっているんだ。
この城壁こそがティエールの城壁で、19世紀、再び王制にもどっていたフランスで、ルイ・フィリップがプロイセンやロシアからの侵攻に備えるために築いたものなのだ。
ナポレオンが失脚したのはまさにこの両国が相手だったから、当時のフランスには脅威だったみたい。

この城壁の跡はほとんど残っていないのだけど、地名には残っているよ。
ペリフェリクに面しているところには、「Porte de ~」という地名が多いのだ。
これはそこに城門があったということを示しているんだ。
国際見本市会場があって、世界的に有名な「サロン・デュ・ショコラ」の会場でもある「Porte de Versailles」なんかもそうだよ。
東京でも、江戸城のお堀沿いには「~橋」、「~門」、「~見附」って地名が多いけど、これも江戸城に続く橋、城門、櫓がそこにあったからなんだよね。
虎ノ門の文部科学省の所では外堀の遺構が見られるようになっているよ。

パリはもともとローマ時代のルテティアというガリア人が築いた街、というか村。
最初はノートルダム寺院があるシテ島周辺だったのだ。
それが徐々に拡大していくんだけど、ブルボン王朝によって絶対王政が確立されると、城壁の必要性がなくなってきて、いったんなくなったんだって。
ところが、18世紀のフランス革命直前のころ、パリ市内で商売を行う承認から徴税しようと、もう一度巴里の中心地が城壁で囲まれたのだ。
これがフェルミエー・ジェネローの城壁。
「徴税請負人の壁」ということらしいよ。
今でもパリ市内のこのときの関税徴収所が残っているようなのだ。

で、フランス革命後、もう一回り大きな城壁として作られたのが、最後のティエールの城壁。
これは原点回帰で城塞の防壁なのだ。
でも、第一次世界大戦ではそもそも戦闘方法が大きく変わってしまって、城壁があることにあまり意味がなくなってきたので、取り壊されることとなったんだ。
引き続き歩兵による戦闘がメインだったのでけど、銃器が発達し、射程の長いライフル銃などが実装された結果、騎兵による突撃があまり意味をなさなくなったのだ。
城壁はこの騎兵の突撃に対して有効だったんだけど、それが主役じゃなくなれば、あまり意味がなくなってしまったんだよね。
これも時代の流れ。

でも、そのおかげで、日本の都市のように街を外縁部へと自由に広げていけるようになったのだ。
これが、パリを中心とするイル・ド・フランス圏だよ。
城壁があるうちは、となりの都市とは物理的に隔絶されていたわけで、一つの都市圏とはならないのだけど、壁がなくなって地続きになると、大きな都市圏が形成できるのだ。
パリ自体は山手線の内側より少し広いくらいの、そんなに大きくない街なんだけど、イル・ド・フランス圏で見ると巨大な経済都市になるのだ。
それでも、東京はもっと大きいんだよね・・・。
城壁のような物理的制約がなかったおかげで明治以降もどんどんと都市圏が広がっていったからね。
ま、広いからいいというわけでもないんだけど(笑)

2017/05/27

移動する祝日

フランスでは、今週後半は昇天祭があったので人が少なかったのだ。
必ず木曜日に設定される祝日なので、金曜日も休んで4連休にする人が多いんだよね。
復活祭に連動して日が決まる祝日で毎年日が変わるので時期は変わるのだけど、たいてい春の気候のよい時期なので、プチバカンスになるようなのだ。
イースターは日本に入ってきたものの、こっちはまだなじみが薄いよね。

キリストは、磔刑の3日後に復活したのだ。
というか、「女たち」が墓を見に行ったらもぬけの殻だったんだよね。
で、その40日後(復活当日が1日目になるので正確には39日後)に天に昇ったので、昇天祭が復活祭の40日後に設定されるわけ。
復活祭は、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」と決められているので、その39日後=5週と4日後なので、必ず木曜日になるんだよ。
ちなみに、処刑は金曜日に執行され、その3日後に復活なので、復活は必ず日曜日なのだ!

もともと復活祭は古代の太陽信仰との結びつきが指摘されていて、それで、春分の日と月の満ち欠けをもとに設定されているんだよね。
ちょうど春分の日を越えて昼の時間が長くなっていく時期で、太陽の精力が増していくタイミング。
それを祝うものなのだ。
クリスマス(降誕祭)も、冬至祭りとの関係が指摘されているけど、やっぱり太陽信仰が関係しているみたい。
こういう古代の太陰暦で設定されていた祭りを太陽暦のキリスト教の中に取り入れていった結果、毎年日付が変わってしまう「移動祝日」ができあがったのだ。

実は、西方教会と東方教会で復活祭の日付が変わるので、当然のことながら昇天祭の日付も変わるのだ。
理由は簡単。
西方教会が復活祭の日付の算出にグレゴリオ暦を用いているのに対し、東方教会はユリウス暦を用いているため。
今年2017年はたまたま一致しているんだけど、昨年2016年は、西方教会では3月27日、東方教会では5月1日と1ヶ月以上のずれが生じていたのだ!
2024年に再度1ヶ月以上のずれが生じた後、2025年に再び一致するよ。
実にややこしい。

この「40日間」の根拠は、新約聖書のルカの福音書に続く使徒言行録にあるのだ。
そこでは、復活後のキリストは、40日の間各地で「神の国」について説いて回り、その後、ベタニア北部のオリベト山頂から天に帰ったとされているんだ。
ところが、おおもとであるルカの福音書では、弟子に会って会話した後、すぐに昇天したかの用の記述なんだよね。
もちろん、どれくらいの期間の話かは明示的に書いていないのだけど。
でも、逆に、使徒言行録には数字が書いてあることもあり、こっちが採用されているみたい。
復活自体が不思議な話なんだけど、これも不思議な話だ。

日本ではなじみがうすい昇天祭も、キリスト教においてはとても重要な祝日なんだって。
特に、キリストの「死と再生」による神格化というプロセスを完結させるものなので、大事なのだ。
というのも、新約聖書のうち降誕について触れているのはマタイの福音書とルカの福音書のみ。
ヨハネの福音書に至っては、「はじめにロゴスありき」とか言っているけど、降誕の下りはないのだ。
一方で、復活については全部の福音書が触れているんだ。
なので、特に復活祭は重要視されているんだよね。
ちなみに、昇天まで書いているのはマルコの福音書とルカの福音書のみ。
ルカの福音書は降誕から昇天まで全部が盛り込まれているのだ。

いずれにせよ、キリスト教において非常に重要な祝日なんだよね。
ただし、イースターのような飾りとか、独特の食習慣とかはないので、地味に街から人がいなくなっているだけなんだけど(教会では何かやっていりるのかな?)。
なので、日本にはイースターは浸透していっても、昇天祭まで無理だろうね。
こればかりは宗教色を排除して取り入れられないだろうから。

2017/05/20

過保護に育てればやわらかい

フランスでは、ちょうどアスパラガスが旬を迎えているのだ!
日本だとどんな野菜も通年見かけるけど、フランスではけっこう野菜の旬を大事にしているみたいなんだよね。
で、この時期のフランスの名物と言えば、ホワイトアスパラガス。
日本ではついこの間まで缶詰がメジャーだったけど、もちろんフランスでは生。
ゆでただけでほんのりとあまくておいしいのだ♪
ゆで汁にもうまみが溶け出すので、それを料理に使うんだって。

そんなホワイトアスパラガスも、ものとしてはグリーンアスパラガスと同じもの。
育て方が違うだけ。
普通に日光に当ててt育てるとグリーンアスパラガスになるんだ。
放っておくとどんどん太く、固くなっていくので、ある程度のところで収穫するのだ。
一方、ホワイトアスパラガスは、芽が出てきたところで土をかぶせたり、最初からトンネルの中で栽培されたりして、日光を遮って育てられたものなのだ。
すると、葉緑素が作られず、皮もあまり固くならず、苦みも少ないホワイトアスパラガスになるんだよ。
苦みがない分だけ甘みを感じるんだよね。
ちなみに、ビタミンなどの栄養面としては、やっぱり日に当てたものの方がよいみたい。

この栽培方法は「軟白栽培」と呼ばれる手法なのだ。
実はアスパラガスだけではなく、いろんな野菜に使われている手法だよ。
同じくフランスでよく見かけるのはチコリー。
イタリアで言うラディッキオ。
白菜のように葉がかたまっているけど、野生のものは普通に伸びて行くみたい。
これを軟白栽培することで、スーパーで見かけるあの形の野菜になるのだ。
苦みもあるけど、やわらかく、甘みもあるよね(熱を通すとより甘みを感じるのだ。)。

もちろん、これは欧州だけの栽培文化じゃないよ!
日本でもおなじみなのは、ウド。
酢の物にしたり、きんぴらにしたりするあの白いウドは、室の中で日光を遮って育てられたものなのだ。
山菜としての山ウドというのがあるけど、これは普通に日光を受け手育ったもの。
うどの大木じゃないけど、放っておくと太く固くなるので、若いうちに摘むのだ。
白ウドに比べると、苦みもあるし、あくが強いんだよね。
これは日光が当たっている結果。
でも、天ぷらなんかにすると山ウドもおいしいのだ。

もっとよく見かけるもので言えば、もやし。
大戦中は海軍が潜水艦の中で栽培していたなんて話もあるけど、豆を暗闇の中で発芽させて育てたのがもやしだよ。
普通に畑にまいたら双葉が出て育っていくけど、日光がないからひょろひょろと伸びていくのだ。
もともと豆に蓄えられている栄養だけで伸びるんだよね。
ビタミンが豊富だし、暗く、かつ、狭いところで育てられるので海軍にとっては帰朝だったみたい。

そして、根三つ葉。
ひょろっと白く長く太い茎を持つ三つ葉。
これはある程度成長した後に「根寄せ」と言って茎の周りに盛り土をして、そこに日光が当たらないようにして育てるのだ。
そうすると、土に覆われている部分が白く、やわらかくなるわけ。
長ネギの白い部分もそうだよ。
九条ネギのような全体が青いものが本来のもので、白ネギは根寄せしてその部分を軟白栽培しているのだ。

さらに、中華料理などで見かけるようになった黄ニラ。
これも日光を遮って育てられたニラで、柔らかく、臭みも少ないのだ。
ニラは鮮やかな緑色だけど、葉緑素が抜けるとちょと黄色っぽいってことだね。
普通のニラより少し高いのは、栽培に手間がかかっているからなのだ。

というわけで、そのまま育てると固くなったり、苦くなったりするものを、 日光を遮って育てることで柔らかく育てるというのはいろんな野菜で適用されている手法なのだ。
こういうのも人類の食へのあくなき追求だよね。
最初に考えた人はすごいと思うよ。
きっと、たまたま日陰で育ってものが柔らかかったり、苦みが少なかったりして、そういうのをヒントにしてやってみたんだろうね。
そして、植物の方も、日光を遮られてもなお育とうとするからこそできるわけで、その生命力もすごいのだ!

2017/05/13

どっちが起源

フランスに来てから、豚ひき肉が手に入らなくて困っていたんだよね。
ところが、実は普通にスーパの精肉コーナーになったのだ!
でも、それをよくよく見てみると・・・。
「ファルシ用」豚肉と書いてある!
そうか、ファルシに使うものか、ってファルシってなんだ?、となったわけ(笑)

ファルシというのは、いわゆる肉詰め料理。
日本ではピーマンの肉詰めがおなじみだけど、フランスでは、トマトのファルシをよく見かけるよ。
ナスやズッキーニなんかもあるのだ。
さらに、葉ものでひき肉のたねを包んだものもファルシ。
つまり、ロールキャベツもファルシで、フランスでは、シュー・ファルシというのだ。
フランスってあんまり豚肉を食べないみたいなんだけど、ファルシには使うんだね。

で、このファルシとうのは「farcir(詰める)」という同士から来た名前で、もともと「詰め物料理」ということのようなのだ。
西欧では、古代ローマの時代だから、ウサギや鶏などの内臓を除いて、そこにハーブや香辛料を詰める料理があったそうなのだ。
そう、韓国の参鶏湯(サムゲタン)のようなイメージ。
内側に香りのものを詰め込んで、おいしく食べようというものなのだ。
これがファルシという料理の起源だと言うのだけど・・・。
あれ、なんか今のものと違う。

むしろ、ギリシアにあるブドウの葉で肉などのフィリングを包む料理の方が近いよね。
これはドルマというのだけど、実は中東生まれの料理。
現在のギリシア料理はトルコ料理を通じてアラブ世界の影響を強く受けているのだ!
ギリシアだけでなく、東欧で、トルコの影響があったような国には似たような料理が残っているらしいよ。
今のフランスの野菜の肉詰めのファルシは、これがさらに西欧まで伝播してきたものじゃないかと思うんだよね。
同じ「詰め物」料理だから、名前がファルシになっただけで。

中東のドルマはと言うと、トルコ語の「dolmak(詰める)」の過去分詞(=「詰められた」)から来ているんだって。
そう、語源もフランス語のファルシと同じなのだ!
これはますますあやしい。
ちなみに、アラビア語でも「詰められたもの」を意味する「マハシー」という名前なんだって。
日本語の「肉詰め」も同じだけど、どこでも同じような名付け方なんだね。
ちなみに、英語で肉詰めピーマンは「stuffed pepper」なので、やはり「詰められたピーマン」だよ。

中東のドルマは、すでにササン朝ペルシアの時代にあったようなのだ。
6~7世紀くらいみたいだよ。
このときの料理法は、まさにブドウの葉で何かを包む、というものだったみたい。
中世になると、イスラム世界ではすでにマハシーは一般的な料理になっていて、それがトルコ帝国によってさらに幅広く伝播されたんじゃないかと思うんだよね。
野菜と肉の取り合わせというのが万国共通で好まれているんだろうね。

一方で、古代ローマの肉にハーブなどを詰める料理法も現代に生き残っていいるよね。
今でもローストチキンを作るときは、内臓を除いた腹腔にハーブなどをつめるし、サンクスギビングの七面鳥もそうなのだ。
ジビエ料理では、臭みをとるためにこういう料理が特に大事なのだ。
英国料理として名高いハギスは、羊の胃の中に羊の他の内臓の詰め物をするものだけど、詰めるという発想は同じかもね。
詰める中身が斜め上の発想なだけで(笑)

でも、こうやって考えてくると、不思議なのは、フランスで売られているファルシ用の肉が豚肉であること。
中東から来たものなら、豚はダメだよね。
フランスのファルシも必ずしも豚ではないのだけど、スーパーで売られるくらいメジャーな詰め物用の肉であることは確か。
素材との相性の問題で、クセが比較的弱い豚肉の方がおいしい、ということなのかな?
これは、ムスリムでない国の発想だよね。

2017/05/06

仏の終戦記念日

5月と言えば、日本では大型連休!
でも、フランスはもともとバカンスの国なので、そうやって休日が連続することってないんだよね・・・。
普通に休めばいいだけ、ということなんだろうけど。
でも、5月はフランスでも祝日が多い月なのだ!
5月1日がメーデー、5月8日が第二次大戦戦勝記念日、そして、5月25日が昇天祭(復活祭と連動するので移動休日だよ。)。
って、あれ、フランスでは5月が終戦記念日なの?

というわけで、ちょっと調べてみると、この5月8日という日付は、ドイツが連合国軍に無条件降伏し、降伏文書に調印が行われた日なのだ。
英国首相のチャーチルさんが群衆に「Vサイン」を出した日でもあるよ。
欧州戦勝記念日、VEデーとも呼ばれるのだ。
でも、ちなみに、欧州地域で完全に戦闘したのは、プラハの戦いが終結した5月11日で、その3日後なんだって。
で、フランスもこの日を戦勝記念日に指定し、祝日にしているわけ。
フランスでは第一次大戦の休戦記念日も祝日だよ(11月11日)。

歴史を振り返ってみると、フランスはナチス・ドイツの侵攻を受け、パリは陥落していたんだよね。
それは1940年の6月17日。
ロンドンに亡命していたシャルル・ド・ゴール将軍はBBCの放送でレジスタンス活動を呼びかけたのだ。
これが後の「自由フランス」。
徐々に勢力を増していき、1944年には、ド・ゴール将軍は「フランス共和国臨時政府」を名乗り出すんだけど、連合国はこれをフランス政府としては承認しなかったんだよね。
このとき、名目上のフランス政府は、フランス南部を統治していたヴィシー政権。
パリなど北部はドイツの占領下にあって、パリはフランス政府自らが統治できなくなっていたのだ!
フランス中部の街に「ヴィシー」を首都としたのでこの名があるんだけど、ドイツ及びイタリアと休戦協定を結び、枢軸国の支配下に入ったのだ。

1944年に連合国軍がノルマンディー上陸作戦で北フランスに上陸し、パリへと南進をしていって、8月にドイツ占領下のパリを陥落し、解放したのだ。
このとき、ド・ゴール将軍の「フランス共和国臨時政府」が先にパリに入り、名実ともにフランス政府としての機能を果たしていくこととなるのだ。
パリ市庁舎(オテル・ドゥ・ヴィル)でパリ解放の宣言も行っているよ。
連合国軍も10月になって、ヴィシー政権でなく、臨時政府を正式なフランス政府と認めたんだよね。
こうして、4年間にわたるパリの占領は解かれたのだ。

シャルル・ド・ゴール将軍は非常にカリスマを持った人だったようで、戦後すぐに首相に就任し、その後大統領になるのだ。
パリの玄関であるシャルル・ド・ゴール国際空港にも名前が残っているよね。
大統領になったのは1959年と遅く、1890年生まれなので、すでに70歳になろうとしている頃だったのだ!
でも、この後11年間大統領職にあって、アルジェリア戦争で混乱していたフランスの政局を安定させ、今のフランス第5共和制を確立した大物政治家なのだ。
やっぱりすごい人なんだよねぇ。

こうやってみると、やっぱりフランスという国にとっては、自国を占領していたドイツ軍を完全に降伏させた日の方が大事なんだよね。
世界史的には最後まで戦った日本が降伏した日が本当の終戦なんだろうけど。
正直、欧州的にはドイツが降伏していれば事実上戦争は終わっているよね。
後は南洋とかアジアの話だから・・・。
植民地問題はあるんだけど。

でも、実は、日本では8月15日と思っている日付も、受け止めが違うようなのだ。
8月14日、日本はポツダム宣言の受諾を連合国各国に通知し、翌15日未明に、玉音放送により日本が連合国に無条件降伏することを国内に公表したのだ。

2017/04/29

あふれる鴨肉

フランスの名物の一つと言えばフォアグラ。
カフェでもビストロでもレストランでも、どこにでもあるんだよね。
もちろん、スーパーにも瓶詰めなどが売られているよ!
それだけフランス人に愛されているんだよね。
カモはもともと「渡り」の習性があるので、肝臓にエネルギーとして脂肪を蓄え、脂肪肝になりやすいんだって。
それに目をつけ、ローマ人がフォアグラを作り出したそうなのだ・・・。
さすがの食に対する飽くなき追求。
ローマ帝国崩壊後にいったん廃れるんだけど、ルネサンス以降に復活し、また広まったみたい。

で、当然、フォアグラをとった後にはカモの肉が残るわけで・・・。
このカモ肉は野生のカモ(ジビエのカモ)と比べると脂がのっているのだ。
そして、そのカモ肉がカフェやビストロでよく使われているもののようなのだ。
どうりでカモ料理が多いと思った!
鶏肉(poulet)に加えてカモ肉(canard)はたいていどこのお店にもあるからね。
フォアグラをこれだけ食べるなら、副産物(?)のカモ肉も流通するはずだ。

脂がのっているという性質を利用して生み出された料理がコンフィ。
水(湯)の代わりに脂で煮込む料理だよ。
このカモ肉は脂が多いので、ゆっくりと温めると脂が融けてきて、肉が黄色い脂につかるようになるのだ。
主に脚の肉が使われるよ。
煮込んだ後はゆっくりと固めると油脂がまとわりついた状態になって、保存・運搬が容易になるのだ。
フランスでは缶詰なども売っているよ。
温め直すときにゆっくりと熱を入れるんだけど、皮はぱりぱり、中の肉はほろほろという状態になるのだ。
ちょっと脂っこいので、たいていはフルーツなどの甘み・酸味のあるものを合わせるんだ。

胸肉(ささみ)の方は、伝統的には燻製にしたみたい。
燻製にしても脂がのっているのでぱさぱさしないんだよね。
でも、今ではソテーすることが多くなっているそうなのだ。
それがカフェやビストロにある「マグレ・ド・カナル」。
たいていはレアに焼いて、甘めのソースがかかっているよ。
脂がのっているので、ゆっくりと焼くと皮がぱりぱりにできるのだ。
胸肉とは言えまったくぱさぱさはしていないのが特徴だよ。
日本人にはちょっとくどいかもしれないけど。

日本でカモというと、真っ赤な肉に白い脂が縁取っている見た目で、それなりに脂がのっているとはいえ、肉々した淡泊めな味わいを想像しがち。
一方で、フランスで一般的に食べられる「canard」はむしろ脂がよくのった肉なので注意が必要なのだ。
全くの別物と思えば、おいしいものだと思うけどね。
逆に、フランスの鶏肉は多くの場合皮もはずされているし、ぱさぱさした感じもあるので、脂ののった鳥類の肉を食べたい場合はカモの方がよいかも。
カフェとかビストロのカモなら高くないしね。

ちなみに、日本でよく見かけるカモ肉はほとんどアヒルだそうだよ。
合鴨の場合は合鴨農法に使った後の合鴨。
合鴨は交雑種でそのまま自然界に放ってはいけないので、合鴨農法の後は食用にするんだって。
DASH村の合鴨はどうなったんだろう?

2017/04/22

ぬるま湯で冷やせ

つい最近知ったんだけど、火傷をしたとき、幹部を冷やす必要があるけど、それは冷水よりはぬるま湯の方がいいらしいのだ。
ラットに焼きごてを当てるというかわいそうな実験で確かめられたそうなんだけど、冷水よりぬるま湯で冷やした方が損傷の広がりも抑えられ、痕も残らなかったのだとか。
一般的には、痛みを感じなくなるまで流水で冷やすとよいと言われているけど、実は、その流水は水というより、少しぬるいくらいのお湯の方がよいようなのだ。
火傷は熱による皮膚や粘膜の損傷だけど、熱によってタンパク質が変性し、生理活性が失われることが原因なんだよね。
よく高熱の際の注意として、タンパク質は45度くらいで変成すると言われるけど、これは火傷の場合も同じ。
ただし、タンパク質自体が45度を越える温度まで温められる必要があるので、熱の伝わりやすさという観点が必要なのだ。
熱したフライパンとか沸騰したお湯のような温度の高いものであれば、一瞬触れただけでもダメなんだけど、こたつの遠赤外線のような温度がさほどたかくないものについては、長時間さらされることで火傷になっていくんだよ。
これがいわゆる「低温火傷」。
人間の体で起こっている物理的・化学的変化は同じだけど、タンパク質がどのくらいの時間をかけて熱変性したかの違いなのだ。
タンパク質は一定の温度以上になると熱変性してしまうので、何より大事なのは熱の伝導というわけ。
火傷をしたらすぐに患部を冷やせ、というのは、ここに意味があるのだ。
すなわち、火傷をしてそのまま放っておくと、熱がまわりに伝わっていて損傷が広がっていくので、まずはあら熱を取って熱変性がこれ以上広がらないようにしましょう、というのが一義的な目的だよ。
損傷の広がりは面的なものではなくて、立体的なものでもあるので、放置すると皮膚の下の深いところまで熱損傷して、火傷の痕が残ってしまうことになるのだ・・・。
すぐに冷やせば痕の残りにくくなるというわけ。
冷やす理由その2は、炎症を抑えること。
熱損傷が起きると体の生体反応でサイトカインやプロスタグランジンのような生理活性物質が大量に放出されて、炎症が起こるんだよね。
炎症は生体防御機構でもあるんだけど(例えば、患部から細菌が入って感染症になるのを防いだりするのだ。)、けっこうまわりの組織を損傷させてしまうものでもあるんだよね・・・。
他の病気でも炎症を抑えることが多いけど、火傷も同じ。
炎症を抑えた方が治りが早いし、きれいになるのだ。
プロスタグランジンなんかは痛みをより強く感じさせる作用もあるので、痛みも抑えられるよ。
で、こういう効果があるから冷やした方がよいんだけど、冷やしすぎるのもダメ、というのが最近わかってきたことなんだよね。
むかしから氷で冷やすと逆に炎症になったりしてよくないとは言われていたんだけど、たいていの場合「冷水」と言われてはいたのだ。
ところが、冷水で冷やしてしまうと、患部周辺の毛細血管が収縮してしまい、血行が悪くなるので、炎症を強く抑える一方で、組織の修復も遅れることになるのだ・・・。
そこで出てきたのがぬるま湯。
患部を熱変性が起こってしまう温度より下げるんだけど、血管を収縮させすぎないから血行も悪くさせない。
そのためには、ぬるいと感じるくらいの温度のぬるま湯がよい、ということなのだ。
患部を清潔に保つためにも流水が望ましいので、水道で冷やすにしても、水じゃなくてぬるいお湯にしてゆっくり冷やすというのがよいみたい。
組織の修復を邪魔しづらいので、患部がきれいに治るというメリットもあるよ。
ただし、これらはあくまでも軽い火傷の場合の対処法。
皮膚を越えて深いところまで熱損傷が進んでいるような場合は、とにかくさっと冷やしてすぐに病院に行くことが必要なのだ!
なので、キッチンでちょっと火傷したとか、そういう場合の対処法だよ。

2017/04/15

おフランスのかほり

フランスでは香味野菜のエシャロットがよく使われるのだ。
炒めると独特のよい香りがするんだよね。
おろしてソースに加えることもあるみたい。
で、せっかくフランスにいるので、自分でも料理に使ってみようとスーパーで探したんだけど・・・。
いまいちよくわからない!
でも、これには理由があったのだ。

日本で「エシャロット」と言うと、居酒屋などで出てくる、味噌をつけてかりっとかじったりする値の部分が少し丸くなったネギを想像するよね。
なので、それっぽいものを探していたのだ。
でも、本物のエシャロットは、少しほっそりした小ぶりのタマネギといった形状。
てっきり「ペコロス」だと思っていたんだけど、これがエシャロットだったのだ。
タマネギと同じ茶色く固い皮に覆われていて、鱗茎は少し紫色になっているのだ。
ちょうど海外産のタマネギと同じような色で、まさにそれが小ぶりになった感じ。
炒めると、タマネギとニンニクの中間のような香りが出るんだって。

なぜボクが誤解していたのか。
それは、日本では、柔らかいうちに若摘みした「根らっきょう」が「エシャロット」と呼ばれることがあるから。
「根らっきょう」だと売れなさそうなので、「エシャロット」とおしゃれな名前をつけて売り出したのが始まり。
でも、フランスの香味野菜の「エシャロット」とまぎらわしいので、「エシャレット」と改められたらしいんだよね。
ところが、改名したのに似たような名前にしてしまったので、混乱が残ってしまったようなのだ。

フランスで言うエシャロットが日本の一般の市場にはほとんど出回らないこともあり、「エシャレット」が「エシャロット」として売られていることも多いんだよね・・・。
でも、最近になって、おしゃれな料理のレシピなんかに「エシャロット」が出てくるようになったので、エシャロットとエシャレットは違うもの、ということが様々な場面で言及されるようになったんだ。
農林水産省にはQ&Aページもあるよ。
ちなみに、まぎらわしいということで、フランスではただの「エシャロット」なのに、日本ではわざわざ「ベルギー・エシャロット」と呼ばれることもあるんだって。

もともとタマネギの仲間は中央アジアや中東の原産の植物で、エシャロットは十字軍が欧州に持ち帰ったものと考えられているんだ。
エシャロットの名前自体も、イスラエル南部のアシュケロンという都市の名前に由来しているんだって。
なので、フランス料理によく使われる食材ではあるんだけど、イランや南アジアでもよく食べられている野菜ということなのだ。
ケバブの付け合わせにされたり、インドネシアのチリソースの一種であるサンバルソースに使われるということだけど、やっぱりその香りを楽しむ野菜なんだね。
中国本土や台湾でも使われるみたいなんだけど、朝鮮半島を通って日本までは来なかったんだね。
仏教の影響で香りの強い野菜は敬遠されたからかな?
でも、中国原産のらっきょうは普通に伝わっているんだよね。
不思議。

現在日本で入手できるエシャロットはほとんど輸入物。
ベルギーやオランダからのものが多いみたい。
それで「ベルギー・エシャロット」なのかな?
もともとタマネギの中まで冷暗所に保存すれば長期保存が可能なので、通年で輸入が行われているようだよ。
ただし、まだまだ一般のスーパーで見かけることは少なくて、ちょっとおしゃれな高級スーパーに行かないと手に入らないことが多いけどね。
なので、やっぱりフランスにいるうちに食べておくべきなのだ(笑)

2017/04/08

振ればとろり

日本では生クリームは小型の紙パックに入れて売られていることが多いけど、フランスではプラスチックボトルに入れられているのだ。
そこで、半分ほどまで減ったところで一生懸命ボトルをシェイクしたら、わりと簡単にホイップクリームになったんだよね。
はじめのうちはしゃばしゃばいっているんだけど、あるとき中身が固まって振った感じが変わるのだ。
中で粘性の高いものがごてっと動く感じ。
で、開けてみると、なかなかのホイップクリームができていたよ♪

ホイップクリームは、生クリームや植物性油脂を使ったクリームを空気と混ぜ合わせ、小さな泡をたくさん作ることで食感をなめらかにしたもの。
流動性も低くなって、とろっとした状態から形状が維持できるくらいのかたさになるのだ。
でも、これは液中に固形状の乳脂肪分があるからで、温めてしまうと乳脂肪が融けてしまい、泡構造が崩れてとろっとしたクリームにもどってしまうのだ。
ウィンナーコーヒーやカフェ・モカで生クリームを熱いコーヒーの上に載せると徐々に融けていくのはこのためだよ。
逆に、ホイップするときは、乳脂肪が融けないように、十分に冷やした状態でやるとうまくいくのだ。
お菓子作りで生クリームを冷やしながら攪拌するのはこのためだよ。

でも、かき混ぜすぎも厳禁!
あまりかき混ぜすぎると、乳脂肪が大きな塊になって分離してしまうのだ。
つまり、フレッシュバターとバターミルクに分かれてしまうよ。
こうなるともうもとには戻せないので、ホイップクリームとしてはあきらめるしかないのだ・・・。
ハンドミキサーなんかで攪拌している場合は、表面がざらついてきたら危ない証拠だって。
手でシェイクしている場合は、振り続けていると、液体状のものと固形のものが分かれるのが手に伝わる感覚でわかるよ。
どて、びしゃ、みたいな。
ただ、こうするにはかなり振らなくてはいけなくて、バターを作るのにそこまで振るのは大変だったので、むかしの手作りバターはちょっと原乳を発酵させて乳脂肪が分離しやすいようにしていたんだよね。

日本の規格(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」、いわゆる「乳等省令」)では、「クリーム」は、生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したもの」とされているんだ。
っていうか、乳脂肪だけを取り出した、とは言えないのは、本当に乳脂肪だけ取り出しちゃうと純粋な油脂になってしまって、いわゆるクリーム状のものではなくなってしまうからかな?
なので、食品として売られている生クリームで「クリーム」と種別が書いてあるものは、100%牛乳由来。
逆に、植物性油脂などが混ざると「乳又は乳製品を主要原料とする食品」となるんだって。
種類もいくつかあって、乳化剤や安定剤を入れたものは純乳脂肪タイプで、これはスプレー式のホイップクリームなどだよ。
植物性油脂が添加されたものは「コンパウンドタイプ」で、乳脂肪だけのクリームに比べると少しあっさりしているのだ。
さらに、植物性油脂のみのものは「植物性油脂タイプ」で、これは長い消費期限のコーヒークリーム(いわゆる「コーヒーフレッシュ」などに使われるものだよ。
乳っぽいのにくさらないのはそのためなのだ!

100%の牛乳由来の生クリームも乳脂肪の含量で分けられていて、乳脂肪が18~30%と少なめなのがライトクリーム。
コーヒーに浮かべるクリームなどに使われるのだ。
30~48%のものが「ヘビークリーム」で、これはホイップしてお菓子などに使われるんだ。
スコーンなんかにつける「クロテッドクリーム」はさらに乳脂肪が多いもので、55%だって!
バターもたっぷりで、乳脂肪もたっぷりで、さらに甘いジャムをたっぷりつけたりして、スコーンはめちゃくちゃカロリーが高い食べ物なのだ(>_<)

ちなみに、生クリームを軽く発酵させてさわやかな酸味を持たせたものがサワークリーム。
乳酸発酵なので、乳脂肪はそのままで、乳糖が乳酸になるのだ。
脂肪分が多いものが酸味でさわやかになるとは危険な食品だ・・・。
でも、通常のサワークリームの乳脂肪分は16~21%ということなので、ライトクリームの部類だね。
最近では、生クリームと牛乳を混ぜたものを発酵させて作る低脂肪サワークリーム(サワークリームとヨーグルトのミックスみたいなもの?)や、無脂肪サワークリーム(ゼラチンや増粘多糖類でとろみをつけるみたい)なんてものあるんだって。
っていうか、無脂肪サワークリームって無脂肪ヨーグルトだよね?
ちなみに、サワークリームをシェイクしまくれば、発酵バターが分離してくるのだ。
なので、むかしはバターを作る途中過程でサワークリームができていたんだよ。

2017/04/01

煎れば煎るほど

フランスでカフェで言うと普通にエスプレッソが出てくるんだよね。
でも、日本で「フレンチロースト」と言えば深煎りのコーヒー。
なので、最初はフランス式のコーヒーはカフェオレなんかに合う深煎りのコーヒーだと思っていたのだ。
本当の最初の最初はそうだったのかもしれないけどね。
で、この「ロースト」の種類が気になったので、少し調べてみたのだ。

一般的には、ローストには8段階が設定されていて、浅煎りから深煎りにかけて、ライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアンとなっているんだ。
イタリアンは通常エスプレッソに使う真っ黒になるくらいまで焙煎されたもの。
表面に油脂が浮き出てちょっと黒光りもしているのだ。
フレンチは深煎りで焦げ茶色。
浅煎りの方のシナモンは、名前の通りシナモンスティックのような淡い茶色だよ。
もともとコーヒーの生豆はピーナッツのような色で、焙煎度合いが進むと茶色が濃くなっていくんだよね。

コーヒー豆の焙煎が、外から熱をかけてあげてコーヒー豆の中に含まれている成分に熱的な化学変化を起こさせることなのだ。
そのまま火にかける直火や、熱風を当てる方法、遠赤外線を当てる方法などなど、いろんな方法があるよ。
だいたい200度くらいになるまで熱するのが普通で、焙煎の浅い・深いは熱をかけている時間の差なのだ。
もちろん、時間をかけて焙煎すれば中までしっかり熱が伝わるし、時間が短ければ表面近くだけが熱変化を起こすわけ。
焦げ臭くならないように均一に熱をかけるのがコツなんだよね。

熱をかけた後の変化としては、水分が少なくなるのは当然として、大きな変化は色がつくこと。
これは生豆に含まれている糖類やアミノ酸が化学反応を起こし、カラメル化、メイラード反応、ポリフェノールの生成などが起きて、いずれにしても、茶色の成分ができてくるわけ。
これがコーヒーの色の正体だよ。
このとき同時に、アロマ成分なんかでも出てくるのだ。
実は、生豆は少し甘みがあるんだけど、これは糖類があるためで、この糖類が化学変化をするので、焙煎度合いが高くなると甘みはなくなっていって、カラメルやポリフェノールの苦みに変わってくるのだ。
また、熱変化によって酸性の物質が最初は増えてくるので、焙煎するほど酸味が増してくるんだけど、その後徐々に酸味成分は減っていくようなのだ。
最初は甘みがなくなっていて酸味が増すので余計に酸っぱく感じるし、後半は酸性の物質が減っていって苦みも出てくるので、酸っぱく感じなくなるんだ。
なので、中程度の焙煎がもっと酸っぱいと感じるわけ。

さらに、カフェインは揮発性成分でもあるので、長い時間かけて焙煎すると飛んでしまうのだ。
なので、色は濃くて苦くても、フレンチやイタリアンなどの深煎りローストの豆はカフェインが少なめなんだ。
エスプレッソはカフェイン含有量が低いというのはそういう理由があるわけ。
特保でもおなじみにクロロゲン酸(糖吸収を抑制する効果があると言われている。)も、熱で加水分解してコーヒー酸とキナ酸というものに変わってしまうんだって。
ただし、分解するとかえって香りの強い成分になるので、深煎りの方が深アロマがあると言われているひとつの要因なのだ。

もちろん、もともとのコーヒー豆の種類で味はだいぶ異なるんだけど、焙煎の違いでも風味がかなり変化してくるのだ。
自分の好きなコーヒーの味がわかっていれば、どのあたりの焙煎度合いがちょうどいいかがわかるよね。
そういうのを気にしていれば、おいしいコーヒーに出会えるかも。

2017/03/25

フランス人の大好物はイタリア仕込み

フランスと言えばジャムがおいしいことで有名!
いろんな果物のいろんなジャムがあるのだ。
日本で輸入物を買うと高いけど、現地で買えばそこまででもないんだよね。
なので、日本では買えないような高級品にも手が出てしまう・・・。
ところが、そんなジャムがアルというのに、フランス人がよくパンやクレープにつけるのはヌテラだったりするんだよね(笑)

ヌテラは、イタリアのフェレロ社が販売している、チョコレート風味のスプレッド。
ヘーゼルナッツペーストに砂糖、ココア、脱脂粉乳などを加えたもの。
常温では固まってしまうカカオバターの代わりにヘーゼルナッツ由来の常温で液体の植物性油が入っているので、常温では固まらず、パンなどにぬるスプレッドにできるのだ。
チョコレート風味のピーナッツバターみたいなものだよね。
なぜかこれが人気で、カフェなんかでもヌテラを使ったデザートがけっこうあるよ。
特に、ヌテラをぬったクレープは定番みたい。

ヌテラを使ったお菓子もあって、ヌテラ味のクッキーとか(チョコレートがけクッキーのチョコ部分がヌテラ)、「やんやんつけ棒」のようにヌテラにスティック状ビスケットをつけるものも。
そして、ホテルの朝食では、当たり前のように、一人用使い切りのヌテラがあるのだ。
ジャムと同じように並んでいるよ。
米国だとピーナッツバターがあったから、扱いがおなじなんだなぁ。

ヌテラの英語サイトによれば、1946年に、イタリアのピエモンテ州でペーストリー職人だったピエトロ・フェレロさんが作り出したもの。
当時は第二次大戦後でココアが非常に貴重品で配給が少なかったので、その貴重な少量のココアにたくさんとれるヘーゼルナッツのペーストと砂糖をまぜ、バターのような固形のカカオ風味ペーストを作ったのがはじまりとのこと。
これはジャンドゥーヤと呼ばれるもので、1951年には、クリーム状になったパンにぬりやすいタイプができがったんだ。
これはスーパー・クレマ・ジャンドゥーヤで、瓶詰めされて販売されるように。
1964年に名前がヌテラになり、1965年にドイツで発売されたのを皮切りに、1966年には欧州中に広がったんだって。

日本でも見かけないことはないけど、そこまでメジャーじゃないよね。
なので、フランスでそこら中で見かけるのがおどろきだったのだ。
スーパーには様々な大きさの便があるからね。
とうてい食べきれないほどの大容量のものも・・・。
ほぼ毎日のように使う家庭もあるのかなぁ?

このヌテラを作っているフェレロ社は、最近はコンビニやドラッグストアでもよく見かけるようになった、フェレロ・ロシェを作っている会社でもあるんだ。
中にヘーゼルナッツクリームが入っているまるいチョコレートだよ。
ボクは洋酒漬けのさくらんぼがチョコレートで包まれているモン・シェリの方が好きだけど。
そして、チョコレートでできた卵のからの中におまけが入っているキンダー・サプライズ(チョコエッグ)もフェレロ社のものだって!
ヌテラ以外は日本にも浸透してきているなぁ。

実はなかなかすごい会社なんだね。
チョコレート風味スプレッドでここまで会社を大きくするとは。
でも、それだけヌテラが欧州で愛されているということなんだよね。
その浸透度合いにもまたびっくりだ。

2017/03/18

ドーバーをくぐる

三連休になったので、それを利用してちょっと旅行することにしたのだ。
行き先は、いろいろ考えた上でロンドン。
パリからだとユーロスターで行けるしね。
というわけで、生まれて初めてドーバー海峡を渡ることになったのだ。

ユーロスターは欧州の高速鉄道のひとつで、1994年に開業。
当時は大きな話題になったよね。
今ではロンドン-パリ間を催促2時間15分で結んでいるのだ(最高時速300km)。
東京からだと京都まで、というところ。
そう考えるとなんだか納得だなぁ(笑)
ユーロスターはクラスが3つあって、ビジネス、スタンダード・プレミア、スタンダードとあるんだけど、ビジネスならホットミールが、スタンダード・プレミアならコールドミールが提供されるんだ。
このあたりのサービスは飛航空便を意識しているのかな?
最新の列車だと社内でWiFiも使えるようだし、快適な旅になりそうだ♪

ユーロスターの開業に当たってはドーバー海峡の海底トンネルがみそなわけだけど、なんと、その構想は18世紀までさかのぼれるみたい。
すでにそのときに海底にトンネルを掘って大陸とグレートブリテン島を結ぶアイデアがあったのだ!
1855年のパリ万博には、海峡トンネルの模型まであったらしいよ。
で、トンネル掘削会社まで作って掘り始めたんだけど・・・。
建設中止。
きっと土木技術が追いつかなかったのだ。

戦後になって、1978年に再度掘削が開始されたんだけど、やっぱり注視。
そして、1986年に再び工事に着工し、1990年にトンネルがやっと貫通したのだ。
構想から230年あまり。
いかに大変な土木事業だったかがわかるよね。
で、この工事には、日本の企業も活躍しているのだ。
川崎重工製と三菱重工の掘削機が活躍したんだよ。
特に、フランス側からの掘削に使われた川崎重工の掘削機は難工事をこなしたということで、NHKのプロジェクトXにも取り上げられたんだよね。

海底トンネルというとまっすぐ作られているようにも思えるけど、実際にはけっこうくねくねしているのだ。
岩盤の関係で必ずしもまっすぐは掘れないんだろうね。
掘削には、TBM工法とシールド工法が試用され、円盤形の歯のついたシールドで丸く削りながら進めていくタイプのものなのだ。
これをイギリス側(フォークストン)からとフランス側(カレー)からで掘り進めていってつなげたんだよね。
海底部の総距離では37.9kmと青函トンネルを抜く世界一のものなので、まさに世紀の大工事だったのだ(陸上部を含めると世界第3位)。

だけど、大工事であるが故に工費は当初計画の6倍にものぼったとか。
さらに、想定よりも乗客も少なかったため、多大な負債になったみたいだよ・・・。
ユーロトンネル会社が管理運営を行っているんだけど、トンネル使用料収入だけじゃ赤字で、2006年にはいったん経営破綻したみたい。
ただし、最近ではユーロスターの旅客数も増えてきていて、挽回してきているみたい。
でも、こういう話を聞くと、日本の三セクと変わらないんだなぁ、と正直思ってしまうね(笑)

ちなみに、ユーロスターは最高時速が300kmだけど、トンネル内は160kmに抑えないといけないみたい。
これはトンネルの問題じゃなくて、トンネルの陸上部でより遅い(時速140km程度)貨物列車や車運搬用のシャトル列車とのすれ違いがあるためらしいけど。
海底部トンネル内は、列車用の単線トンネルが2本とその真ん中にサービス用トンネルがある構造なので、本来はトンネル内でのすれ違いは気にする必要はないんだよね。
確かにトンネル内で複線だと、すれ違うときの風圧が問題になるのでだめだけど。

とにもかくにも、乗るのが楽しみだ。
青函トンネルは北斗星で通ったことがあるんだけど、それとの違いが気になるところだね。
これは鉄ちゃんじゃなくてもわくわくするのだ。

2017/03/11

生搾りリンゴ

フランスに来てからよく見かけるようになったのが、リンゴのお酒のシードル。
ビールとともに、アルコール度数の低いお酒としてかなりメジャーな存在なのだ!
それに、ガレットを食べるときにはつきものなんだよね。
どちらもブルターニュの名産。
フランスではかつて水事情がよくなく、生水が飲めなかったので、アルコール度数の低いシードルは飲料として重要だったみたい。
アルコールに比較的弱い日本人にはなかなか理解しづらいけど(笑)

このシードル、製法はいたって簡単なのだ。
リンゴを皮ごとつぶして果汁を搾り、発酵させる。
これだけ。
リンゴの皮には天然でアルコール発酵を行う酵母がついているので、皮ごと果汁を搾ればいいんだって。
ただし、日本のように湿度が高いと、他の雑菌が繁殖する可能性があるので、そうは簡単にいかないけど。
それでも、それに気をつければ、家庭でも作れるものみたい。
実際、英や仏ではかつて家庭で作っていたみたいだし。
ただし、日本の場合は酒税法の関係で勝手にお酒を醸造しちゃいけないので、注意が必要だよ(アルコール度数が1%未満に抑えられればいいみたいだけど、市販のシードルは4~5%くらいみたい。)。

シードルの材料となるリンゴはそれ用のもので、しかも、甘みが強いもの、酸味が強いもの、少し渋みがあるものなどいろいろと種類があるみたい。
単純な製法なので、材料となるリンゴによりかなり風味が変わるようなのだ。
それと、発酵期間を調節することで、アルコール度数が比較的低くて甘めなもの、とか、アルコール度数が高くて辛口のもの、などなど種類も豊富なんだって。
フランスに来るまでそこまでバラエティがあるとは知らなかった・・・。

工業的な製法としては、生搾り果汁をそのまま発酵させるんじゃなくて、果汁を濾過したりして濁りを除いた後、人工的に酵母を加えて低温で発酵させるんだって。
発酵が終わった後に遠心分離・濾過して澱を取り除き、瓶詰めするのだ。
いわゆる「火入れ」はせずに発酵を熱で止めないので、瓶の中でも多少は発酵が進んで、発泡性のお酒になるよ。
シャンパンなどのスパークリングワインは、まずはベースとなるワインを作ってから、それに糖分と酵母を加えて二次発酵させ、同じように瓶詰めするのだ。
なのでアルコール度数が高いんだけど、シードルの場合は果汁を発酵させるだけなので、そこまでのアルコール度数にはならないのだ。

日本で本格的に発泡性リンゴ酒のシードルが作られ始めたのは戦後のようなんだけど、実は、戦前にニッカウヰスキーがアップルワインという名称でリンゴ酒を製造していたのだ。
朝の連続ドラマ「マッサン」で有名になったけど、もともと余市にウイスキー工場を作ったとき、ウイスキー製造には数年の時間がかかるので、まずはリンゴジュースの製造・販売から始めたんだよね。
そのリンゴ果汁を使って、非発泡性の醸造酒を造ったのだ。
そう言えば、ドラマにもアップルワインが出てきたような・・・。
今でもニッカのシードルは日本で売られているけど、これは戦後にアサヒ飲料が始めたシードルをニッカが引き継ぐ形で作っているものみたい。

シードルはアルコール度数が低いのだけど、これを蒸留してアルコール度数を高くしたのがカルヴァドス。
ただし、カルヴァドスはシャンパン同様に原産地呼称規制(AOC)の対象で、ノルマンディー産リンゴを基にしたもの以外はアップルブランデーと呼ぶんだそうだよ。
カルヴァドスを作るときには、いろんな風味のシードルを混ぜて作ることが大事なんだそうだよ。
さらに、リンゴだけでなく、洋なしが原料に使われることもあるそうなのだ。
このブレンドで蒸留酒になった後の風味がかなり変わるようなのだ。
これには熟練の技と知識が必要とされるみたい。
日本ではどちらかという製菓用のお酒のイメージなので、そこまでこだわりがあるとは思わなかったよ。

2017/03/04

乾杯とは杯を乾かすと書く

この前、中国の人と中華レストランで会食をしたんだよね。
その場で出てきたお酒が、中国の蒸留酒の「白酒(バイジュウ)」。
アルコール度数がめちゃくちゃ高くて、そのとき出てきたやつは52度だって!
いわゆる「スピリット」と呼ばれるお酒だよね・・・。
中国酒だと、紹興酒に代表される「黄酒(ホァンチュ)」が有名だけど、これは透明で香り高いお酒なんだ。

紹興酒などは日本酒と同じように、お米を原料にして、麹と酵母で並行複発酵させて作るんだけど(麹がデンプンを糖に変え、それを酵母がアルコール発酵させる。)、原料はモロコシ(コーリャン)。
蒸したモロコシに大麦や小麦、エンドウなどで作った麹の塊をまぜ、土の中に埋めて発酵させるんだそうだよ。
日本ではなかなか考えられない作り方だ・・・。
この麹の塊の中にはアルコール発酵を行う酵母も混ざっていて、塊のまま発酵していくんだって。
どろどろのもろみを造る日本酒や焼酎とはだいぶ様相が異なるのだ。
この塊を蒸留し、得た液体を瓶に入れて長期間熟成すると、「白酒」になるんだけど、仕上がりはだいたいアルコール度数は50度くらい。
芳香成分を多く含み、独特の香りがあるのだ。
ちなみに、蒸溜した後に残る「酒粕」は豚のえさにするんだって。

中国の宴席での乾杯にはこの白酒を使うのが通常で、小さなグラスにそそぎ、文字どおり「乾杯」するのだ。
なんか、日本の体育会系計の飲み会みたい・・・。
ボクも最初の一杯はつきあったけど、アルコール度数が50度もあるとのどが焼けるようだから、これはなかなかつらいよ。
中国は日本よりもお酒が強い人が多いんだね。
というより、アジア地域でここまでアルコール度数が高い蒸留酒は白酒くらいなんだよね。
泡盛だと最高で60度くらいあるけど、多くのものはブランデーとかウイスキーと同じらいで、白酒はウォッカとかジン並の高さ。
中にはスピリタスのような96度なんていうほぼエタノールというのもあるから、世の中は広いよ(笑)

でも、20世紀末くらいからアルコール度数の低い白酒も出回り始めているんだって。
今は40度くらいの低度酒が主流になりつつあるとか。
それでも十分にアルコール度数は高いと思うけど。
嗜好の変化だけでなく、海上輸送の制限とかいろいろあるんだって。
確か、その会食の時は、中国の人が持ち込んでいたよ(笑)
そこまでしなくていいのに。
それにしても、それをストレートで飲むんだから、中国はやっぱりあなどれない!

ちなみに、蒸留酒自体は古代メソポタミアや古代エジプトにもすでにあったことが知られているという歴史のあるもの。
今のような蒸留方式が確立されたのは錬金術の時代なんだとか。
中国での蒸留酒作りがいつ始まったのかはよくわかっていないみたいなんだけど、中世欧州で確立された技術が東南アジア経由で伝わったのでは、と考えられているらしいよ。
とはいえ、古代社会にもあったから、もっと単純なものはシルクロードで伝わっていたかもしれないけどね。

2017/02/25

21世紀の花金

いよいよ「プレミアムフライデー」が始まったのだ!
「ゆうかつ」に引き続き、安倍政権の働き方改革の一環として打ち出されたわけだけど・・・。
どうなるだろうね?
下馬評は必ずしもよくないし、どこまで効果が見込めるのか、というか、本当に実施できるのか、というのが問題のような気もするけど。
これが普通にできるようになれば、もともと博物館・美術館の多くが金曜日は遅くまで空いていたりするし、金曜を移動日に使って土日に旅行を楽しめるしで、レジャー関係には追い風なはず。
でも、「ゆうかつ」もそこまで大成功という感じじゃないからね(>o<)

もともとの問題は、日本人は休みも取らないし、残業も多いという勤務形態。
でも、実は祝日の数だけを見ると、日本は世界でもかなり多い方!
「山の日」も増えて年間16日もあるので、これはトップクラスの多さなのだ。
(欧米はだいたいが10日くらい。)
とれないとはいえ、年間で20日間の有給休暇も認められるし、本来は36協定もあるので、制度上はきちんとしているのだ。
なので、問題は、働き方の意識の方なんだよね。
そう、休む権利を持っているのに休まない(休めない)のが問題なので、こういうイニシアティブをはじめても、きちんと15:00で仕事を終えて帰るとは考えづらいし、まさに、世間でもそう思われているよね。

この関係で行くと、日本の祝日制度にある「ハッピーマンデー」というのも、欧米から見るととても不思議な制度に見えるようなのだ。
つまり、火曜とか木曜に祝日があれば、月曜や金曜に休暇を取って4連休にする、というのが欧米式の考え方で、なぜ祝日を月曜日に移動して3連休を作り出すのかがわからないんだって。
自由に休みが取れる社会であればおっしゃるとおりなんだけど、日本の場合、祝日なら休めるけど・・・、という人が多いので、歓迎されるんだよね。
まさに、この制度があること自体がワーカホリックの象徴なのだ(笑)
その祝日ですら返上で働いて、さらに、代休も取れなくて、なんて話もよくあるから、これはもう社会全体で意識を変えていかないといけない問題だと思うよ。

さらに、今年は運悪く、祝日が土曜日に当たることが多い年。
そして、ゴールデンウィークも、昭和の日が土曜に当たってしまうため、連休は短め。
というわけで、嘆いている人が多いわけだけど、これも欧米の人からしたら、だったら自分で休みを取ればいいじゃない、というだけの話なんだよね。
そもそも日本では夏期休暇も1~2週間というのが普通で、中にはお盆に3日間とか、全くとれないなんてのも。
一方で、欧米はバカンスと称して数週間。
これだけ休みに対する意識の差があるのは事実。

でも、欧米の人たちから見ると、日本の働き方は、休みも取らないからリフレッシュされないし、終期を明確に決めずにだらだらと残業して効率が悪い、と見ているみたい。
確かにそういう面もあるにはあるんだよね。
慢性的なマンパワー不足で仕事が回らないというけど、だったら、仕事の量を減らすように業務改善するか、マンパワーを増やす、ということを考えるのが欧米式のスタンダード。
今いる人員で業務の内容・量も変えずになんとかしよう、というのは毒されている日本の考え方なのだ(笑)
ここが解決できれば、プレミアムフライデーとか言わなくてもすむんだよね。

でも、これは一朝一夕には解決しない問題であるのも事実。
男女共同参画の話題でも問題になることだけど、まずは「affirmative action」として強制的にそういう状況を作り出して、「既成事実」としてそういう制度を根付かせてしまう、というのもやり方ではあるのだ。
でも、そのためには、表面上うまいことデータを集めて効果があったとごまかすんじゃなくて、少数であっても、きちんと実行して意味があったという例を積み上げていく必要があるんだよね。
というわけで、きっと批判は多いけど、とにかくやってみることが大事かもしれないのだ。

2017/02/18

シャワーの水をやわらかく

フランスの水道水は硬水。
とにかくカルシウムが多いのだ。
で、水滴を拭き取らないと白い点々が残るくらいならいいんだけど、洗濯物もごわごわになるし、髪を洗った後に髪の毛もごわごわになるのだ(>_<)
ボクはまだ髪が短いからましだけど、髪が長い女の人にはけっこうきついみたいだよ。
もともと毛が柔らかいブロンドの毛だと問題ないのかな?

これについて調べてみると、世の中には「軟水化シャワー」なるものがあることがわかったのだ。
シャワーヘッドにカートリッジがついていて、出てくる水が軟水になるんだって!
どうも、これで髪を洗うと髪がごわごわにならないらしい。
ちょっと魅力的だよね。
で、実は日本の会社の製品がドイツで作られていて、欧州域内には配達してくれるみたいなんだよね。
でも、それとはまた別に、Bioの店で売られているものもあると聞いたので、近所のBio専門店に見に行ってみたんだ。
そこにあったのは、バクテリアやトリクロロメタンを取り除くというカートリッジ付のシャワーヘッド!
でも、これでも水は軟水化されるそうな・・・。

自分なりに考えてみたんだけど、確かに主目的ではないにせよ、カルシウムイオンが除去されるかもしれないんだよね。
というのも、この浄水器型のシャワーヘッドは、逆浸透膜を使っているようで、それにより水道水中の塩化物イオンなどを取り除く仕組みのようなのだ。
するt、電気的に中立でないと困るので、マイナスの電荷を持つ塩化物イオンとともに、プラスの電荷を持つイオンが同時に取り除かれるはず。
とすると、水道水中に多量に含まれるカルシウムイオンがそれに該当することになるのだ。
なので、カルシウム除去が目的じゃないにしても、毛かとしてカルシウムが取り除かれて、軟水化されてもおかしくないのだ!

ちなみに、逆浸透膜というのはとてもとても目の細かい穴の空いた膜で、水分子はその穴を通れるけど、プラスやマイナスの電荷を持つイオンは通さないというもの。
イオンそのものの大きさは水分子とさほど変わらないものもあるのだけど、通常は水中ではイオンの周りに水分子がまとわりついている状態(水和)で安定しているので、穴を通れないのだ。
この逆浸透膜で濃度の異なる水溶液を仕切ると、濃度が均一になるように濃度が高い方から低い方に水分子だけが移動するんだよね。
このときの「濃度」というのは、必ずしも同じ物質が溶けている必要はなくて、いわゆる「浸透圧」が均一になるように水が移動するのだ。
結果として、もともと濃度が濃かった方は液量が増えて、薄かった方は液量が減るわけ。
なので、水溶液の高さが逆浸透膜の両側で変わることになるのだ。

これは浸透圧の違いで自然にそうなるんだけど、逆に、外から加圧してあげると、逆浸透膜の両側で濃度の異なる水溶液を作ることができるのだ。
つまり、圧力を外から加えると、その分の浸透圧を押し返させるので、それに見合った濃度差が作れて、水分子だけを圧力がかかっていない方に移動させあれるのだ。
この原理を使っているのが、逆浸透膜を利用した濾過装置。
シャワーヘッドや蛇口に装着するカートリッジの場合、水道のもともとの水圧を使っているわけ。
もちろん、使っているとどんどんカートリッジ内にはイオンがたまってしまう(=浸透圧がそれだけ大きくなる)ので、水道の水圧だけでは濾過できなくなるので、定期的に交換する必要があるよ。
フィルターの目詰まりみたいなものだよね。

というわけで、化学的に考えてみると、普通のシャワー装着型浄水器でも水は軟水になりそうなのだ。
実際にそういう体験談もあるし、試してみる価値はあるかも。
あとは、もともと軟水化をうたっているものと比べて、メンテナンス費用でどっちがお得かだね。

2017/02/11

定期的に入れ替えよう

職場で備蓄食料の入れ替えがあったんだよね。
どんなものが備蓄されているのかはまったくしらなかったんだけど、古くなったものでまだ消費期限が来ていないものは「御自由にお持ち下さい」となったので、どういうものがあったのかそこではじめてわかったのだ。
実際に出てきたものは・・・。
缶詰!
ミートソースのラビオリと、ほうれん草、それにシュークルーと(酢漬けキャベツの煮たもの)。
日本だともっといろんなものがあったけど、フランスだとそんなに日持ちするような食料品がないのかなぁ・・・。

そもそも長期保存可能な食品としてナポレオン時代に瓶詰めが発明されたんだよね。
ナポレオンは長期遠征をしたので必要だったのだ。
同時期に発明されたのがブランデー。
これも長距離持ち運べるようにとの工夫。
でも、便だと割れる危険があるし、重いので、やはり携行には不便な点も多かったのだ。
これに対し、英国で缶詰が発明されたんだよね。
ガラス瓶より丈夫な金属の容器に入れる、というものだったんだけど。
そうして、便利な缶詰はその後いろんな工夫がなされ、様々な食品が長期保存できるようになったのだ。
今では缶切りが不要なものが主流になりつつあるよね。

缶詰は、中身を詰めて密封してから加熱加圧滅菌するので、保存性はきわめて高く、通常は数年はもつのだ。
普通のものでも2~3年。
長いものだと5年以上。
入れ物自体が頑丈で積み重ねられるので、備蓄食料として保存するには適しているんだよね。
ただし、缶詰はどうしても製造工程上熱を通す必要があるので、たいていは蒸したもの・煮たものになってしまい、味が単調になりがちなのだ。
たまに食べるのはいいにしても、非常時に毎食食べるにはちょっときついものがあるよね・・・。

日本では、伝統的には塩漬けや乾物が備蓄食料として食べられてきたのだ。
この延長線上にあるのが先の大戦時に普及したアルファ化米。
もともとは伊勢物語の「東下り」にも出てくる「糒(ほしいい)」で、米を炊いてから乾燥したもの。
むかしは天日干しだったので、水でふやかして戻しても炊いたお米とは別物だったんだけど、アルファ化米はお湯で戻すと炊きたてとはいかないまでも、そこそこのごはんが食べられる代物なのだ。
戦後も非常食やレジャー(特に山登り)の携行品として重宝されたんだよね。
この発想の少し先にあるのは即席麺。
乾燥した麺をお湯で戻すわけだけど、カップ麺ならお湯を注ぐだけでできるし、けっこうおいしいので、多くの家庭では非常食として備蓄されているのだ。
ただし、カップ麺の賞味期限は6ヶ月と意外に短く、消費期限で考えても1年は越えないので、備蓄食料という点で保存性に劣るものなのだ(>_<)

ところが、非常時にはそのお湯さえも手に入らないことが多いんだよね・・・。
なので、伝統的な乾パンなんかが備蓄食料としては重要なのだ。
最近では、密閉缶に詰められてより保存期間が長くなったものもあるよ。
似たようなもので、コアラのマーチとか、食パンの缶もあるのだ。
フランスでもこういうのがあるとよいのだけど、バゲットでもクロワッサンでもこだわりが強いから難しいのかな・・・。

お湯がなくてもなんとかなるものとしては、レトルト食品があるのだ。
もともとは米陸軍の携行食品の保存性を高める技術として開発されたものなんだけど、アポロ計画で宇宙食に採用されて一気に注目度が上がったのだ。
ところが、米国では巨大な冷蔵庫が普及していて、冷凍食品を使うことが多かったので、米国ではあまり発展せず、日本で発展することになるのだ。
ボンカレーは山登りのともとしておなじみだけど、今では様々なレトルト食品があるよね。
温めた方がおいしいけど、非常食として売られているものは温めなくてもおいしく食べられる、というものもあるよ。
そして、アルファ化米がいまいち好きになれないという人のために、パックごはんもあるのだ。
ごはんはデンプンが糊化して固くなっているのでさすがに温めないと食べづらいとは思うけど・・・。
レトルトの場合は缶詰ほどではないにせよ、1~2年は保存できるので、備蓄するにはカップ麺より優秀なのだ。

さらに最近の技術として出てきているのはフリーズドライ。
これも宇宙食で採用されて注目を集めたものだけど、普通の乾燥食品よりおいしくもどせるんだよね。
お湯さえあればおいしく食べられるし、保存性も高いのが魅力なのだ。
何より、コンパクトで軽量にできるので、携行性が高いんだよね。
そういう意味では、備蓄するというより、お湯が手に入る状況での携行食としての方がその真価が発揮できるのだけど。
でも、ごはんがあればお味噌汁もほしいところで、フリーズドライのお味噌汁はなかなか魅力的なのだ(笑)

いずれにしても、やっぱり消費期限はあって、永遠に保存できるものではないので、備蓄をしつつ、保存期間をチェックしながら古くなったものは入れ替えていくのが大事なんだろうね。
でも、入れ替えるときに古いものは消費することになるから、やっぱりおいしく食べられることも大事そうなのだ(笑)
そうでないと、そもそも備蓄をしなくなってしまうんだよね。

2017/02/04

日本では顧みられない乳

フランスは乳製品大国なのだ!
チーズやヨーグルトの種類が豊富でおいしい♪
そして、バターも手作りのものが売ってたりする。
で、我が家でも、手作りバターを買ってみたのだ。
こういうバターは、伝統的な製法で作られているんだって。

バターは、革袋に入れていた牛乳が揺られて自然に脂肪分が固まったのを取り出したのが最初と言われるけど、原理的にはまさにこれなのだ。
伝統的な作り方としては、生乳を温めて低温殺菌し、しばらく静置するのだ。
すると、乳脂肪分を多く含んだ「クリーム」が浮いてくるんだよね。
このクリームをすくい取って、密閉できる容器に入れ、よく振って攪拌すると、中の脂肪分がかたまり出すんだ。
これをい絞ってあげて固形分だけを取り出したのがバター。
有塩バターの場合は、固形分を取り出した後に塩を混ぜるのだけど、そうすることで、保存性が高まり、バターの風味もよくなるんだって。

で、このクリームの中から脂肪分を取り出す過程で、あらかじめクリームを発酵させてから取り出したのが発酵バター。
ヨーグルトと同じで木の枝でかき回したりするとそこから自然に乳酸菌が入って、冷ましながら半日くらい置いておくと中で発酵が進み、乳糖が分解されて乳酸になるのだ。
すると、クリームの液中のpHが下がって弱酸性になるんだけど、そうなるとカゼインなどの乳タンパクが凝集して核ができて、乳脂肪がまとまりやすくなるみたい。
ちなみに、ホモジナイズドされた牛乳だと脂肪分が均質化されて固まらないようになっているので、バターの原料にはできないよ。
で、発効クリームから固形分(=発酵バター)を取り出した後に残るのが、伝統的なバターミルク。
脂肪分が少なく、発酵過程を経ているので乳糖が少なめで乳酸があるのでさわやかな酸味があるものだよ。
脱脂乳との違いは、脂肪分が少しは残っているのと、乳糖が少なく、乳酸由来の酸味があること。

欧米ではかなりポピュラーな乳製品だそうで、さわやかな酸味があるので製菓材料などにも使われるみたい。
ただし、伝統的な製法があまり行われなくなってきているので、この伝統的バターミルクはあまり見られなくなっているみたい。
現在の工業的製造法では、あらかじめクリームを発酵させずに脂肪分を取り出すので(無発酵バター)、ここからできる液性残渣は限りなく脱脂乳に近い存在になるんだよね。
でも、わざわざそこに乳酸菌を足し、「培養バターミルク」なるものが欧米では製造されているようなのだ。
これが欧米でよく売られているバターミルクらしいよ。
ビタミンやミネラルが豊富でカロリーが低く、乳酸が多いので消化にもよい、というすぐれた乳製品で、日本人のように乳糖不耐症がある人にも安心して食べられるのだ。
ところが、このバターミルクはほとんど日本では流通していないんだ!
バターミルクから水分を除いたバターミルクパウダーはあるみたいなんだけど。

その理由はネットで調べるといろいろと出てくるんだけど、ひとつの要因となっていそうなのは、「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法(昭和40年法律第112号)に基づく、「加工原料乳生産者補給金制度」というもの。
チーズやバターの原料となる加工原料乳というのは、いわゆる牛乳に加工される生乳より取引価格が安いので、これらの製品の安定供給のため、独立行政法人農畜産業振興機構が加工原料乳の生産者に補給金を出す、というものなのだ。
で、この補給金が出る対象は「指定乳製品」として決まっていて、脱脂粉乳やバター、チーズは入っているんだけど、バターミルクは入っていないんだ。
だからバターミルクが製造できないというわけじゃないんだけど、バターミルクは生産しても補給金が出ないので、生産するインセンティブが低くなるわけ。
バターの副産物とはいえ、製品として流通させるにはそれなりの設備が必要だけど、日本でもともとなじみもないものなので、そこまでの投資は割に合わない、ということなんだと思われるのだ。

今の健康ブームの流れでは、売れそうな気がするんだけどなぁ。
バターミルクという名称だと、むしろ普通の牛乳より脂肪分が多くて、カロリーが高いようなイメージではあるんだけど(笑)
チーズの副産物である乳清(ホエー)は見直されているから、バターミルクもいつか日の目を見る機会が来るんじゃないかな。
とりあえず、フランスでは売っているので、一度買ってみよう。

2017/01/28

じゅーそーの力

パリでは洗濯をしていくと、白い布が灰色になってくると言われているのだ。
どうも硬水のせいのようで、やっぱりカルシウムが邪魔しているようなのだ・・・。
つくづく悪者だなぁ(笑)
量的にはそこまで多いような気もしないんだけど、少しの差で違いが出るものだ!

このカルシウムがどう悪さをしているのかよくはわからないのだけど、ちまたで言われているのは、衣類から洗剤で剥離された汚れ特ついて石けんかすのようなものになり、それが繊維の間に入り込んでとれなくなる、というもの。
たぶん、洗濯物がごわごわになるのもこのせいなのだ。
軟水の場合、カルシウムの絶対量が少ないので、ごくごく微量にこういうのができていたしても問題にならないのだけど、カルシウムの量が多くなれば無視できないということなんだよね。
水滴を放っておくと白い結晶が残るような水だから、仕方ないのかも。

この「石けんかす」のようなものは、おそらく脂肪酸カルシウムなのだ。
水溶性の汚れはすぐに洗濯に使っている水に希釈されてしまうので問題にならないのだけど、皮脂や食べこぼしのような油汚れは洗剤の界面活性作用で衣類からはがされた後は、水に溶けないので小さな粒で洗濯水の中を漂っている状態なのだ。
ちょうどドレッシングを混ぜたような懸濁状態だよ。
で、この油が炭酸水素カルシウムとして水に溶けているカルシウムイオンに出会うと、脂肪酸カルシウムができるのだけど、この脂肪酸カルシウムはほとんど水に溶けないんだよね。
つまり、微粒子の沈殿ができるわけ。
これが繊維の間に入り込むのだ。

ちなみに、洗剤の中の界面活性剤もカルシウムと反応して沈殿しちゃうんだよね。
なので、泡立ちが悪くなるわけ。
これを防ぐためにお酢を入れてあげると、お酢の中のクエン酸や酢酸と先に反応して、水によく溶けるクエン酸カルシウムや酢酸カルシウムになるので、洗剤の界面活性作用を邪魔しなくなるんだよね。
洗濯した後のごわごわも多少解決するのだけど、これもカルシウムを水に溶ける形で取り除いてくれるからなのだ。
硬水で洗濯する場合、洗剤の洗浄力がカルシウムのせいで下がるので、高温で洗うことになるんだけど、そうすると、水中の炭酸ガスが抜けて水に溶けにくい炭酸カルシウムができてやっぱり沈殿ができるんだよね。
これはごわごわのもとになるのだ(>_<)
でも、お酢だけだとやっぱり灰色にはなっていくみたい・・・。

灰色化をを防ぐには、脂肪酸カルシウムができないようにすればいいわけ。
ひとつは、カルゴンのようなカルシウム除去剤を使えばいいのだけど、もっと簡単で安上がりなのは、重曹を使う方法。
重曹は炭酸水素ナトリウムだけど、ナトリウムはカルシウムよりイオン化傾向が小さいので、より脂肪酸とくっついて塩を作りやすいのだ。
すると、脂肪酸カルシウムの代わりに脂肪酸ナトリウムができるのだけど、こっちは水に溶ける場合が多いんだよね。
なので、繊維の中に残る微少な沈殿物がすくなくなるわけ。

というわけで、おありではお酢+重曹を追加して洗濯するとよいみたいなのだ。
うちではこれまでお酢しか使っていなかったので、これから重曹を使うようになると変わるかな?
変わるとよいのだけど。

2017/01/21

アフリカ一の料理

出張でセネガルの首都ダカールに行ったのだ。
アフリカ大陸は初体験!
セネガルと言われても、正直パリ・ダカールラリーの印象しかなかったんだよね。
で、いろいろと調べてみると、アフリカの中でも比較的治安がよい国だというのと、セネガル料理はアフリカ料理の中でももっとも洗練されている、とあったのだ。
なので、ちょっと食事は楽しみだったんだよね。

ダカールは比較的乾燥しているんだけど、セネガルには降水量が多い地域(南の方)があって、そこでは昔から稲作が行われてきていたんだって。
なので、セネガルでは米が主食として食べられているようなのだ。
そんなセネガルの米料理の中でも、ナショナル・ディッシュとまで言われるのが、魚の炊き込みごはんであるチェブジェン。
チェブが米で、ジェンが魚なので、「魚ごはん」というそのままの名前だよ(笑)

でも、作り方は割とこっていて、まず、大量の落花生油で魚と野菜を炒め、トマトのみじん切りやトマトピューレを加えるのだ。
そこに大量の野菜と水を投入し、スープを作るんだって。
このとき、鍋の上に「こしき」を置き、その中に米を入れておいて米を蒸すのだ。
スープの具材がいい感じで煮えたところで魚や野菜などの具材を取り出し、代わりに米を入れて水分がなくなるまで炊きあげるんだ。
盛り付けるときに炊きあげた米の上にさっきの具材を載せてできあがり。
できあがりはパエリア風だよ。

日本人からするとちょっと油が多いかな、というところなんだけど、スープに魚と野菜の出汁が出ていて、それが米にしみているので、日本人にはよく好まれる味と言われるよ。
特に、セネガルには魚の干物のような食材もあるので、なじみやすいそうだよ。
セネガルで魚がよく食べられるのは、大西洋に面しているのとともに、大きなセネガル川があったりするからみたい。
独特の臭気のある巻き貝の干し貝柱も料理に使われるんだって。
こういうところも日本の感覚に近いかも。

もともとセネガルに住んでいたウォロフ族の食文化に、11世紀に入ってきたイスラム文化が混ざり、さらにそこに大航海時代に欧州の文化が入ってきたのだ。
特に、植民地にしていたフランスの影響は大きいみたいで、朝食には、バゲットにセネガルの総菜を挟むサンドイッチを食べるらしいよ。
悲しいことに、セネガルは奴隷貿易の拠点でもあったので、セネガルから多くの黒人が新大陸へと送られたようなのだ。
その際、食文化も一緒に輸出されたそうだよ。
で、チェブジェンの魚が肉に変わった「肉ごはん(チェブヤップ)」が米大陸で作られるようになり、それが今の「ジョロフライス」という料理として米国に残っているのだ。
ジョロフライスは米国でもっともポピュラーなアフリカ料理なんだって。

日本のイメージで言うと、アフリカ料理と言えばクスクスみたいなところがあるけど、米料理もあるんだねぇ。
やっぱりこういうのは行ってみて、食べてみないとわからないものだ。
今回は残念ながらチェブジェンは食べられなかったんだけど、一応他のセネガル料理は食べてみたのだ(焼き魚にタマネギとトマトのソースをかけたやつなど)。
やっぱり現地のものを食べるっておもしろいよね。

2017/01/14

しわとしわをあわせて?

お正月と言えばおせち料理。
で、このおせち料理で衝撃的な発言を知ったのだ。
それは、おせち料理の黒豆のに方について。
黒豆と言えば、いかにしわが寄らずに柔らかく煮えるか、ということで、ネット上にも様々な情報・レシピが載っているけど、中でも有名なのは、料理研究家の土井勝さんが15年かけて考案したという「土井式」。
これは簡便につるつるの黒豆が作れると評判なのだ!
ところが、この「土井式」について、土井勝さんの息子さんで、やはり料理研究家の土井善晴さんが衝撃的な発言をしていたのだ。

つまり、もともと黒豆は「しわが寄るまでまめに働く」という縁起物だから、しわがない黒豆はよくない、と、土井勝さんのお母さんは言っていた、ということ。
確かに、調べてみると、地方によってはむしろしわの寄った黒豆を食べることもあるみたい。
ということは、苦労せずとも、工夫せずとも、普通に柔らかくなるまで黒豆は煮とけばよかったってこと?
15年かけたレシピが自分の母親に否定されていたとは・・・。

現在のおせち料理自体は、江戸時代に徐々に形になってきて、明治以降に形式化したものなんだって。
そもそもお重に詰めて、というのが明治以降の話で、江戸時代はお膳に載せた料理とお重に詰めた料理の両方があったみたい。
明治以降の様式が「日本の伝統」と認識されている例の一つだね。
縁起物や語呂合わせも江戸時代考案のもののようだよ。
もちろん、古来から祝い用の料理とかはあって、当然ながらその流れも合流しているとは思うんだけど。

黒豆については、江戸の高級料亭「八百善」が考案したものと言われているようなのだ。
だとすると、やはり最初はしわがなく、きれいなつるっとした煮豆だったのでは・・・。
おそらく、それが庶民に浸透していく過程で、料理屋のようにしわなく煮ることが難しいので、「むしろしわがあった方が」ということになった可能性もあるよね。
むしろその方が理屈は通ってる(笑)

むかしながらの作り方だと、まず黒豆をやわらかく煮て、それを甘い糖蜜に浸して味を含ませるようなのだ。
徐々に糖蜜の濃度を上げて、濃い糖蜜に浸していくんだって。
この方法だと、どうしても1週間くらいかかるんだよね・・・。
それが、「土井式」では2日間でできるのだ。
ま、これも今となっては手間がかかる、ということかもしれないけど。

黒豆にしわが入る原因はいくつかあって、ひとつは急に浸透圧の高い液につけると、豆から水分を奪ってしまうので、しわができてしまうというもの。
なので、むかしながらの製法では徐々に濃い糖蜜にしていくという行程だったのだ。
ところが、「土井式」では、最初に煮汁を作ってしまって、乾燥した黒豆をそれでもどすんだよね。
そうると、煮汁は豆に染みていくだけで、水分を奪っていくことはないのだ。
さらに、煮汁が熱いうちに豆を入れることで、さらに染み込みの早さを加速しているんだ。
これで一晩放置すると、甘い煮汁で戻された黒豆ができるわけ。

今度はこれをやわらかく煮るんだけど、「土井式」では、弱火でじっくりと8時間くらいかけて煮るのだ。
考案された当初は石油ストーブも多く使われていたので、石油ストーブに載せておくということだったみたい。
このとき、煮汁は豆がひたひたになるくらいに常にキープする必要があって、水分が少なくなってきたら熱湯を足すのだ。
豆にしわが寄る第二の原因として、急激な温度変化があるんだよね。
なので、水分補給には水を差したりしないわけ。
また、沸騰させずに弱火でことこと煮込むというのも、沸騰させてしまうと豆の表面が空気に触れる可能性が出てきてしまうから。

というわけで、「土井式」は本当によく考えられらレシピなんだよね。
ところが、現在では黒豆は正直あまり人気のない料理・・・。
ボクは割と黒豆は好きなんだけどなぁ。

2017/01/07

マグネシウム補給

年末日本に一時帰国しているときに「こむら返り」で足がつったのだ・・・。
急に走ったらそうなったんだけど、原因としては、運動不足やミネラルの欠乏なんかが考えられるんだよね。
運動不足は仕方ないにしても(笑)、栄養面は改善できるはずなので、ちょっと調べてみたところ、カルシウムとマグネシウムのバランスが問題とのこと。
カルシウムは積極的に摂取するようにしていたんだけど、むしろ問題はマグネシウム?

マグネシウムも必須のミネラルで、人体ではその多くはカルシウムとともに骨に蓄積されているんだって。
植物の場合は葉緑体の中のクロロフィルの中心にマグネシウムがあって、光合成に不可欠だから人間以上に重要なミネラルなのだ。
とすると、野菜などの植物性の食物を食べていれば補給できそうな気もするけど、そんなに多く含まれているわけではないみたい・・・。
マグネシウムの不足は、糖尿病やら鬱病やらに関連しているとも言われているのだ(>_<)
でも、日本ではあまりマグネシウムのサプリは見かけないよね?
それは、日本人の食生活と関係があるみたい。

マグネシウムを比較的多く含む食品としては、豆類、アーモンドなどの種実類、海藻類が知られているのだ。
豆の中でも特にダイズには多くて、さらに、大豆の加工食品である豆腐は、豆乳を塩化マグネシウムを主成分とする「にがり」で固めたものなので、マグネシウム・リッチな食品なのだ!
豆腐の中でもしっかり固めている木綿豆腐が一番多いんだって(おそらく、沖縄の島豆腐はもっと多いのだ。)。
さらに、日本でっよくつかわれるゴマやわかめ、ひじき、あおさなどにもマグネシウムは比較的多く含まれているので、日本式の食生活だと欠乏するということはあまりないみたい。

ところが、フランスに来て見ると、マグネシウムのサプリが売っているんだよね。
逆に、カルシウムはマイナーなようなのだ。
さらに、マグネシウムを増強したミネラル・ウォーターも売っているよ。
これもおそらくフランスの食生活を反映しているんだよね。
フランス人は牛乳、バター、チーズなどの乳製品を非常に多く食べるし、さらに、飲んでいる水はカルシウム含有量の多い硬水。
こういう環境なので、カルシウム不足を心配する必要はあまりないんだよね。
逆に、フランス人の食生活の中には、マグネシウムを多く含む食品は少ないのだ。

さらに、水の問題もあるんだよね。
水の硬度は、中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量で決まるんだけど、フランスの水はカルシウムが多い硬水。
マグネシウムはむしろ日本の水より少ないくらい。。
日本の水道水だと、カルシウムとマグネシウムの比率は4:1くらいなのに対して、フランスでは15:1くらいで圧倒的にカルシウムが多いのだ!
フランスの水のカルシウム含有量は日本の2倍くらいなので、マグネシウムの量は日本の半分くらいということになるよ。
食生活の中にも多くないし、水の中にも少ないので、サプリとして摂取したくなるのがわかるのだ。

ということは、ボクもフランスにいる間にマグネシウムの摂取には気をつけないといけないということか。
一時帰国中の「こむら返り」がフランス滞在中のマグネシウム不足によるものとは思わないけどね(笑)
ま、フランスでも豆腐は手に入るので、ときどき豆腐を食べるようにすればよいかな。