2018/12/29

オレンジの甘いやつ

クリスマスに連休になったので、南仏に行ってきたのだ。
いやあ、南仏の料理はあっさり目でおいしい♪
今回特によく出てきたのは、カボチャ。
最初は「butternut」って書いてあるから何かと思ったよ。

バターナットというのはカボチャの一種で、秋に収穫して冬に食べるもの。
まさにこの時期に食べる野菜なのだ。
フランスのスーパーでよく見かける「ひょうたん」型のカボチャがバターナッツなんだね。
あれって、下のふくらんだところにだけ種があるんだって。
繊維質が少なめで水分が多く、ねっとりした食感なので、ピュレにしたり、スープにしたりするようなのだ。

いわゆるカボチャという野菜には大きく分けて三種類あって、どれも米大陸原産。
日本でよく食べている緑のカボチャはセイヨウカボチャ。
日本ではクリカボチャとも言うよ。
フランスでは、セイヨウカボチャはpotironというのだけど、そのうち小ぶりで日本のカボチャのようにほくほくしているものはpotimarronという名前で、やっぱり栗のイメージがあるみたい。
水分が少なめで、熱をかけるとほくほくした感じになるのが特徴。
甘味も強いよ。
和食のカボチャの煮物に使うならこれだし、天ぷらなんかにしても、サツマイモと同じような食感になるのだ。
ちなみに、最初は飼料用としてはいってきたものだったんだけど、戦後の高度成長期に品種改良が進んで、イモのような甘味と食感のカボチャとして好まれるようになり、広まったんだそうだよ。

セイヨウカボチャがあるならニホンカボチャもあるわけで、バターナットはなんとニホンカボチャの仲間。
ねっとりとしているのが特徴で、京野菜の鹿ヶ谷カボチャもニホンカボチャみたい。
最初に南蛮ルートで日本に伝わったのはこっちなのかもね。
カボチャの原種に近いものだそうだよ。
セイヨウカボチャがほっこりしているのに対してこちらはねっとり。
煮たりするととろっとするよ。
もともと日本で食べていたのはこのカボチャ。
形は崩れてしまうけど、逆にピュレやスープには向いているんだよね。
カボチャのポタージュなんかはこれで作るのだ。

最後はペポカボチャ。
その他のカボチャは全部これ(笑)
ズッキーニや金糸瓜(ソウメンカボチャ)もこの仲間だよ。
実は、英語で言うパンプキンは、ハロウィンで見られるようなオレンジ色の果皮のペポカボチャのみを指す言葉で、他はスクワッシュ(squash)というんだって。
ということで、日本ではほぼパンプキンは食べていないのだ・・・。

これで長年の謎が解明した!
あのほっこりのカボチャからどうやってカボチャのスープを作っているんだろ、と思っていたんだけど、カボチャの種類が根本的に違うんだね。
なんか、じっくりと低温で熱を入れるととろっとろになるみたい。
自分ではなかなか作る機にはならないけどね(笑)

2018/12/22

シューッで隠せ

「アパマン大爆発」はすごい事故だったね・・・。
写真を見ると建物が跡形もなく吹っ飛んでいるし。
それだけ爆発が大きかったはずなのに、中にいた店長と店員が二週間程度の火傷というのもびっくり。
そして、それ以上にびっくりなのが、ああいう賃貸紹介業者がやっている「クリーン消臭」っていうサービスがスプレーを噴射して終わりだった、という事実。けっこうとられているよね(>_<)
そこで、ちょっと消臭スプレーについて調べてみたのだ。

消臭スプレーは、その名のとおり消臭に使われるんだけど、大きく分けて、匂いを消すものとごまかすものの二種類があるんだ。
後者の「ごまかす」方はいわゆる「ベルサイユ方式」。
古くは香水で部屋の中にあるおまるの糞便の匂いをごまかしていたように、悪臭を他の芳香成分で包み込んで隠してしまうのだ。
これをマスキングというらしいよ。
最近は、特定の臭気成分について、それと合わせると良い香りに感じられるような芳香成分を使う「ペアリング」という方法もあるんだって。
確かに、香水の成分の中には「くさい」ものがまざっているというよね。
でも、これは全く解決にはなっていないのだ・・・。

では、匂いを消す方はどうかというと、大きく分けて3種類の方法があるみたい。
まずは化学的な消臭。
臭気成分と消臭成分を化学反応させて匂いがしないものに変換してしまう、というもの。
多くの臭気成分は酸だったりアルカリだったりするので、それを中和してしまうのだ。
でも、臭気成分にはいろんなものがあるので、特定の匂いの除去には非常に協力だけど、いろんな終期が混ざっているような場合には使いにくいんだよね。

そういうときに使えるのが物理的な消臭。
これは臭気成分を吸着したり、包み込んだりして嗅覚に届かなくするのだ。
活性炭の消臭剤が有名だけど、あれは活性炭の多孔質な表面に匂いの元が吸着されるのだ。
包み込んでしまうというのは分子レベルでおおいをかぶせてしまうイメージ。
大きな穴を持つ高分子がその穴の中に臭気成分の分子を取り込んでしまうのだ。
大量に臭気成分があるととりきれないけど、いろんな匂いが混ざっているときには有効なんだよ。

最後は生物学的な消臭。
生ゴミなどはそこでバクテリアが繁殖することで匂いの元である分子ができてくるんだよね。
タンパク質が分解されるとたいてい窒素原子や硫黄原子の入ったくさい低分子化合物が出てくるのだ・・・。
なので、抗菌剤でバクテリアの繁殖を止めてしまえば匂いの元が出て来なくなる、という仕組みだよ。
ゴミ箱を匂わなくする消臭剤なんかがまさにこういうのだよね。
或いは、更にその匂い分子まで分解するようなバクテリアを使う、という方法もあるのだ。
匂わないバイオトイレなんかがそれ。

で、消臭剤と言えばメジャーなのはファブリーズとリセッシュ。
ファブリーズは物理的消臭の原理で、その消臭成分はトウモロコシ由来のシクロデキストリン。
グルコースが複数つながったオリゴ糖の一種なんだけど、環状につながっているんだよね。
そのため、ドーナツのような構造で、真ん中に穴があるのだ。
この穴のまわりにはヒドロキシ基(-OH)がたくさんあるので、酸やアルカリの匂い分子はこの穴に水素結合でトラップされることになるよ。

もう一方のリセッシュは化学的消臭。
こっちの消臭成分は両性界面活性剤と言われるもの。
pHによってプラスにもマイナスにも帯電する界面活性剤で、酸と出会えばアルカリとして中和し、アルカリと出会えば酸として中和するような性質を持つ万能選手なのだ。
なので、たいていの帯電した酸やアルカリの臭気成分には対応できるというすぐれものだよ。

ただ、どちらにしても、匂い成分はなくなっているわけじゃなくて、「無効化」されているだけなんだよね。
なので、当然のことながら「洗濯」、「洗浄」の代わりにはなっていないのだ!
匂いを消しているだけ。
なので、衛生的観点で言えば、消臭スプレーをかけたらきれいというわけではないんだよ。
最近は抗菌作用もついた消臭スプレーもあるけど、やっぱり「きれい」になっているわけではないので、注意が必要なのだ。

2018/12/15

おどろきの吸水力

ボクは試したことないんだけど、珪藻土マットってすごいらしいね。
ぐんぐん水を吸い取るんだって。
お風呂マットは一人が使うとべちゃべちゃになってしまうけど、珪藻土マットだと、使ったかどうかわからないくらいで、吸水力も落ちないそうなのだ。
ちょっとほしい、というか、一度試してみたい!
でも、固い「板」なので、布地のマットと違って存在感はあるのだ。

珪藻土は、珪藻の被殻が細胞の死後に水底に積み重なったもの。
珪藻は単細胞の光合成を行う藻類の一種なんだけど、珪酸質(二酸化ケイ素)の「殻」を持つ生物なのだ。
極小の殻の中に藻類が詰まっているイメージ。
その「殻」は多孔質で、様々な形があって、その幾何学的なデザインの違いで分類がなされているらしいよ。
で、細胞本体が死ぬと、この「殻」だけが残って、これが微少な化石となるのだ。
それが堆積したのが珪藻土。
珪藻土の粒の一つ一つはもともと珪藻の「殻」だよ。

というわけで、珪藻土は多孔質の石灰の微少な粒の集まりなのだ。
同じ多孔質である活性炭と一緒なんだけど、この構造から、様々なものを吸着するんだよね。
特に水をよく吸着するので、吸水性・吸湿性が高いよ。
なので、濾過材につかわれることもあるのだ。
ただし、活性炭と違って、吸着力はつよくないので、溶解しているような分子をとらえることはできず、溶液は素通りさせ、不溶成分だけをひっかける感じ。
このため、イオン交換樹脂などのフィルターの前に置いてフィルターが目詰まりを防ぐのに使われたりするみたいだよ。

このほか、多孔質であることから、耐火性や断熱性にすぐれていて、漆喰のような感じで建材に使われることもあるみたい。
むかしから吸湿性がたかいので、壁土に使われていたみたい。
で、この給水・吸湿の特性をいかしたのが、珪藻土マット。
板状に成形し、お風呂用マットにしたもの。
上に乗るとぐんぐんと水を吸っていくみたいだよ。

ただし、あくまでも板なので、布地のバスマットとは違ってたたんでしまうようなことはできないのだ。
また、硬質のものなので、ちょっと落としたりするとかけてしまうことがあるんだって。
ま、軽石みたいなものだからね。
それでも、ネットで見る限りでは評判がいいみたいだから、よっぽど水を吸うんだろうなぁ、と想像するわけ。

吸わせた水はどこかで蒸散させる必要があるんだけど、珪藻土マットの標準的な使い方として、定期的に陰干しが推奨されているのだ。
直射日光に当てると板状の形状が反ったりするので厳禁。
また、洗えるものと洗えないものがあるようだけど、洗えるものは表面を水洗い、そうでないものは布か何かでさっと拭き取ることも大事。
というのも、足の裏にある皮脂などがマットに付着するから。
そのまま長時間使い続けると、ちょっと黄ばんでくるんだよね(>_<)

これは珪藻土マットの表面に皮脂などのよごれが付着してしまった証拠。
こうなるとせっかくの多孔質の穴の部分が目詰まりしてしまって吸水力も落ちてしまうのだ。
こうなった場合、紙やすりで皮脂などのよごれごと表面を削り取ってしまうとよいみたい。
当然粉はたくさん出るけどね(笑)
そうすると、驚きの吸水力が復活だって。
まな板の表面を削るようなものだね。

ちなみに、割れてしまった珪藻土マットは防臭剤として利用で着るみたい。
活性炭の防臭剤と同じで、においの分子を多孔質の珪藻土が吸着してくれるのだ。
なので、割れた珪藻土マットの破片を靴箱やらに入れておくとにおいがましになるって。
割れても使い道がないわけではないのか。

2018/12/08

歳末市

先日、ストラスブールに行ってきたのだ。
ドイツとの国境に位置するこの街は、フランスとドイツの領有権争いの場だったんだよね。
名前からしてドイツ風だし、実際に多くの文化はドイツ系だけど、現在はフランスの都市。
で、このドイツ系の文化の中に、この時期に観光客をひきつけてやまないものがあるのだ!
それが年末の風物詩ともなっているクリスマス・マーケット。

ストラスブールは「クリスマスの首都(キャピタル・ドゥ・ノエル)」と名乗るほど、クリスマス・マーケットが有名なんだよね。
大聖堂前の広場だけでなく、街中のいろんなところでクリスマス・マーケットが出ていて、多くの観光客を集めているのだ。
旧市街善太がクリスマスの飾り付けをするので、その雰囲気もよいのだよね。
ドイツは普段質素だけどこういうときにはしっかりと派手にやるのだ(笑)

クリスマスマーケットは、クリスマスまでの間の「アドベント」の期間に広場などに市が並ぶもので、ドイツが発祥。
すでに中世の14世紀にはそのような市が立っていたというよ。
dokoが発祥かは諸説あるけど、ドレスデンやフランクフルト、ミュンヘンなんかの年では、14~15世紀にクリスマス・マーケットを開いていた記録があるみたい。

現在ではドイツ・オーストリア・スイスのドイツ文化圏御三家のみならず、フランスやベルギーにも広まっているのだ。
パリでも一昨年まではシャンゼリゼ通りに大きなクリスマス・マーケットが建っていたんだけど、昨年から中止。
今年はルーブル美術館の前のチュイルリー庭園でやっているよ。

クリスマス・マーケットでよく売られているのは、クリスマス・ツリーの飾り(オーナメント)やクリスマス・リース、クリスマスのお菓子(シュトーレン、パンデピス、ジンジャークッキーなど)。
でも、最も翌目にするのはホットワイン!
フランス語ではヴァン・ショー(vin chaud)、ドイツ語ではグリューワイン(Glühwein)だよ。
ちなみに、ホットワインは和製英語で通じないのだ。
英語ではマルド・ワイン(mulled wine)。
ワインと香辛料を一緒に温めて作るホットカクテルで、欧州のクリスマスの時期は冷え込むから、中からあたたまるこういう飲み物が人気なのだ。
さらに、観覧車やメリーゴーラウンド、アイススケートリンクなどのアトラクションも出るんだよね。
移動遊園地みたいなのができるよ。

欧州の冬は一般に天気が悪く、ただでさえ昼間が短いのに、空もくもっていて余計に暗いんだよね。
で、そのころに開催されるクリスマス・マーケットは華やかなライトアップがなされ、まさに幻想的な雰囲気。
ドイツの場合は現在観光資源としてクリスマス・マーケットを売り出しているんだよ。
もともと陰気なイメージがつきまとっているしね・・・。

アドベントは、クリスマスを祝うために断食をするもの。
クリスマス前までの約4週間をその準備に当てるんだけど、ところどころ断食をすることになっていたのだ。
でも、いつのまにか一年の締めくくりのお祭りになっているのだ。
もともとはクリスマスの準備をするための臨時の市だったんだろうけど、だんだんと娯楽食が強くなっていったんだろうね。
ホットワインでお酒も入るし(笑)

2018/12/01

日本のシェイドグロウン

先日、京都は宇治の人からお茶の話を聞いたのだ。
日本各地にお茶の名産地はいくつもあるけど、宇治が元祖で本場、そもそも、抹茶も煎茶も玉露もみんな宇治が発祥、ということだったんだよね。
確かに茶文化の中心は京都だと思っていたけど、栽培・加工もそうだったんだね。
ま、むかしは長距離の流通は難しいから、まさに都の近郊の宇治エリアが茶の栽培地として重要だったのかも。
でも、よくよく考えてみると、違いがよくわからない・・・。
抹茶は粉になっているから明らかに違うとして、煎茶と玉露の差は?
というわけで、少し調べてみたよ。

日本史の教科書にもあるように、日本に中国大陸から茶を伝えたのは栄西上人と言われているよ。
実は、もっと古い時代(奈良時代?)にもいったん喫茶文化は伝わっていて、伝教大師最澄も比叡山で茶を育てていた、とも言われているのだ。
でも、その古い茶はいったん廃れてしまい、それが催行されたのが、日本の臨済宗の開祖である栄西上人が禅宗とともに喫茶の習慣を日本に持ち帰ったから。
栄西上人から茶の種をもらった明恵上人が京都は宇治の地で茶の栽培を開始したんだって。
これが現代まで続く宇治茶の歴史なのだ。

当時の茶は粉をお湯にとく抹茶。
抹茶は、碾茶(てんちゃ)を臼で挽いて粉にしたもの。
で、碾茶というのは、収穫前に覆いをして日光を遮った状態で育てられた茶の木から摘んだ葉を蒸して乾燥させたものだよ。
まさにシェイドグロウンのお茶なのだ!
(メキシコのシェイドグロウンのコーヒーは、森林を伐採せず林の中でコーヒーの木を育てるものだけど。)
こうすることにより、茶の葉がやわらかくなり、また、甘味成分のテアニンが増え、苦味成分のカテキンが減るのだ。
普通に日光を当てたままの固くて苦い茶葉ではおいしい抹茶にはならないみたい。
今では粉末状にしたものが売られているけど、江戸時代までは碾茶の状態で売られ、それを飲む前に石臼で挽くのが普通だったんだって。
今でも挽き立ての抹茶を飲ませることはあるみたいだけど。

覆いをせずに育てた茶の葉を摘み、蒸してからもんで乾燥させたのが煎茶。
いわゆる「手もみ」をするのだ。
「てもみ」は熱をかけながら板の上で蒸した茶の葉を手でぎゅっとまとめ、板に押しつけたりするんだけど、こうすることで茶葉から水分は抜けていくのだ。
また、この過程で針状の形状に加工するんだよね。
こうすることで、保存性も高まり、また、お湯を注いだだけでお茶が出るようになるのだ。

「煎茶」とは字のごとく、最初は「煎じて」、つまり、茶の葉をお湯で煮出して作るお茶だったらしいんだけど(最初期は薬として服用されたこともあるよ。)、この「手もみ」を入れて加工することにより、お湯を注ぐだけで茶が抽出できるようになったのだ。
これが画期的な発明。
宇治の茶農家の永谷宗円さん(その子孫が「永谷園」を創業するよ。)がこの製法を発明し、山本山の創業者である山本嘉兵衛さんが江戸での商業的成功を収めたことで全国に普及したとか。
山本山ってそんなころから活躍しているのか!

ちなみに、明治の近代化以降は「機械もみ」が普及していて、「手もみ」は超高級品。
「手もみ」だと、お茶を入れた後茶葉はまさに葉っぱの形にもどるんだよね。
でも、「機械もみ」の場合は、途中で茶葉を切る公邸が入ることが多いので、ボクらがよく目にしているお茶がらのように、茶葉が刻まれた形になるのだ。
「手もみ」は力をかけて6~7時間かけてやるそうだから、そりゃあ「機械もみ」が主流になるよね。

そして、玉露は、碾茶を作るときのように覆いをして日光を遮って育てたお茶を蒸してもんで作られるお茶。
江戸末期に山本山の六代山本嘉兵衛さんが考案したんだって。
茶葉を「露」のように甘くあぶったので「玉露」という商品名をつけ、それが一般名称にもなったみたい。
現在のような棒状の玉露は、明治になって辻利の辻利右衛門さんが完成させた形だそうだよ。
山本山に続いて辻利か。
玉露は、普通の煎茶より甘く、また、覆いをかぶせることで発生する独特の香り(覆い香)を楽しむもの。
熱い湯で淹れると苦味が出て、風味も飛んでしまうので、50~60度くらいで淹れて、人肌程度の温度で飲むのがいいんだって。
なるほど、そういう違いがあったのか。

さらに、煎茶と玉露の間の「かぶせ茶」というのもあるのだ。
玉露の場合は20~30日間日光を遮蔽するんだけど、かぶせ茶の場合は1週間~10日程度。
煎茶よりは甘味が強く、少し覆い香もあるんだって。
まさに中間的なもの。
しかも、熱いお湯で淹れるとより煎茶に近く、ぬるいお湯で淹れるとより玉露にちかくなるようで、淹れ方によって違った味が楽しめるのも特徴だって。
帯に短したすきに長し、ということではないみたい(笑)

というわけで、なんとなくお茶の違いがわかったよ。
こういうのはやっぱり調べてみないとわからないなぁ。
逆に日本に関心のある外人の方がよく知ってたりね。

2018/11/24

ブランドを守る

フランスのレストランに行くと、ワインやチーズのところに「AOC」というのが書いてあることがあるんだよね。
これは「原産地呼称統制(Appellation d'Origine Contrôlée)」と呼ばれるもので、その産地で生産された「正規」のものであることを保証するもの。
フランスでは法律によって規制がされていて、こういう地域ブランドが守られているのだ。
フランスではむかしから地域ごとのワインやチーズに特色があって、それぞれがもてはやされてきたんだけど、そうなると当然「偽物」が出てくるわけで、これを排除するために、特定の地域で特定の製法によって作られたものだけが正規のブランド名を名乗れるようになっているんだ。
一番有名なのはシャンパンだよね。
シャンパーニュ地方以外のものはスパークリングワインと呼ばなければいけないのだ。

フランスではロックフォール・チーズのブランドを保護するために、早くも15世紀には原産地呼称制限が議会の布告で定められていたとか。
そうした制度が近代になって法規制となったんだって。
ちなみに、AOC第一号もロックフォール・チーズ。
最初がチーズで、その次がワイン、そしてバターなどにも拡大されていったのだ。
ワインの中でも高級で有名なロマネ・コンティなんかは、特定の畑で栽培されたブドウを使っていないと名乗れないんだよ!
それが法律で守られているところがすごい。

同じような制度は欧州の他の国にもあって、EU全体でも「保護原産地呼称」という制度になっているのだ。
フランスのようにすでに独自の制度を持っている国はその制度を使えば良いのだけど、ない国はこの制度に基づいて地域ブランドの保護を行っているよ。
チーズ、ワインほかの農産物・食品が規定されているみたいだよ。
旅行で行った場合なんかは、そのロゴマークが入っているかどうかを見た方がよいのだ。

でも、日本ではこういった地域ブランドを法律で保護する仕組みはないんだよね。
農産物・食品について一定の品質を確保するための枠組として「日本農林規格」というのがあるけど、これはそうめんの太さとかそういう世界なんだよね。
播州手延べそうめんとか半田そうめんとか三輪そうめんとか、そういう地域ブランドの名称使用の制限はしていないのだ。

でも、地域ブランドを守る仕組みとしては、商標法に定められた地域団体商標というのはあって、これだと、農協や商工会、商工会議所等の団体が地域名と商品名を組み合わせた商標を登録できる制度があるのだ。
例えば「草加せんべい」、「比内地鶏」、「江戸切り子」など。
商標なので独占的な使用ができるよ。

さらに、事業者団体が公取に協議して定める自主的なルールとして、公正競争規約というのもあるのだ。
「和牛」の例なんかが有名だけど、コーヒーやチョコレート菓子でもよく見かけるよ。
例えば、缶コーヒーに表示されている「コーヒー」、「コーヒー飲料」、「乳飲料」の区別、チョコレート菓子の「チョコレート」と「準チョコレート菓子」の区別はこの自主ルールに基づくものなのだ。
このほか、乳製品だと乳等省令という食品衛生法に基づく厚生労働省令もあるんだよ。

網羅的な法律ではないけど、日本でもそれなりの制度はあるんだね。
ただ、いろいろとありすぎてわかりづらいなぁ。
これは生産者の側から見るとどの枠組を使ったらいいのかわからないかもね。

2018/11/17

今年のできばえは?

ボジョレー・ヌーヴォーが解禁されたのだ。
日本にいたころは、それこそすっごく盛り上がっていたし、スーパーやコンビニも含めて街中ボジョレー一色になるのでわかりやすかったけど、フランスではそんなに盛り上がらないんだよね。
スーパーなんかに売ってはいるけど。
ちなみに、毎年11月の第3木曜日が解禁日なんだって。

ボジョレー・ヌーヴォーは、ブルゴーニュワインの一種。
でも、普通のワインとは異なり、ブドウの収穫後すぐに急速醸造され(数週間でできあがり!)、その年のうちに出荷されるというものなのだ。
もともとは、その年のブドウのできを判断するために試飲用として作られたものが広がったもの、なんて言われているよ。
ブドウは日照時間や気温によって年ごとにかなりできにばらつきがあるので、さっとワインにしてみて確かめてみよう、ということみたい。
今年は当たり年でワインのできが良い、なんていうのがワインの出荷前から目星がつけられるのだ。

このため、当初はワイン業者向けの商品だったそうだよ。
ところが、初物が特定の時期に解禁される、っていう点に目をつけた日本の流通業界が日本でブームを巻き起こしたのだ。
もともと初鰹などの初物が大好き、バレンタインデーなどの特定の日の食べ物がらみのイベントが大好きな日本ではこれが大当たり!
かなり広く浸透したよね。
今では恵方巻きやら七夕そうめんやらいろいろあるけど、そういうのの走りでもあるね。
で、それを見て、フランスでも一般消費者向けに売られるようになったんだけど、もともとおいしいワインが好きなフランス人からしたら、急速醸造の若いワインであるボジョレー・ヌーヴォーにはそんなに興味がないようなのだ・・・。
売ってはいるから一定の需要はあるんだろうけど。

このボジョレー・ヌーヴォーに使われるブドウはガメ種というもの。
よく聞くのはピノ・ノワールだとかカルベネ・ソーヴィニヨン、シャルドネだけど、それらに比べて大粒なのが特徴。
ボジョレー地方以外ではワインに使われることはまれのようなのだ。
ワインにすると、色調は明るめで、タンニンが少なめ、酸味が強いので、さわやかな飲み口の良いものになるみたい。
ワインが好きな人は重めの深みのあるのが好きとかいうけど、いわゆるライト・ユーザー層には飲みやすくてよいのかも。
それが日本で成功したひとつの要因かもね。

当初は解禁日の設定はなかったようなんだけど、各ワイナリーが競って素早く仕上げて売ろうと競争した結果、きちんと醸造できていないような粗悪品まで出回るようになったので、解禁日が定められたそうだよ。
そうなると、ワイン業者向けとは言え、それなりに人気の商品ではあったんだね。
ま、ブドウのできを確かめる目的なら、ちゃんとワインになっていないと困るわけで、正しい判断ではあるね。
それが日本人の心をつかむとは思わなかっただろうけど(笑)
ちなみに、一般的なワインとは醸造方が違っていて、出荷時のタイミングでもうそれ以上熟成しないものとなっているので、セラーに寝かせても無駄なのだ。
原則としては年内に飲みきるもの。
なので、ヴィンテージなんてものも存在しないよ。
これは一期一会の精神だね。

そして、この解禁の時期になるとやはり話題になるのがキャッチコピー。
日本ではたいてい「最高の出来!」みたいなのが毎年踊るのだ。
100年に一度のでき、だとか、ここ10年で最高、だとか。
それだけ見ていると毎年右肩上がりにおいしくなっていりょうに錯覚するほど。
でも、そんなことあり得ないよね。
フランスの地元の評価というのもあって、そちらではもう少し謙虚な表現になっているのだとか。
ま、ワイン業者を主なターゲットにしている人の評価と、一般消費者向けのキャッチコピーじゃ違いがあって当然なんだけどね。
ちなみに、今年の地元の評価は「複雑かつなめらかで味わい深い。心地よい渋みもある」というものらしいんだけど、どうも2018年はブドウのできはよいらしく、全体的に2018年のワインはヴィンテージになる可能性が高い、と考えられているようだよ。
ということは、「乗るしかない、このビッグウェーブに」ってことかな?

2018/11/10

前は寒気、後は痛み

体調を崩してカゼっぽくなったのだ(>_<)
いやあ、突然来たからびっくりした!
いきなりおなかが痛くなって、その後に寒気・・・。
これは熱が出るかなぁ、と思っていたら、ちょっと微熱っぽくて(図らなかったからよくわからないけど)、その後全身のだるさと筋肉痛。
完全にカゼの症状だぜ。
ちょっとこらえきれなかったので、薬局で非ステロイド性消炎鎮痛剤のイブプロフェンを買って飲んだのだ(フランスだと単剤で打っているからね。)。
そうしたら、効果覿面、その症状はすっとおさまったよ。

このカゼの時の寒気や筋肉の痛みの主な原因は自分の防御反応なんだよね。
ウイルス性にせよ、細菌性にせよ、多くの感染症の場合、免疫機能を高めるために発熱という選択肢がとられるのだ。
実際、平熱の36~37度よりも、高熱の38~40度くらいの方が免疫反応は活発になるので、それだけウイルスや細菌を駆逐できるのだ!
でも、たまに熱が上がりすぎて42度を越えると危険なんだよね。
というのも、それ以上の熱だとタンパク質が変性してしまうので、体自身が壊れてしまうのだ(>_<)
なので、寝て休んでいられる場合は、40度未満の熱ならそのまま寝て過ごした方が治りが早くて、40度を越えるようだとまずいので、その時点で解熱するのがいいと言われているよ。
でも、実際には休めないから、熱でつらいと薬で下げたくなるよね。

この発熱に一役買っている生体内物質がプロスタグランジンというもの。
細胞膜の中にあるアラキドン酸という脂から作られるんだよ。
プロスタグランジンを作る酵素がシクロオキシゲナーゼと呼ばれるもので、この酵素の活性を阻害するのが非ステロイド性消炎解熱鎮痛剤(NSAIDS)と言われる一群の薬。
有名なところだと、よく総合感冒薬に入っているアセトアミノフェン、ボクの服用したイブプロフェン、頭痛薬によく使われるエテンザミド、筋肉痛の薬としてメジャーなインドメタシンなどなどだよ。
そして、最も有名なのは、アスピリン。
もともとアスピリンは商品名で、化合物名ではアセチルサリチル酸というんだけど、第一世界大戦でドイツが負けて、バイエルが持っていたアスピリンの証票が取り上げられたので、それが一般名称にもなっているのだ!

このプロスタグランジンにはいろんな種類があって、それそれいろんな作用があるんだ。
血管拡張、血圧低下、血小板凝集、発熱、胃粘膜保護などなど。
で、選択的な薬もあるんだけど、多くの場合はいろいろな作用に影響を及ぼしてしまうのだ。
その結果、NSAIDSの有名な副作用として、胃腸へのダメージというのがあるんだよね。
なので、空腹時には飲まないで下さい、必ず食後に、と書いてあるんだよ。
胃粘膜保護作用が弱まるので、どうしても胃腸にダメージが行くのだ。

ちなみに、風邪を引いたときなんかに起こる炎症反応に関与しているのは、シクロオキシゲナーゼでも2型と言われる方で、炎症が起こると増えてくる誘導型の酵素。
マッチポンプで炎症反応をまさに「炎上」させるんだよ。
一方、胃粘膜保護作用を司っているのは1型。
こちらは通常の体のメンテナンスの機能を担っているので、炎症を抑えようと1型にも2型にも作用する薬を使うと、そっちに影響が出るというわけなのだ。
これはたいていの薬で似たり寄ったりがあることで、それが副作用の根本原因なんだよね。

発熱に関与していると言われているのはプロスタグランジンの中でもE2と言われるもの。
全身の筋肉に作用し、筋肉を細かく収縮させることで発熱させるんだ。
この前段階で多くの場合「寒気」を感じているよ。
寒気を感じるとぶるっと震えるのは筋肉を動かして発熱するため。
鳥肌は立毛筋という筋肉が収縮して起こるけど、これも同じ。
人間が発熱する際には筋肉を動かすのだ。

そうすると、これがだるさや痛みの原因にもなるんだよね。
しかも、プロスタグランジンE2の主な作用の一つに、痛覚の伝達を増強する、というありがたくないものがあるのだ!
痛みそのものの原因ではないんだけど、少しでも痛みがあるとそれを増強してしまうわけ。
なので、余計に痛みを感じるんだよ。
歯痛や頭痛にNSAIDSが使われるのはこの作用を弱めるためで、痛みという感覚自体を取り除いている麻薬性鎮痛剤や麻酔とは異なるメカニズムなのだ(麻薬や麻酔の場合は痛覚自体を遮断しているよ。)。

なので、カゼなどで発熱していて体がだるかったり、痛かったりするとき、NSAIDSは非常に良くきくのだ。
特に、高熱が出るインフルエンザの時にはそのありがたみがわかるよ。
最近はウイルス自体を撃退する抗ウイルス剤(いわゆる「タミフル」など)が使われることが多いけどね。
でも、対症療法として解熱や鎮痛が必要な時にはNSAIDSは非常に有効なのだ。
抗ウイルス剤はウイルスの増殖を阻害する薬なのですぐには効果が出ないんだよね。

というわけで、NSADISはけっこういろんな副作用がある薬なんだけど、解熱や痛みの緩和という点では重要な薬なのだ。
日本では単剤で打っていることはまずなくて、総合感冒薬や頭痛薬などなどの形で他の薬剤(副作用を軽減するためのものや他の症状に対応したもの)と混ぜられた形で市販されていることが多いよ。
本当は余計なものが混ざっていない方が使いやすいんだけどね。

2018/11/03

似ているようで違う

フランス語ではレモンは「citron(シトロン)」なんだけど、よくよく見ると、「citoron vert)」であることがあるんだよね。
「vert」は「緑の」という形容詞で、そのままだと「緑のレモン」ってことなんだけど、これは「ライム」を指しているのだ。
日本にいたときはライムとレモンをあんまり比べて考えることはなかったけど、確かにいろ意外は似ているような・・・。
というわけで、ライムとレモンの違いを調べてみたのだ。

実はどちらもインド近辺を原産とする柑橘類でミカン科ミカン属。
レモンはヒマラヤ東部原産で、ライムはインドからミャンマー、マレーシアにかけての熱帯地域の原産だって。
ちなみに、レモンの近縁種で原酒とも言われるシトロン(クエン、クエン酸の「クエン」だよ。)はインド東部のガンジス川上流部の高地。
どれも酸味の強い果汁が特徴なのだ。
古代インドに酸っぱい柑橘類が自生していたってことだね。

レモンやシトロンは早くも紀元前の時代に古代ローマや古代中国に伝来していたんだ。
イタリアではシチリアレモンが有名だけど、地中海地域での栽培が始まったのも相当古い時代みたい。
ライムはいつの時代かはっきりしないけど、アラビア人により西洋世界に持ち込まれたんだって。
どれも寒さに弱いので、比較的あたたかい地域で育てられるようになったみたい。

レモンやライムが世界的に広まるのは大航海時代。
ビタミンC不足による壊血病を予防するため、レモンは重要な果実だったのだ。
で、同じように酸味の強いライムも採用だれたんだけど・・・。
なんと、ライムはレモン以上にビタミンC含有量が低く(半分くらい)、壊血病予防にはあまり役に立たなかったのだ!
英海軍はライムジュースを予防用に正式採用していたんだけどね(>_<)
でも、このおかげでレモンやライムは新大陸にも伝わり、栽培されるように。
大航海時代にそのままでは酸っぱい果汁をおいしく飲むために、お酒に混ぜられることが多かったみたいなんだけど、その名残が各種のレモンジュースやライムジュースを使ったカクテルだよ。

ちなみに、ライムもレモンもその酸味はクエン酸によるもの。
よく酸っぱい=ビタミンC含有と誤解されるけど、違うのだ。
ビタミンCだけならイチゴとかの方が含有量が多いよ。
でも、柑橘類は果物の状態でもわりと日持ちがするし、果汁を搾ってジュースがたくさんとれるしで、大航海時代に携行するには非常に便利だったのだ。
キャベツを発酵させたザワークラウトともに海の旅の必需品だったんだよ。

ライムも完熟すると果皮が黄色くなるようなんだけど、そうなると酸味がなくなってしまうんだって。
そのため、青いうちに収穫するのだ。
レモンも最初は青いんだけど、黄色くなっても酸味が残るし、その方が香りが強いので、黄色くなってから収穫するんだ。
ボクは最初「シトロン・ヴェール」は青いうちに収穫したレモンかと思って思っていたんだけど、そんなわけじゃないんだよ。

ライムには大きく分けて二種類あって、タヒチライム、ペルシアライムと呼ばれる大きめのもの(それでもレモンよりは小さい)と、より小ぶりのメキシカンライム、キーライムと呼ばれるものがあるのだ。
キーライムってよくお菓子のフレーバーなんかにあるやつだよね。
日本に輸入されている多くはタヒチライムだそうで、キーライムはあまり見かけないみたい。
キーライムは酸味が強く種があるんだけど、タヒチライムは酸味がまろやかで種がないそうなので、日本にとってはそっちの方が使いやすいのかもね。

2018/10/27

ミルクと混ぜるだけ・・・?

ボク自身は牛乳が苦手だったこともあって食べたことはないのだけど、フルーチェってあるよね。
牛乳と混ぜるだけでぷるぷるのデザートができるハウス食品の商品。
最近では100円ショップにも量が少なくなっている廉価版があるそうで。
CMは見なくなったものの、人気商品なのかな。
で、このフルーチェ、きちんと作らないと固まらないそうなのだ!

作り方は至って簡単。
常温のフルーチェに冷たい牛乳を加え、よく混ぜる、それだけ。
すると、とろみが出てきてぷるんぷるんになるのだ。
ところが、この「牛乳」の選択を誤ると、失敗するんだって。
豆乳がダメなのはまだいいとして、カルシウム増強乳とか、そういうのではダメなのだ。
より具体的には、無調整でも低脂肪でも無脂肪でもよいのだけど、「牛乳」となっているのはOKで、「加工乳」や「乳飲料」と書いてあるものはダメなことが多いんだって。
それはなぜなのか?

その前に、まずはフルーチェの固まる仕組みを知らないとだよね。
フルーチェが固まるのは、ペクチンがカルシウムと反応してゲル化するから。
端的にはそうなんだけど、わかりづらいよね(笑)
ペクチンは、ジャムなんかの粘性の原因にもなっている多糖類で、植物の細胞壁などに由来するもの。
例えば、リンゴを皮ごと煮ると溶け出してくるよ。
このペクチンは、糖度が高い状態で酸性になると固まる性質があって、ジャムに粘性が出るのはこのため。

ペクチン分子の間の水素結合によりゲル化するんだけど、糖度が高くないとまわりにたくさんある水分子と水素結合してしますので、まずは糖度を高くして、ペクチンより水分子と水素結合しやすい糖に水をトラップさせる必要があるのだ。
加えて、酸性にすることにより、ペクチンの分子中にあるカルボキシル基(-COOH)の電離が抑えられるので、さらに水分子と水素結合しづらくなるのだ。
結果、ペクチン分子同士が水素結合で集まって、ゲルを形成することになるわけ。

で、ジャムが固まるのはこのメカニズムなんだけど、フルーチェはちょっと違うのだ!
ジャムが固まるときのペクチンはHMペクチン(高メトキシペクチン)と呼ばれるもので、カルボキシル基の多くがメタノールとエステル化したもの。
つまり、自由に電離できるカルボキシル基が少ないもの。
フルーチェに使われているのはLMペクチン(低メトキシペクチン)で、HMペクチンを処理してエステル化の割合を減らしたもの。
このLMペクチンはカルボキシル基が多いので、カルシウムイオンの存在下でゲル化するのだ。
カルシウムイオンの正の電荷が中心になって、そのまわりにLMペクチンの負の電荷(カルボキシル基由来)が集まるような感じで、カルシウムイオンで「架橋」されるんだよね。
カルシウムイオンが+2価なので、こういうことができるのだ。

フルーチェと牛乳をまぜると固まるのは、牛乳中のフリーのカルシウムイオンによりこの「架橋」が行われるため。
粉末の脱脂粉乳を混ぜても、フリーのカルシウムイオンがないから粉っぽくなるだけでかたまらないよ。
無脂肪でも低脂肪でも、液中にフリーのカルシウムイオンがあればフルーチェは固まるのだ。
では、なぜ加工乳や乳飲料ではダメなのか。

それは、加工乳や乳飲料の多くには「安定剤」が入っているため。
安定剤は、加工乳や乳飲料の成分が分離せず、均等に分散するように加えられるもの。
例えば、果汁が入った飲むヨーグルトは、そのままにしておくと乳脂肪分が沈殿しちゃうんだよね。
これは発酵バターを作るときの原理と同じ。
でも、ここに安定剤であるペクチンを入れてあげると、乳脂肪が分離しなくなるのだ。
ここでのペクチンはHMペクチンだよ。

すると、この安定剤のHMペクチンが一緒に入っている状態だと、フルーチェの中のLMペクチンとカルシウムイオンを取り合うことになるのだ。
HMペクチンは、LMペクチンに比べてカルボキシル基(=カルシウムイオンとつながる部分)が少ないので、カルシウムイオンとLMペクチンによる網目構造が途中でぶちぶち切れることになるのだ。
カルシウムイオンとLMペクチンの網目構造が水分子を包含してゲルになっていくんだけど、それがほころぶんだよね。
これにより大きな網目構造ができないので、ゲル化が阻害されるわけ。

というわけで、フルーチェを作る場合は、安定剤(ペクチン)が入っていない、「牛乳」を使う必要があるよ。
ものによっては安定剤の種類が違ったり、量が少なかったりで固まる場合もあるみいだけど、やっぱり「牛乳」で作るのがよいみたい。
無脂肪乳や低脂肪乳は「除いて」いるだけで、足してはいないからね。
でも、そういう意味では、安定剤が入っていなければいいのなら、プレーンのヨーグルトのような安定剤が入っていないものなら固まるはず。
自分ではやらないけど、やってみたらおもしろいかも。

2018/10/20

甘さを浸透

フランスでの秋の味覚が出てきた!
キノコ類や果物、そして、クリ。
フランスのクリと言えば、マロン・グラッセだよね。
高級だけど、おいしいものはめちゃくちゃおいしいのだ。
あれは、非常に手の込んだ作り方をするから高いんだよね。

マロン・グラッセにするクリは「マロン」。
フランスでは、「マロン」と「シャテーニュ」と2種類を明確に区別していて、「マロン」はいがの中に一粒だけ大きな実の入っているもの。
逆に、「シャテーニュ」はいがの中に3つ実が入っているもので、和栗もこれだよ。
「シャテーニュ」は渋皮が剥きづらいので、ペースト状にしてお菓子に使ったり、冬の名物の「焼き栗」になったりするのだ。
まず、この「マロン」がちょっと高級食材なんだよね。

そのマロンをゆっくりと時間をかけてシロップで煮て、糖液を浸透させていくのがマロン・グラッセ。
軽くゆでて鬼皮・渋皮を剥いたマロンを少し薄めのシロップで煮て、そのまま冷ますのだ。
そこに、更にサトウを加えて糖度を高くし、再び煮て、また冷ます。
こうして、徐々に糖度を上げたシロップで煮ていって、糖を浸透させていくのだ。
表面に砂糖の結晶が浮かび上がって、つやや照りが出てきたら完成。
最後の方の糖液にはブランデーなどを加えて香りをつけることもあるよ。
ちなみに、クリを煮ていくときは煮崩れないように一つ一つガーゼで包むんだって!
そりゃあ手間がかかる。

日本にも同じようなもので、クリの甘露煮っていうのがあるよね。
甘露煮場合は、包丁で皮を剥いてしまって甘い煮汁で煮るだけだけど。
渋皮煮のように渋皮がついたまま煮る場合は、あくが出るので何度もゆでこぼす必要があるんだよね。
なので、甘露煮よりお高いのが普通なのだ。

でも、実はこの「グラッセ」の手法に近いのは、甘納豆なんだよ。
甘納豆の場合は、水でもどしたアズキやインゲンマメを何度かゆでこぼしてあくを取り、それを糖蜜につけるのだ。
糖蜜はちょっとずつ糖度の高いものに順々につけていくんだよ。
ここはマロン・グラッセと同じやり方。
いきなり高いとどのものにつけてしまうと表面にしわが寄ったりするので、ちょっとずつ糖度を上げていくことが大事なのだ。
最後に、砂糖を上から振りかけて乾燥させると甘納豆のできあがり。
しっかり乾燥させるところが「グラッセ」との違いだね。
もともと発酵食品としてあった「浜納豆」に似せて作られたので、乾燥させているみたいだけど、その方が長持ちはするんだよね。

実はこの甘納豆。
発明されたのは幕末で、最初に売り出したのは榮太郎楼だって。
そんなに新しいお菓子だったんだってびっくりだけど、よく考えると、自由に砂糖が料理やお菓子に使えるようになるのはその頃だから当たり前なのかも。
それにしても、世界の西と東で同じような手法でしっかり甘さを染みこませたお菓子がそれぞれできあがっているというのはおもしろいね。

2018/10/13

危険を察知

日本では住宅用火災報知器の設置が義務化されているけど、フランスでも同じような状況らしいのだ。
ボクの住んでいるアパルトマンの玄関にも設置されているよ。
ところが、これがなぜかよく誤作動してなり出すんだよね・・・。
ちょっと怖い。
なので、火災報知器の原理を少し調べてみたのだ。

大きく分けると、過程の火災報知器は煙を感知るもの、熱を感知するもの、そして、光を感知するものに分かれるみたい。
それぞれ特徴があるようで、誤作動のリスクとか、危険な兆候の発見の早さなんかが変わるみたい。
ということは、設置場所によって適切なものを選ばないといけないわけだね。

煙を感知しているものは、煙の正体である微小な粒子による光の散乱現象を利用しているのだ。
天井に丸形の報知器が着いているものは、その円盤状の構造の中に発光器があって、腐だんっであれば光は直進しているんだけど、そこに煙が入り込むと光が散乱されるのでわかる、ということなのだ。
光が直進する方向以外のところに光センサーをつけておいて、そこで光が検知されたら煙等により散乱が起こった、というのがわかるんだよ。
でも、この弱点は、ほこりでも散乱が起きてしまうということ!
つまり、ほこりっぽい部屋だったり、掃除をしていないと、ほこりと煙を間違えて警報を発してしまうのだ。
おそらく、これが火災報知の誤作動の最大の要因だよ。

熱を感知しているものはそのままなんだけど、直接熱をサーモスタットで感知するものと、熱による空気の膨張を完治するものがあるみたい。
前者は周囲の温度が一定以上になったときに反応するんだけど、温度設定が低いと何でもかんでも反応しちゃうし、高いとある程度まで火が大きくならないと反応しないというジレンマがあるのだ。
空気の膨張を完治しているものは、報知器内の空気の急激な熱膨張に反応するようになっているのだ。
夏の暑い日に反応しないように、ゆっくりとした熱膨張には反応しないように空気を逃がすリーク用の穴がついているのだ。
火事などで急激に傍聴するとリーク用の穴から抜けるだけでは足りないので、はじめてそこで反応するというわけ。
でも、この場合はあくまでも空気の膨張を見ているので、一定の温度で反応する、というものではないんだよね。
くすぶった火でゆっくりと温度が上がっていくと感知しにくいのだ。

光を感知するものは、炎から出ている特定の波長の赤外線や紫外線に反応するもの。
一定以上の赤外線や紫外線を感知したときに反応するのだ。
熱より精度高く感知できるのだけど、一方で、大きく炎が上がらないような火災の場合、光では感知できないんだよね・・・。
火が長らくくすぶっている、というのは火災ではよくあることなので、これは弱点だよね。

というわけで、誤作動のリスクは高いものの、多くの場合住宅用の火災報知器は煙を感知するものらしいよ。
ほこりによる誤作動は火災報知器の中にほこりがたまらないように掃除したりすることでも防げるので、メンテさえきちんとできればよいということだろね。
うちの火災報知器もちょっと見てみるか。

2018/10/06

東西ラインナップの違い

フランスには冷凍食品専門のスーパーのピカールがあって、けっこうおもしろいんだよね。
いろんなものがあるんだけど、そのまま放置で解凍して食べられるマカロンとかカヌレなんてデザートもあるのだ。
東京に進出した店はちょっと高級な感じで受け止められているらしいけど、フランスでは日常使い、というか、むしろ平日あまり買い物に行けない人がまとめてたっぷり買っていくイメージだよね。
日本だと価格帯が高めに設定されているからおそろしいことになりそう・・・。

で、フランスで冷凍食品を見ていて、ちょっと違和感があったんだよね。
改めて頭の中を整理してみて、あることに気がついたのだ。
それは、日本とラインナップが違う!
もちろん、食べ物の違いというのはあるんだけど、そうではなくて、売っている食品の「カテゴリー」が違うのだ。
具体的には、フランスには冷凍の「おかず」、「お総菜」というものがほとんど存在していない。
せいぜいあるのはチキンナゲットとフライドポテトくらい(これも「おかず」にはなりそうもないけど・・・。)。

フランスで売っている冷凍食品は大きく分けて2種類。
素材そのまんまのもの(ゆで野菜、肉や魚介類)と温めてそのまま食べる料理(フレンチだけでなくアジア料理なんかもあるよ。)。
この「温めてそのまま食べる料理」というのは、日本で言うとコンビニで売っている冷凍のお弁当類のイメージ。
それを電子レンジ又はオーブンで温めればそれで食事になる系。
パスタやリゾットのようなものだけでなく、肉料理、魚料理もあるんだけど、必ず「つけあわせ」として、ジャガイモや豆、米、ショートパスタ(クスクス含む)などが一緒。
フランスにおけるバゲットは日本におけるごはんとは違って、主食としておかずと一緒に食べるというものではないんだよね。
料理は料理、パンはパン、という感じ。
なので、料理だけ食べても「おかず」だけ食べている、という違和感は感じないようなのだ。

これが冷凍職員のラインナップにも影響していて、フランスで売っているお米のアジア料理の冷凍食品も基本はワンプレート形式。
お弁当形式でごはんにおかずがついている、というのはまずなくて、上にのせるか(牛丼式)、横に置くか(カレー式)は別にして、とにかくワンプレート。
もともとフランス人は一皿ずつ食べていく食習慣があって、複数の料理を並行して食べることを嫌うというのもあるようなのだ。
おかずを食べて、ごはんを食べて、汁物を飲んで、また別のおかずを食べて、という東アジア式の食べ方には慣れていないんだよね。

そのため、フランスの冷凍食品には「おかず」や「お総菜」が存在しないわけ。
これは地味に面倒なところもあって、職場にお弁当を持っていこうなんて考えているとき、冷凍食品で一品、なんてことができないのだ(>o<)
食事というか、お酒のおつまみ用にフライドチキン、ローストチキン、ナゲットなどなどはあるんだけど、それだけで食べることを想定しているので、「おかず」にならない味なんだよね・・・。
日本だとそのまま入れておけば食べる前までに解凍されて食べ頃になる冷凍総菜もあるというのに!

というわけで、フランスの冷凍食品はオール・オア・ナッシング形式で、素材で買ってきて調理するか、買ってきたものを温めてそのまま食事にするかの二者択一なのだ。
で、その冷凍食品の料理もわりと量が多いので、食べていると途中であきることも・・・。
日本式でお総菜があれば、それを少しずつ食べるっていうのもできるんだけどなぁ。
やっぱり食習慣の違いって大きいね。

2018/09/29

麦の大小

大麦と小麦の大小って、粒の大きさから来ていると思っていたんだけど、実はそうではないことを最近知ったのだ!
大麦は粒で見るけど、小麦を粒で見ることはまずないからなぁ。
実は、この大小は、優劣を意味しているようなのだ。
つまり、大麦の方がメジャーで、小麦の方がマイナーだということ。
漢語でそうなっていて、それがそのまま日本に輸入され、訓読みされているようなのだ。

では、なぜ大麦の方が優れている、という認識だったのかが気になるよね。
はっきり言えば、主要穀物としては現在では小麦の方がはるかにメジャーだし、実際に三大穀物も、米、小麦、トウモロコシの3つなのだ。
大麦を主食として主に食べているのってチベットくらいじゃないかな?
でも、古代においては大麦の方が重要な栽培植物だったみたい。
これは洋の東西を問わずだと。

その理由は、大麦の方は低温乾燥に強く、栽培しやすかったため。
高温多湿な地域だと、より栄養価が高い米が栽培できるので、麦はあまり食べないんだよね。
中国でも肥沃な南の地域は米文化、北の冷涼で乾燥して地域が小麦文化なのだ。
インドも南は米、北は小麦だよね。
古代だと品種改良も進んでいないから、より育てやすい大麦が重要だったわけ。

もう一つの理由は、大麦はそのまま脱穀してゆでれば粒のまま食べられるのに対し、小麦は簡単に脱穀できないので、最低限挽き割りにしないと食べられないこと。
しかも、大麦にはむかしら裸麦というすぐに脱穀できる種があるけど、小麦の場合はそれがないんだよね。
いわゆる「ふすま」を除いて胚乳のおいしいところだけ食べようとすると、小麦はとても手間がかかるんだよ。
アフリカや欧州、中東、北インドには「ブルグル」と呼ばれる挽き割りの乾燥小麦があるけど、これは挽き割りにして大方の「ふすま」を取り除き、湯通ししてから乾燥させたもの。
クスクスに似たものだけど、粉にしてからパスタとして練っているわけではないので、より原始的なものなのかな?

パンは古代エジプトにもあったので(ただし、イースト発酵していない種なしパンで、大麦が原料になることも)、古代ローマでもパンを食べていたんだけど、これは庶民の食べ物ではなかったのだ。
理由は簡単で、小麦を挽いて粉にして、更にそれを練って焼き窯で焼成する、なんて手間をかけられるのはお金持ちだけ。
なので、大麦も小麦も基本は粥で食べていたらしいよ。
ポリッジみたいなものかな?
いずれにせよ、大麦の方が食べやすかったのは事実。

ところが、石臼ができ、水車が発明されて小麦を挽くのが容易になると、立場が逆転してくるのだ。
小麦の場合、「ふすま」を除いて胚乳の部分だけを取り出すと、大麦よりおいしいのだ!
それは大麦には比較的多くのポリフェノールが含まれていて、食味が劣るとともに、火を通してから色が悪くなるんだよね。
日本でも麦飯はすぐに黄色くなっていやがられていたわけだけど、それと同じ。
うまく加工できれば小麦の方がおいしいのだ。
小麦の品種改良も進んである程度寒い地域でも育てられるようになったし、パンにするならライ麦の方が向いているしで、大麦を主食として食べる文化は廃れていったのだ・・・。
さらに、新大陸からジャガイモやトウモロコシが入ってきたので、大麦も育てられないような寒冷地や荒涼地ではそっちがメインに。
というわけで、大麦が主要な食物ではなくなっていったのだ。


ただし、大麦は今でも欠かせない穀物なんだよね。
一つは大麦麦芽の利用。
小麦麦芽も使えないことはないけど、デンプンを糖化する酵素は大麦麦芽の方がたくさん入っているので、ビールの醸造や水飴の製造には大麦が必要なのだ。
醤油や味噌の材料としても重要なんだよね。
さらに、健康志向が高まっていr中で、よりビタミンや食物繊維を含む麦飯はまた着目されているのだ。

ボクはわりと大麦のぷつぷつした食感が好きなんだよね。
とろろと一緒に食べる麦飯も好きだし、フランスで出てくる付け合わせの粒の大麦もけっこう気に入っているよ。
でも、さすがに毎食というわけにはいかないかもだけど(笑)

2018/09/22

養生せいや

お仕事でちょっとしたイベントのお手伝いをしたのだ。
そのときに、舞台設営の専門の人に聞いたんだけど、日本の養生テープは最高に品質がよく、かつ、安いらしいのだ。
確かに、フランスで売られている普通のビニールテープやセロハンテープは値段も高いし、粘着力が弱い割にはがれにくいし、跡が残る・・・。
3Mの製品でもそうなんだよね。
なぜだろう?
温度・湿度の違いがあるから、国・地域ごとに製品は異なりそうだけど、フランスだともともとの要求度が低い?

養生テープというと、緑色の半透明のテープを思い浮かべるよね。
引っ越しや建築の現場などでよくみかけるのだ。
特徴として、粘着力が弱くてはがれやすく、かつ、跡が残りにくい上に、手で簡単にテープが切れる(はさみやカッターがいらない)、というのが挙げられるよ。
これはこうした作業以外でも便利なので、工作の時の仮止めなんかにも便利なんだよね。
しかも、重ね貼りができるのだ!
これは実は重要で、布製のガムテープなんかは重ね貼りに向いていないんだよね(紙製のガムテープなら問題ないけど、めちゃくちゃはがしづらい・・・。)。
そこからはがれやすくなってしまうのだ。
なので、引っ越しの段ボールは、どのみちすぐに開けることになるし、重ね貼りもできるからと養生テープが使われるのだ。

ただし、ちょうどよい粘着力になっているのだけど、その粘着のもとである樹脂(のり)は熱に強くないらしく、高気温で放置されるとダメになってしまうんだって・・・。
はがれにくくなるし、跡も残るようになるみみたい。
ひょっとして、フランスは在庫管理が悪いだけ?
さっきの専門の人の話では、普通に放置している場合、一夏超えるとダメになるって。
時々側面がべっとりしているテープがあるけど、あれはそういうことだったのかも。

引っ越しや建築現場で使う場合には、目立つ色なのでマーカーの代わりにもなるんだよね。
いわゆる「バミる」というやつ。
目印にしておいて後で簡単にはがせるから便利なのだ。
目立つからはがし忘れも防げるという効果もあるのだ。


「養生」というのは、作業において傷や汚れから保護することをさしているんだけど、塗装しているときに塗料がはみ出さないように保護することも「養生」と呼ばれることがあるのだ。
このときに使われるのは主に「マスキングテープ」と呼ばれるけどね。
マスキングテープの場合は、下地を塗った後、別の塗料を重ねたくない部分に覆いをするのに使われるのだ。
なので、下の塗料をはがさない、というのも重要な要件になるよ。
もともと普通のテープで留めていたら下地まではがれてしまって、また塗り直しになるから、と粘着力の低いテープが発明された、ということみたいだけど。

というわけで、一般家庭でしょっちゅう使うものではないけど、非常に便利なものなのだ。
ただ、残念ながらフランスにはいいものがないみたい。
今回の専門家の人もテープは日本から全部持参したって言っているし。
日本が神経質なのかもしれないけど、きっとフランスではテープを貼った跡とかが残ってもさほど気にしないんだろうね。
塗装の時も養生テープを貼っているのにそれがずれててはみ出したりしているし(しかも、それがプロの仕事だったりする・・・。)。

2018/09/15

最強のパスポート

先日、「パスポートインデックス」なるものの存在を知ったのだ。
ヘンリー・アンド・パートナーズというところがまとめているもので、パスポートの「旅行の自由度」を指標化したものだよ。
基本的には、ビザ(査証)なしで渡航できる国の数で決めているのだ。
国際航空運送協会(IATA)の資料から、各国ごとに調べて作っているそうな。
対象が200カ国近くあるみたいだから、大変そうな作業だ・・・。
そんな「パスポートインデックス」の最新版、2018年版では、日本がシンガポールとともに一位になったんだ♪

ビザは、入国前の身元審査なんだよね。
犯罪歴があったりするとビザが発給されず、その国に入国できないのだ。
空港や港湾での入国審査で細かく調べることはできないので、事前に必要書類をそろえて申請してもらうことで、入国してもよいかどうかを判断しようというわけ。
もちろん、ビザがあっても入国審査で断られることはあるんだけどね(極端な例で言えば、ビザ発給後に国際指名手配になったりとか。)。
パスポートはあくまでも旅行者の国籍を証明するためのもので、ビザは渡航先の国における身元確認だよ。

基本的には、出国前に在外公館に申請に行くんだけど、実は、国籍のある国の在外公館でなくてもいいんだって。
旅先で次の行き先の国のビザを申請することも可能なのだ。
これはあくまでも行き先の国の問題だからだよ。
でも、「アライバル・ビザ」なんてのもあって、到着時に空港でビザの発給を受けるシステムもあるのだ。
こうなると、事前審査とは言えず、ほとんど「入国料」の徴収に近いような・・・。
空港に旅行者を止めておけないから基本は即時発行だからね。

ビザの発給には時間を要する場合があって、しかも、自分の国籍がどこにあるかでそれが変わってくるのだ。
国際的に治安がよいなどで信頼度が高い国に対しては比較的事前審査がゆるいので早めに出るし、そうでない国に対してはしっかり審査するので遅くなるのだ。
でも、国によっては、追加料金を払うと優先審査してもらえて、早く発給されるそうな・・・。
ロシアの例が有名らしいよ。
通常は3週間、幾ら払うとそれが2週間に短縮、更に払うと1週間以内・・・。
これはまじめに審査しているのかあやしくなってくるなぁ(笑)

でも、このビザの発給はけっこう面倒な手続なので、「免除」のシステムもあるんだよね。
多くの場合、「観光目的の短期滞在」の場合に限ってビザが免除されるように相手国と交渉するのだ。
で、ビザなし渡航先の多さで日本とシンガポールが一位になっているというわけ。
この免除は相互的でないので、例えば、日本から中国へはビザなしで行けるけど、中国から日本へ行くにはビザが必要だったりするのだ。
また、「観光目的の短期滞在」でない渡航目的の場合はビザが必要で、ボクが米国留学に行くときは留学生用ビザをとったし、今回フランスに来るときもお仕事での長期滞在になるのでビザが必要だったのだ。
これがいらいらするほど時間がかかるんだよね(笑)

そんな中で、「観光目的」であってもビザを出さない国があるのだ!
それがサウジアラビア。
なんと、メッカ巡礼のため、ムスリムに対しては「巡礼ビザ」が発給され、入国できるんだけど、非ムスリムには個人用の観光ビザが出ないので、入国できないんだよ・・・(ツアーの観光ビザはあり。)。
サウジアラビアには個人で遊びに行くことはできないのだ。
しかも、あまりにも多くのムスリムがメッカ巡礼に来るので、巡礼ビザも国ごとに割り当てがあって、巡礼したくても順番待ちになったりするんだって。
すごい世界だ。

2018/09/08

人工島の悲劇

台風21号の被害がすごいことになっているのだ!
遠くパリの地でもけっこう大きく報道されているよ。
特に欧州にはこれだけの規模の暴風雨ってないだろうからね。
で、その中でも特に注目を集めているのが、関西国際空港の被害。
日本のハブ空港の一つでもあるし、世界で初めての人工島に作られた海上空港でもあるので、注目度は高いのだ。

関西国際空港は2つの島からなる人工島で、それぞれに滑走路とターミナルがあるんだよね。
ターミナル1の方には、空港へのアクセスのための鉄道駅、フェリー乗り場があったり、複合商業施設であるエアロプラザなんかもあるよ。
24時間稼働の空港なので、まさに「不夜城」空港なんだよね。
海上空港だからこそ24時間稼働できるわけだけど、逆に、海上にあるからこそ、地盤沈下や津波などのリスクとの戦いが常にあるのだ。
今回も滑走路が水没しているしね・・・。
そして、前から指摘されていたことだけど、今回の被害でやっぱり大きなリスクであることが実感できたのが、空港へのアクセス問題。

関西国際空港には、車、鉄道、船の3つの手段でアクセスできるんだけど、船以外は本州側(大阪府泉佐野市)と人工島を結ぶ関西国際空港連絡橋という大きな橋を通っているのだ。
電気やガス、水道などのライフラインもこの橋を利用しているので、まさに命綱的存在。
3.75kmの世界最長のトラス橋で、二階建て構造。
上は上下6車線の道路、下は鉄道(複線)に使われているんだ。
今回の台風被害においては、この橋に2.5tのタンカーが突っ込んできて、この橋が使えなくなったことにより、人工島が孤立してしまったのだ。

下り車線側は完全に損壊していて通行不能。
上り車線はなんとか使えそうなので緊急車両の通行などに使われていたんだけど、空港内に取り残された人々を輸送するためのシャトルバスの運行も行われたのだ。
鉄道路線は使用不能。
さらに、ターミナルビルにおいても浸水などが原因で一部停電。。
もともと商業施設もたくさんあって、食料や飲料はけっこうあるからすぐに困るというわけではないけど、中に残された人たちは不安だったろうね。
天候が回復してからは船とシャトルバスで救出したわけだけど、悪天候時は船でのアクセスはできないので、この橋だけに頼っていると相当危ないのだ。
もともと強風で橋が使えなくなるリスクは想定されていて、風に強い構造にはなっていたみたいなんだけど、まさかタンカーが突っ込んでくるとはね・・・。

今回の被害では、橋脚までやられているので、復旧には相当の期間がかかるのではないかと見込まれているよ。
今は緊急時なのでとりあえず使える上り車線を使っているけど、本来的には全面通行止めにしなくちゃいけないような被害だからね。
でも、そうなると、空港へのアクセスは船だけになるわけで・・・。
おそらく、空港の規模から言っても、貨物輸送の観点で言っても、それではもたないのだ(>_<)

こうなると、リスク分散のために、新たな橋とか、或いは、地下トンネルとか、そういう第三のアクセスを考えないといけないのかも。
でも、やっと関空は軌道に乗って稼げるようになってきたところなので、ここでの大規模投資はまたつらいだろうなぁ。
民主党政権時代には、橋本府知事(当時)が「関空リニア構想」を打ち出していて、大阪中心部と空港をリニアモーターカーでつなぐとかいう構想があったし、兵庫県には神戸空港と関西国際空港をリニアモーターカーでつなぐなんて構想もあるようなのだ。
こういうんが現実化してくるのかなぁ。
ちなみに、東京のお台場の場合は、レインボーブリッジだけでなく、トンネルでもつながっているよね。

2018/09/01

見分け方

マドリッドのプラド美術館に行ってきたのだ。
世界三大美術館のひとつ。
すごい規模だよね。
で、ここの特徴として、敬虔なカトリック国であるスペインのお国柄を象徴してか、宗教画が多いのだ。
でも、キリスト教文化にあまり普段触れていない日本人からするとわかりづらいことも多いんだよね。
特に、聖人の絵の場合、それが誰で何をした人なのか。

そのときにヒントになるのが「アトリビュート」と呼ばれるもの。
西洋美術の場合、神話の登場人物や宗教画の聖人などは、その人の特定につながる「アイテム」と一緒に描かれていることが多いんだ。
もともと誰も顔や姿を見たことがないわけで、そういうのがないと区別がつかないのだ。
逆に、その「アトリビュート」を見れば、その絵が誰の絵なのかがすぐにわかるというわけ。
便利なシステムなんだよね。

例えば、十二使徒の場合、ペドロは多くの場合「天の国の鍵」を持っているのだ。
福音書記者ヨハネなら、ドラゴンの入ったカップを持っているよ。
聖人で言えば、竜退治で有名な聖ゲオルギウスは竜と一緒に、ライオンの足からとげを似てあげたと言われる聖ヒエロニムスはライオンと一緒に描かれるよ。
アレクサンドリアの聖カタリナは壊れた歯車と剣が一緒に描かれるんだけど、これはひどい話で、歯車にくくりつけて拷問されそうになったときに奇跡が起きてその歯車が壊れたので、剣で斬首されたのだ・・・。
で、その伝説をもとに、聖カタリナを描くときは壊れた歯車と剣を一緒に描いているんだ。
なんだかひどいよね。

殉教している聖人の場合、その殉教に関係したものがアトリビュートになることが多く、体を拘束されて無数の矢で射られた聖セバスティアヌスは、「矢鴨」のように必ず体に矢が刺さった図象で描かれるよ。
十二使徒の一人、ペトロの弟にアンドレは、X型十字に貼り付けになったんだけど、自分でそれを持っているのだ。
同じく十二使徒のバルトロマイは、皮剥の系で殉教したと言われていて、その皮剥に使われたナイフと皮を持って描かれるよ。
なんだかグロいはなしだけど、絵画を信者に見せながら、その聖人がどういう人でどういう功績があったのかというような話をする場合には、その方が好都合なのかもね。

実は、これと同じような半紙が仏像・仏画にもあるのだ。
仏像・仏画も素人目には同じように見えるんだけど、手の「印相」の形や、持っているものである程度区別がつくんだよ。
明王はたいていの場合鬼のような怖いかををして、筋骨隆々になっているんだけど、弓矢を持っているのか、金剛杵を持っているのか、剣を持っているのか、手は何本か、三ツ目か、などなどの要素を組み合わせて、それがどの明王か特定するのだ。
でも、実は必ずしも「これ」という決まりもないようで、推測の域をでないこtもあるらしいんだけど。

一方で、ある地域で古い仏像・仏画が見つかったとき、それが「誰」であるかは重要な意味を持つんだよね。
キリスト教の聖人も「○○の守護聖人」とかいって特定の職業や事物、都市の「守護神」になっているんだよね
仏教の世界も同じで、それぞれの「神」に特定の御利益というのがあるので、当時の人々が何を求めて信仰していたのか、という情報になるのだ。
なので、仏像・仏画においてもそれが「誰」なのかを特定するのは結構大事なことなんだよ。
アトリビュートくらいわかりやすければよかったんだけどね。

2018/08/25

中世以来の学都

パリの大学と言えば、一般にはソルボンヌ大学が有名だよね。
でも、本当はパリ大学の一部なのだ。
現在のパリ大学は第1から第13まであって、パリ第1大学が「パンテオン・ソルボンヌ」、パリ第3大学が「新ソルボンヌ」、パリ第4大学が「パリ・ソルボンヌ」など、「ソルボンヌ」の名を冠しているよ。
「ソルボンヌ」というのは13世紀の宮廷司祭の「ロベール・ド・ソルボン」のことで、貧しい神学の学徒のためにソルボンヌ学寮を作った人。
この学寮が拡大していってパリ大学を代表する神学部になり、やがて、大学全体をさすようになったらしいのだ。

パリ大学はボローニャ大学と並び、中世最初にできた大学の一つ。
当時は自然発生的な組織だったようで、教える側(教師)と教わる側(学生)との間でそれぞれおルールを作り、組合となって高等教育を行う場ができあがっていったようなのだ。
ボローニャの場合は私塾からの発生、パリの場合は教会付属の学校からの発生だって。
なので、パリ大学はもともとキリスト教色が濃いというわけ。
当時は明確なキャンバスはなく、教師は学生に対してどういう責任を負う、学生はどのようにして学べば学位がもらえる、というルールがあるだけだったんだって。
その後徐々に特定の建物で授業が行われるようになり、いわゆる大学が形成されていくのだ。

最初にパリに大学ができたころは、実践教育・専門教育を行う場、という側面が強く、神学、法学、医学の3つの上級学部と、その下におかれた自由学芸(リベラル・アーツ:算術、幾何、天文、楽理、文法、論理、修辞)学部が置かれていたようなのだ。
まずは基礎的な素養を自由学芸として学び、その後専門的な教育に入る。
今の教養課程と専門課程と同じだよね。
フランス革命以降、ナポレオンは高等教育制度を改革したんだけど、まず、地方の大学を専門学校に格下げし、大学は国立の帝国大学のみとして、大学の再編を行うのだ。
このとき、自然科学や文学を加えて、神学・法学・医学・理学・文学の5学部制になるんだけど、すぐに「神学部」は廃止され、おあり大学からは消えてしまうのだ。
「哲学」は残っていrから、いわゆる「キリスト教神学」が全くできないわけではないんだけど。
でも、このナポレオンの近代化により、いわゆる「総合大学(university)」としては、「法学・医学・理学・文学」の4つが必要、というスタンダードになったんだよ。
(後に科学の応用分野として「工学」が加わるし、近代経済の発展で「経済学」も重要になるんだけど、それはまた別の話。)

そんな「神学」が消えてしまったパリ大学だけど、実は歴史的なイベントの現場でもあったんだよ。
それは、1534年のイエズス会の設立。
初代総長のイグナチオ・デ・ロヨラ(最近は「イグナティウス」とは言わないんだね。)や日本にキリスト教を伝道したフランシスコ・ザビエルがともにスペインのバスク地方の出身なのでイベリア半島でのことかた思っていたら、実はその現場はパリだったのだ。
二人ともパリ大学で神学を学んでいて、そこで出会うのだ。
その場にいた、ピエール・ファーヴル、ディエゴ・ライネス、アルフォンソ・サルメロン、ニコラス・ポバディリャ、シモン・ロドリゲスを加えて計7名で、モンマルトルの丘の中腹にあったサン・ドニ修道院教会堂で「モンマルトルの誓い」として生涯を神に捧げる誓いを立てたのだ。
これがイエズス会の発祥と言われているよ。
ちなみに、モンマルトルにはもともとベネディクト女子修道院があって、サクレ・クール寺院ができるのはフランス革命後だよ。

カルティエ・ラタンは「ラテン語地区」という意味で、パリ大学に通い、ラテン語で勉強している学生たちが多くいる場所だったのでその名がついたんだけど、まさにそこでイエズス会を創立したメンバーが集まったんだよね。
パリは神学では中心的な都市だったのだ!
ちなみに、パリのアンバリッドの近くにはフランシスコ・ザビエルの名を冠した「フランソワ・グザビエ教会」(仏語読み)があって、メトロの「フランソワ・ザビエ」駅もあるよ。
パリに来るまでイエズス会とパリとの関係なんて知らなかったよ。
歴史のある大学って言うのはすごいものだね。

2018/08/18

遭難したら、上を目指せ

山口の二歳児が行方不明になっていた事件について、「歩くボランティア」とも言われるスーパー・ボランティアの尾畠さんが山中の沢のような場所で無事発見したのだ。
命が危ぶまれていただけに、無事に見つかってよかった!
それにしても、この尾畠さんの「感」がすごいんだよね。
前に同じように山中で行方不明になった子供を見つけたことがあって、そのときの経験から、「子供は下ることはない」と思って、上の方を探したら、まさに見つけた、ということ。
飴をあげたことで非難もあるようだけど、この人の行動力や感はすごいものだよ。
実際に助けているしね。

で、実は、この子供のとった「上に行く」というのは、山中で迷ったときに適切な行動なのだ。
ついついなんとか下山しようと下へ行きたくなるんだけど、それは危険なことと言われているよ。
もともと迷っているという時点で登山道から外れているわけだけど、登山道でないところは足下もおぼつかないし、疲労が蓄積されている中でそういう中を進むのが危ない、というのが一点。
また、登山道でないところは、崖があったりしてそもそも進めないことも多いのだ。
特にやってはいけないといわれるのは、沢伝いに下りていくこと。
水の流れがあると、その流れに沿って進みがちなんだけど、沢は特に滑りやすいし、なんと言っても、山中には滝も多いので、進んだはいいがもどれなくなることも多いのだ。

では、どうすればよいか?
答えはその逆で、上へ上へと行くこと。
ちょっと考えれば簡単なんだけど、上に行けばいつか頂上や尾根に出られるんだよね。
で、登山道っていうのは頂上や尾根に向かうものなので、そこまでたどり着ければ、いったん見失った道を再発見できる可能性が高いのだ。
しかも、頂上や尾根まで出られればうっそうとした林も抜けるので、縁による捜索隊からも見つけやすいし、携帯や無線がつながる可能性も上がるんだよね。
なので、むしろ水の流れを見つけたら、その上流を目指す方がよいのだ。
その意味で、「上に行った」という子供の本能的な行動は正しかったんだよ。

ちなみに、闇雲に上を目指せばよいかというと、そういうわけでもないんだよね。
当たり前のことだけど、日が暮れて暗くなったら安全な場所で動かず、朝が明けるのを待つのが大事。
すでに登山道を外れていて足下は悪いので、暗くて先が見通せない時にそんなところを歩くべきではないのだ。
体力の温存にもつながるので、できればどこかでビバーグをして夜を明かすのが大事。
こういうリスクもあるので、山を登る際は、保温性も高い雨具(レインコート)を持っていくとよいんだよね。
それと、もしものときのための非常食。

実は、高い山よりそこそこ低い山の方が遭難する人が多いんだって。
侮って装備が不十分だったり、低いから下りられるだろうと下に行こうとして滑落したり。
登山する際はリスクをしっかり意識して、備えるべきなんだよね。
道に迷ったらまず来た方に戻る。
それがわからなかれば上を目指す。
暗くなったら下手に動かず明るくなるのを待つ。
こうした基本をたたき込んでから行くべきなのだ。
ま、ボクは登山をするわけじゃないんだけどね(笑)

2018/08/11

エビとカニの間

夏休みに北欧に行ってきたのだ。
夏の時期の北欧名物と言えば、ザリガニ!
ゆでられたザリガニが山のように積まれて出てくるよ。
特にスウェーデン人はザリガニが大好物で、それがフィンランドにも広まったんだって。
ボクが食べたのは、オスロからコペンハーゲンに船で移動している最中なのだ。

日本ではどうしてもザリガニはくさいというイメージがあるよね。
在来種の日本ザリガニは北日本に生息していたんだけど、こちらは冷たくきれいな水に住むので、メジャーではないにしても食べられてきたらしいのだ。
ところが、昭和初期にウシガエルのえさ用として日本に導入されたアメリカザリガニはあっという間に日本各地に広がり、今ではザリガニと言えば赤いアメリカザリガニをイメージするよね。

ところが、このアメリカザリガニは、米国南部原産で泥地を好み、雑食性でなんでも食べるので、くさみがあるのだ。
特に、街中で見かけるアメリカザリガニは排水溝とか沼、用水路、水田なんかにいるんだけど、どれも泥臭い・・・。
きれいな水の中で泥抜きをすれば食べられるらしいけど、日本ではそこまでして食べないんだよね。
ところが、米国、特にルイジアナ州ではよく食べるらしいのだ。
多少のくさみはあっても、南部料理伝統のケイジャンのスパイシーな味付けにして食べるみたい。
名物料理になっているよ。

欧州で伝統的に食べてきたザリガニはヨーロッパザリガニ。
河川や湖沼に生息しているんだけど、生息環境の悪化や乱獲(主に食用)などにより個体数が激減。
今では希少種になっていて、代用でウチダザリガニが養殖されているそうなのだ。
このウチダザリガニは、米国北部原産の冷水性のザリガニで、他のザリガニより少し大きめ。
スウェーデンにカリフォルニアから導入され、広まったんだって。

ヨーロッパザリガニは秋の10~11月頃が繁殖期なので、あまりとれなくなってからは夏の短期間のみザリガニ漁が解禁されたんだよね。
で、そのときにザリガニを大量に食べる「ザリガニ・パーティ」というイベントもできたのだ。
スウェーデンでは非常にメジャーで、8月の終わり頃にみんなで集まってひたすらザリガニを食べるらしいよ。
ただし、今ではウチダザリガニを食べるらしいけど。
ちなみに、大量のザリガニを食べるけど、ザリガニだけでなく、他のパーティ料理もあるんだって。

最近では中国でもザリガニの消費が増えているようなのだ。
中国は欧州への輸出向けにウチダザリガニの養殖をしているようだけど、そっちではなく、アメリカザリガニを食べているようなのだ。
やっぱり中華風のスパイシーな味付けにしていて、ジャンクフードとして人気みたい。
ザリガニ専門店もあるとか。
中国は人口も増えているし、いろんな食べ物を取り入れる気質があるから、なんでもありだね(笑)

ちなみに、ザリガニは肺吸虫の中間宿主となるので、よく火を通すことが肝心なのだ。
仮に食べる場合は、よくゆでた方がよいよ。
北海道ではウチダザリガニが外来種としてかなりはびこっていて、駆除活動で何万匹も捕獲されるんだって。
それをゆでたものが食材として流通しているとか。
でも、日本で買うとエビやカニに比べて高いみたい。
そこまでして食べたいか、ってことなんだよね(笑)

2018/08/04

木陰に憩う

パリは気温はそれほどでもないんだけど、日差しが強くて熱い!
日向と日陰で全然体感温度が違うのだ。
日向では太陽光の熱をじりじりと感じるよ。
そんなときに助かるのが街路樹。
ちょっと木陰に入るだけで一気に涼しくなるからね。

欧州に多い街路樹はなんと言ってもマロニエとプラタナス。
プラタナスの和名はスズカケノキで、丸い球状の果実がぶら下がるようになることからついた名前だよ。
山伏の包囲で丸いふさふさがぶら下がっているけど、あれを鈴懸の法衣というそうで、そのイメージなんだって。
街路樹としてメジャーなのは、モミジバスズカケノキ。
欧州から西アジアにかけて自生していたスズカケノキと米国に自生していたアメリカスズカケノキの交雑種で、英国で作られたものだそうだよ。
日本には明治期に導入され、街路樹になったようなのだ。

スズカケノキはカエデのように切れ目の入った大きな葉が特徴。
このおかげで心地よい木陰を提供してくれるのだ。
その切れ目の深さは、スズカケノキが一番深く、アメリカスズカケノキは浅いんだ。
なので、葉を見るとどれかは一応わかるらしい。
もっとわかりやすいのは実のなり方。
スズカケノキは3~6個、モミジバスズカケノキは1~3個、アメリカスズカケノキは1個というようにぶら下がっている数が違うので、実のぶら下がり方で区別できるんだ。
日本で街路樹に使われているのは多くはモミジバスズカケノキだよ。

もともとは池辺や湿地などの水の多いところに生えているものらしいんだけど、乾燥にけっこう強いんだって。
それで街路樹に向いているのだ。
ただし、成長には強い日照が必要なので、開けたところに植える必要があるよ。
うっそうとした中では成長できないのだ。
成長が早いので、何もない道に街路樹として植えると、数年で立派な木陰を提供するようになるみたい。

スズカケノキの見た目の特徴は、その大きな葉だけではなく、樹皮もあるのだ。
ところどころ樹皮がまだらにはがれるんだけど、それが迷彩柄になっているんだよね。
これもプラタナスの特徴なのだ。
樹皮がはがれ落ちるようになっているのは、樹皮に規制する害虫への防御と考えられているみたい。
なんかペリペリしていてはがすのも楽しそうだけど・・・。

プラタナスは落葉広葉樹なので、その大きな葉が秋にさしかかるとはらはらと落ちるのだ。きれいに紅葉するわけではなく、葉が落ちるだけなんだけど、その落ち葉が道を覆い尽くす風景は一つの風物詩になっているよ。
フランスの場合は8月になるともう葉が落ち始めるんだよね。
国内だと、新宿御苑の仏式庭園のプラタナス並木が有名かな。
秋バラが終わると葉が落ち始めて、枯れ葉の絨毯ができあがるのだ。
日本にいたときはどこか西洋風でおしゃれなイメージだったけど、パリではどこでも見られるような当たり前のものなんだよね。
観光で来るときれいだなぁ、と思うけど、もう慣れちゃった(笑)
それよりも、夏場に日陰を提供してくれるのがとにかくありがたい。

2018/07/28

山燃える

ギリシアの山火事が大変なことになっているのだ!
アテネのすぐ近くなんだね。
パルテノン神殿からも煙が見えているとか。
でも、実はギリシアだけじゃなくて、北欧やロシアでも乾燥と高温で山火事が頻発しているんだって。
特にスウェーデンはひどくて、全土で山火事が発生しているような状態なんだとか。
自国の消防隊だけでは間に合わず、欧州内の他の国から応援に来てもらっているらしいよ。

日本の場合、山火事の主な原因は「火の不始末」なんだそう。
キャンプでの火の消し忘れみたいなのだけじゃなく、たばこのポイ捨てとかもあるらしい。
でも、今回の欧州の山火事は「自然発火」。
日本では湿度が高いこともあってなかなか起こらないんだけど、何かのきっかけで火がつくと、まわりが乾燥して燃えやすくなっているので、炎が広がるらしいのだ。
風があると酸素も供給されて一気に燃え広がるらしいよ。

「自然発火」の原因としてわかりやすいのは落雷。
でも、落雷があるような天気の場合は雨も降りやすくなっているし、そもそも湿度が高いので、今回の山火事も落雷が原因ではなさそうなのだ。
火山の噴火もあるけど、そもそも今回の地域では噴火してないよね。
では、何かというと、乾燥した木の枝や葉がこすれ合って摩擦熱や静電気が生まれ、それで火がつくんだって!
そんなことあるのか、と思うんだけど、実際にあるみたいなんだよね・・・。
普段から水でもまいておかないと防がないということかも。

テレビの報道で見る限り、ギリシアの山火事の商活動ではとにかくヘリコプターから散水しているみたいだね。
ただし、山火事の規模が大きくなってくると、まさに「焼け石に水」的なところがあるのだ。
散水できる量・範囲には限りがあるから、火の勢いに追いつかないんだよね。
まさにそんな感じで消火活動に苦労しているように見えるのだ。
山火事が割とよく起こっている米国の西海岸(カリフォルニアなど)では、水だけじゃなく、消化剤もまいているみたい。
何か赤い粉をまいているんだけど、それが粉末消化剤で、「負の触媒」として燃焼反応を抑制する効果があるんだって。

山火事の場合、人の住んでいる地域に影響があまりないと判断された場合は、そのまま自然に鎮火するのを待つというのもあるのだ。
その方が下手な消火活動をするより生態系に与える影響も少ないんだって。
とはいえ、放っておけるようなケースはそんなに大きくないので、消火活動を行うとともに、延焼を防ぐ手立てを講じる必要があるのだ。
その一つは、燃えている範囲の少し外側のところで「燃えるもの」をなくしてしまう、という発想。
江戸時代の火消しと同じなんだけど、燃え広がりそうな先にある樹木を先に切り倒してしまって、暫定的に「火除け地帯」を作るんだよね。
そうすると、よほど強い風でも吹かない限り、それ以上は燃え広がらなくなるわけ。
でも、あまりに規模が大きくなると、樹木を切り倒す範囲も広がるわけで、なかなかできることではないのだ。

そして、もっと過激な方法として「迎え火」というのもあるみたい。
逆方向から火をつけて、特定の範囲を先に燃やし尽くしてしまう、というもの。
あらかじめ火除け地帯を作っておいた上で、外側からも火をつけてしまうのだ。
そうすると、両側から燃えるので、燃えるものが一気に燃え尽きてしまって沈下が早くなるんだって。
でも、「毒を以て毒を制す」的なもので、新たに火事を起こすということでもあるので、リスクは高いみたい。
想定外のところに燃え広がる危険性もあるしね。

今回のギリシアの山火事がいつ収まるのかはわからないけど、おそらく住宅の火事のように散水して鎮火するのはほぼ不可能な規模のようなので、散水などの消火活動をしながら延焼をできるだけ防ぎつつ、鎮火するのを待つことになるのだ・・・。
なんだか大変そう。
消えたように見えても、土壌中に有機物なんかがあると火がくすぶっていることもあるので、その見極めも難しいんだって。
とにかく、早く収まることを祈るしかないみたい。

2018/07/21

カをさけろ

最近蚊の話題をよく見るのだ。
一番人間を殺している生物は「蚊」だとか(二番目は人間・・・)、足の裏を拭くと蚊にさされにくくなるとか、蚊は35度以上では活動しなくなるとか。
日本の蚊の場合は、さされてもかゆくなるだけなんだけど、とはいえ、やっぱりみんな不快なんだよね。
なので、関心が高いのだ。
そこで、そんな蚊にまつわる情報を少し調べてみたよ。

まず気になるのは、蚊の活動の限界。
日本では猛暑が続いているけど、そのせいか、蚊をはじめとする昆虫を見かけなくなっている、というのだ。
で、実際蚊にもさされない!
そんな中で出てきたのが、蚊は35度以上になると活動しなくなる、という話。
どうも、そのもとは、ネッタイシマカという日本で翌みっれるヒトスジシマカの近縁種を使った実験。
いろいろな温度・湿度条件で蚊の活動を観察したところ、蚊が飛んだのは気温が10度~35度のときだった、という論文らしいよ。
すなわち、蚊もあまりにも熱いと活動が抑制されるというわけなのだ。

蚊が活動できる温度範囲はいろんな説があって一概に言えないらしいけど、基本的に、蚊の生態として、常に飛び回っているわけではなく、草陰などに隠れていて、標的となる動物が来たときにさっとさしに行くんだって。
なので、もとから活発に行動しているわけでもないそうなんだけど、あまりにも暑いと、近くに動物が来てもさしに行かなくなるのだ。
蚊が快適に(?)行動できるのは26度~32度と考えられていて、その気温になるあたりが危ないらしいよ。
確かに、自分の記憶と照らしてみても、真っ昼間の炎天下でさされたことってあまりなくて、少し涼しい日陰や、朝夕のちょっと涼しい時間にさされていたような気がする・・・。
それは蚊の行動と合致していたんだね。

次に気になるのは、誰がさされやすいか。
巷間よく言われているのは、血液型がO型の人。
確かに、実験してみるとO型の人がさされやすい、なんて結果も出るようなんだけど、なぜなのかはよくわかっていないみたい・・・。
むしろ、科学的にわかっているのは、蚊がどうやって世界を認識しているか、から来る考察だよ。

蚊が動物の存在を認識するのに3つのセンサーを使っているのだ。
一つは温度センサー。
どうも赤外線を見ているらしく、代謝が活発で体温が高い人、運動直後の人なんかがさされやすいのはこのため。
次に二酸化炭素センサー。
ごく微量の二酸化炭素濃度の差を検出できるようで、呼気中に含まれる二酸化炭素の存在をキャッチするんだって。
息を止めていると認識されない?
最後ににおいのセンサー。
これは汗に含まれる乳酸や脂肪酸なんかを認識していると考えられているのだ。
足の裏を拭くとさされにくくなる、というのはまさにこれで、足裏は汗腺が集中していてにおいのもとなので、そこをきれいにしてにおいを少なくすれば蚊に認識されにくくなる、ということなのだ。
特に、蚊は普段は草陰なんかに隠れているので、比較的低いところにあるにおいのもとは重要なんだ。
総合して考えると、太っている人、汗っかきの人がさされやすい、というのはもっともなのだ。

ちなみに、気温が高くなればもともと日本に生息している蚊は活動しづらくなるんだけど、今度はマラリアなどのやばい病気を媒介するハマダラカなんかのもっと暑い地方に住んでいる蚊が繁殖するようになるのだ。
幸い日本国内にはほとんどマラリア感染者がいないので、ハマダラカが来てもすぐに汗腺が広まるわけではないんだけど、怖いのは怖いよね。
なので、まずは自衛手段としてさされないように気をつけるのが重要。
炎天下の日向を歩くのは確かに効果的なんだろうだけど、むしろ、汗はきちんと拭いて体臭に気をつける、みたいな清潔感を保つ、という方がやりやすそうだね。
あと、蚊の近くでは息を殺す(笑)

2018/07/14

水に始まり、水に終わる

朝、時間がないときに限って寝癖がひどかったりするよね(笑)
で、直そうとしてもなかなか直らず、焦ったりするのだ。
この間散髪に行って短くなったからここのところは気にしていないけど、散髪に行くまではけっこう伸びていたので、寝癖がついてたよ。
で、この寝癖というのがなんなのかをちょっと調べてみたのだ。

結論から言えば、髪の毛と髪の毛の間に「水素結合」というゆるい結合ができていて、くせがついた形で髪がかたまってしまう現象なのだ。
水素結合というのは、タンパク質の表面で、電荷が正に偏っている水素原子が、電荷が負に偏っている酸素原子、窒素原子、硫黄原子などと電気的に弱い結合をするもの。
それぞれの原子は分子の中で共有結合をしていて、分子全体としては電気的に中性なんだけど、それぞれの原子には電子を引きつける違いに差があるので、分子内で電気的な偏りができてしまうのだ。
水素原子なんかは電子を引きはがされやすいのでプラスになっていて、酸素原子なんかは電子を引きつけやすいのでマイナスになっているよ。

この水素結合は、タンパク質の高次構造を形成する上でも重要。
タンパク質はアミノ酸がたくさん鎖状につながったもので、そのままではひもみたいな長い分子だけど、丸まって一定の形になることで機能を発揮するのだ。
その形状を保つのに重要な役割を担っているのが水素結合。
体の中のタンパク質が機能しているのはこの水素結合のおかげ。
なので、それ自体が悪いやつではないんだよ(笑)

たかが電気的な弱い結合なんだけど、これがけっこう強力で、寝癖がなかなか直らないわけ。
電気的にくっついているので、物理的に櫛でとかすだけではどうしようもないのだ。
で、簡単な直し方と言えば、水に濡らすこと。
水中にはそれこそ無限の水分子があるわけだけど、この水分子の中でも電気的な偏りがあって、水素原子はプラスに、酸素原子はマイナスになっているのだ。
髪の毛の間で水素結合しているタンパク質は、まわりに他の電気的な偏りがないからわりと強くくっついてしまっているのでだけど、まわりに水分子が来ると、他にも電気的結合の相手がいるので、くっついたり離れたりするのだ。
数的には水分子の法が圧倒的に多いから、髪の毛同士の結合はほぼ切れてしまうわけ。
なので、面倒でも水で濡らしたり、水を主成分とした寝癖直し(他に香料や界面活性剤、多価アルコールなんかが入っているよ。)をつけたりするとなおるんだ。

濡れている状態の時にクセを直し、きちんと乾かせば、その後は水素結合で寝癖がつくことはないのだ。
つまり、寝癖がつくのは、髪の毛に湿り気がある状態で髪の毛に変な力がかかるから。
しっかり髪を乾かさずに寝たり、寝汗で頭が群れたりすると寝癖ができる原因になるよ。
逆に言うと、まずはお風呂の後にしっかりと髪を乾かしておけば寝癖はつきづらいのだ。
これは重要だね。

で、この寝癖と似ているようでまた違うのが「パーマネント」。
パーマの場合は、アミノ酸残基のうちチオール基(-SH)を持っているシステイン同士の間で共有結合を作ってしまうことで髪の形を固定する技術なのだ。
チオール基を二つを化学的に結合させてジスルフィド結合を作るんだけど、その化学反応のために、薬液を使い、熱をかけるんだよ。
水素結合と違って、共有結合ができてしまうので、薬剤か何かが化学的にジスルフィド結合を切らない限りはその「クセ(ウェーブ)」が持続するのだ。
これが「パーマネント(永続する)」の名前の由来。
水に濡れても大丈夫なので、髪を洗っても形状が保たれるよ。

というわけで、実は髪のクセは化学に支配されていたのだ!
これを踏まえれば、寝癖を直すにも、あれこれ試行錯誤せず、最初から水で濡らして直せるね。
ま、寝癖にならないようにする方がよいけど。

2018/07/07

これが本来の味?

中東の某国に出張に行ってきたのだ。
人生ではじめてのアラブ地域。
ちょっと最近の政策課醸成を踏まえると、怖い感じがするよね・・・。
行ったところは治安は全く問題なかったんだけど。
むしろ、その蒸し暑さがきつかった。

そんな蒸し暑い中で提供されるのが、カフワ・アラビーヤ。
アラビック・コーヒーと呼ばれるものなのだ。
初めて飲んだけど、これはいわゆる「コーヒー」とは別物。
まず、色が違う。
泥水のような薄い茶色。
そして、カルダモンの風味。
なんだか薬湯を飲んでいるみたい。

淹れ方を調べてみると、その色も納得。
アラビック・コーヒーに使われるコーヒー豆はほとんど焙煎していないものなのだ。
ちょっと黄色くなった程度。
それを黄土色の粉にして使うんだ。
とってつきの鍋に超浅煎りコーヒーの粉と水を入れ、カルダモンで風味をつけつつ沸騰して煮出すんだよね。
それをそのままポットに移し、粉が沈んだ当たりで上澄みを小さなカップに入れて提供するのだ。

コーヒー豆は使っているので、しっかりとカフェインは入っているんだろうけど、いわゆるコーヒー特有の「苦味」はないので、別物に感じてしまうんだよね。
砂糖などは入れず、甘いデーツと一緒にいただくのが標準なんだって。
ラマダン中に日の入りとともに最初に口にするのが、このアラビック・コーヒーとデーツの組み合わせという地域も多いみたい。
それだけアラブ地域では浸透しているものなのだ。

実は、淹れ方自体はトルコ・コーヒーにそっくり。
トルコ・コーヒーも粉と水を鍋に入れ、煮出して作り、カップに注いで粉が沈んだところで上澄みを飲むんだよね。
でも、煮出すときにコーヒーの粉とほぼ同量の砂糖を入れるので極めて甘いのだ。
さらに、使うコーヒーも焙煎したものなので、いわゆる「コーヒー色」のものだよ。
カルダモンは入れたり、入れなかったり。

アラビック・コーヒーも最初はそれに近いものと勝手に思っていたのでびっくり!
色がついていないし、いわゆるコーヒーの香りもしないので、コーヒー豆を使っていないのかとも思ったよ。
それくらい異なるものなんだよね。
でも、コーヒーの歴史からすると、生のコーヒー豆を煮だして飲んでいたのが最初だったようなので、むしろアラビック・コーヒーの方が原点に近いようなのだ。
豆が煎られるようになったのは13世紀以降で、それまでは乾燥させただけの豆や葉を煮出して、カフェインが溶け出した煮汁を飲んでいたようなのだ。
ま、焙煎した豆で淹れたものが世界の主流ということは、そっちの方が好まれたんだろうね。
イスラム世界では、クルアーン(コーラン)で「炭」の食用が禁止されているようで、煎ったコーヒー豆が炭に似ているので、あまり焙煎しないで淹れるスタイルが残ったんじゃないかと推測されるのだ。

いずれにせよ、アラビック・コーヒーもトルコ・コーヒーも、ユネスコの無形文化遺産に登録されているんだよね。
飲み物そのものというより、その飲み物にまつわる文化や習慣なんかを含んでいるんだけど。
アラビックコーヒーの場合も、アラブ地域の遊牧民であるベドウィンが客人にアラビック・コーヒーを振る舞う、という文化で登録されているんだって。
「おもてなし」の精神込みってことだね。

2018/06/30

カレーのパートナー

インド料理屋さんに行ったら頼みたいのがラッシー。
サービスで出してくれるところもあるよね。
辛いカレーを食べているとき、水を飲んでしまうと辛さがますます強くなってしまうけど、ラッシーだと辛さを緩和してくれるのだ!
ちょっと酸味もあって、おいしいよね。

で、たまたまネットで、本格インド料理店に勤務するネパール人(笑)がお店のレシピを教えてくれた、というのを見つけたのだ。
それによると、等量のヨーグルトと牛乳を混ぜ、そこに砂糖とレモン汁少々を入れるんだって。
これをよく攪拌したらできあがり。
ヨーグルトは固形分があるので、泡立て器でがっつり混ぜるとまろやかになるそうだよ。
これは明治ブルガリアヨーグルトのサイトでも紹介されているのだ。
ミキサーで混ぜるときに果物を入れるとフルーツ・ラッシーになるみたい。

もともとのインド・ネパールの作り方も、実はこれと大差ないのだ。
インドやネパールで作られているヨーグルトの一種「ダヒ」。
「ダヒ」はいわゆるヨーグルトとは別の乳酸菌によってできる発酵乳で、粘度が低く、味わいや風味が違うんだって。
英語だと「curd(カード)」と呼ばれるんだけど、もともと「カード」はカッテージチーズのことで、見た目が似ているのでそう呼ばれるみたい。
ダヒは水切りするとカッテージチーズのように少しぼそっとした感じになるんだけど、これが粘度の違いなんだろね。

このダヒにクリームやミルク、砂糖を加え、よく混ぜ合わせて泡立てたものがラッシー。
ダヒを使うときは上のレシピよりは量が少なめのようだけど、おそらく、水切りした後の固形分が多いものがラッシーを作るように売られているからなのだ。
ミキサー普及前は、とにかく木の棒でがしがしとかき混ぜたり、二つの容器に代わる代わる注いで泡立てたりと、かなり手間がかかるものだったみたい。
泡立ってなめらかになるまでひたすら混ぜるのだ。

砂糖を入れないプレーン。
砂糖入りのミーティー。
薄塩味のナムキーンなどの種類があるんだって。
塩味のものは、トルコの塩味の乳酸発酵飲料であるアイランに似ているとか。
ボクは一度アイランをごちそうになったことがあるんだけど、それには、キュウリなんかも入っている「冷たいスープ」状になっていたもので、飲んだ瞬間すごく驚いたのだ。
で、あんまり合わないなぁ、というのが正直な感想(笑)
やっぱり甘いラッシーの方がいいな。

日本では「飲むヨーグルト」を自分で作ることはあまりなくて、市販品を買ってくるよね。
これは粘度を低くしてスプーンなどを使わずに「飲める」ように商品開発したもので、ヤクルトの「ジョア」がその先駆けなんだって。
これは日本では長らく乳製品を食べる習慣がなかったからで、海外では、ヨーグルトの食べ方の一つの形態として、水で薄めたりして飲み物に加工されてきていたのだ。
日本が大豆から醤油や味噌を造るように、乳製品大量消費国ではバターやヨーグルトをいろんな形で食べてきているってことだね。

でも、こうしてレシピを知ってしまったからには、自分でも工夫できそう。
やっぱり脂肪分少なめでさっぱり目がよいから、自分で作るなら、無脂肪乳(スキムミルク)を使うかなぁ。
でも、そうなると、カレーの辛さを緩和する能力がよわくなるかな?
とりあえず、一度試してみたい。

2018/06/23

学生のみかた

パリ在住の日本人なら誰でも知っている情報誌のOvni。
そのOvniに、パリの学食に関する記事が載っていたのだ。
学生だけじゃなく、誰でも利用できるんだそう。
ちょっと試してみたくなるよね。

ボクも学生時代はけっこう学食を利用した方なのだ。
外で食べた方がおいしいのだけど、学食は安いし、早いから。
ちょうどファストフードの低価格化が進行していたけど、それでも、野菜もとれるような定食については学食の方が安かったのだ。
量は多いけどおいしくない、と言われる学食も多いけど、最近では、有名なレストランとコラボしたり、朝食を100円で提供したりと、いろんなことをしているみたいだね。

で、パリの学食だけど、やっぱり量が多くて安い、でも、そんなにおいしくない、というものみたい(笑)
Ovniの記事によれば、スタンダードな定食は前菜+主菜+デザートのセットで3.25ユーロ!
500円くらい。
日本だと500円ランチは割とあるけど、パリではカフェでごはんを食べると15ユーロは超えるので、これは破格なのだ。
マックの一番リーズナブルなセットで5ユーロ弱、庶民の味方ケバブサンドで6ユーロくらいだから、ファストフードよりも安いのだ。
学生以外の人が食べるときは7.5ユーロだって。
それでも1,000円くらいか。

パリの学食は、大学のキャンパス内にあるわけではなく、大学のキャンパスの近くの街中にあるんだって。
これも不思議な感じ。
定食に更にプラスして追加メニューも食べることができて、それも軒並み安いので、学生さんはお昼に学食でしこたま食べて、夜はサンドイッチなどで軽く済ます、みたいな伝統があるみたい。
学食は昼のみの営業のようなのだ。

米国に留学していた時代に米国の大学の学食も利用したことがあるんだけど、そっちは完全なカフェテリア形式。
いろんな料理が並んでいて、取った分だけお金を払うシステムだよ。
一方、パリの学食は、セルフサービスなんだけど、各ブースに行って前菜、主菜、デザートのそれぞれを選んでトレーにとって、必要なら他のもの(飲み物、果物、サラダ等々)を追加で取る、というもの。
これは日本の学食や社食に近い気がするけど、前菜、主菜、デザートのそれぞれが選べて組み合わせられるというのが特徴だね。
この3つのセットで食べるというのは小学校の給食の時から変わらないらしいから、フランス人の食生活と切っても切り離せないものとなっているみたい。

でも、フランスには社食はあまりないみたい。
代わりに、チケ・レスト(英語風に言うとレストラン/チケット)というのが支給されることがあって、これは会社が昼食代の一部を負担してくれるシステムなのだ。
割安で買ったチケットで、カフェやレストランで食事ができるんだよ。
使える店は限られるんだけどね。
さすがに日本の会社だとここまでの制度はないかな?

とにかく外食の価格が高いパリ。
このままで学生さんなんかは暮らしづらいだろう、と思っていたんだけど、それなりの救済措置はあるんだね。
学生じゃなくても使えるみたいだから、機会があったらトライしてみるかな。

2018/06/16

街路樹に新鮮な空気を

東京にいたときから気になっていたんだけど、街路樹の根元に竹筒みたいのが刺さっているんだよね。
で、ずっと何かなぁ、と疑問に思っていたのだ。
パリに来てみると、街路樹の根元にホースが刺さってる・・・。
東京と同じようなもののように見えるのだ。
いよいよ気になって、ネットで検索しまくってしまったよ。

結論から言うと、空気を送り込むための通気の筒なんだって。
街路樹の場合、舗装された道路に穴を開け、そこに土を入れて植えられていることが多いのだ。
その土の入っている部分を植枡というらしいんだけど、これは気の高さに比べるとそんなに体積がないので、放っておくと土壌の質が悪くなるんだって。
pHなんかの問題もあるし、水はけの問題もあるみたい。
街路樹の根元が踏まれやすい場合には、徐々に土が硬くなってしまう、なんてことも。

で、通気の確保もその一つ。
土の中ではわりと空気は移動していて、好気性の土壌細菌や木の根による呼吸で酸素が消費され、 二酸化炭素が増えるんだって。
濃度が高くなった二酸化炭素は拡散によって広がり、代わりに外から酸素含有量の大きな空気が入ってくるのだ。
これで土壌中に空気が循環するわけ。

ところが、土が硬くなって本来あるはずの隙間が埋まってしまったり、水はけが悪くて空気が通るべき隙間に常に水があったりとかすると、通気が悪くなるのだ。
その結果、嫌気性の土壌細菌が増えて土壌の性質が変わったり、根が十分に呼吸できなくなったりして、根腐れを起こしたりするらしいのだ。
それを防ぐために、通気を確保する必要があるらしいよ。

対処法としてわかりやすいのは、根元の土を耕すこと。
土を耕すというのはもともと硬くなった土を掘り返して再び柔らかくすると言うことだからね。
でも、街路樹が生えたままはできないので、植え替えの時しかできないのだ。
なので、植える前から水はけをよくする小石を敷き詰めた上に土をのせて排水性をよくしたり、土の中に他校生のパーライトというのを入れて土が踏まれても通気性が損なわれないようにしたりするのだ。
でも、これって最初から計画しないとできないので、今ある街路樹を救うことができないんだよね。

ところが、街路樹の根元に筒をある程度の深さまで刺して、その筒の中に通気性・排水性のよい材料を詰めておくと、そこを通して水と空気の交換ができるので、かなり土壌の質が改善されるらしいのだ!
まさにそれが行われているのをボクは見ていたわけ。
調べてみるとそんなものか、と思うけど、ここにたどり着くまでけっこう大変だったよ・・・。
ま、当たっていないかもしれないけど(笑)

2018/06/09

意味を読み取る

有名な人工知能(AI)のプロジェクトに「東ロボくん」というのがあるよね。
国立情報学研究所でやっているやつ。
AIは東大入試を突破できる学力を身につけられるか、というプロジェクトだったのだ。
で、結果としては、現在のAIではおそらく東大に合格できるほどの学力を身につけることは無理、というのがわかったんだよね。
その原因は、データをとにかく詰め込むことで知識量はあるんだけど、「文章の意味」が理解できないので、正答になかなかたどり着けない、ということだったのだ。
しかも、このプロジェクトを進めていく中で、圧倒的に読解力が低く、暗記や計算だけで問題を解いている子供たちがけっこうな割合でいることがわかったのだ。
今では、研究リーダーだった新井紀子博士は、子供たちのリーディング・スキルをどうやったら上げられるか、という研究に移行しているらしいよ。

で、ここでいう「文章の意味」とか「読解力」とは何なのか?
わかりやすい例で言えば、その言葉の発せられた状況やその文章の前後関係から「それらしい意味」を読み取る、ということなんだよね。
話し言葉だと同音異義語の意味の取り方がまさにそうなのだ。
海にいる「蛸」と、お正月に上げる「凧」は両方とも「タコ」という音だけど、食べ物の話をしているときは「蛸」を意味することが普通だよね。
でも、AIはそれが判別できないので、シチュエーションや前後関係も含めて大量の「例文」を記憶させ、その場に最も近いと思われる事例を参照してどちらの意味で使われているかを判断するのだ。
統計的な処理なので、こういうワードと一緒に出てくるときは「蛸」を意味することが多い、という結論を導き出すわけ。
音声認識はこれが非常に難しいんだよね。
イントネーションが違えば区別できるんだけど。

で、これが書き言葉ベースでも同じようなことが起きるのだ。
単語単語の意味はそれぞれりかいできても、それがつながって文章になったとき、「何が言いたいのか」がわからない、ということが起こるんだって。
「必ずしもないわけではない」といった二重否定や、「○○であろうか、いやない」のような反語は、単語の意味だけつなげてもその意味はわからないことが多いんだよね。
こういう複雑なものでなくても、特定の単語にだけ反応してしまって、文章全体の意味を取り損ねる、なんてのもあるみたい。
ツイッターでのわけのわからないリプは、全体が理解できていないまま、特定のワードにだけ反応して発せられていることが多い、というのもわかっているようなのだ。

さらに、人の書いた文章が読めない人は、当然自分で文章を書くのも不得意なんだよね・・・。
修飾語が長すぎて文章のつながりがわかりにくい、並列関係や順接・逆接がくずれている、主語・述語の対応がおかしい、などなど。
おそらく、自分ではあまり変だとは思っていないんだけど、他人から見ると、「何が言いたいのかわからない」というものになっているのだ。
話し言葉だとそこまで気にならず流せるようなものでも、書き言葉になるととたんにつらくなるんだよね。
言いたいことを正確に伝えるために文字で書き起こしているはずなのに・・・。

こういう話を聞くと不安になってくるよね・・・。
AIに限界があって、完全に人間に置き換えられない、というのはいいんだけど、人間の方でAI的な思考回路に近づいているというのは大問題なのだ。
コミュニケーションを取ることで社会性を保つのが生物種としてのヒトの特徴のはずだからね。
こういうのって、本を読まなくなったこととも関係しているのかな?
逆に、読んでも意味がわからないから読まなくなっているだけかもしれないのだけど。

2018/06/02

酸っぱいくき?

日本ではあまりお目にかからないけど、フランスではわりとよく見る食材として、ルバーブがあるのだ。
ジャムやパイのフィリング、デザートのソースなんかに使われるよ。
さわやかな酸味でなかなかおいしいんだよね。
日本で買うと高いから、こっちにいる間に食べないと(笑)

ルバーブの和名は、ショクヨウダイオウ。
ダイオウは生薬の大黄のことで、中国原産の大黄に用いられるタデ科ダイオウ属の食用植物だよ。
主に食用にされている茎のようなところは実は葉柄。
土中に木質の短い地下茎があって、そっから葉っぱが生えている、ということみたい。
この地下茎を乾燥させたのが生薬の大黄だよ。
便秘薬などに使われるのだ。

で、欧州にはまず生薬の大黄としてこの植物が知られるようになったんだって。
古代ギリシアですでに知られていたらしいけど、中国の大黄が交易で運ばれるようになるのは、中世になってから。
シルクロードの重要な交易品の一つだったんだって。
でも、そうやってはるばる東の大陸から運ばれてくるルバーブは高価なので、欧州で栽培できないか、となってきたみたい。
すると、ブルガリアの寒冷地で近縁の種が自制しているのが見つかり、18世紀にはシベリア原産の近縁種も導入されるように。
こうした種が交雑して、今の食用のルバーブができあがったみたい。
でも、最初の目的は、あくまでも生薬だよ。

19世紀の初め、英国で、ルバーブを野菜として売り出す試みが行われたのだ。
もともと薬用植物として知られていたものなので、なかなか売れなかったんだけど、野菜として栽培品種に王室ゆかりの名前をつけたりして認知度を徐々に高めていって、今のように広く食べられるようになったとか。
そのとき重要だったのが、砂糖の低価格化。
ルバーブはそのままではめちゃくちゃ酸っぱいので、基本的には砂糖とともに煮てペースト状にするんだよね。
なので、砂糖が安くなければ広まらなかったのだ。

ルバーブは水分が多めなので、ざく切りにして砂糖をかけておくと、どんどん水がしみ出てくるんだ。
これをそのまま煮ると、わりと簡単にペースト状になるよ。
これにコーンスターチや小麦粉でとろみをつけてパイやタルトのフィリングにしたり、ペクチンで粘性を上げてジャムにしたりするのだ。
このペーストをそのままデザートのソースにつかったりもするよ。
アンズのような香りと酸味があるので、こういうお菓子に使うのにもってこいなんだよね。
特に、果物が乏しい寒冷地でも育てられるルバーブは、北の国では貴重なお菓子材料なのだ!

ルバーブは特に葉にシュウ酸が多く、葉柄にも微量に含まれているので、アクがあるのだ。
なので、食材として使う前には、しばらく水にさらしてあく抜きをする必要があるよ。
スーパーなどで見かける際には葉っぱはついていないけど、仮に葉っぱを食べようとする場合はもっとしっかりとアク抜きをしないと危ないので要注意。
英国ではほうれん草のように葉を食べていた、という記録もあるようだけど、とことん煮込んだあげくに煮汁を捨ててくたくたになったものを食べる文化だから、アク抜きは問題なかったんだろうね(笑)

2018/05/26

雨ににおう

雨の独特なにおいってあるよね。
パリではそんなに雨は降らない、と聞いていたんだけど、最近は天候が不安定で、けっこう雨が降るのだ。
で、この「雨のにおい」を実際に感じることとなったわけ。
なんだかなつかしい感じがするけど、都会ではあまり感じることがないからかな?

はっきり言えば、現代科学できちんと分析がされていないので、おおまかにしかわかっていないようなんだけど、いわゆる「雨のにおい」には2種類あるようなのだ。
ひとつは、雨が降り始める前の、何かむせかえるような、もわっとしたにおい。
もう一つは、雨降った後の、ちょっと甘ったるい、土の香り。
雨の主成分は水なので、基本的には無臭。
では、なぜにおいがするかというと・・・。
どうも地面に雨粒が落下した衝撃で巻き上げられている物質がエアロゾルになって嗅覚を刺激しているようなのだ。
雨が降ってくる途中ににおいのあるエアロゾルを巻き込んでくるわけではないんだよ。

降り始めのにおいは、「ペトリコール」と呼ばれているのだ。
「ペトロ」はギリシア語で石や岩のことで、「石のエッセンス」といった感じのネーミング。
十二使徒筆頭で初代教皇とも言われるペトロは、本名は指紋だけど、キリストから「ケファ(アラム語で「石」の意味)」と呼ばれていて、それがギリシア語に訳されて「ペトロ」になったのだ。
つまり、それと同じ。
豪州の鉱物学者が1964年にNature誌で発表した論文で定義した言葉みたい。
論文では、「長い間日照りが続いた後の最初の雨に伴う独特の香り」としているよ。

その正体は、地面に生えている植物が出しているステアリン酸やパルミチン酸などの脂肪酸が大量に含まれる油状物質が、乾燥している時に粘土質の土壌や岩石の表面に吸着したもの。
これらの油状物質は、発芽抑制効果があるそうで、乾燥状態では水の競合相手となる新たな植物が生えてこないように牽制する役目を持っている、と考えられているのだ。
雨が降り始めると雨滴が地面に落下してくるけど、その衝撃でこのペトリコールが空中に飛散され、まわりの水分とくっついてエアロゾル化するんだよね。
これが風に流されてくるけど、「降り始めのにおい」になるわけ。
風はマグものある方向から流れてくるので、雨の前ににおいだけがただよってくることになるみたい。
でも、すぐに水に流されてしまうので、本格テクに降り始めるとにおいはなくなっていくそうだよ。

一方、「雨上がりのにおい」の正体は、土中の放線菌などが作る化学物質のゲオスミンというもの。
こっちは特定の化合物で、立体構造も決定されているよ。
実は、ドジョウやナマズ、コイ、フナなどの淡水性の魚の「泥臭い」においのもともこの物質。
やっぱり「土のにおい」なのだ。
下水道のかび臭いにおいのもともこれだって。
ゲオスミンは、細菌が暑く乾燥した状態で死んだり休眠したりするときに作り出される物質なのだとか。
雨が降ると、これらの化学物質が大気中に放出され、エアロゾルになって嗅覚を刺激するのだ。
なぜかヒトの嗅覚はこの物質に敏感で、5ppt(一兆分率)もあれば感じるのだとか・・・。

どちらも地面由来のものなので、アスファルト舗装された都会ではなかなか感じることができないにおいなんだよね。
また、しばらく雨が降らないとこれらの物質がたまるので、よりにおいが強くなるのだ。
ずっと雨が降り続くと水でにおい物質が流されてしまうので、どんどん無臭になっていくよ。
なんかそれもさみしいけど。

実はこのほかにも「雨のにおい」に貢献している物質があるのだ。
それは、オゾン。
酸素原子が3つくっついただけの単純な分子だけど、刺激臭があることで有名なのだ。
名前の「オゾン」もギリシア語の「におい」から来ているんだよ。
オゾンは、雲の中で静電気放電、いわゆる「雷」が生じると発生するのだ。
雷があればいいので、雨が降らなくてもオゾンのにおいはあるみたい。
ま、どこまで関知できるのかよくわからないけど。

2018/05/19

かたいクリーム

フランスに来てびっくりしたのが、けっこう「バタークリーム」を使ったケーキが売られていること。
日本では生クリーム(ホイップクリーム)ばかりであまり見かけなくなっているし。
でも、よく考えてみると、フランスのクリスマス・ケーキであるビュッシュ・ド・ノエルはバタークリームだし、ダロワイヨが開発したチョコレートケーキの「オペラ」も本来はバタークリームだよね。
フランスにはおいしいバターがあるから、バタークリームなのかな?、という気がしてきたのだ。
でも、ちょっと調べてみると、もう少し別の理由がありそう。

そもそもなぜ日本で最近生クリームばかりになったかというと、冷蔵・冷凍の技術が普及したから、なんだよね。
特に流通面でのシンポが大きいのだ。
キンキンに冷やしたまま運べるようになった、というのが大きいよ。
というのも、生クリームはバタークリームよりもとけやすいから。
むしろ、バタークリームはとけにくいので、冷蔵技術が発達・普及する前によく使われていた、ということなのだ。

生クリームが、中に小さな泡をたくさん包含している形状を保っているのは、乳脂肪が固まっているおかげ。
熱が加わって乳脂肪がとけてしまうと、この構造が崩れて液状になるのだ。
まさにホイップ前のクリームにもどるので、せっかくケーキをデコレーションしていても、それがぐちゃぐちゃになってしまうわけ。
熱いクレープやワッフルにのせられた生クリームはどんどん液状になっていくよね。
一方、バターに砂糖と卵白又は卵黄を混ぜて泡立てたバタークリームは、生クリームよりとけにくいのだ。
生クリームはより水分が多いので、30度なるとぐちゃぐちゃになるけど、バタークリームだと少しとけはじめるくらい。
つまり、春や秋であれば、バタークリームならちょっと冷やしておけばなんとかなるのだ。

ホイップクリームの場合、乳脂肪分の含有量は30~40%くらいだけど、バターは80%。
なので、常温でもかたいんだ。
でもでも、逆に、クリームにしてもやっぱりかたいんだよね。
アイシングとかにはむいているんだけど。
それと、ちょっとしつこいし。
そういうのもあって、日本では生クリームが使えるようになると使われなくなっていったみたい。

一方、フランスの場合、来てみて気づいたけど、パリのアパルトマンの部屋には基本冷房がない。
街中を見る限りあまり冷蔵車・冷凍車も走っていない。
ケーキ屋さんのショーケーキも中があまり冷えてなさそう。
つまり、生クリームではなく、バタークリームを使った方がよい環境がそろっているわけ。
さらに、フランスのバターはおいしいので、バタークリームにしてもそこまでしつこくなく、逆に、濃厚なバターの風味が楽しめるのだ。
なので、おそらくだけど、フランスの場合は、お菓子の味に合わせて意図的にバタークリームを使っていると思われるよ。

ビュッシュ・ド・ノエルは冬のものだけど、冷蔵庫が普及する前から作られている伝統的なお菓子なので、バタークリームで作るのが正解なんだよね。
オペラの場合も、生クリームのやわらかい、とろける食感よりも、バタークリームのちょっとかちっとした食感の法が会う気がするし。
それに、フランスではケーキを適当に包むので(箱がなくて紙でそのまま包むこともしばしば)、ある程度「リジッド」でないと持ち運べないのだ。
そうなると、バタークリームの方が有利だよね(笑)

2018/05/12

実はチャリンコ

フランスの名物お菓子といえば、マカロンやミルフィーユだよね。
でも、玄人は、パリブレストをあげるのだ。
リング上のシュー生地の間にプラリネクリークが挟まっているお菓子だよ。
日本ではそんなに見かけなかったけど、パリではどこにでもあるのだ。

実はこのお菓子、自転車の車輪をイメージしたものなんだって。
リング上のシュー生地はタイヤなのだ!
で、パリブレストというのは、パリとブレストという二つの都市の名前をくっつけたもので、パリとブレストの間を往復する世界最古の自転車レース「パリ・ブレスト・パリ」の開催を記念して作られたものが広がったんだそうだよ。
このレースの開催は1891年で、なんと130年近く前。
けっこう歴史があるお菓子なんだね。

ブレストは、ブルターニュ半島の西端にある港湾都市で、フランスの最西端。
よくフランスの国の形は六角形にたとえられるけど、その左上の角にあたるところ(笑)
パリとの往復で1,200km。
その昔はプロのためのロードレースだったらしいけど、今では一般参加型になっていて、しかも、自転車と呼べるものなら、ロードレーサーでなくても、リカンベント(寝そべってこぐタイプの自転車)や三輪車、タンデムの二人乗り自転車なんかでもよいんだって!
日本からも年々参加者が増えているみたい。

ちなみに、パリブレストというお菓子は、リング上のシュー生地を使っていればほかには特に決まりはなく、大きさも自由、間に挟むものも自由なんだって。
確かに、めちゃくちゃ大きいのを切り分けているのもあるし、小さなわっかをそのまま出すのもあるよ。
中のクリームはナッツの風味のきいたプラリネが基本だけど、カスタードや生クリームも入っていることがあるし、フルーツを挟んでもよいのだ。

さらに、パリブラストからの発想で、お店によってパリ○○と似たようなお菓子を出す場合もあるよ。
ボクが行ったことのあるお店にあったのは、パリ・カルカッソンヌ。
そこは南仏料理のお店なので、フランス南端のカルカッソンヌの地名を使っているみたい。
リングじゃなくて、団子が3つくっついたようなくびれのあるシュー生地。
これもなんかイメージするものがあるのかな?
ちなみに、ヘーゼルナッツはカルカッソンヌの名物だって。

2018/05/05

フランス人はなぜ傘を持たないのか

パリに来てからびっくりしたのは、雨が降っていても傘を差している人が少ない!
っていうか、傘を持ってなさそうな人もいる・・・。
傘を差しているのはたいてい外国人なんだよね。
特にアジア系が多いような。

最初にこっちの人から聞いた説明では、パリの天気は変わりやすく、雨は降ってもすぐやむので、ちょっと雨宿りすればいいだけなので、傘を持ち歩く人が少ない、というもの。
確かに、雨がざーっと降ってきても、ちょっとカフェでコーヒーでも飲んでいるとやむことが多いのだ。
ま、そういう時間を勝手にとれる余裕があるっていうのがまたフランスらしいんだけど(笑)
でもでも、雨が降ってきたときに、みんながみんな雨宿りをするわけではないんだよね。
っていうか、普通にそのまま歩いている人もいる。
パーカーのフードをかぶったりするのは気を遣っている方なのだ。

で、つい最近知ったのだけど、これは子供の頃からの習慣の影響が多いのではないか、という話。
なんと、フランスの小学校では、傘を校内に持ち込むことが禁止されているんだって。
先がとがっているし、振り回すと危ないからって。
マフラーも首を絞めるおそれがあるという理由で禁止らしいから、とりあえず危険分子は排除する、という思想なんだろうね。
で、どうしているかというと、雨がひどいときはレインコート。
小降りの時はそのままなんだそうで。
これにより、雨にぬれることに慣れてしまい、傘を差さなくても平気になるというのだ!
ちなみに、小学校のうちは保護者が送り迎えをしないといけないので、傘を差してきても保護者が持って帰ればOKだよ。

フランスは空気も乾燥しているし、日本の梅雨のように長雨が続くこともそんなになから、多少ぬれてもすぐ乾く、気にしない、って考えかができあがるんだって。
日本では雨にぬれると風邪引く、って言われて、傘がない婆は、できるだけぬれないように軒下から軒下へ渡るように走って帰ったりするし、少しでもぬれるとすぐにタオルで水気を拭き取るよね。
これは大きな習慣の違いなのだ。
なので、最初はびっくりしたよ。

おそらく、このことは傘の歴史もちょっとは影響しているはずなのだ。
もともと「傘」というものは、日差しをよけるために考案されたもので、「日傘」が基本。
基本は王族・貴族とか偉い人が使うものだったのだ。
ところが、これが雨を防げるとわかって、「雨傘」の用途も出てきたわけ。
ここで洋傘と和傘で道が分かれるんだよね。

和傘の場合、竹と紙で安価に開閉可能な傘を作ることができたので、庶民の間にも広まったのだ。
その昔は蓑や笠を使っていたんだろけど、江戸時代には和傘がかなり使われているんだよね。
そのため、少なくとも都市部では、雨の日には傘をさす、というのが当たり前のことになっていたのだ。
一方で、洋傘の場合、イタリアで開閉可能な傘が開発されたようなんだけど、まだまだ高級品。
でも、最初は日傘で、主に女性が使うものとされていたのだ。
英国において「雨傘」の用途が広まってきて欧米でも雨の日に傘をさす習慣ができはじめるんだけど、工業化されて大量生産されるまでは高級品だったので、庶民にまで広がるようなものではなかったみたい。
なので、今でも欧米では傘はそれなりに値段のするもので、いいものを長く使う、という思想なんだって。

一方で、和傘の時代から傘は安価な道具として扱ってきた日本。
昔こそものを大事に使ったけど、大量消費の時代になると、傘もより安価なものが求められてくるのだ。
そこで出てきたのが、世界にも例を見ない「ビニール傘」。
使い捨てとは言わないけど、長期使用には耐えない代わりに非常にリーズナブル。
これが欧米人には信じられないようなことなんだって。
日本人がパリに来て傘をさす人をあまり見ないことに驚くのと同様に、欧米の人は、日本でビニール傘を見ると驚くらしいのだ。

2018/04/28

最小のパスタ

日本では食べたことがなかったけど、フランスに来て、クスクスを食べる機会が出てきたのだ。
モロッコ、チュニジア、アルジェリアといった北アフリカの料理だけど、ちょうどこれら地域はフランス語圏で、人も文化もフランスに入ってきているんだよね。
今の「マグレブ」と呼ばれる、地中海沿岸の地域で、かつては仏領北アフリカだったのだ。
これらの地域はムスリムなので、クスクスは中東地域にも広がっているみたい。
地中海の島々は似たような文化圏なので、イタリアのサルデーニャやシチリアでも食べられているみたいだよ。

フランスのレストランでは、クスクスには3つの皿が出てくるのだ。
一つは山盛りになったクスクス(蒸したもの、仏語ではこの蒸したクスクスの粒はスムールと呼ばれるよ。)。
もうひとつは、そのクスクスにかける野菜(ポワロ、ズッキーニ、カブ、ニンジン、ひよこ豆、セロリ、ウイキョウなどなど)の入ったスープ。
そして、鶏肉や羊肉を煮たり焼いたりしたもの、羊肉のソーセージなどの肉類。
クスクスとスープはとりわけ式で、基本は複数人でシェア。
多くの場合、これらはおかわり自由らしいんだけど、クスクスの量は半端じゃなくて、食べても食べても減らない・・・。
スープは野菜も多くてあっさり目の味であることが多いので、たくさん消費する場合はおかわりもあり得るけどね。

フランス人が辛いものが苦手だからか、もともと北アフリカでもそういうものなのか、スープも肉も辛い味付けにはなっていなくて、別に「アリッサ(仏語式発音)」と呼ばれる辛いソースがあって、それを好みに応じて使うんだ。
唐辛子をもとにして各種香辛料を加えて作られた真っ赤なペーストで、チュニジアでよく使われるものだよ。
ちなみに、そのままでは辛すぎる、ということで、アリッサにマヨネーズを加えたものがあって、それは「サムライ・ソース」と呼ばれているのだ。
主にケバブ・サンドなどに使うもので、クスクスには使わないよ。

クスクスは、パスタの一種なので、乾燥状態で保存されていて、それをもどして食べるのだ。
専用の二段式鍋のクスクス鍋というのがあって、下段の鍋でスープを煮込みつつ、上段の鍋でクスクスをスープの蒸気を利用して蒸し上げられるようになっているんだ。
乾燥クスクスに少し水を含ませ、塩とバター又はオリーブ油を足して蒸し上げるみたい。
塩水とバター又はオリーブ油で別に炊きあげることもあるみたいだけど、蒸した方がプチプチとした食感になっておいしいとされているようだよ。
スープをかけながら食べるので、あんまりゆっくりだと「のびて」きちゃって食感はだんだんなくなってくるけどね。

ボクがクスクスを食べつつ気になったのが、どうやってこの粒を作っているのか。
大量に食べるものなので、まさか「いきなり黄金伝説」のように一粒一粒「ちねる」わけにもいかないよね・・・。
で、調べようとしても、「クスクス+作り方」で検索すると料理のレシピばっかりorz
そんなこんなでなんとか調べてわかったのは、うどんの麺を打つときのような感じで、少量の水をデュラム・セモリナ(硬質小麦の粗挽き粉)に加え、全体に水分をまぶすように混ぜるようなのだ。
そうすると、細かい塊が出来てくるんだよね。
うどんの場合はそれをまとめ上げてさらに練っていくんだけど、クスクスの場合は、ダマダマができてきた段階でふるいにかけるのだ。
で、ある程度の大きさになったものは除き、まだ粒子の細かいものや粉のままのものについてまた同じような工程を繰り返していくみたい。
で、最後に乾燥させるのだ。
ふるいの目の粗さで粒の大きさも制御できるんだよ。
実際にクスクスには粒の大きさで何種類かあるそうで、粒が細かいものほど高級なんだとか。

食べてみての感想としては、何が何でも食べたい、というものでもないんだけど(笑)、野菜たっぷりであっさり目なので、クリームどばどばのフランス料理に胃が疲れているときにはちょうどよいかな?
でも、量がめちゃくちゃ多いので、食べる量には気をつけないといけないけど。
しかも、パスタだけあって水を吸って後から膨らむので、その分もあらかじめ考慮しておかないと大変なことになるのだ。
フランス人は、マグレブ地方の名産でもあるロゼワインと合わせるのが好きだそうだよ。

2018/04/21

トウキビの粉

この前、スーパーでメキシコ料理セットを買って食べてみたら、辛さもしっかりあって、スパイシーでおいしかった♪
フランスにはあまり辛いものがないから貴重かも。
でも、なんだか米国留学時代に食べていたものによく似ているなぁ、と思ってラ、やっぱりテクスメクス料理だったみたい。
本場のメキシコ料理とはちょっと違うんだよね。

一番の大きな違いはタコス。
日本でもそうだけど、海外進出しているタコスには「ハードタコ」が多いのだ。
U字状に折り曲げられて揚げられた、固い皮に具を乗っけて食べるんだよね。
でも、メキシコのものは、焼きたての軟らかいトルティーヤで巻いて食べるんだよね。
このトルティーヤも、米国のものはほとんどの場合小麦粉のやつだけど、メキシコではトウモロコシの粉で作ったものなのだ。
それはちょっとぼそぼそしているから、小麦粉で作ったトルティーヤの方が食感はおいしいんだよね。

トウモロコシの場合、そのまま乾燥させた粒を砕いても、小麦粉のようには使えないんだって。
粘りが出ないので、生地にできないのだ。
なので、乾燥トウモロコシの粒を挽いたコーンミールを粥状に煮るイタリアのポレンタのようにして食べたり、小麦粉を混ぜてグルテンを補ってコーンブレッドにしたりするんだよね。
トルティーヤの場合も、食感をよくするために小麦粉を混ぜることがあるみたい。
日本国内で売られているトルティーヤ用の粉は多くの場合トウモロコシと小麦をまぜたものだって。

トウモロコシを伝統的に主食としてきたメソアメリカでは、小麦を混ぜるなんてことはできないので、別の方法をとっていたんだよね。
それがアルカリ処理。
乾燥させたトウモロコシの粒をアルカリ水溶液(消石灰を溶かした石灰水や、木灰と水を混ぜたものの上澄み液)で10~20分煮てから一昼夜放置して冷却。
これを何度も水洗いするそうだよ。
そうすると、白っぽかったトウモロコシの粒が黄色くなるのだ。
これを粉にしたものは、粘りけも出てくるので、薄くのばして焼いてトルティーヤに加工できるんだ。
小麦の場合でも、かん水を入れて麺を打つと黄色い中華麺になるけど、それと同じような反応が起きているんだよね。

このトウモロコシのアルカリ処理は「ニシュマタリゼーション」と呼ばれているんだけど、アステカの言葉であるナワトル語で「挽きわりトウモロコシから作った食物」を意味するネシュタマリ(nextamalli)に由来するそうだよ。
実は、このアルカリ処理には、粘りけを出して加工しやすくするという以上に大きな意味があるんだ。
それは、必須アミノ酸のトリプトファンやビタミンB3(ナイアシン)の吸収率を上げるという効果。
もともとトウモロコシはトリプトファンの含有量が少なく、そのために、そのまま食べるだけだとトリプトファンが不足してしまうのだ。
ナイアシンは生体内でトリプトファンから生合成されるので、トリプトファンが欠乏すると、同時にナイアシン欠乏症にもつながるんだ。
その欠乏症状は「ペラグラ」と呼ばれているよ。

メソアメリカの原住民は時間をかけてアルカリ処理という方法に行き着いたので、トウモロコシを主食にしても問題なかったんだけど、これを欧州に持ち帰ったスペインではアルカリ処理をしなかったので、ナイアシン欠乏症が多く発症したんだって。
最初は栄養失調疾患とは思っておらず、伝染病ととらえられたので、「イタリアらい病」と呼ばれていたそうだよ。
イタリア北部の山岳地方は寒冷な気候で小麦の生産に向いておらず、新大陸からもたらされたトウモロコシが主食になっていったんだけど、そのためにトリプトファンが欠乏するに至ったのだ!
野菜や果物を食べればかなり改善するはずだけど、むかしはそういう商品作物はあまり流通しないし、食生活としても、主食ばかり食べるような感じだから、防げなかったんだろうね。

メソアメリカでは、トウモロコシは紀元前5000年以上前から栽培種になっていて、およそ主食の4/5を占めていたようだけど、それもこれもアルカリ処理を発明したおかげなんだ。
おそらく、最初はおいしく食べるためにやったんじゃないかと思うけど、栄養学的にも効果がったんだろうね。
ただし、伝統的な方法だと、アルカリ性の廃液が出るし、水洗いで大量の水を消費するので、環境には優しくないのだ・・・。
今のようにトウモロコシで莫大な人数を支えようとすると、ちょっとこの方法じゃ難しいんだよね。
トウモロコシ自体はおいしく食べるにしても、主食以外からトリプトファンや内亜snが摂取できるようにしないとダメなのだ。

2018/04/14

フランスの花粉事情

多くの人は、フランスに来ると花粉症がなくて楽、というのだ。
ボク自身は花粉症ではないのでよくわからないけど(笑)
でも、調べてみると、フランスに花粉症がないわけではないんだね。
日本と花粉の種類が異なっているし、飛散している量も違うので症状が軽減されている、ということみたい。
それでも、実は職場にフランスで花粉症に悩んでいる人がいるんだよね・・・。

パリは大気汚染がひどくて、それこそ、なんか空気に色がついているような、透明度の低い空なんだよね。
実際に大気汚染は深刻化していて、排ガス規制なども厳しくなってきているのだ。
日本ではPM2.5が話題だけど、フランスではPM10というものが増えているのが問題なんだって。
日本では浮遊粒子状物質などとよばれるもので、粒子径が概ね10ミクロン以下のもの。
ちなみに、PM2.5はそのまま粒子径が概ね2.5ミクロン以下のものだよ。

PM2.5の方がさらに小さいの肺の奥の奥まで入り込むんだけど、PM10でも肺や気管支に沈着し、呼吸器に影響を及ぼすことが知られているのだ。
ぜんそくの原因にもなるし、慢性的に肺や気管支に炎症が発生するので、花粉症のようなアレルギー疾患のリスクも高まるんだよね。
で、フランスでも、大気汚染の深刻化に伴い、花粉症が増えてきているんだって!
4人に一人は症状を抱えていると言われているそうだよ。
ただし、日本での、涙や鼻水が止まらない、くしゃみをし続ける、というようなひどいものではなくて、鼻が詰まる、くしゃみをする、目がうるうるするといった軽い症状も含めてのようだけど。

フランスでは、イトスギ(セイヨウヒノキ)、ハシバミ、ハンノキ、ミモザ、マロニエ、プラタナスなんかの花粉が飛散するみたい。
街路樹としてよく植えられていることも多いので、都市部でも花粉は舞っているということなのだ。
それでも、日本のニュース映像にあるような、風が黄色く見えるほど花粉が飛んでいるわけではないので、症状は出たとしても軽めなんだそうだよ。
これからひどくなる可能性はあるけど、日本のようにどこにでもスギを植えまくった、というような事情はないから、そこまでには至らないかな?
大気汚染の影響の方が大きいだろうね。

フランス、というか、欧米では日本と違ってマスクをする習慣がないのだ。
日本だと軽いものでもカゼをひくと他の人にうつさないようにマスクをするけど、こっちでは平気で人前でくしゃみや咳をするんだ。
っていうか、これじゃ飛沫感染が広がる・・・。
でも、こっちでマスクをしていると、よほど深刻な伝染病にかかっている、と受け取られるらしいので、注意が必要。
いきなりパンデミックの要注意人物に見られてしまうのだ!

フランスでは症状がそこまでひどくないこともあり、日本のように抗アレルギー剤で抑えるというのはまれみたい。
対症療法が多くて、カモミールティーなどのハーブティーを飲む、ハーブ系のアロマを焚く、こまめに掃除する、蜂蜜・プロポリスを摂取する、などなど。
軽めの症状の緩和対策は日本とさして変わらないのが面白いね。
多少症状がひどくなると薬局に行くようだけど、そこでも出てくるのは炎症やかゆみを抑える薬だって。

日本だと春の心地よい季節に外出できないというひどい状況だけど、こっちでは症状もそんなに出ないので、普通にアウトドアを楽しんでいるみたい。
フランス人は陽気がよいとすぐに外に出て食事したり、昼寝したりするからね。
これから花粉症がひどくなっていったら、こういうライフスタイルも変更せざるを得ないのかな?
くしゃみしながらもやってそうな気はするけど(笑)

2018/04/07

国鉄改革

フランスでは、マクロン大統領が目指しているフランス国鉄(SNCF)の改革案に反対して大規模なストライキが始まったのだ。
現在のフランス国鉄は「商工業的公施設法人」というもので、特別の法律で設立される公的性格を有する企業体なので、日本で言う「特殊会社」に近い形態みたい。
今回の改革では、フランス国鉄職員に認められている様々な優遇措置(年金、家族は無料で鉄道が利用できるなど)を徐々に廃止していこうというもの。
既得権益が侵されるということでストにつながったみたい。

日本でも国鉄こと日本国有鉄道が分割民営化されるときも大きな騒ぎになったよね。
日本の国鉄は、戦前鉄道省が直接運営していた「省線鉄道」が戦後の1949年に役所から離れた公共企業体である日本国有鉄道として分離したのだ。
これが1987年に中曽根内閣の行政改革の目玉として分割民営化され、JR各社が生まれたのだ。
ちなみに、JR各社は公共性を有しているということもあって、まずは独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(当時は日本国有鉄道清算事業団)を介して日本国政府が株式を有する特殊会社の形で分割民営化され、その後、運営状況が健全な会社から完全民営化に移行しているのだ。
現在までに完全民営化に移行しているのは、東日本、東海、西日本、九州の4社だよ。

実は、この日本の民営化路線は世界でも先行した取組で、このときの教訓を活かす形で各国の民営化が行われているようなのだ。
英国なんかは日本と同じような分割民営化のようなんだけど、ドイツは1社のままの民営化だって。
更に大きく異なるのは、欧州連合(EU)加盟国の場合、EU指令に基づいて、いわゆる「上下分離」が行われているのだ。
すなわち、インフラとしての鉄道網を保有し、管理する会社と、実際に鉄道を運行する会社に分離するというもの。
多くの場合、インフラ会社は政府又は公的な主体が運営し、運行会社が路線使用料を支払ってそのインフラを使わせてもらう、という形式になるよ。
「オープン・アクセス」なので、理論上は鉄道運行については競争が生まれることとなり、新規参入もできるのだ。
実際に、貨物路線では新規参入も見られるみたい。

これは電力やガス、電気通信の民営化でも見られるもので、インフラを公的なものとしつつ、そのインフラを活用するビジネスは自由競争とするのだ。
日本でも、電力は完全自由化したし、携帯電話も仮想移動体通信事業者(MVNO)が出てきているよね。
インフラのオープン・アクセスを確保して、競争原理に基づく適正なビジネス環境の整備を目指すものなのだ。
実際に電気、ガスなどの公共料金が安くなると言われているよ。

逆に、インフラと運用を切り離さずに一体化しておくのが「垂直統合型」。
サービスの利用形態の変化によりインフラも改善していかないといけないんだけど、インフラと運用を切り離してしまうと、そこに不備が出てしまうので、一体不可分であるべき、とする考え方だよ。
フランスでは、いったん上下分離がなされたんだけど、インフラ会社の方がダイヤを組むところに運行会社が不満を持ってもめ、けっきょく垂直統合型になった、という経緯があるそうだよ。
ただし、インフラ会社と運行会社はそのままあって、その上に統括・調整を行う上位の会社を作ったということみたい。
それが2015年のことというから、つい最近なんだね。

そんなにフランスの鉄道を利用しているわけではないんだけど、かなりサービスは悪いんだよね・・・。
そもそも、どのプラットフォームから発車するのかは10分前にしかアナウンスされないし。
運行の技術的問題でそうしかできなとか言っているらしいけど、日本なんかではもっと複雑なダイヤで時刻表に何番線から発車なんて情報を載せているんだから、やろうと思えばできるはずだよね(笑)
このほか、やっぱり非効率にしか見えない部分がたくさんあって、万年赤字を解消するため、そういうのを解消したいというのがマクロン政権の意思なんだよね。
今回のストの実施でそれが変わるのかどうか。

2018/03/31

例外は出てくるもの

少し難しいニュースだけど、暗黒物質が存在していない銀河を発見した可能性がある、という報告が科学誌Natureのウェブサイトに掲載されたのだ。
Natureでは、確度は多少低くてもインパクトのあるものをまずウェブで掲載することがあるんだよね。
週刊誌と言えども、タイムリーに大きな成果を公表するにはこの方がよいんだよね。
ま、STAP細胞みたいな例もあるんだけど・・・。

通常、太陽系が所属している天の川銀河も含めて、目に見えている星々だけではなく、見えない(=観測できない)「暗黒物質」が大量に含まれている、と考えられているんだよね。
天の川銀河のような渦巻き銀河だとイメージしやすいけど、銀河も回転運動をしていて、その回転運動に物理法則を当てはめようとすると、観測値と理論値が合わない!、ということがわかったのだ。
端的に言うと、「重さ」が足りないんだよね。
光学的に観測できている星々の想定される質量を足し合わせただけでは、銀河の回転運動の性質を説明できなかったのだ。
そこで、観測はできないけど、質量を持っていて、銀河の回転運動に影響を与えているもの、として「暗黒物質」が仮定されるに至ったわけ。
さらに、この「暗黒物質」は、銀河の形成にも役立っていると考えられていて、最初に銀河が掲載されるとき、「暗黒物質」が足場となって重力でまわりのガスなどを引きつけ、それが徐々に大きくなって銀河になる、と仮説が構築されているのだ。

で、今回の発見が本当に「暗黒物質」の全くない銀河の発見だとすると、銀河の形成には少なくとも別のルートがある、ということになってしまうんだよね。
ただし、これまで観測されてきた多くの銀河が、見えるもの以上に大量の暗黒物質を含んでいるのだけど、今回発見された銀河は、これまでの観測結果では、見えているものの質量を足すだけで運動が説明できる、というもの。
なので、本当に「暗黒物質」を全く含まないかどうかはわからないんだよね。
ごくごく少ない量では存在しているかもしれないし、まだ観測データが少ないので、これからの観測で変わるかもしれないのだ・・・。

面白いことに、一昨年夏には、全く逆ベクトルの報告があったんだよね。
つまり、ほぼ「暗黒物質」でできている銀河の発見。
たまたま見つけられたもので、観測データに欠陥があるのかな?、と詳しく調べてみると、99.99%「暗黒物質」で構成されていると考えないと説明できないような銀河が存在するという結論に至ったんだそうだよ。
今回はまさにその逆なんだよね。
なんか、釣り合いはとれているような気はするけど(笑)

これからの更なる研究が重要なんだけど、この「暗黒物質」を含まないかもしれない銀河を詳しく調べていくことで、これまでの銀河に関する仮説を深化させたり、観測できず、理論的に存在が仮定されている「暗黒物質」への理解が深まる可能性があるんだよね。
ま、人類の日常生活には大きな影響はないんだけど。
それでも、ホーキング博士が亡くなって以降、エポック・メイキングな成果が出た可能性が高いんだよ。
現在は宇宙にあるハッブル宇宙望遠鏡と地上の天文台からの観測がメインなんだけど、開発が遅れに遅れているNASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が使えるようになれば、もっと詳細なデータが得られる見込みなのだ。
これは宇宙好きにはたまらないね(笑)

2018/03/23

アルミ玉

なんか、ネット上でアルミホイルを丸めて、丸めて、金属光沢のある玉にする、っていうのがはやっているみたいだね。
アルミホイルを丸め、ひたすらたたいて、つぶして、圧力をかけて密な球状のものにし、それを磨いていくんだって。
磨くのも、紙やすりで粗いもの、細かいものと順々にかけていくみたい。
最終的に液体研磨剤で磨くと、そこに輝く金属球、だけどアルミだから、かなり軽いものができあがるそうだよ。
ただし、ものすごく時間はかかるみたい・・・。

アルミは軽量で加工性も高いので日常生活でもよく見かける金属だよね。
この加工性が高いというのは、展延性が高い、ということなのだ。
展性というのは、引っ張る力に対してせん断されることなく伸びる性質。
針金状に延ばすことができるという性質だよ。
延性というのは圧力をかけたときに柔軟に変形する性質。
圧力をかけながら延ばしていくと、シート状にできるのだ。
アルミホイルのようにうす~く延ばせるのはこの性質のおかげ。

さらに、アルミは比較的軟らかく、曲げたりするのにもあまり力がいらないのだ。
そして、曲げても割れたり切れたりしないのだ。
このおかげで、アルミホイルやアルミカップが使えるし、アルミ缶に成型もできるわけ。
ただし、あまりにも軟らかすぎるので、通常はアルミの入った合金を使うようだよ。
1円玉は純アルミニウムだけどね。

でも、残念なのは、1円玉を見ればわかるように、すぐくもってしまうのだ・・・。
これはアルミニウムはイオン化傾向が大きく、空気中の酸素で酸化されてしまうから。
つまり、表面に酸化アルミニウムが形成されてしまうのだ。
ところが、これが被膜となるために、耐浸食性が高くなっているんだよね。
なので、アルミ缶の中に炭酸飲料も入れられるわけ。
しかも、薄くて熱伝導度も高いので、すぐに冷えるのだ!

ところが、酸性や塩基性の液体には弱いので、その場合には被膜だけじゃなく、表面にコーティングをしてあげることが必要なんだって。
また、あまりにも軟らかいので、中から内圧がかかっているような飲料に適しているのだ。
つまり炭酸飲料。
お茶とかがスチール缶を使うのはこのためだよ。
でも、何より缶自体が軽いし、飲んだ後は簡単につぶせて場所も取りづらいし、便利なところもたくさん。
だからこそアルミ缶は広く使われるのだ。。

ところが、ネットで話題になっているアルミホイルを固めて作った玉は、磨けば磨くほど表面がなめらかにはなるんだけど、やっぱりそこにはすぐに酸化アルミニウムの被膜ができてしまって、くもるはず・・・。
酸素に触れないようにしておかないと、長い時間かけた苦労が、ということになってしまうよ。
もし試してみようという人は気をつけないとね。

ちなみに、アルミホイルを固めていくためには、いきなり強く圧力をかけてもうまくいかないみたい。
まずは手で丸め、それを優しくたたいていって、ある程度固くなってから金槌とかでがんがん固めていく、という手法らしいよ。
そうしないとどうしても隙間が残ったりするんだって。
日本刀も何度もたたいて鋼を鍛えるけど、きっとそういうものだね。
最後に丹念に磨くのも同じだし(笑)

2018/03/17

UME

パリもだんだんと春めいてきた。
この前は早咲きの桜を見かけたよ。
日本だと、まず梅が咲き、続いて桜が咲き、と春の近づきが実感できるのだけど、パリだとそれはさすがに難しいね・・・。
日本にいた頃は、馬が咲くともう温かくなるとわかるのでうれしかったものだけど。

で、この梅について、最近ネットで流れてきたネタを見てびっくり。
それは、白梅と紅梅の違い。
確かに花の色が違うのだけど、本質はそこではなかったのだ!
紅梅は、赤い色素であるアントシアニンを大量に作る品種で、そのために、そもそも枝の断面の色が違うのだ(>o<)/
桜伐るバカ梅伐らぬバカ、なんて言うけど、枝を剪定したときに、断面が赤っぽく色づいているのが紅梅、そうでないのは白梅なんだって。
花にだけ色素があるわけじゃなくて、樹木全体で色素が多いということのようなのだ。
なので、花が咲く前に紅梅か白梅かは区別できるんだって。

違いはそこだけではないんだよね。
一般に白梅は紅梅より香りが強いと言われるけど、これも事実。
いわゆる梅の香りの主成分は酢酸ベンジルという精油成分なんだけど、花王がかつて分析した結果によると、白梅の方が香り成分が多かったようなのだ!(ちなみに、その花王のプレスリリースの一次資料はすでにネット上では見られなくなっているよ・・・。)。
酢酸ベンジルは極めて単純な化合物だけど、ひょっとすると、色素のアントシアニンと生合成過程が重複しているのかな?
紅梅の場合は、より多くの材料が色素に使われてしまうので、香りは弱い代わりに色が濃い、となると合点がいくよね。

そして、梅干しなどに使う梅の実はほとんど白梅のもの。
紅梅由来の身は小さかったり、苦味があったりと食用には向かないんだそうだよ。
これも始めて知ったけど、確かに梅園によるある「白加賀」という梅の品種は、大きな白い花を咲かせるもので、江戸時代から広く栽培されているんだけど、大きな梅の実をつけるんだよね。
最近はもっと加工に向いた品種があるようだけど。
例えば、梅干しで有名な南高梅は果肉が厚いのに種が小さく、梅干しに向いた品種なのだ。
また、実がかたく、アルコールに漬け込んでも崩れにくいものが梅酒に向いているんだって。

一方、紅梅は花の色がきれいなので、観賞用でもあるんだけど、独特な赤みがかった木目の色は木材としても人気。
きめが細かく、磨くとつやも出るんだって。
なので、将棋の駒、そろばんのタマ、櫛、箱、ステッキなどに使われるそうだよ。
そこまで幹も太くはないから、大きな家具とかにはならないようだけど。

さすがに自分で枝を切って確かめるわけにはいかないけど、梅の場合はよく剪定をするので、その際に観察してみると面白いかもしれないね。
今度から気をつけるようにして見てみようっと。
会わせて梅の実のなり方の違いも比べてみると楽しいかも。

2018/03/10

肉と言えばウシ

フランスでは、「肉」と言えばウシ、っていうくらい牛肉ばかり。
トリもハトもウズラも食べているけど、やっぱりウシが多いよね。
っていうか、ステーキ好きだし、スーパー等で売っているのも牛ばかり。
ブタ肉料理を置いている店が少ないのだ(>_<)
日本人としては、特に家庭料理ではわりとくせのないブタ肉を使いたいのであまり売っていなくて困るよ。

ウシは、新石器時代に野生のオーロックスという、今は絶滅してしまった野生のウシ(いわゆるウシよりもう少し毛がふさふさしていたみたいだよ。)が西アジアで家畜化され、それが広まっていったと考えられていたんだって。
ところが、ミトコンドリア分析をしてみると、どうも二系統あるらしいことがわかって、それぞれ別の場所で二系統の家畜化ウシが作られ、それが交錯しながら広まっていったのではないか、と言われ始めているそうだよ。
でも、家畜化されたウシと野生のオーロックスは交配可能だったようなので、西アジアで家畜化されたウシが広まっていく過程で野生のウシと交配して二系統になった可能性もあるとか。
なんだか複雑みたいだよ。

でも、ウシが家畜化されたのは、他の家畜に比べると遅いそうだよ。
理由は簡単で、大きくてどう猛なので、まずは、小型のヤギや羊を飼い慣らすところから始めて、飼育技術が蓄積されたところで成功したんじゃないか、ということ。
でも、ウシはその大きさから家畜としては極めて有効で、特に始まったばかりの農業に活用されたのだ!
これは四大文明で共通なようで、エジプトでもメソポタミアでも中国でもインドでも、ウシは重要な農業の担い手だったみたい。
なので、それら古代文明ではウシが神聖視されることもしばしば。
インドのヒンドゥー教では今でもウシは聖なるものとみなされているよね。

中国なんかはより顕著で、三皇五帝の三皇の一人で、人々に農業を教えたという神農は牛頭人身の異形の神。
農業とウシが強く結びついている例なのだ。
でも、この神農は、「百草をなめ、毒と薬に分けた」とも言われていて、人々に生薬の知識を授けた神でもあって、そのために医療の神様としても知られているよ。
日本では、神仏習合でスクナビコナとともにまつられていることも多いよ。
東京の湯島聖堂には神農廟というのもあるけどね。

同じように神仏習合の牛の神様としては、八坂神社の祇園様こと牛頭天王がそうなのだ。
よくわからない神様で、祇園精舎の守護神ということになっているんだけど・・・。
この神様は「蘇民将来」伝説でおなじみで、疫病神なのだ。
護符を授けられた人だけが疫病を避けられる、というタイプ。
祇園祭は疫病の流行を避けるためにこの神様に捧げる祭りがもとだよ。
で、出自がよくわからないんだけど、医道の祖であり医療の神様でもある神農との関係は指摘されているのだ。
大陸にはこの神様はいないようなので、日本で、或いは、朝鮮半島も含んで疫病神の伝説があって、そこに中国伝来の神農の信仰が習合して、いつの間にかその疫病神の姿がウシになった可能性はあるんだよね。
むしろ、ウシと言えば、天満大自在天神こと菅原道真公との関係で天神社における神使としての姿の方がメジャーな気がするけど。

古代日本には牛飼部なんてのもあって、牛乳をとったり食用にしていたんだけど、仏教が広まってからは肉食が基本禁止され、乳製品も10世紀には廃れてしまい、ウシの用途は主に農耕作業などだったみたい。
最初に家畜としてのウシが確認されているのが古墳時代後期のようなので、普通に牛の肉を食べていた時代はかなり短いのだ。
でも、平安時代には牛車なんてのにのっていたわけで、文化的には身近な存在ではあったはず。
そんな存在だから平安貴族だった道真公とウシも結びつけられたんだろうけどね。

2018/03/03

さらっさら

パリでまた雪が降ったんだけど、なんと北海道のようなパウダースノー。
その日は最高気温でも零下の気温で非常に寒く、風もあったので、粉雪が風に舞っていたのだ!
ほんと、北海道のスキー場みたいな感じ。
雪が地面に到着しても、地表がきんきんに冷えているから融けることがなく、その上に積もった雪もさらさらのまま。
これは不思議な光景だったね。

パウダースノーというのは、まさに粉状の雪なんだけど、気温が低く、空気が乾燥している状態で降る雪なのだ。
雪の結晶が成長するときって、雲の中にある微少な水滴が凝結して核となる氷晶ができるのだけど、これがまわりの水滴を集めながら大きくなるわけではないみたい。
むしろ、氷晶のまわりの水蒸気が昇華していきなり氷になる方がスピードが速いんだって。
なので、雪の結晶はむしろ乾燥状態で成長していくということなのだ。
というわけで、上空では成長した雪の結晶が乾燥した状態であって、一定の大きさを越えると降ってくるんだけど、気温が高ければ降ってくる途中で融けるんだよね。

でも、気温が多少高くても、空気が乾燥している場合は気化熱で熱が奪われるため、雪の結晶が融けにくくなるんだって。
逆に言うと、湿度が高いと融けやすくなってしまうのだ。
降ってくる途中で、氷晶が完全に液体になってしまうと冷たい雨、雨の中に氷の結晶が混ざっている状態なのがみぞれ、ちょっと融け始めていて湿り気があって、複数の表がくっついて大きくなっているのが「ぼた雪」、そして、完全に乾燥しているとパウダースノーになるのだ。

雪に湿り気があるとその水のせいで雪の結晶がくっついてしまうのだけど(これは「雪片」というらしいよ。)、パウダースノーの場合は、それがないので、細かい雪がそのまま降ってくるのだ。
目をこらしてよく見ると、雪の結晶がわかることも!
で、こういう粉雪は、地表に積もってもそれぞれの雪の結晶がくっつくこともなく、さらさらしているので、強い風が吹くと巻き上げられるんだよね。
それが「地吹雪」。
さすがにこの前の粉雪はそこまでじゃなかったけど、もう少し積もったら地表から舞い上がりそうなくらいさらさらだったよ。
全く水気がなかったからね。

パリの気候について言えば、乾燥度合いについては十分合格点だけど、通常はそこまで気温が低くないので、パウダースノーにはならいんだよね。
でも、今回は、2~3日最高気温でも0度を越えない日が続いていて冷えきっていたので、パウダースノーになったみたいなのだ。
でも、こんなことは非常にまれだから、貴重な体験をしたんだろうなぁ。
もう二度とこんな寒くはならないでほしいけど(笑)

2018/02/24

雪と氷の五輪

いろんなことが報道されているけど、平昌オリンピックが間もなく閉幕するのだ。
この次は、なぜかすぐ近くの北京。
その前に東京の夏季オリンピックが入るから、まさにずっと東アジアでオリンピックが続くんだよね。
なんだかすごい事態だなぁ。

夏季オリンピックと冬季オリンピックの開催年はずれていて、4で割り切れる西暦年に夏季オリンピック、4で割ったときに2余る西暦年に冬季オリンピックが開催されるのだ。
でも、小さい頃の記憶では、同じ年にやっていたような・・・、と思っていたら、そうだったんだよね。
1992年のアルベールビルまでは夏季オリンピックと同じ年にやっていたのだ。
で、その2年後、1994年のリレハンメルからずれるようになるんだよね。
そう言えば、あれ、2年後にオリンピックやってる!って思ったっけ。
ノルディック複合で荻原健司さんが連続で金メダルを取ったよね。
長野はその次なので、開催年がずれてからの開催なのだ。

日本で最初に開催された冬季オリンピックは1972年の札幌。
このとき札幌市内に地下鉄が通り、かなり街が便利になったんだって。
さらに、札幌の周辺にスキーのジャンプ台や大きなスケートリンクなどの関連設備が整備され、その後北海道から優秀なアスリートが出てくる基盤ができたのだ。
経済効果もさることながら、こういう効果も大きいんだよね。
そして、充実した冬季競技の会場がまとまってあるので、その後の冬季競技のアジア退化の拠点となり、世界大会の重要な会場の一つにもなったんだ。

でも、実は札幌オリンピックも、夏季の東京オリンピック同様に、リベンジ開催。
本当は1940年に、夏季は東京、冬季は札幌と日本開催を目指していたんだけど、第日中戦争の激化を受けて夏季・冬季ともに開催県を返上。
けっきょくは、第二次世界大戦の影響でオリンピック大会自体が中止されたのだけど・・・。
その前のドイツ(当時はナチス)までは開催していて、かなり国威発揚的なことをしていたんだけどね。
で、戦後の復興期を経て、日本でオリンピックを開催したい、との強い思いで、東京オリンピックが企画されるのだ。

1964年の東京オリンピック開催が決定すると、札幌でも冬季オリンピックを開催したいという気運が高まり、1968年開催に正式に立候補するのだ。
ところが、このときは投票で負けてしまったんだよね。
1972年開催に再起をかけ、招致活動を展開したところ、1966年にローマで開催された国際オリンピック委員会(IOC)で開催が決定したのだ。
このとき、第1回投票で過半数の得票をしてぶっちぎりで勝ったんだけど、それにはエピソードがあるみたい。
日本人IOC委員で最長老だった高石真五郎さんは、選挙でアピールしたかったんだけど、病気のために会合に出席できず、同じく日本人IOC委員だった東龍太郎さんにアピールコメントを録音したテープを託したんだって。
それを投票の直前に許可を得て会場で流したところ、多くのIOC委員の心に響き、その結果につながったんだとか。
思いが伝わったんだね。

ちなみに、夏季オリンピックは中止になっても回数をカウントしていて、戦前の東京オリンピックは第12回大会とされているのだ。
戦後の東京オリンピックは第18回大会だよ。
でも、冬季の場合はルールが違って、中止になったものはカウントしないので、1972年の札幌は、第11回冬季オリンピック大会なのだ。
東京は夏季オリンピックの開催年一覧に2回出てくるんだけど、札幌は一度だけ。
でも、なんでカウント方法を変えているんだろう?

実は、2020年の東京オリンピックに触発され、札幌でまた冬季大会を開きたい、という動きがあるんだって。
2014年に2026年の冬季大会の開催地として立候補する意向を正式に表明したのだ。
現在までに立候補を検討しているのは、スイスのシオン、スウェーデンのストックホルム、オーストリアのグラーツ、カナダのカルガリー、米国のソルトレイクシティ。
2019年にミラノで開催されるIOCで決まるんだけど、冒頭のように、東アジアでの開催が連続するので、なかなか実現は難しいんじゃないかと考えられているみたい。
どうなるんだろうね。

2018/02/17

伝来の墨

パリにはあまりおいしいイタリアンはなんだけど、お気に入りのところがあって、そこはサルデーニャ料理の店なんだよね。
東京でもあまり食べられないような料理もあって、よいレストランなのだ。
で、そこの名物料理はいくつかあるんだけど、ボクのお気に入りは、カラスミ(ボッタルガ)のパスタ。
粉末状に下ろしたものと薄くスライスしたものと両方が入っていて、濃厚な魚卵のうまみが味わえるよ♪

日本のカラスミと言えば、長崎産が有名。
肥前のカラスミは、越前のウニ、三河のコノワタ(ナマコの内臓の塩辛)と並んで日本三大珍味とも言われるんだ。
国産カラスミだと、お茶漬けに少し入れたり、薄くスライスしたものを大根と一緒に食べたりするけど、高級品だよね!
イタリアではそこまで高級な感じではないようだけど。
手のかけ方かな?

日本でのカラスミの原料は多くの場合はボラの卵巣。
傷つけないように丁寧に水洗いした後、塩を塗りつけて数日塩漬けにするのだ。
それを水洗いしてから真水につけて塩抜き。
ここでの塩抜きのあんばいは味の決め手になるそうだよ。
塩抜きしたら板の間に挟み、それを斜めに立てかけておいて一晩水抜き。
その後陰干しして10日間ほど熟成させるんだって。
熟成の最中にも、表面に浮き出る脂を拭き取るそうだから、手がかかっているのだ・・・。
それで高級なわけだ。

実は、カラスミは地中海が本場。
ギリシアやエジプトで魚の卵巣を塩漬した後に乾燥・熟成したものが作られていて、それが中国(当時は明朝)経由で安土桃山時代に本に伝来したとか。
大陸から伝来したのはサワラを使ったもので、今でも香川ではサワラのカラスミを作るらしいけど、長崎で盛んに作られるようになった際、豊富に漁獲されるボラが使われるようになったみたい。
「カラスミ」という名前も、肥前唐津の名護屋城を訪れた太閤秀吉公がこれは何かと訪ねた際、長崎代官の鍋島氏が、形が似ているからと「唐墨(中国の墨)」と答えたことによる、なんて言われているよ。
実際、日本のカラスミは熟成が進んでいて中身はオレンジ色、表面が茶褐色で、墨に似てなくもないのだ。

一方、イタリアで作られる地中海産のカラスミは、ボラだけでなく、マグロなんかも使われるみたいで、色も黄色っぽいんだよね。
材料の違いもあるのだろうけど、製法の違いも大きいんだろうなぁ。
なにより、日本のものほどは高くないので、そこまで手をかけていないはずなのだ。
たぶん、形を整えたりとか、表面に浮き出る脂を拭いたりとか、そういうのがないんだろうね(笑)
サルデーニャの特産品なんだけど、おとなりのシチリア島でも名物。
ボクもシチリアでマグロのボッタルガを使ったパスタを食べたけど、濃厚でおいしかった♪

ちなみに、台湾にもカラスミはあって、基本はボラのもの。
膜を破って表面をあぶってからスライスするみたい。
でも、台湾にはボラだけでなく、もっと巨大なアブラソコムツのカラスミ「油魚子」というのがあるのだ。
アブラソコムツは身に人間が消化できない脂肪分(ワックスエステル)が大量に含まれているため、食べるとひどい下痢をすることが知られている有害魚。
でも、その身は全体が大トロのようでおいしいとも言われているのだ。
日本ではアブラソコムツを食用に販売することは禁止されているんだけど、台湾ではその卵巣を使ってカラスミを作るみたい。
はたして、それは食べても大丈夫なんだろうか・・・。
やっぱり、大量には食べてはいけないのかな?

2018/02/10

御墨付きの技

先週フランス第二の都市のリヨンに行ってきたのだ。
 「ガストロノミーの街」と言われるだけあって、おいしものがいっぱい!
 かなり食い倒れのたびになったよ(笑)
そんな中、よさそうなお店を選ぶときに出くわすのが、「MOF」。
 和訳では、「国家最高職人章」と言うらしいよ。

 「Meilleur Ouvrier de France」のことで、「フランス文化の最も優れた継承者たるにふさわしい高度な技術を持つ職人に受章されるもの」なんだって。
フランス文化省が所管している制度で、受章者は、フランスの大統領官邸であるエリゼ宮で授与を受けるんだって。
大変な栄誉なのだ。
日本には文化勲章があるけど、 かなりの大御所がもらうイメージだよね。
だけど、フランスのものはけっこう毛色が違うようなのだ。

まず文化勲章は文化庁で文化功労者の中から候補者を選定していて、受賞分野も、科学、芸能、美術、文学、音楽など伝統的な文化、というものが多いよ。
文化功労者自体は、将棋やアニメ・マンガ、服飾、スポーツとジャンルが広がってきているので、文化勲章もそのうち拡大するかもだけど。

MOFは、フランスの文化制度だけあって料理分野が有名なんだけど、工芸やガーデニングなど、かなり幅広い部門があるのだ。
かつ、芸術家というよりは、熟練の、或いは、神業の職人を顕彰する制度。
 日本で言えば、戦前の帝室技芸員の方が近いのかも。
 帝室技芸員も、美術界の大御所が選ばれていたけど、漆工、彫金、陶工、七宝、刀剣、篆刻、工芸など、職人も選ばれていたのだ。
今でも皇居東御苑の三の丸尚蔵館に行くと その優れた作品が見られるよ。
日本の優れた美術品・工芸品の売り込みの目的もあったと言われるのだ。
万国博覧会に作品を出すのと同じだね。

ところが、ここからがもっと違うのだ。
それは、MOFは認定制度で、三年に一度のコンクールを勝ち残った人が得られる称号であるということ。
まさに料理部門では 「料理の鉄人」みたいなことが行われているわけ。
実際には、実績を持っている人だけが書類審査をクリアできて、その後筆記試験と実技審査があるようなのだ。
フランス文化の正当継承者という意味合いもあるので、フランス語の筆記試験を通らないとダメ。
それでも、数人の日本人は受賞できているんだよね。

難関をくぐり抜けると、料理部門なら、フランスのトリコロールの襟のコックコートが着用できるんだって。
そう言えば、リヨンの偉人、ポール・ボキューズさんもそれを着ていたっけ。
驚いたことに、リヨンにはけっこうMOF取得者のお店があるのだ。
さすがだいにのとしというか、職の都というか。
やっぱりリヨンは食い倒れの街なのか。
街の雰囲気だけで言えば、パリの方が大阪っぽいけどね(笑)

2018/02/03

首位、陥落

衝撃的なニュースを見たのだ。
なんと、一世帯(二人以上)の納豆の年間購入額で、水戸市が長年守ってきた首位から陥落し、福島市にその座を奪われたのだ!
しかも、今回の調査では盛岡市にも僅差で負けて三位・・・。
福島市ではもともと給食で二週に一度は納豆が出るという地域で、納豆を食べる習慣が子供の頃からついているので、消費量が高いとのこと。
地元のスーパーでは豆腐よりも納豆のコーナーの方が大きいらしいよ。

でも、ちょっと気になったのは、なんでそもそも納豆って水戸の名物なんだっけ?、ということ。
大豆の産地でもないし。
発酵に必要な環境に優れているわけでもないよね。
そもそも茨城でも水戸だけだし。
一応、水戸納豆の由来としては、後三年の役で欧州に向かう途上の八幡太郎義家公に差し出していた馬の飼料の煮豆の残りが納豆になった、のだそうだよ。
っていうか、馬の飼料の残りが糸を引き始めていて、それを試しに家来が食べたらおいしくて、それを義家公にも献上した、というんだけど、ちょっと無理がないかなぁ・・・。

しかしながら、現在の糸を引く納豆が平安中期以降に登場して、それが主に関東から東北にかけて広がっていったのは確かなようなのだ。
もともとの「寺納豆」は今でいう「 豆鼓(とうち)」のようなもので、発酵させた後に乾燥させた、豆の形を残した塩辛い味噌のような風味のもの。
これは大陸伝来のもので、後に日本の味噌や醤油につながっていくんだけど、糸引き納豆は日本発祥と考えられていて、安価に作れて栄養が豊富なので、主に庶民の間に広まっていったと言われているんだ。

実は、納豆が水戸の名物になったのは水戸線(東北本線と常磐線をつなぐ路線)の開通から。
明治22年(1889年)のこと。
現在の「天狗納豆」の創始者である初代笹沼清左衛門さんが製品化に成功し、駅前で土産として販売したところ好評を得たため。
それまでは基本的に納豆は自家製で(江戸なんかの都市には郊外の農家で作ったものを納豆売りが売りに来ていたみたいだけど)、これを製品として販売するようになったのが画期的だったんだって。
当時の水戸周辺は小粒の大豆の産地でもあって、それも功を奏したみたい。
粒の大きな大豆の場合は、先に砕いてから発酵させる「ひきわり」納豆にされていて、江戸時代なんかはむしろそっちが主流だったようなんだけど、小粒の納豆だと豆の形が残っていて、見た目にもきれいだよね。

ここで確信が怒ったのが納豆の製法。
明治に入ってから納豆の研究が進み、それまでの一度煮沸したわらに煮豆を包んで発酵させる、という手法から、純粋培養した納豆菌を接種して発酵させる方法に変わったのだ。
もともと納豆菌は芽胞を形成することで耐熱性が高く、少し煮沸したくらいでは死滅しないんだよね。
さらに、その高い繁殖力で、他の芽胞を作る最近より早く増殖するので、温度と湿度が適切であれば、放っておいても納豆ができるのだ。
最初はそうやってできているしね(笑)
一方で、このやり方にはやっぱりこつなんかもあるわけで、失敗すると腐敗したり、アンモニア臭の強いものになってしまうのだ(>o<)
そこで、工業的に大量生産するには純粋培養した納豆菌による製法が必要だったわけ。
これなら雑菌の混入は抑えられるからね。

こうして大量に作られるようになった納豆は、安価で栄養豊富なので軍用食にも採用され、戦中戦後に広まっていったのだ。
地域的な偏りはあるんだけどね。
今では流通も拡大し、人の移動・交流も盛んになったので、関西でも納豆を食べる人がわりといるみたいだよね。
水戸市では「捲土重来」を狙っていろんなことを考えているようだけど、もともと「水戸納豆」がブランド化したのは、近代工業化の成功とマーケティングによる販路の拡大だから、その偉業を継いでなんとかしてもらいたいね。

2018/01/27

危険水域

パリでは連日の雨模様でセーヌ川の水位が上がってきているのだ。
一昨年6月にも同じように水があふれて、床下浸水とかの被害も出ているんだよね。
今回もすでに、橋の下を通る水上バスは運休(水位が上がりすぎて橋の下をくぐれないため)、ルーブル美術館の一部展示室が閉鎖など影響が出ているけど、このまま行くと、過去最大級の水位上昇になりそうなんだとか。
パリのセーヌ河岸は世界遺産にも登録されているんだけど、今はドロ川のようになっているみたいだよ。

セーヌ川はフランス第二位の長さの川で、パリ市内でも大きく蛇行しているのだ。
かつて、パリでは上水道が分かれておらず、両方ともセーヌ川を活用していたんだって・・・。
それで疫病がよく蔓延したというのだけど、古代ローマですでに上下水道の概念があったのに、遅れていたんだね・・・。
ロンドンで当時世界最高と言われた水道システムを見たナポレオンさんが改革を断行し、上水道・下水道を整備し、セーヌ川の水をくまなくても水が使えるようになったのだ!
でも、けっきょくすべての排水はセーヌ川に流れ込む仕組みで、そこは変わっていないみたい。
これが今回の水位上昇の原因でもあると思うんだよね。

東京でも、昭和の時代まではよく神田川が氾濫していたのだ。
台風シーズンになると学習院下(住所は上高田)あたりがよくあふれたんだよね。
当時は下水がそのまま流れ込み、ヘドロの川になっていたのだけど、それがあふれるんだからすごいものだよ・・・。
江戸時代は「神田上水」として飲み水の確保のために整備された川なんだけどね。
神田川は一級河川で国の管理下にあるので、国としても河岸整備などを進め、今では危険水域に到達することはあっても、まずあふれなくなったのだ。

何をしたかというと、一つは河岸の整備でこれは川幅を広げること。
でも、それには用地の問題で限界があるので、同時に進めたのが放水路の確保。
川の水の流れ先を増やしたのだ。
これで増えた水が分散されるわけ。
よく氾濫して荒れるから「荒川」という名前がついている荒川も、放水路であふれることが減ったのだ。
現在のいわゆる「荒川」は放水路で、元の流れは隅田川なんだよ。
赤羽岩淵の当たりから大きく曲がって隅田川になるんだけど、この当たりがよくあふれたので、開削して中側の方に流路を増やしたのだ。
難工事だったようだけど、その感性で東京の洪水がほぼなくなったようだよ。

そして、話は戻って、神田川の秘密はもうひとつあるのだ。
それは地課の調節池。
地下に巨大な空間があって、そこに水をためておくことができるのだ。
一時的に水をプールしておいて、徐々に流すことであふれないようにしているんだ。
有名なのは、中野区・杉並区の環七(環状七号線)下にある、「神田川・環状7号線地下調節池」。
ここは事前申込みで見学できるのだけど、地下秘密基地のようですごいとよく言われるのだ。
それと、神田川と妙正寺川が「落ち合う」新宿区落合にある「妙正寺川落合調節池」。
もともと二つの川が合流する地点で、かつ、土地が低いのでよくあふれた場所なんだよね。
なので、流路を変更してもう少し先で合流するようにするとともに、調節池を設けたのだ。

このように、東京の治水は、いろいろと対策をしているわけ。
パリではどこまで対策をしているんだろう?
ただし、これらの対策には莫大な費用がかかるから、すぐにできるわけじゃないんだけど。
パリもこういう事態が続いたのだから、何か考えなければいけないんじゃないかな。

2018/01/20

パリでも定番

パンとケーキとチーズのおいしい街、パリ。
正直、料理はイタリアの方がおいしいと思うんだよね(笑)
何より、海産物が生臭くないし! でもでも、そんなパリでも、イタリア発祥のデザートである「ティラミス」はかなり定番。
フレンチのレストランでも出るし、カフェにも必ずあるのだ。
そう言えば、パンナコッタもかなり見かけるかも。

そんなティラミスの材料はチーズ! マスカルポーネだよね。
チーズはフランスの方がおいしいと思っていたんだけど、そう言えば、モッツァレッラも含め、熟成させないフレッシュチーズはイタリアのものがおいしいかも・・・。
やっぱり気候とか風土がかんけいしているのかなぁ。
フランスの寒さと乾燥がよいのかも。

で、マスカルポーネとはよく聞くけど、実際はなんだかよくわかっていないんだよね(笑)
調べてみると、生クリームを熱してからクエン酸又は酢酸を加えて固め、布でこして水分(乳清=ホエイ)を除いたものだって。
なんだかどこかで聞いたことあるような・・・、と思っていたら、フランスのデザートの定番でもあるフロマージュ・ブランと作り方が類似しているのだ!
フロマージュ・ブランの場合は、生クリームではなく、より脂肪分の少ない乳(全乳、低脂肪乳又は無脂肪乳)を温め、そこに乳酸菌と少量のレンネット(チーズを凝固させる酵素)を加えて固め、水分を除くのだ。

一般に、クリームチーズは、クリーム又は乳に乳酸菌を加え、発酵させて固めてから、水分を除いて作るのだ。
乳に乳酸菌を加えて発酵させた発酵乳はヨーグルトなんだけど、ヨーグルトの場合は乳酸菌の株がある程度決まっているようだよ。
でも、水分を切ったヨーグルトと、乳で作ったフレッシュ・チーズは非常に似ているのだ、っていうか、ほとんど同じ。
フロマージュ・ブランはヨーグルトと言われてもわからないからね。


マスカルポーネの特徴として、フロマージュ・ブランを含むクリームチーズと異なり、乳酸発酵をさせていないので酸味が少ないのだ。
しかも、乳にレモン汁や酢を加えて作るオランダのカッテージチーズに比べると、もともとの脂肪分が多いので、その「甘み」があるんだよね。
より濃厚なクリームになるのだ。 これが高カロリーの原因なんだけど。

作りたてのマスカルポーネは乳白色。
いわゆるティラミスの色である黄色は、サバイオーネと言われるカスタードの色なのだ。
これは、卵黄に砂糖を加えて泡立て、洋酒を加えて煮詰めたものだよ。
このカスタードとマスカルポーネを混ぜたものを使うのがティラミスなのだ。
一方、マスカルポーネは、古くなると黄色くなってくるんだよね。
これは中に含まれる乳脂肪が酸化されて色がつくため。
古い油が褐色になっていくのと同じだよ。
なので、ティラミスのイメージでマスカルポーネを選んではいけないのだ!

日本では、バブルの時期に「イタ飯」が大流行し、ティラミスも一気にメジャーになったんだよね。
デニーズなどのファミレスでも定番になったし、一気に需要が増えたのだ。
ところが、フレッシュチーズであるマスカルポーネは日持ちがよくないし、そんなに大量に輸入はできなかったのだ・・・。
そこで開発されたのが、植物性油脂から作られた代用品。
「マスカポーネ」だよ。
バターに対するマーガリンの発想だよね。
この代用品は、柔らかくて加工しやすく、かつ、日持ちもするので、カップデザートに使ったりするのにはもってこい。
スーパーやコンビニに並んでいる価格の安いものはこの代用品を使っているかもしれないよ。
本物のマスカルポーネを使ったものと食べ比べてみると面白いかもね。

2018/01/13

臭みに立ち向かう

パリの魚介類はくさい!
スーパーで売っているようなものは当然として、マルシェで氷の上に並べられているようなものもかなりのにおいなのだ・・・。
フランス人はあまり魚の臭みを気にしないのかな?
日本ほど冷蔵・冷凍輸送の体制が整っていないようなので、流通の問題であるのは確かなんだけど。
なので、パリでは家で魚料理を食べる機会は減ってしまうのだ(>_<)
職場の同僚はパリでは魚は食べないとか言っているよ。

実は、真空パックに入って売られているスモークサーモンもそうなんだよね。
日本で売っているものでもくさみが気になって・・・、なんてネットの相談を見たけど、パリで売られているものは多分もっとくさみがあるよ。
一応、パックを開けてそのままでも食べられるみたいなんだけど、推奨は、ドレッシングなどであえてカルパッチョやサラダにすることなのだ。
我が家では、塩漬けイクラとともに鮭親子丼にしたんだけど、わさび醤油でカバーしたのだ。

この魚のくさみの主な原因と言われているのは、トリメチルアミンという物質。
すごく簡単な構造の有機化合物だよ。
低濃度でいわゆる「魚臭」、高濃度ではアンモニアのような悪臭になるのだ。
悪臭防止法の規制対象でもあって、特定悪臭物質に指定されているんだって!
魚の場合、浸透圧を調節するために体内にトリメチルアミン-N-オキシドという物質を持っていて、これが魚の死後に付着している細菌による還元されると、悪臭の原因であるトリメチルアミンが出てくるのだ。
なので、トリメチルアミンは魚の腐敗の進行度によって増えるんだよね。
つまり、鮮度よく流通させないと、くさくなるわけ・・・。

このトリメチルアミンは水によく溶ける物質なので、水で洗えばある程度取り除けるんだけど、魚の切り身をそのまま真水で洗ってしまうと、浸透圧の関係で切り身が水分を吸ってしまい、食感も悪くなるし、味もぼやけたものになるのだ・・・。
そこで、仮に洗う場合は海水程度の塩水を使うのがよいらしいよ。
そうすると切り身は「ぶよぶよ」にはならないのだ。
伝統的には、魚の身から水分を吸い出して「締まった」状態にする方が、身がぷりぷりし、味も濃くなるので、塩水で洗うよりは、塩を振って、水分を吸った塩をぬぐい取る、という方法がとられているよ。
水分と一緒にくさみ成分もぬけるので、塩をして少し閉めると改善するみたい。
ただし、生魚はいいとして、スモークサーモンにはあまり使えないね(笑)

浸透圧を気にせずに水で洗うには、野菜ではやった「50度洗い」という方法もあるのだ。
50度前後(48度~52度)のぬるま湯を用意して洗う、というだけなんだけど。
野菜の場合は、50度前後の水で簡便に表面の殺菌をするとともに、適度な水分を吸収させてしゃっきり、みずみずしくさせるのだ。
でも、これだと魚ではまずいのでは?、と思うんだけど、ちょっと違うみたい。
表面の殺菌でこれ以上くさみ成分が増えないようにするのは効果があるとして、ぬるま湯で洗うのは、「余計な水分を吸わせない」ようにするためなのだ。
逆説的に聞こえるけど。

魚や肉の場合、やってみるとわかるのだけど、ぬるま湯に入れると表面が少し白く、固くなるのだ。
これはタンパク質が熱で変成しているからだよ。
そうすると、水が染みこみにくくなるのだ!
ところが、この程度の熱変性は可逆的なので、ぬるま湯で洗った後によく水分をぬぐい取って乾燥させると、元の色、というか、より鮮やかな発色になるのだ。
50度前後という絶妙な温度設定により、火は通らないんだけど、表面のタンパク質は変性する、というのがポイント。
熱すぎると「たたき」にしたように表面に火が通ってしまうし、ぬるすぎると殺菌できないので要注意。

ドレッシングであえるというのも効果があって、これは「酢」が威力を発揮しているのだ。
柑橘類の果汁でも一緒だよ。
トリメチルアミンは酸性条件下ではトリメチルアンモニウム塩に酸化されるので、くさみがなくなるのだ。
これは純粋に化学的な話。
ヨーグルトにつけるというのも同様の話で、中は乳酸によって酸性になっているので、くさみがなくなるのだ。
焼き魚にレモンをしぼるというのも一理あるわけだね。

ちなみに、トリメチルアミンは熱でも飛ぶので、焼いたり煮たりするとくさみは軽減するよ。
でも、先にくさみを取ってから焼いたり煮たりした方がおいしいわけで。
ちょっと工夫をすればよりおいしく魚が食べられそう。

2018/01/06

「フジコ」はこの配列で

年末年始の旅行中に突如パソコンがうんともすんとも言わなくなったのだorz
午前中に使えていたのに、夜になったら電源が入らない!
で、ネットで調べて応急の対処法を調べてもどうにもならない(ToT)
どうも内部がいかれてしまったみたい。
というわけで、仕方がないので、フランスで新しいものいを購入しようと思ったんだけど・・・。

フランスで売っているパソコンはキーボードの配列が違う!
ものすごく使いにくい。
日本語版も含めて、英字はスタンダードには「QWERTY」配列になっているんだけど、仏語版は「AZERTY」配列という特殊なもの。
これはフランスとベルギーくらいでしか使わないみたい。
なので、わざわざ英国版の「QWERTY」配列のものを探さないといけなんだよね。

このQWERTY配列というのはタイプライターの次代に確立された配列。
英字が三段に配置されていて、一番上の段の左からQ、W、E、R、T、Y、・・・と並んでいるので、「QWERTY」と呼ばれるのだ。
いわゆる見慣れた英字配列だよ。
一方、仏語版の場合、QとA、WとZの位置が入れ変わっているので、同じように一番上の段の左から読むと「AZERTY」になるのだ。
これは仏語の綴りの場合、この配置の方が打ちやすいからなんだって。

AZERTYの場合、数字の入力もめんどうなんだ。
仏語には、英字にアクサンがつくので、そのまま入力するとアクサン付の英字が入力されるようになっていて、数字を打ちたいときにはSHIFTキーとともに押す必要があるんだ。
別にテンキーがあればまだましだけど、かなり違和感があるよね。
でも、普通のQWERTYでアクサン付の英字を打つことに比べたらこの方が楽なのかも・・・。
独語版のQWERTZは、単純にYとZを入れ替えたもの。
これは使用品度の問題で、独語の単語はZを多用するけどYはあまり使わないので、そうなっているんだって。
これならまだましかな、違和感はあるけれど。

このほかに、もっと理論的に英字入力の際の効率性を求めた「Dvorak配列」というのもあるのだ。
これは開発者の名前をとったもの。
理論的にはこの方が指を動かす距離を短くして英語が入力できるそうなんだけど、一般にQWERTYでブラインド・タッチなどを練習することが多いため、いまいち普及しないようなのだ。
また、英字入力にはよいけど、その他言語のことは考慮されていないので、英語以外の言語を使う人にはまったく関係ないしろもの。
特に日本語のローマ字入力の場合には使いにくいみたいだよ。

ちなみに、ネットスラングで出てくる「フジコる」は、QWERTY配列をもとにしたものなのだ。
キーボードの上段と中段を左から交互に押していくと「qawsedrftgyhujikolp」となるんだけど、これがローマ字入力モードだと「qあwせdrftgyふじこlp」となって、「ふじこ」が出てくるんだよね。
もともとは音声にならない悲鳴などを表現するために使われていたんだけど、いつしか、何を言っているか意味がわからない人の言葉に使われるようになり、そこから、意味のわからないことを言う、という意味で「ふじこ」が用いられるようになったのだ。

さらに、キーボードは配列のほかに、キーの数でも分類があるんだって。
欧米式のスタンダードは101キーボード、メインの文字キー47+その他11キーに、テンキー17、ファンクションキー12、その他14が入ったもの。
メインはタイプライター時代からのものだよ。
日本語版はキーの数が増えて106キーボードと呼ばれるのだ。
これは、日本語入力用にキーを増やす必要があったため。
「無変換」、「変換」、「カタカナ・ひらがな」の3つの変換キーに、かな打ち用の「む」と「ろ」を加えたもの。
英字よりかなの方が多いので、キーを増やす必要があるのだ。
ま、今はかな打ちをする人はあんまりいないので、海外でQWERTYの101キーボードを買っても多少使いづらい程度なんだよね。