2017/08/26

保存するは我にあり

夏休みにポルトガルに行ったのだ。
いやあ、魚介類がおいしい♪
フランスもわりと魚を食べる方だと思うけど、鮮度が違うし、魚の扱いもポルトガルの方が上だよね。
きちんと「だし」概念が理解できているし、何より、火の通し方がちょうどよくて、ぱさついたり、かたくなったりしていない!
そんなポルトガル料理でメジャーな食材と言えば・・・。
タラの塩漬けの干物のバカリャウ。

内臓や骨、浮き袋をとってひらいたマダラ(タイセイヨウダラ)=codを塩漬けにしてから乾燥させたもの。
フランスでよく食べるスケソウダラ(pollock)じゃないよ。
もともとミニ水分が多くて傷みが早い魚ので干物にしたようなのだ。
スペインではバカラオと呼ばれていて、イベリア半島がメインだけど、地中海沿岸の南仏やイタリアでも食べられるようなのだ。
ラテン系の明るい連中の食べるものだよ(笑)

非常に保存が利くので、大航海時代ポルトガルやスペインが船に積んでいたので、本来北半球にいるタラの産地からは遠い、ブラジルや西アフリカでも食べられているんだって。
三角貿易でも取引されていたらしいよ。
今は北欧や北米で生産されているらしいんだけど、タラがあまりとれなくなって、庶民の安い食材から少し高級な食材へと変化しているみたい。
それでも、ポルトガルではこれでもか、というくらいバカリャウの料理が多いのだ!
実際に自宅で食べているかはわからないけどね。

保存食だけ合って大量に塩が使われているので下ごしらえとして、食べる24時間くらいまでに水で塩抜きをする必要があるんだって。
途中で水を替える必要もあって、一度塩抜きするともう保存性がないので、すぐに食べないといけないみたい。
ポルトガルでは、塩抜きしたバカリャウをオーブンで焼いたり、玉子と野菜ととじたり、グラタンやコロッケの材料にしたりと、いろいろな料理に使うのだ。
それにしても、どの料理の場合もふっくらと仕上げるんだよね。
おいしく食べる方法を熟知しているよ。

イベリア半島はカソリック教徒の多い土地だけど、謝肉祭の翌日から復活祭までの40日間(四旬節)は鳥獣の肉が禁忌になるんだよね。
そうなると、魚が重要で、それでバカリャウの料理が広まったという部分もあるみたい。
嫌々魚を食べるんじゃなくて、少しでも工夫をしておいしく食べようという精神が素晴らしいのだ!
それが中南米にも伝わっているんだって。

で、このバカリャウに似たものが日本にもあるのだ。
それは「棒鱈」。
やはりマダラの干物なんだけど、塩漬けにせず、そのまま極限前乾燥させたものだよ。
もちろんそのままでは食べられないので、何日もかけて水を替えながらあく抜きをしつつ戻して、どの後に煮物などに使うのだ。
バカリャウと違って焼いたりはしないのだけど、これは塩漬けをしているかしていないかでタラの状態が違うからだろうね。
棒鱈の場合は、戻すと実がほろほろと崩れる感じになるので、ふっくらとはいかないのだ。

それにしても、ポルトガル人も日本に到着して驚いただろうね。
なにしろ、自分たちが食べているバカリャウのようなものが日本にもあったんだから!
ポルトガルとは鉄砲伝来などでもともと関係が深いけど、これでさらに親近感がわくよ。

2017/08/19

うまみの果実

フランスではいろんな種類のトマトが売っているのだ。
赤、黄色、緑、黒。
形も様々で、大玉、中玉、小玉、細長いの、扁平なの。
それぞれに特徴があって、サラダに使ったり、ソースに使ったり、使い分けがあるみたい。
中でも、加熱調理用のトマトは、そのままで食べても酸っぱいんだけど、トマトソースにしたり、煮込み料理に使うとおいしいのだ♪
これはトマトに大量に含まれるうまみ成分「グルタミン酸」のおかげなんだよね。

実は、トマトは昆布並みにグルタミン酸を含んでいるのだ。
なので、「だし」がでるんだよ。
トマトベースのスープやソースには意味があったのだ。
肉類や魚介類に含まれるイノシン酸などのうまみ成分と一緒になることで相乗効果が出るので、まさにベースにぴったりなんだよね。
これが世界中で消費される理由。
実は、このトマトからも「だし」をとることができるのだ。

わかりやすいのはドライトマト。
イメージは昆布といっしょだよね(笑)
そのまま具に使って煮込んでもいい「だし」がでるんだけど、だしだけ使いたい場合は、常温の水又はぬるま湯にしばらくつけておくとよいのだ。
できあがりの「だし」は黄色みを帯びているよ。
そんなにトマトの風味はなく、あっさり系の「だし」で和風の料理にも使えるんだって。
「だしがら」のトマトの実は、そのままオリーブ油に漬ければまた食材として活用できるのだ。
ちなみに、すでにオイル漬けのものからは「だし」はとれないので、乾燥させたかぴかぴのやつじゃないとダメだよ。

かつおだし風のイメージなのは、煮出す方法。
へたをとってざく切りにしたトマトに約2倍量の水を加え、弱火でじっくりと煮出すのだ。
あんまり強烈に沸騰させない方がよいみたいだけど、あくをとりながら5~10分煮立たせればできあがり。
やっぱりうっすらと黄色くなるのだ。
これもトマトの風味はほとんどないので、いろんな料理に使えるよ。
ちなみに、「だしがら」のトマトはぐちゃぐちゃになっているので、せいぜいカレーに入れたりするくらいかな。
うまみをとってしまっているので、トマトソースにするにはきついのだ(>_<)

最後は一番手がかかるんだけど、トマトのうまみが凝縮された「だし」をとる方法。
フレンチの手法らしいんだけど、まず、へたを取ってざく切りにしたトマトに少し塩を加えて、フードプロセッサーでピュレ状にするのだ。
これをさらしでこして、透明な液体成分をとるのだ。
これが「トマト水」。
ドライトマトの戻し汁やトマトを煮だしたものとは違って、トマトの甘味や酸味も含めて抽出されるよ(~8時間くらい)。
生だから当たり前なんだけど。
残ったトマトはもはや「ぬけがら」状態なんだけど、カレーなんかに入れて使えるみたい。
って、カレーが多いね・・・。

どの方法でもけっこうな手間のような気もするけど、トマトの底力を改めて知ることができるので、試してみるとおもしろいのだ。
日本食材がなかな手に入らない場所でも、トマトなら手に入りやすいから、そういうときは便利なはずだよね。
どこまでそんな需要があるかはわからないけど(笑)

2017/08/12

チェコの誘惑?

夏休みにチェコの首都のプラハに行ってきたんだけど、そこにおどろきのおみやげが!
なんと、大麻キャンディ、大麻クッキー、大麻入りウォッカなどが並んでいるのだ・・・。
調べてみると、チェコでは2010年に大麻所持・栽培が「非違法化」され、個人であれば5株までの栽培、大麻たばこ20本までの所持が罰せられなくなったのだとか・・・。
オランダと違って、カフェなどで吸引できる、というところまではいっていないようだけど、衝撃的だったよ。
でも、気になったのは、こういうおみやげを買ったとしても、持って帰れるのか?、という点。
日本もそうだけど、多くの国で大麻の所持等は禁止されているはずなので、まずいんじゃないかという気がするんだよね。

日本について言えば、大麻の取扱いは「大麻取締法」により規制されていて、所持、栽培、譲り受け、譲り渡し及び研究のための使用が原則禁止されているよ。
都道府県知事の許可を受けた大麻取扱者のみが、繊維や種を取るために大麻を栽培したり、研究用の大麻の栽培・使用が認められる仕組み。
以前、総選挙で「医療用大麻解禁」みたいな公約を掲げている候補がいたけど、日本では医療用の大麻使用は禁止されているよ。
米国など一部の国では認められているみたいだけど。
それと、法律を注意して見るとわかるけど、「所持」と「研究目的使用」が禁止されているけど、「個人の使用」が必ずしも禁止されていないのだ・・・。
すなわち、森に自生している大麻草の葉っぱを乾燥させて自分で楽しんで使い切った場合、「所持」の現行犯では逮捕できなくなるみたい・・・。

ここで重要なのは、この法律で規制がなされている「大麻」というのは、第一条でしっかりと定義されているということ。
「大麻」とは、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品」とされている一方で、「大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く」という除外規定もあるのだ。
これは、繊維としての「麻」と食品として使われている麻の種(七味唐辛子に入っているよ。)はこの法律の規制対象外ということなんだ。
ただし、栽培自体は規制されているので、許可を受けて大麻取扱者となった農家しか大麻草は栽培できず、そこから繊維や種を取ることもできないというわけ。
ちなみに「成熟した」とわざわざあるのは、未成熟なものにはそれなりの量の向精神性を持った成分のテトラヒドロカンナビノールが入っているから。
製品から樹脂が除かれているのは、まさにその樹脂の中にこの成分が抽出されるからだよ。
でも、やっぱり成分が多いのは、葉と花穂で、これが国際条約でも規制対象になっているんだ(葉と花穂を乾燥させたものが「マリファナ」と呼ばれるものだよ。)。

それと、この法律の珍しいところは、国外犯処罰規定があること。
規制の実効性は別として、日本国民が大麻が課金されている海外の国で「所持」や「譲り受け」をした場合、理論的には罰せられるのだ!
オランダは合法化されているから、とかいって、そこでマリファナを買って持ち歩いたらアウト。
カフェで吸引だけする分には微妙かもしれないけど・・・。
はっきり言って、勧められたものではないよね。
海外で大麻を楽しむ指南書・サイトみたいのもあるようだけど。

で、問題の大麻入りのおみやげはどうなのか。
実は、飴やクッキーは大麻の種が入っているだけで、問題がないようなのだ。
毒々しいパッケージにはしてあるけど、七味唐辛子のついたせんべいとなんら扱いは変わらないもの。
これは持って帰ってもOK。
一方で、お酒は注意が必要で、多くの場合、乾燥した葉っぱが酒に漬け込まれているため、「大麻草の製品」と見なされるのだ。
なので、これは譲り受け、所持した時点でアウト。
海外にいる間は実際上は取り締まれないから別だけど、日本に帰国しようとした場合は「所持」の現行犯になるよ。
それと、米国なんかで売られているという大麻チョコも要注意。
これは大麻から抽出したテトラヒドロカンナビノールが入っている代物らしいのだ。
そうなると、これも「大麻草の製品」に当たるのでダメ。パッケージをよく見て、種が入っているだけなのか、葉っぱは入っていないのか、抽出成分は含まれていないのかを確認する必要があるというわけ。

ジョークグッズ的に買うのもあるかもしれなけど、やっぱりこういうものには手を出さないというのがベストなんだろうなぁ。
米国のものなら英語なのでまだわかるけど、チェコ語で書かれても読めないしね。
「李下に冠を正さず」、疑われるようなことはしない、怪しいものには近づかないのがよいのだ!

2017/08/05

もはや代用品ではない

欧米の人って、実は日本人よりカフェインに弱いと言われているんだよね。
それもあってか、カフェインレスのものがメニューにちゃんとあるのだ。
デカフィネイティッド(カフェインぬき)のカフェはどこにでもあるよ。
お茶についても、ハーブティー(infusion)を飲む人も多いのだ。
で、そんな中で、地位を上げた飲み物があるんだよね。
それは「代用コーヒー」。

名前のとおり、もともとは「代用」なので、本物がないから仕方なく飲むもの、というものだったのだ。
最初に出てきたのは18世紀のプロイセン。
当時のドイツはコーヒーの産地を植民地として持っていなかったんだけど、コーヒーの消費がどんどん上がっていたようなので。
その輸入超過のせいで、かなり外貨が失われてしまうことを憂えて、時のプロイセン王のフリードリヒ大王は、コーヒーの高い関税をかけ、庶民が飲めないようにしたのだ。
ここで発展したのが代用コーヒー。

その後、南北戦争時の米国や、第一次大戦下のドイツ(また!)、第二次大戦下の日本やドイツ(またまた!)などで代用コーヒーが飲まれるようになったよ。
いずれも、コーヒー豆が手に入らなくなったので、何か別のものでもいいからコーヒー的なものを飲みたいという発想なのだ。
それにしても、そこまで人々を引きつける嗜好品としてのコーヒーの魅力はすごいものだね。
でも、やっぱりコーヒーの代用なので、本物のコーヒーが手に入るようになると廃れていったのだ。
ところが、近年の健康ブームにより、カフェインを含んでいない代用コーヒーに注目が集まるようになったよ。
特に、大豆を煎って焙煎したものから作るものは、大豆の難い栄養価とも相まって、むしろ本物のコーヒーより高く売られているそうなのだ。
なんか、これだけ見るときなこをお湯に溶かしたもののようだけど・・・。

日本でもおなじみなのはタンポポ茶。
これは19世紀の米国で考案されたもので、刻んでから水にさらしてあく抜きしたタンポポの根を更に細かく刻んでから乾燥させ、それを煎って作るのだ。
コーヒー豆にも含まれるクロロゲン酸を含んでいるので、ちょっとコーヒーっぽい風味がするのだとか。
って、最初にタンポポの根を煎じようとした人がすごいけど(笑)
第二次大戦中はドイツでかなりメジャーだったんだって。
日本でもオーガニックにこだわってマクロビのお店とかによくあるよね。
ドングリを使ったものもあって、やはりアク(渋味のもとのタンニン)をよく抜いてから、乾燥させ、焙煎するのだ。
これもやはり第二次大戦下の日本とドイツで飲まれていたって。

欧州でメジャーなのは、「焙煎穀物飲料」としての代用コーヒー。
穀物を焙煎した煎じたものの総称で、麦茶なんかもこのカテゴリーに入るんだけど、代用コーヒーの場合は、多くは大麦を煎ったものにチコリーなどで苦味を足しているんだ。
普通に粉状のお湯に溶かすだけのものが売られていて、見た目には普通のインスタント・コーヒー。
ポーランドの引火・コーヒーなんかが有名だよ。
冷戦下の時代は、ソ連に与した東側諸国はどうしても物資が不足していたので、発展したんじゃないかな、と思うんだよね。
戦後だけどものがないところだったから。

でも、これが今や健康食品として注目を受けているのだ。
妊婦さんや子どもなどにはカフェインはよくないけど、やっぱりコーヒーが飲みたいという需要もあるんだよね。
もともとカフェインに弱い欧米の人からすると、夜にコーヒーを飲みたいけど、眠れなくなっちゃうから、と言う場合にもいいし。
というわけで、「代用品」という枠を越え、カフェインを含んでいないコーヒー的な嗜好品としての立場を築いているのだ。
たぶん、今の技術もあるから、味も調えられて、おいしくなっているというのもあるんだろうけどね。