2023/02/25

るーるるるでコンコン

 最近、油揚げが好きなんだよね。
消費期限が近くなって安売りしているとつい買っちゃう。
すぐに使わない場合は冷凍で保存もできるし。
不足しがちなタンパク質をとるためにもよい食材なのだ。

で、我が国ではなぜか油揚げはキツネの好物とされているのだ。
一説には、貯蔵している米を食べてしまうネズミをとるので、古代から農耕関係で信仰されていたのだ。
その形のひとつが稲荷信仰。
これは実はよくわからない神様で、神道の世界では、ウカノミタマノミコトやウケモチノカミとされることが多いけど、もともとは仏教の荼枳尼(だきに)天とも言われるのだ。
キツネは神使(みさき)で、神様の眷属なんだけど、いつの間にかキツネ自体が神様的に扱われるようになるのだ。
で、このキツネに最初は油で揚げたネズミを備えていたらしいんだけど、仏教で肉食が忌避されるようになると、油揚げに代わったとか。
で、稲荷神社には油揚げを備えるようになり、稲荷と油揚げがくっつくのだ。


もともとの荼枳尼天の方は本来的には農耕とはあんまり関係ないんだけど、図象では野干にのっている姿で描かれるんだよね。
この野干というのはジャッカルのことなんだけど、中国にはジャッカルがいないので、代わりにキツネとされたのだ。
で、それが日本に入ってきて、稲荷信仰と集合していくわけ。
キツネに乗っている神様なら稲荷神の本地だろう、ってな具合で。
インドでは屍肉を食べる夜叉女神だったのが、豊穣を司るようになるとは・・・。


それはいいとして、稲荷と油揚げが強い結びつきになって、甘く煮た油揚げの中に酢飯を詰めたものがいなり寿司と呼ばれるようになるのだ。
酢飯を詰めずに甘く煮た油揚げをうどんの上に載せればきつねうどん。
これは明治中頃に大阪の松葉屋(今の「うさみ亭マツバヤ」)が発祥と言われるけど、すでに江戸時代から同様のものがあったという説もあるようなのだ。
もともとはうどんの付け合わせとして、酢飯を詰めていない甘く煮た油揚げを別皿で出していたのを、いつしかうどんの載せるようになったのだとか。
多くのお客さんがそうして食べているので、もうメニューにしちゃえ、ということらしい。
これが真実とすると、実はけっこう新しい食べ物だね。

で、油揚げ関係の料理は、キツネと名前がつく以外に、「シノダ」と呼ばれることも多いのだ。
これは「信太の森」のことで、平安時代の貴台の陰陽師、安倍晴明にまつわる「葛の葉伝説」から来るもの。
安倍晴明の父親の阿部保名(やすな)が信太の森でけがをしている白狐を助けるんだけど、その過程でけがをしてしまうんだよね。
すると、どこからか美女が現れ、介抱をしてくれるうちに恋仲になり、夫婦となるのだ。
その女性の名前が葛の葉で、生まれた子が後の安倍晴明、というわけで、安倍晴明の類い希なる陰陽師としての能力は人外のもの、という伝説なんだよね。
中性に成立したと言われる金烏玉兎集の注釈に出てくる話だそうだけど、これが近世になって仮名草子として広まり、「芦屋道満大内鑑」として浄瑠璃・歌舞伎になって一気にメジャーになるのだ。
でも、こっちの方はキツネがあってからのシノダなので、まずはキツネという発想がないといけないわけだよね。
キツネありきの命名なのだ。

で、思い出したんだけど、小学校の時の給食の人気メニューでこぎつねごはんというのがあったんだよね。
なんてことはない、油揚げと椎茸、タケノコにんじんを甘く似たものとごはんに混ぜ込んだもの。
炊き込みではなかったのだ。
それにしても、なぜ子ぎつねだったのか。
きつねごはんだと、甘く煮た油揚げがごはんの上にどーんとのっているイメージになるからか?
それって、包んでないいなり寿司だよね(笑)

2023/02/18

江戸で花開く

 今では日本料理の代表のような顔をしているけど、今の「寿司」って江戸中期以降に出てきたものなんだよね。
かつての寿司は近江の鮒寿司、加賀の蕪寿司のような「熟れ鮨」で、米と一緒につけ込んで発酵させることで保存性を高めたものなのだ。
これは単純に、海産物には旬があってとれない時期があるし、流通も発達していないので生のままでは遠くまでは運べない、という制約条件の中で生まれた文化なのだ。
塩漬けとか干物とかもあるけど、もう少し生っぽいものが食べたかったのかも。
発酵によりにおいはきつくなりがちだけど、うまみが増すのもあるし。

酢飯の上にネタを載せるような寿司が出てくるのが江戸時代。
大阪では箱の中に酢飯を敷き詰め、その上にネタを並べるタイプの箱寿司が出てきたけど、江戸では、俵型に固めた酢飯の上にネタを載せる江戸前寿司が出てきたのだ。
今では高級な感じを醸し出すけど、江戸時代は屋台で提供されるファストフードで、さっと出されたものを手づかみで食べる、というものだったのだ。
なので、今でも高級寿司であろうが出されたものを手づかみで食べる、という食べ方になるのだ。

このタイプの寿司の普及に一役買ったのが、安価な醤油の普及。
それまでは、醤油的な液体の塩味の調味料は味噌を造る過程で出てくる副産品の「たまり」。
味噌の醸造糧腕出てくる上澄み液だよ。
でも、これはかなり貴重なもので、超高級品だったんだけど、江戸時代に今のタイプの醤油の大量生産製法が確立され、庶民にも行き渡るようになるんだよね。
それまでは酢や塩、煎り酒(清酒に梅肉、鰹節などを入れて煮詰めたもの)などが使われていて、生の魚介類とあえて「なます」にされていたのだ。
でも、この「なます」という食べ方の場合、白身の魚だと問題なんだけど、脂の多い青魚やマグロやカツオのような赤身の魚にはあまり合わないんだよね。
青魚は味噌と一緒にたたいて「たたき」にして食べられるし、干物とか塩漬けでもいけるので問題なんだけど、マグロなんかは塩漬けや加熱調理があまり合わないので、食べようがなかったのだ(鰹は鰹節に加工していたよ。)。
なので、江戸初期は「下魚」扱いで、猫も食べない、なんて言われたのだ。

ところが、醤油が登場すると、醤油、酒、昆布と一緒につけ込む「漬け」にすることで本領発揮。
改めておいしいもの魚であることが認識され、人気の食材になるんだ。
で、江戸時代にはやった寿司ネタとしても、漬けマグロは人気のネタになるのだ。
この醤油漬けにするという調理法は、保存性も高まるので、一石二鳥でもあったんだ。
ただし、特に傷みやすいトロの部分は、そもそも漬けにしてもおいしくないこともあり、江戸時代には捨てられるような部位だったんだよね。
ま、当時の技術じゃなかなか食べようがないから仕方ないんだけど。

こうして、江戸中期からはやり始めた寿司は、赤身の魚の漬け(マグロ、カツオなど)や、昆布締めの白身の魚(タイ、ヒラメなど)、酢締めの青みの魚(サバ、コハダなど)で、生のまま、ということではなかったんだよね。
やっぱりそこは流通に問題が宛て、目の前に海がある江戸でさえ、そこまで新鮮な取れたての魚が食べられるというわけではなかったのだ。
今のような生のネタがのった寿司になるのは、さらに時代が下って、氷などで冷やしながらわりと高速で運べるようになってから。
今なんかは海なし県でも寿司が食べられるんだから、それを考えるとすごいことだよね。


ちなみに、この醤油漬けや酢締めの場合は、多少保存性が高まるというだけで、寄生虫対策にはなっていないんだよね
当時どこまでアニサキスが広がっていたかは不明だけど、そのリスクはあったのだ。
寄生虫リスクのさらに高いサケ・マス類なんかだと、蝦夷地で発達した「ルイベ」に加工することで、規制ちゅを死滅させていたんだ。
極寒の中につるして冷凍し、それを溶かしてから食べることで多少の水気も抜けて味も引き締まる、というわけ。
さすがに本土だとそこまで寒く名からこの方法は採れなかったわけだけど。
なお、越中富山名物の「鱒寿司」は伝統的には川に遡上してきたサクラマスを使うんだけど、塩漬けにしたものを酢飯に載せりので、実は寄生虫リスクはあるのだ・・・。
今は寄生虫フリーの養殖物を使ったりしているみたいだけど。

2023/02/11

日支センとは呼ばないで

 ここのところ、TVのCMで、「法律関係で困りごとはないですか?」みたいあフレーズが聞こえてきたので、てっきり法律事務所や司法書士事務所のCMかと思ったんだよね。
借入金の過払い金請求やら、B型肝炎給付金やら。
アディ○レなんてよく耳にするよね。
でも、それは違ったのだ!
広告主はなんと、法テラス。
そう、公的団体だったのだ。
そのわりにCMがうさんくさい・・・。

法テラスこと日本司法支援センターは、総合法律支援法に基づき設立される法務省所管の法人。
通常、「特別の法律に基づき設立される法人」というと「特殊法人」になるんだけど、ここは違うのだ。
「独立行政法人に準じる法人」という扱いなんだよね。
でも、いわゆる独法の枠から少しはみ出ているところがあるので、「準じる」となっているんだ。
その要因は業務の中身。
「総合法律支援」という建て付け上、その業務内容が行政にとどまらず一部司法の要素が含まれるので、政府から独立した民間の運営手法を導入した法人で一部の行政事務を担う、という独立行政法人の枠組みを逸脱するわけ。

法テラスの主要業務は、次のようなもの。
まずは法律相談の総合窓口。
これは地方自治体がかつてはよくやっていた「無料法律相談」を常時できるようにしたようなもの。
訴訟対応や和解案の調整などの具体的な法律相談まではしないんだけど、困りごとを聞いた上で弁護士を紹介したり、使えるお役立ち制度を紹介したり、ということをしているのだ。
個別事案の中身の紹介はその後。
で、こういうところに来る人は、あまり裕福でなく、弁護士への相談料をいくらでも払える、という人出はないことが多いので、この先の支援として、弁護士・司法書士へ支払う費用や訴訟費用の立て替えてのも行っているよ。なので、相談した後で、後は個別に弁護士なりに相談してくださいね、といきなり手を引くわけではないのだ。
これは多くの人が法律支援を受けられるという点で重要で、特に、司法過疎地域と言われる、弁護士や司法書士が極めて少ない地域では重要なお仕事になるよ。

ここまでは民事の話だけど、刑事についても役割があるのだ。
金銭的余裕のない被告人・被疑者については国選弁護人制度があるけど、ここにも関わっているんだ。
裁判所が、その被告人・被疑者に国選弁護人をつける、と決めたとき、法テラスに弁護士の候補を指名するよう通知するんだ。
つまり、法テラスが選んでくれるわけ。
で、その国選弁護人tの契約や報酬の支払いも法テラスがやってくれるのだ。
自分がそれを体験することはなかなかないと思うけど、いろんなところで法律に関する手助けをしてくれるわけ。

で、そういう業務なので、当然業務内容について何か判断をするときは、裁判所の意見が反映される仕組みになっているんだ。
ここも普通の独法との違い。
具体的には、
①理事長・監事の任免に当たってはあらかじめ最高裁判所の意見を聞く。
②法テラスの業務実績の評価や中期目標・中期計画に意見を言う役割の評価委員会には必ず最高裁判所の推薦する裁判官を一人入れる。
③法務大臣による中期目標の作成や中期計画の認可に当たってはあらかじめ最高裁判所と評価委員会の意見を聞く。
などなど。
こうしてみると、最高裁判所っていわゆる裁判所的な仕事だけでなく、けっこう事務的な仕事が多そうだよね・・・。

で、なんでCMをやっているのかというと・・・。
霊感商法の被害者救済みたい。
そう、例の「つぼ」案件。
でも、なんだかこのCMがうさんくさいんだよなぁ(笑)
肝いりでやっているのだろうけど。

というわけで、法テラスはいろいろと便利なところなのだ。
何か困ったら、まずは相談して見よう。
ちなみに、都心部では、新宿や上野にあるよ。
全国各地に地方事務所や地域事務所、出張所などを置いているので、相談したい人は公式ウェブサイトをクリッククリック。
https://www.houterasu.or.jp/

2023/02/04

ねばーる

 最近はスーパーやコンビニですり下ろして味付けしてあるとろろが売られているよね。
これがけっこう便利。
1人前のとろろそばとか山かけ丼とかって、とろろ芋をすり下ろすところからはなかなかなしないから。
ボクはこどものころからけっこうとろろが好きなので、時々買っているのだ。

で、よく知られてはいるけど、2種類のとろろ芋があるのだ。
ひとつは自然薯。
最近は栽培もできるようになったらしいけど、基本は秋以降に山に堀に行くのだ。
縦にまっすぐと伸びているので、掘るのが大変(>_<)
途中で折れないように掘るのも一苦労で、それで高級品なんだよね。
水分が少なめで、すり下ろすと極めて粘性が高く、とろっというより、どろっとした感じ。
多めの出汁で溶かないと伸びずに、スライムのようにかたまり状になるよ。

この自然薯は生物種としてはヤマノイモと呼ばれるもので、なんと日本原産。
記紀にも出てくるので古代から日本人に親しまれてきているのだ。
ちいっても、それは高貴な人だけ。
芥川龍之介の「芋粥」に出てくる芋がこのヤマノイモで、高級品だから貧乏貴族はなかなかな食べられない、というあこがれのものなのだ。
ちなみに、あの話に出てくる芋粥は米と芋を一緒に炊いたものではなくて、ヤマノイモを短冊切りにしたものを甘葛(あまづら)の煮詰め汁(サトウキビがまだ入ってきていない当時としては最高級の甘みのあるシロップ)で炊いたもので、お菓子に近いものだそうだよ。
砂糖がない世界なので、発芽玄米や麦芽から作る水飴や干し柿以外に甘いものっていうのはそうそうなく、貴重なものだったのだ。
削り氷(ひ)に甘葛をかけて、なんてかき氷もあったことが枕草子に出てくるけど、こっちは氷も貴重なので、最高級品だったようだよ。

これと似て非なるものが山芋。
生物種としてはナガイモなのだ。
中世以降に大陸から入ってきた、と言われているけど、現在日本で栽培されているナガイモは中国には全くないので、日本に来てさらに品種改良されたものが食べられているのか、大陸三と似たものが日本にもあったのかはよくわからないみたい。
こちらは畑で栽培するのが比較的容易で、スーパーなんかで売られているとろろ芋は基本はナガイモだよね。
水分が多めで、すり下ろしてもさらっとしているので、こちらは濃いたれで溶いた方がよいのだ。
また、そのまま千切りにして鰹節と醤油をかけて、なんて食べ方もされるよね。
自然薯だとそれはきついのだ・・・。

ナガイモにも種類があって、棒状に長く伸びたものがよく出回っているけど、手のひら状に広がったものもあるのだ。
こちらは銀杏芋とか、関東でヤマトイモと呼ばれるもので、いわゆるナガイモより水分が少なめで粘りけが強く、とろろ汁に向いていると言われるよ。
関西にはつくね芋とか大和芋と言われているごつごつしたかたまり状の芋もあって、こちらはかなり自然薯に近く、粘りけが強いので、和菓子材料に使われるみたい(薯蕷饅頭やかるかんなど)。
ちなみに、奈良の伝統野菜にもなっているのだ。

どちらの芋もヤマノイモ科で、これはいわゆるヤムイモの仲間。
ヤムイモは熱帯から温帯にかけて広く分布するけど、多くの場合は火を通して食べられるんだよね。
熱帯産のヤムイモなんかはバナナの葉に来るんで比の中に入れて蒸し焼きにするとほくほくになるのだ。
でも、これらのいもは珍しく生食されるんだよね。
かつてはアミラーゼを多く含み、デンプンが酵素の作用で分解されるので吸収されやすく生食可能、とか言われていたんだけど、最近になって、これってあんま関係なくない?、疑問視されているみたい。
多くの場合は生食しづらい理由があって、熱で分解されるような苦み成分がある、熱で変性させないと消化できないなどなんだよね。

こんにゃく芋にいたっては、すり下ろして熱を書けてさらにアルカリ性にしてかためないと食べられないのだけど、それでもカロリーはゼロなんだよね・・・。
おいしいからいいけど。
こんにゃく芋がそのまま食べられないのはシュウ酸カルシウムを多く含むからだけど、自然薯でかぶれるのもこのシュウ酸カルシウムのせい。
なので、シュウ酸カルシウムが多くなければ、生でもなんとかいけるのだ。
あとはそのまま食べておいしいかどうか。
ということは、ナガイモや自然薯の場合は、シュウ酸カルシウムが多くなく、かつ、そのまま食べてもおいしかった、ということなんだろうね。