2015/12/26

米国の「はやぶさ」

日本で「はやぶさ」というと、加藤隼戦闘隊、じゃなくて、新幹線や小惑星探査機を思い浮かべるよね。
特に「リュウグウ」に向けて地球スウィングバイを成功させたので、宇宙の「はやぶさ」が熱いのだ。
でも、実は、米国にも宇宙の「はやぶさ」があるんだ。
それは、スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ社、通称「スペースX」社が開発したロケットの「ファルコン」。
これまでの米国のロケットは、米国航空宇宙局(NASA)か国防総省(DOD)のプロジェクトとして開発されたものがほとんどだったんだけど、最近は民間主導のロケット開発が活発化してきているんだよね。
さらに、民間開発と言っても、軍用技術の大陸弾道弾(ICBM)を改良したようなものが多かったんだけど、このスペースXのファルコンは、全く新規の民間開発なのだ!

このスペースX社の設立者は、インターネット決済でおなじみのPayPalのもととなったX.comを始めた実業家のイーロン・マスク氏。
スタイリッシュな電気自動車を送り出すテスラ・モーターズの会長としても有名なのだ。
テスラ。モーターズは、赤字覚悟ですべての特許をオープンにし、電気自動車の普及に貢献しようとしていることでも有名だよね。
そのように、マスク氏は普通の人が想像もできないようなビジネスプランを持っているのだ。
それが宇宙技術で結実したのがスペースX社というわけ。

スペースXのロケットであるファルコンは、燃料にケロシン(高精度のガソリン)を使っているんだけど、これは技術的には伝統的なもの。
日本のH-IIAロケットや退役したスペースシャトルでは、液酸液水といって、液体水素を燃料に使うんだけど、これは技術的には難しいし、ロケット・エンジンの構造も複雑になるんだ。
そうなると、作るのにコストもかかるわけ。
そこで、十分に実績が積み重ねられてきたケロシンを燃料とするロケット・エンジンの「枯れた技術(十分に使い込まれてトラブル対応も含めて確立された技術)」を使った、ものすごくシンプルな構造のエンジンを開発したのだ。
それがファルコンに搭載されているマーリン・エンジンだよ。
その開発に当たっても、軍やNASAの技術者を呼んでくるのではなく、優秀な大学院生をスカウトしてきたというのだから、ここもそれまでの宇宙開発の常識から外れているのだ。

スペースXは、エンジンを1基だけ搭載した小型のファルコン1ロケットでエンジンの技術実証を行い、今度は、エンジンを9基クラスタリングした大型のファルコン9ロケットにつなげたのだ。
ファルコン9はすでに国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送も成功させるなど、実績も出しているのだ。
でも、何よりすごいのがそのコスト。
ロケット1機あたり100億円をきる価格で、これは宇宙業界としては信じられない数字なんだって。
日本のH-IIAががんばって100億円くらいだからね。
さらに、第一段ロケットを回収することにより、さらに安くしようとしているのだ。

サンダーバード3号のように、一度発射したロケットが再び垂直に着地するんだよ!
そのために「脚」もついているのだ。
これをつけること及び帰り分の燃料をとっておくために、ロケットの打上げ能力は低下するんだけど、価格がぐっと安くなるので十分に競争力がある、という考えなのだ。
これまではスペースシャトルのように有人機の上段が再使用されることはあったんだけど、一番コストがかかる割に使い捨てになっていた第一段をリサイクルしようというのがすごいのだ。
誰もが構想はしていたんだけど、通常に海に着水してしまうので回収も大変だったものを、狙った場所に落とすだけじゃなく、うまく着陸させることについに成功したんだからすごいよ。
しかも、洋上のプラットフォームという戻り先が移動できるのとは違い(これまではこっちで試験をしていたのだ。)、今回は地上の射場に戻しているのだ。
これは宇宙技術の大革新。

ち なみに、スペースシャトルのオービターは一度宇宙空間に出て、また大気圏を通って戻ってくるため、摩擦熱による損傷・摩耗が激しいのだけど、ファルコン9 ロケットの場合は、通常よりも低い高度である80~90km上空で第一段を切り離し、あとは第二段ロケットで目的の軌道まで届けるのだ。
打上げ能力は大きく低下するけど、熱の影響がかなり抑えられるので、第一段を再利用しやすくなるのだ。
できない理由を並べるのではなくて、どうやったらできるかを考える、というのを実行した結果、そういう結論になったんだよね。
それが実現できるところがすごい。

日本もさらに効率的なロケット開発を狙っているけど、ここまで来ると大きく発想を変えないとね・・・。
米国では、次期の有人ロケットに向けたロケット開発はしているけど、現時点ではISSに宇宙飛行士を送るのはすべてロシアのロケットに頼っている状況なのだ。
しかも、衛星を打ち上げるロケットにしても、アトラスVのエンジンはロシア製なんだよね。
そういう状況下で、多少政府の支援を受けているとはいえ、民間主体でここまでやったスペースXは、確かに宇宙業界を変革しているのだ。
この先、想像もつかないようなことがさらに起こるのかも。

なお、このロケットの名前の「ファルコン」は、マスク氏が好きだった映画のスターウォーズに出てくる「ミレニアム・ファルコン号」から来ているんだって。
ハン・ソロの「銀河最速」の宇宙船だよ。
でも、スターウォーズの新作が公開されるタイミングで、ファルコンロケットが大きな一歩を踏み出したというのはすごいタイミングだよね。

2015/12/19

ぬらぬらコーティング

非常に興味深いニュースを見つけたのだ。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/121100361/
米国のアトランタ動物園の研究者が、長年謎とされてきた、ヘビの生態の手がかりを見つけたんだよね。
それは、ヘビのうろこの表面が資質でコーティングされていて、それが潤滑油となってヘビの運動を支えていると言うこと。
ヘビは脚がないのに地上をなめらかに移動し、木にも登り、とかなり運動性が高いのだけど、そこに一役買っているようなのだ。

ヘビが前進する方法にはいくつかあるんだけど、代表的なのは「蛇行」。
漢字だとそのままだよね(笑)
体をくねらせながら前に進んでいくのだけど、このとき、腹側のうろこが大きな役割を果たしているのだ。
鱗と鱗の間はかなり伸縮性があって、しかも、うろこはある程度角度をつけて立てることができるようになっているのだ。
これを利用して、うろこを少し立ててエッジにしてひっかけ、そこを「足がかり」にして後方の体を引き寄せるのだ。
まっすぐのままだと、体を引きつけるときに左右にぶれてしまってうまく進めないので、S字型に体を曲げておくことで、効率よく前進ができるようになるのだ。
まっすぐな時と比べて、進行方向と直行する方向でエッジが効かせやすくなるしね。

ミミズも同じような仕組みで、体表面に生えている剛毛を引っかけて、体を伸び縮みさせて前に進むのだ。
伸び縮みだけだと前にも後ろにも進む可能性があるのだけど、逆行しないように剛毛をスパイクのように滑り止めにしているのだ。
ミミズだけでなく、アザラシも似たような原理を使って前に進むのだ。
ひれ状の前足を使って前へ進もうとしても、滑り止めがないとうまく氷の上を進めないよね。
そこで、アザラシの毛皮は前方向にはなめらかに滑るけど、後ろ向きには引っかかるように毛が生えているのだ。
これを使って、スキー板の裏にアザラシの毛皮を張って、後ろ向きに滑らないようにしたものもあるんだよ。
これは山岳スキーで板をはいたまま山を登るときなんかに使うし、山岳警備隊が銃を撃つときも、普通のスキー板だと反動で後ろに滑ってしまうので、これを使うのだ。

そんなわけで、この滑り止めの機構についてはヘビでもよくわかっていたのだ。
ところが、問題はその先。
ヘビはいろんな場所をするするとなめらかに移動するので、このうろこの表面はすべすべでないと困るんだよね。
で、実際に、背側のうろこよりも腹側のうろこの方がすべすべであることはわかっているんだけど、うろこをいくら調べても、違いがわからないでいたのだ!
は虫類のうろこはケラチンなどの硬いタンパク質からなる角質化した皮膚なので、人間で言えば爪のようなもの。
磨けば光沢も出て、すべすべになるけど、ヘビのように年がら年中這いずり回っていれば、表面に細かい傷ができて滑りにくくなるはずなのだ。
ところが、世の中のヘビはみんなぬらぬら、すべすべなんだよね。

そこで、何かあるに違いないと、米国の研究者は、吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)という、冥黒エレクトロニクスの分野で表面構造を解析する手法で調べたのだ。
物体にX線を照射し、その表面でどの波長のX線が吸収されたかをみることにより、その表面にどんな物質があるのかを探る手法なのだ。
エレクトロニクス分野では、薄膜がきちんとできているかどうかの検査などに使われるんだよ。
この実験では、カリフォルニアキングヘビ(コモンキングヘビの亜種)の脱皮した皮で調べたところ、うろこの表面がナノメートルの厚さで脂質でコーティングされていることがわかったのだ。
どうも、背側と腹側では脂質そのものが違うだけでなく、腹側ではより規則的に脂質の層が積層されているとのことで、より丁寧に脂質が「重ね塗り」されている状態だったようなのだ。

両生類や軟体動物などでは、体表面が粘液で覆われている例がよく知られているけど、これは触ったときにその粘液がつくからわかるんだよね。
ヘビの場合は、手で触ったくらいではこの脂質ははがれず、手にもつかないので、誰もコーティングがなされているとは気づかなかったのだ!
実際の生体でも、地を這ったり、木に登ったりといろんなところにこすりつけてもはがれないわけだから、当たり前と言えば当たり前かもしれないのだけど。
まだどんな物質かはよくわからないし、どうやってうろこ表面を覆うのかはよくわからないけど、マニキュアのトップコートのように、うろこに光沢となめらかさを与えるとともに、物理的な保護もしているのだ。

これまでヘビの動きはよく研究されていて、軍事用とか災害レスキュー用にヘビロボットが開発された来ているんだよね。
でも、このコーティングに着目した人はいなかったのだ・・・。
ヘビの謎がまた一つわかったというだけでもおもしろいのだけど、これがどんな物質かわかれば、性能の高い潤滑剤として人工関節などに使える可能性もあるんだよね♪
生物学的だけでなく、工学的にもおもしろい発見なのだ!
とりあえず、コーティングされていることはわかったので、おそらく、ヘビの皮をいろんな溶剤につけて、この脂質を抽出・同定する研究が始まるんだろうなぁ。

2015/12/12

五年の紆余曲折

日本の金星探査機「あかつき」が、5年遅れで金星を周回する軌道に投入されたのだ!
実は、打ち上げ当時、メインスラスタの不具合により軌道投入に失敗していたんだよね・・・。
その後、人工惑星として、金星の内側を回る楕円軌道で太陽の周りを公転していたのだ。
ところが、このあかつきの軌道は、金星よりちょっとだけ早い周期で好転しているんだけど、楕円軌道なので、ちょっとだけ金星の軌道の外側を通るところがあるんだよね。
この外側を通過するタイミングでは、金星より速度が遅くなるので、一度周回遅れにした金星が近づいて来るのだ。
で、この外側を通るタイミングで金星がごくごく近傍に来たのが、今週の7日のタイミング。
金星が追いついたと同時に、「あかつき」を減速させてあげると、金星の周りを回る軌道に移れる、というものなのだ。
そのタイミングを合わせるために、何度か細かい軌道修正をしつつ、5年の歳月を待ったんだよね。

この「あかつき」、プロジェクト名はPLANET-Cというんだけど、Cがあるから、AもBもあるわけ。
PLANET-Aはハレー彗星を観測しに行った「すいせい」。
先行して打ち上げられていた「さきがけ」とともに、無事に欧米と共同のハレー彗星観測ミッションを遂行したのだ。
その次のPLANET-Bが火星探査機「のぞみ」。
「のぞみ」も火星への軌道投入がうまくいかず、さんざんあがいたのだけど、最終的には火星への軌道投入を断念し、火星近傍を通過して終わったのだ・・・。
でも、このときの経験が、後の小惑星探査機「はやぶさ」の運用に貢献しているんだよね。
そして、もちろん、今回の「あかつき」の5年遅れの軌道投入成功にもこの経験が活きているのだ。

「あかつき」のメインスラスタは耐熱性に優れたセラミック製だったんだけど、これは宇宙探査機には初搭載のものだったんだよね。
それがうまくいかなかったのだ(>o<)
でも、「はやぶさ」の運用でかつてやったのと同様に、姿勢制御用のスラスタを最大限駆使して、徐々に徐々に軌道を制御して、軌道を修正していったのだ。
その集大成として、7日に20分間のスラスタ噴射を行い、無事に金星周回軌道までたどり着いたわけ。
このためには膨大な量の軌道計算が必要で、綱渡りの探査機のコントロールが必要だったのだ。
新聞などの報道でも、軌道計算をした女性研究者が取り上げられているよね。

今回投入した金星周回軌道は、高度300kmから80,000kmの高度で30時間周期で金星を周回する楕円軌道。
かなりつぶれた楕円だけど、金星の気象観測などを目的としている「あかつき」は、様々なデータをとりたいので、高度が大きく変わる楕円軌道からいろんな観測をしようというわけなのだ。
金星には多くの探査機を遅れないからね。
当初計画では、欧州の金星探査機がほぼ同時期にいたので、共同観測もできたはずなんだけど・・・。

とりあえず軌道投入は無事に終わって、調べている限りでは観測機器も大丈夫そうなんだけど、ここから2年間の観測がしっかりできるかどうかには不安があるのだ。
金星は地球より太陽に近いだけあって熱条件が厳しくて、太陽光を浴びている間は超高温になり、惑星などの影に入るとものすごく冷えるのだ・・・。
5年間金星のほぼ内側で太陽の周りを公転していたんだけど、この間にもかなり厳しい熱条件にさらされていたので、不安が残るんだよね。
一番耐熱性が高い面を太陽に向けていたらしいけど。

何はともあれ、金星の観測はできそうなので、活きている観測機器を最大限活用してデータをとるしかないのだ!
一度の失敗を乗り越えて、5年の臥薪嘗胆の末に金星までたどり着いて美談になっているわけだけど、やっぱり観測できてなんぼの世界だからね。
先行して取得されている欧州のデータと合わせて、なぜ地球には水と生命があるのに金星や火星には水も生命もないのか?、などの疑問の解明に貢献することが期待されるのだ。
前進日焼けして疲労困憊の状態だろうけど、無事に金星観測ミッションも成功させてもらいたいものなのだ。

2015/12/05

ドライなやつら

季節が冬に移り変わってきた!
どんどん寒くなってきているよね・・・。
でも、この時期にも少ないながら楽しみはあるんだよね。
それが干し柿。
子供の頃から好きなんだよねぇ。
もちろん、生のまま食べる柿もよいのだけど、干し柿には干し柿のよさがあるのだ。

日本でドライフルーツと言えばなんと言っても干し柿が筆頭で、あとはレーズンやら干し杏、ドライマンゴーが思い浮かぶくらい。
でも、海外では、干しイチジクがもっともメジャーなのだ!
なんと言っても、ローマ帝国時代に世界展開されているという歴史だからね。
中東が原産と考えられていて、すでに古代メソポタミアの時代に栽培記録があるという、世界最古の栽培品種なんだよ。
生食ももちろんするけど、乾燥させることで保存性が高くなり、ねっとりとした独特の甘さもあって、古代から愛好されてきたのだ。

レーズン(干しぶどう)もそうなんだけど、欧州や西アジアはかなり乾燥した気候なので、熟した果実を収穫しないでそのまま放っておいても腐ることなく「ドライフルーツ」化することがあるんだよね。
おそらく、それをたまたま目にして、食べてみて、加工するようになったと考えられているのだ。
干して水分を抜くことで、保存性を高め、甘みが濃くなるのだ。
プルーン(セイヨウスモモ)やクランベリーのように、生のままだと酸味が強すぎるものも、干すことで甘みが凝縮され、おいしく食べられるようになるんだよね。
デーツ(ナツメヤシ)のように、基本的に乾燥させてから食べるものもあるのだ。

これは東アジアの干し柿とは全く異なるんだよね。
おそらく発見は同じようにたまたま木になったままの状態で乾燥しているのを食べてみた、ということなんだろうけど、干し柿の場合は、食べるために乾燥させているのだ。
すなわち、干し柿にするのは基本は渋柿。
生では渋くて食べられないものを、乾燥させるという加工によって食べられるようにしているのだ。
この柿渋の正体は水溶性タンニンなので、これは不溶性タンニンに替えられれば「渋抜き」ができるわけで、焼酎に漬けたりしてもいいわけだけど、誰でも簡便にできるのが乾燥して干し柿にすることだったのだ。

ただし、東アジアで気をつけないといけないのは湿気。
湿度が高いので、気をつけないと腐ってしまうのだ・・・。
なので、雨に濡れないように、でも、風通しがいいように、軒先につるす、というのが日本の伝統的な干し柿の製法だよね。
さらに、ある程度水分が残った「ソフト」な状態で食べるために、半乾きのものを硫黄で燻蒸して腐敗しないようにする工夫も生まれたのだ。
これが「あんぽ柿」だよ。

西洋のドライフルーツの場合は、保存性を高め、水分を抜くことで軽量化して流通しやすくする、というのが基本。
ジャムにしてもよいのだけど、むかしは砂糖は貴重品だったわけだし、何より、ジャムだと水分が多くて重いので、流通には向かないのだ。
乾燥した気候で簡単に乾燥させられるので、ドライフルーツというのは作られるべくして作られた加工食品なわけだよね。
古くは中東から欧州まで陸路で運ばれ、後には大航海時代に貴重な食料として世界に運ばれたのだ。

中国の場合は、シルクロードを通じて西側のドライフルーツもあったし、独自の文化としての干し柿やクコの実などのドライフルーツもあったわけ。
ちなみに、中国の干し柿は丸くつぶれていてかぴかぴに硬いみたい。
つるすのではなくて、籠に並べて押しつぶしながら日干しにするからみたい。
できあがった干し柿は「柿餅」と呼ばれるのだけど、中国では円盤状に加工された食品を「餅」と呼ぶようなのだ。
さらに、サンザシのように、果実をすりつぶして砂糖や寒天と混ぜて棒状に固めたものまであるのだ。
サンザシの場合も円柱状に固めて十円玉大に輪切りにしたものは「山査子餅」と言うらしいよ。

現代では季節を問わずにいろんな野菜や果物が手に入るけど、むかしは乾燥させる、漬け物にするなどの加工食品にしたり、室の中や土の下で保存するなどの工夫で乗り切っていたんだよね。
でも、そうした工夫の中に、おいしく食べるこつみたいなのもあって、それは料理として今も生きているのだ。
こういう先人の知恵には驚かされることが多いし、いかに人類が生きるために、食べるために工夫を重ねてきたかがわかっておもしろいのだ。

2015/11/28

晩秋の芳醇

今年はあたたかいからか、紅葉はいまいちのようだけど、着実に秋から冬に移り変わろうとしているのだ・・・。
寒いのが苦手なので、この季節はもの悲しいんだよね・・・。
で、そんな季節に出てくるのが洋梨。
「梨」とは言いながら、夏の終わりに出てくる和梨とはものが全く違うよね。
生物種としては極めて近縁のようなんだけど。

果物としての梨の原産は中国で、そこから東西に分かれたようなのだ。
東に残ったものは東アジアで食べられている、まるい形のしゃりしゃりした梨。
西に渡ったものは、ひょうたん形のねっとりした梨。
欧州で梨が広まったのは、ローマ帝国が広めたからなんだって!
ということは、梨もシルクロードを経由して欧州にもたらされたのだ。
全く性質の異なる果物になっているけどね。

和梨と洋なしの最大の違いは、その食感。
和梨にはリグニンに富んだ硬い細胞壁を持つ「石細胞」というのが果肉全体に分布していて、これがしゃりしゃりした食感、ざらざらした舌触りのもとになっているのだ。
他の果物だと、中の柔らかい果肉を保護するために皮下にあるものらしいんだけど、和梨の場合は果肉全体に広がっているんだって。
洋梨の場合はこの石細胞は少ないので、そういう食感にはならないのだ。
でも、この食感のせいで、和梨は英語では「sand pear(砂の梨)」なんて言われているんだよ・・・。
あのしゃりしゃり感とみずみずしさがよいのに!

実は、洋梨も収穫した手の時点ではがりがりした食感らしいのだ。
しかも甘くない。
これは、果肉中にデンプンの形で栄養が蓄えられているため。
果肉の2%ほどらしいけど、これが硬い食感を生み出すとともに、その分だけ糖が少なく、甘みもなくなっているのだ。
なので、洋梨は収穫してから「追熟」という過程が必要なんだよね。
バナナやメロン、キウイなんかも同じだけど、成熟ホルモンでもあるエチレンガスの作用により、果肉内のデンプンがブドウ糖や果糖に分解されて甘みがぐんと増すとともに、ビタミン類も増え、さらに、芳香成分も出てくるのだ。
メロンや洋梨が熟してくると芳醇な香りになるのはこのためだよ。
洋梨として日本でもっとも流通しているラフランスはあまり色が変わらないけど、洋梨の多くは熟してくると果皮の色が緑から黄色に変わるのだ。

リンゴなんかだと、最初から糖類が栄養として蓄積されているので、栄養を蓄えきった時点=食べ頃という熟し過多なので。
一方で、こういう追熟が必要な果物は、いったん栄養がデンプンで蓄積され、それがさらに分解されて甘みと方向が出てくるので、栄養を蓄えてからしばらく経過した時点=食べ頃という熟し方なんだよね。
これを「後熟」というらしいけど、一気に熟した果実を提供するのではなく、五月雨式に熟した果実を提供するための戦略だとか、リンゴなどの果実と時期をずらして果実を提供するための戦略だとか考えられているのだ。
確かに、和梨に比べて旬がかなり後方にずれているので、同じ梨の中でもしっかり棲み分けができているよね。

この追熟においては、果肉の肉質も変化するのだ。
熟す前はデンプンの硬い塊があってがりがりするんだけど、これはちょうど硬くなったおもちの小さな粒が果肉の中に広がっているようなもの。
硬くなったデンプンというのは食感が悪いんだよね(笑)
追熟していく過程ではこのデンプンがなくなるので、がりがりの素は排除されるのだ。
さらに、細胞壁としてがっちり固まっていたペクチンが溶け出してくるので、ねっとりとしたとろみを与えるのだ。
ペクチンは果実ジャムのとろみの正体だけど、まさに天然のジャムのようになるわけ。
リジッドな細胞壁が壊れて、果肉中にとろみ成分が広がるので、リンゴなどの果実とはまた違ったねっとり感になるのだ。
柿もペクチンが多いことで知られる果実なんだけど、やっぱり完熟するとねっとりとするよね。

日本に西洋なしが導入されたのは明治期らしいけど、なかなか日本の気候に合わず、山形などの一部の寒冷地にのみ定着したようなのだ。
今でもラフランスの一大産地は山形だよね。
生食の洋梨が出回るようになったのはそれこそ平成に入ってからで、それまではシロップ煮の缶詰などの加工品が多かったのだ。
これはやっぱり流通技術の問題とかあるのかな?
今ではいったん4度に冷やしてから、20度で追熟させるらしいんだけど、そういうのが適切にできるようになって、店頭に並ぶときに食べ頃かその少し手前にちょうどもっていくことができるようになったのが大きいのだろうなぁ。
こうしたボクたち日本人も、甘くてねっとりした洋梨

2015/11/21

つわものどもが夢の跡

すったもんだがあったけど、国立競技場が更地になったのだ。
いやあ、オリンピックが近づいてきたねぇ。
まだ新国立競技場がどうなるかはわからないけど(笑)
それより前に、来年のリオデジャネイロのオリンピック施設がまだ完成していない方が問題かもしれないけど・・・。

実は、ここにオリンピックのメインスタジアムが建設されるのは2回目!
そう、前の東京オリンピックに合わせて前の競技場が建設され、それを補修しながら使っていたのだ。
東日本大震災でもひびが入ったり、老朽化も進んでいたんだけど、それ以上に、メインスタジアムに必要な収容人数が足りないので、建て替えることになったんだよね。
建て替えまでしなくても、なんて意見はあったけど、メインスタジアムだし、やっぱり開催主体は新しく建設したいよね。

さて、一般に国立競技場と呼ばれている施設は、正式には、国立霞ヶ丘陸上競技場というのだ。
神宮にあるので渋谷区と思われがちだけど、住所は新宿区霞ヶ丘。
ちょうど新宿区と渋谷区にまたがっている地域にあるんだよね。
江戸時代、このあたりは譜代大名の青山家の下屋敷があったところで、内藤家と並んで小大名でありながら広大な土地を江戸郊外に持っていたのだ。
内藤家は新宿・代々木・四谷一帯、青山家は青山・渋谷一帯だよ。
地区名の青山も青山家から来ているのだ。

明治維新後、大名の下屋敷は明治政府に接収され、新政府の用地になったのだ。
で、このあたりは陸軍の青山練兵場になったんだよね。
近代式軍隊を作り上げるため、代々木や青山などに広い練兵場が設けられたのだ。
でも、明治天皇が崩御して、この地で大葬儀が行われたのを契機に、ここに明治天皇の業績を残すための巨大な洋式庭園を構築することが決まったのだ。
それが神宮外苑。
代々木の練兵場は後に明治神宮と代々木公園になるんだけど、明治神宮のある「内苑」に対して、場所が離れているので「外苑」なんだ。
ただし、新宿御苑をくっつけてさらに巨大な「神宮の杜」を作ろうという構想もあったのだ。
そうなると、都内の中心地のほとんどが緑地になっていたことになるね!

明治神宮が神社洋式だったので、外苑の方は洋式にしたわけだけど、公園を整備すると同時に、聖徳記念館を建築するとともに、野球場(後の神宮球場)や競技場が整備されたのだ。
この競技場は戦前日本の主要な陸上競技場で、戦中には、学徒出陣の壮行会にも使われたんだって・・・。
終戦後、GHQに一時接収され、返還された後は外苑の管轄下の競技場にもどったんだけど、戦後復興の象徴でもあった東京オリンピック開催に向け、明治神宮から文部省(当時)に譲渡されたのだ。
それでここに建てられたのが、まさに壊された陸上競技場だよ。

実は、戦前にもオリンピック招致をしていて、昭和15年(1940年)に東京大会が開催されるはずだったのだ。
実際には、戦争への突入により辞退するんだけど。
このときのオリンピックでも霞ヶ丘にメインスタジアムを作る構想はあったんだけど、当時は外苑の景観を損ねるとの理由で、世田谷のゴルフ場跡の広大な土地にメインスタジアムを作ることが決まったのだ。
これが駒沢オリンピック公園。
駒沢競技場も戦後の東京オリンピックで会場のひとつとなるけど、戦前の開催案ではこっちがメインだったんだよ。
ちなみに、代々木の練兵場跡もやっぱり候補になっていて、こっちも戦後のオリンピックでは会場に使われているのだ。

戦後に改めてオリンピックを招致する際、やっぱり霞ヶ丘に白羽の矢が立ち、今度は景観に配慮しながら競技お嬢を作ると言うことで妥結したのだ。
おそらく、戦後になって明治神宮の声が相対的に弱まったのもあるんだろうね。
で、そのオリンピック招致を目指して、まずは昭和33年(1958年)にアジア競技大会と国民体育大会を霞ヶ丘で開催することになったんだ。
でも、明治神宮から文部省に譲渡されたのは、開催2年前の昭和31年(1956年)になってから。
起工は昭和32年(1957年)の1月で、竣工は昭和33年(1958年)の3月なので、1年3ヶ月で作ったんだ。
当然建設スケジュールはタイトなので、夜を徹して作業をしたんだよ。
国の威信がかかっていたのだ!

無事にアジア競技大会と東京国体を終えた後、オリンピック招致に向けてさらに動き出すんだけど、このときできた競技場ではオリンピックのメインスタジアムとしては収容人数が足らなかったのだ。
なので、スタンド・観客席を増築し、収容人数を増やす工事をしたんだよね。
おそらく、新国立競技場構想に反対していた人は、またそれでいいんじゃないの?、と思っていたんじゃないかな。
でも、本体自体にだいぶガタがきていたからねぇ・・・。
象徴的なものでもあるし、過度にお金をかける必要はないけど、できれば何か残したいよね。

さて、オリンピックの後は、高校サッカーの聖地としてサッカー競技に使われるとともに、主要な陸上競技の会場としても活用されていたのだ。
さらに、嵐やSMAPをはじめ、コンサート会場にも使われていたんだよね。
実は、このコンサートやイベントの会場としての使用料収入というのが大きいらしくて、没になった新国立競技場当初案では多目的に使えるような設計になっていたんだよね。

2015/11/14

国産ジェット機が翔んだ日

名古屋で、初の国産ジェット旅客機のMRJの飛行試験が成功したのだ。
当日は事故があるかもしれないからと、近隣区域への立入りは制限され、遠くから見るか、ネットの生中継で見ることになったのだ。
生中継することについては、初飛行試験で何かトラブルがあるかもしれないと危険視する向きもあったんだけど、結果としては見事に離陸・飛行・着陸とこなしたんだ!
日本の航空機技術の歴史が書き換えられた瞬間だよ。

日本の航空機技術は戦前からかなり高い水準にあったんだよね。
実際に、零戦や隼、紫電改などのレシプロ戦闘機はその性能の高さを評価されているのだ。
加速性能と小回りがきくので、当時の空中戦では活躍できたんだよね。
でも、終戦後、この技術力を恐れた連合軍GHQは、航空禁止令というのを出して、国内に残っている航空機をすべて破壊するとともに、航空機の開発・製造を禁止したんだ。
これがきっかけで我が国の航空機技術は置いてけぼりを食らうことになるのだ・・・。

実際には、朝鮮戦争の勃発により、日本の旧航空機メーカー(三菱重工や川崎重工、中島飛行機の後身である富士重工など)に修理やメンテナンスの仕事が入り、また、ライセンス生産による部品製造の仕事も入ってきたので、製造技術については一定のレベルを維持することができたのだ。
でも、肝心の開発の方は止められたままなのが痛かった。
第二次大戦では、ちょうどジェット機が実戦投入が始まり、戦後、民間航空に転用されていく時期だったんだよね。
そのタイミングを逃してしまったのだ。
米国では、大型爆撃機の技術から、大型ジェット旅客機が生まれるんだよね。
軍用輸送機の企画競争に負けたボーイング社が、自社の軍用機の技術を民間機に転用したのだ。
そうしてできてくるのが、ボーイング707から始まる大型ジェット旅客機のシリーズ。
民間航空機により大量輸送自体が幕を開けることになるんだよね。

日本では、終戦間際のタイミングでジェットエンジンを搭載した試験機を開発するところまではこぎ着けていたんだけど、それ以降いったん開発が止められてしまったので、ジェットエンジンについて大きく遅れをとることになったのだ。
これがいまだに尾を引いているんだよね・・・。
自衛隊機の戦闘機や輸送機は国内企業が製造しているけど、ライセンス生産で、肝心なエンジンや計器類などは海外製。
しかも、ブラックボックスとなっていて、勝手に解体して中を調べても行けない契約になっているんだ。
定められたマニュアルに則って修理やメンテナンスはしていいんだけど、重要な部品の交換だと、米国に行ったのくって作業してもらうなんてことも。

その一方で、サンフランシスコ講和条約の発効後、日本が完全に独立を取り戻してから、国産航空機開発の機運が高まったのだ。
その流れで開発されたのが、国産レシプロ旅客機のYS-11。
本当は「わいえすいちいち」と読むのが正式だそうだけど、一般には「わいえすじゅういち」と呼ばれている航空機だよ。
開発には、三菱重工や中島飛行機で活躍していた設計士が入り、通商産業省の主導の下、関連企業が集まって国を挙げて取り組まれたのだ。
当時は特定の企業が突出しないようにとの配慮で、日本航空機製造株式会社という特殊法人が設立され、ここが開発・製造・販売主体となったのだ。
ちなみに、最初にこの機体を引き受けるローンチカスタマーは、日本航空(JAL)ではなくて、当時はまだできたばかりだった全日本空輸(ANA)だったのだ。

ただし、日本の中でもぴかぴかの腕を持つ飛行機屋が総力を挙げて開発したんだけど、彼らは軍用機しか作ったことがなかったし、そもそも旅客機に乗ったこともなかったようなんだよね。
なので、できあがったYS-11はお世辞にも乗り心地がいいものとは言えないようなもので、パイロットからすると操縦しづらいものだったとか。
国産技術の復活というノスタルジーの中では美化されているけど、能力的にはそこまでか、という評価もあるみたい。
軍用機ばりに頑丈だったのと、就航後の不断の改良を続けたことでそれなりに売れたんだけど、主体が特殊法人だったというのもあって経営は悪化。
1973年(昭和48年)には製造が終了し、日本航空機製造も三菱重工に事業を引き渡して1982年(昭和57年)に解散することとなるのだ。
その後もしばらく国内外で飛んでいたんだけど、国内では2006年(平成18年)に定期路線から完全引退したんだ。
このときは引退を悲しむ声が大きかったんだよね。

そんな中、やはり国産旅客機を、ということで、経済産業省の協力を得て、三菱重工が開発に取り組んだのがMRJなのだ。
三菱・リージョナル・ジェットの略で、短距離~中距離を飛ぶ中型のジェット旅客機。
ちょうど開発計画が持ち上がった90年代は、カナダのボンバルディアやブラジルのエンブライエルの成功から、これからはリージョナル・ジェットに時代と言われた頃で、それなりの市場が見込めたんだよね。
また、大型ジェット旅客機だと、開発費用も莫大にかかるので、日本ではとてもじゃないけど無理だったのだ。
けっきょく世界でボーイングに対抗しているのは欧州のエアバスだけだしね。

このMRJの開発に当たっては、高い燃費性能と低環境負荷の技術が採用され、そこが国が補助して技術開発をする部分なんだよね。
この開発には宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東北大学が協力しているのだ。
それで、いくつかの開発トラブルを乗り越え、何度も試験飛行を延期して、やっと初試験飛行に成功したんだ。
今回もローンチカスタマーはANAなんだけど、民間主体で開発を進めていること、YS-11のときの反省を踏まえて経営戦略を検討したことから、すでに海外からの受注も取り付けているんだ。
国内外でいまかいまかと待ち続けていた飛行試験がやっと成功し、これから型式証明の獲得など就航に向けての準備が進められるのだ。
世界の空を国産ジェット旅客機が飛ぶ日も近い?

2015/11/07

おだやかに独立

出張でカナダに行ってきたのだ。
寒かった!
北米大陸の北側だからね。
場所によっては極域に入っていて、オーロラも見えるわけだし・・・。
そんなカナダだけど、意外とよく知らないんだよね。

英国と独立戦争までして完全に独立し、大統領制を敷いている米国とは異なり、カナダは英連邦の一角。
英国王がカナダ王を兼ねていて、その下で立憲君主制になっているのだ。
英連邦の他の国と同様に、国王の代理として「カナダ総督」が「君臨すれども統治せず」で存在していて、実質的には首相が政治のリーダーとなっているのだ。
このあたりはオーストラリアとかニュージーランドも同じだよね。
でも、こういう政治体制なので、バンクーバー五輪では、国家君主としてエリザベス女王の代理でカナダ総督が開会宣言をしているんだよ。
でも、カナダが独立して完全に主権国家になったのは1982年なんだって!
どうなってるの?、と思うけど、英国式の法手続で、そこに至ってやっと完全に独立したらしいのだ。
カナダという形で国がまとまったのは1867年。
英国議会で制定した「英領北米法」という法律により、北米の英国植民地のうち、カナダ植民地、ニューブランズウィック植民地及びノバスコア植民地を合わせて「カナダ自治領」となったのだ。
このとき、州が4つできて、オンタリオ州、ケベック州、ニューブランズウィック州及びノバスコア州ができたよ。
これはカナダの東側部分。
後に中央部のマニトバ州、北西部のノースウェスト準州、西部のブリティッシュコロンビア州、、太平洋上のバンクーバー等、大西洋上のプリンスエドワード島などがどんどん組み入れられ、今の形になったのだ。
カナダの場合は、あくまでも英国の領土の一部で、一定程度の自治権が認められていた、ということなんだよ。

1931年になると、ウェストミンスター憲章が制定され、英国の海外自治領にも外交権が与えられるようになったのだ。
逆に言うと、それまではなかったということ・・・。
カナダやオーストラリア、ニュージーランドなんかは、英国軍として第一次世界大戦に参加しているんだけど、これは英国が参戦したのでそのまま引きずられて参戦しているのだ(>o<)
このウェストミンスター憲章では、英国王が各自治領の国王を兼ねることとされ、それぞれの国が国王への忠誠をもとに団結する「同君連合」となったのだ。
これにより、英連邦が正式に法的に位置づけられたことになるんだって。
ただし、この時点ですぐにカナダは独立したんだけど、オーストラリアとニュージーランドが独立するのは1947年で、戦後になってからなのだ。

この状態だと、カナダはまだ英国の一部という位置づけで、憲法の改正には英国議会が権限を留保していたりしたのだ。
そこで、1982年になって、1982年憲法法というのが英国議会で制定され、これにより自治領から真の独立国になったんだそうだよ。
っていうか、そんな最近のことだったんだね・・・。
これはびっくり。
さらに、実はケベック州だけはこの1982年憲法を批准していないんだとか・・・。
もともとケベック州はフランス系の住民も多く、カナダから独立しようという動きもあるみたいなので、そういうところから来るのかもしれないけど。
そういうわけで、カナダは日本から見るとけっこうわかりづらい政治体制になっているんだよね。
普通に観光する分にはあまり意識しないし、ほとんど米国と同じと思っていたけど、かなり違うんだよね。
そこは戦争してまで独立したのと、自治領を経てマイルドに独立してきたのとの違いなのかもしれないけど。

2015/10/31

基礎工事偽装はノーベル賞級の研究に影響を与えるか?

10年くらい前に、構造計算書のねつ造で「姉歯事件」というのがあったけど、それと同じくらいのインパクトのある建築偽装事件が起きているのだ!
そう、横浜のマンション傾斜事件。
基礎工事で固い岩盤まで打ち込まないといけない杭がそこまで届いていないことなどが着目されていて、文章マンションの売買にも大きく影響を与えているみたいだね。
で、この事件を起こした現場管理責任者の人が関わった工事が全国で41件あると言われているんだけど、そのうちのひとつが茨城県東海村にある「大強度陽子加速器(J-PARC)」のニュートリノ実験施設であることがわかったようなのだ。
そう、東大宇宙線研の梶田先生のノーベル賞受賞の時に少し話題になった、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の施設だよ。

この施設では、J-PARCのメインリング(陽子に磁場と電場をかけて回しながら加速しているトンネル)から陽子線を分岐させ、グラファイト(炭素)の標的に当てることでニュートリノビームを作っているのだ。
炭素に高速・高エネルギーの陽子が衝突すると、そこでパイ中間子が生まれるんだよね。
これは湯川秀樹博士がノーベル賞を受賞した中間子理論で予言されていたもので、電荷の有無で、π、π、πの3種類があるんだ。
πというのは電気的に中性(=電荷を持たない)なもので、πとπがそれぞれ粒子-反粒子の関係であるのに対して、πは自分自身が反粒子でもあるという変わり種。
でも、今回のニュートリノの実験には関係ないので、ここから先は無視(>o<)

「中間子」という名前は、できてもすぐに崩壊して別の粒子になってしまう性質から名付けられていて、荷電パイ中間子も26ナノ秒(約4千万分の1秒)で崩壊してしまうよ。
πは反ミュー粒子とミューニュートリノに崩壊し、πはミュー粒子と反ミューニュートリノに崩壊するのだ。
ここで出てくるミューニュートリノを岐阜県神岡鉱山跡にあるスーパーカミオカンデに発射し、そこでミューニュートリノが別の種類のニュートリノ(タウニュートリノ又は電子ニュートリノ)に変化する反応(ニュートリノ振動)を観測しているのが「T2K実験」。
「T」はJ-PARCのある「東海村」、「K」は「神岡」、「2」は「to」だよ。
もともと、つくばの「KEK」から神岡にニュートリノを打ち込む「K2K実験」というのがあって、それの後継計画が「T2K計画」なのだ。

標的に陽子が衝突したときに出てくるパイ中間子は前方向に散乱していくんだけど、電荷を持っているパイ中間子は磁場をかけると曲げられるので、集めてくることができるだ。
実際には、電磁ホーンと呼ばれる「角」型の電磁石でパイ中間子の流れを「しぼる」のだ。
パイ中間子がある程度まおまるので、そこから出てくるニュートリノもそれなりにまとまっているというわけ。
ニュートリノは電気的に中性で、ほとんど相互作用をしない素粒子なので、ニュートリノになってからはどうしようもないので、こういう工夫をしているのだ。
ちなみに、この電磁ホーンにかける磁場をスイッチすると、正の電荷を持つパイ中間子を集めたり、負の電荷を持つパイ中間子を集めたり、ということができるんだよね。
その結果、打ち出すニュートリノも、π由来のミューニュートリノと、π由来のミューニュートリノに切り替えができるんだ!
これまではニュートリノ振動を観測してきたけど、T2K実験では反ニュートリノでも同様の振動現象が起こるかどうかを確認することも目的としているんだよ。

でも、ここでまた少し問題があるんだよね・・・。
ミュー粒子・反ミュー粒子というのも非常に不安定な素粒子で、2.2マイクロ秒で崩壊してしまうのだ。
ミュー粒子は電子とミューニュートリノ、反電子ニュートリノに、反ミュー粒子は陽電子と反ミューニュートリノ、電子ニュートリノに。
で、この崩壊で余計なニュートリノが出てくると面倒なので、崩壊する前にトラップしてしまうのだ。
実際には、電磁ホーンでパイ中間子をしぼった後、ディケイ・ボリュームと呼ばれる空洞の中で崩壊が起こってミュー粒子とニュートリノができるのだけど、その終端にはハドロン吸収体という炭素製の壁があって、ニュートリノ以外の粒子を止めてしまうのだ!
これにより、ここから先はニュートリノだけが取り出されるわけ。
パイ中間子とミュー粒子の崩壊の時間スケールは100倍近いので、パイ中間子が崩壊してからミュー粒子が崩壊する前に止めてしまうことは十分に可能なのだ。

というようなことをやっているのがJ-PARCのニュートリノ実験施設で、この施設のうちのどこかの基礎工事に問題の人が関わっていたということのようなんだよね。
これまで安全上の問題や、実験場の支障がないようだけど、どうなんだろう?
でも、こういう施設って、一度動かすとなかなか止められないから、現場に行って問題があるかどうか確かめるっていうのも難しいような・・・。
そのために実験を止めるとまた実験再開までに時間とお金がかかるだろうしね。
日本の十八番のニュートリノ研究なので、変な影響が出ないことを祈るばかり。

2015/10/24

あのときの「未来」は来たか?

今年は、マイケル・J・フォックスさん主演の映画「Back to the Future Part2」の舞台となる2015年。
映画は1985年の設定で、第1作では30年前の1955年にタイムトリップし、第2作で逆に30年後の未来に行ったのだ。
しかも、その日付は10月21日!
まさに今週だったんだよね。
で、その映画の中に出てくる未来像がどこまで実現されているのかが話題になっているのだ。

空を飛ぶ自動車なんかは実現できていないけど、携帯型の大画面デバイスなんかはすでにタブレット端末として広まっているのだ。
ホバーボードや自動的に靴紐が締まる靴は技術的にはできつつあるんだけど、普及には至っていないから△くらい。
映画ではまだFAXが現役なんだけど、同時はパソコン通信がやっとくらいだったので、ここまで電子メールが普及するとは想像がつかなかったんだよね。
そんな中でボクが気になっているのは、タイムマシンでもある「デロリアン」の燃料。
第1作ではプルトニウムを使っているのでおそらく原子炉なんだけど、第2作になると改良が加えられていて、生ゴミをぽいぽいっと放り込むとそれが分子レベル・原子レベルで分解・再構成され、燃料になることになっているのだ。
さすがにここまでは実現できていないよね。

でもでも、ほぼ同時期に、自動車関連で大きな動きがあったのだ!
それは、トヨタのMIRAIがついに発売。
これまでも燃料電池車は作られてきたけど、MIRAIは世界で初めて量産・市販されるセダン型の年長電池車。
価格は700万円強で、そこまで高いとは思わないけど、すべて手作業で組み上げているので、現時点では1日に3台しか生産できないんだって・・・。
今後は夜も含めて24時間の生産体制を確立することを目指していて、6~9台にしたいそう。
2015年については、国内向け400台、米国向け200台でその他で年間700台を目指しているそうだよ。
プリウスが出たときも世界を震撼させたけど、それ以上のインパクトがありそうなのだ。
ちなみに、トヨタは水素を燃料とした燃料電池車を普及させるため、関連特許を無料公開までしているそう。

このMIRAIの燃料電池は固体高分子形燃料電池を採用していて、正負の電極の間に固体高分子の膜がはさまっている構造なのだ。
それがいくつも積層されて燃料電池を構成しているのだ。
しかも、耐圧強度と密閉度を強化して(700MPaなので、約700気圧に耐えるのだ。)、直接燃料となる水素を貯蔵できるタンクを搭載しているんだ。
これのおかげで水素ステーションから3分間水素を充填させれば、650km走行できるんだって(電気自動車だと充電時間がもっとかかるし、継続走行距離ももっと短いんだよね。)。
さらに、これまでプリウスで培ってきたハイブリッド技術も採用されているんだよ。
ブレーキのエネルギーも熱損失ではなく、再び電気として貯められるのだ。
水素を燃料として使うので、水しか排出しないというのも大きな特徴だよ。
まさに名前のとおりの未来の車の姿なんだよね。

でも、これが通過点にしか過ぎないのも事実。
まだまだ解決すべき点があるのだ。
まずは燃料となる水素。
水素ステーションが圧倒的に少ないんだよね・・・。
というのも、水素は最も小さな原子である水素原子が二つ結合して分子を結合している最小の分子なので、密閉度を高くしないとどんどん漏れていくのだ。
しかも、酸素と反応すると爆発的な反応をするんだよね。
その爆発力を水力として使っているのが、日本のH-IIAロケットや米国のスペースシャトルのメインエンジンのロケット推力だったんだけど、それだけの爆発力があるというわけ。
自動車のモーターとしては、その反応をマイルドに進め、爆発力としてではなく、電気としてエネルギーを取り出すようにしているわけ。
だけど、そういう危険な可燃物が街中に大型タンクで貯蔵されている必要があるわけで、社会的なインフラ整備が必要なのだ。
ガソリンや軽油なんかの既存の自動車燃料も可燃性ではあるし、爆発性はあるけど、タンクからしみ出しては来ないから、その点の扱いが大きく異なるのだ。

さらに、水素をどうやって作り出すかも問題。
今は天然ガスなどを原料にして水素を取り出しているけど、この方法だと水素を製造するのにかなりのエネルギーを要するんだよね。
このため、水素を燃料とする燃料電池車は、全体としてはエネルギー効率がよくはないのだ(>o<)
今後技術が進歩して、もっと容易な、エネルギーを消費しない方法で水素が取り出せれば、さらに水素燃料が普及するはずなのだ。
映画の世界では生ゴミから水素を取り出しているのかな?
炭水化物でもタンパク質でも、有機物はたいてい水素を含んでいるので、そこから取り出せればうれしいのだけど。

また、価格が安くなったとはいえ、大衆車レベルとは言えないよね。
これは、燃料電池と水素タンクがどうしても高価になうrからなんだよね。
燃料電池については、触媒として白金などの貴金属が使われるので、どうしても価格を押し上げる原因となるのだ。
もっと安価な金属で代替できないか研究は進められているけど、実用化まではほど遠いんだよね。
水素タンクについても、量産できるレベルまではこぎ着けてはいるものの、どうしても水素を高圧で封入しなければならないという要件があるので、まだまだ技術革新が必要なんだ。
MIRAIの発売はここが許容レベルまでクリアされたところが大きいんだよ。

というわけで、映画の世界ほどではないけど、自動車の世界はものすごく進歩しているんだよ。
プリウスも最初に出てきたときはここまで普及するとは思わなかったけど、MIRAIもそうなるのかな?
今は生ゴミからバイオエタノールを作って燃料にする研究が進められているけど、あと30年後には、生ゴミをぽいぽいっと入れると燃料にできる世界が来るかもしれないね。

2015/10/17

背番号は12桁

マイナンバー制度が始まって、各自治体から通知が開始されているのだ。
簡易書留で届くらしいけど、我が家はまだ。
っていうか、東京都からの防災マニュアルも届かない・・・。
ちゃんと管理して送っているのかな?、と不安になるけど、それもマイナンバー制度がうまくいけばかなり解消されるはずなんだよね。

マイナンバー制度はもともとは国民総背番号制なんて言われていて、どちらかというと国家による国民の管理だ、とかいう否定的なニュアンスがあったんだよね。
確かに、納税者番号と自動車の運転免許証番号、社会保障関係の受給者番号などが統一化されると、今まで縦割りで処理されてきた様々な行政手続きが横串で「見える化」され、一元的に管理できるようになるんだよね。
マイナンバー制度はそういう意味では、今の時代の社会システムに合わせた、管理システムの導入なのだ。
管理強化に見えるけど、国民からしても、行政手続きの効率化だったり、社会保障サービスの公平化だったり、メリットはあるはずなのだ。
むしろ、複数の毛色から所得を得ていた人が脱税しにくくなったり、不正に社会保障サービス(特に生活保障関係)を受給していた人ができなくなったりと、悪いこともしにくくなるのだ。
やっぱり運用が大事ということだよね。

こういう国家による国民管理の仕組みというのは、古代から形を変え、品を変えて導入されてきた経緯があるのだ。
国民一人一人の顔と名前がわかるくらいの規模の小国家なら問題はないのだけど、地方ごとの小国家が統合され、中央集権体制になるとそうも行かなくなるので、管理のためのシステムが必要となるのだ。
特に、国家財政をまかなうための税の取り立てには不可欠なんだよね。
古代日本でも、大化の改新(今は「乙巳の変」と言うのかな?)直後に、中国にならって初めて国家的な管理システムである戸籍が作られたのだ。・
それが「庚午年籍」というもの。
租庸調の徴収に当たって必要な情報として、どこの地にどれくらいの年齢の人間が居るのかをまとめたのだ。
これは6年おきに更新するシステムだったみたい。

でも、平安時代になって、私有地である荘園制度が発達すると、朝廷が一括して戸籍を管理する必要は薄れ、むしろ荘園ごとの管理になったため、国家的な戸籍は衰退していくのだ。
同じようなシステムが復活するのは江戸時代前後。
太閤秀吉公が検地を全国的に行った際、農民に夫役を課すために人別改が行われたのだ。
すなわち、労役を課せる成人男子がどの地域にどれくらいいるかを調べるわけ。
こうして、領地ごとに人別改帳が作成されたんだ。
さらに、江戸時代になってキリスト教が禁止されると、寺請制度ができて、士農工商の全ての民はどこかのお寺の檀家になっていないといけなくなったのだ。
誰がどの宗派に属しているのかを調べるためにまとめられたのが宗門改。
これを作るとき、先行していて人別改に宗派の別を記載する形式を基本としたので、宗門人別改帳となったのだ。

江戸中期には、もはや宗教調査的な目的よりも、人口動態を確認して、徴税などの基礎資料として活用されるようになり、事実上の戸籍の役割を果たすようになるのだ。
享保の改革以降は全国的な調査のとりまとめが行われるようになり、幕府は諸藩に6年ごとに更新するよう命じているよ。
これでいったんは廃れてしまった戸籍制度がほぼ復活した形になったのだ。
ただし、この宗門人別改からは漏れている人たちがいたことにも留意が必要なんだよね。
偉い人たちはいいとしても、狩猟を生業として山で暮らしていた、いわゆる「山の民」とか、修験者のような定住せずに全国を渡り歩く宗教者、大道芸人や巡業の一座、田畑を放り出して逃げたした農民(「無宿」)などは記載がないんだよね・・・。

明治になってからは、近代国家となるべく欧州の制度にならって新たな戸籍制度が法律の下にスタートするのだ。
もちろん、そのときの基礎的な資料は江戸時代の宗門人別改帳なわけだけど(笑)
このときに、士族以外にも名字が認められたので、各人が思い思いに戸籍上に名字を登録することになるのだ。
今でも戸籍専用の字があったりするけど、この登録の際の誤字だったりするんだよね・・・。
で、この戦前の戸籍は、家族制度を基本としたもので、戸籍上も戸主(家長)やら嫡出子・庶子などが明記されたものだったのだ。
当時の民法では、嫡出子であるか庶子であるかで遺産相続の権利が違っていたんだよね。
さらに、華族、士族、平民、新平民などの身分事項も記載されていたんだって。

戦後になると家族制度は廃止され、夫婦を基本単位とする戸籍制度に改められたのだ。
これが今の日本の戸籍制度。
戦前では、戸籍に住所の登録も行っていて、住民票の役割も果たしていたんだけど、戦後の住民登録制度は戸籍制度とは別にされ、戸籍と住民票は分離されたのだ。
江戸時代までは出席地から遠く離れて暮らす人なんていうのはわずかだったけど、近代化以降人の移動が多くなって住民登録が必要となったんだよね。
逆に言うと、むかしは自由に引っ越しとかができかなったのもあるんだけど。
さらに人の移動が激しくなると、いちいち戸籍で管理するのが大変なので、地方自治体ごとに住民登録させる制度になるのだ。
それが住民登録制度で、それを基に発行されるのが住民票。

これが住民基本台帳制度になると、戸籍と住民登録情報がリンクされるようになり、戸籍の附票を見ると住民登録の変遷がわかるようになるのだ。
やっぱり戸籍で本籍地しかわからないんじゃ不便だからね。
平成の御代になると、コンピュータによる管理が一般的になり、戸籍も住民基本台帳も電子化されてくるのだ。
で、また法改正が行われ、戸籍も住民民基本台帳もオンライン化されるんだよね。
戸籍は騒がれなかったけど、住民基本台帳ネットワークシステム(いわゆる「住基ネット」)はいろいろと話題になったのだ・・・。
セキュリティとプライバシーの問題なんだけど、これはまさに今、マイナンバー制度で問題になっているよね(>o<)

ちなみに、むかしの人別宗門改だと職業もわかったんだけど、現在の戸籍や住民基本台帳では職業はわからないので、別に「国勢調査」を行うことになっているんだよね。
これは5年に一度だけど、むかしの戸籍の更新年度とあまり変わらない(笑)
今後は、これらの情報が全てマイナンバーによりひもつけられるのだ!
相当便利になるはずだけど、ここを崩されると全て終わりなので、住基ネットの時以上にセキュリティには気をつけないといけないんだよね。

2015/10/10

見えないものを見る

見えないものを見るというと「心眼」みたいな世界に入るけど、ノーベル・ウィーク第二弾で物理学賞を受賞したニュートリノの研究はまさにそういうものなのだ(笑)
日本人が受賞したノーベル賞のおよそ半分は物理学で、その中でも素粒子物理学は日本の十八番なんだよね。
今回受賞した東京大学宇宙線研究所の梶田隆章教授は、かつてニュートリノを世界で初めて観測した功績によりノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士の教え子なのだ!
指定でノーベル賞受賞という快挙だよ。

もともと小柴博士がやっていたのは、ものすごくまれにしか起こらない(と考えられている)陽子崩壊という現象の観測実験だったのだ。
そのために、岐阜県の神岡鉱山跡にカミオカンデという実験施設を作ったのだ。
地下に巨大な水槽を設置し、その中に純水を満たして、陽子崩壊が仮に起きた場合に発生するごくごく微弱な光(チェレンコフ光)を水槽を取り囲む超高感度の光センサー(光電子増倍管)で検知しよう、という計画なのだ。
でも、チェレンコフ光が発生するのは何も陽子崩壊が起きた場合だけじゃなくて、水中を光より早い速度で荷電粒子が動くと発生するのだ。
つまり、荷電粒子が水に飛び込んでくるとひどいノイズになるので、そうならないように地下深くに水槽を置く必要があるんだ(地層により宇宙から振ってくる荷電粒子が遮断できるのだ。)。

でも、それでもバックグラウンドのチェレンコフ光はゼロにはならないんだよね。
なぜなら、宇宙から降り注ぐ強い放射線である宇宙線が大気中の空気の分子と反応して発生するニュートリノが水槽の中の水とごくごくたまに反応してチェレンコフ光が出るため。
宇宙線と空気分子が反応すると、酸素原子や窒素原子からμ粒子というのが出てくるのだ。
でも、このμ粒子はすぐに崩壊して、電子と電子ニュートリノ、ミューニュートリノになるんだ。
この2つのニュートリノが大気ニュートリノとして地上にものすごい量で降り注いでいるんだ。
ちなみに、ニュートリノには電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノと3種類あるのだ。

でも、このニュートリノは幽霊粒子とも言われるように、ほとんど他の素粒子と反応しないので、基本はどんどんすり抜けていくのだ。
これは、この世界を構成する4つの力のうち、電磁気力と強い相互作用の影響を受けず、弱い相互作用と重力の影響しか受けないため。
ところが、全く反応しないわけではなくて、例えば、水中で水分子中の酸素原子の原子核のすぐ近くをニュートリノがすり抜けようとする場合、反応するのだ。
ニュートリノが陽子に衝突した場合、陽子が中性子と陽電子に分かれるんだけど、この陽電子は荷電粒子なので、チェレンコフ光を発生させることになるのだ。
つまり直接ニュートリノを見ることはできないんだけど、ニュートリノが反応した痕跡としてのチェレンコフ光を検知することで、ニュートリノが来ていることがわかるというわけ。
これが小柴博士がノーベル物理学賞を受賞した成果だよ。

で、いろいろとそうやって大気から来るニュートリノを観測していたとき、変な現象が起きたのだ。
大気ニュートリノの発生原理はわかっているので、降ってくるニュートリノの量はおおよそ検討がつくのだけど、電子ニュートリノがほぼ予想どおり観測できたのに対し、ミューニュートリノは数が少なかったのだ!
これは途中で何か起きているに違いない、と考えられたわけ。
素粒子物理学における「標準モデル」では、ニュートリノというのは質量がゼロと仮定しているのだけど、逆に、その仮定が間違っていて、ニュートリノがわずかばかりでも質量を持つと仮定すると、ニュートリノは飛行中に別の種類に変換する現象が発生すると想定できるんだって。
これは非常に難解な話なので、ここでは単純に、質量を持てば飛行中にニュートリノの種類が変わってしまう「ニュートリノ振動」という現象が起こるし、質量がない場合はニュートリノの種類は何があっても不変ということだけわかればよいのだ。

こういう前提の中でカミオカンデのグループが考えたのは、ひょっとしたら、ニュートリノの質量はゼロではなくて、ニュートリノ振動が起きているので、ミューニュートリノは少なくしか観測できないのではないか、という仮説。
カミオカンデの観測装置では、タウニュートリノのは観測できないので、大気ニュートリノ中のミューニュートリノが地上に届くまでの間にタウニュートリノに変わってしまっていたとしたら、この現象が説明できるかもしれない、ということ。
でも、カミオカンデではそこまでの感度がなかったので、より水槽が巨大化した、後継のスーパーカミオカンデを使った実験でその仮説が確かめられることになるんだよ。
ちなみに、巨大化させても陽子崩壊の方はやっぱり観測できないので、もっと大きな水槽にするハイパーカミオカンデ計画というのが構想されているのだ。

梶田博士がやったのはこの研究で、スーパーカミオカンデを使って詳細に大気ニュートリノを観測してみると、確かにミューニュートリノの数が減っていることがわかって、しかも、エネルギー分布もずれていることがわかったんだって。
このことから、ニュートリノが質量を持つ可能性が出てきたのだ。
さらに詳細な分析を行うため、今度はつくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK)の陽子サイクロトロンから出る陽子線をターゲットに当て、そこから出てくる人工のニュートリノを神岡に向けて発射して、その飛行中にニュートリノ振動が起きているかどうかを確認する実験が行われたのだ。
これがK2K(KEKから神岡)実験。
この実験では、あらかじめ既知のニュートリノを打ち込んでいるので、より詳細に分析ができるのだ。
こうした実験を通じて、ミューニュートリノがタウニュートリノに変化する現象は確認できたんだ。
ちなみに、今回の共同受賞者のマクドナルド博士は、SNO実験という太陽から来るニュートリノを使った実験で、電子ニュートリノがミューニュートリノやタウニュートリノに変化する現象を観測しているのだ。

K2Kに続く実験として日本がやっているのが、東海村にある大強度陽子加速器(J-PARC)の大強度の陽子線を使って大強度のニュートリノビームを発生させ、それをスーパーカミオカンデに打ち込むというT2K(東海から神岡)実験。
この実験では、東海村から発射する段階でもニュートリノの量を計測していて、さらに詳細な分析が可能なのだ。
この実験により、これまで観測できていなかったミューニュートリノが電子ニュートリノになる現象が実験的に確認されたみたい。
現在は、ニュートリノの反粒子である反ニュートリノで振動が起きるのかどうかを実験していて、ニュートリノと反ニュートリノで振動現象に対称性を超えた違いがあるかどうかを確認する実験をしているのだ。

ものすごく難しい話だけど、宇宙がビックバンでできたときには粒子と反粒子がほぼ同数で存在したはずなんだけど、現在の宇宙はほぼ粒子のみにより構成されているんだよね。
仮に、粒子と反粒子が完全に対称性を持つ場合は、両方あるか、両方ないかしかないので、どこかで対称性に「破れ」があって、反粒子が消え、粒子だけが残ることになったはずなのだ。
その証拠となる現象を実験的につかんだのが、KEKにある加速器のKEKBで、やはりノーベル物理学賞を受賞した小林誠・益川敏英博士の理論を裏付ける実験結果を出したんだよね。
このKEKB加速器は電子と陽電子の衝突実験をしていて、電子と陽電子の間の対称性の破れを見ているんだけど、それと同じような対称性の破れがニュートリノの世界でもあるんじゃないか、というのをT2K実験で狙っているのだ。

ものすごく難しい話だけど、とにかくすごいことが日本から発信されてきたし、これからも発信できるかもしれないってこと。
今は物理学を志す学生が減ってきているみたいだけど、ずっと日本が強みを持ってきた分野なので、何とかしたいよね。
数学がわからなくて物理から逃げ出したボクの言うセリフではないかもしれないけど(笑)
それでも、まったく実用性がない分野なんだけど、日本はずっと世界をリードしてきているのは確かなので、このまま火が消えるようなことがないようにしてもらいたいものなのだ。

お宝は土の中にある

今年も日本寺のノーベル賞受賞者が出たのだ!
まずはノーベル・ウィーク初日の生理学・医学賞。
利根川進博士、山中伸弥博士に続いて三人目の受賞となったのは、北里大学特別栄誉教授の大村智さんだったのだ。
抗寄生虫薬の発見がその受賞理由だよ。

大村博士は、長年にわたって、微生物が作り出す天然有機化合物の研究に従事してきたのだ。
具体的に何をするかというと、いろんなところの土をとってきて、その中にいる微生物がどんな有機化合物を作っているのか、その有機化合物は何か有用な成分になるのかどうかを調べていたんだ。
今回受賞のきっかけになったのは、静岡県のゴルフ場近くの土壌からとった放線菌が作り出す抗生物質で、帰省中の駆除に効くものだったんだ。
それが最初は動物用医薬品として広く使われるようになり、やがてヒトにも有効で、特に中南米・アフリカで問題になっていた線虫による熱帯地方の風土病「オンコセルカ症」の特効薬だったので、多くの人を失明から救ったのだ。
こういう業績が評価されたわけ。

っていうけど、ひとつひとつの言葉がわかりづらいので(笑)、ちょっとずつ解説。
「放線菌」というのはバクテリアの一種で、菌糸を伸ばしながら放射状に広がって増えていくことから名付けられたもの。
今ではDNA解析をもとに分類するので、必ずしもそういう形態的特徴を持たないものも「放線菌」に分類されるらしいけど・・・。
ま、バクテリアであることがわかればいいのだ。

バクテリアやカビ(真菌)は、自分が増殖しやすいように、自分以外の微生物の増殖を阻害する物質を作ってまき散らすんだよね。
それが抗生物質。
よくテレビとかでこんなところにも雑菌が、とかいって、綿棒とかでこすって培地にすりつけて培養すると、丸い塊(コロニー)がいくつか出てくる、とかいうのをやっているけど、このとき、複数の菌が混ざってしまわず、それぞれがコロニーを作るのはこういう抗生物質で他の菌の増殖を抑えているからなんだ。

世界で最初に見つかったのは、青カビの作り出すペニシリンで、これは結核の特効薬として当時の医学を大きく前進させることになったのだ。
その次に見つかった抗生物質がバクテリアが作り出すストレプトマイシン。
これは放線菌由来の物質だよ。
腎毒性があるのと、重大な副作用で難聴にあんるというのがあるので今はあまり使われなくなったけど、やはり結核に著効を示したのだ。

抗生物質を薬として使う場合、ヒトの細胞にはあまり影響なく、バクテリアやカビなどの微生物にだけ増殖を阻害する効果を示す方がよいのだ。
そういうのをスクリーニングで選び出すんだよね。
で、そういう物質の中には、微生物だけじゃなくて、ウイルスや線虫などの寄生虫にも効果があるものがあったんだ。
今回は寄生虫となってヒトの疾患の原因となっている線虫に対して効果がある抗生物質で、そういうのは抗寄生虫薬と呼ばれるのだ。
イヌに飲ませるフィラリアの薬も抗寄生虫薬だよ。

ちなみに、抗生物質を少し化学的にいじると、増殖が特に早いヒトの細胞の増殖を抑える効果を持たせることができるのだ。
こうして作られたのが抗生物質系の抗がん剤。
ただ単に微生物の増殖を止めるだけでなくて、そういう拡張性もあって、かつては製薬会社・化学会社が競って新しい抗生物質を探索したものなのだ。
そういった世界的な潮流の中で、大村博士は金字塔とも言うべき成果を出したということだよ。

特に今回言及されている「オンコセルカ症」という病気は、らせん状に巻いている「回線糸状虫」という線虫が規制することで起こる病気で、ブユによって媒介されるんだ。
川の近くにいるブユにより感染し、やがて失明に至るので「河川盲目症」という日本語明があるのだ。
アフリカや中南米に患者さんがいて、大村博士が発見した抗生物質を米国の製薬会社のメルクが商品化したイベルメクチンが特効薬になっていて、多くの人が救われたんだって。
日本ではあまり寄生虫による病気というのはぴんとこないけど、発展途上の熱帯地域ではけっこう大きな問題なんだよね。

北里柴三郎博士の薫陶を受け継ぐ北里研究所出身で、野口英世博士のように、熱帯地域の風土病の克服に大きな貢献があった、ということで、日本としては感慨深いものがあるよね。
大村博士のすごいところは、動物用医薬品として実用化されて得た富を使って自分で研究費をかせいでいたことと、ヒトの病気に使えるとわかったところで特許を放棄し、世界保健機関(WHO)が無償でアフリカ・中南米の患者さんに提供できるようにしたことなのだ!
研究者としては変わり種なのかもしれないけど、日本が世界に誇るべき研究者だったわけだね。

2015/10/03

超月

今年の中秋の名月は、翌日にスーパームーンが観測されることもあって注目されていたのだ!
確かにいつもより大きいような気がするし。
なんだか月の大きさや明るさが変化するというのは違和感があるけど、大きさについては最大で1.14倍の直径に、明るさは3割増し程度になるんだって。
これは計算上で出てくる数字なんだけど、NASAの観測でも確かにそうであることがわかっているのだ。

なぜ月の大きさが変わるのか?
もちろん、月そのものの大きさが変わっているわけでは当然なくて、地球から見た月の「見かけ上の大きさ」が変わっているんだよ。
この見かけ上の大きさは月と地球との距離に比例するはずなので、月と地球の距離に変動がある、ということなのだ。
この答えは簡単で、月が地球の周りを回る軌道は、円軌道ではなくて楕円軌道だから。
かなり真円に近いんだけど、ちょっとゆがんでいるんだよね。

理科年表の数字で言うと、最も地球に近づく近地点で362,600kmの距離。
最も遠ざかる遠地点では405,400km。
月の見かけ上の大きさはこの距離に反比例するはずなので、405,400÷362,600=1.118・・・
って、あれ?
1.12倍にしかならない!

実はこれにはさらなるからくりがあるのだ。
月が地球を周回する楕円軌道は一定ではなくて、太陽の引力の影響を受けてゆがむのだ。
すなわち、長径方向に太陽がある場合は、月は太陽に引っ張られるのでより楕円が扁平になるし、逆に、短径方向に太陽がある場合は、その楕円軌道はより円に近づくのだ。
これが無視できないくらいの差で現れてくるんだよ。
最も扁平になるときが、月と地球の距離の差が最大になるんだけど、そのときは、近地点が356,400km、遠地点が406,700km。
その比を見ると、406,700÷356,400=1.141・・・
そう、これが最大で1.14倍の正体なのだ。

次に明るさについて。
一般に星の明るさは地球とその星との距離の二乗に反比例するのだ。
すなわち、距離が、356,400÷406,700=0.876・・・で、0.88倍(=1/1.14倍)に縮まっているので、明るさは、(1/0.88)2倍=(1.14)2倍=1.2996倍にはるはず。
すなわち、3割増しということなのだ!

いわゆる星の明るさの話をするときは、一般には自分で光っている「恒星」なんだけど、月の場合は太陽の光を反射しているだけなので、事情が異なる、みたいな感じで書かれているものもあるのだ。
見かけ上の大きさの直径が1.14倍で、月の反射する光の量は月の見かけ上の大きさ(面積)に比例するから、その二乗で1.3倍の明るさ、としているんだ。
でも、これは実は間違い。
確かに反射光の量はそうなのかもしれないけど、明るさというのは単位面積当たりの光の量のことなので、面積が変わっても不変なのだ。
反射光だろうがなんだろうが、光源と観測点との距離こそが明るさには影響するんだよ。
月そのものの大きさが変われば明るさにも影響があるけど。

2015/09/26

金より貴重な銀

今年はカレンダーの妙により、秋に五連休が生まれたのだ!
世間的に「シルバーウィーク」としてもてはやされ、全国的に天気にも恵まれたことから、かなりの人が行楽に出かけたみたいだよね。
でも、次に五連休になるのは2026年で11年後なんだって・・・。
春の大型連休であるゴールデンウィークの場合は、祝日が3日連続しているので最低限三連休は保証されているんだけど、秋の場合は、国民の休日がうまく挟まらないとダメなんだよね(>o<)

秋に大型連休が生まれるためには、すでにハッピーマンデーが適用されている敬老の日と秋分の日が2日違いで、その間に平日が挟まることが必要なのだ。
敬老の日は9月の第3月曜日と決まっているので、秋分の日が9月の第3水曜日に来ないといけないわけ。
秋分の日は太陽が黄道(地球から見た見かけ上の太陽の軌道)における秋分点を通過する日なので、毎年日付が変わるんだよね。
だいたいは9月の21日、22日、23日のいずれかになるので、これが水曜日に当たればいいのだ。
24日が秋分の日になることもあるんだけど、その場合、秋分の日が24日となった場合、9月の第3月曜日は15日になってしまうので、この場合は大型連休にならないんだって。
こういう状況なので、秋の大型連休は非常にまれな存在なのだ!

そもそも、このシルバーウィークが生じるきっかけになったのは、ハッピーマンデー制度の導入と、祝日と祝日に挟まれた日を休日にする「国民の休日」制度の導入によるもの。
日本の祝日は「国民の祝日に関する法律」第二条により規定されていて、建国記念の日を除いては、法律上で日付が指定されているのだ。
元旦や天皇誕生日のように日付がきちっと定められているものと、敬老の日や体育の日のようにハッピーマンデー制度が適用されて、○月の第×月曜日というような指定をされているものがあるんだ。
建国記念の日だけは政治的な問題があったので、「政令で定める日」とされていて、別途政令で2月11日に決められているのだ。

さらに、同法第三条で振替休日と国民の休日が規定されているのだ。
昭和48年(1973年)までは振替休日もなくて、祝日が日曜日の場合は休みの日が1日減っていたんだけど、このときに振替休日を導入し、祝日が日曜日に当たる場合は、翌月曜日を振替休日にすることになったのだ。
また、昭和60年(1985年)には、2つの祝日に挟まれた平日を国民の祝日とする制度が導入されたんだよね。
基本的には、憲法記念日の5月3日とこどもの日の5月5日に挟まれた5月4日を休みにするためのものだったんだよね。

ハッピーマンデー制度は、平成10年(1998年)の法改正で導入され、平成12年(2000年)から施行。
まずは成人の日と体育の日が月曜日指定になったんだよね。
平成13年(2001年)の改正ではハッピーマンデーの対象が拡大され、平成15年(2003年)以降は、海の日と敬老の日もハッピーマンデーにより月曜日指定になったのだ。
このときから、敬老の日と秋分の日にはさまれた国民の休日がたまに発生する状況になったんだよね。
これがシルバーウィークのはじまり。
その最初のタイミングが平成21年(2009年)で、今回は二度目だったんだ。

ちなみに、その後も国民の休日に関する規定は微妙に改正されているのだ。
というのも、4月29日を「昭和の日」とし、みどりの日を「5月4日」にしたため、暦上では常に祝日が3日連続になる状況が発生したため、祝日と祝日に挟まれた日であって祝日でない日が国民の休日になる、というように改正がなされたんだ。
この場合、国民の休日になる可能性があるのは、敬老の日と秋分の日に挟まれる平日だけだよ。
また、このとき同時に振替休日の規定も改正されていて、ある祝日が日曜日に当たった場合、その直近の平日が振替休日になることになったんだ。
というのも、5月3日が日曜日だった場合、もともと5月4日は祝日なので、そのままでは振替休日がなくなってしまうので、5月6日が休日になるように変えられたのだ。

というわけで、今回の秋の連休はうまいことタイミングが重なって生じたものなのだ。
でも、実際の陽気のよいこのシーズンに連休があると行楽に出る人も多く、経済効果もあるので、祝日制度自体を見直して秋にも必ず大型連休があるようにしたい、という動きもあるんだよね。
とはいえ、日付が確定しない秋分の日を絡める限りはなかなか難しいので、なかなか妙案はないんだけど。
ま、たまにしかないからこそのありがたみというのもあるしね(笑)

2015/09/19

神出鬼没の赤い花

この前散歩しているときにヒガンバナを見たのだ。
もともと今年は残暑をあまり感じなかったし、めっきり秋っぽくなってきたけど、ヒガンバナを見るともう彼岸かぁ、と思うよね。
季節を感じさせる花のひとつなのだ。
ボクは割ときれいな花だなと思うけど、それ以上に、この花はその妖しさから忌避する向きもあるんだよね。

その大きな原因は、いきなり茎が伸びてきて花だけが咲くからだと思うんだよね。
そのために「幽霊花」なんて名前もあるし。
芽が出て、葉が増えて、やがて花が咲く、という一連の流れが見えず、いきなり花だけ出てくるので気持ち悪く感じるのだ。
確かに、この植物に特有の大きな特徴ではあるんだけどね。

これはボクもよく知らなかったし、実際に見ていても気づかなかったんだけど、花が終わって、茎も枯れた後に、細い葉が放射状に広がってくるんだって。
秋から冬にかけて葉が広がり、春には枯れて地上にはまた何もなくなるのだ・・・。
そして、秋口にまたいきなり茎が出てきて花が咲く。
ヒガンバナはデンプン質を多く含む鱗茎があるので、春~夏に葉で光合成をしなくても、秋~冬にためた栄養で花を咲かせられるんだよね。

ヒガンバナの妖しさは、その鮮やかな赤い色と特徴的な花の形もあるんだけど、この鱗茎には独があるというのも一役買っていると思うんだよね。
リコリンなどの有毒なアルカロイドを含んでいて、食べると嘔吐や下痢を引き起こし、場合によっては中枢神経が麻痺して死に至る場合も・・・。
その毒の効果を狙ってあぜ道に人為的に植えられたとも考えられるんだよね。
ネズミやモグラ、虫などの田を荒らす動物が独を嫌って近づいてこなくなる、というわけ。
墓場にも植えられるけど、これは土葬していた時代の名残で、動物が埋葬した死体を暴いて食べたりしないように、ということのようなのだ。

ただし、この有毒成分は水溶性なので、長時間水にさらすと抜くことができるんだって。
実際に太平洋戦争中は食べていたこともあったらしいよ。
ちなみに、この鱗茎は生薬の一つでもあって、むかしから使われていたようだよ。
有毒なものなので民間療法で使うには危険なんだけど。
もしどうしてもという場合は、必ず長時間水にさらした方がよいのだ。

このヒガンバナ、どうも日本には人為的に持ち込まれた帰化植物みたいなんだよね。
というのも、日本全国で見られるヒガンバナはすべてクローンで、遺伝情報が同じなのだ!
つまり、一株のヒガンバナが増やされて広まっていったということ。
北海道から沖縄まで分布しているのに、たったひとつの鱗茎から始まったのだ。
触れたように、農作物を荒らす動物への対抗手段として田のあぜ道なんかに植えられたので、そういう有用性が評価されていたんだね。
なお、日本のヒガンバナは三倍体になっているので、もともと種子では増えないんだって。

でも、そうなると気になるのは、山の中とか、人の住んだ形跡がないところにもヒガンバナが咲いていること。
でも、誰かが植えない限りは勝手に生えてくるわけではないので、かつてはそこに田や墓場など、人が暮らしていた形跡があると言うことなんだよね。
なんらかの形で鱗茎が山中などに持ち込まれた可能性もあるけど、そういう目で見てみると、人の住んだ形跡が発見できるかも。
今度思わぬところで見かけたら、よく観察してみようっと。

2015/09/12

自動販売機のジュースは当たるのか?

テレビを見ていて知ったんだけど、当たり付の自動販売機って、当たりの出る確率を設定できるんだね。
ただし、当たりの確率はどこまでもあげられるわけじゃなくて、最大で2%まで。
つまり、50本に1本の確率以下でしか当たらないのだ。
どうりで当たったことがないわけだ・・・。
そのテレビのインタビューでは、自動販売機会社からは、通常は1%(つまり、100本に1本)の割合で設定することをベースに設置者との間で調整するんだって。

この2%というのは業界の申し合わせとかじゃなくて、法令に基づく基準なのだ。
一般に「景品表示法」と言われている「不当景品類及び不当表示防止法」の第4条では、「内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。」と規定して、景品でむやみに消費者をつるようなことをしてはならない、としているんだ。
これに基づいて公正取引委員会告示が出されていて(現在は法律の所管は消費者庁の所管になっているよ。)、その中で決まっているんだ。

その告示は「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」というもので、その中では「懸賞により提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の百分の二を超えてはならない。」と定められているんだ。
自動販売機の場合「取引の予定総額」というのは、売上げ総額の予定額になるので、想定される売上げの2%以内でしか景品(この場合は当たりが出た場合の商品)を提供できないんだ。
これが当選確率が最大で50分の1の根拠なんだって。
自動販売機の場合、全く当たりが出ない設定と、当たりを出す場合は1/990~1/50で設定できるようになっているのが標準的みたい。
0.1%なんて設定もあるんだね(>o<)

ちなみに、景品の価格にも規制があって、5,000円以内の商品であれば20倍まで、5,000円以上は一律10万円が上限だよ。
缶コーヒーの懸賞でジャンパープレゼント、なんていう場合は、1本だけで応募できる、としてしまうと、景品は120円×20=2,400円以内におさめないといけなくなるんだよね。
これがシールを20枚集めて応募とすると、さらに20倍できるので、48,000円と高額商品も設定できることになるよ。
ただし、景品自体の価格が上がっても、景品全体で2%の枠は係るので、高額商品であればあるほど当選確率は下げざるを得ないのだ・・・。
自動販売機で当たらないんだから、缶コーヒーのジャンバーなんてさらに当たらないわけだよ(笑)
ジャンバーなどのキャンペーンの場合、通常は○○名様に当たる、というようにやるはずなので、おそらくは過去の売上げ実績から推定して2%の枠内に入るように景品の価格を設定しているはずなのだ。
普通は安全側で設定するはずなので、当選確率はますます下がるはずだね。

さらに、応募者全員プレゼントとなると、完全に2%以内のものしかもらえないというわけだよね。
ボクも今、一生懸命シールを集めているんだけど、コンビニのパンなどについているシールを集めて食器をもらうキャンペーンなんかがそう。
100円当たり1枚というシールを40点分集めるとすると、100×40×2%=80円ということになるのだ。
そうなると、景品としてもらえるのがオリジナル商品だとしても、マグカップやら皿やらの原価は80円程度に抑える必要があるんだよね。
だから中国製が多いのかな?

正直、必ずもらえる、という方が抽選でもらえるより魅力的なんだけど、当選確率の分だけ景品の価格は抑えなくてはいけないので、痛し痒しなんだよね。
ま、それを野放図にしたら大変なことになる、というので法律があるんだろうけど。
赤字覚悟で商品でつって売上げを伸ばし、独占又は寡占したところで一気に値上げ、というのがないとは言えないのだ。
でも、実はこうやって景品のレベルを法的に枠ではめていてくれた方が、貪欲な消費者のニーズにとことんまでつきあわなくてよくなるから、企業側にもメリットがあるのかも。

2015/09/05

バスでつなぐ

最近知ったんだけど、東日本大震災で被災した東北の鉄道路線はほぼ復旧はしているものの、一部は「仮復旧」なのだ。
この仮復旧というのが何を指すのかというと、鉄道ではなく、バスで代行輸送をしているんだよね。
JR東日本のウェブサイトにあるにくわしいんだけど、具体的には、気仙沼を起点とする気仙沼線と大船渡線の2路線なのだ。
もともと線路がかなり海岸沿いにあったので、本格復旧をするにはもっと山側の高台に線路を敷設し直す必要があるんだよね・・・。
でも、正直この路線は赤字路線なので、JR東日本としても大きな投資をして線路を敷設し直すことには難色を示しているのだ。
地元も相応の負担をしてくれたら、というのが鉄道会社の見方だけど、被災地域は他にも復興需要があってそこまで手が回らないのも事実。

一方、鉄道事業者であるJR東日本は公益事業体なので、勝手に赤字路線を廃線にできるわけでもないんだよね。
あくまでもその公共サービスの享受者である地元の合意が必要なのだ(>o<)
なので、なんらかの形で輸送サービスを提供する必要が出てくるわけ。
そこで登場するのが、バスによる代行輸送という考え方。
臨時で運転見合わせになった場合や、短期の工事で運休する場合もバスでの振替輸送が行われるけど、今回の場合は、もともと鉄道路線だったものをバス路線に代えて復旧させるという措置なんだよね。
新たに線路敷設をしない限りはバスでの輸送サービスの提供になるのだ。

ここで使われているのはただのバスではなくて、バス高速輸送サービス(BRT)と呼ばれるものなんだよね。
バスだと道路の混雑状況によって定時性(時刻表どおりに運行できること)の確保が難しくなるんだよね。
かつ、一般道を走らせる場合はそんなに多くの本数を出せないので、輸送力にも限界があるのだ。
これを一部解消して、バスの短所を補っているのがBRTという交通システムなんだ。
具体的には、バス専用のレーン又はバス優先道路で運行させ、道路や交差点で他の車両の影響を受けづらくするのだ。
かつ、専用のプラットフォーム(駅)を用意して、車外で料金徴収を行うことで乗降をスムーズにしているんだ。
後払いでも先払いでも、バスだと運賃の支払いで列ができることがあって、出発できなくなるからね。
また、駅があると、乗降口と路面の段差を解消できるので、ノンステップになるのだ!

このあたりは路面電車のような軌道交通で解決されているんだけど、線路や軌道を敷設することなく提供できるところに大きなメリットがあるのだ。
線路や軌道は敷設だけでなくてメンテナンスにも多大なコストがかかるんだよね。
また、基本的には道路を走るだけなので、専用道路や優先道路が設定できれば、路線変更も用意なのだ。
今回の仮復旧でもここが大きくメリットになっていて、とりあえず前に線路が敷設されていたところに専用レーンを整備して、既存の駅を活用しながらバスを走らせているんだけど、有事の際はそこから一般道に出て避難でもできるのだ。
なので、起こるかどうかがわからない自然災害に備えて新たに線路や軌道を切り開く必要もなく、比較的安価な投資で復旧できるんだよね。
地元としても、高めの要求ばかりでことが動かなくてスタックするよりは、とりあえず「仮復旧」ということで今回の措置を受け入れているのだ。
今回は元線路だったところを専用レーンにしてバスを走らせるので、基本的には鉄道と同じようにほぼ時刻表どおりに運行できるはずなんだよね。
輸送力は落ちる可能性はあるけど、もともと赤字路線なので、すし詰めになるような事態もあまり想定されないのだ。

ところが、人の輸送はそれでいいとしても、このバスによる振替では貨物の輸送は代行できないんだよね・・・。
基本的には貨物営業はすでに廃止していたみたいだけど(基本は東北本線と常磐線が使われているのだ。)、まさに復興需要で物入りのときこそ、鉄道で大量に物資が輸送できるとメリットが大きいんだけどね。
JR貨物の場合、自分で持っている線路で走らせるのと、他の事業者(例えばJR東日本など)が持っている線路を走らせるのとで2通りの事業形態があるんだけど、仮に貨物輸送の観点でこの路線が特に重要だ、となると、JR貨物で整備することになるのだ(JR東日本はすでに人の輸送だけならBRTでいいと判断しているわけだからね。)。
ま、そこまでの需要はやっぱり見込めないんだろうなぁ。
地元としては鉄道路線の復活を望む声もあるようだけど。

ちなみに、このBRTというのは比較的安価コストで短期間に整備できる交通システムとして注目されていて、2020年の東京五輪の「足」としても計画があるみたいだよ。
ライトレールで路面電車を整備するのもあるけど、一度軌道を敷設してしまうと恒常的なものになってしまうので、まさにオリンピック特需のためだけに新交通システムを臨時で導入する、という場合はBRTの方が優れているんだよね。
今度のオリンピックでは臨海副都心が中心になるけど、東京駅などの都心部からのアクセスをよくする必要があるし、もともと勝どきとか晴海のあたりは交通の便がよくないところがあるので、その解消も含めて東京都が計画しているのだ。
実は、このあたりはもともと都電が縦横無尽に走っていたんだけど、自動車が増えたことで都電が廃止されていった経緯があるんだよね。
当時は地下鉄に振り返るとともに、地下鉄が通せないところは路線バスで対応ということになっていたんだけど、それがまたBRTという形で復活するかもしれないのだ。

2015/08/29

散弾銃婚

女優の堀北真希さんの電撃入籍のニュースで大騒ぎになったのだ。
こういう報道の時に最近気になるフレーズがあるんだよね。
それは、必ず最後に「なお、○○さんは現在妊娠はしていないそうです。」というもの。
っていうか、芸能人の結婚はいわゆる「できちゃった結婚」が前提ってこと?
どうも、事務所サイドなどが、「きちんと手順を踏んでの結婚です。」というのをアピールするためにつけてもらうこともあるようだけど、蛇足感を半端なく感じるんだよなぁ。

明治期以降、西洋的貞操観念が持ち込まれた日本社会では、婚前交渉はどちらかと言えばはばかられるべきものという建前があったし、なおかつ、避妊もせずに妊娠してしまうなんて・・・、というのが根底にあったんだよね。
なので、「できちゃった結婚」という言葉にも否定的なイメージがあるのだ。
そもそも「ちゃった」という言葉で「意図せず」というニュアンスを表現しているしね。
でも、2000年代以降、わりとメジャーになってきたため、最近ではあまりネガティブな響きのない「授かり婚」とか「おめでた婚」なんて言葉も使われ始めているんだよね。

世の中が少子化で子供が生まれること自体を歓迎するという風潮もあるのかもしれないけど、件数的にも多くなってきて「まれ」なことではなくなってきたので、いつまでも「忌避すべきもの」といったレッテルが貼りづらくなっているんだろね。
本当かどうかはよくわからない数字だけど、「4人に1人はできちゃった結婚」なんていう情報もあるし。
それと、社会生活が多様化し、晩婚化も進んできている中、さらに、若者が結婚に踏み切りにくくなっているので、「既成事実」として「妊娠」して、それを機に結婚しようという高等戦術(「既成事実婚」)というのもあるかもしれないのだ。
こういうのって一時期はドラマの中の話だけと思っていたけど、本当に狙っている女性はいるのかなぁ?
ブラフで「妊娠しているかも・・・」というのはあるだろうけど。

そういう状況下で、結婚情報誌では「ダブルハッピー」やら「マタニティウェディング」やらの言葉で特集を組んだりもしているようだよ。
妊娠初期の妊婦さんでもきれいに着られるウェディングドレスというのもあるのだ。
そんなにおなかが目立たないうちに挙式を、ということだよね。
でも、どうもこれも中途半端感があって、やっぱり結婚→妊娠っていうのが標準的な流れで、それに逆らっているという「後ろめたさ」がつきまとっているんだよね。
妊婦さんの健康の問題はあるけど、気にしないのであれば、おなかが大きくなってからの挙式だっていいし、フランスのように、結婚もせずにシングルマザーとして産むという選択がもっと選ばれてもよいのだ(ただし、これには社会的な条件整備がないとダメだけど。)。

では、その貞操観念を持ち込んだ西洋社会ではどうかというと、やっぱりもともとは「後ろめたいもの」と受け取られていたのが、だんだんと弱まってきているようなんだよね。
英語では「ショットガン・ウェディング」と呼ばれるんだけど、これは新婦の父親がショットガンで新郎を脅してでも結婚させる、というところから来ているのだ。
キリスト教をバックグラウンドとする世界では、婚前交渉は御法度だし(だから「ヴァージン・ロード」)、配偶者以外との姦通も厳禁なのだ。
なので、子供ができてしまった以上、なんとしても責任をとって結婚しろ、ってことなんだよね。
ただし、英語版のWikipediaを見ても、確かに19世紀まではそんな風潮だったけど、今では言葉だけでそこまでじゃない、とちゃんと書いてあるよ(笑)

この英語版の説明でおもしろいのは、東アジアでの状況として日本のことが書いてあるんだけど、歌手の安室奈美恵さん以降増えてきた、というニュアンスで書いてあるのだ。
主な例としてあげられているのは、辻希美さん、土屋アンナさん、黒木メイサさん、リア・ディゾンさんなど。
日本版だと、芸能人の元祖は2代目中村扇雀さんと扇千景さんのカップルと書いているから、例示が対照的だね(笑)
ただ、実感としては、確かにバブル期以降によく聞くようになった気もするから、英語版の説明も的を射ているのかも。

ここで気になるのは、なぜそうなったか、なんだよね。
婚前交渉まで否定する気は毛頭ないのだけど、なぜそのときに妊娠の「リスク」をきちんと考えていないのか、ということなんだよね。
ただ単に「ゆるく」なっているのであれば大問題で、下手をすると、「望まない妊娠」で生まれた赤ちゃんは「虐待」に遭うかもしれないのだ・・・。
「既成事実」を狙って女性側が計画的にやっているのだとすればまだましなのかもしれないけど、それも命を駆け引きのツール的に使っているところは倫理上問題があるかもしれないよね。
できれば、結婚はひとつの選択肢であってしてもしなくてもいいと思っていたカップルが妊娠を機に結婚の手続きを踏んだ、というのが一番よいのだけど、そういう例はそんなに多くないんだろうなぁ。
何はともあれ、生まれた子供が大事に育てられることが第一だよね!

2015/08/22

ネコはキウイで陶酔するか

今が時期の果物はいろいろあるけど、よくテレビCMでも見かけるのはキウイフルーツ。
鮮やかな緑色と、「君たちキウイ、パパイヤ、マンゴーだね♪」のフレーズでついつい南国産と思っているけど、東アジア原産なのだ!
マタタビの近縁種で、中国原産のオニマタタビを英国人が持ち帰り、英連邦のニュージーランドで品種改良されたものなのだ。
もとのオニマタタビに比べると大きさも少し大きくなっているけど、マタタビは生食するとえぐみがあるので、そこが改良されているんだろうね。
で、東アジア原産なので、温帯~亜熱帯にかけて栽培されている果物で、熱帯地方にはないのだ。
日本でも普通に木になるんだよね、甘くするのは難しいみたいだけど。

ボクはてっきりその形状がニュージーランドの国鳥であるキーウィに似ているのでその名前がついたと思っていたんだけど、そうではないんだって。
 ニュージーランドから米国に輸出する際、ニュージーランド産であることをアピールするためにキーウィにちなんで命名されたんだって。
それが1954年(昭和29年)だよ。
似てるっちゃ似てるけど、そこまでじゃないのかもね(笑)
ちなみに、米国ではオーストラリア産でも区別せずにキウイと呼んだので、それが一般名称化してsまったようなのだ・・・。
○○マタタビとかそういう名前よりはよかったよね。

全世界での生産量を見ると、なんと第一位はイタリア!
ニュージーランドではないのだ・・・。
第二位は原産国の中国。
ニュージーランドは第三位だって。
それぞれ、50万t弱、30数万t、30万t程度という生産量で、日本の3万t弱と比べて10倍以上。
なので、輸入物が多いのだ。

キウイの特徴といえばその酸味だけど、同時に下がぴりぴりする感じもするよね。
その正体がタンパク質分解酵素のアクチニジンというもの。
生の果肉を肉料理に使うと肉を軟らかくしてくれる作用もあるんだ。
酸味もあるから、豚肉とか鴨肉なんかには合うし、色合いも緑色できれいだよね。
でも、この酵素のせいで、パイナップルやパパイヤと同様にゼラチンでは固められず、生の果肉はゼリーに使えないのだ。
寒天で固めるか、一度シロップに煮にする必要があるんだよね。
あと、注意として、お弁当のデザートにキウイを入れる際は、かまぼこやちくわから離す必要があるんだ。
そうでないと、キウイの消化酵素で練り物はとろけちゃうんだよね・・・。

キウイは栄養密度が高いと言われていて、それで朝食にどうぞ、という広告が打たれているんだよね。
各栄養素の含有量は実はたいしたことないんだけど、ビタミンや食物繊維、ミネラルがバランスよく含まれていて、栄養が「濃い」のだ。
緑のキウイよりはゴールデンキウイの方がさらによいみたい。
そう聞くと、俄然キウイが食べたくなるなぁ。
ちなみに、マタタビの仲間なので、キウイの若木や芽はネコを引きつける作用があって、キウイ農家にはネコ被害もあるんだとか。
家でキウイを栽培するときは注意だね!

2015/08/15

宇宙開拓史序章

国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の油井宇宙飛行士が、ISSで育成した「宇宙レタス」を食べたのだ!
米国航空宇宙局(NASA)が持ち込んでいる野菜栽培装置のVEGGIEで栽培されたもの。
仲間の宇宙飛行士と乾杯のような仕草をした後食べる映像が流れていたよね。
今はまだ飲食物は原則として地上から宇宙へ引き上げているけど、将来的な火星探査なんかを想定すると、行くだけで半年もかかるので、どこまで自給自足できるかが鍵となるんだ。
今までは水の再利用はかなり進んでいたんだけど、こうして食べられる植物を栽培するのは画期的な成果だよ。
ちなみに、すでに昨年のうちに1回栽培していて、そのときは食べずに全部地上に持ち帰って検査に回したみたい。
安全性が確認されたので今回の試食に至ったわけだけど、残りは冷凍してやっぱり持ち帰るんだそうだよ。

このニュースを見てすぐに思い出したのが、旧日本海軍が潜水艦の中でもやしを育てていたという話。
大航海時代にはビタミンC欠乏による壊血病が長期航海の難敵で、それを防ぐために柑橘類を載せたりしていたんだよね。
そこで帝国海軍が着目したのがもやし。
もやしは光がなくても育つし、ビタミンCも多く含んでいるのだ!
なかなか頭がいい。

でも、今回はそこからまた格段と進歩している話なんだよ。
すでに野菜工場というのがあって、工場内で人工の光を使って野菜栽培がされているけど(レタスやサラダ菜など)、それを宇宙でやった、ということなのだ。
光合成の主役である葉緑体の中には葉緑素(クロロフィル)という色素があって、これが光合成において光のエネルギーを電気のエネルギーに変換して、二酸化炭素と水から糖を創り出すんだよね。
で、この葉緑素は、特徴として、450nmの波長の青い光と、650~700nmの波長の赤い光をよく吸収する性質があるのだ。
特に赤い光の方をよく吸収するので、その補色である緑色に見えるんだよ。
純粋にクロロフィルを溶かした溶液は緑色に見えるけど、光にかざしながら傾けると、吸収した光をまた放出しているので赤く見えるのだ。

で、光合成の光化学反応では、この赤い光の吸収がきいてくるんだ。
すなわち、人工的に光合成反応を起こそうと思ったら、太陽のようないろんな波長の光がスペクトルで混ざっている白色光である必要はなくて、葉緑素が吸収する赤い光だけでもなんとかなるのだ。
それを利用したのが野菜工場で、これまでは電球を使っていたんだけど、長寿命で省エネなので、光源が発光ダイオード(LED)に置き換わってきているんだよね。
今回も宇宙ではLED光源が使われているのだ。
っていうか、ISS内の照明もだいぶ前から蛍光灯からLEDに替わってきているんだよね。
ガラス管が割れることもないし、何より放射線にも強いので、強い宇宙線にさらされる宇宙空間でも壊れにくいのだ。

今回宇宙空間で育てたのは、リーフレタスの一種であるレッドロメインレタスだって(サニーレタスの近縁種。)。
映像で見る限り赤いなぁ、と思っていたけど、そういう種類だったのだ。
この赤い色はアントシアニンで、見土井色の結球型レタス(いわゆる普通のレタス)に比べてβ-カロチンの含有量が多いみたい。
他にビタミンCやカリウムも含まれるので、ビタミンやミネラルの補給にもよいのかも。
普通のレタスは食物繊維ばかりであまり栄養がないから、多少はましなのかな?
これでも、もやしだけに比べたら大きな進歩だよね(笑)

とりあえず今回はレタスなんだけど、長期の宇宙旅行を考える上では、タンパク源も考えないといけないのだ・・・。
そこで俄然注目が集まっているのが昆虫食。
もともとあまり昆虫を食べない日本人(イナゴや蜂の子を食べる習慣が地方によってはあるんだけど)からするとえっと驚くけど、東南アジアなんかはわりと普通に食材として昆虫を見ているんだよね。
チンパンジーなどの類人猿もよく昆虫を食べるので、「慣れ」の問題なのだ。
で、この昆虫たちは、ほ乳類に比べて少ない飼料で大量に育成できるので、宇宙空間のような限られた空間での貴重なタンパク源と目されているんだ。
ということは、近い将来には、宇宙レタスで育ったイモムシを食べる日が来るのかも・・・。
あ、ボクは地上住まいでいいや(笑)

2015/08/08

紅顔の美少年?

国立感染症研究所の発表によると、「リンゴ病」の報告数が例年を大きく上回るペースになっているそうで、流行の兆しを見せているとか。
手足口病も同様で、厚生労働省として注意喚起を呼びかけているのだ。
どちらも子どもの病気というイメージがあるけど、大人が感染するとより重大な症状が出るので危ないんだって・・・。
で、調べてみると、「リンゴ病」というのはけっこうとんでもない病気であることがわかったのだ!

「リンゴ病」というのは通称で、疾患名は「伝染性紅斑」というみたい。
伝染する疾病で、紅斑が特徴的だから、ということなんだけど、安直な名前の割に難しいよね。
「リンゴ病」という名称は、子どもが感染したとき、ほっぺたが真っ赤に腫れるところからついた名前で、特徴をよく捉えているんだよね。
でも、大人が感染した場合は多少赤くなる程度で、真っ赤になるわけではないみたい。
なので、自分が「リンゴ病」にかかっているかどうかがよくわからないのだ。
もうひとつの特徴としては、網目状の赤い発疹(紅斑)が腕や足に出てくるので、それもひとつの目安。

これはヒトパルボウイルスB19による感染によって引き起こされる疾患で、かつては風疹の一種と考えられた時期もあったんだけど、流行の時期の違いや、症状の進行の違いなどから別物であることがわかり、ウイルスレベルで同定したら全く異なるものであることがわかったのだ。
このウイルスには、ネコに感染するものやイヌに感染するものなどもあるよ。
感染経路は飛沫感染なんだけど、2mくらいしか飛距離がないので、よほど近づいていないともらうことはないのだ。
でも、おそろしいのは、頬の発赤や体の発疹が現れる前の、自覚症状がないときがウイルス排出のピークになっていて、知らないうちにウイルスをまき散らしている可能性が高いということなのだ。

感染してからの潜伏期間は5~6日で、その後軌道経由でウイルスが外に出てくるんだけど、実はこのころは体に明確な症状は出てこないのだ・・・。
成人だと多少発熱や悪寒などがある場合もあるけど、多くの場合は気づかずに過ごしてしまい、その後1週間くらいは無症状期間が続くんだ。
ところが、ウイルス排出が落ち着いたあたりで発赤・発疹が始まり、自分が病気にかかっていることがわかるのだ。
なので、病気になってることがわかってから患者を隔離しても手遅れで、すでにウイルスはまき散らされているんだよね。
これが一度流行してしまうとなかなか沈静化できない理由なのだ。

子どもの感染の場合は症状が軽いことが多く、ほっぺたが赤く腫れるくらいで発熱もないことが多いんだけど、成人は重症化することが多いのだ。
発熱や頭痛、関節痛が出るらしいんだけど、どれもきついらしいんだよね。
あまりの痛みに起き上がることが困難になる場合もあるとか。
さらに、子どもなら1週間かそこらで回復するんだけど、大人だと1ヶ月近く引きずることもあるそうで。
いやあ、おそろしい。
リンゴ病に特異的な治療方法はないので、基本は対症療法であまりにも熱や痛みがひどい場合に解熱鎮痛薬を使うくらい。
安静にしてただただ自然治癒力に頼ることになるのだ。

症状が出ていない時にウイルスがまき散らされるので、どこでウイルスを拾ってきているかはわからないんだけど、子どもの間で流行しているときに近づくのは危険なのだ。
母親が看病しているときに一緒に罹患することも多いらしいけど、これも子どもに症状が出てからもらっているというよりは、一緒に行動している間のどこかでもらっている場合が多いと思うのだ。
特に気をつけないといけないのは妊婦さんで、このウイルスは母子感染(垂直感染)をして、胎児に悪影響を与えることが知られているんだ。
ひどい場合は胎児水腫になって、流産や低体重出産により胎児の生命の危機につながるおそれもあるとか。
二人目を妊娠しているときに上の子の同世代でリンゴ病がはやっているときなんかはよくよく注意しないといけないんだよね・・・。

というわけで、調べてみるとおそろしい病気であることがよくわかるのだ。
職場にも謎の高熱と倦怠感で休んでいた人がいるんだけど、ひょっとしたら・・・、と思ってしまうよね。
特に、本人に自覚症状がないときにウイルスをまき散らしているというのがこわいよ。
今のところ大丈夫だけど、何もないことを祈るばかり。

2015/08/01

820

子供の夏休みの宿題の関係で、ということで、職場の人から、東京近郊で「埴輪」が見られる博物館でいいところがないか、と質問を受けたのだ。
とりあえずアクセスの良さから上野の東京国立博物館でいいんじゃないですか?、と答えたんだけど、千葉県佐倉の国立歴史民俗博物館まで行くとさらにいろいろと見られるんだよね。
一緒に古墳散策もするなら、東急多摩川駅の亀甲山古墳なんかでもよいけど(原型をよくとどめているし、多摩川台公園内には古墳展示室もあるのだ。)。
で、よくよく思い返してみると、小学校のときに習ったけど、埴輪ってなんだっけ、と気になったのだ。
土偶と違うのは知っているけど、どう違うの?、と言われるともごもごしちゃうし。
というわけで、ちょっと調べてみたのだ。

端的に言えば、埴輪は古墳時代に作られたもので、古墳のまわりで出土するのだ。
土偶は縄文時代のもので、墓に限らず集落跡から出土するんだよね。
これで終わりというとさみしいので、もう少し詳しく見てみると、埴輪というのは古代の有力者の墳墓である古墳の装飾品で、土偶はどちらかというと民間信仰に基づくものみたいなんだよね。
土偶はよく壊れた状態で発見されるので、むしろ「壊すもの」だったんじゃないかって考えられているくらい。
そうなると、よりまじないの要素が強くなるよね。
ぼんきゅぼんの形状はもともと女性を表していて、大地母神信仰にもつながるとか言うし。

で、問題の埴輪なんだけど、日本書紀によると、1世紀後半の垂仁天皇の御代、それまで墳墓に殉死者を生き埋めにしていた風俗を野見宿禰(のみのすくね)さんが改め、人の代わりに土で作った人馬を用いることを提案したのが始まり、と書かれているんだ。
はに丸やひんべえみたいなやつだよね。
でも、年代を追って古墳を調べていくと、この時代にはまだ人型や馬型の埴輪はなくて、円筒形埴輪と呼ばれる筒状のものしかないのだ。
なので、すでに日本書紀編纂時には埴輪がなんであるかがわからなくなっていた可能性があるんだよね・・・。
二歩sんほきは8世紀前半の成立なので、その時点ですでに半世紀以上の時が経っているから仕方がないのかもしれないけど(古墳が作られなくなるのは6席後半なので、そこから数えても150年は経っているのだ。)。

考古学的に調査していくと、埴輪は古墳の発展とともに広がっていって、ヤマト政権の象徴と言われる前方後円墳とともに全国展開されていくのだ。
初期の埴輪である円筒形埴輪はすでに弥生時代末期の有力者の墳墓に見られるようで、それが徐々に発展していって、形象埴輪と呼ばれる人型や馬型のものが生まれるんだよね。
もともとなんであったのかは想像するしかないんだけど、墳墓のまわりに規則正しく並べられていたようなので、聖域の境界線を表すためのものだったんじゃないかという説が一般的みたい。
まさに、カラーコーンやロープで区画するイメージだよね。

その後、家形埴輪というのが登場するんだけど、これは死者の依代として作られたんじゃないかと考えられているんだ。
さらに、武具や甲冑のような器財の埴輪や、人や馬をかたどったものも出てくるのだ。
これはもう5世紀頃の話で、かなり古墳文化が成熟してきてからだよね。
実際に玄室の中には副葬品として剣や玉、鏡なんかが一緒に埋葬されているんだけど、富の大きさや権力の象徴として古墳をそういう器財の形をした埴輪で装飾することは容易に考えられるよね。
さらに、人や馬は葬送儀礼や生前の祭政の様子を再現しているという説があって、やっぱりその中に葬られている有力者の偉大さを象徴するようなものと考えられるのだ。
古墳の形が単純な方墳や円分から前方後円墳になっていったように、古墳の「意味づけ」の一端を担っていたんだろうね。

2015/07/25

「冷やし」始めました

最近知っておどろいたんだけど、熟したバナナは冷蔵庫で保存した方が長持ちするんだって!
バナナは冷蔵保存すると皮が変色して、味も落ちるから絶対に常温保存と信じていたんだけど、シュガースポット(バナナ皮の表面に出てくる茶色い点々)が出てくるほど熟したものは、十分に熟しているので冷やしてよいのだとか。
そうか、バナナ保存法の常識が覆ったよ。
ま、ボクの場合は、大して甘くなくてもかたいくらいのバナナが好きなので、緑色が残るうちに食べちゃうので関係ないんだけど。

バナナは検疫上、まだ熟していない真緑の状態で輸入され、倉庫の中でエチレンガスを吹きかけて「追熟」させるのだ。
まだ一部に緑色が残る状態で出荷され、流通過程で全体が黄色くなってくるんだよね。
その状態ではまださほど甘くはなくて、その後さらに追熟させて、シュガースポットが出たあたりが食べ頃と言われているのだ。
ただし、この頃には果肉はとろけるように柔らかくなっているので、柔らかいのはちょっと、という場合はもっと早めに食べないといけないんだ。

熱帯原産のバナナは15~20度くらいで熟成が進むんだけど、熟しきっていない段階で13度未満まで冷やしてしまうと、そこで熟成が止まってしまうのだ。
風味が損なわれて甘みがなくなると同時に、皮も変色してすごいことになるんだよね。
ボクは自分でも冷蔵庫に誤ってバナナを入れた経験があるので、バナナは決して冷やしてはいけないものだと思っていたんだ。
ところが、これは熟成途上にあるからであって、成熟していれば冷やしても問題ないということなのだ。
そればかりか、成熟後は傷んでいく一方なので、むしろ冷やした方が長持ちするんだって。
ちなみに、バナナスタンドというのがあるけど、これはバナナをつるすことでバナナの自重で傷んでいくのを防ぐんだって。
確かにテーブルなどに接触しているところから黒ずんでくるよね。
スタンドがない場合は、山型になるように置くだけでも違うようなのだ!

流通しているバナナはエチレンガスを吹きかけて追熟させているんだけど、買ってきたバナナの熟成が進むのは、バナナ自身が自分でもエチレンガスを出して、それに自分で反応して熟成が進むからなのだ。
なので、バナナ同士が近くにあると、となりのバナナが出したエチレンガスで熟成が進んでしまうので、長持ちさせるには房ごとに分けて保存するといいらしいよ。
目に見えて効果があるなんて報告もあるので、やってみる価値はあるのだ。

で、こういうバナナの熟成のメカニズムを理解していくと、おいしくする方法、長持ちさせる方法がよく理解できるよ。
まだ未成熟のバナナをおいしく食べ、なおかつ、長持ちさせる方法として、35度のぬるま湯に数分つけてから放置する、というものがあるのだ。
これはバナナ内の酵素(アミラーゼ)の働きを活性化し、デンプンを糖に変えるので甘みが増すんだ。
また、お湯のヒートショックにより、バナナ中に抗ストレス物質ができて、常温でも2週間くらいはもつらしいよ。
通常ならどんどん黒ずんでくるけど、それが防げるらしいのだ。
これは意外と簡便な方法だから試してみたくなるよね。

さらにもっと長期保存したい場合は、一度成熟させたバナナの皮をむいて冷凍保存というのもあるのだ。
未成熟な状態だとかちんこちんに固まるんだけど、完熟バナナはほぼクリーム状になっているので、シャーベット状に凍るのだ。
生バナナとして食べるんじゃなくて、バナナペーストにするとか、加工して使う場合は冷凍バナナがおすすめというわけだね。
そのまま冷凍バナナとしてかじってもおいしいみたいだけど。

2015/07/18

○○がなければ××を食べればいいじゃない系

最近はめっきりウナギが高嶺の花になっているよね。
知らすウナギの漁獲量が少し増えて値段は下がっては来ているようだけど、それでもむかしに比べるとはるかに高くなっているのだ・・・。
アナゴやらサンマやら、代替品も増えてきたし、定着もしてきているよね。
スーパーで普通にアナゴの蒲焼きを見かけるようになったし。

そんな中で注目されているのが、近畿大学の取組。
あのマグロの完全養殖を実現した技術力・開発力で、ウナギ味のナマズの養殖手法を研究しているのだ。
今度の土用の丑の日には、東京と大阪の近畿大学水産研究所(飲食店の方ね。)で、限定でウナギ味のナマズの蒲焼きが食べられるんだって。
これはなかなか興味あるなぁ。

ナマズは古来から日本で親しまれてきている淡水魚で、今でこそあまり食べなくなったけど、淡泊で上質な白身の魚としてかつては珍重されていたのだ。
ただし、泥臭いので、泥抜きをするなどの事前処理が大事なんだよね。
これはドジョウなんかも同じ。
かまぼこももともとはナマズのすり身が使われていたそうなのだ。
天ぷらや甘辛く煮付けるのが主な調理法で、ウナギと同様に蒲焼きにもするんだけど、ウナギほど脂がのっておらず、さっぱりしているので、メジャーではないのだ。
むしろ、こりこりとした食感を楽しむために刺身で食べられることもあるようだよ。

ナマズは水質汚濁に強い性質もあって、流れがよどんだ沼や池の底の方に生息しているのだ。
そこでザリガニやらドジョウやらカエルやらを食べて生活していて、小さな池沼だと食物連鎖のトップに位置しているんだよね。
食欲も旺盛なので、どんなえさでも食いつくと言われていて、「ぽかん釣り」といってカエルの足に糸をつけて水面のあたりで上下させて食いつかせてとるのだ。
今ではルアー釣りなんかもあるみたい。
実は全世界的に漁獲され、食用に供されている淡水魚なんだよね。

日本古来のナマズは減少傾向で、その代わり、米国から持ち込まれたアメリカナマズが増えているのだ!
特定外来生物にも指定されているけど、食用で導入されたものが養殖池や釣り場などから逃げ出して広まったみたい。
生命力もあるし、固有種のドジョウやザリガニを食べたりもするので、迷惑な存在なのだ・・・。
行方市なんかでは、駆除したアメリカナマズを使って御当地グルメのナマズバーガーを売り出したりしているけど、今ではそんなにナマズを食べないこともあって、ブラックバスと同様に頭の痛い問題になっているのだ。

このナマズの養殖だけど、普通に養殖するだけでもけっこう難しいみたい。
というのも、稚魚の時によく共食いをするらしいのだ。
まずそれを防いで個体数が減らないようにしないといけないんだよね。
さらに、近畿大学の取組では、えさに工夫をして、ウナギのように脂ののった身になるように育てるみたい。
かつ、きれいなわき水で育てることで、泥臭さもなくすのだ。
テレビで取材している限り、ウナギと遜色ないおいしさだと言うけど?
一度は食べてみたいよね。

現在は細々とした需要しかなく、基本的には地域の食材という位置づけのナマズだけど、この技術が成功すれば需要が伸びるかもしれないよね。
近畿大学では、減ったウナギの漁獲高の分だけ潜在的な需要があると見込んでいるのだ。
ウナギの場合は完全養殖は厳しく、知らすウナギをつかまえてきて養殖するけど、ナマズが完全養殖が可能なので、より安定供給が可能なのだ。
味だけでなく栄養面でも優れているらしいので、うまくいけばスタンダードな食材に化けるかも、なんだよね。
どうなることやら、この先が楽しみだ♪

2015/07/11

ワーカホリックを脱せよ、日本

7月から「ゆう活」が始まったのだ。
勤務時間を朝に1時間シフトして、夕方の時間を活用しようというもの。
中央省庁の国家公務員は9:30~18:15が標準の勤務時間なので、これが8:30~17:15に変わるんだよね。
で、政府部内だけでなく、民間企業にも同様の取組を推奨しているんだ。
民間企業の中にはすでに朝方勤務を奨励して、残業時間を少なく、効率的に仕事をしよう、という取組をしているところもあるみたい。

で、よく世間で言われているのは、サマータイムの導入の代わりにやっているんじゃないかという指摘。
でも、よくよく見てみると、ちょっと観点が違うみたい。
というのも、欧米式のサマータイムというのは、英語でdaylight-savingと言われていることからも明らかなように、省エネがその目的の中心なのだ。
夏期の長い昼の時間を有効活用して、照明需要や冷房需要を減らすことが大事なんだよね。
なので、そもそも標準時を1時間前倒しにするのだ。
よって、社会全体の時計の針が進むわけ。

一方、「ゆう活」は一部の取組であって、社会全体の話ではないのだ。
もともと日本でも昭和20年代にサマータイムを取り入れたことがあったんだけど、それがうまくいかなかったので早々に取りやめた歴史があるのだ。
その後もことあるごとに欧米式のサマータイムを導入する話は出てきてはいるんだけど、やはりそのまま日本社会に組み入れるのは難しいみたいなんだよね。
で、そういう流れがあるので、今回の勤務時間を前倒しにする「ゆう活」が日本版サマータイムなどと言われるのだ。

ところが、「ゆう活」の資料をよく見てみると、サマータイムとは観点が違うんだよね。
もっとも重要なポイントは、「ゆう活」の目的はワークライフバランスの是正にあるという点。
したがって、「ゆう活」のポイントは、朝1時間早く仕事を始めると言うだけでなくて、それも含めて業務を効率化し、残業を減らして早く帰るところまでがセットなんだ!
よく言われる批判は、朝早く来ても営業終了時間が変わらなければ労働強化になる(1日あたり残業が1時間増えるだけ)というのがあるけど、「ゆう活」の本来的な趣旨からするとそれは許されないことなんだよね。
ただし、始業時間を早めるのと同じように早く帰らせることがルールかしづらいので、朝早く帰るのは確定で、夜早く帰るのは「できるだけ」という設計に見えるのが問題なのだ(>o<)

「ゆう活」のメリットを見ていても、早く帰って英語の勉強するとか、家族との団らんの時間を増やす、趣味に当てるなどいろいろあるけど、これってサマータイムのように時計の針を進めてしまうとメリットにならないんだよね。
だって、本来のサマータイムでは就寝時間も1時間早まるので、時間的余裕が出てくるわけではないから。
もともと「帰ったら寝るだけ」だった人が「ゆう活」で1時間の時間的余裕を持った場合、それは単純に睡眠時間が1時間削られただけになってしまう点に注意が必要だよ。
そのまま1時間シフトするのではなくて、朝方に勤務形態を切り替えることで全体の業務効率化を目指すことが何より求められているのだ。
ここをはき違えてしまうと、何のためにやるのかまったくわからないんだよね。

だからといって、朝早く来れば自動的に業務が効率化されるわけではないのだ、個人も、職場全体も工夫をしなくちゃいけないんだ。
むしろ、そういうところを「ゆう活」の広報の中でもアピールすべきなんだけど。
今は、朝が早いと通勤ラッシュから逃れられるとか、明るい時間に帰ることができるのでプライベートも充実するとかだけど、そもそも社会全体で「ゆう活」が採用されれば通勤ラッシュも朝方にシフトするし、早く帰るための工夫がなければ明るいうちには帰ることはできないのだ。
だから、それぞれが意識を持って少しでも早く帰ろうというスタンスで仕事に臨むべきなんだよね。
逆に言うと、そういう雰囲気が職場で形成されれば、実際に無駄な残業や、明日以降に先延ばししても大丈夫な仕事をその日のうちにやるようなこともなくなるはずなのだ。
取組は理想的にはよいものなので、うまくいってくれるといいんだけどなぁ。
でも、極論すると、職場の意識が変わればいいので、朝方に勤務時間帯をシフトする必要性はないんだけど(笑)

2015/07/04

自然に黄色

日本の漬け物の代表格と言えば沢庵漬け。
あの黄色い色と独特のにおいが食欲を誘うのだ。
外国人には納豆と同じくらい「臭く」感じるらしいけど。
発酵食品の場合は自分の食文化に取り込まれていないとどうしてもそうなるよね。
日本人も海外の発酵食品は苦手なことが多いし。

たくあんは、ただのぬか漬けと違ってかなり手の込んだ作業工程がいるんだ。
でも、そのおかげもあってポリポリとした歯ごたえ、甘みがあって、江戸時代には食卓に欠かせないごはんの友になったみたい。
まず、大根を干して水分を飛ばし、手で曲げられるくらいしわしわにするのだ。
そのしわしわになった大根を米ぬかと塩で漬けるんだよね。
これが1ヶ月から数ヶ月。
この間に、米ぬかに含まれる麹によってデンプンが分解されて糖になるので甘みが出てくるのだ。
さらに、米ぬかには枯草菌の一種も含まれていて、その代謝で大根中の辛み成分であるからし油が分解されて黄色の色素になるのだ。
こうして、独特の甘み、臭い、色、食感ができあがるわけ。

伝統的な作り方はそうなんだけど、スーパーなんかで売っているのは例のごとくもう少し簡略化され、大量生産ベースに乗った製造法に変わっているのだ。
例えば、最初に干す工程は多くの場合省略されていて、濃いめの塩水につけて水分を抜く方法がとられることが多いみたい。
発酵過程も、天然色素だと色むらも出るので、クチナシ色素などの黄色の色素を転化することが多いのだ。
さらに、風味付けのために甘味料なんかも加えられるんだよね。
というわけで、実は伝統的なたくあんと市販されているたくあんでは甘みも色も食感も異なっているんだ!

これはちょっとショック。
確かに一般に売られているものでもだいぶ歯ごたえは違うし、塩分の濃さや風味も違うよね。
いわゆる「たくあん」類似漬け物というだけで、新しい漬け物になっている可能性すらあるのだ!
でも、ボクは梅酢風味のたくあんはけっこう好きだけどね。
でも、本来的には干した大根をぬか漬けしたものなので、梅酢風味はつくはずがないのだ(笑)

ちなみに、たくあんの黄色い色は日に当たると退色するので、漬け樽から出して時間が経つとしらっちゃけてくるんだ。
古くなったかどうかのひとつの目安にはなるんだよね。
それと、黄色の色素は辛み成分がもとなので、もともと辛みが強いものは濃い色になるし、そうでないものは淡い色なのだ。
なので、むかしの作り方であれば、たくあんの色を見るといろいろと情報が得られるんだよね。
今は着色しちゃっているのでダメだけど。

たくあんは普及したがゆえに、そのまま気って食べる以外の食べ方も地方によっていろいろとあるのだ。
有名なのは古くなったたくわんを塩抜きして油炒めにしたりするよね。
高菜とかもそうだけど、漬け物の油炒めはそのまま食べるのとはまた違ったおいしさがあるのだ。
さらに、ボクは見たこともないんだけど、たくあんの煮物というのもあるみたい。
京都や滋賀、石川、富山、福井なんかで食べるみたい。
ちょっと興味あるかも。
新しいものでは、滋賀名物(?)のサラダパンというのもあるよね。
コッペパンにたくあんのみじん切りをマヨネーズで和えたものがはさまっているのだ。

とにかく、一番の驚きはむかしながらのたくあんは着色していなかったという事実だね。
こうなると、俄然伝統的なたくあんを食べてみたくなるよ。
きっと市販されているものより塩が強かったりするんだろうけどね。
どっかで食べられる機会がないものかなぁ。

2015/06/27

煙にダマされるな!

そろそろ蚊を見かけるようになってきたのだ。
うっとうしいよね。
職場は高層階なんだけど、エレベーターに乗ってやってくることもあるのだ。
で、虫除けのぶら下げるやつなんかを下げている人も。
でもでも、一番効果があるのは蚊取り線香なんだって。
電気蚊取りとかいろいろあるけど、持続性・拡散性に優れているそうなのだ。
熱帯地域でマラリア蚊を防ぐのにも蚊取り線香と蚊帳が一番いいらしいよ。

蚊取り線香と言えば「金鳥」が有名だけど、会社名はずばり「大日本除虫菊」なのだ!
当初の蚊取り線香はまさにこの除虫菊を乾燥して粉末にしたものが練り込んであったので、この名前なんだとか。
7割方花が開いたところで花を摘み取り、陰干しでよく乾燥してから臼でひいて粉にし、デンプンなどと混ぜて形にしていたんだ。
渦巻き状なのは、夜寝ている間中効果を持たせるため、7時間くらい燃焼させる必要があったため。
直線上だと長さがかせげないので、渦巻き状にしたのだ。
今では型抜きなので、円いシートから重なり合った渦巻き2つを切り抜くんだ。
今でも蚊取り線香を買うと2つの渦巻きがくっついた形で入っていて、切り離して使うよね。

もともと除虫菊は地中海地方のセルビア原産で、日本には観賞用として明治期に入ってきたもの。
生花の状態でも虫除け効果はあることが知られていて、大日本除虫菊の創業者の上山栄一郎氏がその乾燥粉末を使って作ったのが始まり。
最初は、伝統的な蚊遣火と同じように、モグサのようにおがくずと除虫菊の乾燥粉末を混ぜたものを火鉢で燃やすことを考えたみたいなんだけど、蚊のよく出る夏に火鉢を使うのもあれなので、線香に練り込んでみたんだそうだよ。
線香は火をつけてからふっと消して上げるとくすぶりながら比較的長時間燃え続けるのでいけるとおもったみたい。
でも、棒状だと燃焼時間がそんなに長くないし、倒れて火災の原因になるおそれもあって、先に触れた横置きの渦巻き型になって普及するのだ。
これはすごい工夫だよね。

この蚊取り線香、煙の中に虫除け成分があるように思えるけど、実はそうではないんだって。
煙は煙で、虫除け成分はその手前から見えない状態で拡散しているのだ。
もともと揮発性成分なので、燃焼点手前の高温になったところで揮発していっているみたい。
これはちょっとおどろきだよね。
なので、蚊取り線香の煙を集めても意味がないんだよ!
煙の流れでどっちの方向に拡散しているかの見当はつくけどね。

そう考えると、リキッドタイプとか、蚊取りマットとかでは煙が出ていないのに効果があるのもうなづけるよね。
蚊遣火だった時代はまさに煙で蚊を追い払っていたわけだけど、現代は虫除け成分を拡散すればよくて、それは煙と関係ないので、熱して揮発させてあげればよいのだ。
なので、煙の少ない蚊取り線香なんてのもあるみたい。
煙がないと風情がなくなるような気もするけど。

ちなみに、現在は実際に除虫菊を乾燥・粉末化したものを使っているのではなく、化学的に合成した類似物質を混ぜ込んでいるんだって。
戦前は瀬戸内地方が除虫菊の一大生産地で、花が咲く初夏にもなるときれいな白い花であふれていたそうだよ。
もともと観賞用で入ってきただけあって、花もきれいなのだ♪
今でも広島の因島には観光用の花畑があるみたい。
たぶん、この花畑なら蚊に刺されないんだよね(笑)

2015/06/20

すーすー系

職場の新人君が、ときどきオリジナルドリンクを持ってくるのだ。
中身は、レモンスライスとミントを水に入れたもの。
ほのかな酸味とミントの風味でさっぱりするんだって。
近頃の若者はしゃれおつなものを飲むんだねぇ、と関心。

ミントの葉には揮発性油のメントールが多量に含まれていて、そのすーすーする感じが爽快感や清涼感を与えるのだ。
それで食べ物・飲み物に入れられたり、シャンプーや歯磨き粉に使われたりするのだ。
この精油成分の了でミントは大きく2つに分かれるんだって。
すなわち、ペパーミントとスペアミント。
そういえば、アイスやガムのフレーバーでペパーミントだったり、スペアミントだったりするけど、そういうことだったのか!

ペパーミントはメントールが多めで香りも強いのだ。
なので、生のままの葉っぱを飾りに使うというよりも、精油成分を水蒸気蒸留で抽出して、香料として使うことが多いみたい。
例えば、アイスやガム、キャンディーなど。
我が国のハッカ油なんかに使われるニホンハッカもこのペパーミントの一種。
ちなみに、水蒸気蒸留をするときは、釜の中に隙間なくミントの葉っぱを充填して、そこに高圧水蒸気を吹き込むことで抽出する方法。
ミントの「フィルター」をくぐった水蒸気を冷却すると、水の上に少し精油成分が浮いていて、それを集めるのだ。

スペアミントはメントールは少なめだけど、代わりにカルボンという甘い香り成分を持つのだ。
こっちはすーすー感もマイルドで、甘い香りもあるので、生のままの葉っぱを使うこともあるのだ。
こじゃれたお菓子についてくるミントの葉っぱはたいていこっちだよ。
もちろん、精油成分を抽出して使うこともあって、甘い香りのもとのカルボンも精油に含まれるので、そこにペパーミントとはまた違った需要があるのだ。
ガムの中でもすーすー感が弱いのはスペアミント系であることが多いよ。
ボクはあんまりすーすーするのが好きではないので、スペアミントの方がよいのだ。
ただし、葉っぱのまま飾るのはスペアミントの方がよいわけだけど、モヒートのようなカクテルに使うにはそれだとミント感が弱いので、ペパーミントが基本みたい。
もちろん、モヒートにはそれこそ無数にレシピがあるので、あまり清涼感が出すぎないようにスペアミントを使う場合もあるんだけど。

このミント、繁殖力が強いことでも知られているのだ。
ミントは水さえあればすぐに種が発芽し、なおかつ、地下茎で栄養繁殖もするので、一度生えると他の植物を押しのけてはびこってしまうのだ・・・。
下手に家庭菜園で植えると、他のハーブを全て押さえ込んでミントだけになってしまうので、個別に育てないと大変なことになるんだって。
匿名掲示板でも、「いやがらせ」として大事に育てている花壇にミントを混ぜるというのがあるけど、植物テロになるくらいの破壊力なのだ。
しかも、ミントに含まれるメントールには防虫効果もあるので、虫にも強く、仮に虫がついても地上部を切り取ってしまえばまたすぐに地下茎から新しい芽が出てくるんだって。
ハーブとして使い道はあるけど、そこらの雑草よりはるかに生命力旺盛なので注意が必要だよ。

2015/06/13

ダメ!ゼッタイ!!

厚生労働省が「改めて」豚レバーの生食を禁止して話題になっているけど、正直「えっ!?」って思ったんだよね。
だって、もともと豚肉は生食しないでしょ。
豚肉を食べるときはよく加熱して、っていうのは一般常識だよね。
飲食店が赤みが残るレアな状態で豚肉料理を出したらそれこそ問題になると思うけど・・・。
でも、どうも世間一般では、「レバー」は別扱いみたい(>o<)
特に牛のレバーの生食ができなくなってから需要が高まっていた(?)ようなので、駆け込み需要とか、嘆く声とか、よくわからないものが報道されているのだ。

豚肉(イノシシ肉)は古くから食肉として扱われてきていて、日本でも弥生時代の遺跡からイノシシと骨とおぼしきものが出土したりしているらしいのだ。
その後仏教政策で肉食が禁止されるので、しばらく豚肉食習慣は表に出てこなかったんだけど、江戸時代にはももんじ屋などで他の獣肉とともにイノシシが食されていたのだ。
全国的に広まったのは明治維新以降で、牛肉よりくせがなく、安価なことから、関東では「肉」と言えば一義的に豚肉を指すまでに広まっているのだ。

でも、この現代の豚肉食習慣では加熱調理が必須とされているよね。
これはブタが保有している病原体の関係なのだ。
トキソプラズマのような原虫もあるんだけど、特に問題と考えられているのはE型肝炎。
これはウイルス性肝炎を引き起こすもので、シカやトナカイの肉も同様なので、必ず加熱して食べる必要があるんだ。
また、屠畜流通段階で食中毒原因菌汚染の可能性も指摘されているのだ。
もともとは生食が可能とされている牛肉と違って、加熱調理を前提としている豚肉の場合は諸中毒原因菌フリーで流通させる仕組みがないのだ。

市場には特定病原菌に感染していない「SPFポーク」というのもあるけど、これは、日本SPFブタ境界が規制している5つの病気(マイコプラズマ肺炎、トキソプラズマ感染症、萎縮性鼻炎、豚赤痢 、オーエスキー病/ブタヘルペス)に感染していないということなので、E型肝炎は別なのだ。
なおかつ、流通経路としては一般の豚肉と基本は同じなので、食中毒のリスクは変わらないんだよね。
特に今般の生肉食規制は、O157をはじめとする食中毒病原菌汚染から来ているので、SPFポークだからいいということにはならないんだよね。
そして、E型肝炎のリスクがある以上、牛の生レバーよりたちが悪いのだ(>o<)

最近はSPFポークだからと、たたきにしたり、レアな焼き加減で出したりするような飲食店もあるようだけど、実はリスクは残っているんだね。
「SPF」という言葉を過信してはいけないということなのだ。
きっと生レバーとか、レアな豚肉にはそれなりの魅力があるんだろうけど、それこそ伝統的に豚肉を加熱しておいしく食べる調理法は山ほどあるわけで、正直リスクを冒してまで生食する必要はないんじゃないかと思うんだよね。
それもこれも全部承知で、オウンリスクで食べるんだというのなら仕方がないのかもしれないけど、あまりリスクを認識していないままに食べているのだけはやめた方がよいのだ。

ちなみに、実は豚肉の脂肪は馬肉と同じくらい融点が低いので、いわゆる「口の中でとろける」食感があるはずなんだよね。
牛刺しよりも馬刺しがメジャーなのは脂肪の融点の低さのおかげで、ちょうど体温で脂肪が融けるので口当たりがよいのだ。
牛肉の場合は若干融点が高いので、多少温めた状態がおいしく感じるんだよね。
その点しゃぶしゃぶはよい調理法ということになるのだ。
豚肉も性質的にはそうなんだけど、生食はやめた方がよいので、これが生かし切れていないのか、残念だなぁ、と思っていたら、そうでもないみたい。

そう、ハムやソーセージなどの加工食品にしたときに真価が発揮されるのだ!
ハムやソーセージは、塩蔵、乾燥、燻蒸などで加工しているわけだけど、これらは温めずに食べてもけっこうおいしいのだ!
特に生ハムなんかはそうだよね。
牛肉の生ハムがないのはもともと生で食べられるから、という以上に、脂肪の融点の関係で口の中でとろけないからなのだ!
むしろビーフジャーキーにしてしまうわけ。
なので、何も生食せずとも、生ハムという形で豚肉の底力は感じることができるのだ。

2015/06/06

金はカジノの回りもの

国会議員の間で統合型リゾート(IR)に関する議論が行われているのだ。
できれば2020年の東京五輪に間に合わせて、外国人観光客を呼び込んで、お金を落としていってもらいたいんだよね。
一方で、国内にそういう施設ができると治安が悪くなるとか、ギャンブルに入れ込みすぎて破滅する人が出てくるとかの負の側面も指摘されていて、全体としてはイケイケ派と慎重派が主張をぶつけ合っているんだよね。
確かに、おとなり韓国のカジノは原則外国人のみを対象としていたんだけど、一部で韓国人に開放したら、身を崩す人が続出したという悪事例もよく紹介されているのだ・・・。

で、テレビでその話を見ていたとき、ある慎重派の人が言ったことが気になったのだ。
それは、「カジノは所詮プレーヤーの金を集めて再配分しているだけで、そこからは胴元の取り分が引かれるんだから期待値としては損をするだけ」という話。
カジノと言われると胴元とプレーヤーの勝負のような気もするんだけど、どうなんだろう?
というわけで、少し調べてみたのだ。

このような主張がもっともよく当てはまるのは、国内でも認められている公営ギャンブル(競馬、競輪、競艇、オートレース)や宝くじ・totoくじ。
これは投票券・くじの売り上げをプールし、そこから胴元の取り分を引いたものを再配分するのだ。
これを控除率と言っていて、宝くじやサッカーくじではだいたい50%、公営ギャンブルでは25%くらいなのだ。
これらの場合はあらかじめ胴元の取り分をさっ引いて再配分するので、胴元は確実にもうけられるのだ。
逆に言うと、競馬の場合は馬券の総売上の25%は日本中央競馬会又は地方公共団体の収益になるのだ。
ただし、実際には事業実施コストも発生しているので、まるまるもうけというわけではないよ。
宝くじの場合は半分は収益になるんだけど、そのうちの一部は公益的な事業に使われることになっているんだよね。
最近では復興宝くじがまさにそうだけど、街中でも公園の遊具やベンチに宝くじの収益で買ったものだ、なんて書いてあるよね。

これこそが公的に認められた賭博である所以で、社会福祉の向上に資するから例外的に賭博行為が認められるし、その胴元は当然のことながら悪い儲け方をしない公的な主体に限られることとなるのだ!
日本でもむかしから富くじやら勧進相撲というのがあったけど、それと同じなんだよね。
寺社の建て替えや改修の費用を捻出するのにギャンブルの売り上げを利用するものだったわけだけど、それと同じようなものだよね。
江戸時代も勝手に富くじをするのはやはり禁止されていたのだ!

逆に、胴元の側も少しリスクを負うものがあるんだよね。
それがポーカーやパチンコ、丁半ばくちなど。
基本的には賭場への参加料として寺銭やらハウスエッジというものを胴元にとられるので、その分は確実に胴元のもうけになるんだけど、それ以外は原則としては偶然性に左右されるので、プレーヤーが勝ち続けて胴元が損することもあり得るんだよね。
でも、実際はそんなに損をしないからこそカジノや賭場の胴元は成り立つのだ。
何もいかさまをしているわけじゃないよ。

というのも、大勢の人が何度も何度もギャンブルに興じる場合、それこそ無限回に近い回数で行われることになるのだ。
すると、確率・統計論的には「大数の法則」が働いて、当たりの目もはずれの目も出る確率は限りなく期待値に近づいていくんだよね。
ルーレットの赤黒で言えば、多く回せば回すほど、赤と黒の出る確率は1/2に近づいていくんだ。
このため、適切に倍率が設定されている限りは、胴元が大きな損をする確率はゼロに近づくわけ。
とにかく数をこなすことが重要で、そのために海外のカジノでは太い客に特典をつけて、ホテルに無料で泊まれたり、レストランで無料に食事できたりするよう便宜を図ることもあるみたい。

さらに、カジノのギャンブルでも、ルーレットは先に紹介した公営ギャンブルや宝くじに近いところがあるのだ。
ルーレットでは、盤が赤と黒に分けて1~36の数字がふってあって、どの数字のタマが落ちるかを賭けるわけ。
で、一点がけなら36倍、赤黒なら2倍とかけ方によって倍率が変わっていて、これは当たる確率の逆数に設定されているのだ。
ところが、実はルーレットには0や00といった数字もあって、この場合は胴元の総取りなんだよね。
なので、本当は1/36で当たるんじゃなくて、1/38で当たるのだ。
この差の分だけ胴元が有利だし、プレーヤーが得られる報酬の期待値は下がっているというわけ。
プレーヤーから参加費用をとらずとも、ルーレットに参加してもらえれば胴元はもうけることが可能なんだ。

パチンコやスロットマシーンの場合は、そもそも当たりの出る確率を調節できるんだよね。
いわゆる「出玉調整」というやつ。
でも、あんまり当たらないとやる人がいなくなるので、適度にしておくことが大事なんだけど。
よくあるのは、大当たりは多少でやすくするけど、小当たりを抑えるというもの。
人間は不思議なもので、ちょろちょろ小当たりで稼ぐより、一発逆転の大当たりにかけたいものなのだ。
パチンコなんかはあまりにも射幸心を煽らないように、一定の制限があるみたいだけどね。
とは言え、これも確率の世界の話なので、やっぱり数をこなすことが重要で、まずはプレーヤーに魅力的に映るような設定が必要なのだ。

というわけで、調べてみると確かに期待値だけで見るとプレーヤーが損しているだけなんだよね。
胴元の取り分を除いて少なくなった分を取り合っているのだ・・・。
なんか、そう考えると悲しいね。
ま、ボクはもともとあんまりギャンブルには興味ないけど。

2015/05/30

今から年末を見越して緊急輸入

今年度も昨年度に引き続いてバターの緊急輸入が決まったのだ!
去年なんかはスーパーでバターの品切れが続出したよね。
今年も品薄状態が続いていたようだけど、いよいよクリスマスの大規模需要に向けてかなりの不足が出そうなので、農林水産省が緊急輸入を決めたようなのだ。
って、なんでそんなことになるのか、ちょっと調べてみたよ。

乳製品の中でも貯蔵性の高いバターと脱脂粉乳が対象なんだけど、国内の酪農を守るために高い関税率が設定されているようなのだ。
でも、バターなんかは国内生産量では国内需要を満たせないので、国で一元的に輸入する枠と、民間が一定量の枠内で低関税で輸入する枠を組み合わせて輸入しているのだ。
「緊急輸入」というのはその枠を超えて輸入するということ。
一義的には国内の生産業者に安定供給に努めるよう要請をするんだけど、これがなかなかうまくいかないんだよね。

原因は、原料となる生乳(せいにゅう)の不足。
「生乳」というのは乳牛から搾り取った「乳」そのもののことで、これを原料に、牛乳や生クリーム、ヨーグルト、チーズ、バターなどなどの乳製品が作られるのだ。
国内では、酪農家を含む農家の高齢化が進むとともに、円安の影響もあってえさ代や燃料費が高騰して、廃業する酪農家が増えているのだ(>o<)
加えて、国内の牛乳の消費減もあって、平成18年度から生産調整として乳牛の数が減らされているのだ・・・。
そのせいで生乳の生産量が減り、慢性的にバターが不足するようになってきているんだ。
ここにきて、輸入元の海外で悪天候などにより生産量が減ると、一気に店頭から消える、という事態につながるみたい。

特に、バターは生乳生産量の減に過敏に反応するのだ。
というのも、生乳の振り分けは、貯蔵性の低い牛乳や生クリームが優先され、貯蔵性の高いバターと脱脂粉乳は後回しにされるため。
他の乳製品が先取りで、残った分でバターや脱脂粉乳を作るという「調整弁」的な加工品になってしまっているのだ。
しかも、牛乳や生クリームに加工した方が高く売れることもあって、生乳生産側としても、積極的にバターや脱脂粉乳に回そうとはしないのだ。
そのため、ただでさえ生乳が不足していても、牛乳は生産過剰でバターが不足みたいなことが起こっているようなんだよね。
まさに、構造的な変革がない限り、バター不足はいつでも起こり得るような状況になっているのだ!

しかも、緊急輸入されるバターの多くは業務用。
なので、一般家庭にすぐに回ってくるわけではないんだ。
国内のバター生産の割合を家庭用バターに多めに振り分け、輸入したバターを業務用に回すわけ。
なので、輸入してからしばらくたたないと一般家庭にはバターが回ってこないのだ(生産から流通まで4週間ほどかかるそうなので、1ヶ月のタイムラグが発生するのだ。)。
しかも、完全に生乳が不足している場合はバターの生産自体が滞るので、そもそも家庭用バターは増えないんだよね・・・。
というわけで、今回のように近い将来の需要増を見込んであらかじめ輸入を決めておかないと大変なことになるというわけなのだ。
もう農林水産省としても例年のことになりつつあるので、予測になれてきているのかもしれないけど。

そして、輸入するにしても、現在はバターの国際価格が不安定なんだとか。
中国での消費増の影響で、バターの価格は乱高下するようなのだ。
なので、緊急輸入みたいに踏み切ると、足下を見られて高く売りつけられるおそれも。
それと、海外でも需要が伸びるシーズンがあるので、その前に買わないと高いだけじゃなくて手に入らなくなるのだ。
そういうこともあって、完全に輸入に頼るのも危なくて、国内生産量を維持しておく必要もあるんだよね。
なかなか複雑な問題なのだ。

2015/05/23

砂山からお宝

淡路島の石材メーカーの資材置き場の砂山から、銅鐸が7点見つかったのだ!
銅鐸の中でもかなり初期のもので、国宝級なんて報道もあったほど。
これまで出土例が多くないタイプのものもあるんだって。
今はもともとその砂山の砂がどこから運び込まれたものか=どこに埋まっていたものかの特定が進められているみたい。
どうも、淡路島内部みたいなんだけど。

銅鐸は言わずと知れた青銅器で、古代の祭祀に使われたものと考えられているけど、実際にどう使われていたかとかは推測の域を出ないんだよね。
昔のものだから確定はできないにしても、よくわからない部分が多いのだ。
紀元前2世紀から期限2世紀くらいの弥生時代に作られていたもので、これは年代特定ができるので確かなのだ。
ただ、それも村はずれの丘陵の麓だとか、丘の頂上のすぐ下とかの比較的浅いところに埋められているのかもわからないんだって(埋めた理由すら明らかでないのだ。)。
銅鐸表面の文様は豊作を願うような図柄だったりするので、そういう祈願・祈祷に使ったんだろうと予想されるんだよね。
でも、祭祀道具としても、埋めたのがなぜか、明確にわからないのだ。

由来もよくわからなくて、銅鐸というものは日本でだけ出土しているのだ。
しかも、西日本地域のみで、出土する場所も偏っているんだよね。
今見つかっているのは、関西圏で兵庫、滋賀、和歌山、中国・四国では島根、徳島。
やはり古代に栄えていた九州ではほとんど出土例がなく、嵯峨野吉野ヶ里遺跡で見つかったくらいみたい。
逆に、同じく祭祀に使われていたと考えられる銅矛は、これらの銅鐸出土地域では少なく、九州や東海地方で多いんだって。
かっつては、銅鐸文化圏と銅矛文化圏があったんだったいう説も唱えられていたんだけど、排他的ではないことがわかってきたので、最近はそこまできっちり文化圏として分けていたとは考えられていないみたい。
好みの違いなのかな?
醤油の色の薄い・濃い、出汁はコンブ・カツオみたいな。

考古学的には、銅鐸は中国大陸にあった「鈴(れい)」が半島経由に日本に伝わり、独自の発展をした、というのが定説みたい。
一方で、半島を経由せずに直接伝わった可能性もあるみたい。
これは、経由地であるはずの朝鮮半島に、鈴と銅鐸をつなぐようなものが見つからないため。
ミッシングリンクなんだよね。
物理的に通過しただけで、文化としては根付かなかったのかもしれないけど。
或いは、何かあるけど見つかっていない、気づかれていないのかもだけど。

今回淡路島で見つかったような銅鐸は小型で、これが時代を下ると大きくなっていくのだ。
しかも、小さい銅鐸には「舌(ぜつ)」というものが中にぶら下がっていて、振ると音が鳴るようになっていたと考えられているのだ。
すなわち、「ベル」のようになっていたんだよね。
ところが、大型化していくうちになくなっていくのだ・・・。
もっとも、巨大なものだと1mを超えるから、もはや振ることはできないけど。
で、音を鳴らすものから見るもの・飾るものに変わったようなのだ。祭祀に使っていた道具がシンボル化されていったということなのかな。

上に書いたように、銅鐸は比較的浅いところに埋まっているので、古い時代にも出土記録があるのだ。
もっとも古いのは天智天皇の時代というから飛鳥時代。
お寺を建立するのに掘り返したら出てきた、というのが「扶桑略記」に出てくるんだって。
正史では「続日本紀」に出てくる8世紀初めの記述があるよ。
いずれにしても、すでに500年以上だっているので、「なんだこれ?」という感じで、その時点でどういうものだったのかは忘れられていたようなのだ・・・。
古代の謎だねぇ。

2015/05/16

隠して、時々公開

長野県の善光寺で御開帳が行われているのだ。
善光寺の御本尊は絶対秘仏とされていて、決して公開されないんだよね。
で、そのために「前立本尊」というのがあって、それが代わりに公開されるシステムのだ。
でも、この前立本尊も数えで7年に1回(公開の年を1年目と数えるので6年に1回)しか公開されないんだ。
今年はその年に当たっていて、GWにはかなりの人出があったみたい。

秘仏というは文字どおり「秘された仏」で、通常公開されていない仏像を指すのだ。
仏像は本来的には信仰の対象として作られているはずなので隠すのはおかしいような気もするんだけど、日本ではけっこうあるんだよね。
東アジアでも日本が顕著なんだとか。
どうも、神道の影響があるんじゃないかと考えられているんだよね。

古代の神道では、山、川、海、巨岩、巨木・・・などの自然物に神が宿るという考えで、その自然物自体が御神体だったんだよね。
奈良県にある大神(おおみわ)神社なんかはその典型例で、三輪山自体が神が宿る御神体で、そこに拝殿が設けられているんだよね。
その後、「神の依り代」という概念が出てきて、神は物理的形状を持たない精神体のような存在で、その神と対話を図るには具体の形をとっていただく必要があるので、依り代に降りていただく、という考えが出てくるのだ。
おそらく、古代信仰では様々な自然現象を説明する上でいろんな神性を想定していたんだけど、必ずしも自然物だけが対象じゃないので、太陽や風、雨などの自然現象を神と結びつけるときには、何か代わりになるものが必要だったのだ。
これがいわゆる御神体というたつで、一般的には鏡や石、剣、玉などなのだ。
でも、飛鳥時代に仏教が伝来すると、仏像というものが日本に伝わって、そのアナロジーで神像というのが作られ始めて、そういった像が御神体になっている場合もあるよ。

こうした御神体をまつる神社の場合は、御神体を雨風から守るための本殿というのがあって、その手前に参拝者がお参りする拝殿が作られるのだ。
この本殿は神の領域で非常に神聖な場所なので、通常は人の立ち入りは禁止で、中ものぞけないようにしているんだよね。
多くの神社では今でも御神体を公開していないのだ。
そして、神仏混淆という日本独自の文化の中で、この非公開の御神体という考え方が、本尊である仏像にも適用されていくのだ。
仏教はもともとは偶像崇拝が禁止だから、仏像に仏性があっちゃまずいんだけど、このあたりが日本の神仏混淆のすごいところなんだよね。

そんなわけで、日本の寺院では少なくない数で秘仏とされている仏像があるのだ。
東京でも、隅田川から引き上げられたという伝説がある浅草寺の御本尊は絶対秘仏で、決して公開されないのだ。
不定期で善光寺のように前立本尊が公開されることはあるんだけどね。
数年前に御開帳があったときはものすごい盛り上がりで、普段は解放されていない伝法院庭園なんかも見られたんだよね。
一方で、法隆寺の救世(ぐぜ)観音など毎年決まった時期に公開されるようなものもあって、同様に秘仏と言っても公開の頻度には差があるのだ。

でも、真言宗の大本山、高野山金剛峯寺の金堂の本尊だった阿閦(あしゅく)如来は、戦前に火事で焼失してしまったんだけど、絶対の秘仏として完全に非公開にされていたため、写真も残っておらず、今となってはどういうものだったかもわからないんだって・・・。
とは言え、そこまで隠されると見たくなるのが人間の性でもあって、途中で天皇や貴族、大名などの有力者の命によりどんなものか改められたなんて話も多いんだよね。
半ば都市伝説化しているけど、法隆寺の救世観音は、岡倉天心さんが米国人のフェノロサさんと一緒に寺僧が止めるのも聞かずに数百年ぶりに表に出した、なんて言われているんだよね。
それ以降、定期的に公開されるようになったのだ。
一度出しちゃったら神秘性が薄れるのかな?

2015/05/09

アルカリの威力

ゴールデンウィーク中に我が家を徹底的に掃除したんだ。
その際、ドラッグストアで買ってきた「水の激落ちくん」というのを使ったんだけど、汚れが落ちる落ちる!
アルカリ電解水100%という商品なんだけど、洗剤は入っていないんだよね。
なので、さっとスプレーして拭き取るだけ。
基本的には水なので、その後に水拭きやから拭きはいらないというものなのだ!

で、これが何かということなんだけど、商品にも書いてあるとおりの「アルカリ電解水」。
水を電気分解して、陰極側に集まってきたpHの高い水。
この商品の場合は洗浄+除菌の効果ということで、pH12~13というかなり高い数値。
普通の水をそのまま電気分解しても水素と酸素になってしまうので、微量に食塩を混ぜておくんだ。
そうすると、陰極側にはナトリウムイオン(Na+)と水素イオン(H+)が集まってくるんだけど、これを取り出してくるのがアルカリ電解水(アルカリイオン水)。
このままだと水素イオン濃度が高くなるので、pHは低くなりそうだけど、陰極では常に電子が供給されるので、水素イオンは電子をもらって水素として外に出て行ってしまうのだ。
すると、残された水溶液は電気的中性を保つためにかえって水酸化物イオン(OH-)が増えてアルカリ性になっているというわけ。
(よくわからないんだけど、直接水酸化ナトリウムの水溶液にするよりはマイルドな溶液でpHは高いままのようなのだ。)


通常の油汚れは脂肪酸がさらに酸化されたものなんだよね。
もともと脂肪酸というくらいで酸性の物質なのでアルカリ性溶液に溶けやすいのだ。
そこを利用したのが重曹で油汚れを落とすという方法なんだけど、同じような状況がこのアルカリイオン水では起こせるのだ!
液性がアルカリ性なので、実はちょっと液性が酸性の中性洗剤よりよく落ちるんだ。
しかも、もともと微量にナトリウムイオンがあるだけなので、重曹を使った後のようにさらに水拭きをしなくてもよいんだ。

激落ちくんページを見ると、pHが高くなることで表面張力が低下して浸透力が強くなっているとか、負に帯電させることで電気的な反発力を発生させるとか書いてあるんだけど、何よりアルカリ性条件下での過酸化脂肪酸の加水分解が大きいと思うのだ。
ちなみに、激落ちくんのページにもちゃんとこの効果は書いてあるよ。
アルカリイオン水をスプレーして少しすると汚れが浮いてきたように見えるので、この間に反応が起こっているはずなのだ。
これがおもしろいようによく落ちるんだよね。
アルコール系もよく落ちるけど、ただの水にしか見えないのにそれ以上の効果だよ!

スーパーでは飲用のアルカリイオン水も売っているよね。
あれはもっとpHが低くて9くらい。
健康にどういう効果があるのかは正直よくわからないけど、料理では影響があるみたい。
日本は出汁の文化だけど、出汁のうまみ成分はイノシン酸やグルタミン酸といった酸性の物質。
なので、アルカリ性のアルカリイオン水だと普通の水道水よりよく出汁が出るというのだ!
自分で検証したことはないけど(笑)
ちなみに、日本茶では、甘み成分であるアミノ酸や苦み成分のカテキンが多く抽出されるんだって。
短い時間でいいってことかな?

2015/05/02

「新」の意味するところ

春になると出てくるのが、「新タマネギ」や「新ジャガイモ」。
最初はただ単に収穫したてを出荷しているものだと思っていたんだけど、どうやらそうではないみたいなのだ。
そもそも、「新」がつかないものとは栽培種として違うみたい!
これはけっこう個人的に衝撃的な事実だったんだよね。

まずタマネギから。
一般的にタマネギというと、茶色くて固い皮に覆われたものを思い浮かべるよね。
これはいったん収穫した後貯蔵して、乾燥させたものなのだ。
保存性の高い「黄タマネギ」という種類で、主に寒い地域に広まっていったものみたい。
なんと言っても辛みがあることが特徴で、水にさらさないと生食はきついのだ(>o<)
でも、その辛み成分は熱に弱いので、弱火でじっくりと炒めると飴色になって甘みが出るんだよね。

北海道では春に種をまいて秋に収穫し、最低1ヶ月は貯蔵してから出荷していくらしいのだ。
逆に、関東より西の地域では、秋に種をまいて春に収穫し、そこから出荷するんだ。
北海道とその他の地域でちょうど栽培サイクルが逆になっているのと、長期に保存できるので、1年中食べられるわけ。
もともと中央アジアが原産と考えられているけど、この保存性の高さが世界各地に広まっていく原動力になったのだ。
かつては陸路で欧州にわたり、大航海時代以降は船に乗せられて南北米大陸や東アジア・東南アジアに広がっていったみたい。
日本には明治になってきてから入ってきたようなので、それにしてはすごい広がりだよね。

一方、新タマネギと言われているのは、春に収穫されて、そのまま貯蔵せずに出荷される「白タマネギ」のこと。
つまり、北海道産の新タマネギはないのだ。
もともと「白タマネギ」は水分が多くてみずみずしいんだけど、保存性が低いんだよね。
乾燥させて使う場合もあるけど、新タマネギとして出荷される場合はすぐに消費するのだ。
この白タマネギは一般に辛みが少なく、甘みが強いので、水にさらさなくても生食できるんだよ。
ただし、水分が多く煮崩れやすいので、煮込み料理なんかには向かないのだ。

次にジャガイモ。
ジャガイモも通常は収穫した後に貯蔵してから出荷されるんだけど、やはり貯蔵しないで出荷するのが新ジャガイモ。
貯蔵してから出荷するジャガイモは、北海道では春に植えて、秋に収穫するのだ。
これはタマネギと同じ。
九州などの暖かい地域では、冬に植えて春夏に収穫するものと、夏の終わりに植えて冬に収穫するものがあるんだ。
このうち、冬に植えて春のうちに収穫してしまうものが新ジャガイモ。
つまり、北海道産の新ジャガイモはないのだ!

まだ早いうちに収穫される新ジャガイモは、小ぶりで水分が多く、川が薄いのが特徴。
そのため長期保存には向かないんだけど、ちょっとこするだけで皮がむけるし、もともと皮が薄くてむかなくても食べられるので、煮物なんかにするところころしておいしいのだ。
皮ぎしがおいしいというのは野菜や果物の常なので、皮をむかない方が新ジャガイモの真のおいしさが味わえるよ。
また、新ジャガイモはビタミンCが多いことも特徴なんだよね。
もともと水分が多くてやわらないから、じっくり加熱するのではなく、蒸したり焼いたりゆでたりして柔らかくなったところで食べるのがよいのだ。

似たものに新キャベツ(又は春キャベツ)というのもあうよね。
キャベツはもともと寒い地方の野菜で、だからこそ結球して丸くなるんだけど、春に収穫する、水分が多くて柔らかいものが春キャベツなのだ。
いわゆる普通のキャベツは愛知県などの地域では冬に収穫し、冷涼な気候の北海道では春から夏にかけて収穫するんだけど、千葉、神奈川、茨城なんかではこの春キャベツが作られているのだ。
やっぱり水分の多さから保存性が悪く、すぐに煮崩れするので加熱調理には向かないんだけど、その甘さと柔らかさから人気があるんだよね。

というわけで、春はみずみずしく、甘い野菜が旬なのだ。
新タマネギ、新ジャガイモ、春キャベツはこの時期しか食べられないものだから、楽しまないとね。
それにしても、北海道産がないとか、そもそも栽培種が違うとかはしらなかったなぁ。
家庭菜園なんかやっている人だったら知っていることなのかな?

2015/04/25

ドローン、ぱ

衝撃的な出来事が起こったのだ!
首相官邸でいつの間にか入り込んだドローンが屋上で発見されたんだよね。
職員が朝見つけた、と報道されているけど、いつからそこにあったのかがよくわからない、ということ。
健康に影響のないレベルの放射性セシウムが搭載されていたようだけど、これってすごく危険だよね。
もっと危ないものを持って突っ込んできたらテロになるのだ。
まさにマスコミもその論調で、早急に規制の検討を、という流れになってきているよね。
首相官邸などのVIPがいる重要施設もそうだけど、発電所や変電所なんかに突っ込まれたら大規模停電が発生するおそれがあるし、「いつの間にか入り込まれる」というのはかなり危うい状況なのだ。

ここで言われている「ドローン」は主に小型の無人航空機のことで、多くの場合は複数の回転翼を持つラジコン航空機なんだよね。
もともとドローンという語は、ロボットのうち、特定の機能を持った移動型端末を指す言葉。
中央の制御の下で自動的に警備をするパトロール・ロボットなんかもドローンなんだよね。
映画のスターウォーズやアニメのサイコパスに出てくるのはむしろそっちに近いもの。
ただ、現実世界ではそういうのはまだあまりなくて、カメラや農薬散布機を搭載した、ちょっと大きめのラジコンヘリが「ドローン」として市販されているよ。

YouTubeなんかでも、ドローンを使って撮影した動画があるけど、鳥の視点で大きな川の水面上をなめるように飛ぶなどの迫力ある映像なんかはすごいよね。
米国なんかの大規模農業では、無人航空機を使って農薬散布をしていたりもして、実用になっているのだ。
でも、むしろ米国で開発が盛んなのは軍事用途なんだよね。
巡航ミサイルはそのまま無人航空機を特攻させるものだけど、そういう攻撃につかうものだけでなく、偵察目的のものが重要なのだ。
特に、小型・静音でできれば、いつの間にか偵察してくることが可能だからね。
今回もまさに、小型のものが気づかれぬまま侵入していた、という点が問題なのだ・・・。

そのため、何かドローンの利用について規制の枠組みが必要だろう、となっているわけ。
でも、実際にはいろんな分野でドローンの活用が期待されているので、業界では、やっていいこととやってはいけないことを明確化してもらうためにも、何か規制の枠組みを作ってもらった方が事業展開がしやすい、という声はあったみたい。
今回のような事案があると、むしろ監視を強化する、的なものとなるので、ドローンを使っていろんなビジネスを検討していた人たちからすると不幸なことになるかもね・・・。
がんじがらめでやりづらくなるおそれがあるのだ。

現状での規制はどうなっているかというと、基本は航空法。
ラジコンの場合は電波を使うので電波法もあるけど。
でも、航空法では、第二条第1項で「この法律において「航空機」とは、人が乗つて航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器をいう。」と定義していて、「人が乗るもの」が航空機とされているので、無人航空機はもとより対象外となっているのだ。
これは各国の航空法規や国際条約でもそうみたい。
ちなみん、飛行機、回転翼航空機(ヘリコプター)、滑空機(グライダー)及び飛行船のほかに政令で定められている航空機は現時点では存在していないのだ。

一方で、航空機の安全な航行を図る観点から、空域の利用規制というのもあって、ラジコンヘリを飛ばす行為はその中で規制されるのだ。
航空法第99条の2の第2項で「前項の空域以外の空域における航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為(物件の設置及び植栽を除く。)で国土交通省令で定めるものをしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を国土交通大臣に通報しなければならない。」と定めているものがそれ。
「前項の空域」というのは同条第1項で言及されている空域で、空港などの近郊の航空管制が行われている空域のことで、それ以外の一般空域での行為の規制になっているのだ。
法律で言う国土交通省令は航空法施行規則で、第209条の4で以下のように規定しているよ。

第二百九条の四 法第九十九条の二第二項の航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為で国土交通省令で定めるものは、次の各号に掲げる行為とする。
 一 ロケット、花火、ロックーンその他の物件を法第九十九条の二第二項 の空域のうち次に掲げる空域に打ちあげること。
  イ 進入表面、転移表面若しくは水平表面又は法第五十六条第一項 の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域
  ロ 航空路内の地表又は水面から百五十メートル以上の高さの空域
  ハ 地表又は水面から二百五十メートル以上の高さの空域
 二 気球(玩具用のもの及びこれに類する構造のものを除く。)を前号の空域に放し、又は浮揚させること。
 三 模型航空機を第一号の空域で飛行させること。
 四 航空機の集団飛行を第一号の空域で行うこと。
 五 ハンググライダー又はパラグライダーの飛行を第一号イの空域で行うこと。
2 前項の行為を行おうとする者は、あらかじめ、前条第二項第一号、第三号及び第四号に掲げる事項を国土交通大臣に通報しなければならない。


ラジコンヘリは第1項第3号に該当するんだけど、基本的には地表又は水面から250mまでの空域なら通報などをせずとも飛ばすことができるということ。
今はドローンについても同じと解釈されているようなんだけど、これがもっと厳しい規制になる可能性があるんだよね・・・。
ビジネスとしてやるものについては事前に届出をして、とか、許可を取って、というのもあるのかもしれないけど、趣味でやるようなドローンでの空撮みたいなのは今後やりづらくなるのかも。
どうなることやら。

2015/04/18

ぷっちんでないプリン

春は歓迎会やお花見で宴席が多くなるよね。
で、ある程度年齢が高くなると、「痛風の気があるので、ビールじゃなくて焼酎」なんてことを発言する男性が増えてくるのだ・・・。
この人たちが気にしているのが食品中に含まれている「プリン体」なんだよね。
アルコール飲料の中ではビールはダントツでプリン体を多く含んでいて、まさに痛風の敵なのだ。
逆に、見た目はビールに似ていても、ホッピーの場合はプリン体がほとんど含まれていないので、痛風持ちの人に好まれているよ。

まず、痛風というのは、血液中の尿酸の量が増え(高尿酸血症)、その結果として関節に尿酸の結晶が析出してしまうことにより生じる炎症のことなのだ。
結晶は分子ごとにいろんな形をとるけど、尿酸の場合は針状結晶といって、細長い針のような形の結晶になるんだよね。
これが文字どおり関節の内側から刺さるわけで、「風が吹いただけで痛い」というような症状になるのだ。
尿酸はプリン体が代謝されてできるもので、実は水に溶けにくい性質があるんだよね。
本来であれば、これがより水に溶けやすくて無害なアラントインという物質に分解されるんだけど、その手前で詰まって血中の尿酸濃度が高まると、高尿酸血症となるのだ。
ちなみに、アラントインは排泄直前にアンモニアになって尿中に排出されるんだけど、これがおしっこのにおいのもと。

でも、血液中に尿酸が多いからといってただちに痛風になるわけではなく、個人差があることでも知られているんだよね。
遺伝的要因、環境要因(食生活やストレスの有無、アルコール接種の頻度・量など)が様々にからまっているみたい。
「みたい」というのは、けっきょくのところ何が引き金になって高尿酸血症から痛風を発症するかがわかっていないからなんだよね。
とは言え、血液検査で尿酸値が高い場合はすでに「予備軍」ではあるので、医者から気をつけるように言われるのだ。
多くの場合、プリン体の多い食品は控える、アルコールはおさえる、塩分も控えめに、三食規則正しく、なんてところ。

ここで出てくる「プリン体」というのは、プリン骨格を持つ有機化合物の集合のこと。
プリン骨格というのは、窒素が入った「亀の子構造」でそれぞれ窒素が2つ入った6員環とと5員環がくっついたものなのだ。
これはDNAを構成する4つの核酸塩基ACGTのうち、A(アデニン)とG(グアニン)がこの構造を持っているのだ。
C(シトシン)とT(チミン)はピリミジン骨格で、6員環のみで5員環がないんだよね。
で、この核酸は実はうまみ成分でもあるので、かつお出汁や鶏ガラスープなんかにも大量に含まれているのだ・・・。
プリン体の摂取を控えるには、コンブ出汁に切り替える必要があるよ(笑)

プリン体が多く含まれる食品として有名なのはなんと言ってもレバー。
魚卵も避けられるけど、量的にはそんなに多くはないみたい。
でも、肉や赤身の魚にはけっこうプリン体が含まれているので、それらも摂取を控えるように指導されることが多いよ。
ビールについてはアルコール飲料の中では多いもので、絶対量としてはそんなに多くないんだ。
でも、アルコール摂取によって血液中の尿酸量は増えることが知られているので、アルコールの効果+プリン体のダブルパンチできいてくるビールはダメなのだ。
逆に、焼酎などの蒸留酒はプリン体フリーだから飲んで大丈夫、と思われているけど、アルコールによる効果はあるので、飲酒量自体は減らす必要があるんだよね。

痛風予備軍の人たちがプリン体とアルコールの摂取以外に指導されるのは、まずなんと言っても水を飲むこと。
そもそも水を大量に飲んでどんどん尿酸を体外に出そうということなのだ。
欧州で喫茶文化が発展した理由の一つには痛風の予防・緩和に茶やコーヒーによる利尿効果があったみたい。
継ぐに、野菜を多くとることも推奨されるんだよね。
尿酸は中性~アルカリ性のときによく溶けるので、野菜を摂取することで血液のpHを上げることに効果があるのだ。
逆に、果物に含まれる果糖を多く摂取すると血液が酸性に傾くため、尿酸が溶けづらくなるのだ・・・。
なので、野菜の代わりに果物を多く、っていうのはダメみたい。

多くの生活習慣病は同じ結論に達するんだけど、三食規則正しく、野菜は多めに、塩分は少なく、アルコールも適度に、ってことなんだよね。
正直おもしろみのない食事だけど、それが健康的なのだ。
若いときはいいんだけど、ある程度年齢を重ねるとこういうのにも気をつけていかないといけないんだよねぇ・・・。

2015/04/11

南洋の親日国

天皇皇后両陛下が、ミクロネシアのパラオ共和国を御訪問されたのだ。
パラオというとどうしても第二次世界大戦(太平洋戦争)時のイメージがつきまとうけよね。
今回も、両陛下は、戦後70年目の節目に、激戦地となって多くの戦死者を出したパラオに「慰霊の旅」ととして訪問された、と報道されているよね。
ペリリュー島の戦いでは、日本軍はゲリラ作戦による組織的徹底抗戦で米軍に大きな被害も与えたんだけど、当然自軍の被害も甚大で、戦死者1万人超、捕虜200名強。
実は、米軍の占領後もゲリラ的に戦っていて、最後の生き残り34名が投稿したのは昭和22年(1977年)になったからなんだって。

そうしてどうしても先導のイメージがつきまとうのだけど、日本との関わりはそれ以前に遡るのだ。
もともとは19世紀の終わりにスペインの植民地になったんだけど、衰退の一途をたどっていたスペインはグアム島を除くスペイン領ミクロネシアを一括してドイツに売却・・・。
19世紀末にドイツの植民地となるのだ。
ドイツは植民地獲得競争で出遅れていたこともあって、ここを拠点とするべく、ココナッツやタピオカの栽培、鉱石の採掘など産業振興を進めたそうだよ。
ただし、ドイツ式の植民地経営なので、このときには現地の水道や道路などのインフラ整備はほとんどなく、かつ、現地民への教育もほとんど行われなかったとか。

転機が来るのは第一次世界大戦の後。
英米とともに連合国軍に加わった日本が海軍を派遣し、ミクロネシアのドイツ軍を降伏させ、占領下に置いたのだ。
第一次世界大戦の戦後処理をするパリ講和条約により、パラオはドイツの植民地を脱し、日本の委任統治領になったんだ。
ここで日本の関わりが強くなっていくわけ。
旧首都のコロール(現在でもパラオ最大の都市)に「南洋庁」及び「南洋西部支庁(パラオ支庁)」が置かれ、周辺の植民地経営の中心地として栄えていくのだ。
日本からの移民も増え、パラオ支庁管内では住民の4人に3人が日本人だったそうだよ。

日本の統治が始まると、ドイツ時代とは打って変わってインフラの整備が進み、水道や道路のみならず、学校や病院なども作られていったんだ。
その結果、コロールは一気に近代的な都市に変貌していったそうだよ。
日本語による現地人への学校教育も開始され(ただし、日本人学校とは別)、今でもその名残で日本語を解する現地の方も多くいるみたい。
日本語由来の言葉も残っていて、有名なものでは、扇風機や電話はそのまま「センプウキ」、「デンワ」、ビールは「ツカレナオス」、おいしいは「アジダイジョウブ」、混乱するは「アタマグルグル」などなど。
第二次世界大戦までの委任統治時代の好印象が今でも残っていて、ミクロネシアで最大の親日国と言われているんだよね。

日本が国際連盟を脱退後も、パリ講和条約に基づく委任統治だということで日本の統治が続くんだけど、国際連盟を抜けたために「軍事施設を委任統治領に置いてはならない」という制約が外れ、海軍施設が作られるんだよね。
これが太平洋戦争で攻撃の対象となってしまうのだ・・・。
一部の現地民は軍属として従軍したこともあったようだけど、基本的にはペリリューの戦いでもパラオ民間人の支社は出ておらず、他省の反感はあっても、日本への嫌悪感のようなものは生まれなかったんだって。
なので、今でも親日が続いているのだ。

戦後は国際連合の委託を受け、米国の信任統治下に置かれることとなったのだ。
米国は教育や健康福祉には支援をするんだけど、基本的に産業振興はしなかったので、現在の主要産業が観光になっているんだよね。
食糧や燃料などでパラオの財政はかなりの入超になっているみたい。
しかも、米国との間の自由連合盟約(コンパクト)と呼ばれる協定を結んでいて、パラオは米国に財政支援を受ける一方で自らは軍隊を持たず、国防と安全保障を米国に委ねているんだ。
日米安保だと日本はお金を払っているんだけどね・・・。
当初のコンパクトでは米国の財政支援は平成21年までだったんだけど、改訂コンパクトが署名され、さらに平成22年から平成37年までの15年間の財政支援が決まったのだ。
で、けっきょく経済面ではずっと米国に依存する体制が残ってしまっているんだよね。
国としては自立しているんだけど、実際上は米国の強い影響下にあるのだ。

でもでも、先に紹介したように日本語由来の現地語も残っているし、現在のパラオの人口で見ても日系が25%ほどいるくらいで、日本に極めて好意的な国でもあるんだよね。
国旗も青字に黄色の丸で、版倉でっしゅと同じような日の丸方式の国旗になっているのだ!
今回は両陛下の御訪問に当たって更に互いの行き来が活性化しているみたいだし、できるだけ良好な関係を維持したいよね。
そのためにも、戦争の負の歴史も含めて、もっとパラオのことを知る必要があるんだろうなぁ。

2015/04/04

祝・御入学

秋篠宮家の佳子内親王殿下が国際基督教大学(ICU)に御入学されたのだ♪
もともと学習院大学に入学されたんだけど、思うところがあって入り直されたんだよね。
「絵になる」だけあって、マスコミも追いかけているよね(笑)
でも、最近は「身近な皇室」ということで、「内親王」という正式な称号はあまり使われず、ただ単に「様」付けなのだ。
本当は皇族としての「格」によって称号は使い分けられているんだよね。

皇族の称号は皇室典範で定められていて、第6条で「嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、男を親王、女を内親王とし、三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王、女を女王とする。」となっているんだ。
正直これだけだとわからないんだけど(笑)
まず、「嫡出」というのは、「正妻が産んだ子供」という意味。
現在ではまず側室を持たないけど、戦前は正妻のほかに側室を持っていたのだ。
実際、明治天皇も、大正天皇も側室の子供が皇位を継承したんだよね。
ちなみに、正妻の子供は「嫡出子」、側室の子供は「庶子」と言うんだよ。
なので、ここで大事なのは、「嫡出子」じゃないと「親王」又は「内親王」とは呼ばれないのだ。

次に「皇子」。
歴史の授業で出てくる「皇子」はたいてい「みこ」と呼んで男性皇族を指すけど、ここでは「天皇の子供」という意味で男女の別はないのだ。
なのだ、この第6条の条文でも後ろで、「男を親王、女を内親王とし」となっているんだよね。
合わせると「嫡出の皇子」なので、天皇とその性質である皇后の間の子供ということになるのだ。
つまり、天皇・皇后両陛下の子供であれば必ず親王・内親王なのだ。

その次は「嫡男系の嫡出」なんだけど、これが正直わかりづらいよね。
「嫡男系」というのは、男系で、かつ、正妻の子供の系ということ。
むかしから女性皇族は皇族以外の人と婚姻をすると「皇籍離脱(降嫁)」するので、天皇家の皇統は男系なのだ。
代々男性皇族が皇位を継承していく皇統の中で、「嫡出」=正妻の子供の系譜というのが、ここで言う「嫡男系の嫡出」。
これはその次に「皇孫」と来るので、孫の代のことを言っているので、男系の皇統の中で正妻の子供として生まれた天皇の孫、ということなのだ。
皇位は継承されていくので、基本は「庶子」でない限り、天皇の孫は親王・内親王になるわけ。
皇子と皇孫を合わせると、天皇から見て二親等以内の親族が親王・内親王となるのだ。

逆に、その後ろにある王・女王はというと、三世以下とあるので、曾祖父は天皇だったけど、祖父は天皇の兄弟で皇位を継承していなかった親族、ということなのだ。
例えば、昭和天皇の弟である三笠宮崇仁親王の子供の寛仁親王(「ひげの殿下」)は大正天皇の皇孫なので「親王」なんだけど、その娘たち(彬子女王・瑶子女王)は大正天皇の曾孫ではあるけど、昭和天皇の嫡男系に入らないので、「女王」なのだ。
ちなみに、今上天皇の弟宮の常陸宮正仁親王にはお子さんがいらっしゃらないので、王・女王になる皇族はいないのだ。

今は「王」はいなくて「女王」だけなのであまり問題にならないけど、皇室典範上は「三世以下」としていて、どこまでの親族を含めるかが書いていないから、男子が生まれ続ける限りは理念上皇族になるのだ。
どんなに天皇家との関係が離れてしまっても!
一応、第11条の規定により皇室会議の議により皇籍離脱は可能になっているんだけど、強制的に臣籍降下させることはできないんだよね・・・。
でも、戦後に今の皇室制度ができる際には、天皇家から比較的遠い皇族は臣籍降下し、宮家が整理されたのだ。
JOCの竹田会長ももとは竹田宮家の皇族だったんだよね。
今は男性皇族が少ないことが問題なので表面化しないけど、いずれ男子がたくさん生まれると、どこまでの範囲を皇族とするかを考えないと行けないときが来るのだ。

なお、「王」であっても、皇族として皇位継承権を持つので、天皇に即位する場合があるんだよね。
皇室典範でもそれは想定していて、その場合、皇位継承した「王」の兄弟姉妹は王・女王から自動的に親王・内親王になることが第7条に規定されているんだ。
こっちは実は結構危なくて、秋篠宮家に悠仁親王が生まれる前までは、現実的にあるかもしれないオプションだったんだよね。
ま、その時点ですでに「王」はいなかったので、もっと問題なんだけど・・・。
なので、一度皇籍離脱した男性の元皇族を皇籍復帰させるか、女性皇族の皇位継承を認めるか、という議論をしていたんだよねぇ。

2015/03/28

塗ってパワーアップ

最近はTOKIOの鉄腕DASHでもおなじみだけど、日本古来の防腐剤に「柿渋」というのがあるのだ。
ひどいにおいのある、茶色い液体で、漆器の製造過程で漆を塗る前の下地に塗ったり、布や紙に塗って耐水性・耐久性を高めたりするのだ。
柿渋を塗った茶色いうちわが渋うちわで、ウナギや焼き鳥を焼くときに手でたたきながら使うやつだよね。
柿渋を塗ると紙が破けにくくなって丈夫になるのだ。
時代劇で浪人が傘張りの内職をしているけど、このとき骨組みに張る紙も柿渋を塗ったもの。
丈夫になるだけじゃなく、耐水性が高まるからなんだよね。
柿渋染めなんてのもあって、まさに渋い茶褐色に染まるんだけど、これも布の耐久性が高まるのだ。

これはすべて柿渋に含まれているタンニンのなせる技。
タンニンは皮なめしに使われる成分だけど、ポリフェノールの一種で、空気中では酸素と反応し、酸化重合して高分子になるのだ。
柿渋を塗ったり、しみこませたりすると、その部分で柿渋中のタンニンの重合が起こり、高分子の皮膜ができるんだよね。
これが水をはじくとともに、耐久性を上げることにつながるのだ!
さらに、柿渋タンニンには強いタンパク質凝集作用があるので、防腐剤にもなっているんだ。
古くは即身仏を作る際にも塗っていたとか。

漆も同じように空気中で重合して高分子の皮膜を形成するんだけど、柿渋との違いは、固まった後の硬さ。
漆はプラスチックのように硬質化するんだけど、柿渋は弾性のあるこんにゃく様に固まるんだ。
これが水にもアルコールにも溶けないものなので、耐久性や耐水性が向上するのだ。
これは漆と柿渋をそれぞれ空気中に放置しておくとわかるんだけど、漆はかちっと固まってしまうのに対し、柿渋はとろみが出て、ゼリー状になってからこんにゃくのように固まるのだ。
この皮膜の硬さの違いが使い方の違いで、最終用途の差にもなるわけだよね。
ある程度の柔軟性が求められる布や紙への塗布は柿渋が向いているし、むしろ、食器とか刀のさやとかリジッドなものには漆が向いているのだ。
ただし、防腐効果は柿渋にしかないので、漆器を作る際はまず木地に柿渋を塗って、その上に漆となるわけ。

柿渋は平安時代には使われていたと考えられていて、非常に古いものなのだ。
作り方は割とシンプルで、まだ青いうちに渋柿を砕いてつぶし、水にひたひたに浸して発酵させるのだ。
この発酵過程で青渋柿に含まれていた可溶性タンニンが水の中に溶け出すんだって。
熟す過程で可溶性タンニンの量が減ってしまうので、未成熟の青いうちに取り出すことが重要なんだよ。
しばらくすると泡が出てくるので、発酵が進んでいるかどうかはわかるよ。
ある程度のところで一度搾り取ったものが「生渋」。
これをさらに2~3年熟成させると茶褐色のとろんとした柿渋ができあがるのだ。
柿渋は発酵過程で酢酸や酪酸などの有機酸が発生するので、強烈な悪臭があるんだよね・・・。
今ではこれらの有機酸を除去した無臭柿渋なるものもあるらしいけど。
ちなみに、絞りかすに更に水を加えて「二番渋」を取ることもあるのだ。

この熟成の過程では徐々に柿渋中のタンニンが縮合して、大きな分子になっていっているんだよね。
これが茶色い色の正体。
ポリフェノール系の物質は重合して分子数が大きくなると茶色くなってくるのだ。
甘柿や渋抜き柿の黒い点々も可溶性タンニンが重合して、不溶性になったものだよ。
塗布するにはこれくらいの方が扱いやすいんだけど、生渋を好む人もいるみたい。
ちなみに、あまりに無造作に放置しておくと重合がどんどん進んでしまってこんにゃくのように固まってしまうのだ。
ちょっととろみが出てきたくらいなら水を加えて加熱すると元に戻るそうなんだけど、かっちり固まってしまうともうそれは使えないんだって。
ただ、どうしたら固まりにくくなるのかなどはよ正直よくわかっていないみたい。
あらかじめ加熱すればいいとか、ナスと一緒に煮てアントシアニンを溶出させとくとよいとか、いろいろあるみたいだけど、これといった決定打にはなっていないようだよ。

ちなみに、生渋を熟成させるには「悪臭」が重要で、発酵の過程でできた有機酸のおかげで液性が酸性に傾くので、微生物が繁殖しづらくなっているのだ。
なので、腐敗することなく、熟成が進むわけ。
また、熟成させていく過程では同時に発酵も進んでいるので、柿渋中に含まれている糖やペクチンのような成分は軒並み分解され、有機酸に変わっているのだ。
糖やペクチンといった可溶性の成分を抱えたまま高分子の皮膜ができると、可溶性成分のあるところは皮膜が薄くなったり、穴が空いたりしてしまうわけだけど、これが分解された有機酸だと、水と一緒に飛んでくれるので、皮膜が安定的にできるという利点もあるみたい。
科学的に余計な成分を取り除いているのならいいけど、フルーティな香りが残っている生渋でなく、悪臭のある柿渋を使うのにもちゃんと理由があるのだ。
昔の人はこれを経験値で技術として高めたんだからすごいよねぇ。
くさくてもがまんして塗っていたわけだし(笑)

2015/03/21

飛び起きる痛さ

火曜日早朝、いつもより30分早く起きる必要があって、目覚ましが鳴ってからさあ起きるぞ、とベッドの中で伸びをしたときにそれは起こったのだ!
ふくらはぎに走る激痛。
できればすぐに逆方向に筋肉を伸ばしたいけど、そもそも痛くて起き上がれない・・・。
たった10秒くらいだけど、無限に続くかと思われた、苦痛の時間だったのだ(>o<)
これがうわさの寝起きこむら返りかorz

「こむら返り」は、ふくらはぎの筋肉である腓腹筋が異常収縮してけいれんすること。
ふくらはぎが突っ張って、何とも言いようのない激痛が走るのだ。
まるでふくらはぎの筋肉の繊維の束がねじられ、あらぬ方向に引き延ばされる感じ・・・。
「こむら」というのは古い言葉で「ふくらはぎ」のことで、漢字では「腓」と書くんだよね。
で、このふくらはぎがまさにひっくり返るように感じるからこむら返り!
妖怪の名前でもありそうなほど凶悪だよね(笑)

こむら返りは筋肉のけいれんの一種だけど、ただ単に「つる」のではなくて、個別に名前がつくくらいだから、やっぱりインパクトが大きいんだろうね。
実際、スポーツをしていると、いきなり走り出したときに太ももがつって動けなくなることもあるけど、こむら返りほど痛いか、というと、痛さはそれほどでもなくて、動けなくなるという感覚の方が強いように思うんだ。
ボクは時々朝起きようとして首をひねってつることがあるけど、これも痛いのは痛いけど、こむら返りほどの破壊力はないのだ。
やっぱり筋肉の形状とか、痛覚神経への近さとか、いろいろと要因があるんだろうなぁ。

でも、こむら返りがなぜ起こるかはまったく未解明なんだよね。
一般に運動不足の人がいきなり運動した(走る、泳ぐなど)、脱水状態・電解質代謝異常だったなんてときに置きやすいと言われているのだ。
運動の後はわかりやすいけど、睡眠時に起こるのがきついんだよね・・・。
いきなり足に激痛が走って目が覚めるわけだから。
原因がわからないので防ぎようもないんだけど、よく筋肉をマッサージしてほぐして血流もよくしておく、水分補給や電解質補給(特にカルシウムとマグネシウム)をしておく、などが一般的な予防法としてあげられるもの。
特に、運動をあまりしていない人がいきなり走ったり泳いだりした場合は、ストレッチをした上でお風呂でよく暖まりながら筋肉をほぐしたりするといいみたい。
ボクの場合も朝のいつもの電車にちょっと遅れそうになって走ったのが原因じゃないかと思うんだよね。

ただし、別の病気が原因でこむら返りが起こりやすくなることもあるそうなのだ。
腎不全や下肢静脈瘤なんかで頻発することもあるとか。
これは血流が悪くなることに原因があるのかな?
妊娠中もこむら返りがよく発生する場合があって、これは電解質代謝異常とかなのかな?
あまりに高頻度に起こる場合は何か病的な原因がある可能性があるので、医者と相談した方がいいみたい。

こむら返りが起こっている最中は痛くてそれどころじゃないんだけど、ふくらはぎを観察してみると、力こぶのように難く盛り上がっているんだそうだよ。
これは、ふくらはぎの筋肉が局所的に硬く収縮(「強縮」)しているためで、異常な筋肉の興奮が継続している状態なのだ。
原因は不明ながら、運動神経から筋肉への情報伝達に不具合が発生していると考えられているのだ。
もっと上位の神経伝達に問題がある場合は、ふくらはぎだけに異常収縮が起こるわけがないので、運動神経の末端部で神経伝達物質が異常に放出されてしまうとかなんとかそういうことが起きているはずなのだ。
電解質代謝異常が原因として疑われるのもこのあたりから来ているよ。

慢性的に筋肉が硬く収縮してしまう状態が「こり」で、まさに肩こりの場合はこれをほぐすわけだけど、一気に、急に難く「こる」と「つる」という状態になるのだ。
痛いけど我慢して筋肉がほぐれるようにしてあげると、収まることもあるんだけど、これがきついんだよね(笑)
難くなっているふくらはぎをもむなんてのはもってのほかで、せいぜいふくらはぎを伸ばす方向にストレッチするのが関の山。
病的なけいれんの場合は筋弛緩剤なんかで無理矢理収縮を抑えることもあるみたいだけど、単なるこむら返りだと、やっぱり我慢するしかないんだよね(ToT)
ちなみに、心臓の筋肉で同様のことが起こるのが心室細動。
この場合は外から強い電気ショックを与えて異常収縮を解除するんだけど、そのための機械がAED(自動体外式除細動器)なのだ。
ということは、ひどいこむら返りには低周波治療器をぺたんとつけてスイッチを入れると効果があるかも?

2015/03/14

春の小川は道の下

春の小川はさらさら行くよ♪、と歌われていたのは、渋谷を流れていた宇田川の支流のひとつの河骨川と言われているんだよね。
小田急線の代々木八幡駅と参宮橋駅の間には歌碑もあるんだって。
でも、そんなところに川はない・・・。
実は、この川はすでに地中に埋められているんだよね。
「地中に埋める」というと埋め立てているような印象を受けるけど、そうではなく、地中を流れる川となっているのだ。
川の上にふたをしているイメージ。

この川を地中に埋めることを暗渠化と呼ぶんだ。
暗渠というのは「隠れた水路」といった意味で、逆に、水路がそのまま流れているものは「開渠」と言うのだ。
昭和の時代によくあった「どぶ川」だよね。
1964年の東京五輪を一つの契機として、治水対策、生活排水の流入による異臭対策等々から、これらのどぶ川と化した川の多くは、地中に埋められることとなったのだ。
23区内には川もないのに「○○橋」という交差点が多くあるけど(例えば銀座の数寄屋橋や三原橋など)、これもその下には川が流れているんだよ。
また、「○○川緑道」というのがあるけど、これは暗渠化した川の上が緑道として整備されたものなんだ。
もともと川の流れなので、蛇行しているんだよね。

家康公が入府する前の江戸は、広大な湿地で、銀座のあたりはもう入り江だったんだよね。
日比谷入江と呼ばれていて、太田道灌公が江戸城を最初に築いたときにはウォーターフロントで、目の前に江戸湾が広がっていたのだ・・・。
江戸幕府が成立して以降、城下町としての整備が進み、江戸城まわりに流れていた平川などがお堀として利用されるとともに、銀座方面は埋め立てが進んでいったのだ。
埋め立ては江戸末期まで続くんだよね(って、明治にも月島などが埋め立てられているけど。)。
でも、もともとは湿地帯で水はけの悪い土地。
そのまま埋め立てても地盤が弱いので、縦横に堀割を切って水を流し、水はけを改善したんだよね。
そのための開削工事が大土木工事として行われていたようなのだ。

仙台堀川なんかは仙台藩が実施した事業なので、その名前がついていたりするんだよ(今は暗渠化され、公園になっているよ。)。
いわゆる本所・深川地域の堀割では、堅川は暗渠になっているけど、横十間川や小名木川、大横川などは水路として水運交通の役割も担っていたこともあり、今でも開渠で残っているのだ。
川幅も広いので、埋め立てられるまでには至らなかったのかも。
隅田川に出る水路としての機能もあるしね。
月島運河なんかは今でも水運で使われているのだ。
同じ水運に使われていた日本橋川、銀座川、築地川は暗渠になっているので、都市計画との関係も大きいんだろうけど。

江戸二大上水も、いまだにすべて開渠になっている神田川(神田上水)は例外で、玉川上水とその支流となっている千川上水も暗渠になっているよ。
千川上水は今は千川通りという主要道路になっていて、玉川上水は三鷹あたりでは開渠になっているけど、都心に入ると緑道になっているのだ。
甲州街道(国道16号線)沿いに緑道があるよね。
もともと世田谷あたりも湧水が有名で水が多く出たので「北沢」、「野沢」、「奥沢」などなど「沢」がつく地名が多いんだけど、そのために川も多く、北沢川、蛇崩川、烏山川などが暗渠になっているよ。

最初に出てきた渋谷だと、渋谷川、宇田川、穏田川なんかが暗渠になっているんだよね。
渋谷はその名前のとおり「谷」になっていて、渋谷駅付近がすり鉢の底で、まわりを坂で囲まれているんだけど、当然そこに水の流れがあったんだよね。
それが全部地下に埋められているんだ。
東急東横店は渋谷川の上に建てられたので地下がなかったし、センター街も宇田川の上に作られているんだ。
まだ川の流れがあった頃の渋谷は今とは全く違う風景だったんだろうなぁ。
ちなみに、今の渋谷川は地下鉄のトンネル内にしみ出した水が排水されていて、それが主な水源となっているようなのだ。
まさに地下の川になっているね。

2015/03/07

仙人の食べ物?

春先と言えば、「春霞」。
朝方なんかもやっと景色がかすむよね。
これがサクラが咲いている時期だとまたきれいなのだ♪
都会ではあまりお目にかかれない現象だけど・・・。
むかしから、春の霞と秋の霧は風物詩だったみたい。

「霞」というのは、靄(もや)や霧で景色がかすむことを指すのだ。
靄や霧は大気中の水蒸気が冷却により凝結し、細かな水滴として浮遊している状態のことで、視界が1km未満になると霧、1~10kmだと靄と呼ぶそうだよ。
でも、10km先ってけっこう見えているよね(笑)
都会だと空気がきれいじゃないから、晴れて乾燥していたとしても、そこまで視界がよくないかもしれないorz
エアロゾルなどの微粒子によってかすんでしまうんだよね。

では、なぜ春に霞が出るのか。
これは対義的な秋の霧も同じなんだけど、昼夜の寒暖差が大きいときに発生しやすいんだ。
もちろん、もともと大気中に水蒸気がたっぷりあることが前提なんだけど。
で、実は春と秋ではちょっとまた状況が違うんだよね。
春の場合は、夕方に日が落ちてぐんと冷え込んできて、というのはあるけど、イメージ的にはむしろ朝靄だよね。
これは、冬から春にかけては天気がよく、空が晴れているので、日の出直前までに放射冷却で一気に冷え込むことが原因と考えられるのだ。
夕方に一度冷え、そこで凝結した水滴は、朝露・夜露として植物の表面なんかにつくんだよね。
さらに夜の間に放射冷却で冷えることで、靄とか霧になるのだ。

一方、秋の場合は、昼間にぐんぐん気温が上がって、しかも湿度も高くて蒸し蒸ししているのが、夕方になって涼しくなってくると、水蒸気が凝結して水滴に変わるのだ。
そもそも秋の頃はまだ湿度が高く、あんまり放射冷却の影響がないので、夜の冷え込みは春に比べて弱いのだ。
夕霧が秋の季語であるのも、秋の靄・霧は主に夕方に発生しやすいことを表しているんだ。
とは言え、秋の季語には朝霧というのもあるので、春は朝方、秋は夕方、と紋切り型ではないのだけど。
でも、夏から秋にかけてだと、主に夕霧になるんだけど、秋から冬にかけてだと朝霧になるんだよね。
ということは、春から夏にかけては夕方にかすむこともあるわけか。
夕靄という言葉もあるしね。

でも、春霞は必ずしも靄や霧だけが原因ではないんだよね。
中国大陸から飛来する黄砂もあるのだ。
黄砂は、中国大陸のゴビ砂漠やタクラマカン砂漠の砂が砂嵐で上空まで巻き上げられ、偏西風に乗って東に運ばれるもの。
重い粒子から落下していくので、北京ではかなり大きな砂粒が、朝鮮半島では中程度の砂粒が落下し、日本まで届くのはものすごく細かな粒子になるんだよね。
4ミクロンというから、砂というよりは、乾燥した泥に近いみたい。
このくらいの大きさだと、エアロゾルとして大気中に分散し、それによって光が屈折されて視界がぼやけるのだ。

この黄砂が飛来する時期には季節性があって、春が一番多いんだよね。
冬の間は積雪に覆われることが多く、そもそも砂が巻き上がらないんだけど、春になると表土も乾燥し、発達した移動性低気圧により風も強くなって巻き上げられる量が増えるんだって。
夏にかけては植物も生えてくるし、雨も多少降るので巻き上げられる量が減るみたいなのだ。
なので、春が一番多くて、秋が一番少ないんだって。
最初に言ったように、「霞」というのはあくまでも視界がぼやけている状態なので、それが靄や霧によるものか、黄砂によるものかは関係ないんだよね。
なので、「春霞」と言った場合には、黄砂が原因のものも含まれているのだ。
でも、黄砂でかすむと言われると、一気に萎えるよね(笑)

2015/02/28

栄養食材・一粒?メートル

冬が旬の食材と言えばカキ。
一般にマガキは「R」のつかない月に食べられる、と言われるけど、中でも、秋から冬にかけては実もぷりぷりにふくらんでおいしいと言われているのだ。
これは身の中に大量のグリコーゲンをため込むため。
このほかにも、カキは必須アミノ酸を全て含み、カルシウムや亜鉛といったミネラルも豊富なので、非常に栄養満点なんだ!
カキを食べて、栄養をつけて、冬を乗り越えよう。

このカキのグリコーゲンは、キャラメルのグリコの名前の由来でもあるんだよ。
グリコの創業者の江崎利一さんはもともと薬種業を営んでいたんだけど、故郷の佐賀県有明海沿いの堤防で、漁師さんたちがカキを煮ているのを目撃するのだ。
カキを塩ゆでしてから天日干しにして干しガキを作っていたんだけど、干しガキは中国では古くからうまみのある食材として珍重されていたのだ。
で、その茹でた後の煮汁は捨てられていたんだよね。
ところが、九大に依頼して分析してみると、この煮汁には大量のグリコーゲンが溶け出していて、カルシウムや銅などのミネラルもたっぷり。
そこで、捨てられるはずのこのカキの煮汁からグリコーゲンを抽出し、キャラメル菓子に混ぜ、栄養菓子として売り出すことにしたんだ。
これが一粒300mのグリコ。
300m走る分だけのカロリーがあるということだよ。
育ち盛りの子供にたっぷりと栄養をとってもらいたい、ということから考案されたんだって。

日本では捨てられていたカキの煮汁だけど、中国ではちゃんと使われていたんだよね。
煮汁を煮詰めて濃縮してから、小麦粉やデンプンでとろみをつけ、砂糖とうまみ調味料で味を調えてカラメル色素で色をつけたものがオイスターソース。
カキのうまみと風味が詰まった調味料となるのだ。
もともとは干しガキを使っていたわけだけど、19世紀の終わり近くになって、煮汁にもうまみがあることに気づき、濃縮して調味料にしたのがはじまりなんだとか。
広東省で李錦裳さんが作り始めたんだけど、この人が澳門(マカオ)に移り住んだので、澳門・香港で広まっていくことになるのだ。
今では広東料理で広く使われるよね。
グリコは大正初期に製造が始まるんだけど、実はどちらも20世紀はじめに普及しているのだ。

話をカキに戻すと、カキの食べ方として、生のまま食べるか、加熱して食べるかの大きく分けて二通りがあるのだ。
スーパーでも加熱用と生食用が売っているよね。
一般には、生食用の方が新鮮と思われがちだけど、実は違うんだよね・・・。
生食できるかどうかは、食中毒の原因となる大腸菌にどれだけさらされていたかの違いなんだ。
もともと大腸菌が少ない海域で採れたものはそのまま生で食べられるんだけど、養殖物なんかは沿岸部で採れるので、どうしても大腸菌にまみれているんだ(>o<)
そこで、大腸菌の少ないきれいな海水又は人工海水の中でしばらく飼育し、「浄化」する必要があるのだ。
普通にスーパーで見かける生食用のカキはこっちで、数日間絶食状態に置かれた後のものなので、実は加熱用のカキより味が劣ることもあるんだ・・・。
海女さんがきれいな海域から採ってきた天然物なら、生食すると全然違うんだけどね。

ちなみに、大腸菌などのバクテリアはある程度ぬくことはできるんだけど、気をつけたいのはノロウイルス。
感染者の排泄物を下水処理するときにどうしてもウイルスは除去しきれないらしく、河口付近にはウイルスが漂っているらしいんだ。
なので、養殖物ではそのウイルスを体内で生物濃縮してしまうことがあって、それをたまたま生食すると感染するのだ。
基本的には中までしっかりと火を通せば感染は防げるので、やっぱり養殖物なら加熱して食べた方がよいのかな?
カキフライや焼きガキ、カキ鍋などなど、加熱しても十分においしいよね。

2015/02/21

ビリっでニョキっ

たまたまた知ったんだけど、「ほだ木」に菌糸を植えるキノコの原木栽培をするとき、この原木に電気刺激を与えるとキノコの収量が増えるんだそうなんだよね。
もともと、雷が落ちるとキノコがよく採れる、という俗説があって、それを実際に模擬してみると、確かに収量が増えることがわかったんだそうだよ。
古代ギリシアでもすでに言及されているくらい古くから知られている話なんだとか。
今でもキノコ栽培で使われている技術で、「キノコ増産装置」の名前で電気パルスをかける機械もあるようなのだ。

このメカニズムの詳細は不明な点も多いようだけど、一般的には、キノコ=菌類の防衛本能ではないか、と考えられているんだ。
キノコはいわゆるカビである真菌類の作る「子実体」で、胞子をまき散らすことがその役割。
カビとしては網目状に菌糸体が広がっていくんだけど、風に乗せたり、無視に運ばせる形で物理的に遠く離れたところに胞子を移動させたいときに、菌糸が立体的に絡まって子実体が作られるのだ。
カビは徐々に広がっていくことはできるけど、そのままでは別の場所に移動できないので、生育環境の悪化などの要因で、「もはやこれまで・・・」となったら、胞子を遠くに飛ばし、そこで新たな菌生を始めるということなのだ。
落雷のショックがまさにその生存本能・防衛本能に火をつけているのではないか、というわけ。

当然、菌に生死の瀬戸際を感じさせるような刺激であればいいわけで、実は落雷だけじゃなくて、熱でも光でも、物理的な衝撃でもなんでもいいのだ。
いろいろと科学的に試した実験もあるけど、熱刺激や光刺激、物理的刺激等々で子実体形成が活性化されることがわかっているのだ。
原木栽培では電気パルス刺激なんかがやりやすいわけだけど、キノコ農家によっては、原木に菌糸を植えた後、55度のお湯につけてから乾かすとか(いわゆる「ヒートショック」)、原木を木槌で思い切りたたく(物理的衝撃)などの方法を使っている例もあるみたい。
熱刺激や光刺激を加えたときに菌糸の中でどういうタンパク質が増えるかとか見ている研究もあるようだけど、まだよくわからないみたいだね。

キノコの人工栽培は、欧州ではすでに16世紀には始まっていたようだけど、これは堆肥の上にマッシュルームをはやすもの。
シイタケなどの日本式の原木栽培は、江戸時代になって始まるのだ。
ただし、このときは、クヌギやナラなどの原木を伐採してきて、なたなどで傷つけたものを林の中に放置する、というもので、自然に胞子が付着し、そこからキノコが生えてくるのを待つ、というものだったみたい。
なので、必ずキノコが生えるわけでもなく、きっと、生育条件やそもそもの場所などのノウハウが大きくきいてくるものだったのだ。
種菌をあらかじめほだ木に接種して、というのはもっと時代が下ってからの話。

現在では、温度湿度を管理したり、雑菌が混入しないように無菌室のような栽培室で栽培したりと、栽培環境がこうじょうしているのだ。
さらに、ホクトの力が大きいけど、これまで人工栽培できなかったキノコの栽培条件がわかってきたり、場合によっては、そのままでは人工栽培できないキノコを、他のキノコと細胞レベルで融合させて栽培できるようにしたり、とさらに進化しているようだよ。
最終的には、マツタケをなんとかしたくて、シイタケやヒラタケと融合させて、ということを試行錯誤しているみたいだけど、天然物のマツタケの風味や食感が再現できないみたい。

ただ、かつては「見つけたら小躍りして喜ぶ」と言われたマイタケの人工栽培は実現しているから、そう遠くない将来に人工栽培マツタケも実現するかもだよね。
そのときに、この電気刺激だとか、熱刺激なんてのもきいてくるかもしれないのだ。
マツタケが自然界でどういうきっかけで生えてくるかが何となくわかれば、それを模擬すればいいわけだからね。
希少だからありがたいのかもしれないけど、安くておいしいマツタケが市場に出回るというのも魅力的だよね。

2015/02/14

あの聖人はどこへいった!?

2月14日と言えば、「ふんどしの日」。
じゃなくて、バレンタインデー。
日本では女子が気になる男子に告白する日みたいな感じだけど、本場(?)の欧米では、単に恋人たちの日として受け止められていて、男性から女性に花束を贈ったりとかの方が多いようなのだ。
チョコレートを贈るというのも製菓業界に躍らされている、という説もあるよね・・・。

諸説はあるけど、その起源で有名なのは、古代ローマでの聖バレンタイン(ウァレンティヌス)の伝説。
時のローマ皇帝クラウディウス2世は、ローマ兵士の士気が下がらないようにと兵士の結婚を禁止したんだけど、ウァレンティヌスはその命令に逆らい、兵士たちに結婚の秘蹟を授けた、というもの。
これにより帝国の怒りを買ったウァレンティヌスは、2月14日に処刑され、殉教するのだ・・・。
そこから、2月14日が聖ウァレンティヌスの祝日とされ、恋人たちの日として祝われるようになった。
と言うんだけど、これはどうも後付けの話で、まったくもって真実ではないようなのだ(笑)

そもそも3世紀のローマではキリスト教は迫害されていないし、ローマ皇帝が兵士の結婚を禁止した、という事実も確認できないのだ。
むしろ、皇帝は兵士長に結婚を奨めたみたいな話は残っているようなので、前提からしておかしいんだよね。
さらに、そのころの殉教した人の名前を探しても、ウァレンティヌスの名前は見つからないようなのだ・・・。
なぜか5世紀になると名前が登場し、そこから聖人として信仰されるようになるみたいなんだけど、それも「恋人たちの守護聖人」ではなく、むしろ「てんかんの守護聖人」といったものだったとか。
「恋人」と結びつけられたのは15世紀になってからで、イングランドの詩人、ジェフリー・チョーサーさんの創作からなんだって。
バレンタイン反対派のみなさんにはうれしいお知らせだね(笑)

日本人からわかりづらいのは、結婚が禁止されたときに、結婚の秘蹟を授けた、という部分。
キリスト教では、信者同士が結婚するときは、司祭が間に入って昇任となることが必要なのだ。
今でもキリスト教式の結婚式だと司祭の前で結婚の誓いを述べたりするけど、あれは本来は正式な宗教儀式なんだよね。
法制度としての戸籍がない時代だから、事実婚も内縁も何もないような気がするけど、キリスト教社会においては、教会に認められることが結婚の条件だったんだね。
一夫一婦制で不特定多数を対象とした姦淫を認めないキリスト教としては、特定のパートナーをオーソライズすることが必要だったんだろうね。
ちなみに、相手がキリスト教信者でない場合は秘蹟にならないので、司祭がいようがいまいが関係ないのだ。
ただし、キリスト教社会では正式に結婚したとは見なされないんだろうけど・・・。

話をもどして、バレンタインデーの起源なんだけど、すでに世界中に広まっている聖名祝日なんだけど、今ではカトリックの正式な祝日ではないのだ!
戦後にバチカンで聖人の整理が行われて、実在があやしい聖人は聖人暦から除外されてしまったのだ。
ウァレンティヌスはすべてがあやしいので、当然外されてしまい、今では教会とは関係ない世界で祝われているんだよ。
ウァレンティヌスの遺骸を保存している教会もあちらこちらにあるんだけど、すでに聖遺物ではないということなんだよね・・・。
ちなみに、西方教会では2月がウァレンティヌスの日なんだけど、東方教会では7月又は8月なんだって。
もちろん、恋人とかは関係なく、一殉教聖人ということみたい。

では、なぜ2月中旬にウァレンティヌスの祝日が設定されたか、が問題になるよね。
関連づけられているのは、古代ローマのルペルカリア祭。
結婚の女神ユノや豊穣の女神マイアを祭る豊穣と健康を祈る祭典なのだ。
これは、2月には立春があって、冬の終わりが見えて徐々にあたたかくなっていく、という季節であることに関連しているんだよね。
東洋の旧正月も同じ考えで2月を旧正月(新春)と設定しているけど、春の訪れを祝う季節なのだ。
(ちなみに、マイアは5月=Mayの、ユノは6月=Juneの語源だよ。どちらも春の女神なのだ!)
なので、ユノというよりは、むしろマイアが大事だったんじゃないかと思うんだよね。
結婚の女神も子孫繁栄という意味で広くは豊穣につながるんだけど。

で、この土俗の祭りをキリスト教に取り込むとき、この聖ウァレンティヌスが使われたと考えられるのだ。
クリスマスやハロウィンももともとはキリスト教徒は関係ないとこから取り込んだものだけど、同じだよね。
でも、元来のバレンタインデーはよくわからない祝日だったし、後に全く関係なかった恋人たちの日なんていう属性が与えられてしまったがために、カトリック教会も取り込んでおく必要性がなくなったんじゃないかな。
今となっては、キリスト教から離れた方が逆によかったのかもしれないけど。

2015/02/07

砂糖より甘い

コーヒーにハチミツは合うのか?、というのは個人の好みが分かれるところで、賛否両論あるんだよね。
でも、スタバなんかにはハチミツが置いてあるし、ハニーなんちゃらラテ、なんていうのもあるから、味的に合わないというわけではないんだよね。
ボクの個人的な感覚からすると、ハチミツってブラックコーヒーに入れてもあまり甘くならないので、ハチミツだけしか入れないというのはあまり選択肢にならないかな・・・。
ミルク+ハチミツが最高!、という意見がわりとあるのもそういうことだと思うけど。
で、大して気にしていなかったんだけど、ホットコーヒーにハチミツを入れてもたいして甘くならない、というのは、実は科学的に本当だったのだ!

一般にハチミツは砂糖(ショ糖)より甘味が強いとされているんだよね。
ミツバチが花から蜜を集めている段階では、その蜜の甘みは主にショ糖なんだけど、ミツバチがいったん飲み込んで、巣の中で保存していく過程で、酵素により化学変化が起きているのだ。
二糖であるショ糖は分解され、単糖であるブドウ糖と果糖に分解されているんだ。
ブドウ糖(=グラニュー糖)はショ糖より甘みが少ないんだけど、果糖はショ糖より甘いのだ。
ショ糖の甘みを100とした場合、ブドウ糖は65~80、果糖は120~170なので、ショ糖を分解してブドウ糖と果糖が1:1で混ざっている状態になったとすると、ショ糖より1.2倍くらい甘くなるんだよね。
このため、ハチミツの方が砂糖より甘いのだ。

ところが、この果糖は冷やした状態だと甘いんだけど、高温になると甘みがなくなるという性質があるんだよね。
具体的には40度以下ではショ糖より甘くなるけど、この温度を超えるとショ糖より甘みが弱くなるのだ。
したがって、ホットのブラックコーヒーにハチミツを入れてもたいして甘みを感じない、ということになるわけ。
逆に、冷たくすると甘みが強くなるので、果糖を多く含む果物は冷やした方が甘くておいしくなるのだ。
一般に果物を冷やして食べるのはこのためだよ。
確かに、スイカは冷やして食べないと甘みが薄いような・・・。

このハチミツのような状態を人工的に作り出したのが転化糖というもの。
ショ糖は、賛成条件下で加熱するか、インベルターゼという酵素を作用させて加水分解るとブドウ糖と果糖に分解されるんだけど、ジャムを作る過程では、もともと果汁中に含まれるクエン酸やアスコルビン酸(ビタミンC)によってショ糖の加水分解が進み、自然に転化糖になるんだよね。
なので、ジャムは大量に砂糖を使って作るけど、それ以上に甘くなっているんだ!
砂糖を抑えたジャムでもけっこう甘くなるのはこのため。

完全に分解するには酵素を使った方がいいみたいだけど、家庭でも簡便に転化糖を作るためには、1kgの砂糖に1gのクエン酸を加えて20分くらい加熱しながらシロップを作ると、ほどよく転化糖が混ざったものになるみたい。
レモン汁なんかでもいいみたいだけど、このシロップだと、冷めても砂糖が結晶化しない(白く固まらない)し、酸味も感じない程度のものになるんだって。
家でアイスコーヒー用のシロップを作る際には参考になるね!
なかなか自分で作ろうとは思わないけど(笑)

転化糖の場合、カロリーを抑えて甘みを強くできるので、微糖やカロリー控えめと銘打った食品に使われることが多いのだ。
その視点で見ていくと、転化糖でなく、異性化糖というのも出てくるんだよね。
これもブドウ糖と果糖が混ざったものなんだけど、ショ糖を分解するのではなく、デンプンをアミラーゼという酵素を使ってブドウ糖に分解し、さらにそのブドウ糖をイソメラーゼという酵素を使って果糖に変化させたものなのだ。
さらに、処理後に濾過やイオン交換などで精製し、水分を蒸発させると、42%の果糖を含むブドウ糖液になるんだって。
このあと、さらに果糖の比率を高める加工もできるのだ。
サトウキビやテンサイから砂糖を作るよりも安価に砂糖より甘いシロップが作ることができるので、キューバ危機後の米国で普及し、主に清涼飲料水の甘味料として広まったんだって(キューバ危機以前はキューバから砂糖を輸入していたので、一気に砂糖不足に陥ったのだ。)。
もともとは通商産業省工業技術院(現在は独法化されて産業技術総合研究所)の研究成果で、国有特許の輸出第1号なんだとか。

この異性化糖(又は、高フルクトースコーンシロップ)は、安くて甘くていいんだけど、肥満の大きな原因になるともいわれているんだよね。
米国人はコーラを始め、甘い飲み物を大量に飲むイメージがあるけど、その甘みのもとがこの異性化糖なんだよね。
砂糖を使うよりはカロリーは控えめのはずなんだけど、血糖値の制御機構に悪影響があると考えられているのだ。
ステビアとかサッカリンとかアスパルテームとかの人工甘味料も同じなんだけど、末梢組織で直接取り込まれて消費されるのはブドウ糖だけで、転化糖・異性化糖に含まれる果糖はすべて肝臓で代謝されるんだよね。
このため、血糖値をコントロールしているインスリンの制御機構から外れてしまうのだ。
ハチミツをたまに食べる、ジャムを食べる程度ならよいのかもしれないけど、恒常的に甘い飲料を飲むようになると、甘みを摂取しているのに血糖値が上がらない変な状態が続くことになって、コントロールがおかしくなるのだ。
さらに、果糖は肝臓で代謝され、中性脂肪としてたまっていくので、肥満を助長すると考えられているんだよね・・・。
表面上のカロリー控えめにダマされてはいけないというわけか。
やっぱり、ダイエットを考えるなら、コーヒーはブラックで飲むべきだね(笑)