2007/10/31

かぼちゃの日

日本で「かぼちゃの日」というと、かぼちゃを食べる冬至を思い出すけど(?)、米国ではなんと言っても10月末のハロウィンなのだ。
ハロウィン(Halloween)はカトリックの諸聖人の日(万聖節)の前日にあたる日で、もともと諸聖人の日が「All Hollows」と呼ばれていて、その前日(eve)ということで、ふたつがくっついてハロウィンになったそうだよ。
元来はケルト人の収穫感謝祭がカトリックに取り入れられたものなんだよね。

ケルト人の暦では11月から新年が始まるようで、ハロウィンはちょうど「大晦日」にあたるのだ。
日本では大晦日の夜に「歳神」が訪ねてくる、なんて考えられていたけど、ケルト人の文化では、この「大晦日」の日には死者の霊が家族を訪ねたり、魔女や妖精が出てくると考えられていたんだって。
なんだか日本のお盆にも似た考え方なのだ。
で、これらから身を守るため、仮面をつけて仮装したり、魔除けの火をたいたりしていたとか。
これが今のハロウィンの行事のもとになっているのだ。

仮面をかぶる習慣が仮装することにつながったと思うんだけど、いつしか魔女やお化けに化けて、子どもがお菓子をねだるようになったんだよね(笑)
もともとの考え方から言うとだいぶかわいらしくなったものなのだ。
「Trick or Treat」の習慣はもともと欧州に似たような習慣があって、それが取り入れられたみたい。
けっこう複雑に進化した結果なんだね。

ハロウィンと言えばかぼちゃの「ジャック・オー・ランタン」を思い浮かべるけど、もともと英国やアイルランドでは「かぶ」をくりぬいてランタンにしていたんだって。
でも、sんたいりくに入植した移民たちはよりくりぬきやすいかぼちゃを使うようになって、米国ではかぼちゃがスタンダードになったのだ。
英国の南部では一度ハロウィンの風習がすたれてしまって、現在では米国のものが逆輸入される形でかぼちゃを使うそうだよ。
英国を舞台にしたハリー・ポッターに出てくるハロウィンでもかぼちゃだけど、これはここ最近英国に浸透してきたものなんだって。
今でもアイルランドやスコットランドのむかしながらのハロウィンの習慣が残っている地域ではかぶを使うみたい。

ちなみに、ジャック・オー・ランタンは英国における鬼火伝承で、日本の各種火の妖怪に近い存在みたい。
日本でも狐火や鬼火などなど、何も火の気のないところでぼんやりとした火が見える現象を妖怪のせいにするけど、英国でも同じなんだね。
早稲田の大槻教授に言わせれば「プラズマ現象」なんだろうけど、雨の直後などにみられることも多いので、静電気の発光現象(コロナ放電)も原因のひとつと考えられるんだよね。
セント・エルモの火なんかはまさにそうなのだ。
ちなみに、ジャック・オー・ランタンは、悪事をして天国にも地獄にも行けずにあの世とこの世をさまよっている男が、哀れに思った悪魔からもらった石炭の火を火種にしたランタンを下げてうろついている、というものらしいよ。

2007/10/30

わんこの起源

米国でもペットとしての犬はかなりの人気でよく見かけるんだよね。
しかも、ペット同伴可能で入れるお店なんかも日本に比べると多いから、よく街中でも見かけるのだ。
米国のセレブなんかは小型犬をだっこするのが一種のステータスみたいになっているよね。

犬の起源は定かじゃないみたいなんだけど、DNA(デオキシリボ核酸)レベルで調査した研究によると、1万5千年くらい前に東アジアでオオカミ(タイリクオオカミ)の亜種から分岐したと考えられているみたい。
これが人間とともに移動して世界に広がっていったみたいだけど、もともとオオカミとほとんど遺伝子レベルで変わらないので、行く先々でオオカミとさらに交配したりして新しい血が入っていったみたい。
様々な犬種とオオカミの亜種をDNAで解析した系統樹で比べると入り乱れるらしいのだ。
各地域で独特の犬種がいるのはその地域地域のオオカミの亜種の影響があるのかもね。

そもそもなんでオオカミを家畜化したかもよく理由がわからないんらしいんだけど、かなり古い時代に家畜化されていて、その後、牧羊犬として使われたり、番犬として使われたり、狩猟犬として使われたり、人間とかなり密接に暮らしてきたのだ。
はじめは実用目的だったんだけど、そのうち愛玩目的も加わってきて、小型犬なんかが登場するんだよね。
欧州では狩猟犬としていろんな犬種が生まれたんだけど(ダックスフンド、プードル、ポインターなど)、さらに愛玩用の小型犬も多く生まれたのだ。
中国でもチンなんかが生まれているけど、欧州ではチワワやヨークシャー・テリア、トイ・プードル(スタンダード・プードルはかなり大きな犬で、カモ猟で打ち落としたカモを泳いでとってくる狩猟犬だったのだ。早く乾くように毛を刈っていたみたいだよ。姿がかわいらしいので小型化したわけ。)、マルチーズなんかが出てくるんだよね。
でも、これらはかなり新しい時代の犬種で、古い犬種は地域地域で牧羊犬や狩猟犬として飼われてきたものみたい。
それにしても、オオカミにかなり近いシベリアン・ハスキーから、もじゃもじゃのチャウチャウ、大きいけどかわいらしさもあるレトリバー、毛むくじゃらで愛らしいシーズー、とにかく小さいチワワと幅が広いのだ。
ネコもいろんな種類がいるけど、大きさや姿にここまでのバラエティはないよね!

日本でもっとも有名な犬と言えば渋谷のハチ公。
東京大学農学部の上野英三郎教授の飼い犬だったのだ。
農学部ははじめ今の教養学部のある駒場にあったんだけど、大震災の後に現在地の文京区弥生に移ったので、渋谷に住んでいた上野教授は電車で通わなくてはならなくなったのだ。
で、渋谷駅前で教授の帰りを待っていた(と言われる)のがハチ公なわけ。

ハチ公は存命中から有名犬で、なんと生きているうちに銅像が建てられているのだ!
でも、その銅像は戦時中に供出されてしまって、今の銅像は戦後に建て直されたものなんだって。
ハチ公のはく製は上野の国立科学博物館で見られるよ。
ハチ公は上野教授を待っていたのか、駅前の焼鳥屋さんからもらえるエサを目当てにしていたのか、いろいろ説があるみたいだけど、とにかく毎日お出迎えに行っていたのは偉いよね。
(死後におなかを開いてみると焼き鳥の串が何本か出てきて、焼き鳥目当てで通っていたという説が出てきたのだ。)
ちなみに、上野博士のお墓は青山墓地にあって、「忠犬ハチ公の碑」よいう標柱が立っているよ。

2007/10/29

ネズミ

日本では区別しないんだけど、英語だとドブネズミのような大型のネズミをラット(rat)、ハツカネズミのような小型のネズミをマウス(mouse)と呼び分けるんだよね。
ボクは大学で生物系の実験をしていたんだけど、そのときに実験動物として使っていたのはマウスだったのだ。
だいたい10cmくらいの大きさ。
別の研究室ではラットを実験動物として使っていたんだけど、軽く30cmはあるんだよね。
全然大きさが違うのだ!
ラットに比べるとマウスはちっちゃくてもっとかわいらしいよ。

マウスは日本だと実験動物として確立されたハツカネズミを指すことが多いんだけど、英語では小型のネズミ全般を指すみたい。
日本で家や倉庫に住みついて害をなす小型ネズミはハツカネズミしかいないんだけど、欧州なんかでは他の種類もいるようなのだ。
マウスは別に人間の近くにだけ住んでいるわけじゃなくて、森の中なんかにも住んでいるんだよ。
その場合は他の動物の掘った巣穴なんかに住みつくのだ。
で、リスやヤマネなんかと同じように、木の実を食べたり、虫を食べたりするんだよ。
森に食べ物がなくなると人里に出てきて畑を荒らすこともあるのだ。

和名のハツカネズミはおよそ妊娠期間が20日なのでそう呼ばれるんだよね。
一度に6~8匹の子供を産むのだ。
ボクも大学の時はマウスを飼育していたけど、本当にあっという間に増えるのでびっくりだよ。
生まれて2~3週間は素人ではほとんどオスとメスの区別がつかないんだけど、4週目を超えると繁殖可能になってしまって、ちょっと確認を怠っているとまたまた子供が生まれてしまうなんてことがあったのだ・・・。
「ねずみ算」とか「ネズミ講」とはよく言ったものだと思ったよ。

一方のラットは大型のネズミの総称だけど、日本だとクマネズミやドブネズミがこれに当たるのだ。
耳が大きくて黒っぽいのがクマネズミで、高いところに登るのが得意なので天井裏なんかにいることが多いんだって。
耳が小さくて、いわゆるねずみ色なのがドブネズミで、高いところに登るのは苦手なので縁の下とか低いところにいるのだ。
どぶのような溝や穴に住んでいることも多いんだって。
クマネズミが比較的穀物なんかの植物性を好むのに対して、ドブネズミは肉や魚などの動物性のエサを好む傾向があるらしいよ。
ちなみに、実験動物として使うのはドブネズミの方なのだ。

ネズミはかなり早い時代に日本に渡ってきていたようで、史実以前に帰化した動物と考えられているのだ。
歴史の時間にネズミ返しなんてのを習ったけど、稲作を開始した弥生時代にはすでに害獣として認識されていたはずなのだ。
平安時代以降になると、本や教典をかじってダメにする害獣としても認識されるようになって、農家だけじゃなく、都市部にも住みついていたことがうかがえるのだ。
妖怪の鉄鼠(てっそ)は、園城寺(三井寺)の頼豪阿闍梨が悲願の戒壇創立を延暦寺に阻止され、その恨みで妖怪に変化し、延暦寺の教典をことごとく食らいつくした、という伝説に基づくものなのだ。
この話が本当かどうかは別として、ネズミによる書物の害がけっこう一般的だったってことはわかるよね。

実験動物のラットやマウスは白いと思われているけど、これはアルビノという毛の色素を作る遺伝子が欠損した種類の動物なのだ。
野生種より少し大きめなのが特徴で、目は瞳孔の色素も産生できなくて血の色がそのまま出るから灯りのだ。
でも、マウスの場合は実験動物でももっといろいろな色のものがいるんだよ。
ボクが飼っていたのはC57BL/6(通称ブラック・シック)というやつで真っ黒だったのだ。
他にも茶色いやつや栗色のやつ、赤茶のやつなどいろいろ。
でも、ラットは白いやつしか見たことなかったよ。

2007/10/28

これからのイモ

だんだん寒くなってきているけど、こうなってくるとサツマイモがおいしくなるよね。
焼きいもやふかしいもなど甘くておいしいのだ。
サツマイモはデンプンがたっぷりでエネルギー源としても優れているんだけど、食物繊維も多いし、さらに、ビタミンCを多く含んでいて、それが加熱しても壊れにくくなっているので美容にもよいのだ。

でも、ふかしいもよりも石焼きいもの方が甘く感じるよね。
ボクは石焼きいもだと水分が飛んで甘みが濃くなるんだと思っていたんだけど、これが違ったのだ!
石焼きいもは熱した小石の中にいもを埋めて焼くからそのナメがあるわけだけど、こうして間接的にゆっくり、じっくりと焼き上げると、いもの中にあるデンプン分解酵素(アミラーゼ)の働きで、デンプンがブドウ糖(グルコース)に分解されるようなのだ。
なので、実際に糖度を測っても甘みが増しているというわけ。
最近はスーパーなんかでガス焼きの焼きいもも売っているけど、その場合は普通に焼いただけなのでこうはいかないのだ(>_<)
経験的により甘く焼ける方法として定着したんだろうけど、よくできたものなのだ。

でも、ボクが一番好きなサツマイモの食べ方は大学いもなのだ。
外側はかりかりで、でも、中はほくほくだとおいしいよね。
蜜はかちかちのものよりも少し糸を引くくらいのゆるい方が好きかな。
もちろん、いもの甘みがわかるように甘みは少なめの方がよいのだ。
この大学芋は、さつまいもを食べやすい大きさにしてから低温でじっくり揚げて、それを砂糖と水を煮詰めて作った蜜にからませるだけの料理なんだよね。
でも、いもの揚げ方や蜜への一工夫などでだいぶ味が変わるのだ。
精製糖より三温糖を使った方が味にコクが出るとか、揚げたてのいもを暑い蜜に絡めて急速に冷やすといいとか、いろいろとコツがあるんだって。

名前の由来にはいくつか説があるんだけど、ひとつは大正時代に神田近辺の学生(主に帝大生かな?)が好んでよく食べたからこの名前がついたというもの。
また、昭和初期に東大生が学費を捻出するのにこれを売っていたからとも言われているんだって。
でも、本郷には元祖・大学いものお店があったといわれていて、赤門前に戦前まであった三河屋というお店でふかしいもを蜜にからめて売っていてたというのだ。
ちなみに、本郷や早稲田には元祖を名乗るお店があるみたいだよ。
ボクは個人的には浅草の言問通り沿いにあるお店のものが好きなのだ。

さつまいもは琉球から薩摩に伝わったのでこの名前があるんだけど、飢饉対策の作物として、第8代吉宗公が青木昆陽さんに栽培を命じたんだよね。
青木昆陽さんはもともと魚屋のせがれで、大岡忠相さんと知り合い、幕府に出入りするようになって抜擢されるのだ。
東大の小石川植物園は当時は小石川養生所で、その薬園でさつまいもの試験栽培が行われたんだよね。
植物園内にはその記念碑もあるのだ。
青木昆陽さんはさつまいもの栽培法の確立により多くの人を飢餓から救ったと言われていて、甘藷先生なんて呼ばれているんだよね。
目黒不動・瀧泉寺にあるお墓には「甘藷先生之墓」と書いてあるのだ。

今は飽食の時代だから主におやつ的に食べられるさつまいもだけど、やせた土地でも育つ上に栄養価が高いので、とても重要な作物だったのだ。
欧州ではじゃがいもにより多くに人が飢えから救われたんだけど、日本ではさつまいもが救っていたんだよね。

2007/10/27

メラニンで決めろ

科学雑誌のサイエンスに、ネアンデルタール人のDNA(デオキシリボ核酸)を解析したら、赤毛で肌が白い個体がいることがわかった、という論文が載って、ニュースになっているのだ。
これまではネアンデルタール人とひとくくりにしてステレオ・タイプに考える傾向が強かったみたいだけど、ネアンデルタール人は欧州から西アジア、中央アジアにかけて広く分布していたので、現生人類と同じように地域ごとに身体的特徴の差があってもおかしくないんだよね。
今回はそれがDNAレベルで解明されたというわけなのだ。
各地で骨は見つかっているから、よくよく比較研究をしていると、現生人類と同じように、地域差で北の方のネアンデルタール人は背が高いとか、南のネアンデルタール人は短足とか、きっとそういうのもあると思うんだよね(笑)

で、今回問題となった髪と肌の色だけど、これはメラニン色素の量によって決まってくるんだよね。
今回のDNA解析もそのメラニン色素を作るタンパク質について調べたようなのだ。
肌の色の場合は単純で、メラニン色素の量が多いと黒っぽく、中程度だと黄色っぽく、少ないと白っぽくなるのだ。
それぞれが黒人種、黄色人種、白人種に対応しているというわけ。
で、むかしは木の葉だの色で優劣があると本気で考えられていたわけだけど、これはただ単に環境に適応した結果なんだよね。

緯度の低い地域では太陽の光の照射角度が高いのでより多くの紫外線が地上に届くのだ。
紫外線は活性型ビタミンDを作る上で人間にとって必要なんだけど、量が多すぎるとDNAにダメージを与えて皮膚がんなどを引き起こすおそれがあるんだよね。
で、そういう紫外線の強い地域ではメラニン色素が多い方が有利になるというわけなのだ。
一方、緯度の高い地域では逆に紫外線の量が少ないんだよね。
極圏にはいると白夜なんかもあるけど、白夜があるっていうことは、その逆のほぼ1日中夜の日があるということでもあるのだ。
そう言う地域では少ない紫外線を有効活用するため、メラニン色素が少ない方が有利になるんだよね。
なので、赤道に近い地域では一般に肌が黒く、極に近い地域では肌が白くなるのだ。
黄色人種はその中間だよ(笑)

髪の毛の色はもう少し複雑で、二つのメラニン色素の組み合わせで色が決まるんだって。
黒から茶褐色のユーメラニンという色素と、赤褐色から黄色のフェオメラニンという色素らしいよ。
ユーメラニンが多いと髪の毛は黒に近づいて暗い色になり、フェオメラニンが多いと髪の毛は暖色になって明るい色になるのだ。
で、色素の絶対量が少ないと銀髪(プラチナ・ブロンド)や金髪(ブロンド)のようになるというわけ。
もっとも珍しい髪の色といわれるのが赤毛で、これはユーメラニンがものすごく少なく、フェオメラニンがものすごく多いとなるんだって。
ユーメラニンがそこそこ多いと栗色や茶色になるんだけど、この髪の色の人はけっこういるよね。

今回のネアンデルタール人は比較的緯度の高い地域(それでもイタリアとスペインだよ。)に住んでいて、肌は白く、赤毛だったのだ。
サイエンスのニュースには再現写真が載っているんだけど、なんか普通にワイルドな白人といった感じ(笑)
でも、きっと毛深さは違うと思うので、こう単純ではなかったと思うのだ。
顔中毛むくじゃらだったかもしれないし、むしろ毛が少なくてつるつるだったかもしれないし、そういうのは骨をみただけじゃわからないし、DNAで解析するのも難しいんだよね。
やっぱりタイムマシンで見に行くしかないのかな?

2007/10/26

山燃える

紅葉で山が赤や黄色に染まることを「山燃ゆる」なんて言うけど、米国では本当に山が燃えているのだ!
カリフォルニア南部で起こっている野火(wildfire)で、ブッシュ大統領が現地に赴くほどの事態。
カリフォルニア南部のマリブという街にはハリウッド俳優なんかのセレブも多く住んでいるんだけど、そんな人たちも含めて緊急避難勧告が出ているのだ。
一般の人々はスタジアムなどで避難所生活をしているようなのだ。

今回の舵はどうも断線した電線が原因らしいけど、他にも落雷などの自然発火で起きることがあるんだよね。
で、秋から冬にかけては空気も乾燥しているので火事が起こりやすいみたいなんだけど、今回の火事はすでに数日間燃え続けていて、被害総額も100億ドルを超えるようなのだ!
今も消火活動が続いているみたいだけど、まだまだ完全に鎮火するには時間がかかりそう。

火事を消火するにはいくつか方法があるんだけど、ひとつは上から大量の水をかけること。
これは冷却するとともに表面を水で濡らすことで酸素を遮断する効果があるのだ。
可燃物には、火を近づけると燃え始める最低の温度の引火点と、火を近づけなくても自然に火がつく発火点があるんだけど、冷却することで引火点や発火点より低い温度にしようというわけなのだ。
水をかけると水が蒸発するときに気化熱で熱が奪われて冷却されるんだよね。
生木が燃えづらいのも、中の水分が蒸発するときに気化熱が奪われてなかなか引火点に達しないからなのだ。
それと、燃焼は発熱と発光を伴う酸化反応と言えるんだけど、酸素がなければ燃えないんだよね。
住宅の火事でも酸素がなくなるといったん火はおさまるのだ。
でも、ドアや窓を破ってそこに空気が流れ込んで一気に酸素が供給されるとバックドラフトという現象が起きて、一気に爆発的に燃焼が再開するのだ。
水をかけた場合は冷却しながら可燃物の表面が水で覆われて酸素と接しなくなるので酸素不足で燃えなくなるというわけ。
大規模な山火事の場合は、湖や海から大量の水を汲んで航空機から散布するんだけど、それでも規模が大きくなりすぎるとなかなか全体には及ばず、効果がなかなか出ないことが多いのだ。

その次にとられるのが化学消化剤で、これは燃焼反応を抑制する化学物質を上から散布するのだ。
いろんな色の薬剤をヘリや飛行機でまいているの様子がテレビに映ったりするよね。
かつては化学物質が熱で反応して不燃性のガスができて、それが酸素を希釈して消火作用を発揮すると考えられていたようなんだけど、最近ではこの説は否定されていて、可燃物と酸素が連鎖的に酸化反応を起こすのを阻害・遮断することで消火作用を発揮すると考えられているんだって。
先に可燃物や酸素と反応することで可燃物と酸素が反応するのを妨げたり、可燃物と酸素の反応を遅らせる触媒として働いたりと、いろんな種類があるみたい。
この消化剤の場合は冷却しないので、大量の酸素が供給されたりすると効果が薄まるのだ。
実際、今回の火事では乾燥した強い風が吹いていて、それで火事がより活性化されていたようなんだよね。

このほか、過激な消火方法もあるのだ。
ひとつは、爆発物を落としてその爆発で一気に周囲の酸素を消費して酸欠にして消火するという方法。
爆風によって爆発により生じた二酸化炭素などの不燃性ガスも広がるので、その効果もあるのだ
さすがに街中では使えないけどね(笑)
それと、これは消火というわけじゃないけど、延焼を防ぐために気を伐採したり、付近の住宅を壊したりすることもあるのだ。
これは江戸時代の火消しの消火方法と同じだよね。
火災の進行方向に燃えるものがなければそれ以上火事が広がらない、ということなのだ。

山火事の場合はそれこそ様々な方法を組み合わせて消火活動に当たるんだけど、なかなかこれといった決定的な方法がないのも確かなのだ。
天候条件にも左右されやすいし、最後は運任せみたいなところもあるんだよね。
カリフォルニアの火事も早く収まればよいのだけど。

2007/10/25

和風スパゲティの殿堂

一般に和風スパゲティと言うとしょうゆ味のものを思い浮かべるけど、日本でしか食べられないという意味ではナポリタンも純和風なのだ。
ミートソースは海外でもボロネーゼとして同じではなくておかなり似たものが食べられるんだよね。
でも、ナポリタンのようにケチャップで味をつけたものは自分で作るしかないのだ!
あれってたまに食べたくなる懐かしい味で、ボクもときどき作るんだよね(笑)

日本でかつてスパゲティと言うとナポリタンかミートソースしか選択肢がなくて、しかも、麺はゆで置きしたものをフライパンで炒め直して食べるのが一般的だったのだ。
今では「アルデンテ」なんて言ってかためにゆであげたパスタが好まれるけど、むかしだったら「生煮え」と言われてしまったと思うのだ。
喫茶店なんかの場合だとむしろゆで置きできた方が好都合で、それで必ずと言っていいほどメニューに入っていたけど、それが日本中に広まった要因のひとつなのかも。

本場イタリアにもトマトソースのパスタはいろいろあって、純粋にトマトの味を楽しむポモドーロや、唐辛子をきかせたアラビアータなどがあるけど、どれもさらっとしたトマトソースで、少しねっとりした感じのあるナポリタンとは違うんだよね。
フランスにはアラ・ナポリターなというトマトソースのパスタがあって、これがナポリタンのkげんとも言われているらしいよ。
日本のナポリタンは戦後に横浜のホテル・ニューグランドで、進駐軍がスパゲッティにトマトケチャップを混ぜて食べているのにヒントを得て、トマトピューレなどを使ってトマト味のパスタを作ったのがはじまりだとか。
でも、これは今のナポリタンよりもう少し高級感のあるもので、トマトピューレと肉の代わりにトマトケチャップとウィンナーで代用されたものが大衆化して広まったそうなのだ。
はじめのナポリタンはフランスのアラ・ナポリターナに近い、トマトソースのパスタという感じだったみたい。

このトマトケチャップ味のスパゲティはいろんなところに浸透していて、定食なんかの付け合わせのパスタもケチャップであえたものだし、スパゲティパンも基本的にはナポリタンをはさむよね。
学校給食ではスパゲッティの代わりにソフト麺が使われていたけど、このソフト麺というのはビタミンBを強化した強力粉を使った麺で、一度蒸してからゆでるのでのびにくいのが特徴なんだって。
正式名称はソフトスパゲッティー式麺というそうで、学校給食に出すのにのびないように工夫して発明されたもののようなのだ。
これなんかは完全に日本特有の麺らしいよ。

こうして、日本では「スパゲッティ」と言うとうどんや焼きそばに近い大衆化した洋風麺を指すようになって、後の時代のイタリアン・ブームが来ると、本格派の麺はパスタと呼びなわされるようになるんだよね。
これはとてもおもしろい現象で、スパゲティはもはや洋風の日本料理になってしまっているので、区別して呼ぶ必要があったということなのだ。
カレーやハンバーグと並んでかつては子どもに大人気の料理だったわけだけど、最近ではあまりみかけなくなって残念なのだ。
これも洋風文化を独自に工夫して取り入れた、日本の文化を象徴するよい例だと思うんだけどな。

2007/10/24

よりあい

今日はシンポジウムに参加してきたんだけど、同じようなイベントで、コンファレンスと言ったり、ワークショップと言ったり、いろいろだよね。
日本語だとだいたい○○会議となってしまうところだけど、横文字にしようとすると違いが出てくるのだ。
たぶん、明確な使い分けはしてないと思うんだけど、なんだか気になるので少し調べてみたよ。

シンポジウムというのは古代ギリシア語の「饗宴(symposion)」に由来する言葉で、もともとは「一緒にお酒を飲む」ということなんだとか。
それが転じて、テーマを決めて一般の人が広く集まって公開討論するようなものをシンポジウムと呼ぶようになったらしいよ。
ああでもない、こうでもない、といろんな人がいろんな意見を言うのが、お酒の場の雑談に似てるということかな?
多くの場合は専門家による基調講演とパネル・ディスカッションからなるイベントを指すみたい。
聴衆からの意見を積極的に聴くことがあるというのも特徴みたいだよ。

一方、コンファレンスは動詞のconfer(協議する、会議する)が名詞になったもので、まさに協議や会議といった意味みたい。
シンポジウムのようにいろんな人が集まっていろんな意見を述べ合う、というよりは、ある方向性に向けて結論を出す、というような感じなのだ。
例えば、地球温暖化対策について今後国際的にどういう取組をしていくか、なんてのを考える国際会議はコンファレンスになるのだ。
シンポジウムだとこんな考えもある、と言いっぱなしで、結論を出すイメージがないんだよね。

さらに、ワークショップはまた違って、もともとは工房とか作業場という意味だったんだけど、それが「体験型の講座」の指すようになって、さらに専門家なんかが集まって共同で検討を行うような集まりを指すようになったみたい。
20世紀初頭のハーバード大学の授業でこの言葉が使われはじめ、広まっていったんだって。
基本的には問題解決型の検討・討論を行う場で、最近では、企業の研修に取り入れられたり、市民参加型の合意形成の手法にも使われているようなのだ。
コンファレンスは結論を出すことが一番大事なんだけど、ワークショップの場合はその結論を出す前の共同の検討過程が重要なんだって。
そこがまさしく「体験型」の意味なのだ。

ということは、この3つをきちんと使い分けると、まずはワークショップで専門家が検討して一定の方向性を打ち出して、シンポジウムで一般の人々の反応を見て、最後にコンファレンスで結論を決める、という感じになるのだ。
そう言えば、こういう議論の流れって最近増えているよね。
このごろは特に議論の透明性とか公平性にうるさくなっているので、きちんと手続きを踏まないといけなくなってきているのだ。
多少時間がかかってもそれできちんとした方向性が出るのならよいのだけど。
会議だけ多くてけつろんがしょうもないのが一番ダメなのだ(笑)

2007/10/23

さやとまめ

ボクはいろどりとしてよくサヤインゲンを食べるんだよね。
アスパラガスでもいいんだけど、米国ではアスパラガスよりはるかにサヤインゲンが安いので、サヤインゲンを選びがちなのだ(笑)
で、今回は比較的よく食べるインゲンとは何者かが気になったので調べてみたのだ。

インゲンは中南米原産のマメで、16世紀末に欧州を経由して中国に伝わったものが、17世紀ころ日本にやって来たみたい。
今でも中南米では重要なタンパク源としてまめ料理を食べるけど、その文化が米国に入ってちり・ビーンズやポーク・ビーンズといった料理になるのだ。
米国でも南部ではよくマメを食べるし、メキシコなんかでは毎日のように食べるみたいだよ。

インゲンは未成熟のさやの状態で食べるのがサヤインゲンで、おひたしにしたり、炒め物にして食べるよね。
米国では水煮の缶詰もよく売っているのだ。
成熟したマメはインゲン豆だけど、うずら豆や金時豆、虎豆、手亡(てぼう)なんて豆はみんなインゲン豆の仲間だそうだよ。
金時豆や手亡はいわゆる白あんにするし、甘納豆なんかにもなるのだ。
西洋では煮込み牢利に使われることが多いけど、日本ではお菓子にも使うんだよね。

インゲンは隠元禅師が日本に伝えたと言われるのでその名前があるんだけど、どうも実際に隠元禅師が持ち込んだのは、近縁種のフジマメだったおうなのだ・・・。
ま、いずれにしても、その頃中国から来たことは確かみたいだけど。
この隠元禅師は中国で明代の禅宗を復興させた人で、日本にやって来てからは黄檗山萬福寺を開いて日本黄檗宗を開いたのだ。
隠元禅師自身は明代の臨済宗の正統派を自負していたので、臨済正宗を自称していたようなんだけど、これは認められず、黄檗宗となったのだ。
当時の日本の臨済宗は中国の伝統的な臨済宗とはかなり違ったものになっていたようで、隠元禅師としては真の臨済宗を伝えたいと考えていたようなんだよね。
ちなみに、「黄檗」というのは臨済宗の開祖の臨済義玄さんのお師匠の黄檗希運さんからとったのだ。
漢方薬のオウバク(キハダ)のことじゃないんだよ。

2007/10/22

肉がきしむ

今日はお散歩でちょっとハッスル(死語?)しすぎてしまったので、きっと明日は筋肉痛なのだ(>_<)
筋肉痛を軽くするには、お風呂でよく温まってマッサージするといいなんて聞くけど、せっかくなのできちんと調べてみたのだ。
そうしたら、けっきょく原因もよくわかっていないようで、あまり研究もされていないみたい・・・。

筋肉痛は文字どおり筋肉が痛むわけだけど、筋肉を構成する筋繊維は筋膜という薄い膜に包まれていて、直接神経末端が来ていないのだ。
なので、激しい運動で筋繊維が切れてもそれ自体が痛いということはないんだって!
ということは、筋肉痛は筋肉が切れるから痛いというわけではないのだ。

なんで痛いかはよくわかっていないらしいけど、有力と考えられているのは、断裂した筋繊維が回復するときにまわりで炎症が起こって、それを神経が察知して痛みを感じるというものなのだ。
筋繊維は一度切れるとより強くなって回復するんだけど(超回復として知られるよね。)、このおかげで筋力トレーニングをすると筋肉が太くなるのだ。
別の説としては、運動をしていると疲労物質としてたまってくる乳酸が毛細血管にたまって、血行を阻害して酸素供給が低下して鈍痛が起こる、というのもあるみたい。
実際、乳酸を筋肉注射するとめちゃんこ痛い、という実験があるんだけど、別に乳酸でなくても筋肉注射はもともと痛いし、乳酸は酸性物質だからその刺激かもしれないんだよね。
というわけで、よくわかっていないというのが実情なのだ。

でも、経験則として、痛みをやわらげるにはお風呂でよく温まってマッサージしたりするとよい、というのが知られているけど、これは血行をよくしていると考えれば、上のどちらの説でも説明はつくんだよね。
炎症はその部位にヒスタミンなどの炎症性物質がたまるから痛いのであって、血行をよくして散らしてやればいいわけだし、そもそも乳酸が血行阻害しているんだったら、ダイレクトな方法でもあるのだ。
筋肉痛をやわらげるぬり薬なんてのもあるけど、これは多くの場合インドメタシンという非ステロイド性解熱鎮痛薬(NSAIDs:Non-Steroid Anti-Inflamatory Durugs)で、よくカゼ薬や頭痛薬に入っているアスピリンやエテンザミド、アセトアミノフェンなんかと同じ種類の中間なのだ。
炎症による痛みはプロスタグランジンという物質で増強されるんだけど、この薬はそのプロスタグランジンを精製するシクロオキシゲナーゼ(COX:Cyclooxygenase)を阻害するのだ。
でも、痛みのもとを絶つわけではなくて、あくまでも痛みの増強を止めるだけなので麻酔薬のように痛みが完全になくなるわけじゃないんだよ。
インドメタシンは飲み薬にすると胃を痛める副作用や腎臓を痛める副作用が強いのでよくぬり薬に使われるのだ。

それと、筋肉痛は年をとるごとに遅れて発症するようになると言われているけど、これも不確かなもので、迷信かもしれないんだって。
ボクなんかも信じていたんだけど、年をとると血行が悪くなるので痛みが出るのが遅れる、なんてもっともらしく言われるんだけど、誰もキチンと確かめていないので間違っている可能性があるとか。
ちなみに、長時間の弱い負荷だと痛みが早く出て、短時間の強い負荷だと痛みが遅く出る傾向というのは認められているみたい。
でも、3~5歳の幼児期にはまったく筋肉痛が起こらないことが知られていたりとまだまだ謎なことが多いのだ。
トレーニングの後にきちんとケアするとほとんど筋肉痛は出ないと言うけど、多くの人は筋肉痛で痛い思いをしているから、研究すれば喜ばれると思うんだけどなぁ。
実験体にはなりたくないけど(笑)

2007/10/21

ロシアの軽食と言えば

今日はDCの北部にあるロシア正教の教会で開かれていたロシア・バザールをのぞいてきたのだ。
イベントとしては小規模だけど、なかなか手作り感がたっぷりで親しみやすい感じ。
で、今日はそこでロシアの軽食の代表格のピロシキを食べてきたんだよね。
日本だと揚げてあるイメージがあるけど、本場では揚げることは少なくて、焼くことが多いんだって。

ロシアのピロシキは小麦粉を練って作った生地に具を入れた惣菜パンのことで、油で揚げることもあるけど、オーブンで焼くことが多いそうだよ。
生地はパン生地やパイ生地などいろいろ使われていて、いわゆる定型の「ピロシキ」というイメージはなくて、惣菜パン又はパイ一般がピロシキと呼ばれるようなのだ。
具も多種多様で、肉類、魚介類、野菜類なんかを好きなように入れみたいで、これが入っていないとダメ、というのもないみたい。
ジャムや果物を入れてお菓子のように甘くするピロシキもあるそうだよ。

ピロシキは中国の点心(具の入った饅頭である包子や餃子など)の文化が西に広まってって、ロシアでも根付いたと考えられているのだ。
イタリアのラビオリは餃子がもとになっているなんて言われるけど、ピロシキも包子(日本で言う中華まん)や餃子、春巻きなんかの子孫なのかも。
ロシアでは伝統的な家庭料理として親しまれているほか、ピョートル1世の治世の17世紀後半には街角でも売られるようになっていたとか。
まさにロシア発のファースト・フードなんだけど、このピロシキは東欧諸国や旧ソ連領の中央アジア、イランなんかにも広まっていたみたい。

日本では肉、玉ねぎ、卵などを包んで油で揚げたものが一般的だけど、この日本風ピロシキはカレーパンの発想につながったとも言われているんだって。
確かに日本のピロシキというと揚げた中華まんとか、辛くないカレーパンというイメージがあるけど、中華まんからピロシキ、そこからカレーパンと一続きのものなのかもしれないね。

そのおおもとにいる中国の饅頭(マントウ)は、三国志演義によって諸葛亮孔明さんが発明したと広く信じられているんだけど、どうもこれはフィクションの可能性が高いんだって。
最初の饅頭は具の入っていない中華風蒸しパンで、酵母を入れて発効させてから蒸して作るところがいわゆる蒸しパン(こっちは重曹を使ってふっくらとさせるのだ。)との違いなのだ。
で、時代が下るとこの饅頭に具をはさんで食べるようになり、さらに、はじめから中に具を入れて蒸し上げるようになってきたのだ。
北宋時代には中に具が入っているものを「包子(パオズ)」、具の入っていないものを饅頭と区別するようになったそうだよ。

日本への饅頭の伝来は二つ説があるみたいだけど、13世紀から14世紀に禅宗を通して伝わったようなのだ。
お茶と一緒に食べるもの(飲茶の思想だよね。)として伝わったんだけど、日本の仏教では肉食を禁じていたので、肉の代わりに小豆を使った餡を入れるまんじゅうが考案され、これが多様に変化していって今の日本のまんじゅう文化があるのだ。
温泉土産といえばまんじゅうあ定番だし、すでに小麦粉の皮を使っていない水まんじゅうや麩まんじゅうなんてのもあるよね。
ボクは酒種を使って作る酒まんじゅうが好きなのだ。
群馬県には上州名物焼きまんじゅうなんてのがあるけど、これは串に(多くの場合餡の入っていない)まんじゅうをさして、サトウや水飴で甘くした味噌だれをつけて焼いたものなのだ。
群馬県人には郷愁を誘う味ということなんだけど、「名物にうまいものなし」の代表例によく使われちゃったりするんだよね(笑)

2007/10/20

ばんざーい、なしよ。

米国では大統領が子ども向け医療保険を拡充する法案に拒否権を発動して話題になっているのだ。
米国は日本と違って国民皆保険制度になっていないので、かなりの人数の保険に加入していない人がいるんだよね。
そういう人は適切な医療が受けられないと問題になっているのだ。
でも、大統領としてはものすごくお金のかかることだから、財政的裏付けがない状態ではコミットできない、と言っているんだよね。
今のブッシュ大統領が拒否権を発動したのはこれで3回目。
前にはヒト胚性幹細胞(ヒトES細胞)研究法案とイラク即時撤退予算法案に拒否権を発動したのだ。

この拒否権(veto)というのは日本の内閣にはない制度なのでいまいち親近感がないんだよね。
米国では、議会で議決された法案は大統領に送付されて、その法案に大統領が署名してはじめて発効するのだ。
逆に言うと、署名しなければ発効しないというわけ。
大統領は法案を了承しないときは、理由をつけて議会に差し戻すことができるんだけど、これが日曜日を除いて10日以内と決まっているのだ。
なので、議会閉会間際で残り10日をきっている場合は、拒否権を発動しなくても署名を遅らせるだけで事実上法案を廃案にできるんだって。
これを「にぎりつぶし拒否権(pocket veto」と呼んでいるらしいよ。

正式な拒否権発動の場合は、議会に理由を示して法案を差し戻すんだけど、このときの議会の対応には二通りがあるのだ。
ひとつは、大統領が了承しない理由を勘案して法案に修正を加えた上で再度送付するというもの。
もうひとつは、両院の3分の2以上の多数で再度法案を可決して、大統領の拒否権を乗り越えて法案を発効させるというもの。
これはoverrideと呼ばれるんだけど、二大政党で運営されていて、基本的に両党のはほぼ力が拮抗している米国の場合はまずoverrideはできないのだ。
両党で合意していて大統領だけが反対している場合は別だけど、歴史的にもそういう例は少ないみたい。

もっとも多く拒否権を発動したのは第33代のフランクリン・D・ルーズベルト大統領で4期12年間でなんと635回も行使したらしいのだ!
一方、第3代のトーマス・ジェファーソン大統領は任期の8年間で一度も行使しなかったとか。
こういうのは議会との関係というより、大統領の個人的な気質が大きく関係しているのかもね(笑)
フランクリン・D・ルーズベルト大統領の場合は、世界恐慌による落ち込みからニューディール政策による景気回復、第二次世界大戦への突入と激動の時代だったからというのもあるかもしれないけど。

2007/10/19

オリオン座流星群を見よ

今年の10月21日から22日にかけてはオリオン座流星群が活発に出現すると言われているのだ。
オリオン座流星群は86年に一度地球に大接近するハレー彗星から放出されるダスト(砂粒など)の流れが毎年10月中旬ごろに地球に接近遭遇し、燃えながら地上に落ちて流れ星として観測されるというものだよ。
昨年はBC1266年、BC1198年、BC911年に放出されたとても古いダストの集団に遭遇したので、普段よりも活発な流星が観測されたのだとか。
今年は昨年ほどではないにしても、例年よりは多く観測できると期待されているらしいよ。
ちょっと月が明るい時期だけど、これは見てみる価値はあるのだ!

○○座流星群というのは、○○座のあたりを放射点として発生する流星群のことで、放射点というのは言わば流星群の流れてくる「もと」で、そっちの方向から四方八方に流れ星が流れるというわけ。
でも、これは流れ星の光の軌跡を外挿するとある一帯に中心が見られる、ということで、そこを見ていれば流れ星がたくさん見られるというものでもないのだ。
というのも、地球に遭遇して重力に引っ張られて落ち始める時にそのダストがある方向が放射点の方向なんだけど、実際にはダストが落ち始めてから大気圏に突入し、燃えることによってはじめて流れ星と認識されるので、その放射点から流れ星がはじまるわけじゃないんだよね。
落ち始めてから燃え始めるまでのタイム・ラグがあって、その間は移動はしているけど観測できないので、放射点から流れ星が次々と放射状に出て行くというのは見られないのだ。
むしろ、どの方向でもよいので、遠くを見る感じで視野を広くしながらぼけーっと空全体を見るようにするといいみたいだよ。

流れ星の多くは地上に到達する前に燃え尽きてしまうんだけど、燃え残りがあるとそれが隕石になるんだよね。
なんで燃えるかというと、大気との間で摩擦が起こって、それが熱を発するからなのだ。
スペース・シャトルのように宇宙から地球に再突入する宇宙機は断熱タイルで覆われているんだけど、それはこの摩擦熱に耐えるためだよ。
かなりの高度から落ちることになるので、重力加速度でものすごい速度になるのだ。
なので、ごくごく小さい隕石でも大きなクレーターを作るし、大きな隕石だと、恐竜を絶滅させたといわれるユカタン半島のグレート・インパクトのように大地をえぐることになるのだ。
さいわい、今回の流星群は「ちり」が落ちてくるだけなので、地上に被害が出るおそれはないよ(笑)

地上にぶつかりそうだとすると映画の「ハルマゲドン」みたいにその天体の軌道をずらさないといけないのだ。
米国はこれをまじめに考えていて、米国航空宇宙局(NASA:National Aeronautics and Space Administration)なんかで、地球近傍天体(Near Earth Object)と呼んで、軌道と大きさを観測しながらカタログ化して、地球に衝突するリスクを分析しているのだ。
いまのところ危ないのはないみたいだけど、専門家によると、この問題は「発生するかしないか」の問題ではなく、例え数万年、数億年後であっても「いつ来るか」の問題なので常に備えておくことが必要なんだって。
2004年にはニアミス(といっても4万km以上上空なのだ。)もあったみたいだし、実際に恐竜は巨大隕石の衝突が原因で絶滅したと考えられてもいるので、こういう取組は大事なのかもね。
漫画家の松本零士先生も、宇宙開発はこうした事態を避けるべく人類が宇宙に移住するためにやるべき、と言ってるんだよね。

2007/10/18

超細菌あらわる

米国では「スーパー・バグ(super bug)」が猛威をふるっている!、という報道が盛んになされているのだ。
これは薬剤耐性細菌のことで、AIDSによる死亡数よりも、薬剤耐性菌の感染による死亡数の方が多くなったそうだよ。
特に有名なのはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA:Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)が有名だけど、その他にもいろいろいるんだよね。
とにかく通常の抗生物質が効かない細菌のことなのだ。

ペニシリンやストレプトマイシンといった抗生物質は、細菌特有の細胞壁の合成や核酸合成といった反応を阻害することで細菌の増殖を止めるんだけど、これらの抗生物質を無効化したり、抗生物質がきかないメカニズムを手に入れたりした細菌が薬剤耐性菌なのだ。
多くの場合は、染色体DNA(デオキシリボ核酸)とは独立して存在している環状の小さなDNAのプラスミッドに薬剤耐性遺伝子が含まれているのだ。
染色体DNAは細胞分裂の時に増やされるだけで、それぞれの細胞が1コピーずつ持っていくんだけど、このプラスミッドは数多く作られるんだよね。
しかも、どうも細菌同士がふれ合っただけでやりとりができるようで、薬剤プラスミドを持っている細菌が少しでもあると、まわりの細菌まで薬剤耐性を持つようになってしまうのだ!

このプラスミドは細菌の中で簡単に増やせるし、最近への導入も比較的簡単なので分子生物学では重要なツールとして使われているんだよね。
でも、自然界でも薬剤耐性遺伝子のようなものがプラスミドを介して自然に細菌の間を行ったり来たりしているのだ。
プラスミドが伝達するのは薬剤耐性遺伝子だけじゃなくて、他の遺伝子を運ぶこともあるんだよ。
プラスミド以外でも、細菌に感染するバクテリオファージ(細菌界のウイルスなのだ。)も一部の遺伝情報の運び屋になることが知られていて、自分の遺伝情報を細菌の染色体NAにもぎり混ませて増えるんだけど、出て行くときにもともとその感染した細菌が持っていた遺伝情報を取り込んで出て行ってしまうことがあるのだ。
これが次の細菌に感染すると、その前の細菌が持っていた遺伝情報を新たな細菌に持ち込んでしまうというわけ。
一時期話題になったO157は赤痢菌のベロ毒素を持った大腸菌なんだけど、どうもバクテリオファージによる感染で赤痢菌の毒素を獲得したと考えられているんだよね。

通常の薬剤耐性細菌は普通の細菌に比べると増殖スピードが遅かったりしてそんなに増えることはないんだけど、普段から抗生物質があふれているような環境だと、通常の細菌が生存できないから、薬剤耐性菌ははびこるようになるのだ。
MRSAの感染が主に院内感染で起こるのはこのためで、病院のようにふだんから抗生物質が多く使われている環境では普通の細菌は増えることができなくて、唯一増えることのできる薬剤耐性細菌の天下になるということなのだ。
近年ではこの弊害を防ぐためにできるだけ抗生物質は使わないように、という方針も出ているんだけど、カゼを引いただけでいまでもすぐに処方されるよね。
抗生物質はカゼには効かなくて、あくまでも合併症の肺炎を防ぐだけなんだけど。

薬剤耐性細菌は通常の抗生物質が効かないのでやっかいなんだよね。
細菌による感染症の症状なので当初は抗生物質が投与されるんだけど、まったく効かずに症状が改善しないという事実に気づいてはじめて薬剤耐性細菌の感染が疑われるのだ。
多くの薬剤耐性細菌は複数の薬剤に対して耐性を持っているのもさらにやっかいな点で、効く薬が限られているんだよね。
でも、その薬を使いすぎると新たな耐性細菌が生まれるし、いたちごっこなのだ・・・(>_<)
こういう細菌感染症は体の免疫力が落ちている人や老人・子どもといった抵抗力の低い人たちに感染するから、ほっといて治る、ということもあまり期待できないんだよね。

とにかくやっかいな問題なので、抗生物質の使用は必要最低限に抑える、とか、細菌の感染自体を防ぐよう常に清潔を心がける、とかそういうことが大事みたい。
養殖のハマチとかに抗生物質がエサに混ぜられて与えられているなんて衝撃的なニュースもあったけど、そういうところでも抗生物質を口にしている可能性があるから注意が必要なのだ。
普段から自分でも意識することが重要なのかも。

2007/10/17

おまけのたまご

ネットでたまたま情報を見つけて、グーグル・アースに入っている「おまけ」のゲームのフライト・シミュレータをやってみたのだ。
グーグル・アースを起動してからCtrl+Alt+Aを押すと出てくるんだよね。
こういうのは「イースター・エッグ」と呼ばれる、開発者が「お遊び」の要素として紛れ込ませているものなんだって。
最近はセキュリティの強化で減ってきたけど、ワードやエクセルにもあったらしいよ。

イースター・エッグというのはコンピュータのソフトウェアや書籍、CDなんかにある隠し要素で、本来の目的・機能とは無関係なメッセージや画面が現れるもののことだそうなのだ。
グーグル・アースのようにそれがゲームになっている例もあるというわけ。
これは、イースター(復活祭)の時に色とりどりに草書kした卵を隠して子どもたちに発見させる風習からそう名付けられたみたいだよ。
これらは通常の操作では出てこないので、基本的に情報が漏れないとなかなか見つけられないんだけど、愛好家は喜々として探すらしいのだ。

その性質からよくファミコンなどのテレビゲームの裏技に例えられるんだよね。
でも、実はこの例えはあまり正確ではないのだ。
というのも、ゲームの裏技には2種類あって、もともと隠し要素としてプログラム上に正規に組み込んである「隠し技」と、プログラムの誤作動や破綻を引き起こして通常とは違う現象を引き起こす「バグ技」があるのだ。
「隠し技」はゲームの中のイースター・エッグと言えるけど、「バグ技」はもともと意図しているものじゃないからちょっとわけがちがうのだ。

ファミコンの時はデータの容量も少なくてプログラミングにも限界があったから、けっこうバグ技が多かったんだよね。
多くの場合はゲームが途中で止まったり、データが消えたりと、あんまりうれしくないものなんだけど、たまにゲームを有利に進めたり、普段できないようなプレイが実現できたりするようなのがあって、そういうのがゲーム雑誌で広まったんだよね(ファミコン全盛時はネットなんてなくて、一部の人がパソコン通信をしていたくらいなのだ・・・。)。
プログラムも人間が作るものである以上、完全無欠に作ることは難しくて、しかも、最近のようにゲームが複雑化してデータ容量も増えるとデバッグも大変だから、どこかにバグが残されたりするんだよね。
なので、このバグ技は程度の差こそあれ、いまだに存在しているのだ。

一方の隠し技はもともと意図的に入れてあるもので、ちょっとやりこめば見つけられるような単純なものから、絶対に気づかないような複雑なものまで様々あるみたい。
これもかつてはゲームが発売されてしばらくたってからゲーム雑誌とかで公表され、それを受けてまたゲームを再開してみる、という流れがあったんだよね。
最近では誰かが発見するとすぐにネットで広まってしまうけど。
ファミコン時代はゲーム自体が単純だからそんなに複雑な隠し技や多くの隠し技はなかったけど、この頃のゲームでは攻略本を買わないとわからないようなものが多いようなのだ。
複雑すぎて自分では絶対発見できなかったり、数が多すぎてわけがわからないんじゃあんまり楽しみとは言えなくなるよね。
「過ぎたるはなほ及ばざるがごとし」なので、こういうのはバランスが大事なのだ。

2007/10/16

白色吐息

米国もやっと秋めいてきて、昼間も暑いとは感じなくなったし、朝夕はだいぶ冷え込むようになったのだ。
で、びっくりしたのは、今朝、吐く息が白くなったんだよね。
気温は10度未満だと思うんだけど、それでもつい先週まではかなり暑い日々が続いていたので、急激な変化にびっくりだよ。

この吐く息が白くなるという現象は、やかんから出る湯気が白いのと同じなのだ。
人間の体の中はだいたい37~38度くらいに保たれているんだけど、当然その中から出てくる息も同じくらいの温度なんだよね。
さらに、口から出る息は口内の湿気もあってかなり湿度が高いのだ。
それが冷たい外気に触れると一気に温度が下がってしまって、水蒸気が凝結して水のこまかい粒子ができるのだ。
これが白い息の正体。

やかんや鍋から出る湯気や温泉の湯気が白いのも、たくさんの水蒸気を含んだ暖かい空気が冷たい空気に触れて水蒸気が凝結するからなんだよね。
よくよく比べてみるとわかるけど、夏より冬の方が湯気がはっきり見えるのだ。
温泉なんかだとよりわかりやすいけど、これは外気温がより冷たくて、凝結してできる水の粒子の量が多いのでより「くもる」というわけ。
メガネをかけていると食べ物(特に鍋とか)の湯気でくもることがあるけど、しばらくするとメガネがぬれた状態になっていることがよくわかるのだ。
これはメガネに触れて湿気の多い空気が冷やされて、そこで水蒸気が結露するからなのだ。

実は、梅雨前線も同じような仕組みで発生していて、南から来るあたたかい小笠原高気圧(太平洋暖気団)と北から来る冷たいオホーツク海高気圧(シベリア寒気団)がぶつかってできるのだ。
この二つの気団がぶつかると、あたたかくて湿っている太平洋暖気団が冷やされて、中の水蒸気が凝結するんだよね。
で、その凝結してできた水の粒子が雲になって雨を降らせるというわけなのだ。
規模は違うけど、息が白くなるのと前線の雲ができるのは同じ原理なんだよ。

2007/10/15

樹液をすする

今日はサトウカエデがオレンジ色に紅葉しているのを見たのだ。
このカエデはメープルシロップの原料の樹液を採取するカエデで、英語ではそのままSugar Mapleというんだよね。
北米大陸北部に多いんだけど、カナダの国旗のカエデの葉っぱはサトウカエデの葉っぱなんだって。
通販で売っているメープルリーフ金貨のカエデもサトウカエデだとか。
それだけカナダでは重要なカエデなのだ。

メープルシロップはこのサトウカエデやその他のカエデの樹液を沸騰させて濃縮して作るんだけど、当分含有量や色合いで等級が決められているんだって(サトウカエデが質・量ともに一番いいみたい。)。
カナダでは薄い色のものほど高級とされているそうで、きっとそれだけ不純物が少ないということなのだ。
日本人的感覚だと、独特の琥珀色でないと偽物っぽい感じがするけどね。
濃縮を進めて固体にしたものがメープル・シュガー。
さらに、濃縮するときに100度を超える高温で濃縮して、その後一気に冷却すると、メープルバターと呼ばれるクリーム状のものになるそうだよ。

樹液は2~4月の寒暖の差が一番激しい時期に採取されていて、直径30cm以上の木に小さな穴を開け、その下にバケツのような「受け」をつけて集めるのだ。
数十リットル集まるそうだよ。
古典的な方法ではそれをそのまま煮立てて20~30倍に濃縮するようなのだ。
カナダのケベック州が世界最大の産地なんだって。

純正品のメープルシロップはけっこう高級品なんだけど、最近では「ぱちもん」も見かけるよね。
メープル風シロップなのだ。
ホットケーキ・ミックスなんかについてきたりするやつもそうだよ。
これは、トウモロコシから作るコーンシロップなどに香料をつけてメープルシロップ風の風味にしたもので、お値段はだいぶ庶民的になるのだ。
日本では純正のメープルシロップはなかなか手に入らないので、多くの人はメープル風シロップをメープルシロップと思っている可能性もあるとか。
気をつけて確認しないと行けないのだ。
本物は香りも強くて、甘さも強いけどそれだけじゃなくてコクもあるのだ。

2007/10/14

観音菩薩の化身

今年もノーベル平和賞の受賞者が発表されたけど、今米国には、1989年にこのノーベル平和賞を受賞している、チベット仏教の最高指導者のダライ・ラマ14世が来ているのだ。
登山家との交流を描いた映画の「セブン・イヤーズ・イン・チベット」という映画も一時期話題になったけど、米国でもかなりメジャーな存在なんだよね。
今回の渡米は米国議会勲章の授与式に出席するためで、ブッシュ大統領はホワイト・ハウスに招待しているんだって。
ということは、DCに来るから、うまく行けばボクもご尊顔が拝めるかも。

ダライ・ラマというのはチベット仏教の最高指導者を指す称号で、「ダライ」は「大海」を、「ラマ」は「師」を意味しているんだって。
歴代のダライ・ラマは観音菩薩の生まれ変わりと考えられていて、先代のダライ・ラマが亡くなると、チベット仏教の高僧たちによって次のダライ・ラマが生まれる地域や、持っている特徴が予言されるのだ。
それをもとにダライ・ラマの生まれ変わりを探し出し、前世の記憶があるかどうか、先代のダライ・ラマが気に入っていたものを認識できるかどうかテストしたり、先代のダライ・ラマと同じくせがあるかどうかなんかを見極めるんだって。
こうしてダライ・ラマの生まれ変わりだと認定されると、ラサにあるポタラ宮においてチベット仏教の最高指導者となるべく英才教育を受けることになるのだ。

このシステムはかなりよくできたシステムだと考えられていて、世襲とかではなくて、先代のダライ・ラマの生まれ変わりであるという神秘性を持った子どもに英才教育を施して、最高指導者として的確な人物を作り上げるんだよね(帝王学の中の帝王学なのだ!)。
チベットではダライ・ラマが事実上の統治者として国を統治していたんだけど、これにより統治者としてふさわしい人物が常に統治できる体制が構築できるのだ。
ま、こういうことを言うと怒られちゃうんだけど。

でも、1949年に中国の人民解放軍がチベットに進行してからは、現在のダライ・ラマ14世はインドに亡命し、そこでチベット亡命政府を樹立したんだよね。
で、世界各地を回って中国の人権侵害問題や、チベットの自治権の回復などを訴えているのだ。
宗教的な活動だけじゃなく、こうした活動の実績が認められてノーベル平和賞を受賞したんだよ。
今回のように各国の首脳陣と会おうとすると、中国から外交ルートを通じて横やりが入ることが多いんだって。
もちろん、日本に来たこともあるんだよ。
ただし、来日の際は中国に配慮して政治活動を行わないことを条件に入国を認めることにしているんだって。
こうして、現在のダライ・ラマ14世は、既に宗教という枠組みを越えて活躍しているんだよね。
ボクの尊敬する人物の一人でもあるなのだ。

2007/10/13

北の氷

今年のノーベル平和賞は、地球温暖化問題への貢献でアル・ゴア元米国副大統領と、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)が受賞したのだ。
それだけこの問題が注目されているということだよね。
ゴアさんはクリントン政権で副大統領をしているころから気候変動問題に取り組んでいて、大統領選で今のブッシュ大統領と競って負けてからは、民間企業の非常勤の役員などをしながら、引き続き気候変動問題に取り組んでいたんだよね。
ドキュメンタリー映画として作られた「不都合な真実」は日本でも話題になったのだ。

でも、一部でこの地球変動問題に関する話は誇張されていたり、事実が誤解されていると言われるんだよね。
そんなひとつが、「北極の氷が溶けると海面が上昇する」というもの。
これは専門家からそんなことはあり得ない、と反論されているんだけど、いまいち直感的にわかりづらいので、自分でも考えてみることにしたのだ。

北極は南極と違って海の上に氷が浮いているだけで、陸地はないんだよね。
なので、氷が溶けてしまえば海しか残らないのだ。
そんな北極でも、長らく氷は溶けずに残っているので、その上ではホッキョクグマやアザラシ、セイウチなんかが暮らしているんだよね。
で、現在は北極の氷が溶け始めていて、これらの動物が住みにくくなってきているというのは事実なのだ。

肝心の氷が溶けたら海面が上昇するかどうかだけど、それを考えるには、水は凍ると体積が増える、という特徴を思い出さないといけないのだ。
約11分の1体積が増えると言われているんだけど、中学校でも習う浮力の法則では、押しのけた水の分だけ浮力が得られるということなので、ちょうど凍って体積が増えた分だけが水の上に浮かんでいる状態になっているんだよね。
氷山の一角とはまさにこの状態を示していて、海に浮かんでいる氷は海面に出ているのはごくごく一部で、その下に大きな氷があることを示しているのだ。

そんな状態で氷が溶けたときにどうなるかだけど、海の表面に出ているのはあくまでも体積が増えた分に過ぎないので、いくら氷が溶けても水になると体積が減って、表面に出ていた分がなくなるので、押しのけていた水の分だけしか海の水は増えないのだ。
つまり、海の上に浮かんでいる氷の量が減っても、その体積分の水が増えるわけではないから海面は上昇しないのだ!

単純化のために四角いようかんのような氷を考えるとわかりやすいんだけど、550mの水がかたまって氷になると、550m3の氷が海面の下にあって、海の上には50mだけ氷が浮かんでいるのだ。
このうち、海の上で10mの氷が溶けたとすると、海面の下では110mの氷が溶けていることになるんだよね。
合わせて120mの氷が溶けていることになるけど、これが水になると体積が減って110mの水になるのだ。
すると、もともと海面の下にあった氷の体積と同じで、氷のあったところが水に置き換わるだけで、海の水の量は変化しないというわけ。

というわけで、北極の氷が溶けることがよいこととは言わないけど、それによって海面が上昇するというのは明らかに誤解なのだ。
むしろ、氷河や万年雪として地上に保存されている氷が溶けると、これは溶けた分がまるまる水になって海に流れ込むので海の水が増えるのだ。
北欧やシベリアに残っている氷河は溶け始めているらしいけど、この氷は海面の上昇につながるんだよね。
なので、海面の上昇ということではそっちの氷を気にすべきなのだ。
個人的にはホッキョクグマやアザラシの住むところが減ってしまうので、北極の氷もとても大事だと思うけどね。

2007/10/12

カフェイン

米国に来てからしばらくはコーヒーは飲まなかったんだけど、朝から勉強しようとするとどうしても眠いから、今では毎朝オフィスに着いたらコーヒーを入れて飲む習慣になっているのだ。
たしかにコーヒーを飲むと頭がすっきりしたような気がするんだよね。
ボクなんかはかなり敏感で、夕方に濃いコーヒーを飲むと眠れなくなるほどなのだ(>_<)

これはコーヒーに含まれるカフェインの作用なんだよね(ボクが大学生にした実験では、すっごく濃く煮出したお茶から抽出したよ。)。
カフェインはコーヒーからはじめて抽出されたのでその名前がついたんだけど、紅茶、緑茶、ウーロン茶などのお茶類にも含まれているし、コーラやユンケルのような栄養ドリンク、ココア・チョコにも含まれているんだって。
ちなみに、カフェインの含有量はコーヒーより紅茶の方が多いといわれていて、眠気を覚ますには実は紅茶の方がよいかもしれないのだ。
カフェインは水に溶けづらいので、ゆっくり、じっくり入れると含有量が高くなるんだけど、コーヒーの場合は、ちょっとずつひいた豆の間をお湯が流れていくだけで接触している時間はそんなに長くないのだ。
ずっと茶葉とお湯が接している紅茶の方が抽出されやすいというわけ。
なので、長時間かけて抽出する水出しコーヒーはカフェインが多くて、短時間で圧力をかけて入れるエスプレッソは苦さのわりにはカフェインの含有量が少ないみたいだよ。

カフェインの代表的な作用は覚醒作用だけど、これは脳の神経活動に作用しているためと考えられているんだよね。
で、弱いながらも依存症や中毒症状も知られているのだ。
子どもには毒だとよく言われるのにはこういう背景もあるんだよね。
当然、大量に摂取すれば急性症状もあるけど、コーヒーや紅茶を飲むくらいではその量には達しないので安心なのだ。
でも、カフェイン依存は出る人もいて、長時間カフェインを摂取しないと軽い頭痛を覚えたりするらしいよ。

もうひとつの重要な作用は利用作用なのだ。
コーヒーを飲むとおしっこが近くなるんだよ。
これは腎臓での水分の再吸収をよくせいするからとか、膀胱括約筋の収縮作用を弱めるからとか言われるんだ。
覚醒作用には徐々に耐性が現れてきてきかなくなってくるんだけど、この利尿作用はあんまり影響を受けないんだよね。
なので、けっこうやっかいなのだ。
高速道路とかを運転するときに眠気覚ましにコーヒーを飲むと、いつも以上にトイレに行きたくなるので注意が必要だよ。

最近は健康志向でカフェインを摂取したくない人も増えているんだよね。
そこで出てきているのがデカフェ(decaffeate)のコーヒー。
ボクも時々デカフェにするのだ、眠れなくなっちゃうから。
デカフェにはいくつかの方法があるようで、生豆を有機溶媒に浸してカフェインを抽出する方法、生豆を水にさらして水溶性成分を抽出し、カフェインを除いた後にその水溶性成分を生豆にもどす方法、生豆を二酸化炭素の超臨界流体(一定以上の圧力と温度を加えると、物質は液体と固体の中間の性質を持つ超臨界流体という状態になるのだ。)でカフェインを抽出する方法などがあるみたい。
遺伝子操作でカフェインをもともと含まないコーヒー豆の開発も進められているみたいだけど、これはまだ実用レベルではないんだって。
もちろん、豆をひいて粉にしたものの方が加工は簡単で、さらにインスタントコーヒーの粉だともっと簡単にデカフェできるのだ。
味が物足りないという人がいるけど、ボクなんかはどうもカフェイン自体の作用より、コーヒーを飲んだ、という精神的な作用が大きいみたいで、デカフェのコーヒーでも眠気がとれたりするんだよね(笑)

2007/10/11

火災報知器

今日、夕ごはんの準備をしていると、思った以上に煙がもくもくと出て、ついに火災報知器がピピピピピと鳴りだしたのだ(>_<)
煙自体はたいしたことないんだけど、火災報知器が鳴るとなんだか焦るよね・・・。
なんかとんでもないことをしてしまった気分になるのだ。
でも、いまいちどれくらいの煙で反応しているのかがわからないんだよね。
もわっと煙が出ても反応しないときもあるし。
というわけで、その原理を少し調べてみたのだ。

火災報知器は日本でも消防法が改正されて設置が義務付けられているけど、基本的には熱や煙を感知して作動するものなのだ。
音が鳴って警告するだけのものから、スプリンクラーや防火扉と連動しているもの、警備会社や管理会社に自動的に連絡を行うものなど様々。
これからは一般住宅にも設置されるから、ますます見かける機会が増えるよ。

で、肝心の原理なんだけど、いくつか種類があるみたい。
一番直感的にわかりやすいのは熱を感知するもので、室温が一定温度以上になると作動するものなのだ。
たぶん、50度以上とか、通常の気候ではそこまで上がらない温度に設定されているんだろうね。
熱を感知しているので、おそらく赤外線センサーかなんかだと思うよ。

もうひとつの代表的な方式は煙を感知するもの。
煙が充満してくると光が直進できずに散乱されるんだけど(煙の中で光が暗くなるのはこのためなのだ。)、その拡散された光を感知するみたい(普通の状態では光が届かない方向から光が来るかどうかを検出するものだと思うのだ。)。
あらかじめレーザー光を出しておいて、それが煙で散乱されて遮断されるのを検知する方式もあるみたい(煙でレーザー光が検出器に届かなくなると作動するのだ。)。

この他にも、炎に特徴的な短波長の紫外線を感知したり、火災事故の死亡原因として代表的な一酸化炭素ガスを検知するものなどもあるみたいだよ。
いずれにしても、ほんの少しの兆候でも検知できるんだけど、誤作動が少ないということが重要なのだ。
誤作動を少なくしようと感度を下げると火災が発見できなくなるからね。
こういうのはなかなかバランスが難しくて、複数の見地方式を組み合わせたりとか、工夫のしどころなんだよ。

でも、明らかにうちの報知器は敏感すぎるような・・・。
とは言え、実際には音が鳴るだけで、いまのところそれ以降何もアクションがないから別にいいんだけど。
これでちょっとでも報知器が鳴って、いちいち管理会社の人や消防署の人が来ていたら大変なことになるのだ。
きっとしばらく警報が鳴り続けてもずっとその状態が続くと次の動作に移るのかも。
さすがに鳴るだけだったらあんまり役に立たないからね(笑)

2007/10/10

KOマウス

今年のノーベル医学・生理学賞は、「マウスの胚性幹細(ES細胞)を用いた、特定の遺伝子を改変する原理の発見」で、マリオ・カペッキ博士(米国)、メーティン・エヴァンス博士(英国)、オリバー・スミティーズ博士の3人が共同受賞したのだ。
これはいわゆる「ノックアウト・マウス」のことで、ボクも大学のころはノックアウト・マウスを使ったがんの研究をしていたのだ。
そのうちノーベル賞がもらえるはず、と言われていたものなんだよね。
それだけ現在の分子生物学にとっては重要な実験手法になっているのだ。

このノックアウト・マウスは、マウスのES細胞に改変した遺伝子を導入して、その改変した遺伝子を持つマウスの個体を生み出す、という手法なのだ。
多くの場合、その遺伝子がどういう働きをしているか知るために、遺伝子を機能のないものに変えてしまうので、「遺伝子ノックアウト」と呼ばれるんだよね。
今では、少し機能を買えた遺伝子を導入したり、ノックアウト・マウス同士をかけ合わせたり、特定の条件下で遺伝子を発現させたり・抑制できるようにしたりと、手法としてもどんどん進化しているのだ。

この手法を使うと、注目している遺伝子が実際に動物個体レベルでどういう働きをしているかがわかるんだよね。
その遺伝子がなくなったことによる「異変」を知ることで、その働きを類推するというわけなのだ。
でも、実際には非常に多くの因子のからんだ複雑なメカニズムの中の歯車がひとつかけるということで、しかも、同じ歯車が複数のメカニズムに関与していることも多いので、そう簡単に機能がわかるわけじゃないんだけどね。
でも、一部の遺伝性疾患のモデル動物としてはよく活用されていて、人間の遺伝性疾患と比べても症状の再現性が高いものもあるのだ。
そういうのは病気のメカニズムの解明や治療法の開発に役立つんだよね。
とは言え、重要な遺伝子の多くは発生段階で不可欠なので、ノックアウトしてしまうとその遺伝子改変したマウスの胎児が正常に発生せずに生まれてこないことも多いのだ。

で、どうやって遺伝子改変をDNA(デオキシリボ核酸)に導入するのかというと、なかなか巧妙な手法を使うのだ。
動物の体の中で生殖細胞が作られるとき、母方の遺伝情報と父方の遺伝情報がシャッフルされて、いろいろな組み合わせができるようになっているんだよね。
これによって生殖細胞は非常に大きな遺伝的多様性を確保することになるのだ。
このシャッフルは、相同性の高い(ようは配列はbみょうに違うけど、ようは同じ遺伝子をコードしている、ということ。)の領域の間で「相同組換え」というものが起こるんだよね。
減数分裂の時に配列の似ている領域の両端がくっついて、真ん中の部分が交差して入れ替わってしまうという現象なのだ。
これと同じ原理を用いたのがこのノックアウト・マウスを作るときの相同組換えで、ノックアウトしたい遺伝子の両端をもともとのマウスの遺伝情報の配列の長い断片ではさんだDNAを用意して、それをES細胞に注入するんだよね。
この注入方法もすほくて、一般的には強い電気ショックをかけて一時的に細胞膜に「穴」を開けて、そこからDNAが入っていくのだ(もちろん、電気ショックで死んでしまう細胞もあるのだ。)。

でも、この相同組換えは非常に低い確率でしか起こらないので、狙ったとおりの遺伝子改変が導入されたES細胞を拾い上げるのはなかなか大変なんだよ。
数千個に1個とか、それくらいの割合でしか見つからないのだ。
で、うまく改変遺伝子が導入できた細胞は、普通のマウスの胚(受精後32~64細胞まで分裂したものを使うんだよ。)の隙間の中に針で注入するのだ。
胚盤胞と呼ばれる時期は球面状の細胞のシートの中に不定形の細胞がごろごろころがっている状態なんだけど、この外側のシートの部分は将来胎盤に、中のごろごろしている部分が胎児になるんだよね。
この胎児になる細胞に混ぜてしまうというわけ。
この遺伝子改変ES細胞を注入した胚をマウスの子宮に移植して、うまくいくと、遺伝子改変された細胞と通常のマウスの細胞がまざったキメラ・マウスが生まれてくるのだ。
さらにさらに運がよいと、遺伝子改変したES細胞が生殖細胞になっていて、改変した遺伝子が子孫に伝わっていくというわけ。
改変した遺伝子が導入された生殖細胞から次の世代になるのもそんなに確率は高くなくて、けっこう大変なんだよね。

こうしてキメラ・マウスから改変遺伝子が導入されたマウスが生まれてくるんだけど、まだこのマウスはヘテロザイゴートで、2対ある遺伝子の片側だけが改変された状態なのだ。
なので、改変遺伝子が導入されたマウスのオスとメスをまたかけ合わせて、両側が改変された遺伝子になっているホモザイゴートを作ることになるんだよね。
メンデルの法則がそのまま適用されると4分の1の確率で生まれてくるんだけど、実際には遺伝子改変した胚や胎児は正常なものより弱かったりするので、それより低い確率でしか生まれて来ないみたい。

とまぁ、こうして並々ならぬ苦労をして目的の実験用マウスを作ることになるのだ。
でも、遺伝子の種類によっては両側で遺伝子がノックアウトされたマウスはそもそも正常に発生できずに生まれてこなかったり、生まれてきてもすぐに死んでしまったりすることもあるので、時間をかけてキメラマウスまでたどりついても、そこから先の実験ができないこともあるんだ。

2007/10/09

青信号とGreen Signal

日本では「進んでもよい」の信号は「青信号」と言われるよね。
でも、実際の色は緑色なのだ!
で、英語では「green signal」と呼んでいて、準備が万端に整った場合は「all green」なんて言い方もするよね。

どうも、緑色の信号を「青信号」と呼ぶようになったのは、マスメディアで最初に信号が紹介されるときに「青信号」と書かれてしまったのが広まったのだとか。
法令上は「緑信号」となっていたんだけど、「青信号」という呼称があまりにも浸透しているので、今では法令上も「青信号」になっているんだって。
さらに、最近では電球型の信号から、より省エネの発光ダイオード型の信号へと転換が進んでいるけど、その新しい信号ではより青っぽい色が採用されているのだ。
最初は呼称だけだったものが、実態が名称に沿って変化してきているんだよ。

でも、この現象のおおもとは、日本では古来からあまり緑と青を区別していなかったことに由来しているみたい。
例えば、「青々とした葉っぱ」なんて言うときの「青」は明らかに「緑」のことだよね。
「青田買い」の「青」も同じなのだ。
これは色が区別できなかったわけじゃなくて、ただ単に区別していなかっただけみたい。
いくらむかしの人でも、海の色と葉っぱの色の区別がつかなかったわけじゃないのだ。

なんでも、古代の日本では、赤、青、黒、白の4色しか色を表す言葉がなかったようで、必然的にこのどれかに当てたみたい。
オレンジの中央線は時々「赤い電車」なんて呼ばれるのがそうだよね。
この4色だけは形容詞が存在していて、「赤い(赤し)」、「青い(青し)」、「黒い(黒し)」、「白い(白し)」となるんだけど、黄色や緑、紫などではこうはいかないのだ。
これもやっぱり色を表す言葉としての歴史の古さなのかも。

なんでも、「緑」を表す言葉がないのはマヤ文明も共通らしいよ。
中国語の「青」の使い方も「緑」と「青」をあまり区別しないことがあるようなのだ。
だとすると、これはアジア人の色のとらえ方なのかもね。
探してみると、中央アジアからカムチャッカ半島、南北アメリカ大陸を通っての「グレート・ジャーニー」に沿ってこの痕跡があるのかも。
そういうのって調べてみたらおもしろそうだよね(^o^)/

2007/10/08

水上の花

今日はスイレンとハスの花を見たのだ。
どっちも水の中に生えていて、丸い葉っぱで、似たような花だから、どっちがどっちが区別着かない人もいるよね。
日本語だと睡蓮と蓮で漢字で書くと「蓮」の字が共通だから仲間に見えるのだ。
でも、同じスイレン目ではあるけど科はスイレン科とハス科で異なっていて、かなり違う植物なんだって。
英語ではスイレンがwater lily、ハスがlotusで別物として扱っているんだよね。

スイレンは熱帯から温帯の水辺に生える植物で、多くの場合葉が水面に浮いているのが特徴なのだ。
まず水上に出ることはないんだよ。
なので、普通は葉の裏側にある気孔が葉の表面にあるんだって。
温帯産のものは比較的水面に近いところに花を咲かせ、熱帯産のものはかなり茎を伸ばして上方で花を咲かせるそうだよ。
植物園なんかで見られるのは多くの場合熱帯産らしいのだ。
水の上に浮いたお皿のようなオオオニバスは、子どもくらいなら上にのっても大丈夫という浮力なんだけど、名前は「ハス」でもスイレンなのだ。
これは南米原産で、日本の植物園にもよくあるよね。

一方、ハスはインド亜大陸を原産とする植物で、地中の地下茎から葉の水上に伸ばすのだ。
ハスは葉っぱが水面より出ていることが多いんだよ!
これがハスとスイレンを見分ける一番わかりやすい違いなんだ。
それと、ハスの葉は撥水性が強く、ロータス効果と言って葉の上で水が玉になるんだよね。
スイレンの葉は撥水性がないので、雨が降ると違いがよくわかるのだ。

ハスの花はレンゲと呼ばれるけど、はちみつの中でもレンゲはちみつはけっこう高級品だよね。
花が落ちると実ができるんだけど、そのハナビラが落ちた後の子房の部分が蜂の巣のように見えるので「ハチス」と呼ばれるようになり、「ハス」になったと言われているんだ。
実も食べられて、甘納豆や汁粉にできるんだよ。
さらに、地下茎はいわゆるレンコンなのだ。
レンコンの穴は茎までつながる通気のための気孔なんだ。
ちなみに、中華料理で使うレンゲはレンゲの花びらに形が似ているからそう呼ばれるらしいよ

ハスの実の皮はとても厚く、土の中でかなりの長期間発芽能力を維持できるんだって。
千葉県千葉市の検見川遺跡の地下から大賀博士が発見したハスの実は2,000年前のもので、今では大賀ハスとして千葉駅近くの千葉公園なんかで見られるのだ。
大賀ハスの実を使った甘納豆なんておみやげもあるんだよ。
むかしエジプトのピラミッドで見つかったエンドウ豆が発芽して話題になったことがあるけど(学研の学習雑誌のおまけにもなったよね。)、それとおなじくらいすごいことなのだ。

2007/10/07

秋の色合い

今日、街を歩いていたら、カエデの葉が赤く紅葉しているのを発見したのだ。
米国の木の多くは黄色くなる種類はそれなりにあるんだけど、赤く色づく木はほとんどないんだよね。
なので、日本のように紅葉を楽しむという習慣はないんだけど、カエデの紅葉を発見できて少しうれしかったのだ。
そこで、紅葉のメカニズムを調べてみたよ。

一般的に紅葉は落葉樹の葉が落ちるときに赤や黄色に色づくことを指していて、色ごとに、赤くなれば紅葉、黄色くなれば黄葉(おうよう)、褐色になれば褐葉(かつよう)と呼び分けるんだって。
赤くなるものの代表としてはモミジ(イロハカエデ)やカエデ、黄色くなるものの代表はイチョウ、ポプラ、ケヤキ、褐色になるものの代表としてはブナ、スズカケノキ(プラタナス)などがあるのだ。
サクラやウメ、モモなんかもちょっと紅葉して、葉が落ちる前に淡い黄色になって、紅葉がゆっくりと進むと赤い色も出てくるのだ。
上野のお山なんかはわりときれいに紅葉するんだよね。
桜並木は春だけじゃなくて秋も楽しめるんだよ。

紅葉は段々寒くなってきて、日照時間が短くなり、昼夜の温度差が大きくなるとスイッチが入ると考えられているのだ。
昼間はまだ暑いと感じるような陽気でも、日照時間が短くなっていて、夜の冷え込みが厳しくなっていれば一気に紅葉するんだよ。
でも、夜の冷え込みが弱いと、紅葉のスピードはとても遅くなるのだ。
昨年はけっこう冷え込みが弱くて紅葉が遅れたんだよね。

植物の葉っぱは基本的に中に含まれている葉緑素によって緑色に見えるんだけど、紅葉するときはこの葉緑素がなくなって、新しい色素が合成されたり、緑の強い色素がなくなってもともと持っていた色素が見えるようになったりして色が変わるのだ。
赤くなる場合はアントシアニンという色素に由来していて、これは葉の中に含まれる糖が紫外線で化学変化を起こして生じるのだ。
モミジを含むカエデは葉の中に微量の糖を含むことで有名で、葉をかじると少し甘いんだよ(ほとんど甘みを感じる量は入っていないんだけど。)。
特に糖の含有量が多いのはメープルシロップをしぼるサトウカエデなのだ。

黄色くなるものはカロテノイド系の色素によるもので、これはもともと葉っぱに含まれている色素なのだ。
イチョウなんかは普段から黄緑色の葉っぱだよね。
緑が抜けて黄色が目立つようになるというわけ。
褐色のものはタンニンによるもので、黄色と同じようにはじめから含まれている色が、緑が抜けて見えるようになるというわけ。
これらは新しく色素が作られるわけではないから、だらだら紅葉が進むと色合いが汚くなったり、紅葉が完了する前に葉が落ちてしまったりするんだよね。

世界でも紅葉狩りのようにわざわざ出かけて紅葉を楽しむ、という文化を持っているのは日本だけのようなのだ。
きっと中国や朝鮮半島にも赤く色づく木はあるし、中にはそれを楽しんでいる人もいるんだろうけど、全国的な行事にまではなっていないんだよね。
それを考えると、日本時は四季の移り変わりを楽しむ傾向があるのかも。
冬のウメ、春のサクラ、夏のショウブ・アヤメ・アジサイ、秋の紅葉、と1年を通じて庭をかざって楽しむ文化があるよね。
こういうのは大事な文化なので残していきたいものなのだ。

2007/10/06

洋風卵焼飯

今日の夕ごはんは、冷凍ごはんと卵があまっていたのでオムライスを作ったのだ。
と言っても、オムレツのように包むのは難しいので、「ケチャップライスの薄焼き卵のせ」の方が正確な表現だけど(笑)
普通の炒飯もおいしいけど、オムライスはオムライスでときどき食べたくなるのだ。

このオムライスは日本発祥の「洋食」でフランス料理に起源のある卵料理のオムレツからの発想なのだ。
フランス風のオムレツだと、卵で具材を包んで焼くけど、その具がごはんになって、主食となってしまっているのだ(スペイン風オムレツだとあらかじめ具と卵を混ぜて「かに玉」のように比較的熱い卵焼きにするんだよね。)。
通常はケチャップで味付けしたチキンライス(鶏肉じゃなくてベーコンやウインナー、ハムを使ったケチャップライスのことも多いよね。)を包むんだけど、バターライスを包む場合もあるようなのだ。
その他の洋食と同様に「発祥の店」を自称する店はいくつかあるようで、有名なのは東京銀座の煉瓦亭(とんかつ発祥の店とも言われる洋食の老舗だよ。)と大阪心斎橋の北極星という店だって。
煉瓦亭のものは白飯を卵にといてオムレツ風に焼き上げたまかない食がルーツで、北極星のものはケチャップライスをオムレツで包むいわゆるオムライスの伝統的な形だそうなのだ。
こういうのは同時多発的に同じような発想が出ることもあるのでどこが本当の最初かはよくわからないけど、形式だけ見ると大阪の方が発祥ぽいよね。

伊丹十三監督の映画「タンポポ」では、ふっくら焼き上げた卵焼きをチキンライスの上にのせ、その卵焼きを真ん中から割ってふわっと半熟のオムレツがチキンライスの上に広がる、というオムライスが出てくるのだ。
これは伊丹監督が考案したものと言われているんだけど、日本橋の洋食の名店・たいめいけんで「タンポポ風オムライス」としてメニューに載っているのだ。
今では他のお店でも食べられるみたいだけどね。
ちなみに、たいめいけんのHPでは看板メニューの普通のオムライスのレシピが公開されているよ。
ちょっと高いけど、確かにおいしいのだ!

オムライスはさらに発展していて、オムライスの上にケチャップじゃなくてカレーをかけるとオムカレー、ハヤシライスのデミグラスソースをかけるとオムハヤシになるのだ。
焼きそばをオムレツで包んだオムそばなんてのもあるよね。
もはやここまで来ると欧米のオムレツの面影はほとんどなくなっていて、薄焼き卵で包んであるってことだけが特徴になっているけど(笑)
それにしても、日本人はこうやって「洋食」と言いながらも独自に自分の舌に合うように料理を自分の文化として取り込むのが得意だよね。
天ぷらやとんかつもそうだし。
今の時代にもそういうどん欲な発想力があればもっと世界で活躍できるような気がするんだけどなぁ。
無事根酢の世界だと違うのかな?

2007/10/05

寝る薬(=_=)zzZ

米国ではよくテレビで睡眠薬のCMを見かけるんだよね。
日本でも最近はだいぶ増えてきたけど、もともとこっちは規制がゆるくて、処方せんなしで市販で変える薬(OTC:Over the Counter)が多いということもあると思うのだ。
日本の場合は長らく睡眠薬は処方せんがないと変えなかったんだけど、作用がマイルドなドリエルとかは市販されるようになったんだよね。

いわゆる「睡眠薬」は睡眠導入剤という薬剤で、過剰な脳の活動を抑える作用があるのだ。
なので、使い方によっては抗不安剤や鎮静剤と呼ばれることもあるのだ。
多くの不眠や寝付きの悪さは、体は疲れていて身体的には睡眠を必要としているんだけど、頭はさえていて、精神的には興奮状態が続いている、というアンバランスなことが起きている結果と考えられているんだ。
で、その興奮状態を抑制することで睡眠に導こうというわけ。
種類によって作用する時間が違っていて、長短時間の作用で寝付きだけ改善するもの、短時間の作用で自然な眠りにつなげるもの、もっと長い作用でじっくりと睡眠をもたらすものなどに分かれるんだ。

実は、この種類の薬の作用が強いものは向精神剤や抗うつ剤などに使われていて、作用機序(薬の効くメカニズム)は同じで興奮し過ぎている精神を鎮めるのだ。
いわゆる「うつ」の状態も、とにかく考えすぎて思考が負のスパイラルに陥っている状態と考えられていて、実際にこういう安定剤・鎮静剤を投与すると症状が緩和されるんだよね。
でも、そういう作用の薬なので、副作用として頭がぼーっとする、記憶力が低下するなどの脳の思考力の低下から来るものが見られるのだ。
他にも、なぜかはよくわからないけど、悪夢を見るなんてのもあるんだよね。
さらに、無理矢理に薬で睡眠に持って行っているので、寝覚めがすっきりせずに眠気が持続する、集中力がなくなる、なんてのもあるんだよ。
というわけで、きちんと用量・用法を守って、自分に合った薬を使うことが重要なのだ。

この睡眠導入剤の他には睡眠改善薬と呼ばれるものがあって、ドリエルはその代表なのだ。
ドリエルの主成分は旧世代の抗ヒスタミン剤である塩酸ジフェンヒドラミンという薬で、体内のヒスタミン受容体をブロックするのだ。
かつては抗炎症剤や抗アレルギー剤なんかで使われていて、風邪薬にもよく入っていたのだ。
でも、副作用で「眠くなる」、「集中力がなくなる」というのが知られていたんだよね(風邪薬を飲んだときは自動車の運転をしちゃいけないっていうのはこのためだよ。)。
で、この副作用を逆手にとって、「眠くなる」作用を利用しているのがこの睡眠改善薬としての使い方なのだ。
ジフェンヒドラミンはこの眠気の副作用が強いので風邪薬などにはあまり使われなくなったんだけど(最近は眠くならない薬がはやっているからね。)、逆に睡眠改善薬として復活したのだ。
これは、ヒスタミン受容体も脳内にあって、脳の神経伝達に関与しているからなんだけど、詳しいメカニズムはそんなによくわかっていないんだよね。
この睡眠改善薬もけっこうきくんだけど、やっぱりそれなりの時間睡眠をとらないと眠気が持続したりするので、使い方には注意が必要なのだ。

2007/10/04

何もしていないのに。

人間の体はなかなかおもしろくて、何もせずにじっとしていてもエネルギーを消費するんだよね。
考えてみると当たり前で、じっとしていたとしても、心臓や肺は動いているし、恒温動物のほ乳類である以上は体温を維持するために筋肉を動かして常に発熱していないといけないのだ!
このために必要なエネルギーがいわゆる基礎代謝量というやつで、病院で寝たきりの生活でもこの分のエネルギーは消費していくんだよ。
成人男性では1,500kcalくらい、女性では1,200kcalだそうなのだ。
1日のカロリーの摂取量は成人男性で2,500kcalくらい、女性で2,000kcalくらいと言われるけど、この基礎代謝量が土台になっていて、後は普通に生活すると必要になるエネルギーを加算しているのだ。

主に体温を維持するために筋肉が消費するエネルギーで、当然、筋肉が多い人は余計にエネルギーがいるんだよ。
いわゆる燃費が悪い状態なのだ(>_<) でも、実はこれはダイエットの秘訣にもなっていて、食事制限をあまりせずに長期間でじっくり体重を減らす運動が主体のダイエット方はこの原理に基づいているのだ。 主に有酸素運動をすることで体の筋肉量を増やし、基礎代謝量を上げるというわけ。 すると、燃費が悪くなっているので、何もしなくてもより多くのカロリーを消費する状態になるのだ。 なので、同じ量だけ食べていても消費する量が増えているからやせていくことになるんだ。 この方法だと、体を鍛えて筋肉を維持している限りは燃費の悪い状態が続くので、リバウンドもしづらいのだ。 食事の量を抑えたり、カロリーの少ないものを食べるダイエットの場合、確かに体重はそのときに落ちるんだけど、そういう飢餓状態が続くと筋肉が落ちていくんだよね。 すると、基礎代謝量も落ちるのだ。 その後に反動でたくさん食べたりすると、いつも以上に消費が悪くなっているから余計太りやすくなるわけ。 これは明らかに悪循環なんだよね。 なので、体質改善で基礎代謝を上げて調節するのがかしこい方法なんだよ。 毎日ちょっとだけ運動して筋力を維持している限りは「太りづらい」体質が維持できるのだ。 手術なんかの後で口からものが食べられなくなると、鎖骨下静脈などの太い静脈から高カロリー輸液(通称IVH)を投与して栄養補給することになるのだ。 この輸液には当分やアミノ酸、ビタミンなんかが配合されているんだよね。 でも、浸透圧の関係で基礎代謝量と同じだけのエネルギー量を輸液だけで維持することは難しくて、輸液に頼っている間は徐々に体力が落ちていくことになるのだ(>_<)
それでも、口から食べられなくてもかなりの長期間栄養が補給できるようになったのは進歩なんだけど。
この輸液をしているような場合はまさに基礎代謝量が問題になってくるんだよね。

2007/10/03

イワシの油漬け

米国に来てからぐっと魚を食べる機会が減っているんだよね。
スーパーなんかで生魚は売っているけど、何より高いし、見たこともない魚も多いのだ!
日本だと一人の一用のお刺身とか切り身も売っているけど、こっちではそういうのもないから敷居が高いっていうのもあるんだよね。
そんなわけで、家で魚を食べるとすると、シーチキンかオイルサーディンになるのだ。

オイルサーディンはこっちに来てからはじめてまともに食べたんだけど、思っていたより生臭くなくて、パスタのソースに使うとなかなかいけるのだ。
シーチキンだとサンドイッチとかにも使えて便利なんだけど、パスタにするならボクは断然オイルサーディンの方がおいしいと思うね。
シーチキンも健康志向で「水煮」缶が出ているけど、オイルサーディンも同様で、「水煮」や「トマト煮」、「マスタード煮」など種類があるみたい。
油につかっていない自演ですでにオイルサーディンじゃないんだけどね(笑)

オイルサーディンはその名のごとく、サーディン(イワシ)を油に漬けたものなのだ。
日本ではめざしや煮干しにするカタクチイワシみたいだよ。
油漬けにして缶詰にいれて加熱殺菌(オートクレーブ)したのがオイルサーディンで、水煮の場合は油の代わりに様々な味のスープを使うのだ。
英国ではニシンの燻製やフィッシュ・アンド・チップスで白身の魚を食べる文化があるけど、オイルサーディンもそういう数少ない欧米の魚食文化なのだ。

似たようなものにアンチョビがあるけど、これは違うものなんだよ。
アンチョビの場合はカタクチイワシを一度塩漬けにして発酵させてから油に漬けたもので、ただ油に漬けてるだけのオイルサーディンより味に深みが出るというわけ。
より塩っ気があるのも一度塩漬けにしているからなのだ。
アンチョビは発光させてタンパク質を分解させているからオイルサーディン以上にもろくて、オイルサーディンが一応イワシの形を残しているのに対して、アンチョビだと身が崩れていることが多いんだよね。
ちなみに、日本でアンチョビというとこの加工食品を指すけど、もともとはカタクチイワシ類のことをアンチョビと呼んでいて、食材の名前というより材料の名前のようなのだ。

カタクチイワシはニシン目でニシンの仲間なんだけど、ニシンの塩漬けを発酵させた缶詰と言えば、世界一くさい食べ物のひとつと言われるシュールストレミングというのがあるよね(くさやの6倍くさいとか!)

これはスウェーデンの缶詰なのだ。
缶詰にしてから発酵させるのでしばしば缶がゆがんだり、破裂したりするのだ。
新鮮なニシンを樽の中で1~2ヶ月塩漬けにして、発酵が始まっているニシンを殺菌せずに缶に詰めるので、缶の中で発酵がさらに進むことになるのだ。
あまり放置しておくと身がぼろぼろにとろけてしまうそうだよ。

2007/10/02

代用バター?

ボクはより低カロリーということで、バターではなくて、バター風味のマーガリンを料理に使うことが多いんだよね。
でも、最近ではトランス脂肪酸がバターより多いことが指摘されていて、カロリーは低くても体にはよくないなんて言われているのだ。
でも、ボクが使っているのはトランス脂肪酸フリーのマーガリンだけどね。

マーガリンは動物性又は植物性の油脂に発酵乳、ビタミン類、食塩などを転化して乳化(油分と水分が均等に分散した状態だよ。)したもので、もともとはバターの安価な代用品として作られたものなのだ。
なんでも、ナポレオン3世さんが安価なバターの代用品を求めてアイデアを募集して、そこで提案されたのが牛脂に牛乳などを混ぜて作られたマーガリンだったとか。

かつての日本では大量にとれるクジラの脂肪やイワシの脂が使われていて、少し「生臭い」と言われる時代もあったんだけど、最近ではかなりバターに近い風味になっているよね。
コーン油などの植物油を使ったものは乳脂肪が入っていない分だけカロリーが低いのだ。
でも、マーガリンを作るとき、常温で個体にするために油脂に水素を付加して、油=脂肪酸の不飽和度を下げているんだけど(脂肪酸は不飽和度が上がると凝固点が低くなって、常温でも液体になるのだ。)、どうもこのときにトランス脂肪酸ができていることがわかったのだ。
なので、より健康志向の人には敬遠されつつあるみたい。

最近は質のよい植物油を使って風味もよくした高級なマーガリンもあるけど、基本的にはバターより安いので、多くの加工品(クッキーとかパンとかが代表選手)にマーガリンが使われているんだよね。
なので、知らず知らずのうちに食べている可能性もあるから、よくよく原材料を確かめないといけないみたい。
ちなみに、日本農林規格(JAS)では、油脂含有率が80%を超えるものをマーガリン類、それ未満のものをファット・スプレッドと呼ぶことにしているみたいなので、原料を確かめるときはファット・スプレッドにも注意を払う必要があるんだよ。

最近ではポテトチップスやファーストフードでもトランス脂肪酸を気にしているけど、トランス脂肪酸が入ってなければいいと言うものでもないよね(笑)
必須脂肪酸は人の体の中では作れないので外から摂取する必要があるけど、やっぱり脂肪はたくさんとるものでもないのだ。
適度な摂取を心がけるのが一番と思うよ。

2007/10/01

なまり

米国では、中国製のおもちゃに鉛が大量に入った塗料が使われていることが問題になっていて、バービー人形を製造している最大手のおもちゃ会社のマテル社が大規模な回収を行っているのだ。
鉛は必須元素で、骨や脊髄の構成には重要と言われているんだけど、一方で多量に摂取すると中毒症状が出ることでもよく知られているのだ。
おもちゃなんかは子どもが手でよく触るものだから、鉛中毒のリスクが高まって危険ということだよ。

鉛はやわらかくて、比較的低温で融けるのでむかしからよく使われてきた金属なのだ。
しかも、すぐにさびるけど、さびた部分が皮膜になって内部に浸透しないので(アルミニウムと同じ)、鉄なんかより扱いやすいんだよね。
で、古代ローマでは鉛製のコップを使っていたり、水道管を鉛で作ったりしていたのでなまり中毒が多かったみたい。
重金属で重いということもあって、おもりに使ったり、銃の弾に使われたりもしていたんだよね。
さらに、ガンマ線を遮蔽するので、放射線の遮蔽剤としてもよく使われるのだ。
欧州では、酢酸鉛を甘味料として使っていた時代もあって、ベートーベンさんはその甘味料の入ったワインが好きだったから鉛中毒になっていた、なんて話もあるんだよ。
最近は少なくなったけど、ハンダや缶なんかにも鉛はよく使われていたので中毒の危険性が高かったのだ。
ちなみに、鉛の塩はきれいな色が出るのでむかしはよく顔料や塗料に使われていて、四酸化三鉛の赤やクロム酸鉛の黄色が有名だよ。

鉛中毒になると、急性症状では嘔吐、腹痛、ショック(末梢循環不全といって手足の先などの末梢組織の血流量が極端に減ることで、顔面が蒼白になったり、急激な体温低下が起こる症状なのだ。)が起こることが知られていて、慢性中毒では消化器症状、神経症状、貧血なんかが見られるそうだよ。
ふだんは尿中に排出されていくんだけど、排出量より摂取量が多くなるとこういう中毒症状が出てくるなって。
鉛はヘモグロビンの合成過程で鉄と競合することが知られていて、それでヘモグロビンができづらくなって貧血などの症状が起こるみたい。
他にも、鉛の量が多くなってくると今度は亜鉛の排出が促進されてしまうみたいで、鉛の多量摂取で亜鉛欠乏の症状が出るようなのだ。
それが消化器症状や神経症状の原因だろうね。

なんと、現在の日本でもまだ鉛製の水道管が残っていたりするそうで、鉛中毒の危険性があるのだ。
さらに、鉛製の散弾銃の弾が放置され、それを鳥や小動物が摂取することで鳥や動物の鉛中毒も問題になっているんだって。
人間だけじゃなくて、いろんなところに影響が出ているんだねぇ。
便利なものだからこそ、正しく使って、こういう悪い面が出ないようにしたいものなのだ。