2014/03/29

慣例により首相が答弁します

参議院でも予算が成立し、国会はいよいよ後半戦に突入!
これからは様々な法案が審議されることになるのだ。
その中でも、特に注目を集めるのが「重要広範議案」と呼ばれるもの。
新聞などの報道でも、その成立の見通しが記事になるのだ。

日本の国会制度は委員会審議制をとっているので、基本的に議案の中身の審議は各委員会に付託して行うのだ。
各委員会への付託は、議院運営委員会によって決定され、付託が決まれば、各委員会で趣旨説明、質疑、採決と続いて、最終的に本会議で採決されるんだ。
委員会ですでに賛否が出ているので、通常本会議においては、その議案を審議した委員会の委員長から、委員会ではこういう議論があって賛否はこうなった、と報告があって、その上で採決されるんだけど、これは「議了処理」と呼ばれるのだ。
なんだか本会議による議決は形式的と言っているような感じだけど。

ただし、たまに本会議の議決の前に討論することもあって、これは議院内の各会派の申し出により、賛成討論や反対討論を述べてから採決に突入することもあるよ。
また、議決の方法も複数あるんだ。
ひとつは、起立を求めるもので、この場合は「賛成多数により可決します」みたいな感じでぱっと見てすぐに賛否がわかるものに限られるよ。
二つ目は、記名投票を行うもので、賛成の場合は白票、反対の場合は青票を投じるよ。
事務総長が議員の名前を読み上げて、一人一人議長の前に札を持っていくのだ。
この場合、「牛歩戦術」がとられることがあるよ。
次に、異議の有無を確認するもので、議長が「御異議ございませんか」と聴いて、議場から「異議なし」と言ってもらうんだけど、基本的にはあらかじめ全会一致であることがわかっている場合にだけ使うのだ。
最後が、押しボタン式投票によるもので、参議院にだけ導入されている、議員席の手元にある賛否のボタンを押して投票を行う方式。
参議院広報を後で見ると各議院がどっちのボタンを押したか確認できるんだけど、間違えて押すこともあるみたい(笑)

一方、入口の段階で本会議で議論することもあるのだ。
それらの議案は「登壇もの」と呼ばれて、担当大臣が本会議においても法案の趣旨説明をして、それに対する質疑を行うのだ。
本会議における質疑の後、委員会に付託されて、より詳細な議論が行われることになるよ。
さらに、「登壇もの」のうち、「重要広範議案」と呼ばれるものもあって、この場合は、趣旨説明質疑で首相に質問することができるとともに、委員会の質疑でも各党一巡の基本的質疑や締めくくり総括質疑で首相に質問できるのだ。
ただし、これは与野党間の申合せによる慣例で、与野党の国会対策委員会が協議して決めるのだ。
「重要広範」に指定されると、本会議でも質疑が入るし、委員会の審議でも十分時間をとって議論することになるので、一般に法案審議に時間がかかるようになるのだ。
なので、内容的にはとても重要であっても、審議時間の関係で与党がいやがって「重要広範」とならないことも・・・。
一般的には4件程度の議案が「重要広範」指定されるんだけど、与野党間の駆け引きでこの数は増減するのだ。

予算が終わってから法案の審議が本格化するわけだけど、「重要広範議案」の場合は首相が答弁するので、当然注目を集めるのだ。
こういうのをあらかじめ知った上で報道を見てみると、国会の仕組みがよくわかっておもしろいよ。
意外に下手なバラエティを見るより、国会中継を見ている方がおもしろいこともあるからね(笑)

2014/03/22

実は公平?

いよいよ4月からは消費税率が上がるのだ。
駆け込み需要で高いものが売れているみたいだね。
かくいう我が家もいろいろとほしいものを3月中に買おうと画策しているけど。
実際、3%も税率が上がれば、1万円の価格で300円違うわけで、これがもっと高額なら大きいよね!
とは言え、むしろ目先の10円、20円の方が感覚的にはしっくり来て、節約節約と買いだめしたくなるのだけど(笑)

この消費税増税は、導入時点で「逆進性」の問題が指摘されたのだ。
ここで言う「逆進性」は、所得の低い人ほど消費税による税負担率が高くなる、というもの。
単純化すると、消費に占める食費の割合を示すエンゲル係数との関係で考えるとわかりやすいんだ。
つまり、収入が多く、生活に余裕がある人はエンゲル係数も低く、そのため、食費に係る消費税の負担率は低くなるのだ。
一方で、収入が少なく、食い詰めている人はエンゲル係数が高くなって、食費に係る消費税の負担率は大きくなるんだよね。
食費のように生活を営む上で絶対に必要な消費支出に着目すると、低所得者の方が消費税が重くのしかかっているように見えるというわけ。

もっと一般化して生活必需品の消費を考えた場合、生活必需品は所得が高ければそれだけ多く必要になるというものではなくて、一人あたりに必要な数・量が決まるものなので、所得が高くなれば生活必需品が消費支出に占める割合が少なくなるんだよね。
そうなると、生活必需品に係る消費税の負担率は所得に反比例することになるのだ。
これが消費税の逆進性と言われるもので、低所得者に税負担を押しつけているのではないか、という主張なんだよね。

ところが、これは論理的におかしいと反論もされているんだよね。
わかりやすい例で言えば、高所得者は高価なものを買うし、低所得者は割安なものを買うわけで、それぞれ所得に見合った消費をする限りにおいては税負担率は公平だ、というもの。
お金持ちはデパートで高級食材を買う一方で、庶民はスーパーのタイムセールで値引き品を買うのだから、お金持ちは庶民に比べて確かにたくさん税を払っているんだよね。
また、お金持ちは生活必需品だけでなくて嗜好品や美術品などの高価なものも買うわけで、生活必需品だけの消費支出で考えるのは適当ではないのだ。

こういう話があるので、いわゆる逆進性対策として、生活必需品については低減税率を適用して、低所得者の税負担率を下げよう、なんて話が出てくるんだよね。
ただ、海外では品目ごとに税率を変えている例もあるけど、それってけっこうシステムとして機能させるのは大変なんだよね・・・。
それに、何をもって「生活必需品」とするかの問題もあって、そうそう単純な話でもないのだ。
なので、とりあえずは8%に上げる段階では低減税率は適用されないことになっているのだ。
でも、将来的な課題として議論は残っているんだよね。

ところが、この話もおかしいと言われているんだよね。
ある一時点で見ると確かに高所得者は生活に余裕があって、収入に占める消費支出が低いように見えるんだけど、実際には生涯期間で考えると、

 生涯収入 = 生涯納税額 + 生涯消費支出 + 相続・贈与額

の式が成り立つはずで、相続や贈与しない分は最終的にはなんらかの形で消費に回っているんだよね。
それが数年に一度自動車を買うとか、一生に一度豪邸を買うとかだからいまいちこの議論で補足しきれないだけで。
そもそも相続税や贈与税は消費税よりはるかに高い税率だからとやかく言われる筋合いはないし、生涯消費で考えると、下手に食料品に低減税率を適用すると、高所得者の方が生涯に食費に充てる金額は高いので、税額負担軽減効果では得をすることにもなってしまうんだ!
そうなると、一定の税率で等しく全員に消費税を課税した方がよいということになるんだよね。

これは数式だけのことだけど、やっぱりなんかダマされた感は残るんだよね。
で、つらつらと考えてみると、この「不公平感」は「金持ちはたくさん税金を払うべき」というところから来ているような気がするのだ。
所得税なんかは累進課税になっているから、所得が増えるほど税率も上がって、高所得者ほど多くの税金を納める仕組みになっているんだよね。
これが「富の再配分」につながっているわけだけど、消費税の場合は、上で見たように、所得の多寡に関係なく等しく、公平に税負担が来るので、別のところで低所得者が優遇されていただけに、低所得者に一見厳しいように見えるんだよね。
おそらくここがポイント。

となると、むかしあった物品税のように、贅沢品にはむしろ高い税率で消費税をかける、ということになるんだけど、そうなると、庶民が一世一代の高い買い物として自動車や住宅、婚約指輪なんかの高額のものを買うのに支障が出るから、それも難しいんだよね・・・。
こうやって詰めて考えてみるとなかなか奥が深いことがよくわかったのだ。
でも、まずは3月中に何を買ったらいいのか考えないとね(笑)

2014/03/15

コットンで吸収せよ

もう東日本大震災から3年が経ったんだね。
がれきの山は消えても、まだ復興は道半ば・・・。
福島の除染の問題ばかり騒がれるけど、実際は津波により海水をかぶってしまった田畑の再生も大きな課題なのだ!
東北はもともと農業が主要産業だから、塩害により商品作物ができなくなったんじゃお手上げなんだよね(>o<)

実際にはどうやっているかと調べてみると、けっこう大変そうなのだ。
まずは、すでに塩が浮いている表土を削り取るのだ。
海水は当然地下へとしみこんでいるけど、やっぱり表面が塩分濃度が一番高いので、ここを除去するのが最初。
その上で、田んぼの場合は、真水をふんだんに入れて代掻きをし、土中の塩分をその水に溶かしてから排水する、ということを繰り返すのだ。
徐々に薄めていくというわけだけど、この希釈だけで元に戻すのは難しいみたい。
そもそも何度も代掻きをするという作業が大作業だし。
そして、津波で灌漑設備が破壊されてしまっている場合、この方法は使えないのだorz

そんな中、塩害に強い作物を育てながら、徐々に田畑の塩分を取り除いていこう、というプロジェクトも行われているのだ。
有名なのは、いろんな企業も協賛している「東北コットンプロジェクト」。
綿花は耐塩性が高い植物として知られていて、綿花を栽培しつつ、塩分を取り除くとともに、その綿花は商品作物なので、農家の収入源にもなるというわけ。
これで雇用対策にも貢献できるし、離農を防げるというのもあるのだ。
協賛企業はそこで収穫された綿花を市価より高めに買い取って、木綿の商品を展開するんだ。
こういうのがもっと有名になってくれるとよいのだけど。

植物の中には土中の塩分濃度に敏感で、少しでも塩分濃度が高いと育たないものから、マングローブ林を構成する植物のように、海水につかっていても成長できる塩分に強いものまでいろいろあるのだ。
例えば、荒れ地に強いサツマイモやトウモロコシは塩害には弱いんだよね。
イネも同じで、やはり塩害には弱く、今回のように津波被害を受けるとなかなか水田耕作を復帰させるのは難しいのだ。
逆に塩害にわりと強いのは、ダイズやササゲ、かなり強いのはオオムギ、テンサイ、ワタなんだって。
トマトも塩分に強いんだけど、トマトは塩分濃度の高い土地で育てると糖度が高くなることが知られていて、わざと塩分濃度の高い土で栽培することもあるんだって!

ワタは古来から開拓してすぐに育てられる植物として知られていて、これは土中の余計な塩分を吸収してくれるかららしいのだ。
マングローブ林を構成する植物の場合は、細胞内の液胞に塩分を貯めておいて、光合成の時にはの表面から塩分を排出するというようなシステムになっているようなのだ。
あらかじめ根で水分を吸うときに塩分を濾過するような植物もいるんだとか。
ワタの場合は、すでに生命活動を停止している古い葉の中などに塩分を貯めるようにしていて、それを離脱させることで土壌から塩分を吸収し、体外に排出しているみたい。
けっこう効果はあるようで、1年綿花を栽培しただけでかなり土中塩分濃度は下がるみたいだよ。
ただし、稲作ができるようになるまでにはやはり数年のオーダーで時間がかかるわけだけど・・・。

こうしてみてくると、自然の摂理っていうのは偉大だよね。
もともと川の河口付近とか汽水域の近辺に自生しているような植物は耐塩性が高いんだろうけど、今回のように津波で思わぬ塩害が発生することは人類誕生以前からあったはずなのだ。
でも、それによって未来永劫不毛の土地になってはいないので、津波後に耐塩性の高い植物がまず生えて、ある程度土中の塩分を吸収してくれたから他の植物も生えるようになって、最終的には元と同じような状況になる、ということがシステムとしてできあがったんじゃないかな?
場合によっては大きく植生が変わることもあったろうけど、それでも、きちんと自然は再生するんだね。

2014/03/08

隼町の主

報道によると、最高裁判所の竹崎長官は、年度内いっぱいで退官し、現在最高裁判所判事の寺田さんという人が後任になるそうなのだ。
最高裁判所長官の定年は70歳で、竹崎長官はまだ69歳なんだけど、健康上の理由から引退されるんだとか。
今度の寺田さんは、お父さんも最高裁判所の長官をしていたという裁判官サラブレッド!
はじめて司法の長に「世襲」が生まれたのだ(笑)

最高裁判所の長官は、内閣の指名に基づいて天皇が任命する憲法に規定されているんだけど、憲法上は、第6条第2項で「天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。」と書いてあって、長官とは言っていないのだ。
この憲法に言う「最高裁判所の長たる裁判官」については、裁判所法第5条第1項で「最高裁判所の裁判官は、その長たる裁判官を最高裁判所長官とし、その他の裁判官を最高裁判所判事とする。」と規定していて、ここではじめて「長たる裁判官=長官」という図式になっているんだって。
米国の連邦最高裁判所の長は「Chief Justice」で、その他の裁判官は「Associate Justice」なんだよね。
これがそのまま和訳された感じに近いのかな?

憲法制定に至る過程を見ていくと、最初は最高裁判所の裁判官は全員並びで区別せずに「内閣が任命する」となっていたようなんだけど、同じ三権の長である最高裁判所の責任者の任命権もすべてが内閣に帰属することが問題になって、その「長」だけを別格にし、内閣総理大臣並びで「天皇が任命する」と修正したんだとか。
なので、憲法で言っている「長たる裁判官」というのは任命権の帰属において他の裁判官と区別するだけの話で、三権の長として何か権限を与えたりしているものではないんだとか。
最高裁判所という国の機関の責任者という意味では、長官が最終責任者ではあるんだけど、実際に司法権の行使の観点で言うと、他の最高裁判所判事との間で優越関係はないそうだよ。
ちなみに、最高裁判所の判事を内閣が任命することについては、憲法第79条第1項で「最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。」と規定しているよ。

こういう建て付けなので、そのガバナンスも行政を司る内閣とは自ずと異なっているのだ。
内閣におけるその長たる内閣総理大臣は、内閣を構成する国務大臣を任命することができるのが大きな違い(憲法第68条第1項)。
また、内閣総理大臣は、閣議を主宰し(内閣法第4条第1項)、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出するとともに(同法第5条)、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督し(同法第6条)、主任の大臣の間における権限についての疑義を閣議にかけて裁定することとなっているのだ(同法第7条)。
すなわち、内閣総理大臣は内閣においてリーダーシップをとる形のガバナンスになっているんだ。

一方で、上記のように、最高裁判所判事はすべて内閣が任命することになっていて、長官には任命権がないのだ(>o<)
憲法や裁判所法でも、最高裁判所において長たる裁判官(=長官)が他の裁判官(=判事)に対して優越的な地位を占めるとの規定はないんだよね。
せいぜい全裁判官を構成員とする大法廷で裁判長をするくらい。
これもリーダーシップをとるというよりは、全員の意見をとりまとめるくらいの役割でしかないから、同じ三権の長でも行政と司法では大きく違っているのだ。

ただし、司法行政事務についてはちょっとだけリーダーシップがとれる枠組みになっているよ。
司法行政事務は、最高裁判所の全裁判官を構成員とする裁判官会議により行われる、とされていて、それを長官が議長として総括する、ということになっているのだ(裁判所法第12条)。
これだと、戦前の帝国憲法下における内閣総理大臣の閣議における役割に近いかな?
でも、「会議による」って明確に書かれているから、その事務の執行は合議体組織で意思決定する必要があって、長官に裁量が任されているわけではないんだよね・・・・。
行政権の行使も内閣が連帯して責任を負うことになっているけど(内閣法第1条第2項)、内閣総理大臣には国務大臣の任命権があるので、権限上は言うことを聞かない国務大臣を更迭することができて、かなり裁量が任される部分があるんだよね。
やっぱり人事権を掌握できていないという点で、最高裁判所の長官のリーダーシップは弱く、「首座の裁判官」程度のものでしかないんだよね。
ただし、最高裁判所においてそんなに長官がリーダーシップをとってやるべきことがあるか、という問題はあるんだけど(笑)

こうして長官人事に異動でもなければ興味が出なかったけど、なかなかおもしろい仕組みになっているなぁ。
日常生活だと、司法の現場たる裁判自体にそもそもなじみがないからね。
なおかつ、その裁判所のガバナンスなんて(笑)
今度の衆議院総選挙の時は、最高裁判所裁判官の国民審査でもう少しまじめに各裁判官の業績を読んでみようかな?

2014/03/01

乳タイプ

むかしからわりと有名な話のようだけど、常温で保存できる「コーヒーフレッシュ」は乳製品ですらなく、主原料が植物性油脂だというのだ!
これを知ったきっかけは、たまたまネットで見た、家庭にあるよく燃えるもの、という記事で、コーヒーフレッシュは植物性油脂が主原料なので、火の近くで扱う場合は注意、と書いてあったんだ。
で、実際に調べてみると、主原料は植物性油脂(ようは植物由来の油)で、そこに乳化剤(食用の界面活性剤)と乳製品(脱脂粉乳とか乳糖とか)とカゼインを加えたもののようなんだ。
確かに、乳製品だったら常温では保存できないよね・・・。

もともとコーヒーには脂肪分の多いクリーム(牛乳を遠心分離にかけて、上に浮いたクリーム層をとったもの。逆に下の方の水層をとると低脂肪乳や無脂肪乳になるのだ。)を使っていたんだけど、これは日持ちがしないし冷蔵しないといけないのでコストがかかる。
そこでその打開策が考えられたのだ。
まず出てきたのは粉末状のクリーミングパウダー。
1960年代初頭に出てきたのは、乳製品のみを主原料とする森永乳業のクリープ。
ここまではまだ乳製品にこだわっているのだ。

単純に脱脂粉乳をコーヒーに入れてもよいような気がするけど、そもそもコーヒーに合うのは乳脂肪分の多いクリームであること、それからなによりの問題として、脱脂粉乳はかなり水に溶けづらいことから、それでは解決策にならなかったのだ。
森永乳業では、生クリームの粉末化に関する理論の書かれた米国の論文をもとに、独自に技術開発をして作り上げたんだって。
技術自体は1950年代にできていたけど、さほど家庭でコーヒーを飲む習慣が根付いていなかったので、売り出すまでには時間がかかっているのだ・・・。

具体的には、乳中に含まれるカルシウムやマグネシウムのような二価のイオンはコーヒーに含まれている有機酸と反応し、乳タンパクを架橋して固まらせてしまうのだ・・・・。
ミルクティーにレモン汁を入れると乳タンパクが凝固して沈殿するけど、まさにそれと同じ反応が起こってしまうわけ(>o<)
そこで、そういう反応が起きないように、二価の金属イオンを一価の金属イオン(ナトリウムなど)に交換するのだ。
このとき、一度無脂肪乳にしてカラムを通してイオン交換を行い、その後井某分とまた混合するんだって。
次に、そうを霧状にして乾燥させ、粉末にするのだ。
短時間でさっと乾燥させるので風味が飛ばないんだとか。
最後に、細かい粒子だと水に溶けづらいので、ある程度の大きな粒子になるように造粒するのだ。
意外とクリープがざらざらしているのはこのためみたい。

こうして手軽に使える粉末状のミルクが登場したわけだけど、この少し後に、そもそもミルクを主原料にしない、植物性油脂由来のコーヒーフレッシュが登場するのだ!
それが1970年代。
同時に、植物性油脂を主原料とする粉末タイプのもの、クリーミングパウダーも登場(こっちは植物由来の脂肪で作るのだ。)。
何より、低コストでできるんだよね。
インスタントコーヒーとクリーミングパウダー、砂糖が一緒に入っているタイプの商品があるけど、そういうところに需要があるのだ。
乳製品や香料を加えるので風味はそこそこあるけど、やっぱり乳製品のみを原料とするクリープには及ばないみたい。
クリープはそのままなめる子供がいるくらいだからね(笑)
そして、植物性原料由来とは言え、実はコーヒーフレッシュやクリーミングパウダーの方がカロリーは高いみたい・・・。
これも注意が必要だね。

本来、コーヒーには無糖練乳や生クリームを使うものだったのだ。
無糖練乳というのは牛乳を加熱して水分を飛ばしたもの。
英語ではエバミルクと呼ばれているけど、加熱時に砂糖を加えると、加糖練乳=コンデンスミルクになるのだ。
生クリームは牛乳を遠心分離にかけ、上の方(=軽い方)の乳脂肪が多い部分を取り出したもの。
原始的には、牛乳を加熱殺菌後に静置して冷却すると、上の方にクリームが分離してくるので、それをすくったものなんだよね。
コーヒーに使うクリームは通常脂肪分が20~40%の軽めのもので、ケーキなどに使うホイップクリームの場合は30~50%ともう少し濃厚なのだ。
ウインナー・コーヒーは濃いめに入れたコーヒーに、濃いめのクリームを使うというわけ。

というわけで、ポーションタイプのコーヒーフレッシュはミルクの代用ではあっても、乳製品ではないのだ!
どうも粉末タイプのココアを作るときにコーヒーフレッシュを添加してもミルク感が出ないなぁ、と思っていたんだけど、原因はここだったんだね・・・。
粉末タイプでも、やっぱりクリープでないとダメなのかな?
実際に飲み比べてみるとけっこう違ったりして。