2019/01/26

塩漬けいろいろ

フランスではなかなか売っていない加工肉があるのだ。
それは、薄切りのベーコン。
イングリッシュ・ブレックファストでは定番中の定番なのに、大陸側のフランスではほとんど売っていないんだよね。
むしろ、普通のハムの方が好きみたい。
ホテルの朝食でもハムの種類は多いよ。

そして、ベーコンの代わりとしては、ラルドンという細切りの塩漬け豚肉を使うのだ。
これは、牛のバラ肉や背脂の部分を塩漬けにしてから短冊状に切ったもの。
ラルドンの「ラル」の部分は「ブタ脂」の「ラード」だよ。
なので、見た目的にも半分以上が脂という感じ・・・。
これをカリカリに炒めてサラダの具にしたり、ゆっくり熱して脂を出してスープや煮込み料理にコクを与えたりするのに使うのだ。
本来的には塩漬けにしただけのものがラルドンなんだけど、最近は更に君背資したものまであるよ。
そうなると、ほぼベーコンと同じようなものだよね。

で、なんかに似ているなぁ、と思っていたら、それはイタリアのパンチェッタ。
あの、カルボナーラに入っている肉。
あれは豚バラ肉を塩漬けにしたものだよね。
カルボナーラに入っているやつはラルドンと同じように細切りのものだけど、本来的には豚バラ肉を塩漬けにしたものなので、ブロックみたい。
それを薄切りにしたり、細切りにしたりして使うようなのだ。

パンチェッタというのはもともとバラ肉の意味で、イタリアではブタのバラ肉を塩漬けにしたものがよく食べられていたので、いつしかその塩漬け肉もパンチェッタと呼ぶようになったみたい。
で、塩漬けにするのがもも肉の場合はプロシュット。
つまり、「生ハム」。
そして、ブタのほほ肉(豚トロ)を塩漬けにしたのがグアンチャーレ。
アマトリチャーナに入っているほろほろする肉だよ。

これらはどれも塩漬けにした豚肉の表面を乾燥させつつ熟成させたもの。
乾燥させずに燻製にするとベーコンやハムになるのだ。
たぶん、これって気候の違いなんだろうね。
陽の当たらない乾燥した風が吹くところでは塩漬けの後に乾燥・熟成ができるけど、そうでないところだと塩漬け肉が腐ってしまうので、煙でいぶして燻製にする必要があったはずなのだ。
燻製には燻製で独特の香りがついて味があるから、それはそれでよいのだ。

で、ボクが気になったのは、ラルドンとパンチェッタの関係。
結論から言うと、よくわからない(笑)
フランス語のラルドンは、もともとは「背脂(lard=ラール)」から来ているのだけど、どうも最初はこの背脂を拍子木に切ったものがラルドンだったようなのだ。
何でそんなことをしたかというと、赤身肉に差し込んで、肉を軟らかく、ジューシーにするため。
そのうち、この拍子木に切った脂を焼いて脂を出して料理に使われることも行われるようになるのだ。

で、ブタ胸肉(バラ肉)は「胸の脂(lar de poitrine)」と呼ばれているんだけど、これを拍子木に切ったものもラルドンと呼ばれるようになったのだ。
こちらはもう赤身肉に指すものではなく、その後に発生したであろう、脂を出すためのもの。
でも、これをカリカリに焼くと、肉の方もクリスピーでけっこうおいしいんだよね。
それでサラダなどの料理に使われるようになったと考えられるのだ。
おとなりの国イタリアでは、すでにパンチェッタをそのように使っていたように!

ということで、なんとなくだけど、結果として似てきただけで、イタリアのパンチェッタをまねてラルドンを作ったわけではなさそう。
当時は食肉の保存技術が未発達だったし、冷蔵庫もないから、塩漬けにするか、乾燥させるかしかなかったんだよね。
で、ブタの脂を使うにも、まずは塩漬けにしていいたはずなのだ。
それが料理の下ごしらえに使われ、いつしか料理の具材になり、となって、最初から食材だったパンチェッタに近づいていったと思うんだよね。
でも、実際に使ってみると、やっぱりラルドンはパンチェッタの代用にはなっても、パンチェッタとは違うんだよね。
乾燥・熟成の過程が違うのかな?

2019/01/19

濃いのが人気

なんでも「若者のビール離れ」でビールの売り上げが落ちているんだそうで。
っていうか、それは単純に人口減少とかが影響しているのでは?
そもそも若者が少なくなっているから、若者が消費するビールの量も減るよね。
でも、おそらく、それに加えて、選択肢が広がったことも大きいと思うのだ。
むかしはそれこそビールだけ飲むことが多かったように思うけど、最近では、ノンアルコール系飲料もあるし、ハイボールを含むウイスキー、各種サワー、ワイン、日本酒、焼酎、・・・とそれぞれの好みに合わせて好きなものを飲むようになったよね。
とりあえずビールで乾杯、とか、生中じゃない人?、なんてのはもう時代遅れなのかも。

そんな中、売れ行きが好調で、社会的問題にもなりつつあるお酒が。
それは、高アルコール度数の缶チューハイ。
ストロングゼロとかそういうのだよ。
これらはアルコール度数が9%。
日本のビールは5%、ワインが10~15%、日本酒が15%くらい。
ワインよりちょっと低いだけなんだね・・・。
それで一缶500mlあって、2~3本飲むとかいうんだから、ワインのボトルを1~2本飲んでいるのと同じなのだ!

でも、値段は全然安いよね。
しかも、果汁の風味などで飲みやすい。
というわけで、アルコールを飲み過ぎるおそれがある、ひいては、依存症につながりかねない、と問題視され始めたのだ。
元アイドルが飲酒運転事故を起こした際に飲んでいたのもこれだよね・・・。
時代の要請には応えているのかもしれないけど、危険なものではありそうなのだ。

もともとチューハイは、焼酎ハーボールの略と言われているよ。
ウイスキーに炭酸水を加えてハイボールにするように、アルコール度数の高い焼酎を炭酸水で割ったものということ。
戦前からシロップを加えて飲みやすくするというのはあったそうなんだけど、ハイボールをまねてそこに炭酸水を入れて飲むようになったんだよね。
どうも、昭和30年代の東京のドヤ街の山谷地区(あしたのジョーの舞台でもおなじみ、南千住と浅草の間だよ。)で生まれたようなのだ。
それが居酒屋チェー点のメニューになってから全国的に広がり、その人気から缶飲料として缶チューハイが発売されるようになったのだ。

チューハイは、明確な定義はないんだけど、焼酎やウォッカなどの蒸留酒をベースとしていて、アルコール度数が比較的低い(10度未満)なものを指すと言われているよ。
この「10度未満」というのがミソで、酒税法上、10度を越えると酒税が高くなるので、ここで「打ち止め」にしているのだ。
9%のストロングゼロは、今のアルコール飲料の分類の中で最大限アルコール量を増やしたもの、ということになるよ。
その前は「ほろ酔い」とかの1%程度の低いアルコール度数のものがはやったこともあったけど、今はノンアルコールから9%までレンジが広くなっているのだ。
ちなみに、エグザイルの公式飲料としても有名なレモンサワーなどの「サワー」は、実はチューハイと明確な線引きはなくて、ほぼ同一のものと考えられているよ。

この高アルコール度数の缶チューハイが売れているということは、アルコール飲料の消費が減っているというわけではないのだ。
外の居酒屋でビールの後焼酎を飲むというスタイルから、安価に飲むために、家で高アルコール度数の缶チューハイを飲むようなものに変わってきているんだよね。
これってやっぱり若い瀬田の経済的余裕がなくなってきていることが大きいのかなぁ。
「車離れ」なんかもそうだよね。
平均的な若者はもはや都市部で自動車を維持できるような生活は難しいから。
そうなると、この手の商品が悪いと言って規制するのではなく、もっと根本的な社会問題としてとらえる必要がありそうだね。

2019/01/12

ニューウェーブ和菓子

この前、おみやげで人形焼をもらったのだ。
あんこのお菓子はフランスではきちょうだからうれしいね♪
日本茶と合わせるとほっとする味だよ。
でも、これってカステラ生地でもあるからちょっと洋風。
ということは比較的新しいものなのかな?、と調べてみたのだ。

で、けっきょくいつからあるのかはよくわからない(笑)
わかったのは、日本橋人形町で作られ始めたってこと。
今でも老舗があるけど、どうも対象機になってから始めたっぽいよ。
で、のれん分けで浅草仲店にも店ができて、そっちも今では浅草名物になっているよね。
人形町でも浅草でも焼きたてのやつが食べられるよ。

人形焼の起源がよくわからなかったので、似たものを調べることに。
やっぱり一番似ていてメジャーなのは、安芸の宮島名物のもみじまんじゅうだよね。
あれも宮島で焼きたてを食べたけどおいしかったのだ。
やっぱりカステラ生地の中にあんこを入れて焼いたもの。
こちらは、まことしやかな起源譚があって、宮島が好きでよく来ていた大勲位・伊藤博文が、給仕の娘さんのかわいらしい手をほめて、「焼いたらさぞうまかろう」、と言ったので、それをヒントに紅葉の葉の形のまんじゅうを作ったというのだ。
どうも女性が好きな好々爺だったみたい。
で、これは明治の終わりの頃の話。

ちょっと違うけど、味的には似ているどら焼きはどうかというと、今のようにホットケーキ用の皮ではさむようになったのはやはり明治の終わり頃。
「どら焼き」というお菓子自体は江戸時代からあったようなんだけど、その頃は小麦粉の薄い生地であんこをつつんだようなもので、1枚の生地で端を折って包んでいたのだとか(そのため形も四角で、裏側の真ん中はあんこが丸出し。)。
あんこのクレープ包みのようなもの。
味的にはむしろきんつばに近かったんじゃないかな。
これが明治になって、西洋から「パンケーキ」が入ってくると、これに強い影響を受けて今の形に進化したようなのだ。

もともとはけがをした武蔵坊弁慶に、鳴らす方の銅鑼の上で小麦粉の生地を薄く焼き、それをシップのように貼って治療した、というところからきていて、どら焼きというのはそのまま銅鑼の上で焼いたという意味。
ところが、今の形のどら焼きは、銅鑼のような形に焼いた生地であんこを挟んだものだよね。
今の形の方がイメージはしやすいけど(笑)

カステラ自体は戦国時代には入ってきていて、江戸時代にはふんわりと焼き上げる今のようなカステラの原型はできていたのだ。
でも、あくまでもパウンドケーキ状の四角い形で焼き上げるものだったみたい。
おそらく、明治の中頃以降に、このカステラの生地を使って別のお菓子を作ってやろう、そうだ、まんじゅうのようにあんこの種を包んだらどうだろ、と考えたんじゃないかと思うのだ。
で、おそらく最初はパンケーキにインスピレーションを受けてどら焼きとか1枚の生地で半月状に包む「やぶさめ」のようなものが生まれたんじゃないかと思うんだ。

もう一つの流れとして、同じ頃に今川焼きから派生してたい焼きが出てくるんだよね。
鋳物の方で生地を焼いて、その中にあんこをいれたもの。
今でも麻布十番の浪花家総本家(泳げ!たい焼き君のモデルの店)や四谷の若葉なんかはそうだけど、ひとつひとつハサンで作るタイプの型で焼いているよね。
金属を流し込む代わりに小麦粉の生地を流し込んで火にかけて焼いて、決まった形に生地を焼き上げるようになったのだ。
ここにたい焼きや今川焼きに使う小麦粉の生地ではなく、もう少しどろっとしたカステラ生地を使えば・・・。
人形焼のようなお菓子になるよね。
おそらく、どら焼きの流れとたい焼きの流れが合流してできたんじゃないかと想像されるよ。

こうやって見てみると、やっぱり名物になってきたのは大正期なんだろうなぁ。
いろんな新しい西洋文化を取り入れて日本独自の改良を加えていった時期だし、さもありなんとう感じ。
でも、大正時代だとしても、もう100年以上前!
いわゆる練り物のお茶菓子は室町時代以降だから400年くらいの歴史だから当然かなわないけど、けっこうな歴史だよね。

2019/01/05

おせちの中の赤いやつ

お正月と言えばおせち料理。
最近は洋風のがあったり、そもそも食べなかったりするけど、縁起物だし少しは食べたいよね。
今は海外にいるけど、年末に救援物資が送られてきて、その中には、おせちセットもあるのだ。
紅白なます、栗きんとん、田作り、昆布巻き、黒豆などなど。
最近は100円ローソンでも個別に売っているみたいだね。

そんなおせちの中で、まさにこの時期にしか見かけないものがあるのだ!
それはクワイ、もそうなんだけど、それ以上に見かけないのが「チョロギ」。
よく黒豆と一緒に入っている、赤いねじねじのやつだよ。
かりっとした食感で、酢漬けになっているから酸っぱいのだ。
「長老木」或いは「長老喜」と当て字にできるので縁起物なんだって。
「まめに働く」という意味の黒豆と一緒にすると、「まめに働いて長寿」ということみたい。
働き続けろってことか・・・。

このチョロギ、シソ科の多年草の塊茎部分。
「塊茎」というのは、地下茎が丸まってふくらんだもので、ジャガイモも塊茎部分を食用にしているよ。
サツマイモは根なので、ちょっと違うのだ。
原産は中国で、今食べられているものの多くはやっぱり中国からの輸入品みたい。
日本には江戸時代に伝わり、国内生産もしているのだけど、収穫すべき塊茎部分が小さすぎて機械が使えず手作業になるので、生産量は下がっているみたい・・・。
ちなみに、欧州にも伝わっていて、フランスでは普通にサラダやスープに使われる、と言うのだけど、フランスに来て2年経つけど見たことないや(笑)

チョロギは6~7月に薄い青紫の花を咲かせ、10~11月になると塊茎を膨らませるようになるらしいのだ。
これを収穫し、きれいに泥を落としてあげると、白いねじねじのチョロギ(生)が収穫できるよ。
この時期にとれるのでお正月似向けてちょうどいいわけだね。
チョロギは数日塩漬けにした後、梅酢やシソ酢に漬けて赤くするのだ(本当に真っ赤なのは多くの場合着色料を使っていて、梅酢などで漬けた場合は淡い紅色なのだ。紅ショウガと同じだね。)。
それがおせちに入っているアレ。
レシピ的にはショウガの酢漬けのような感じだね。

現代のおせち料理の原型ができてきたのは江戸時代。
重箱に詰めるスタイルになったのは明治以降と言われるので、比較的当たらし習慣だよ。
チョロギはちょうどそのおせち料理ができあがる時代に日本に入ってきたことになるね。
当時は珍しかっただろうし、薬用植物的な見方もあったのだ。
江戸時代の本草学の基本書である本草綱目に「からの病の侵入から身体を守り、血の滞りを治し、気を静め精神を安定させる効果がある」とされているよ。
名前と相まっておせち料理に組み入れられたのかもね。

ちなみに、家庭菜園でも育てられるみたい。
春に横で寝かせる形で植えると、芽が出てきて、最終的には60~70cmくらいの高さになるとか。
秋口に葉が枯れてくるので、そうなると土の中にはチョロギができているらしいよ。
これはもう、再来年は家で育てたチョロギをおせち料理に使うしかないね(笑)