2018/09/29

麦の大小

大麦と小麦の大小って、粒の大きさから来ていると思っていたんだけど、実はそうではないことを最近知ったのだ!
大麦は粒で見るけど、小麦を粒で見ることはまずないからなぁ。
実は、この大小は、優劣を意味しているようなのだ。
つまり、大麦の方がメジャーで、小麦の方がマイナーだということ。
漢語でそうなっていて、それがそのまま日本に輸入され、訓読みされているようなのだ。

では、なぜ大麦の方が優れている、という認識だったのかが気になるよね。
はっきり言えば、主要穀物としては現在では小麦の方がはるかにメジャーだし、実際に三大穀物も、米、小麦、トウモロコシの3つなのだ。
大麦を主食として主に食べているのってチベットくらいじゃないかな?
でも、古代においては大麦の方が重要な栽培植物だったみたい。
これは洋の東西を問わずだと。

その理由は、大麦の方は低温乾燥に強く、栽培しやすかったため。
高温多湿な地域だと、より栄養価が高い米が栽培できるので、麦はあまり食べないんだよね。
中国でも肥沃な南の地域は米文化、北の冷涼で乾燥して地域が小麦文化なのだ。
インドも南は米、北は小麦だよね。
古代だと品種改良も進んでいないから、より育てやすい大麦が重要だったわけ。

もう一つの理由は、大麦はそのまま脱穀してゆでれば粒のまま食べられるのに対し、小麦は簡単に脱穀できないので、最低限挽き割りにしないと食べられないこと。
しかも、大麦にはむかしら裸麦というすぐに脱穀できる種があるけど、小麦の場合はそれがないんだよね。
いわゆる「ふすま」を除いて胚乳のおいしいところだけ食べようとすると、小麦はとても手間がかかるんだよ。
アフリカや欧州、中東、北インドには「ブルグル」と呼ばれる挽き割りの乾燥小麦があるけど、これは挽き割りにして大方の「ふすま」を取り除き、湯通ししてから乾燥させたもの。
クスクスに似たものだけど、粉にしてからパスタとして練っているわけではないので、より原始的なものなのかな?

パンは古代エジプトにもあったので(ただし、イースト発酵していない種なしパンで、大麦が原料になることも)、古代ローマでもパンを食べていたんだけど、これは庶民の食べ物ではなかったのだ。
理由は簡単で、小麦を挽いて粉にして、更にそれを練って焼き窯で焼成する、なんて手間をかけられるのはお金持ちだけ。
なので、大麦も小麦も基本は粥で食べていたらしいよ。
ポリッジみたいなものかな?
いずれにせよ、大麦の方が食べやすかったのは事実。

ところが、石臼ができ、水車が発明されて小麦を挽くのが容易になると、立場が逆転してくるのだ。
小麦の場合、「ふすま」を除いて胚乳の部分だけを取り出すと、大麦よりおいしいのだ!
それは大麦には比較的多くのポリフェノールが含まれていて、食味が劣るとともに、火を通してから色が悪くなるんだよね。
日本でも麦飯はすぐに黄色くなっていやがられていたわけだけど、それと同じ。
うまく加工できれば小麦の方がおいしいのだ。
小麦の品種改良も進んである程度寒い地域でも育てられるようになったし、パンにするならライ麦の方が向いているしで、大麦を主食として食べる文化は廃れていったのだ・・・。
さらに、新大陸からジャガイモやトウモロコシが入ってきたので、大麦も育てられないような寒冷地や荒涼地ではそっちがメインに。
というわけで、大麦が主要な食物ではなくなっていったのだ。


ただし、大麦は今でも欠かせない穀物なんだよね。
一つは大麦麦芽の利用。
小麦麦芽も使えないことはないけど、デンプンを糖化する酵素は大麦麦芽の方がたくさん入っているので、ビールの醸造や水飴の製造には大麦が必要なのだ。
醤油や味噌の材料としても重要なんだよね。
さらに、健康志向が高まっていr中で、よりビタミンや食物繊維を含む麦飯はまた着目されているのだ。

ボクはわりと大麦のぷつぷつした食感が好きなんだよね。
とろろと一緒に食べる麦飯も好きだし、フランスで出てくる付け合わせの粒の大麦もけっこう気に入っているよ。
でも、さすがに毎食というわけにはいかないかもだけど(笑)

2018/09/22

養生せいや

お仕事でちょっとしたイベントのお手伝いをしたのだ。
そのときに、舞台設営の専門の人に聞いたんだけど、日本の養生テープは最高に品質がよく、かつ、安いらしいのだ。
確かに、フランスで売られている普通のビニールテープやセロハンテープは値段も高いし、粘着力が弱い割にはがれにくいし、跡が残る・・・。
3Mの製品でもそうなんだよね。
なぜだろう?
温度・湿度の違いがあるから、国・地域ごとに製品は異なりそうだけど、フランスだともともとの要求度が低い?

養生テープというと、緑色の半透明のテープを思い浮かべるよね。
引っ越しや建築の現場などでよくみかけるのだ。
特徴として、粘着力が弱くてはがれやすく、かつ、跡が残りにくい上に、手で簡単にテープが切れる(はさみやカッターがいらない)、というのが挙げられるよ。
これはこうした作業以外でも便利なので、工作の時の仮止めなんかにも便利なんだよね。
しかも、重ね貼りができるのだ!
これは実は重要で、布製のガムテープなんかは重ね貼りに向いていないんだよね(紙製のガムテープなら問題ないけど、めちゃくちゃはがしづらい・・・。)。
そこからはがれやすくなってしまうのだ。
なので、引っ越しの段ボールは、どのみちすぐに開けることになるし、重ね貼りもできるからと養生テープが使われるのだ。

ただし、ちょうどよい粘着力になっているのだけど、その粘着のもとである樹脂(のり)は熱に強くないらしく、高気温で放置されるとダメになってしまうんだって・・・。
はがれにくくなるし、跡も残るようになるみみたい。
ひょっとして、フランスは在庫管理が悪いだけ?
さっきの専門の人の話では、普通に放置している場合、一夏超えるとダメになるって。
時々側面がべっとりしているテープがあるけど、あれはそういうことだったのかも。

引っ越しや建築現場で使う場合には、目立つ色なのでマーカーの代わりにもなるんだよね。
いわゆる「バミる」というやつ。
目印にしておいて後で簡単にはがせるから便利なのだ。
目立つからはがし忘れも防げるという効果もあるのだ。


「養生」というのは、作業において傷や汚れから保護することをさしているんだけど、塗装しているときに塗料がはみ出さないように保護することも「養生」と呼ばれることがあるのだ。
このときに使われるのは主に「マスキングテープ」と呼ばれるけどね。
マスキングテープの場合は、下地を塗った後、別の塗料を重ねたくない部分に覆いをするのに使われるのだ。
なので、下の塗料をはがさない、というのも重要な要件になるよ。
もともと普通のテープで留めていたら下地まではがれてしまって、また塗り直しになるから、と粘着力の低いテープが発明された、ということみたいだけど。

というわけで、一般家庭でしょっちゅう使うものではないけど、非常に便利なものなのだ。
ただ、残念ながらフランスにはいいものがないみたい。
今回の専門家の人もテープは日本から全部持参したって言っているし。
日本が神経質なのかもしれないけど、きっとフランスではテープを貼った跡とかが残ってもさほど気にしないんだろうね。
塗装の時も養生テープを貼っているのにそれがずれててはみ出したりしているし(しかも、それがプロの仕事だったりする・・・。)。

2018/09/15

最強のパスポート

先日、「パスポートインデックス」なるものの存在を知ったのだ。
ヘンリー・アンド・パートナーズというところがまとめているもので、パスポートの「旅行の自由度」を指標化したものだよ。
基本的には、ビザ(査証)なしで渡航できる国の数で決めているのだ。
国際航空運送協会(IATA)の資料から、各国ごとに調べて作っているそうな。
対象が200カ国近くあるみたいだから、大変そうな作業だ・・・。
そんな「パスポートインデックス」の最新版、2018年版では、日本がシンガポールとともに一位になったんだ♪

ビザは、入国前の身元審査なんだよね。
犯罪歴があったりするとビザが発給されず、その国に入国できないのだ。
空港や港湾での入国審査で細かく調べることはできないので、事前に必要書類をそろえて申請してもらうことで、入国してもよいかどうかを判断しようというわけ。
もちろん、ビザがあっても入国審査で断られることはあるんだけどね(極端な例で言えば、ビザ発給後に国際指名手配になったりとか。)。
パスポートはあくまでも旅行者の国籍を証明するためのもので、ビザは渡航先の国における身元確認だよ。

基本的には、出国前に在外公館に申請に行くんだけど、実は、国籍のある国の在外公館でなくてもいいんだって。
旅先で次の行き先の国のビザを申請することも可能なのだ。
これはあくまでも行き先の国の問題だからだよ。
でも、「アライバル・ビザ」なんてのもあって、到着時に空港でビザの発給を受けるシステムもあるのだ。
こうなると、事前審査とは言えず、ほとんど「入国料」の徴収に近いような・・・。
空港に旅行者を止めておけないから基本は即時発行だからね。

ビザの発給には時間を要する場合があって、しかも、自分の国籍がどこにあるかでそれが変わってくるのだ。
国際的に治安がよいなどで信頼度が高い国に対しては比較的事前審査がゆるいので早めに出るし、そうでない国に対してはしっかり審査するので遅くなるのだ。
でも、国によっては、追加料金を払うと優先審査してもらえて、早く発給されるそうな・・・。
ロシアの例が有名らしいよ。
通常は3週間、幾ら払うとそれが2週間に短縮、更に払うと1週間以内・・・。
これはまじめに審査しているのかあやしくなってくるなぁ(笑)

でも、このビザの発給はけっこう面倒な手続なので、「免除」のシステムもあるんだよね。
多くの場合、「観光目的の短期滞在」の場合に限ってビザが免除されるように相手国と交渉するのだ。
で、ビザなし渡航先の多さで日本とシンガポールが一位になっているというわけ。
この免除は相互的でないので、例えば、日本から中国へはビザなしで行けるけど、中国から日本へ行くにはビザが必要だったりするのだ。
また、「観光目的の短期滞在」でない渡航目的の場合はビザが必要で、ボクが米国留学に行くときは留学生用ビザをとったし、今回フランスに来るときもお仕事での長期滞在になるのでビザが必要だったのだ。
これがいらいらするほど時間がかかるんだよね(笑)

そんな中で、「観光目的」であってもビザを出さない国があるのだ!
それがサウジアラビア。
なんと、メッカ巡礼のため、ムスリムに対しては「巡礼ビザ」が発給され、入国できるんだけど、非ムスリムには個人用の観光ビザが出ないので、入国できないんだよ・・・(ツアーの観光ビザはあり。)。
サウジアラビアには個人で遊びに行くことはできないのだ。
しかも、あまりにも多くのムスリムがメッカ巡礼に来るので、巡礼ビザも国ごとに割り当てがあって、巡礼したくても順番待ちになったりするんだって。
すごい世界だ。

2018/09/08

人工島の悲劇

台風21号の被害がすごいことになっているのだ!
遠くパリの地でもけっこう大きく報道されているよ。
特に欧州にはこれだけの規模の暴風雨ってないだろうからね。
で、その中でも特に注目を集めているのが、関西国際空港の被害。
日本のハブ空港の一つでもあるし、世界で初めての人工島に作られた海上空港でもあるので、注目度は高いのだ。

関西国際空港は2つの島からなる人工島で、それぞれに滑走路とターミナルがあるんだよね。
ターミナル1の方には、空港へのアクセスのための鉄道駅、フェリー乗り場があったり、複合商業施設であるエアロプラザなんかもあるよ。
24時間稼働の空港なので、まさに「不夜城」空港なんだよね。
海上空港だからこそ24時間稼働できるわけだけど、逆に、海上にあるからこそ、地盤沈下や津波などのリスクとの戦いが常にあるのだ。
今回も滑走路が水没しているしね・・・。
そして、前から指摘されていたことだけど、今回の被害でやっぱり大きなリスクであることが実感できたのが、空港へのアクセス問題。

関西国際空港には、車、鉄道、船の3つの手段でアクセスできるんだけど、船以外は本州側(大阪府泉佐野市)と人工島を結ぶ関西国際空港連絡橋という大きな橋を通っているのだ。
電気やガス、水道などのライフラインもこの橋を利用しているので、まさに命綱的存在。
3.75kmの世界最長のトラス橋で、二階建て構造。
上は上下6車線の道路、下は鉄道(複線)に使われているんだ。
今回の台風被害においては、この橋に2.5tのタンカーが突っ込んできて、この橋が使えなくなったことにより、人工島が孤立してしまったのだ。

下り車線側は完全に損壊していて通行不能。
上り車線はなんとか使えそうなので緊急車両の通行などに使われていたんだけど、空港内に取り残された人々を輸送するためのシャトルバスの運行も行われたのだ。
鉄道路線は使用不能。
さらに、ターミナルビルにおいても浸水などが原因で一部停電。。
もともと商業施設もたくさんあって、食料や飲料はけっこうあるからすぐに困るというわけではないけど、中に残された人たちは不安だったろうね。
天候が回復してからは船とシャトルバスで救出したわけだけど、悪天候時は船でのアクセスはできないので、この橋だけに頼っていると相当危ないのだ。
もともと強風で橋が使えなくなるリスクは想定されていて、風に強い構造にはなっていたみたいなんだけど、まさかタンカーが突っ込んでくるとはね・・・。

今回の被害では、橋脚までやられているので、復旧には相当の期間がかかるのではないかと見込まれているよ。
今は緊急時なのでとりあえず使える上り車線を使っているけど、本来的には全面通行止めにしなくちゃいけないような被害だからね。
でも、そうなると、空港へのアクセスは船だけになるわけで・・・。
おそらく、空港の規模から言っても、貨物輸送の観点で言っても、それではもたないのだ(>_<)

こうなると、リスク分散のために、新たな橋とか、或いは、地下トンネルとか、そういう第三のアクセスを考えないといけないのかも。
でも、やっと関空は軌道に乗って稼げるようになってきたところなので、ここでの大規模投資はまたつらいだろうなぁ。
民主党政権時代には、橋本府知事(当時)が「関空リニア構想」を打ち出していて、大阪中心部と空港をリニアモーターカーでつなぐとかいう構想があったし、兵庫県には神戸空港と関西国際空港をリニアモーターカーでつなぐなんて構想もあるようなのだ。
こういうんが現実化してくるのかなぁ。
ちなみに、東京のお台場の場合は、レインボーブリッジだけでなく、トンネルでもつながっているよね。

2018/09/01

見分け方

マドリッドのプラド美術館に行ってきたのだ。
世界三大美術館のひとつ。
すごい規模だよね。
で、ここの特徴として、敬虔なカトリック国であるスペインのお国柄を象徴してか、宗教画が多いのだ。
でも、キリスト教文化にあまり普段触れていない日本人からするとわかりづらいことも多いんだよね。
特に、聖人の絵の場合、それが誰で何をした人なのか。

そのときにヒントになるのが「アトリビュート」と呼ばれるもの。
西洋美術の場合、神話の登場人物や宗教画の聖人などは、その人の特定につながる「アイテム」と一緒に描かれていることが多いんだ。
もともと誰も顔や姿を見たことがないわけで、そういうのがないと区別がつかないのだ。
逆に、その「アトリビュート」を見れば、その絵が誰の絵なのかがすぐにわかるというわけ。
便利なシステムなんだよね。

例えば、十二使徒の場合、ペドロは多くの場合「天の国の鍵」を持っているのだ。
福音書記者ヨハネなら、ドラゴンの入ったカップを持っているよ。
聖人で言えば、竜退治で有名な聖ゲオルギウスは竜と一緒に、ライオンの足からとげを似てあげたと言われる聖ヒエロニムスはライオンと一緒に描かれるよ。
アレクサンドリアの聖カタリナは壊れた歯車と剣が一緒に描かれるんだけど、これはひどい話で、歯車にくくりつけて拷問されそうになったときに奇跡が起きてその歯車が壊れたので、剣で斬首されたのだ・・・。
で、その伝説をもとに、聖カタリナを描くときは壊れた歯車と剣を一緒に描いているんだ。
なんだかひどいよね。

殉教している聖人の場合、その殉教に関係したものがアトリビュートになることが多く、体を拘束されて無数の矢で射られた聖セバスティアヌスは、「矢鴨」のように必ず体に矢が刺さった図象で描かれるよ。
十二使徒の一人、ペトロの弟にアンドレは、X型十字に貼り付けになったんだけど、自分でそれを持っているのだ。
同じく十二使徒のバルトロマイは、皮剥の系で殉教したと言われていて、その皮剥に使われたナイフと皮を持って描かれるよ。
なんだかグロいはなしだけど、絵画を信者に見せながら、その聖人がどういう人でどういう功績があったのかというような話をする場合には、その方が好都合なのかもね。

実は、これと同じような半紙が仏像・仏画にもあるのだ。
仏像・仏画も素人目には同じように見えるんだけど、手の「印相」の形や、持っているものである程度区別がつくんだよ。
明王はたいていの場合鬼のような怖いかををして、筋骨隆々になっているんだけど、弓矢を持っているのか、金剛杵を持っているのか、剣を持っているのか、手は何本か、三ツ目か、などなどの要素を組み合わせて、それがどの明王か特定するのだ。
でも、実は必ずしも「これ」という決まりもないようで、推測の域をでないこtもあるらしいんだけど。

一方で、ある地域で古い仏像・仏画が見つかったとき、それが「誰」であるかは重要な意味を持つんだよね。
キリスト教の聖人も「○○の守護聖人」とかいって特定の職業や事物、都市の「守護神」になっているんだよね
仏教の世界も同じで、それぞれの「神」に特定の御利益というのがあるので、当時の人々が何を求めて信仰していたのか、という情報になるのだ。
なので、仏像・仏画においてもそれが「誰」なのかを特定するのは結構大事なことなんだよ。
アトリビュートくらいわかりやすければよかったんだけどね。