2019/06/29

長野のレガシーいまいずこ

海洋のマイクロプラスチックの問題がかなり国際的に議論になっているね。
正直なところ、海洋中に微少なプラスチックが浮遊していて、それが年々増えている、というのは事実。
でも、実際にそれでどんな有害な事象が起きるかはよくわかっていないんだよね・・・。
プラスチックの表面に有害な有機物質が付着し、それを誤って食べた海洋生物が・・・、みたいな話はあるけど、どこまでインパクトのある話なのかはわからないのだ。
でも、世界全体では、この海のプラスチックの問題をどうにかしようと議論が始まっているんだ。

海洋を漂う微少なプラスチックの発生源は主に3つ。
ひとつは、もともと微小な粒子として作られたプラスチックが廃棄され、海洋に流れ着いたもの。
これは歯磨き粉や洗顔剤の中に入っている微小粒子などなど。
工業用のプラスチックの研磨剤なんてのもあるみたいだよ。
あわせてプラスチックビーズと呼ばれる、「第一次マイクロプラスチック」なのだ。
ふたつめは、大きなプラスチックゴミが海洋に流れ着くまでに壊れ、破損し、断片化したもの。
これは物理的に破壊された結果のものと、紫外線などで科学的にもろくなってから砕けた結果のものとがあるよ。
これらは「二次マイクロプラスチック」と言うのだ。
最後が、合成繊維が脱落したもの。
合成繊維はプラスチックの細かい繊維がより合わさってできているわけだけど、洗濯などの過程でその微少な繊維が排水に混ざり込むことがあって、それが海に流れ着いていると考えられているのだ。

で、こんな風に発生源はなんとなくわかっているのだけど、これだ!、という解決策はないんだよね。
というのも、プラスチックがあまりにも便利すぎる素材だから。
第一次マイクロプラスチックの場合は利用を控えればいいだけだけど、代替品がないんだよね・・・。
そうなると、下水処理などでフィルターを通して回収するとか、うまく重合化させて沈殿させるとか考えないといけないんだけど、そうそううまくいかないのだ(>_<)
第二次マイクロプラスチックの場合は、とにかくプラゴミを減らすこと。
これに尽きるわけだよね。
なので、欧州連合では、プラスチックバッグやプラスチックスとローの利用が禁止されつつあるのだ。
日本でも環境省が旗を振ってそういう取組を推し進めようとしているよね。

一方、経済産業省がむかしから進めているのは3R。
リサイクル、リデュース、リユースの3つだよ。
リデュースは環境省と同じ。
残り二つについては、確かにゴミの分別は進んだし、リサイクルもリユースも進んだような気がするけど、自体が大きく改善したようには見えないよね。
回収・洗浄・リサイクル又はリユースにはコストもかかるし、多くのプラゴミは普通に焼却炉で燃やされてしまうのが現状なのだ。

そこで、経済産業省は新たな路線を打ち出すみたい。
それが、「海洋分解性プラスチックの開発と普及」だって。
つまり、海の微生物により分解されるプラスチックであれば、海洋中に蓄積することはなく、そのまま分解され、なくなっていくというわけ。
確かに実現すればすごいけど、今は、その候補となる材料を探すとともに、プラスチックを分解できそうなバクテリアを探すという、手探り状態みたい。
すでにプラスチックを分解する能力を持つバクテリアは見つかっているんだけど、あんまりそれがはびこってしまうと耐腐食性が高いというプラスチックの特性が失われてしまうので、なかなかうまく活用できないのだ。
なので、もともと生分解性を持つ材料で、陸上の空気中ではなく、海洋中でのみ分解反応が進む、というのを見つけ出す必要があるよ。

実は、長野オリンピックの時に生分解性プラスチックは話題になり、会場でもプラ容器として使われていたのだ。
乳酸が重合したポリ乳酸が有名だよ。
でも、このポリ乳酸は確かに微生物により分解されるんだけど、そんなやわではないのだ(笑)
普通に置いておいたんじゃダメで、湿気のある堆肥の中に埋めておかないとダメなのだ。
まず水により加水分解が進み低分子化し、それを微生物が分解するというわけ。
実際にはそんな環境の中に廃棄されることは少なく、せっかくの生分解性という特徴が生かせていないみたい。
最近では、もともと生物由来で二酸化炭素の循環的には増減をもたらさないから、「カーボンニュートラル」な材料としてとらえられているんだって(生物が空気中の二酸化炭素を固定して作られた糖類が原料となっているので、最終的にまた二酸化炭素まで分解されても二酸化炭素の送料に変化はない、ということだよ。バイオ燃料とかと同じ考えだね。)。
確かに堆肥の中に捨てないといけないとなると、大量には使えないよね。

で、また東京オリンピックに向けて同じようなことを考えているわけで(笑)
環境省はプラスチック利用をできるだけ減らし、経済産業省は生分解性プラスチックの利用の拡大をしようとしているみたい。
でも、けっきょく長野オリンピックのレガシーは今にあまり生きていないんだよなぁ。
そのときだけ話題になるけど。
今回の話がそうならないことを祈るばかりだよ。

2019/06/22

茶色い木の実

フランスで「カフェ・ノワゼット(café noisette)」というと、エスプレッソに少しだけミルクを加えたもの。
コーヒーの色がノワゼット=ハシバミの実=ヘーゼルナッツの色になるからなのだ。
ここで言うノワゼットの色は、ナッツ自身の色じゃなくて、その外側の殻の色だよ。
ハシバミの実はドングリのようなずんぐりした形でドングリより少し大きく、少しクリームがかった茶色い色をしているのだ。

日本でヘーゼルナッツと言われているのはカバノキ科のセイヨウハシバミの実。
これは欧州・地中海地域の原産で、欧州では非常にメジャーな木の実なんだ。
古代の地層を見ても相当広い範囲で分布していたことが確認されているので、きっと古くから食用にされて人間が広めていったのだ。
グリム童話に掲載されている「灰かぶり姫(シンデレラ)」では、魔法使い(いわゆる「フェアリー・ゴッドマザー)」は出て来ず、小鳥たちがお母さんのお墓の横に生えているハシバミの木の枝からドレスや靴を落としてくれるんだよ。
小鳥たちがよってくる木だから選ばれたんだろうけど、その辺どこにでもあるような木なんだろうね。
和名の「ハシバミ」は東洋原産で、ロシア沿海地方から東アジア北東部に生えていたもの。
早いうちに日本にも渡ってきていて食用にもされていたようだけど、ヘーゼルナッツほどはメジャーにならなかったみたい。
ちなみに「ハシバミ色」というのはこの東洋のハシバミの色ではなくて、セイヨウハシバミの色のことのようだから、やっぱりあまり好まれていなかったんだろうね。

ところが、欧米の人たちはヘーゼルナッツが大好き。
そのまま煎ったものを食べるし、砂糖を加えてカラメル化したプラリネはお菓子によく使われる材料でもあるのだ。
アーモンドも多いけど、欧米のナッツ風味のお菓子の多くはこのプラリネを使っているよね。
チョコレートとも相性もよく、チョコレートに焙煎したヘーゼルナッツを粉にしたものを混ぜたのがジャンドゥーヤ(アーモンドの場合もあるよ。)。
もともとはナポレオン時代にカカオ不足を補うために考案されたらしいけど、このナッツ風味のチョコレートは今や基本中の基本だよね。
そして、欧米人が大好きなのは、イタリアのフェレロ社が作り出した大ヒット商品のヌテラ。
これはただのチョコレート・スプレッドではなく、ジャンドゥーヤ風味。
ただのチョコレート風味じゃ物足りないのかな?

そして、ノワゼットと言えば、「カス・ノワゼット(Casse Noisette)」。
これは日本語では「くるみ割り人形」だけど、仏語だと「ハシバミ割り」なのだ。
英語では「Nutscracker」で対象がかなり広いんだよね。
もともとは木の実類の固い殻を割る道具なので、英語の表現が正しいんだけど、フランスでは代表的な木の実として「クルミ(noix)」ではなく、「ヘーゼルナッツ(noisette)」が選ばれたということなんだろうね。
それだけ好かれているのか。
逆に、日本だと「ハシバミ」がマイナーだから、なじみのある「クルミ」が選ばれたんだろうね。
日本ではナッツというとピーナッツだけど、これは豆であって厳密にはナッツではないし、そもそも殻を剥くのに道具は必要ないからね。
こういうところにも文化の違いが出てきて面白い。

2019/06/15

フランスの子供がもらってくるもの

日本ではもうほとんど聞くことはないけど、フランスでは普通に子供の間に「シラミ」が流行るらしいのだ!
ウィキペディアで見ても、「先進諸国ではDDTなどの有機塩素系殺虫剤の使用によってその発生は激減した」とあるんだけど、フランスって先進国じゃなかったんでしたっけ?
子供のいる人に聞くと、普通に「シラミ発生中」というお知らせが学校から配布されるらしいし、テレビでもシラミとりシャンプーのCMを普通にやっているし。
フランスではまだ当たり前のもののようなのだ。
日本だと戦後すぐはひどかったようだけど、高度経済成長期以降はほぼ見ることがなくなっているのに・・・。

ヒトにつく「シラミ」は大きく2種類あって、ヒトジラミとケジラミ。
ヒトジラミはさらに2つに分かれて、主に頭髪につくアタマジラミと衣服につくコロモジラミがいるみたい。
ケジラミは性感染症でもあるから、不衛生な性的交渉でもらってきたりすることがあるんだよね・・・。
これは海外でそういうすることをする人が出てきていることなんかもあって、日本でも感染者が増えているみたい。
ヒトジラミの方はまず聞かないんだけど。

それもそのはずで、ヒトジラミの方は、毎日お風呂に入って頭を洗い、服も毎日交換してきれいに洗濯していれば防げるらしいのだ。
飲みの場合はヒトから多少離れても生活できるんだけど、シラミはヒトから離れては生活できないので、公衆衛生が改善されると自然と大流行はしなくなるんだよ。
日本でも戦後すぐは衛生上の問題が大きかったので学校でシラミ対策(今から考えるとすごいけど、頭にDDTを振りかけるなど)が行われたけど、それが改善されるとごくたまに感染者が出てくる程度になったのだ。
でも、フランスの場合は、毎日シャワーすら浴びない人も多いし、洗濯もあやしいからなぁ・・・。
それが原因か(笑)

子供たちの間で問題になるのはアタマジラミ。
感染して吸血されると無性にかゆくなるのだ。
で、頭をぼさぼさかくんだけど、その際に頭皮を傷つけてしまって血が出ることも。
そこから細菌の感染もあったりするので、けっこうまずいのだ。
そこで、殺虫剤入りのシラミとりシャンプーで駆除する必要があるのだ。
むかしむかしはまさに物理的にシラミを指などでとってつぶしたわけだけど、これが「しらみつぶし」の語源。
でも、到底取り切ることはできないので、今は普通に駆除剤を使うのだ。
ちなみに、コロモジラミの方はいったん衣服を煮沸消毒すればそこについているシラミは完全に駆逐で着るみたいだよ。
後は清潔な衣服を着るだけでよいのだ。

問題の感染経路だけど、フランスではよく「プールでもらってくる」と言われているみたい。
そのため、夏がシラミ対策のホットシーズンで、シラミとりシャンプーのCMも夏によく見るのだ。
でも、水を介しての感染はまず心配しなくてよいレベル。
もともと昆虫だしね。
問題は、タオルや水泳帽の貸し借りみたい。
キャンプでもうつされるというから、感染経路は同じようなものだろうね。
とにかく、シラミに感染した子が一人でもいたら、気をつけないといけないのだ。
その子が頭をかいた後に触ったものにはシラミやその卵が付着している可能性があるので、それは避けないといけないんだよね。
ま、学校じゃそういうのは無理だろうけど。

こういう話を聞くと、フランスの公共施設は使いたくなくなるよね(笑)
ま、地下鉄でさえ汚いから、もともと使う気もあまりないのだけど。
先進国の一因として、もう少し公衆衛生の概念を持ってほしいよ。
とにかく、毎日お風呂に入って清潔にしてほしい!

2019/06/08

でる前にはじく

最近「不良品」という言葉がちまたをにぎわせているね・・・。
どうしても出てきてしまうものだから、それをどうするかを考えなきゃいけない、と。
で、本来的な意味において、これは製造業における大きな課題なのだ。
できるだけ「不良品」がでないようにする、でも、そうしても確率的に出てくるので、それを流通に乗せる前に事前にはじくようにする、さらに、そのチェックもすり抜けてしまうやつがいるので、製品の品質保証をする、とたいていは三段階。

最初の段階の、「不良品」がでないようにする、というのは確かにそうなんだけど、実は、コストとの兼ね合いなんだよね。
粗製濫造であっても大量に安く作って、その中から「使えるもの」だけ選んだ方が安くつくこともあるのだ。
ある程度の工夫は必要なんだろうけど、どこまでお金をかけて精度を高めたとしても、完璧にエラーをなくすことは不可能なので、多かれ少なかれ、どこかで妥協することが大事なのだ。
そのときに重要になってくるのが「歩留まり」という概念。
できた製品のうち、「不良品」を引いたもので、通常は百分率で表すのだ。
歩留まり95%で10倍のお金がかかるのと、歩留まり80%で1/10のお金で済むのとでどっちを選ぶのか、みたいな感じ。

伝統的には、鋳造品なんかがわかりやすいんだけど、型に溶融させて金属を流し込んでねじや歯車を作ったりする場合、どうしても空気が入り込んだり、十分に金属が流し込めなかったりして「欠けた」ものができるのだ。
こういうわかりやすいやつだと、ほぼ見た目でできているか、できていないか判断できるんだよね。
実際には、中空になっていないか、などを調べるため、打検といってたたいて反響音を調べたり、重量を量って中まで詰まっているか確かめた理が必要なんだけど。
それでも、これくらいの検査ならかなり楽にできるのだ。
なので、こういうのは多少歩留まりが悪くても、早く安く作れるような製造方法が適しているわけ。

一方で、例えば半導体などのような製品だと、実際に電子材料として使ってみるまできちんとできているかどうかがわかりづらいものもあるんだよね・・・。
決勝レベルときちんとドーピングができているかどうかが性能の鍵になるから。
なので、こういうやつはできた半導体の一部をサンプリングして、実際に半導体としてきちんと性能を有しているかどうかを試験する必要があるのだ。
これにはそれなりの設備やコストがかかるし、全数検査もできないので、やっぱり最初にいかに品質が高いものを作れるか、というところにフォーカスした方がよいんだよね。
検査は「最終的にできていることを確認する」といった位置づけにして。
歩留まりを高めるには、より高い目標値を設定して製造して、実際の品質基準はもう少し低めのもので良品・非良品を判断する、というやりかたもあるよ。
いわゆる「高いタマを投げる」というやつだね(笑)

これを逆に利用して、たくさん製造する中で、規格外のもの、基準を満たさないものを不良品、基準を満たしているものを良品、特に優れたできになっているものを超優良品として更に別に分けることもあるのだ。
下手な鉄砲数打ちゃ当たる、で、千三つでいいものもできてくるので、それは別扱いにしようというもの。
半導体のようなものではそういうことはないけど、例えば、金属を磨いて鏡面を作る、みたいなものの場合、そもそも鏡面に大きなゆがみがあったり、くすみがあるようなものは不良品、普通に鏡面ができているものが良品、課なら胃高い精度でゆがみのない鏡面ができているのが超優良品、といった感じ。
良品は普通の材料として使われるだけだけど、超優良品は高い精度の求められる精密機械に回したりするのだ。
ロケットの部品なんかの場合だと、一品ものでそういうグレードの製品を職人技で作り上げていく必要があるんだけど、ある程度の量の需要があってそこまでお金がかけられないものなんかの場合は、こういうやり方を使うと効率的になるのだ。

というわけで、こういう良品・不良品の選別みたいな話は、その用途やコスト・時間の制約などでやり方が大きく違ってくるわけ。
単純に人の育て方には当てはめられないものなんだよね。
ものはもの、人は人ってことで。

2019/06/01

使い方いろいろ

現役官僚が覚醒剤と大麻の不法所持で逮捕されたのだ・・・。
職場が家宅捜索されて、机の引き出しの中から注射器が見つかったとか。
っていうか、職場で「キメ」てたの?
なんだかすごい話だよね。

覚醒剤って、いろんな形のものがあって、摂取の方法も様々みたい。
よくテレビドラマとかで見るのは白い粉だよね。
そのほか、粒の大きな結晶もあるし、カフェインなどもまざった錠剤になったもの、注射ですぐ打てるように水溶液になっているものなどなど。
どうも、摂取の仕方で「キマリ」方に差が出てくるようで、いろんな形態があるみたい。
でも、これは覚醒剤だけじゃなくて、薬物一般でそうなのだ。
市販薬でも病院で処方される薬でも、錠剤やら塗り薬やらいろいろあるよね。
あれは服用の仕方によって薬の効き方に差が出るからなのだ。

もっとも一般的なのは、「飲み薬」。
経口投与というやつで、錠剤になっていたり、カプセルに入っていたり、或いは、シロップ状だったりとこれもいろんなものがあるのだ。
でも、どれも口から摂取して胃から腸へ行く間に吸収されるものなのだ。
食前や食後に水で飲むだけでもっとも単純な摂取方法なので、原則としてこの形態が好まれるのだけど、欠点もあるんだよね。
その一つは、酸性条件下で分解されてしまうような薬剤には使えないということ。
胃を通るときにどうしても胃酸の影響を受けるので、酸で分解される薬は飲み薬にできないのだ。

もうひとつは、薬物の代謝の問題。
腸管から吸収された薬物は門脈という静脈に入って、まずは肝臓に送られるのだ。
肝臓は解毒の役割を担っているんだけど、薬物を分解する酵素をたくさん持っているところ。
ここでせっかく吸収された薬物が分解されことになるんだよね。
分解される分を織り込んで大量に服用すればいい、というときはそれでもいいんだけど、薬物の微妙な差で効果に大きな差が出る場合(例えば、少しでも多いと副作用が強く出るとか)は、この不確定要素は排除したいのだ。
こういうときは「飲み薬」にできないんだよね。
何より、錠剤などの「飲み薬」に適した形態にできない薬物(例えば油にしか溶けないなど)の場合も使いづらいよ。

そんな場合どうするか。
すぐに思いつくのは注射剤。
注射にも何種類かあって、一般的なイメージは、静脈に薬物の水溶液を入れるものだよね。
点滴とか麻酔薬とかそういうやつ。
これは肝臓を通らずに血流に回るので、肝臓での最初の分解を避けることができるのだ。
血液中の濃度をモニターしながら微妙なバランスで使わないといけないような抗がん剤なんかはこれ。
一方で、直接血管の中に薬液を入れない注射もあるんだ。
それが筋肉注射や皮下注射。

筋肉注射はその名前のとおり、筋肉に注射で薬液を入れるもの。
これは「痛い」注射だよ。
ワクチンなんかはこれを使うんだよね。
皮下注射というのは、皮膚をつまんで持ち上がったところ、筋肉と皮膚の間に薬液を入れるもの。
インスリンなんかがこれだけど、これは徐々に毛細血管に薬液が染みこんでいくのだ。
すぐに薬効はでないけど、じわじわときかせたいとき、局所的にきかせたいときなんかに使うよ。

で、経口投与の内服薬と注射して使う注射薬をのぞいたものが「外用薬」。
これにはいろんな種類があるよ。
まず、ぜんそくの人におなじみなのが吸入薬。
プシュっと薬液を噴霧させて、それを吸い込むのだ。
これは口腔内、鼻腔内、気道の粘膜から薬液が吸収されるよ。
この方法も肝臓を通らずに薬物を血流にのせられるという利点があるのだ。
ただし、粘膜からの吸収がよい薬でないと使えないし、粘膜からの吸収は量的なコントロールは正確にできないので、吸収量をそんなに厳密に考えなくてよいときにしか使えないのだ。
ただし、けっこう吸収が早いので、ぜんそくやその他のアレルギーの発作によく使われるよね。

同じように粘膜から吸収させるものには、点鼻薬、舌下錠(トローチ)、座薬などがあるのだ。
点鼻薬は名前のとおり鼻の穴にさして薬液をちゅっと出すもの。
主に耳鼻科でしか使わないね(アレルギー性鼻炎の薬とか)。
舌下錠は心臓の薬のニトログリセリンなんかに使うけど、口の中で徐々に溶かしてじわじと口腔粘膜から薬物を吸収させるのだ。
かんで飲んだらダメだよ。
座薬はおしりに入れるもので、腸管粘膜から吸収させるよ。
実は、経口投与で腸管から吸収される場合と血流への入り方は変わらないんだけど、口から腸管まで移動する時間が短縮でき、すぐに薬物が吸収されるので即効性があるのだ。
子供の急な高熱を下げたいときに座薬を使うのはこのためだよ。
「飲み薬」だときくまでに時間がかかるのだ。

「目薬」、点眼薬というのもあるよね。
これは目の表面から吸収させるもの。
でも、ちゃんとした目薬のさし方をしないと、涙管を通って鼻に抜け、のどから胃に行ってしまうのだ・・・。
目薬をさしたときにちょっと苦いと感じる場合は、余分な目薬を「飲んで」しまっているので注意が必要だよ。
目薬は一滴だけさして、指した後すぐに目頭を軽く指で押さえ、のどに行かないようにしなくていけないのだ。

最後は「塗り薬」や「貼り薬」。
これは皮膚の表面に薬物を塗るもの。
皮膚表面から吸収させる場合はほぼほぼ血流にのるまでは浸透しないので、塗った周辺に局所的にきくのだ。
筋肉痛に使う痛み止めのシップ(インドメタシンなど)や皮膚を切開するときなどの局所麻酔などなど。
どの家庭にもだいたいある「オロナイン」は抗菌作用のある塗り薬だよ。
血流に入らないというのがポイントで、全身作用はないけど、局所的に作用させられるところがミソなのだ。

というわけで、薬はものによっていろんな使い方をするんだよね。
それぞれの薬の形態にはきちんと意味があるのだ。
副作用につながるおそれもあるので、正しく使わないと!