2018/04/28

最小のパスタ

日本では食べたことがなかったけど、フランスに来て、クスクスを食べる機会が出てきたのだ。
モロッコ、チュニジア、アルジェリアといった北アフリカの料理だけど、ちょうどこれら地域はフランス語圏で、人も文化もフランスに入ってきているんだよね。
今の「マグレブ」と呼ばれる、地中海沿岸の地域で、かつては仏領北アフリカだったのだ。
これらの地域はムスリムなので、クスクスは中東地域にも広がっているみたい。
地中海の島々は似たような文化圏なので、イタリアのサルデーニャやシチリアでも食べられているみたいだよ。

フランスのレストランでは、クスクスには3つの皿が出てくるのだ。
一つは山盛りになったクスクス(蒸したもの、仏語ではこの蒸したクスクスの粒はスムールと呼ばれるよ。)。
もうひとつは、そのクスクスにかける野菜(ポワロ、ズッキーニ、カブ、ニンジン、ひよこ豆、セロリ、ウイキョウなどなど)の入ったスープ。
そして、鶏肉や羊肉を煮たり焼いたりしたもの、羊肉のソーセージなどの肉類。
クスクスとスープはとりわけ式で、基本は複数人でシェア。
多くの場合、これらはおかわり自由らしいんだけど、クスクスの量は半端じゃなくて、食べても食べても減らない・・・。
スープは野菜も多くてあっさり目の味であることが多いので、たくさん消費する場合はおかわりもあり得るけどね。

フランス人が辛いものが苦手だからか、もともと北アフリカでもそういうものなのか、スープも肉も辛い味付けにはなっていなくて、別に「アリッサ(仏語式発音)」と呼ばれる辛いソースがあって、それを好みに応じて使うんだ。
唐辛子をもとにして各種香辛料を加えて作られた真っ赤なペーストで、チュニジアでよく使われるものだよ。
ちなみに、そのままでは辛すぎる、ということで、アリッサにマヨネーズを加えたものがあって、それは「サムライ・ソース」と呼ばれているのだ。
主にケバブ・サンドなどに使うもので、クスクスには使わないよ。

クスクスは、パスタの一種なので、乾燥状態で保存されていて、それをもどして食べるのだ。
専用の二段式鍋のクスクス鍋というのがあって、下段の鍋でスープを煮込みつつ、上段の鍋でクスクスをスープの蒸気を利用して蒸し上げられるようになっているんだ。
乾燥クスクスに少し水を含ませ、塩とバター又はオリーブ油を足して蒸し上げるみたい。
塩水とバター又はオリーブ油で別に炊きあげることもあるみたいだけど、蒸した方がプチプチとした食感になっておいしいとされているようだよ。
スープをかけながら食べるので、あんまりゆっくりだと「のびて」きちゃって食感はだんだんなくなってくるけどね。

ボクがクスクスを食べつつ気になったのが、どうやってこの粒を作っているのか。
大量に食べるものなので、まさか「いきなり黄金伝説」のように一粒一粒「ちねる」わけにもいかないよね・・・。
で、調べようとしても、「クスクス+作り方」で検索すると料理のレシピばっかりorz
そんなこんなでなんとか調べてわかったのは、うどんの麺を打つときのような感じで、少量の水をデュラム・セモリナ(硬質小麦の粗挽き粉)に加え、全体に水分をまぶすように混ぜるようなのだ。
そうすると、細かい塊が出来てくるんだよね。
うどんの場合はそれをまとめ上げてさらに練っていくんだけど、クスクスの場合は、ダマダマができてきた段階でふるいにかけるのだ。
で、ある程度の大きさになったものは除き、まだ粒子の細かいものや粉のままのものについてまた同じような工程を繰り返していくみたい。
で、最後に乾燥させるのだ。
ふるいの目の粗さで粒の大きさも制御できるんだよ。
実際にクスクスには粒の大きさで何種類かあるそうで、粒が細かいものほど高級なんだとか。

食べてみての感想としては、何が何でも食べたい、というものでもないんだけど(笑)、野菜たっぷりであっさり目なので、クリームどばどばのフランス料理に胃が疲れているときにはちょうどよいかな?
でも、量がめちゃくちゃ多いので、食べる量には気をつけないといけないけど。
しかも、パスタだけあって水を吸って後から膨らむので、その分もあらかじめ考慮しておかないと大変なことになるのだ。
フランス人は、マグレブ地方の名産でもあるロゼワインと合わせるのが好きだそうだよ。

2018/04/21

トウキビの粉

この前、スーパーでメキシコ料理セットを買って食べてみたら、辛さもしっかりあって、スパイシーでおいしかった♪
フランスにはあまり辛いものがないから貴重かも。
でも、なんだか米国留学時代に食べていたものによく似ているなぁ、と思ってラ、やっぱりテクスメクス料理だったみたい。
本場のメキシコ料理とはちょっと違うんだよね。

一番の大きな違いはタコス。
日本でもそうだけど、海外進出しているタコスには「ハードタコ」が多いのだ。
U字状に折り曲げられて揚げられた、固い皮に具を乗っけて食べるんだよね。
でも、メキシコのものは、焼きたての軟らかいトルティーヤで巻いて食べるんだよね。
このトルティーヤも、米国のものはほとんどの場合小麦粉のやつだけど、メキシコではトウモロコシの粉で作ったものなのだ。
それはちょっとぼそぼそしているから、小麦粉で作ったトルティーヤの方が食感はおいしいんだよね。

トウモロコシの場合、そのまま乾燥させた粒を砕いても、小麦粉のようには使えないんだって。
粘りが出ないので、生地にできないのだ。
なので、乾燥トウモロコシの粒を挽いたコーンミールを粥状に煮るイタリアのポレンタのようにして食べたり、小麦粉を混ぜてグルテンを補ってコーンブレッドにしたりするんだよね。
トルティーヤの場合も、食感をよくするために小麦粉を混ぜることがあるみたい。
日本国内で売られているトルティーヤ用の粉は多くの場合トウモロコシと小麦をまぜたものだって。

トウモロコシを伝統的に主食としてきたメソアメリカでは、小麦を混ぜるなんてことはできないので、別の方法をとっていたんだよね。
それがアルカリ処理。
乾燥させたトウモロコシの粒をアルカリ水溶液(消石灰を溶かした石灰水や、木灰と水を混ぜたものの上澄み液)で10~20分煮てから一昼夜放置して冷却。
これを何度も水洗いするそうだよ。
そうすると、白っぽかったトウモロコシの粒が黄色くなるのだ。
これを粉にしたものは、粘りけも出てくるので、薄くのばして焼いてトルティーヤに加工できるんだ。
小麦の場合でも、かん水を入れて麺を打つと黄色い中華麺になるけど、それと同じような反応が起きているんだよね。

このトウモロコシのアルカリ処理は「ニシュマタリゼーション」と呼ばれているんだけど、アステカの言葉であるナワトル語で「挽きわりトウモロコシから作った食物」を意味するネシュタマリ(nextamalli)に由来するそうだよ。
実は、このアルカリ処理には、粘りけを出して加工しやすくするという以上に大きな意味があるんだ。
それは、必須アミノ酸のトリプトファンやビタミンB3(ナイアシン)の吸収率を上げるという効果。
もともとトウモロコシはトリプトファンの含有量が少なく、そのために、そのまま食べるだけだとトリプトファンが不足してしまうのだ。
ナイアシンは生体内でトリプトファンから生合成されるので、トリプトファンが欠乏すると、同時にナイアシン欠乏症にもつながるんだ。
その欠乏症状は「ペラグラ」と呼ばれているよ。

メソアメリカの原住民は時間をかけてアルカリ処理という方法に行き着いたので、トウモロコシを主食にしても問題なかったんだけど、これを欧州に持ち帰ったスペインではアルカリ処理をしなかったので、ナイアシン欠乏症が多く発症したんだって。
最初は栄養失調疾患とは思っておらず、伝染病ととらえられたので、「イタリアらい病」と呼ばれていたそうだよ。
イタリア北部の山岳地方は寒冷な気候で小麦の生産に向いておらず、新大陸からもたらされたトウモロコシが主食になっていったんだけど、そのためにトリプトファンが欠乏するに至ったのだ!
野菜や果物を食べればかなり改善するはずだけど、むかしはそういう商品作物はあまり流通しないし、食生活としても、主食ばかり食べるような感じだから、防げなかったんだろうね。

メソアメリカでは、トウモロコシは紀元前5000年以上前から栽培種になっていて、およそ主食の4/5を占めていたようだけど、それもこれもアルカリ処理を発明したおかげなんだ。
おそらく、最初はおいしく食べるためにやったんじゃないかと思うけど、栄養学的にも効果がったんだろうね。
ただし、伝統的な方法だと、アルカリ性の廃液が出るし、水洗いで大量の水を消費するので、環境には優しくないのだ・・・。
今のようにトウモロコシで莫大な人数を支えようとすると、ちょっとこの方法じゃ難しいんだよね。
トウモロコシ自体はおいしく食べるにしても、主食以外からトリプトファンや内亜snが摂取できるようにしないとダメなのだ。

2018/04/14

フランスの花粉事情

多くの人は、フランスに来ると花粉症がなくて楽、というのだ。
ボク自身は花粉症ではないのでよくわからないけど(笑)
でも、調べてみると、フランスに花粉症がないわけではないんだね。
日本と花粉の種類が異なっているし、飛散している量も違うので症状が軽減されている、ということみたい。
それでも、実は職場にフランスで花粉症に悩んでいる人がいるんだよね・・・。

パリは大気汚染がひどくて、それこそ、なんか空気に色がついているような、透明度の低い空なんだよね。
実際に大気汚染は深刻化していて、排ガス規制なども厳しくなってきているのだ。
日本ではPM2.5が話題だけど、フランスではPM10というものが増えているのが問題なんだって。
日本では浮遊粒子状物質などとよばれるもので、粒子径が概ね10ミクロン以下のもの。
ちなみに、PM2.5はそのまま粒子径が概ね2.5ミクロン以下のものだよ。

PM2.5の方がさらに小さいの肺の奥の奥まで入り込むんだけど、PM10でも肺や気管支に沈着し、呼吸器に影響を及ぼすことが知られているのだ。
ぜんそくの原因にもなるし、慢性的に肺や気管支に炎症が発生するので、花粉症のようなアレルギー疾患のリスクも高まるんだよね。
で、フランスでも、大気汚染の深刻化に伴い、花粉症が増えてきているんだって!
4人に一人は症状を抱えていると言われているそうだよ。
ただし、日本での、涙や鼻水が止まらない、くしゃみをし続ける、というようなひどいものではなくて、鼻が詰まる、くしゃみをする、目がうるうるするといった軽い症状も含めてのようだけど。

フランスでは、イトスギ(セイヨウヒノキ)、ハシバミ、ハンノキ、ミモザ、マロニエ、プラタナスなんかの花粉が飛散するみたい。
街路樹としてよく植えられていることも多いので、都市部でも花粉は舞っているということなのだ。
それでも、日本のニュース映像にあるような、風が黄色く見えるほど花粉が飛んでいるわけではないので、症状は出たとしても軽めなんだそうだよ。
これからひどくなる可能性はあるけど、日本のようにどこにでもスギを植えまくった、というような事情はないから、そこまでには至らないかな?
大気汚染の影響の方が大きいだろうね。

フランス、というか、欧米では日本と違ってマスクをする習慣がないのだ。
日本だと軽いものでもカゼをひくと他の人にうつさないようにマスクをするけど、こっちでは平気で人前でくしゃみや咳をするんだ。
っていうか、これじゃ飛沫感染が広がる・・・。
でも、こっちでマスクをしていると、よほど深刻な伝染病にかかっている、と受け取られるらしいので、注意が必要。
いきなりパンデミックの要注意人物に見られてしまうのだ!

フランスでは症状がそこまでひどくないこともあり、日本のように抗アレルギー剤で抑えるというのはまれみたい。
対症療法が多くて、カモミールティーなどのハーブティーを飲む、ハーブ系のアロマを焚く、こまめに掃除する、蜂蜜・プロポリスを摂取する、などなど。
軽めの症状の緩和対策は日本とさして変わらないのが面白いね。
多少症状がひどくなると薬局に行くようだけど、そこでも出てくるのは炎症やかゆみを抑える薬だって。

日本だと春の心地よい季節に外出できないというひどい状況だけど、こっちでは症状もそんなに出ないので、普通にアウトドアを楽しんでいるみたい。
フランス人は陽気がよいとすぐに外に出て食事したり、昼寝したりするからね。
これから花粉症がひどくなっていったら、こういうライフスタイルも変更せざるを得ないのかな?
くしゃみしながらもやってそうな気はするけど(笑)

2018/04/07

国鉄改革

フランスでは、マクロン大統領が目指しているフランス国鉄(SNCF)の改革案に反対して大規模なストライキが始まったのだ。
現在のフランス国鉄は「商工業的公施設法人」というもので、特別の法律で設立される公的性格を有する企業体なので、日本で言う「特殊会社」に近い形態みたい。
今回の改革では、フランス国鉄職員に認められている様々な優遇措置(年金、家族は無料で鉄道が利用できるなど)を徐々に廃止していこうというもの。
既得権益が侵されるということでストにつながったみたい。

日本でも国鉄こと日本国有鉄道が分割民営化されるときも大きな騒ぎになったよね。
日本の国鉄は、戦前鉄道省が直接運営していた「省線鉄道」が戦後の1949年に役所から離れた公共企業体である日本国有鉄道として分離したのだ。
これが1987年に中曽根内閣の行政改革の目玉として分割民営化され、JR各社が生まれたのだ。
ちなみに、JR各社は公共性を有しているということもあって、まずは独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(当時は日本国有鉄道清算事業団)を介して日本国政府が株式を有する特殊会社の形で分割民営化され、その後、運営状況が健全な会社から完全民営化に移行しているのだ。
現在までに完全民営化に移行しているのは、東日本、東海、西日本、九州の4社だよ。

実は、この日本の民営化路線は世界でも先行した取組で、このときの教訓を活かす形で各国の民営化が行われているようなのだ。
英国なんかは日本と同じような分割民営化のようなんだけど、ドイツは1社のままの民営化だって。
更に大きく異なるのは、欧州連合(EU)加盟国の場合、EU指令に基づいて、いわゆる「上下分離」が行われているのだ。
すなわち、インフラとしての鉄道網を保有し、管理する会社と、実際に鉄道を運行する会社に分離するというもの。
多くの場合、インフラ会社は政府又は公的な主体が運営し、運行会社が路線使用料を支払ってそのインフラを使わせてもらう、という形式になるよ。
「オープン・アクセス」なので、理論上は鉄道運行については競争が生まれることとなり、新規参入もできるのだ。
実際に、貨物路線では新規参入も見られるみたい。

これは電力やガス、電気通信の民営化でも見られるもので、インフラを公的なものとしつつ、そのインフラを活用するビジネスは自由競争とするのだ。
日本でも、電力は完全自由化したし、携帯電話も仮想移動体通信事業者(MVNO)が出てきているよね。
インフラのオープン・アクセスを確保して、競争原理に基づく適正なビジネス環境の整備を目指すものなのだ。
実際に電気、ガスなどの公共料金が安くなると言われているよ。

逆に、インフラと運用を切り離さずに一体化しておくのが「垂直統合型」。
サービスの利用形態の変化によりインフラも改善していかないといけないんだけど、インフラと運用を切り離してしまうと、そこに不備が出てしまうので、一体不可分であるべき、とする考え方だよ。
フランスでは、いったん上下分離がなされたんだけど、インフラ会社の方がダイヤを組むところに運行会社が不満を持ってもめ、けっきょく垂直統合型になった、という経緯があるそうだよ。
ただし、インフラ会社と運行会社はそのままあって、その上に統括・調整を行う上位の会社を作ったということみたい。
それが2015年のことというから、つい最近なんだね。

そんなにフランスの鉄道を利用しているわけではないんだけど、かなりサービスは悪いんだよね・・・。
そもそも、どのプラットフォームから発車するのかは10分前にしかアナウンスされないし。
運行の技術的問題でそうしかできなとか言っているらしいけど、日本なんかではもっと複雑なダイヤで時刻表に何番線から発車なんて情報を載せているんだから、やろうと思えばできるはずだよね(笑)
このほか、やっぱり非効率にしか見えない部分がたくさんあって、万年赤字を解消するため、そういうのを解消したいというのがマクロン政権の意思なんだよね。
今回のストの実施でそれが変わるのかどうか。