2025/01/04

皮と汁

 お正月がやってくるとよく目にするやつ。
それは、あの鮮烈なオレンジ色の・・・。
橙(だいだい)!
みかんじゃないんだよ。
「代々」栄えるという縁起物なので、正月の注連飾りや鏡餅に用いられるのだ。
特に武家で尊ばれたので、江戸以降に広まった文化だと思うけど。

ダイダイは、そのままにしておくと複数年の間、木になったままになるのだ。
これは一部の柑橘類に共通の性質のようだけど、一度越冬して次の夏を迎えるとまた果皮に葉緑素が復活して緑に戻るのだ。
これを「回青」というのだ。
ダイダイはそのまま食用にしないのでそのまんまなんだけど、河内晩柑のような食用のものは食感が悪くなるので、回青しないように袋をかぶせるんだそうだよ。
夏みかんの場合は回青する前、春に完熟した頃に食べるのだ。

ダイダイは飾るだけかというと、そうでもないのだ。
きれいなオレンジに色づくほど熟すると苦みが強くなってしまうのだけど、未熟果の青い状態だと酸味が強く風味がよいので、ポン酢に使われたりするんだって。
スダチやカボスと同じような感じで、酸味が強く、風味がよい果汁を押すの代わりに使うのだ。
一方、完熟した場合は皮を使うんだよね。
乾燥させた完熟果の果皮は「橙皮(とうひ)」と呼ばれる漢方薬。
後から出てくる苦み成分が健胃作用などをもたらすんだよ。
みかんの皮を干した「陳皮」よりも高級みたい。
というわけで、ダイダイは飾りにも使えるし、未熟なうちは果汁が調味料に使われるし、完熟すれば生薬にもなる優れものなのだ。
最近は注連飾りも鏡餅もみかんで代用される方が多いかもだけど。

同じくこの頃に出てくるちょっと変わった柑橘類と言えば金柑。
ダイダイはかなり果実が大きいけど、金柑は小さめ。
で、この金柑の特徴は、果汁ではなく、むしろ皮をメインに食べること。
実が小さいし、わりと水気が少ないので、果汁は微々たるもの。
むしろ、甘露煮にしたり、砂糖漬けにしたりで、そのまま食べることが多いのだ。
でも、そうして甘く味付けても、もともともっているほんのりした苦みで後味がよいのだ。
そして、きっちりと柑橘特有のさわやかな風味もあるんだよね。
小さいけど種はしっかりあるのだけど、これは原種に近いものだからみたい。
それでも、それをおいしく食べようとするんだから、昔の人はいろいろと工夫するよね。