2025/03/08

たたいて固める

 難読語の一つ、「三和土」。
これは「たたき」と読むのだ。
今では玄関で履き物を脱ぐスペースを指すけど、もともとは伝統的な日本家屋で板間に上がる前の土間の部分のこと。
日本は履き物を脱いで家屋に上がる文化だけど、炊事場や作業場などは土間にあって、履き物をはいたまま過ごす場所だったんだよね。
単純に足元が汚れるからなんだけど。

で、この土間は土をたたき固めて作られていたので「たたき」と言うのだ。
「敲き土」というもので、安山岩や花崗岩が風化した土(火成岩由来のその辺にあるさらさらした土、非アルカリ室)に消石灰とにがりを加えて練ったものを塗ってたたき固めたもの。
しっかり固めると誇りも立たなくなるし、水もあまりしみこまなくなるのだ。
コンクリートのなかった時代には重要な建築部材だったんだって。
で、三種類の材料を混ぜて土を固めるから「三和土」という字を当てるのだ。
今ではコンクリで打ち固めてあっても「三和土」と呼ぶのだけどね。

で、土間と板間の境界にあるのが「上がりかまち」。
まだ草履や草鞋を履いていた時代は、上がり框に腰かけて足を洗ってから家に上がるという習慣があったんだよね。
これを「足濯ぎ」と言うのだけど、旅館なんかだとたらいに湯を張って洗ってくれる、なんてサービスもあったみたい。
もちろん、庶民の家だと桶に水が汲んであるだけで後は勝手に洗って手拭いで水をぬぐってね、ということなんだけど。
なので、玄関口の上がり框は基本は腰かけるもので、家にああラナイまでも上がり框に腰かけて家の人とコミュニケーションをとるなんてこともあったわけだよね。
今でもお茶会に呼ばれると足袋や靴下を履き替えるのだけど、その昔は足を洗っていたわけだから、家に上がるのはけっこう大変なことなんだよね。
そうなので、上がり框に腰かけて話したり、縁側という内と外の境界でコミュニケーションをとることに意味がったのだ。
現在ではほぼほぼ段差がなくなってきたけど、昔は吸われる高さというのが大事なのだよ。

世界を見渡しても、あまりこういう構造の家屋はないように思うけど、それは遺文を融合するという文化の考査地である日本で発展したものだから。
もともと日本では、縄文時代に竪穴式住居だったので、周囲より少しくぼませたところに土間を作って生活していたのだ。
そこに南洋由来の高床式の住居が入ってくるんだよね。
高温多湿な東南アジア系の住居では、地面と床の間に空間を作ることでじめじめした気候の中でも快適に過ごせるので、高床式の住居が発達していたらしいのだ。
この二つが日本の地で出会ったとき、なぜか二つの方式を融合して併存されるような形で発達したものなんだよね。
夏なんかは特にじめじめしているので、日本でも赤床式はけっこう快適なわけあけど、一方で、土間は土間で履き物を脱がないで出入りできるし、床が多少汚れることを気にしなくてもよいので便利なのだ。

この方式で唯一面倒なのが履き物をぬがなくてはいけないところ。
とはいえ、日本は文化的にけっこう明確に「内」と「外」、「清浄」と「不浄」、「ハレ」と「ケ」を意識して分けて考えるから、履き物を脱いで足を洗って家に上がる、という一連の流れはすんなり受け入れられるのかも。
神社にお参りして、礼をしてから鳥居をくぐり、手水で口をすすぐ、みたいなのと同じ感覚だよね。
住居も西洋化してきたからすでに「たたき」というのは名称としてしか意識されないようになってきてしまっているけど、難読の漢字にはしっかりと意味があるものなのだ。

2025/03/01

にほひおこせよ

 梅の花が咲き始めたのだ。
確実に春が近づいてきている!
職場の近くでふと甘い香りが漂っていて、見てみると白梅が咲いていたんだよね。
古来より梅の花の開花漂ってきた香りで知るというけど、本当にそうなのだ。
実は酸っぱいのに、花は甘い香りなんだよね。

春を代表する桜風味というと、塩漬けにした桜の葉の方向成分である「クマリン」が有名だけど、梅の花の香りはもう少し複雑なようなのだ。
そもそも香りの強いもの、弱いものもあるし、白梅と紅梅で香りが違うよね。
で、少し調べてみると、2010年に花王が梅の花の香り成分を分析した、という話が出てきたのだ。
実際の当時のプレゼン資料はリンク切れで見られないのだけど、それを取り上げたニュースやブログなんかが残っている感じ。

花王の使っている技術は「エアロセント技術」という独自のもので、花をガラス容器で覆って香り成分を吸着させて分析するようなのだ(ガスクロ?)。
精油成分のような高揮発性のものから油脂のような低揮発成分まで広く分析できるとか。
しかも、時間分解能もあるので、花が咲く初めてから終わるまでの香り成分の変化も終えるんだって。
で、この技術を使って、和歌山県と共同で梅の花の香り成分を調べたようなのだ。
和歌山と言えば実梅としても有名な南高梅があるけど、南高梅は花の香りも強いことで有名なんだよね。

花王の発表資料を見られていないので正確性は欠くけど、どうも代表的な成分は、酢酸ベンジル、ベンズアルデヒド、オイゲノールといったもので、その他マイナーな香り成分が相当数あって、その組み合わせで品種ごとに異なる香りになっているみたい。
花王の分析では、「、白梅はライトフローラル、紅梅はリッチなスパイシーフローラルタイプ、淡紅梅はパウダリーな甘さが強いタイプという官能評価」ということらしいよ。
正直よくわからないけど(笑)


まず、酢酸ベンジルはベンジルアルコールと酢酸のエステルで、ジャスミン、イランイラン、クチナシなんかの香り成分。
つまり、相当甘ったるい香りなのだ。
香水や化粧品にもよく使われる香料だよ。
ベンズアルデヒドはアーモンドや杏仁の香り成分で、すっとしたさわやかな香り。
安価な香料としてよく使われるものだよ。
オイゲノールはクローブの香り成分で、バニラのような甘い香りの中にスパイシーさがある、というものらしい。
わかるようなわからないような。

つまり、この3つを混ぜるとなんとなく梅の花の香りになるようなのだ。
これだけだと安っぽいのだろうけど。
そして、白梅はベンズアルデヒド多め、紅梅はオイゲノール多め、ということなんじゃないかな。
香りが強くない梅というのは多分ベンジル酢酸が少ないのだ。
こういうのを考えながら梅の香りを楽しむのもまた一興?
でも、梅の花の香りを再現した〇〇ってあんまり聞かないような・・・。
まだ難しいことがあるのかも。

さらにちなみに、花王の研究では時間悔過で香りの屁化を見ているのだけど、梅の花は開花から落弁(花びら青tること)まで2週間ほどで、7日目あたりに完全開花。
香りもこのあたりが一番強いようなのだ。
かつ、開花直前までは低空飛行で、開花で一気に強くなってあとは減衰していく、という感じみたい。
ということは、香りが漂ってきて梅の花が咲いているのに気づく、というのは、ほぼほぼ満開状態になったあたり、ということになるよね。
においで気づくと梅の花が咲き誇っているというのはなかなかシチュエーション的には劇的だよね。
よくできてるよ。

2025/02/22

ため込むリスク

 米の価格上昇問題について、ついに政府が備蓄米の一部を開放するのだ。
これが市場に流通すると価格が下がってしまうので、投機目的でコメを着占めていたような人たちはさっそく売り抜けようとしているみたいだね。
令和の闇市ともいわれるネットのフリマサイトにけっこう出回っているようなのだ。
IT業者やスクラップ事業者、中国関係法人などいろんなところがため込んでいると報道されているけど、どうなることやら。
少し時間はかかるけど安くなることがほぼほぼ確実なのにこのタイミングで高値で買う人はいるのか?

で、ここでさらに懸念が指摘されているのが、非正規のルートでせき止められていた米の品質の問題。
通常、米は玄米として冷蔵保存されているんだけど、どうも投機目的の人たちは、雨風しのげればよいとばかりにその辺に常温で置いてるっぽいんだよね。
これは米の品質が著しく低下するし、また、危険な保管方法でもあるのだ。
素人が目先の金目当てに手を出しただけなのでそんなことは知らないのだろうけど。

まず、これから春になってあたたかくなるけど、ここで出てくるリスクが「虫」の問題。
無菌室やクリーンる^無で作っているわけではないので、どうしても米には虫がついているのだ。
卵が産みつけられているんだよね。
これが一定の温かさになると孵化して出てくるのだ。
代表的なのは、甲虫のコクゾウムシ(小さなゾウムシ)と蛾のノシメメダラメイガ。
どちらも幼虫の間は白いのであまり目立たないのだけど、成虫になるとどうしても目立つのでぎょっとするのだ。
それぞれ毒を持っているような虫ではないので、食味は大きく低下するものの、天日干しして虫を取り除けば食べられないこともないけど、虫がわかうようないい加減な保存方法をしていた米を買おうとする人はあまりいないよね・・・。
冷蔵しておくとこの虫の発生が抑えられるのだ。

虫が湧くまで行かなくとも、保存状態が悪いと米はどんどん劣化していくのだ。
でんぷんの質が劣化していくなどンお不可避な経年変化は別としても、保存状態が悪いと米ぬか中の脂質が酸化し、においがつくのだ。
いわゆる「古米臭」というやつ。
これは米の食味を大きく損なうんだよね。
いわゆる刑務所のくさい飯は、まだものがない戦後はにおいのついた古米くらいしか刑務所には回せなかったので、本当に炊いたお米がくさかったらしいんだよね。
寿司なんかはがん水量が少なくなって粘り気も抑えめになった古米の方がいいなんて言うけど、これはあくまでも保存状態が最良なもの。
いい加減な保存状態だと古米臭が染みついてしまうのだ。
この先フリマサイトに出回るのはひょっとするとこの「くさい飯」かも。

におい程度であればまだましなんだけど、梅雨時期になって湿気が増えると危ないのがカビ。
一部のカビは生えるとお米の色が黄色く変わってしまうので(黄変米)、見た目でやばいやつだとわかるんだけど、ぐちゃぐちゃに腐っていく野菜と違って、見た目だけではわかりづらいものもあるのだ。
そのむかし、三笠フーズという会社が、基準以上の残留農薬が残っていたり、カビが発生したりした、非食用の「事故米」を加工食品用に転売して大問題になったけど、そのときに本当にやばかったのがカビが発生してアフラトキシンができてしまったもの。
この毒は熱で分解されないので炊いてもそのまま米の中に毒が残るのだ。
で、最悪の場合は肝臓がんにつながるよ。
黄変米のカビ毒もマヒや急性肝障害など耶馬目なものだけど、こっちは見た目ではじけるのでまだ対策を取りやすいのだ。
っていうか、黄変米h食べなきゃいいだけなので(加工されちゃうとつらいのだけど。)。


で、春先は備蓄米の放出により米価が下がってしまうからまだこらえて、次の新米が出る直前の米の供給量が下がる夏過ぎに売ろう、なんて浅はかな考えをすると、これが危ないのだ。
もともとモラルも減ったくれもないだろうから、黄変米になっていようがどうしようが、フリマアプリでだまして売る連中はきっと出てくるよ・・・。
素のフリマサイトでは、使用済みの米袋も売られているらしいので、復路だけ詰め替えて偽装して出品される未来がほぼほぼ見えているんだよね。
なんで、信頼できないルートでのコメの調達は絶対にしてはいけないのだ。

2025/02/15

いざ解放せむ

 米の販売価格の高止まりが続いているのだ。
秋になって新米が出れば安くなるはず。
と言われていたけど、高いまま・・・
米は不作というわけでもなく、むしろ昨年度より生産量は上がっているのだけど、なぜか集荷量は下がっているらしい。
つまり、どこか捕捉できていないルートに流れている?
七ならべじゃないけど、誰かが流通を止めて米の価格を上げ、利ザヤを稼ごうとしているとしているのでは、と見られているよね。

そんな中、米の価格の安定性の確保のため、農林水産省は政府備蓄米の放出を決めたのだ!
市場にコメが出回らないから高値でtロ位引き去れるわけで、流通量が上がれば下がるはず、ということ。
でも、すでに小売店は高価格でコメを仕入れてしまっていてその在庫があるので、それがはけるまでは下がらないのじゃないか、とも言われているよ。
ま、やらないに越したことはないし、米はなんだかんだで日本人の生活基盤を支えるものなので、うまくいってほしい。

この政府備蓄米というのは、そこまでむかしからあるものではなく、平成になって始まった制度なのだ。
きっかけは平成5年(1993年)の「平成の米騒動」。
この年のコメの大凶作と、その前の年の普通レベルの不作の合わせ技で、米が圧倒的に足りなくなったのだ。
これは今と違って本当に買いたくてもものがなくて買えないというくらい(年間1,000万トンの消費量に対して役200万トンの不足)。
で、各国に働きかけてコメの緊急輸入に踏み切るんだよね。
カルフォルニア米なんかはかなりましだったのだけど、この時問題になったのがタイ米。
タイ米はインディカ米なので、ジャポニカ米の日本のコメとは根本的に異なるものなので、同じように炊いて同じように食べようとしたので「おいしくない」と大騒ぎになったのだ。
きちんとタイ米らしい調理法をとればおいしく食べられ得るのだけど(それをさんざん広報したのだけど)、タイ米=おいしくない米という認識がこの時で来てしまったんだよね。
ガパオライスやタイカレーにはめちゃくちゃ合うのに。

これまでの米の流通は食糧管理法の下で政府の管理下にあったんだよね。
もともとは戦時下の食糧不足に対応するものだったけど、戦後も改正されながら関r制度は維持されていたのだ。
このころは、米は基本全量政府がいったん買い上げて全国に公平に流通させる、ということをしていて、余った分を備蓄に回していたのだ。
「特急米」とか「一級米」とかいうのはこのころのグレードで、同じグレードのものはブレンドしてしまったので、今のように「〇〇産××」みたいなブランド米もなかったんだよ。
で、その後「自主流通米」という名でこの全量買い取り制度の外で流通するものもあったけど、それは例外的なもの・・・。
かつ、国会においては、「米は一粒たりとも輸入してはならない」という決議がなされていて、海外からの米の輸入も事実上禁止されていたのだ。

ところが、上記の米騒動で緊急輸入するに至り、ここに大きな変化が訪れるのだ。
ちょうどGATT(関税及び貿易に関する一般協定)のウルグアイラウンドにおいて日本は米の輸入を解禁するよう米国に迫られていたのだ。
これでもう時代のうねりは止められず、米の管理制度は時代遅れということで廃止されることとなり、食糧管理法に代わって「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」に基づく制度に移行するのだ。
これが平成7年(1995年)。
この後から、ブランド米を直接農家から買えるようになったりしたんだよ。
スーパーや百貨店も農協を通さずに直接農家から仕入れたりするようになったのだ。

で、この法律に切り替わったときにできたのが政府備蓄米制度。
2年連続で不作が続いても大丈夫なように、100万トンという水準で備蓄していて、5年かけて毎年20万トンずつ入れ替えていくのだ。
古くなった米は、市場に出してしまうとコメの市場価格が不安定になるので、基本は飼料用に回すんだけど、一部は学校給食や子ども食堂などに無償で提供されるらしいよ。
今回は、価格が高くなりすぎているので、この備蓄米を市場に投下して価格の高止まりを解消しようというわけなのだ。

2025/02/08

断末魔はドナルド・ダック

 
最近話題になった報道で気になる点があったのだ。
ヘリウムで自殺?
ヘリウムガスって何か毒性があったっけ?
仮に毒性があるなら、声がドナルド・ダック化するみたいな感じで使わないよね?
と、頭が混乱したのだ。
よくよく見てみると、ほぼ純正ヘリウムで酸素が混入されていないと酸欠を起こすらしい。
といっても、これは窒素でもなんでも同じで、ようは、酸素濃度が低すぎるガスを吸うとやばい、ということのようなのだ。

これは人間の肺におけるガス交換の仕組みに由来するんだって。
肺という臓器では、機能性ユニットである肺胞の中で、吸い込んだ空気と肺に張り巡らされた血管との間でガス交換を行うのだ。
このとき、ヒトの血液側の酸素濃度はおよそ16%。
空気中の酸素濃度は21%なので、濃度勾配により吸い込んだ空気の中の酸素が血液に取り込まれていくのだ。
すごいシンプルなメカニズム。
でも、これがあだとなるのだよね。

逆に、吸い込んだ空気が16%より低い酸素濃度だった場合、酸素は血液中から吸い込んだ空気の方に流れてしまうのだ。
水は常に高きより低きに流れるから。
一方で、血中酸素濃度が低下すると、延髄での反射でさらに空気を吸い込もうとしてしまうんだよね。
でも、その時周りの空気の酸素濃度が低いままだと・・・。
府のスパイラルでどんどん血中酸素濃度が下がっていくことに!
これが酸素濃度の低いガスを吸い込むことによる酸欠の仕組み。
ヘリウムで酸欠というのもこの類で、ドラルド・ダック声にするヘリウムガスのスプレーには酸素が20%ほど混ざっているのだけど、今回のものは酸素が混ぜられていないものだったようなのだ。
これは気体の種類は問わないので、無味無臭で、それ自体には毒性のないもの(まさにヘリウムガスのようなもの)でも起こり得る、というのは知っておかないと危ないのだ。

で、高地で息苦しくなるのは、酸素濃度はそんなに変わらないんだけど、空気が薄くて吸い込んだ空気中の酸素量自体は少なくなるので、酸素が少し足りない状態になるのだ。
その状態の症状が「高山病」。
これは徐々に体を慣らしていくしかないんだよね。
アスリートがやっている「高地トレーニング」みたいなのをやると、血液中のヘモグロビン(赤血球の中で酸素を運ぶもの)の量が増えることが知られているのだ。
それにより、低酸素状態への抵抗力がついて、無酸素運動系の競技では効果があるんだよね。

一方で、この話と一線を画するのが一酸化炭素中毒。
これは酸素の量の問題ではなく、一酸化炭素の毒性の問題なのだ。
ストーブの不完全燃焼で一酸化炭素が発生した場合は、十分な酸素濃度があろうが酸欠になるのだ。
その初期症状は高山病とも似ているんだよね。
体の中で酸素が足りない状態に強制的になるわけ。
これが起きるメカニズムは単純で、一酸化炭素は酸素に比べてヘモグロビンと結合しやすく(200倍以上)、一度くっつくと離れないので、そのヘモグロビンはもう酸素を運べなくなるから。
つまり、体の中での酸素の運び手が次々と一酸化炭素に取られてしまうので、いくら酸素を吸っても酸欠になるというわけなのだ!

中毒が発生してしまうと高濃度の酸素を吸わせるしかないんだけど、回復するまでにけっこうな時間がかかるので、酸欠状態は続くんだよね。
そのため、酸素の消費量の多い脳などは障害が残りやすく、非常に危険なものなのだ。
なので、とにかく予防が大事。
燃焼系の暖房器具の場合は定期的に換気が必要だよ。
また、密閉度の高い屋内の火事なんかだと、火が出て燃え上がってしばらくすると屋内の酸素の消費が進んで火勢がいったん弱まるのだ。
この状態でドアや窓を開けると一気に空気が流入して酸素が供給されるために爆発的に火勢が強くなる「バックドラフト」が起こるよ。
なので、不用意にドアや窓を開けて背景のだけど、そのままの状態だと不完全燃焼が進んで一酸化炭素が出てくるのだ。
一酸化炭素の比重は空気と同じくらいなんだけど、燃焼で出てくる一酸化炭素は熱いので上の方にたまりがちだから、姿勢を低くして一酸化炭素をできるだけ吸わないようにすることが大事。
でも、そのままだと一酸化炭素中毒に加えて低酸素による酸欠も近づいてくるので、誰も助けに来ないのであれば、少し窓から離れたところから物を投げて空気の通り道を作るしかないよ。
火は勢いを増すけど、酸欠や一酸化炭素中毒は防ぎやすくなるのだ。

2025/02/01

田舎タワー

 子供のころ、高速道路などで移動中に「送電塔」が見えると「田舎タワーだ」なんて喜んだものなのだ。
東京タワーに形が似ているからね。
で、今の職場の近くにもわりと太い送電線が通っているんだよね。
鉄道と大きな工場があるからみたい。

実は、いわゆる電線には大まかに三種類あって、コアになるのが供給区域全体に網の目のように張り巡らされているのが送電網。
その送電網に発電所で発電した電気を入れるのが電源線。
逆に、送電網から電気の使用者に電気を届けるための末端のネットワークが配電網。
大きな工場や鉄道の場合は送電網から直接電気を引き込むけど、デパートやコンビニ、一般家庭だと、配電網から電気の使用場所に引き込み線を引くのだ。

電源線はいいとして、送電と配電と概念を分けているのは、電気を流通させるときにできるだけロスを少なくするようにネットワークを運用する必要があるからなんだよね。
これは中高生レベルの出電気力学で説明できるよ。
まずはオームの法則だけど、「電圧=抵抗×電流」で、同じ電線に流す場合(=抵抗値が一定)、電圧と電流は比例するので、電圧をかけるとよりよく電流が流れるのだ。
これはわかりやすい。
一方で、電力ロスは抵抗で発生する熱の形で出てくるのだけど、このときのジュール熱(単位時間あたりに発生する熱量)は、「ジュール熱=抵抗×電流の二乗」になるので、電流が少ない方がよいことになるよね。
この二つだけで単純に考えると電流が少ない方が有利なよう見見えるけど・・・。

実は電力供給で大事なのは電力(=仕事率)で、これを需要端(=電気を引き出すところ)で一定に保つ必要があるんだよね。
電力は、「電力=電圧×電流」になるので、電力を一定に保とうとすると電圧と電流は比例するのだ。
したがって、熱の形で出てくる電力ロスを抑えつつ、需要端で電力を一定に保つ場合は、電圧を高くして流れる電流を小さくした方が有利なわけ。
これが送電を高圧電流で行う理由だよ。

実際には、発電所で発電される電気の電圧はそこまで高くなくて、しっかり昇圧したうえで送電網に電気を入れるんだよね。
送電網の基幹線は27.5万V(275kV)か50万V(500kV)なので、そこまで昇圧するのだ。
で、配電側に近づくにしたがって電圧を下げていくんだよね。
送電と配電の境界は6600Vで、送電網から直接電気を引いてしまう場合は「特別高圧」で、6600Vまで降圧して配電網に入れてから電気を引くのが、高圧や低圧、家庭用である「電灯」という区分だよ(今は全面自由化してしまったので必ずしもこういう区分にはなっていないけど。)。
電信柱の上にある柱上変圧器は200Vまで降圧するのだけど、この先から引き込むのが低圧(200V)や電灯(100V)だよ。

この送配電ネットワークを電力系統と呼ぶのだけど、一般に日本の系統は欧米のものより「弱い」と言われているんだよね。
その大きな理由は、電力の供給場所と消費場所が偏っているから。
東京電力管内は典型的だけど、そもそも発電所のほとんどは供給区域の外にあるのだ(新潟、長野、福島など)。
でも、電気をたくさん使うのは、23区内や横浜、川崎などの都市部。
神奈川や千葉にはまだ火力発電があるからましだけど、23区の近傍には発電所なんてないよね(むかしは千住に火力発電所があったけど。)。
こういう状態で、夏に気温がぐっと上がって都心部で電気の使用量が大幅に増えたり、大きな発電所がトラブル等で止まったりすると、電気の流れが大きく変わるのだ。

丈夫な電力網の場合は、電気の供給と引き出しが満遍なく分散しているので、特定の発電所が止まったり、特定の場所で電気の使用量が上がっても系統全体でバランスをとりやすいのだ。
一方、これが偏っていると、うまくバランスが取れなくなって停電したりするんだよね。
もともと東京電力管内はぜい弱なネットワークなんだけど、東日本大震災以来、福島や新潟の原発が止まって電気のインプットの流れが大きく変わったので、このバランス鳥がさらに難しくなっているようなのだ。
額面上で発電量と消費量があっているだけではだめで、ネットワークの電気の流れも踏まえて調整しなくちゃいけないから大変なんだよね。
消費者からは直接何をしているか見えづらい東京電力ぱわぐりっどは実はけっこうすごい仕事をしているのだ。

2025/01/25

えーしー

 とある放送局はとあるトラブルにおり、ほぼすべてのCMがACジャパン(旧公共広告機構)のものに切り替わっているのだ。
これだけいろんな種類を作ってたんだと感心したけど。
まさに現在のトレンド。
東日本大震災直後もスポンサーがつかずにACジャパンの広告が流れまくったけど、今回の状況はそれとはまた異なるのだ。
なぜなら、広告主はCMの放送を取りやめているだけで、広告枠は買ったままだから。
つまり、ACジャパンの広告に切り替わろうと、すでに支払っている広告料は今のところ返金されていないのだ。
すでに「返金しろ」という声は上がっているようだけど・・・。
とはいえ、広告枠の更新時期にはもうスポンサーがつかなくなるので、今はしのげても間もなくかなりきつくなるんだよね。

テレビのCM契約にはいくつか種類があって、いわゆる各番組の中で流れる「ご覧のスポンサー」のCMはタイムCMと呼ばれるもの。
特定の番組に対してスポンサー料を払って、その番組の時間枠の中でCMが流れるのだ。
番組の内容によって視聴者層がある程度想定できるので、対象を絞った訴求力のある広告が打てる、と言われているよ。
もちろん、その分だけお高いのだ。

もう少し安価に広告を流したいときは、番組提供クレジットの中には表示されないけど、「ほか各社」という扱いでCMを入れることも可能なのだ。
こういうのがスポット契約と呼ばれるもの。
番組中に流れるものが「パーティシペーション」で、番組と番組の間に流れるものが「ステーションブレイク」だよ。
一社提供の番組なのに時々その会社以外のCMがなあれるのはこれなのだ。

さらに、もっとイレギュラーなものもあって、それが「フリースポット」とうもの。
ある時間の幅の中で一定の回数CMを入れてください、時間帯は指定しません、という契約。
有名どころではハウス食品やコーワがつかっているもので、CM枠に空きが出るとそこに差し込まれることが多く、埋め草のように使われるのだ。
特定の層をターゲットにせず、全般的に広告すればよい、というころであればこれが使えるんだよね。
でも、個人的にはハウス食品のカレー粉のCMみたいなのは、見たらカレーが食べたくなるので、必ずしもグルメ系の番組の間である必要はなく、ドラマだったり、バラエティだったりなんでもありのような気がするな。

で、このフリースポットの特徴として、他にスポンサーがつかない場合に入ってくることが多いので、この手のCMばかりが目立つようになる=スポンサーが付きづらくなっている、ということなのだ。
視聴率が落ちて人気が低迷してくるとそうなってくるわけで、CMの流れ方を見るだけでもそういうのが何となく察せるというわけだ。
もちろん、深夜番組のようなもともとスポンサーのつきづらいものもあるので、徐々にCMの流れ方が変わっていって、という場合限定だけどね。

で、現在の某放送局はこの状況をさらに超えたところにあるんだよね。
誰もCMを入れたく無くなくなった場合に差し込まれるのがACジャパンのCMなのだ。
道徳・マナー的なCMだったり、公益的な事業(あしなが育英会や子ども食堂、各種検診など)だったり。
東日本震災の時に目立ったのが「元気に挨拶しよう」というやつで、今でいうと、「検脈」と「決めつけ刑事」が話題かな。
フリースポットの場合はまだスポンサーがお金を出してくれているわけだけど、それさえもいなくなると、こればかりになってしまうのだ。
幸い、現時点では広告枠の引き上げだけでいったん出した広告料は返金されていないので収入減になったいるわけではないけど、すでに広告料を払っているのにCMを止めてほしい、と言っている企業が多いわけだから、次の契約には結びつかないよね・・・。

そのACジャパンだけど、前は公共広告機構と名乗っていたのだ。
名前的に公的な機関だとばかり思っていたんだけど、業界関係者が作った任意の団体だったんだよね。
米国にも似たような組織があって、それをまねて、昭和46年(1976年)に関西で活動sる関西広告機構が発足し、それが昭和49年(1974年)に公共広告機構になって活動が全国展開されたそうだよ。
で、公的機関と紛らわしいという理由で、平成21年(2009年)に正式名称をACジャパンに改めたのだ。
時代時代でけっこう話題になっている広告を打っていて、もともとわりと存在は目立っていたけど、いよいよここに極まってきた、という感じかな。
おかげで現在放送中のフルラインナップがわかったしね。