2025/05/17

百聞が一見を超える

 ネットのニュースで見たのだけど、総務省が実施した委託調査で、ネットで目にした情報をそのまま信じやすい人が半数に上る、という衝撃的な結果が出たのだ。
かつ、その情報を家族や友人と会話したり、SNSで拡散した人は25%程度とか。
こりゃあ、ネットを中心に陰謀論がはびこるわけだ。
全部DSがうらであやつっているギフハブが悪い!

ネットのない時代からうわさが広まる波佐谷というのは想像する以上のもので、悪事千里を走るじゃないけど、過去の調査で「口裂け女」の噂の広がりを計測すると、時速100kmの速さで伝播していっている、なんてのがあったんだよね。
で、こういうのは、本当らしいものより、むしろ、えっそんなことが、適菜八の方が広まるんだよね。
それは当たり前で、誰もがそうだよね、とすぐに納得できるような話にはバリューがないから口の端に上らないのだ。
その内容が衝撃的だったり、サプライズがある方が話題にするよね。
でも、口裂け女の話は子供を中心に広まるのであって大人はまともにはとりあわなかったのだ。
それは面白い話ではあるけど嘘っぽいとすぐに見抜けるから。
でも、子供は信じやすいので広めてしまう・・・。
そういう構図だったはずなんだよね。

ところが、先の調査でいうと、大人であってもフェイクニュースに騙されやすい、ということが浮き彫りになったんだよね。
情報の中身として完全に荒唐無稽と切って捨てられるような「口裂け女」の噂とは違い、もう少し「信じられないけどそう言われるとそんな気がする」的なものだろうから大人が全く信じないわけじゃないだろうけど、問題はそれよりも「ネットの情報」というのがミソだと思うのだ。
会話で話題にする場合、その情報を口に出すときに、本気で信じているのか、半信半疑なのか、デマだと話あったうえで話しているのか、などは明言しなくてもニュアンスでにじみ出てくるよね。
ネットの場合もメールとして転送するとか、ブログを書く、生地にコメントをつける場合はそうなんだけど、X(旧ツイッター)のリツイートみたいな機能の場合は、単純に情報をっ買う産するだけなんだよね。
ボタンをぽちっとするだけで。
なんでその情報を拡散しようと思ったのか本当の意図は読めないのだ。
もちろん、コメント付きで囲繞したうえでポストしてもよいのだけど。

リツイートの場合、その情報がそのままフォロワーのタイムラインに流れていき、拡散されていくんだよね。
で、ここでさらに問題なのが、多くの人は趣味・趣向・主張に従ってSNSをフォローするので、もともと似たような考え方を持つ人にバイアスがかかってコミュニティが形成されているということ。
すなわち、同じ内容の情報に興味を持つ可能性が高く、かる、同じようにリツイートする可能性も高いのだ。
そうなると、自分のSNSのタイムラインには複数のルートで同じ情報が流れていくことになるんだよね。
もともフォロー・フォロワーの関係はかなりバイアスがかかったコミュニティではあるんだけど、人間は自分を基準において物事を考えがちなので、「広くせけにっぱんの人がその情報を支持している」と誤認しがちなのだ。
実際は似たようなことを考えている集団の中での一過性のブームみたいなものなんだけど、コミュニティ内でその情報が拡大再生産されていくなかで、それが真実に思えてきてしまうのだ。
そう、いわゆる「エコーチェンバー」になってしまうのだ。

ネットではやっている陰謀論の多くは、冷静に考えれば「そんなことないだろ」という荒唐無稽なものではあるんだけど、ある種の願望であったり、現実逃避的な感情とかみ合ってしまうと、「信じたくなってしまう情報」になるんだよね。
古来より、人間は自分の認識の限界を超えた事象をものすごく恐れる傾向があって、無理やりにでもこじつけて理解しようとするのだ。
それが雷は雷神が太鼓をたたいて落とすものだ、とか、貧乏神に取りつかれて落ちぶれた、とかそういう続伸なわけ。
それと同じように、自分では理解不能なことを自分でも受け入れ可能な、かつ、他責的なこじつけをしてくれるようなトンデモ論には一定の魅力があって、無意識化には「それにのっかりたい」という願望があるのだ。
そういう状況下で、SNSで何度もそのトンデモ論が流れてきて目にするようになると、「一見信じられないような話だが、これだけ多くの人がその情報を拡散しているのならば、これは真実なのではないか」と思い込んでしまうんだよね。
こうなるともうあとは転げ落ちていくだけ。
ほぼ自己暗示の世界だけど。

最近は「コミュニティノート」機能があるので、善意の第三者から冷静なツッコミがはいることもあるけど、SNS情報が容易に拡散すること、かつ、同じような思想を持つ集団の中でエコーチェンバーになりやすいことは、ネットで陰謀論が広まる重要な要因だと思うんだよね。
なので、ネットの情報とはそういう性質を持っているものだと理解したうえで、適切に一定の距離を置いて受け止める必要があるのだ。
とはいえ、ボクもこの調査の話はニュースで見ただけで原本(一次ソース)には当たっていないので、すでに誤情報に踊らされているおそれはあるのだけど・・・。

2025/05/10

似て非なるポピー

 4月から5月にかけて、道端でかわいらしいオレンジの花をよく見かけるのだ。
ボクは「ヒナゲシ」と認識していたのだけど、実際には「ナガミヒナゲシ」という種類らしい。
紀和得て繁殖力の高い帰化植物で、それこそ生命力が高いことで知られるぺんぺん草(ナズナ)と同じくらいどこでも見かけるのだ。
この時期は花があるから余計に目につくんだよね。

このナガミヒナゲシやヒナゲシは名前にも入っているとおり「ケシ」の仲間。
ケシと同じように、花弁が落ちた後に子房が膨らんできて果実になるんだけど、未成熟なうち、いわゆる「芥子坊主」の打開で傷をつけると白い乳液がにじみ出てくるのだ。
ケシの場合はそこに大量のモルヒネなどのあへんアルカロイドが含まれているのだ(だいたい重量比で10%くらい)。
この状態が「生あへん」で、実はこれをあぶって吸引するだけでも十分なくらいなもので、古代から利用されてきたのだ。
よい純度の高いものはここからさらに生成していって白い粉にしていくんだ。
なお、現在では、芥子坊主に午前中に傷をつけ、午後に固まった粘液をかきとって、という「へらかき」の工程は人手がかかるのであまりやられておらず、茎ごとすりつぶして化学的に麻薬成分を抽出するようになってきているらしい・・・。

ヒナゲシやナガミヒナゲシは乳液は出るけどそこに麻薬成分は入っていたのだ。
で、芥子坊主が縦長なので「ナガミ」という名前になっているよ。
大きさはピーナッツくらい。
確かに、オレンジの反が終わるとそんな「こんぼう」状のものが風に揺られているよね。
これが成熟すると中に小さい黒い種が大量にできて、風で揺れると先端に空いた穴から放出されてあたりに種をばらまく、という感じで増えていくのだ。
土壌が悪くても、多少乾燥していても生えてくるので、どんどん繁殖するし、地表部分は枯れても越年してしまうのでなかなか駆除できないやっかいものだよ。
花はきれいで、ヒナゲシなんかはフランスの国花になったり、中国では虞美人草として親しまれたりしているくらいだから。

この、よく見るナガミゲシと紛らわしいのが、同じく繁殖力の強い帰化植物のアツミゲシ。
最初に渥美半島で群生しているのが見つかったのでその名前がついているのだ。
これは白~紅~赤紫の花を咲かせるポピーの花で、花の色以外はよく似ているようなのだ。
問題は、こっちのアツミゲシには麻薬成分が含まれていて、「あへん法」により栽培が原則禁止されているものだということ。
知らないで栽培してしまう例もあるみたいだけど、問題はけっこう勝手に自生していることみたい。
繁殖力が強く、駆除も困難なので、過去に群生が発見された地域では一番見つけやすい花の咲く時期にパトロールもするそうだよ。

このアツミゲシは、通常アヘン栽培に用いられるケシよりは小型で、芥子坊主も小さいのだ。
なので、伝統的な「へらかき」の行程は大変なので、麻薬の原料として栽培されることはないんだけど、科学的に抽出する方法を使えばそこもクリアできちゃうんだよね・・・。
わざわざ栽培はしなくても、群生地を見つけたら刈り取ってそこから麻薬成分を抽出するくらいはできてしまうのだ。
ニュースで調べてもけっこう出てくるので、かなり帰化植物として広まっているんじゃないかな。

ちなみに、あへん法で禁止されているのは、麻薬原料となるケシの栽培とあへんの採取・所持等なので、きれいな花だなと思ってアツミゲシの花を摘んでくるのはOK。
それを鉢に植え替えて育てるのは×。
もちろん、そこから麻薬成分を取り出すのも×。
ニュースで取り上げられているものの多くは、ヒナゲシの群生かと思ったらアツミゲシだったので処分した、とかなので問題ないのだけど、最近の報道では、山口県の地域交流館で誤ってアツミゲシの寄せ植えを販売した、なんてのがあるので、これは違法耕一うことになるよ。
よくよく花の色に気を付けたうえで、できればその場で楽しみにとどめて持ち帰らないのが身の安全上は重要かもね。
李下に冠を正さず。

2025/05/03

外の血(知)を入れよ

 酒井美紀さんが不二家の社外取締役になったことが話題になったり。
フジテレビが経営改革の一環で社外取締役の人数を増やしたり。
社外取締役ブームが来ているのだ(誤)
でも、会社の経営を担う取締役でありながら「社外」ってなんか矛盾してない?
外様大名でありながら家康公の側近として辣腕を振るった藤堂高虎みたいな、的な?
というわけで、少し調べてみたのだ。

「社外取締役」というのは、会社というものの基本放棄である会社法にきちんと定められているものなのだ。
まだ会社法が商法の一部だった平成14年(2002年)の商法大改正で法的な位置づけが与えられ、平成17年(2005年)に会社法が独立してからは会社法で規定されているのだ。
なので、法律にていっがある以上、わりと簡単に調べはつくんだよね。
ただし、それが一般人にすっと理解できるかどうかが問題なだけで。

現在の定義は、平成26年(2014年)の会社法大改正で厳格化されたもので、会社法第2条第15号に5つの要件があげられているのだ。
どれも、外からの視点でその会社の経営に物申す、というコンセプトを踏まえたものだよ。

イ号「当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。」
これはわかりやすくて、少なくとも10年以上その会社の「中の人」ではなかった、ということだよね。
会社とのかかわり方を網羅的に書き下しているから少しわかりづらいけど。

ロ号「その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと」
これは正直なところ頭の中に「?」が浮かんでしまうけど、やっぱり「中の人」ではなかったことを言っているんだ。
会社組織には、会社の業務を遂行する「中の人」とその業務遂行を管理・監督する立場の人がいて、前者をダメと言っているのがイ号。
「業務遂行を管理・監督する立場の人」というのが、業務を執行しない取締役(基本的には「社外取締役」)、会計参与、監査役などということで、この役割自体は10年以内に担っていたことがあってもいいんだけど、その役職に就く前の10年間は「中の人」だった場合はダメ、と言っているのだ。
つまり、3年前に一度監査役に就任した人は一次予選は突破できるんだけど、3年前からその10年前にあたる13年前までの間に「中の人」だった場合は二次予選敗退、ということなのだ。
会社の期bにもよるけど、経理部長かなんかで定年を迎え、一度退職した後に監査役で迎えられたような人を社外取締役につかせることはできないというわけなのだ。

ハ号「当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと」
これはわかりやすいね。
これまではその会社かその子会社だけを対象にしてきたけど、さかのぼって親会社から下ってくるのもダメ、ということなのだ。
フジテレビの例でいうと、親会社は持株会者のフジ・メディア・ホールディングスで、子会社がフジテレビジョン、そのフジテレビジョンの子会社(フジ・メディア・ホールディングスから見れば孫会社)が、アニメ制作などをしているデイヴィッドプロダクション(「はたらく細胞」や令和版「うる星やつら」、「炎炎ノ消防隊」などを手掛けている。)という感じ。

ニ号「当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと」
これも一瞬わかりづらいけど、兄弟会社の「中の人」もダメ、ということ。
フジテレビでいえば、産経新聞やニッポン放送の「中の人」はフジテレビの社外取締役にはなれないのだ。

ホ号「当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと」
これも少し難解だけど、「中の人」そのものじゃなくても、特に影響力のある重要な「中の人」の親族もダメ、ということなのだ。
同族経営みたいになるけど、代表取締役社長の配偶者、親兄弟は普通の取締役にはなれても、社外取締役にはなれない、ということ。

そういう意味では、会社の業務の中身はわかりつつ、直接関係してこなかった人、という難しいような、誰でもいいような感じの人を当てないといけないのが「社外取締役」なんだけど、取締役会設置会社の場合は二人以上置かないといけないので、誰かしら連れてくる必要があるのだ。
そういうわけで、財務省などの高級官僚を「天下り」で迎えてみたり、著名人を連れてきて宣伝を狙ってみたり、ということが起こるのだ。
酒井美紀さんの例は、取締役会の女性比率の向上とそのネームバリューからの起用のようだよ。

2025/04/26

内なる〇〇を燃やせ

 お葬式に参加してきたのだ。
仏式だったのでお焼香をしたのだけど、なんで粉末状のお香が燃えるのか実はよくわかっていなかったんだよね。
灰の上に置かれている四角いものが熱源であることはしっていたのだけど、今回知ったのは、それが「炭」だったということ。
熱した石とか電熱だとか、そういうのを想定していたのだけど、よくよく考えれば仏教の儀式でお香を焚くのは非常に歴史があることだから、納得がいくよね。
石を熱してもよいけど、そんなに熱が長持ちしないし。

今回、お焼香の準備をしているのをたまたま見たのだけど、表面が銀色の何かにコーティングされた四角い炭にろうそくで火をつけ、それを灰の上に置いていたのだ。
炭が燃える場合は2種類あって、炎を上げてまさしく燃えている「燃焼」状態と、炎は出さずに赤熱しただけの状態でゆっくり燃える「熾火(おきび)」状態があるのだ。
炭火焼肉屋ら焼鳥、ウナギの蒲焼なんかでも燃え盛る炎に当てて焼いている絵わけではなく、静かに炎を上げずに燃えている炭から一定程度距離を話して焼いているよね。
遠赤外線というやつだ。
お焼香もこれと基本的には同じ原理でお香を焚いているようなのだ。

この炎を出さないで燃えている状態を「無炎燃焼」というらしいのだ。
炭の表面で炭素の酸化反応(C+O=CO)が起きていて、これが発熱反応なので燃焼に必要な温度が維持されるのだ。
この「炭の表面」というのがみそで、外側というだけでなく、多孔質の炭の場合は中心部も含めて空気に触れている面が多く、そこ全体で反応が起きているのだ。
つまり、炭全体がゆっくりと酸化反応を起こして発熱している感じ。

この状態はゆっくりしたものなので、火力はそこまで高くないけど長時間じっくりと焼けるというメリットがあるのだ。
これが炭火焼きでつかわれる所以で、火力が強すぎると食材の表面だけが焦げて中(中心部)は生の状態になってしまうわけだけど、弱めの熱でじっくり焼くので中心部まで火が通るのだ。
仲間で熱を通す過程で余計な脂も落ち、水分も適度に保持されながら焼けていくので、ふっくらと焼けるという寸法だよ。
焼鳥なんかでは重要だよね。
ステーキの焼き方だと、まずは表面を焦がして肉汁が漏れないようにし、じっくりと中まで火を通す、みたいなことをするわけだけど、基本的に肉類はゆっくりと被を入れた方が柔らかく仕上がるんだよね。

お焼香に使う熱源の炭はそのまま「焼香炭(しょうこうたん)」というものらしいいんだけど、これは1時間くらい燃え続けているみたい。
抱いた仏式のお葬式の読経は30~40分程度であることを踏まえると、ちょうどよい長さだね。
お通夜や葬儀が始まる前に火をつけておけば、よほどのことがない限りお焼香の間は熱源として使えるのだ。
お葬式はそれでよいのだけど、ずっとお香を焚き続けるような場合は炭だけだとつらいよね。
なので、高炉の中には電熱式のものもあるみたいなのだ。
アロマオイルを使う香炉なんかだと電熱式で下から水を温めて、その上にオイルを垂らすようなタイプが多いよね。

逆に、むかしは常にお香を焚いておきたいときは、お香自体を燃えるようにしていたのだ。
そう、お線香。
お線香は香料の成分を練ったうえで燃やしやすいように加工したもの。
これも炭と同じように炎を上げずにゆっくりと燃焼していくのだ。
浅草寺のようなお寺にはもくもくと煙が出ている「常香炉」は、参拝者が煙を浴びられるように常にお香を焚いているわけだけど、あれは常にお線香を焚いているのだ。
仏式のお通夜も寝ずの番でお線香を絶やさない、みたいなのがあるけど、やはり長時間の場合はお線香を焚き続けるというのが基本みたいだ。
作り方によるけど1時間くらい燃える続けるものもあるからね。

2025/04/19

紅白うお合戦

 先日、ファミレス型の回るお寿司に行ったのだ。
タッチパネルでも注文できるのだけど、そこで疑問が出てきたわけ。
サバやアジ、イワシなどの青魚が「白身魚」のカテゴリーの中に入っている!
え、光物って白身だっけ?
というわけで、ちょっと調べてみたのだ。

白身魚と赤身魚の違いはその名前が示すとおり、身の色。
人間でも、短距離走の選手はミオグロビンの少ない白筋(速筋)がメインで、逆に長距離走の選手はミオグロビンの多い赤筋(遅筋)が多いというけど、魚も同じみたい。
白身魚の多くはスプリンタータイプで、普段はあんまり動かず、エサを見つけた時や敵から逃げるときにさっと素早く動くような魚なのだ。
赤身魚の多くはマラソンランナータイプで、マグロやカツオのように常に泳ぎ続けていないとダメなやつ。
実際に白身と赤身は100gあたりのメモグロビン・ミオグロビンの含有量で区別するそうで、10mg以上が赤身、10mg未満が白身ということらしい。

白身魚の場合は、ミオグロビンが少ないという特徴のほか、コラーゲンが多いという特徴もあるのだ。
これは煮魚にしたとき決定的で、マグロなんかをねぎま鍋とかで煮て食べる場合、身はどちらかというとぱさぱさ下感じの仕上がり。
一方、カレイやキンメダイの煮つけの場合、コラーゲンが溶け出して煮凝りができるよね。
白身魚は熱で溶けだすコラーゲンが多いので加熱すると身を崩しやすいのだけど、逆に、それがあるからこそ、似て食べる場合は柔らかくなるのだ。
逆に、赤身魚の場合は、加熱すると水分が少なくなって固くなる傾向があるので、「火を入れ過ぎない」ことがおいしく食べるこつだったりするよね。

で、外観はそんな感じなんだけど、具体的に振り分けていくと、あ、そうなんだ、っていうのがいくつかあるんだよね。
一つはサケ・マス類。
身がオレンジ色なので赤身のようにも思えるけど、見は白身。
身がオレンジ色なのはエサとして食べているオキアミなどの甲殻類の持っている色素、アスタキサンチンによるもの。
ミオグロビンの色ではないのだ。
サケ・マス類は川を下って海に出て川に戻ってくる生体で知られるけど、河川残留型或いは陸封型といって海に下らずに淡水域に留まる連中もいるんだよね。
例えば、渓流釣りのヤマメはサクラマスの陸封型、逆に、塩鮭としてよく食べられるベニザケが陸封型になるとヒメマスになるのだ。
で、降海するサクラマスやベニザケは身がオレンジ色なのだけど、淡水域に留まるヤマメやヒメマスは身が白いんだよね。
かつ、その卵(イクラ)の色も違って、降海型はよく見慣れた赤い卵、陸封型は黄色い卵なのだ。
陸封型のサケ・マス類の卵は黄金イクラなんて呼ばれることもあるのだ。

問題の青魚だけど、一般的には赤身に分類されるのだ。
確かに味の刺身の色なんか見れば赤身だけど、サバって白くない?
でも、さっきのミオグロビン含有量で行くとサバも赤身みたい。
おそらく、血合いの部分は非常に色が濃く、そこはミオグロビンがたっぷりだから、全体を通してみると赤身になるっぽいのだ。
そう考えてみると、サバの味噌煮とカレイの煮つけってやっぱり違うよね。
サバは身がしっかり残っているイメージがあるし。
コラーゲン量も違うのだと思う。

境界線上に入るっぽいのがカジキの類。
カジキの仲間は回遊しているけど、海中屈指のスプリンターでもあるよね。
メカジキなんかは白身に分類されるけど、マカジキ、クロカジキなんかは赤身になるんだそうで。
確かに、ステーキのように焼いたときに、パサつくのとしっとりするのがあるけど、それはその赤身・白身の違いなのかもしれないなぁ。
カジキでひとくくりにしてどのカジキを買っているかあまり意識したことなかったけど、そこを見てみると面白いかも。

2025/04/12

かっふ~ん

 最近テレビのお天気コーナーでも「ヒノキ花粉」情報が出てくるようになったのだ。
前はスギ花粉以外はあまり触れなかったよね?
実際には、ヒノキもスギも同じヒノキ科で近縁種なので、スギ花粉にアレルギーのある人の多くはヒノキ花粉にもアレルギーを持つらしい。
で、スギ花粉が2~4月に飛散するのに対し、ヒノキ花粉はちょっとずれて3~5月に飛散するらしいので、あれ、スギ花粉は終わったはずなのに花粉症の症状が続くな、と思ったらヒノキ花粉もでした、ということらしい。
ボクは幸いまだ発症していないけど、つらい時期がさらに1か月伸びるとなるとねぇ。
確かにヒノキ花粉情報というのも求められているのかも。

スギ花粉とヒノキ花粉は、飛散の時期が少しずれる以外にも違いがあるわけだよね。
粒径はスギ花粉が30~40μm、ヒノキ花粉が28~35μmと、ヒノキの方が一回り小さい感じ。
また、スギ花粉は表面に突起があってとげとげしているのに対し、ヒノキ花粉はのっぺりとしているんだって。
そんな形状の違いで症状も異なると言われていて、スギ花粉が鼻の症状が強く出るのに対し、ヒノキ花粉は目や粘膜の症状が出やすいと言うよ。
とはいえ、アレルギーの症状は個人差が大きいのでそうも一概に言えないのだけど。
どちらも風に乗ると数kmから数十kmも飛ぶらしいので、都心部であっても影響は免れないのだ。
花粉から逃げようと思ったら、沖縄か、小笠原か、北海道か。
結構遠くまで離れないと無理なんだよなぁ。

そもそも花粉症が問題視されるようになったのは症状の原因が特定できるようになったからで、むかしから花粉が飛散する時期に鼻やのどの調子のおかしい人はいた、と言われているのだ。
ただし、その出現頻度はかなりあがっていて、その要因の一つは大気のよごれとも言われているよ。
花粉単独というのではなく、花粉とPM2.5のような大気中の微粒子が一緒に合わさるとアレルギーになる、という考え。
そういう面もあるかもしれないけど、黄砂のような微粒子はむかしから流れていているから、それだけでもないはず。
よくもう一つの要因と言われるのは、スギやヒノキの数が増えたから、というもの。

確かに、戦後の植林では、すぐに使える建材としてスギの植林がすすんだんだよね。
短期間でまっすぐな木材が得られるスギは建材という点では優秀なのだ。
ヒノキは成長に時間がかかるけど、性質的に建材としては最上級のもので需要も多いので植えられていったわけだよね。
これで我が国の人工的に管理している森林の多くがスギやヒノキになっていったわけ・・・。
一方で、伝統的な植林では、スギやヒノキばかり植えていたわけではないのだ。
森林資源として重要だったのは建材ではなく、むしろ薪炭の材料。
化石燃料が主体の今と違って、木炭が重要な燃料だったので、その材料となる木を植えたわけ。

代表的なのはクヌギやコナラ。
そう、どんぐりのなる木だね。
スギやヒノキは実を落とさないので森の動物にとってほとんど恩恵がないんだけど、これらの期は森の生態系を豊かにする効果もあったのだ。
逆に言うと、スギやヒノキを効率的に圧縮して植林すると、動物も寄り付かない「緑の砂漠」になってしまうのだ(>_<)
それに次いで重要だったのがアカマツ。
マツの仲間はまっすぐな木材はとりづらいけど、しなやかで加工しやすいので、梁の材料に使われたりしていたのだ。
かつ、松脂もとれるし、乾燥した松葉は着火剤にも使えるので、非常に便利だったのだ。
しかも、タカなどの猛禽類は枝ぶりから安定的に営巣できるからかアカマツに巣を作ることがおおいらしく、そういう面でも生態系に貢献しているのだ。
確かにスギやヒノキだと鳥が巣を作るのは難しそう。

今では花粉症対策として「花粉の少ないスギ」への植え替えなんてことが行われているけど、生物多様性の確保などの観点を踏まえると、かつての里山管理のような考え方を入れて、いろんな樹種を増えた方がいいんだよなぁ。
それには管理コストがかかるので、ペイするように工夫がいるわけだけど。
ドローンとかを使えば効率的にできるだろうし、もっとまじめに考えないといけない問題かもね。

2025/04/05

炭酸力

 スーパーの和菓子コーナーで、聞きなれない商品を見つけたのだ。
その名も「炭酸まんじゅう」。
草大福やら黒糖まんじゅうと一緒に並んでいた、黄色いおまんじゅうだよ。
その時点ではドンパッチでも入っているのか?、と思ったんだけど(笑)
よくよく考えてみたら、生地を発酵させずに重曹(炭酸水素ナトリウム)で皮を作ったのか、と思い至ったのだ。
でも、まんじゅうの皮ってそもそもどうなんだっけ。

まんじゅうの起源は中国。
中華風蒸しパンである「饅頭(マントウ)」や具入りの蒸しパン「包子(パオズ)」だよ。
日本では多くの地域でお米がとれるわけだけど、埼玉や群馬、長野のようなもともと稲作にあまりむいていない地域では代わりに小麦が栽培されていたし、温暖な吸収や四国は二毛作の裏作で小麦を作っていたんだよね。
その関係で日本でも小麦食の伝統があるわけだけど、そこに食い込んだのだ。
まんじゅうの場合、実は大陸から二系統が伝わってきていて、酒種を使って生地を発酵させる「酒まんじゅう」と発酵させずに重曹で生地をふっくらさせる「利休まんじゅう」の二つだよ。
酒まんじゅうの方が本場のものに近いけど、発酵させるのには温度管理が必要だし、時間もかかるので、重曹を使って簡単にふっくらした皮が作れるのはありがたいわけだよね。

炭酸まんじゅうがまさにそれで、別名を「田舎まんじゅう」と言うんだけど、それはまさに田舎で自分で作って自分で食べるようなまんじゅうだから、ということなのだ。
「利休まんじゅう」は、お茶文化と一緒に発達した薄皮まんじゅうだけど、これは作るのに技術がいるんだよね。
薄い皮であんこを包むのが難しいのだ。
なので、大福のように小麦粉を練って作った生地にあんこを入れて蒸すだけの田舎まんじゅうは皮があついのだま、田舎で食事として食べるものならその方がいいしね。
で、蒸さずに囲炉裏の灰の中で焼くと長野の名物「おやき」になるよ。
ちなみに、上州名物焼きまんじゅうはぐなしの酒まんじゅうを焼くらしい。
実は手間がかかっているみたいなんだけど、これは江戸末期に店で売る商品として開発されたものだから。
埼玉や群馬では小麦食がさかんで、うどんやらまんじゅうやらすいとんやらをよく食事として食べていたらしいので、まんじゅうを作っておいて冷たく硬くなったやつを焼いて食べていた、みたいなのが下地にあったんじゃないかとは思うけど。


この炭酸まんじゅうの特徴は、重曹の効果により皮が黄色くなっていて、少し苦みがあること。
重曹を加熱すると二酸化炭素が発生し、それによって生地がふんわりするわけだけど、二酸化炭素が抜けた後には水産間トリウムが残るんだよね。
これが苦みの原因だけど、市販されているベーキングパウダーの場合は中和剤も入っているので、この苦みが出ないように工夫されているのだ。
黄色い色も水酸化ナトリウムの効果で、小麦粉中に少しだけ存在しているフラボノイド色素が塩基性課で黄色く発色するから。
これはうどんは白いのにかん水(塩基性)を入れあ中華麺は黄色くなるのと同じ。
さらに、塩基性課ではグルテンの結合が強化されるので、ぷりぷりとした歯ごたえが出てくるのだ。
これがうどんと中華麺の弾力の違いなんだけど、実は、乾麺のパスタをゆでるときに少し重曹を入れると中華麺のような食感になるんだよね。
なので、生地を練る段階でなく、ゆでる段階でも作用するようなものなのだ。

今売られているような田舎まんじゅうは、小麦粉と砂糖を混ぜて水で練って重曹を加えてあんこを包んで蒸す、という工程。
そう、あんこのあるなしはあるけど、ほぼほぼ蒸しパンと同じなのだ。
あんこを包んだ蒸しパンと言っても過言ではないね。
ちなみに、あんこを入れる代わりにゆでたサツマイモをサイコロ状に切ったものを混ぜてから成形して蒸せば鬼まんじゅう。
戦前から食べられているとまんじゅうで、戦後になって食べられるようになると蒸しパンという名前になっているのかもしれないなぁ。