2014/03/08

隼町の主

報道によると、最高裁判所の竹崎長官は、年度内いっぱいで退官し、現在最高裁判所判事の寺田さんという人が後任になるそうなのだ。
最高裁判所長官の定年は70歳で、竹崎長官はまだ69歳なんだけど、健康上の理由から引退されるんだとか。
今度の寺田さんは、お父さんも最高裁判所の長官をしていたという裁判官サラブレッド!
はじめて司法の長に「世襲」が生まれたのだ(笑)

最高裁判所の長官は、内閣の指名に基づいて天皇が任命する憲法に規定されているんだけど、憲法上は、第6条第2項で「天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。」と書いてあって、長官とは言っていないのだ。
この憲法に言う「最高裁判所の長たる裁判官」については、裁判所法第5条第1項で「最高裁判所の裁判官は、その長たる裁判官を最高裁判所長官とし、その他の裁判官を最高裁判所判事とする。」と規定していて、ここではじめて「長たる裁判官=長官」という図式になっているんだって。
米国の連邦最高裁判所の長は「Chief Justice」で、その他の裁判官は「Associate Justice」なんだよね。
これがそのまま和訳された感じに近いのかな?

憲法制定に至る過程を見ていくと、最初は最高裁判所の裁判官は全員並びで区別せずに「内閣が任命する」となっていたようなんだけど、同じ三権の長である最高裁判所の責任者の任命権もすべてが内閣に帰属することが問題になって、その「長」だけを別格にし、内閣総理大臣並びで「天皇が任命する」と修正したんだとか。
なので、憲法で言っている「長たる裁判官」というのは任命権の帰属において他の裁判官と区別するだけの話で、三権の長として何か権限を与えたりしているものではないんだとか。
最高裁判所という国の機関の責任者という意味では、長官が最終責任者ではあるんだけど、実際に司法権の行使の観点で言うと、他の最高裁判所判事との間で優越関係はないそうだよ。
ちなみに、最高裁判所の判事を内閣が任命することについては、憲法第79条第1項で「最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。」と規定しているよ。

こういう建て付けなので、そのガバナンスも行政を司る内閣とは自ずと異なっているのだ。
内閣におけるその長たる内閣総理大臣は、内閣を構成する国務大臣を任命することができるのが大きな違い(憲法第68条第1項)。
また、内閣総理大臣は、閣議を主宰し(内閣法第4条第1項)、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出するとともに(同法第5条)、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督し(同法第6条)、主任の大臣の間における権限についての疑義を閣議にかけて裁定することとなっているのだ(同法第7条)。
すなわち、内閣総理大臣は内閣においてリーダーシップをとる形のガバナンスになっているんだ。

一方で、上記のように、最高裁判所判事はすべて内閣が任命することになっていて、長官には任命権がないのだ(>o<)
憲法や裁判所法でも、最高裁判所において長たる裁判官(=長官)が他の裁判官(=判事)に対して優越的な地位を占めるとの規定はないんだよね。
せいぜい全裁判官を構成員とする大法廷で裁判長をするくらい。
これもリーダーシップをとるというよりは、全員の意見をとりまとめるくらいの役割でしかないから、同じ三権の長でも行政と司法では大きく違っているのだ。

ただし、司法行政事務についてはちょっとだけリーダーシップがとれる枠組みになっているよ。
司法行政事務は、最高裁判所の全裁判官を構成員とする裁判官会議により行われる、とされていて、それを長官が議長として総括する、ということになっているのだ(裁判所法第12条)。
これだと、戦前の帝国憲法下における内閣総理大臣の閣議における役割に近いかな?
でも、「会議による」って明確に書かれているから、その事務の執行は合議体組織で意思決定する必要があって、長官に裁量が任されているわけではないんだよね・・・・。
行政権の行使も内閣が連帯して責任を負うことになっているけど(内閣法第1条第2項)、内閣総理大臣には国務大臣の任命権があるので、権限上は言うことを聞かない国務大臣を更迭することができて、かなり裁量が任される部分があるんだよね。
やっぱり人事権を掌握できていないという点で、最高裁判所の長官のリーダーシップは弱く、「首座の裁判官」程度のものでしかないんだよね。
ただし、最高裁判所においてそんなに長官がリーダーシップをとってやるべきことがあるか、という問題はあるんだけど(笑)

こうして長官人事に異動でもなければ興味が出なかったけど、なかなかおもしろい仕組みになっているなぁ。
日常生活だと、司法の現場たる裁判自体にそもそもなじみがないからね。
なおかつ、その裁判所のガバナンスなんて(笑)
今度の衆議院総選挙の時は、最高裁判所裁判官の国民審査でもう少しまじめに各裁判官の業績を読んでみようかな?

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