2017/08/05

もはや代用品ではない

欧米の人って、実は日本人よりカフェインに弱いと言われているんだよね。
それもあってか、カフェインレスのものがメニューにちゃんとあるのだ。
デカフィネイティッド(カフェインぬき)のカフェはどこにでもあるよ。
お茶についても、ハーブティー(infusion)を飲む人も多いのだ。
で、そんな中で、地位を上げた飲み物があるんだよね。
それは「代用コーヒー」。

名前のとおり、もともとは「代用」なので、本物がないから仕方なく飲むもの、というものだったのだ。
最初に出てきたのは18世紀のプロイセン。
当時のドイツはコーヒーの産地を植民地として持っていなかったんだけど、コーヒーの消費がどんどん上がっていたようなので。
その輸入超過のせいで、かなり外貨が失われてしまうことを憂えて、時のプロイセン王のフリードリヒ大王は、コーヒーの高い関税をかけ、庶民が飲めないようにしたのだ。
ここで発展したのが代用コーヒー。

その後、南北戦争時の米国や、第一次大戦下のドイツ(また!)、第二次大戦下の日本やドイツ(またまた!)などで代用コーヒーが飲まれるようになったよ。
いずれも、コーヒー豆が手に入らなくなったので、何か別のものでもいいからコーヒー的なものを飲みたいという発想なのだ。
それにしても、そこまで人々を引きつける嗜好品としてのコーヒーの魅力はすごいものだね。
でも、やっぱりコーヒーの代用なので、本物のコーヒーが手に入るようになると廃れていったのだ。
ところが、近年の健康ブームにより、カフェインを含んでいない代用コーヒーに注目が集まるようになったよ。
特に、大豆を煎って焙煎したものから作るものは、大豆の難い栄養価とも相まって、むしろ本物のコーヒーより高く売られているそうなのだ。
なんか、これだけ見るときなこをお湯に溶かしたもののようだけど・・・。

日本でもおなじみなのはタンポポ茶。
これは19世紀の米国で考案されたもので、刻んでから水にさらしてあく抜きしたタンポポの根を更に細かく刻んでから乾燥させ、それを煎って作るのだ。
コーヒー豆にも含まれるクロロゲン酸を含んでいるので、ちょっとコーヒーっぽい風味がするのだとか。
って、最初にタンポポの根を煎じようとした人がすごいけど(笑)
第二次大戦中はドイツでかなりメジャーだったんだって。
日本でもオーガニックにこだわってマクロビのお店とかによくあるよね。
ドングリを使ったものもあって、やはりアク(渋味のもとのタンニン)をよく抜いてから、乾燥させ、焙煎するのだ。
これもやはり第二次大戦下の日本とドイツで飲まれていたって。

欧州でメジャーなのは、「焙煎穀物飲料」としての代用コーヒー。
穀物を焙煎した煎じたものの総称で、麦茶なんかもこのカテゴリーに入るんだけど、代用コーヒーの場合は、多くは大麦を煎ったものにチコリーなどで苦味を足しているんだ。
普通に粉状のお湯に溶かすだけのものが売られていて、見た目には普通のインスタント・コーヒー。
ポーランドの引火・コーヒーなんかが有名だよ。
冷戦下の時代は、ソ連に与した東側諸国はどうしても物資が不足していたので、発展したんじゃないかな、と思うんだよね。
戦後だけどものがないところだったから。

でも、これが今や健康食品として注目を受けているのだ。
妊婦さんや子どもなどにはカフェインはよくないけど、やっぱりコーヒーが飲みたいという需要もあるんだよね。
もともとカフェインに弱い欧米の人からすると、夜にコーヒーを飲みたいけど、眠れなくなっちゃうから、と言う場合にもいいし。
というわけで、「代用品」という枠を越え、カフェインを含んでいないコーヒー的な嗜好品としての立場を築いているのだ。
たぶん、今の技術もあるから、味も調えられて、おいしくなっているというのもあるんだろうけどね。

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