2010/07/31

今年は緊縮?

今週、いよいよ民主党政権で始めてとなる国の予算のシーリングが公表されたのだ。
民主党政権は昨年9月に発足したので、概算要求までは自民党政権でやっていたんだよね。
その後に予算案の見直しなんてのをやっていたけど、最初から予算を作るのは今回がはじめてなので注目を集めているという分けなのだ。
で、注目されるのはよいけど、国の予算プロセスってそもそもどうなんだっけ?、というのが気になるところでもあるので、ちょっと勉強してみたのだ。

国の予算は、政府が予算案を作り、それを国会が承認して決まるのだ。
米国なんかだと予算は法律として作られる仕組みなので、大統領が予算教書でプロポーザルはするんだけど、実際の予算編成は、それを踏まえて議会スタッフが作るんだよね。
上下両院で可決したものに大統領が署名すると予算が歳出法という法律としてと成立することになるのだ。
これが米国の予算が政治主導で作られる、と言われるわけ。
ただし、実際には大統領府(ホワイトハウス)内にある行政管理予算局(OMB)が各省から出されている要求を精査して作られている予算教書は細部までよくできているので、そこに議会としての「味付け」をするという感じみたい。
とは言え、大統領直属の部局が予算を作るというのは、これまた日本と違うのだ。

一方の日本はどうかというと、憲法上、予算は法律とは別の扱いを受けていて、憲法第86条で「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」とあるので、必ず内閣が案を作成し、国会に諮る必要があるんだ。
法律の場合は議員立法が可能だけど、予算はそうはいかないわけ。
当然、国会の審議で修正はできるんだけど、多くの場合、政府の作った予算案がそのまま承認されるのだ。
ここは米国とはもっとも大きく異なるところだよね。

予算については憲法でもうひとつ規定があって、憲法第60条で衆議院の予算先議と優位性が規定されているのだ。
法案だと衆議院でも参議院でもどちらの議員から審議を始めてもよいのだけど、予算案については必ず衆議院から審議を始めないといけないのだ。
また、衆議院の議決の優先についても、法案と予算は扱いが違うんだよ。
法案だと閉会期間を除き、参議院が衆議院で可決された法案を受け取ってから60日以内に議決をしないと参議院が否決したと見なされ、さらにその後両院協議会でもまとまらなかったときは、衆議院で改めて議決をして、3分の2以上の賛成があれば法案は成立するのだ。
一方、予算はもっと簡便で、参議院が衆議院で可決された予算を受け取ってから閉会期間を除いて30日以内に審議をしないときは、衆議院で可決した予算が成立するのだ。
これは予算がないと国の仕事ができなくなることに配慮した規定と言われているよ。

ちなみに、日本の会計年度は4月から始まるけど、それまでに予算が成立しない場合は前年度予算をベースとした暫定予算が組まれるのだ。
すべての支出が止められると国の仕事がまったくできなくなるので、新しいことは始められないけど、定常的にしなければならないお仕事は前年度予算ベースでできるようにするという制度だよ。
これは経済全体が混乱するということもあって、さすがにここ最近では見なくなったけどね。

以上は政府が年末に予算案をとりまとめて国会に提出してからの話で、その前に政府部内で予算案をとりまとめる作業があるのだ。
その最初がこの前閣議決定された「平成23 年度予算の概算要求組替え基準について」。
いわゆるシーリングで、国が予算案を作るときの基本的な考え方や要求の上限を設定するものだよ。
これがないとみんな青天井で要求してしまって、予算が膨張の一途をたどり、後で調整もしにくくなるので、あらかじめ要求額はここまで、と一定の制限を設けるものなのだ。
自民党政権では「概算要求基準」と呼ばれていて、それが鳩山内閣ではいったん廃止されたんだけど、やっぱり上限を決めないと予算がふくらむ一方だということで、「概算要求組替え基準」という名で復活したのだ。

各省では、春くらいから予算要求に向けて検討をして、シーリングが示されたところから具体的に数字の調整に入るのだ。
で、それを8月いっぱいでまとめ、各省で作った予算要求が財務省でまとめられるのが概算要求。
この時点ではまだ予算の詳細がつめられていないので、あくまでもシーリングの枠内で大まかなところを示している、という意味で「概算」と言われるんだよ。
9月からは、財務省が各省にヒアリングをし、予算要求の査定が始まるのだ。
そうして財務省が調整した結果作られるのが政府予算案。
最近では財務省による調整だけじゃなくて、官邸主導の名の下に「特別枠」が設けられていて、各省が概算要求するときに減要求させて浮いた分を原資として、重点分野に再配分するのだ。
今回は、原則として対前年度1割減という深掘りで、それを原資とした「1兆円を相当程度超える額」を特別枠に設定し、政策コンテストを実施して国として重点的に対応すべき分野に予算を再配分するのだ。
政策コンテストが具体的にどういうものかはまだ決まっていないみたいだけどね(笑)

で、現在はシーリング枠が示されたところで、これから各省が要求の検討を行いい、財務省で概算要求がまとめられるわけ。
年末までの間に「政策コンテスト」があるわけだけど、その前に民主党代表選がはさまるから、けっきょくどうなるのかな?
秋以降の動向に注目なのだ!

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