2010/10/09

「学」の館

今回はノーベル賞が出たねぇ。
日本のお家芸とも言える有機合成の分野なのだ。
野依先生の研究成果もそうだけど、純粋な科学的な成果と言うだけでなく、生活に身近なものを作る化学工業プロセスにも使われている反応ということなので、まさに暮らしの中に生きている成果なんだよ。

で、今回気になったのは、ノーベル賞関連の報道の中にたまに出てくる日本学術振興会やら、日本学士院やら、日本学術会議などという組織。
同じような名前だけど、それぞれやっていることは違うのだ。
というわけで、普通の人はあんまり気にしないだろうこれらの組織についてちょっと調べてみることにしたのだ。

最初は日本学術振興会。
現在は文部科学省所管の独立行政法人になっていて、その前は、文部省の特殊法人。
科学研究費補助金(科研費)をはじめとした研究費による学術研究の助成(科研費については、文部科学省から事務委任を受けて交付事務などを実施しているのだ。そのほかにも、文部科学省からの委託を受けて様々な競争的資金等の業務を実施しているのだ。)や、学術の国際交流、研究者養成のための助成なんかを主な事業としているよ。
さらに、日本学術振興会賞や昭和天皇在位60周年を記念して創設された国際生物学賞などの顕彰もやっているよ。

もともとは、昭和7年に昭和天皇から御下賜金150万円をいただいた創設された財団法人日本学術振興会が前身。
これが昭和42年に特殊法人になり、特殊法人改革の中で現在の独立行政法人という形態になるのだ。
ちなみに、独法化するまでは、大学などと同じ「ac.jp」をURLに使っていたんだけど、独法化してからは「go.jp」になったんだよ(豆知識)。
イメージとしては、米国の全米科学財団(NSF)に近いかな?

この日本学術振興会が密接に連携をとることと、と法律上定められているのが次に出てくる日本学術会議。
これは内閣府に置かれた特別の機関で、日本学術会議法によって設置された「科学者の国会」なのだ。
もともとは文部省にあったんだけど、在り方の見直しが行われ、科学技術政策担当大臣のいる内閣府の所管に移ったんだって。
法律によれば、「科学者の内外に対する代表機関であり、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的」としている機関で、任期6年で再任なしの210名の会員と任期6年で再任ありの約2,000人の連携会員、それに事務スタッフで構成されているのだ。
もともとは終身会員制をとっていたようなんだけど、上がつまることもあって在り方の見直しをしたときに任期を定めたんだって。
ちなみに、現在の会長は、宮内庁の御典医としても知られる金澤一郎先生なのだ。

ここは人文・社会科学を含む全学術分野の科学者・研究者が一堂に会し、研究者コミュニティとしての意見をまとめ、政策提言する組織なんだよ。
米国で言うと全米科学アカデミー(National Academy of Science)に置かれている研究評議会(National Research Council)が近い機能かな?
科学技術基本計画策定に当たっての提言などをまとめるのが代表的な例だけど、最近では、ホメオパシーに関する会長談話なんかが注目を集めたよね。
前まではそんなに動きは活発じゃなかったように思うんだけど、前の会長の黒川清先生の頃から積極的に提言をするようになってきているのだ。
研究者コミュニティ、科学界の声を国に届けるというのは大事なことだよね。

これと似て非なるものが日本学士院。
こちらは正真正銘の日本のアカデミーで、英国の王立協会(Royal Society)や米国の全米科学アカデミーと同列のもの。
「科学者の殿堂」とも表される栄誉機関としての機能と、研究機関としての機能があるのだ。
日本の場合は研究会をやったり、科学誌を発行したりしているくらいだけど。
それと、日本学士院賞や恩賜賞などの顕彰もやっているよ。

文部科学省設置法と日本学士院法に基づいて設置される文部科学省の特別の機関で、もともとは福沢諭吉先生が初代院長を務めた東京学士会院が前身。
その後帝国学士院に改組され、戦後に日本学士院として再スタートしたのだ。
こちらは今でも終身会員で、定員は150名。
会員には、非常勤の特別職の公務員として年間250万円ほどの給与が支払われるのだ。
文化的な貢献をした文化功労者の年金は年間350万円なので額面上もちょっと少なくて、かつ、給与として支払われるので課税対象ということなのだ。
手取りはもっと少ないってことだね。

似た組織が日本芸術院。
どちらも上野にあるんだけど、日本芸術院は文部科学省設置法に基づいて文化庁に設置された特別の機関で、個別法のある日本学士院とは位置づけが違うのだ。
また、日本芸術院は日本芸術院賞や恩賜賞などの顕彰と、「芸術の殿堂」としての栄誉機関の位置づけは同じなんだけど、自ら研究活動などは行っていない点は違うのだ。
こっちは終身会員で定員は120名、こちらは年金なしだよ。
これが一番大きな相違点かもね。

というわけで、似たような組織だと思われがちだけど、それは名前だけどけっこう役割は違うのだ。
こうやって知ってから報道とかで名前を目にするとまた印象が違ってくるかも。
周りの人にも教えてあげよう♪

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