2010/12/04

New Islandからの贈り物

この時期はまだ銀杏並木の下でギンナン臭がするねぇ(>_<)
落ち葉の下に最後に残されたギンナンが隠れていたりするから、踏まないように気をつけないといけないのだ!
そんなギンナンのにおいをかいでいると思い出すのがくさや。
日本でもっともくさい食べ物のひとつだよね。

一般には伊豆諸島、中でも新島の名産と言われているのだ。
八丈島のものもメジャーだけど、新島から製法が伝わった、と言われているようなので、やはり新島が元祖みたい。
くさやは干物の一種で、「くさや液」と呼ばれる独特な調味液に漬けてから補干されたもの。
そのにおいから発酵食品のように思われがちだけど、発酵しているのはその調味液であって、くさや本体ではないのだ。
くさや干物なので、乾燥させることで水分含有量を少なくして雑菌の繁殖を抑制した保存食。
むしろ菌は繁殖していないんだよ。

そのくさや液というのは、長年にわたってくさやに使う魚が漬けられてきた塩水で、中には漬けた魚からいろいろな成分が溶け出し、それが発酵しているのだ。
独特の茶褐色も、あの強烈なにおいも発酵と熟成によるもの。
アミノ酸や核酸が多く含有されているので、うまみも凝縮されているんだけど、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの有機酸やそのエステル類が「臭さ」のもとになっているんだ。
そう言えば、ギンナンの臭さも酪酸などの有機酸由来だから、確かににおいが似ているはずなのだ。
もともと魚の成分が溶け出した塩水なので、ヴェトナムのニョクマム、タイのナンプラーなどの魚醤に近い風味なんだけど、もっと強烈みたい。

これはくさや製造業者が代々受け継いでいるもので、塩分濃度や漬けてきたさなかの種類などで多様性があるんだって。
まさに焼き鳥のたれと同じだけど、においがあるから大変だよね(笑)
ぬか床のように一般家庭でも受け継がれているところがあるんだとか。
それって、自宅でくさやを作っているってことだよね。
すごい世界なのだ!

発祥は詳細にはよくわからないみたいだけど、もともとは近海でとれる魚を保存食にするために塩水に漬けてから干物にしていたんだけど、塩が貴重品だったために、同じ塩水を何回も使い回したらしいのだ。
その結果、塩水には魚の成分がダシのように溶け出し、それが発酵し、熟成することでくさや液の原型ができたというわけ。
すでに江戸時代にはくさやが名物になっていたようだから、相当歴史があるんだね。
ちなみに、新島は米がほとんどとれないので、代わりに塩で年貢を納めていたんだけど、むかしは塩田法で手間ひまをかけて塩を精製しなければいけなかったので、特産品とは言え非常に貴重なものだったそうだよ。

実は、くさや液さえあればくさやを作るのは意外と簡単。
ムロアジやトビウオ、シイラなどの魚を開き、内臓や血合いを除去してていねいに洗い、十分に水気を切ってからくさや液につけるのだ。
これは一昼夜ほど漬け込んでしっかりをくさや液を浸透させるみたい。
漬け込んだ後はまたていねいに洗ってから天日干し。
最近は乾燥機なんかも使うようだけど、干物と同じで天日干しの方がおいしくなるらしいのだ。
ただし、あまり乾燥させすぎると固くなりすぎるので注意が必要。
実際に自分で釣った魚を干物にする人もいるから、何代かにわたって漬け込む塩水を使い続ければくさや液ができあがるかも(笑)

くさやはそのままでもくさいので真空パックや瓶詰めで売られているけど、これを焼くとさらににおいが拡散するのだ・・・。
最近では普通に魚を焼くのもはばかられるくらいだから、くさやを焼こうものなら大変だよね。
時と場所を選ばないと!
でも、好きな人は好きなんだよねぇ。
ちなみに、くささを数値化してみると、世界一くさいと言われる発酵缶詰のシュールストレミング(ニシンの塩漬けを缶の中で発酵させたもの)や韓国のエイを発酵させたホンオフェ(強烈なアンモニア臭)に比べるとまだまだちょろいものみたい。
だったら自宅で作って、自宅でも食べられるかな?
ボクはあえて挑戦しないけど。

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