2011/01/29

プロラタで議席も配分

与謝野大臣の入閣でにわかに問題になっているのが、「自民党の比例代表枠を使って復活当選したのに民主党政権で大臣になるのはいかがなものか」というもの。
でも、この話を本当に理解するには日本の選挙制度の比例代表制について少しは知らないとわからないことも多いので、ちょっと調べてみたのだ。
これがまた複雑なんだよね。

比例代表制は選挙制度の一つで、候補者個人というよりも政党ごとに投票して、その得票率に応じて議席を配分する方法だよ。
日本ではかつては参議院だけだったけど、衆議院でも、一つの選挙区から複数の当選者の出る中選挙区制から、一つの選挙区からは一人の当選者しか出ない小選挙区制に移行したのに伴って導入されたのだ。
これは、小選挙区制の場合、接戦だった場合に「死に票」が多く出る弊害をカバーすることが目的なのだ。
候補者が多くてどんぐりの背比べの得票になると、3~4割の得票率でも当選することがあるんだよね。
逆に言うと、6~7割の選挙民はその人のことは支持していないのだ!
これだと民意がきちんと国政に反映されるか、という点で疑念があるので、比例代表制が導入されることとなったんだ。

参議院の場合は全国区比例で、特にブロックは定めずに日本全国の国民は横並びで政党名又は立候補者名で投票するのだ。
かつては「拘束名簿方式」というもので、あらかじめ政党ごとに候補者の順位リストがあって、そのリストの上位者から当選していくという方式。
平成13年からは「非拘束名簿方式」というもので、あらかじめ順位は決めておかず、政党として獲得した票数と各立候補者が獲得した票数で政党ごとの議席を配分し、個人名での得票数の多い立候補者から当選させていくのだ。
事実上の全国区制(日本全体を一つの選挙区として行われる選挙)の復活と言われることもあるけど、個人での得票が少なくても政党の得票が多ければ当選できるので、必ずしも個人で票を稼ぐ必要はないんだよね。
個人での得票数は党内での順位決めだけなので、全国区制ほどは大きくきかないよ。
逆に、「客寄せパンダ」的な圧倒的に知名度と人気のある候補者がいると、その人の得票の「おこぼれ」で他の候補者が当選できるのだ。

衆議院の場合はブロック制で、全国をいくつかのブロックに分け、そのブロックごとに議席数を割り振っているのだ。
さらに、衆議院では「単純拘束名簿方式」を採用していて、あらかじめ政党が候補者の順位を決めていて、その順位に従って当選者が出ていくんだけど、複雑なのは、ここに復活当選の仕組みが組み込まれているのだ。
具体的に言うと、衆議院の比例代表の場合、小選挙区の立候補者を比例代表の名簿にも載せることができるのだ(ただし、公職選挙法に定める政党の要件を満たしている政党からの立候補者に限る。)。
このとき、重複して立候補している人は同一順位でリストに掲載することもできて、その場合、小選挙区での「惜敗率」に応じて当選順位を決めるんだ。
惜敗率というのは、選挙区における最下位の当選者の得票に対する当該候補の得票の割合で、要は当選までどこまで迫っていたかを数値化した指標。
現在は小選挙区制なので、その選挙区でどこまで接戦できたかの指標になっていて、上記の「死に票」をできるだけ少なくするための工夫になっているんだよ。
接戦で負けた重複候補者は比例復活できるというわけ。
与謝野大臣の場合、選挙区の東京1区では海江田国土交通大臣に負けたんだけど、比例代表の東京ブロックで重複立候補していたので、自民党の議席の枠で復活当選したのだ。

もともと公職選挙法では第87条で重複立候補の禁止を定めていて、同法第86条の2第4項で衆議院の比例代表の場合は第87条の規定にかかわらず重複して比例名簿に重複立候補者を入れることができると規定されているんだ。
イメージは敗者復活戦だよね。
比例復活は恥ずかしいからと重複立候補しない人もいるけど、従来中選挙区制で票を分け合ってきた人が小選挙区制になってあまり強くない地域に割り振られた場合の優遇措置としては機能するのだ。
そもそも森元首相が導入した「コスタリカ方式」で小選挙区と比例で交互に出てもらう、という方法もあるんだけど、これも不人気で最近はあまり採用されないよね(笑)

ちなみに、比例代表は基本的には政党に対して配分された議席なので、当該議員がその政党を離れたときは議席がなくなるのだ。
でもでも、公職選挙法の第99条の2第1項の規定では、当選時に当該比例区に存在した他の政党に移籍する場合に当選が無効になるとなっているので、無所属になったり、新党を設立したり、その比例区には立候補者を出していなかった政党に移る場合は対象外でやめなくてよいのだ。
それが今回問題になっている「法の抜け穴」と言われる与謝野大臣の離籍の方法なのだ。
最初は新党「立ち上がれ日本」を設立するので自民党を離れたので議員はやめなくてOKだし、現在も無所属議員として民主党会派に合流しているだけなのでやっぱり議員を辞める必要はないのだ。
ただし、あくまでも法令上の話であって、道義的にどうか、というのが問題になっているのだけど。

ついでに、比例代表制でよくわからないのが議席の配分方法。
ニュースなんかでは「ドント方式」と聞くけど、これがまたわかりづらいんだよね。
公職選挙法では、第95条の2で衆議院の比例代表の配分方法を、第95条の3で参議院の比例代表の配分方法を定めているけど、これが難解!
例えば、第95条の2の第1項は「衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、各衆議院名簿届出政党等の得票数を一から当該衆議院名簿届出政党等に係る衆議院名簿登載者(当該選挙の期日において公職の候補者たる者に限る。第百三条第四項を除き、以下この章及び次章において同じ。)の数に相当する数までの各整数で順次除して得たすべての商のうち、その数値の最も大きいものから順次に数えて当該選挙において選挙すべき議員の数に相当する数になるまでにある商で各衆議院名簿届出政党等の得票数に係るものの個数をもつて、それぞれの衆議院名簿届出政党等の当選人の数とする。 」と書いてあるんだけど、まったくわからないよね(笑)

簡単に言うと、1、2、3・・・と順次割っていって、その商が大きい順に議席を割り振っていくのだ。
表で考えるとわかりやすいんだけど、例えば、以下のようになるわけ。





































議席数の配分例

うさぎさん党日本たぬき党新党アロワナコウモリの会
÷1400300200100
÷2200150100
÷3133100
÷4100


この例だと全体で1,000の有効投票があった場合に6つの議席を配分しているのだけど、当落の基準は100で、「うさぎさん党」は3で割ってもまだ100を越えているので3議席、「日本たぬき党」は2までなので2議席、「新党アロワナ」は1以外では100を割り切るので1議席、「コウモリの会」に至ってはすでに100票しかないから議席なしになるのだ。
ちなみに、この例で配分すべき議席数が半分の3の場合は当落の基準が200になるんだけど、「うさぎさん党」の「÷2」と「新党アロワナ」の「÷1」が並んでしまうんだよね。
こういうときは、公職選挙法の規定に従って「くじびき」で当選者を決めるのだ。
小選挙区でも同じ得票数だとくじ引きになるのと同じだよ。

また、あまりないんだけど、、思ったより得票が伸びてリストに掲載した人数以上に議席が割り振られることもあるんだよね。
特に衆議院は重複立候補があるので、小選挙区で当選が増えるとそういう事態が生じるのだ。
その場合、次に割ったときの商が大きい政党に議席が割り振られてしまうんだよね・・・。
上の例だと、「うさぎさん党」は小選挙区との重複が多く、比例の名簿にはすでに2名しか残っていなかったとすると、第7位で並んでいる「うさぎさん党」の4人目、「日本たぬき党」の3人目、「新党アロワナ」の2人目、「コウモリの会」の1人目からくじ引きで当選者を決めることになるのだ。
実際には、小泉政権下で衆議院員総選挙に大勝したときに、自民党は候補者が不足して、1議席社民党に割り振られたのだ。

というわけで、比例代表というのはかくも難解で奥が深い制度なんだよね。
他の国ではまた違う方式の比例代表制があって、まだまだ広がりがあるのだ。
よりよく国民の声を政治に反映させようと工夫されてきた跡なんだよね。
そう考えると、よくぞここまで考えた!、ともちょっとだけ思うね(笑)

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