2012/01/21

乾かして固めよう

報道でびっくりしたんだけど、まだ震災から1年たっていないのに、汚染コンクリートってかなり広がっているんだね!
それだけ復興需要で資材不足になっているということなのかも。
前に海砂を使った質の悪いコンクリートの問題があったけど、これは強度的にはほとんど問題ないから、まさにその放射線をどれだけ許容するかの問題なんだよね。
レベルが高い場合は、建てたばかりでも撤去しなくちゃだからね・・・。

で、これで気になるのは、コンクリートがなぜ汚染されたか?、だよね。
もともとコンクリートというのは、単純に言うと砂利や砂にセメントと水を混和したものを固めたもの。
この砂利や砂が福島の汚染された地域由来のものだったのでコンクリ自身も汚染されることになったのだ。
おそらく放射性セシウムなんかが付着していたんだろうね。
一度水で洗うなりすれば容易に除染できるし、汚染されていない砂利や砂を使えばいいだけなので、今後はきっと大丈夫なのだ。
問題は、すでに固まってしまったコンクリートをどう処理するかだろうね。

コンクリートの固まる前のものがいわゆる「生コン」。
これを型に流すと徐々に固まっていくのだ。
人工石としていろんな形に成型できるというのが魅力なんだよね。
一方、圧縮する力には強いものの、引っ張る力には弱いので、建材として使う場合は鉄筋を入れた「鉄筋コンクリート」にして補強する必要があるんだ。
木材に比べれば耐火性にも優れているし、現代の建材としては主流だよね。

そのコンクリートを固める接着剤がセメント。
高分子系の接着剤は重合して固まるときに回りのものを巻き込んで接着するわけだけど、セメントは乾いて固まるときに回りのものを巻き込むのだ。
「乾く」というのもただ乾けばいいだけじゃなくて、伝統的なセメントである石灰を使う場合は、二酸化炭素の存在が重要なんだよ。
石灰を用いたセメントは古代エジプトから連綿と使われている技術なんだけど、これは、水酸化カルシウムは水に溶けるけど、炭酸カルシウムは水に溶けない、という性質を利用しているのだ。

石灰石を高温で加熱すると、二酸化炭素が発生して生石灰(CaO)が残るのだ。
これを水と反応してできるのが消石灰(Ca(OH)2)。
これは水によく溶ける化合物で、溶けるときに熱を発生する性質があるんだ。
この性質を利用して、乾燥剤として使われたり、お弁当を温めるのに使われたりもするよ。
この消石灰=水酸化カルシウム水溶液が空気中の二酸化炭素を吸収すると、炭酸水素カルシウム(重炭酸カルシウム、CaHCO3)ができるのだ。
さらに二酸化炭素との反応が進むと、炭酸カルシウム(石灰、Ca(CO3)2ができるんだ。
ここで重要なのは、炭酸水素カルシウムは水に溶けるけど、炭酸カルシウムは水に溶けないということ。
小学校の理科実験で使う石灰水は炭酸水素カルシウムの水溶液で、ここに二酸化炭素を通すと水に溶けない炭酸カルシウムが生じて白く濁るのだ。

セメントの場合は、水酸化カルシウムのうちは水溶液になっているわけだけど、徐々に二酸化炭素を吸って炭酸カルシウムができてくるとその部分が固体として固まってくるのだ(これを「気硬性」と言うのだ。)。
そうして炭酸カルシウムの結晶ができていくうちに、炭酸カルシウムが軽石のように網目状の構造で固まっていくんだ。
で、コンクリートの場合はその間に砂利や砂が巻き込まれているというわけ。
石灰だけだとすぐぱりぱりはがれて強度が弱いけど、そこに砂利や砂といった骨材を加えることで建材としてのコンクリートになるのだ。

その中間くらいのが、モルタルや漆喰。
モルタルはセメントに砂を加えたもので、かつては日本の住宅でも外壁によく使われていたし、欧米ではれんがとれんがを接着する目地材として使われていたのだ。
日本が伝統的に使ってきた漆喰は、海藻(フノリ)を炊いて作ったのりで麻の繊維のくずと消石灰を混ぜたもの。
木材建築が中心だった日本では、木の骨組みに土壁が基本なんだけど、その壁面に不燃材の漆喰を塗ることで建物の耐水性・耐火性を上げることができたのだ。
それをきれいに薄く塗るのが左官の技術だったわけだよね。
また、土壁に塗って補強したり、漆喰の上に絵を描いて装飾に使われたりしたのだ(海外のフレスコ画や日本の古墳の壁画なんかが漆喰に描かれたものだよ。)。
海外でも接着剤としていわゆる漆喰が使われていたのがわかっているんだけど、日本の海鼠塀のようなきれいな白い漆喰はなかったみたい。

今では石灰系だけでなく、様々な化合物を使ってセメントやコンクリートを作っているようだけど、原理的には似たようなものなのだ。
ま、価格の安さや手法の容易さからまだまだ石灰が使われているんだけどね。
より耐火性を上げたい、水を使わずに固めたい、強度を上げたいとかなると、ちょっと効果になるけど特殊なセメントを使うみたい。
そういう意味では、セメントは古くて新しい建材なんだよね。

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