2012/02/18

さわやかな香りは春の訪れを告げる

2月の和菓子といえばうぐいす餅。
あざやかな緑色がきれいだよね。
そして、この時期になると出てくるのが桜餅♪
うぐいすもちもよいけど、この桜餅のさわやかな香りが好きなんだよね~。
塩漬けの葉を使っているだけだから、本来は春でなくてもよいんだけどね(笑)

いわゆる桜餅には2種類があるのだ。
江戸発祥の桜餅はクレープ状の焼いた生地に餡をあさみ、それをさらに桜の葉の塩漬けで来るんだもの。
隅田川沿いの長命寺発祥の菓子と言われているのだ。
長命寺桜餅は今でも名物で、桜の葉が3枚使われていることで有名だよ。
葉っぱは食べる人と食べない人がいるけど、食べた方が香りが出て、味わい深いのだ。
長命寺桜餅のように3枚あるとちょっと多いけど・・・。

この長命寺、もともとは常泉寺というお寺だったのだ。
おそらく寺名の由来は境内にあるわき水から。
ところが、このわき水で名前が変わるんだよね。
3代家光公のとき、近くで鷹狩りをしていた将軍家光公は不意に具合が悪くなってしまうのだ。
ところが、このわき水を飲んだところたちどころに回復したので、その水を「長命水」と名付け、お寺も長命寺と名前を改めたのだ。

8代将軍の吉宗公の時代になると、隅田川沿い(墨堤)に桜の木が植えられるのだ。
桜の木は水を浄化するとの俗信があって、隅田川だけでなく、神田上水や玉川上水沿いにも桜並木が造成されたんだ。
これがきっかけで江戸では花見のために行楽に行くことが盛んになり、そこからまた新たな文化が生まれることになるんだよ。
で、向島は長命寺門前のお菓子屋さんだった山本新六さんという人は、この桜を何か使えないものかと考案したのがこの桜餅。
行楽客に好評で、一気に江戸名物となったのだ。
さらに、江戸も終わりに近づくと、蜀山人こと太田南畝さんほかが「隅田川七福神」を定めると、ますます不動の人気となり、今に至るようだよ。

で、この江戸発祥の桜餅は、小麦粉又は上新粉などの粉をといた生地に食紅などで淡い色をつけ、焦げ目がつかない程度に焼くのだ。
むかしは餡を挟んで桜の葉で巻いてからさらに蒸したみたい。
これとは対照的に、おはぎのようになっているのが関西の桜餅。
道明寺粉に色をつけて蒸してから餡をくるみ、それをさらに桜の葉の塩漬けで巻くのだ。
江戸流はすぐに葉っぱがはがせるけど、関西風はぴったりとくっついているのできれいにははがれないよ。
これは食べる方がスタンダードってことかな?

道明寺粉は、糯米を水に浸してから蒸し上げたものを天日干しにした糯米の干飯を荒く砕いたもの。
いわゆる糯米で作ったアルファ化米だよね。
もともとは大阪藤井寺にある道明寺で考案された保存食だよ。
つぶつぶともちもちが混在した独特の食感だよね。
ボクは結構好きなのだ。
ちなみに、道明寺粉には砂糖水を加えてから蒸すそうなので、餡が入っていなくても甘いみたいだよ。

一般には、江戸で好評を博した桜餅をまねて関西の桜餅が生まれたと言われているんだけど、これには「本家・発祥」争いもあって、関西側は、長命寺桜餅が出る前から大阪には桜餅があった、とする南方熊楠さんの説を主張したりしているよ。
もともと桜の葉は使っていなかったようだけど、似たようなお菓子はあったみたい。
椿餅という餅粉を蒸して団子状に丸めたものを椿の葉で包んだもので、これは平安時代に中国から伝わったんだって。
でも、桜の葉に包むことで香りを移す、というところが桜餅のミソだよね。
植物の葉で包むだけなら笹団子というのがあるし、これはそっちに近いような気もするのだ。

桜餅に使われる桜の葉はその辺にある桜の葉を使っているわけではなく、きちんと適したものを使っているのだ。
それは葉が柔らかく、表面の毛も少ないオオシマザクラの葉。
現在流通している桜の葉の塩漬けのほとんど(全国シェア約7割)は伊豆半島の松崎町産らしいよ。
虫食いが出ないようにするのは手間がかかりそうだよね・・・。
ちなみに、あの独特の香りはクマリンという物質由来。
生体中ではクマリン酸配糖体という形で液胞内に貯蔵されていて、そのままではにおいはしないんだけど、葉が破損したり、塩漬けにされたりすると液胞から出てきて、さらに細胞内の控訴で加水分解されてクマリンが生じてくるので香りがするようになるのだ。
食品添加物としては認められていないので、似たような物質を使うか、あくまで桜の葉の塩漬けでに香りを移すかのどちらかしかないみたい。

今では桜というとソメイヨシノだけど、染井の地(今のJR駒込駅付近)でソメイヨシノが生まれるまでは、桜と言えばオオシマザクラが主流だったのだ。
このオオシマザクラは様々な園芸品種のもとにもなっているんだよ。
でも、江戸時代で言えば、その辺にある桜を使っていたのかもしれないね(笑)
それにしても、生葉では香りがないわけで、最初に塩漬けにしてみたのが工夫だよね。
ほどよい塩味で引き立つ甘み、その甘みを抑えるちょっと刺激のあるさわやかな芳香。
桜餅っていうのは本当によくできたお菓子だと思うよ。

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