2012/03/03

実はそんなに悪くはないのかも

ラーメンはどうしても脂っぽいから敬遠しがちなんだけど、どうもこってり系がもてはやされているよね。
「背脂ちゃっちゃ」とか言ってゼリー状の脂がスープにぷかぷかと浮いているのだ。
確かに東アジア文化圏では肉や魚の「脂」をおいしいと感じる文化があるけど、個人的にはだんだん体が受け付けなくて・・・。
もともとは東アジアのモンゴロイドは寒冷気候に順応する際、体に脂肪を蓄えやすい体質になっていて、そういうのもあって脂を好むんだよね。
欧米などの肉食文化ではでは脂身の少ない赤身が好まれるのとは対照的なのだ。

この背脂と呼ばれているのは文字どおりブタの背中にある脂肪のことで、固まりの脂肪をぶつ切りにして水でじっくりとゆでるとだんだんと脂が融けてきて、とろとろになるのだ。
まだ多少固まりが残る状態で使ったり、完全にとろとろになるまで煮込んだり、使い方はいろいろ。
ラーメンに乗っているチャーシューは主に背中の肉であるロース肉を使うので、ブロックで買ってくると脂もついてくるんだよね。
おそらくそれを利用したのが始まりじゃないかと思うのだ。

ロースというのは日本独特の呼称で、裸でロースというと背中の肉(人間で言うと僧帽筋や広背筋)、、肩ロースは方の肉(人間で言うと三角筋)、わきのあたりがリブロース(人間で言うと肋間筋)のことだよ。
英語で言うとロインが近いんだけど、ずれているところがあるようなのだ。
この部分は適度に脂ものっているけど、バラ肉ほどではなく、とんかつやポークソテーなどに使われるのだ。
赤身で筋がなく柔らかい高級品のヒレ肉(人間で言うと大胸筋)に比べると庶民的だよね(笑)
とんかつの肉を見ればわかるように、分厚い脂が筋肉のまわりについていて、それを取り外したところが背脂(精肉されている状態では少し脂が残されている状態で、その外側にもっと脂肪がついているのだ!)。

この背脂をゆっくり熱して油脂だけを取りだしたのがラード。
結合組織などが油かすで残るのだ。
じっくり脂を落としながらあぶり焼きした脂身みたいな状態で、鶏皮の焼き鳥のようなものだからおつまみなんかにされることもあるよ。
なので、ラーメンの背脂はほとんどラードなのだ。

一般に脂肪酸は不飽和度が上がるほど(分子内に二重結合が増えるほど)融点が低くなるんだけど、植物油が不飽和脂肪酸を多く含み、常温で液体の「油」であるのに対し、獣脂は飽和脂肪酸が多く、常温で固体の「脂」なのだ。
馬由来の馬油が比較的融点が低くて体温に触れただけで融けるけど、牛脂のヘットはフライパンで熱しないと融けないよね。
なので、ラードも熱々のラーメンスープに入っていながら多少形が残っているのだ。

ラードの特徴としては、ほとんどが飽和脂肪酸なんだけど、少なからず入っている不飽和脂肪酸のほとんどが一価不飽和脂肪酸と言われる分子中にひとつだけ二重結合があるような脂肪酸なのだ。
オリーブ油に多く含まれるオレイン酸なんかなんだけど、一価不飽和脂肪酸は酸化されにくいので、熱をかけて抽出しても大丈夫だし、揚げ物に使っても劣化しづらいのだ。
植物油の場合は分子中に二つ以上の二重結合を含む多価不飽和脂肪酸が多いので、熱をかけるとすぐに酸化=劣化してしまい、いやなにおいがしたり、色が黄色くなったり、ねっとりと粘性が高くなったりするのだ(>o<)

ラードが揚げ物に使われるもう一つのメリットとしては、冷めてもさくさくの状態が維持できる、というのがあるんだよね。
家庭で揚げるテンプラやフライはすぐにべちゃっとなってしまうけど、これは植物油で揚げるからなんだよね。
どうしても液体の植物油が衣の中に残ってしまって、空気中の水分を吸って湿ってくるとへたってきちゃうんだよね。
ラードの場合は冷めると固体になるのでその分だけさくさく感が維持されるのだ。
沖縄銘菓のちんすこうも生地にラードを入れることでさくさく感を出しているんだよ。

このラードの代用品がショートニング。
植物油の中の多価不飽和脂肪酸に工業的に水素付加することで、一価不飽和脂肪酸や飽和脂肪酸に変換するのだ。
すると、常温でもクリーム状のショートニングとなるわけ。
クッキーなどのお菓子によく使われているよね。
一見ラードと同じようだけど、植物由来なのでよりヘルシーに見えるけど、実はそうではないのだ!
ラードに含まれる一価不飽和脂肪酸はほとんどすべてが「シス型」と呼ばれる「└┘」くるっとカーブさせた形。
一方、ショートニングには「トランス型」と呼ばれる「└┐」というジグザグ構造のものが混ざっているのだ。
これが今話題のトランス脂肪酸というやつで、コレステロールを高めたり、悪さをすると言われ始めているんだよね(ToT)
米国ではトランス脂肪酸の規制が始まっているくらいなのだ。

かつてはラードは悪の代名詞のように言われていたけど、中に含まれているオレイン酸などの一価不飽和脂肪酸はむしろコレステロールを下げる働きもあるし、ショートニングに比べると健康的だと考えられるようになってきたのだ♪
とは言え、摂りすぎれば中性脂肪は増えるので注意しなくちゃだけど、そこまで体に悪いわけでもないみたい。
量に気をつけさえすれば、ショートニングやマーガリンのようなトランス脂肪酸を含む製品よりはましなのだ。
というわけで、これからは安心して背脂系のラーメンが食べられるね。
コンビニのマーガリンをはさんだパンや、さくさくのクッキーよりはましかもよ(笑)

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