2012/03/17

イスカンダルまではどれくらい?

震災とそれに続く原発事故から1年。
まだまだ復興には課題が多いね。
そんな中でも将来にわたって気にしなくちゃいけないのは放射能の問題。
宇宙戦艦ヤマトの世界だと、放射能を除去できるコスモクリーナーをとりにイスカンダルに向かうのだ。
そんなのがあればいいのに!(原理的にむずかしいけどね・・・。)

そんなイスカンダルまでの距離は148,000光年!
光速で進んでも15万年かかる距離なのでワープ航法を使うわけ。
でも、こういう遠くの星までの距離はどうやって測るのか。
きちんと推定する方法があって求められているんだよ。

もっとも簡単な距離の測り方は、自分で歩いてみて、かかった時間で距離を推測するというもの。
方向が加われば位置も特定できるよね。
これと似たような方法でやられているのがレーザー測距。
月などの比較的地球に近い天体で、光を反射するものに使えるのだ。
原理は簡単で、レーザー光を照射し、その反射光が帰ってくるまでの時間を計測して、そこに光速をかけて距離を求めるというもの。
遠くになればなるほど散乱が多くなって反射光が弱くなるし、もともと大気による屈折・散乱なんかもあるから何度も継続して計測しないと正確には測れないのだ。

火星などの地球に近い惑星はレーザーで距離が測れるんだけど、太陽の場合は光を反射してくれないので測れないのだ(>o<)
そこで使うのが計算式。
惑星の公転運動はケプラーの法則(角運動量保存の法則)に従うので、地球以外の惑星までの距離がわかっていれば、太陽までの距離が計算で求められるのだ。
古典的には、惑星の動きをつぶさに観測し、複雑な幾何学的計算をして太陽と地球、他の惑星の位置関係を推測したんだよ。
その積み上げがあるから、太陽までの距離(=1天文単位)が推定できるのだ。

この太陽までの距離=1天文単位をもとに、もう少し離れた位置にある恒星までの距離も計測できるんだ。
それは三角測量を使ったもの。
地球は太陽のまわりを公転しているので、恒星の見え方は季節的に変動しているのだ。
ちょうど公転面を底辺とした円錐状になるよ。
そうすると、春分と秋分など、公転面の端と端の位置関係でそれぞれ恒星の見える角度を計測すると、その円錐の先っぽの分だけずれることになるんだよね。
それが年周視差と呼ばれるもので、これが正確に測れれば、三角関数を使って公転面の半径=天文単位を使って恒星までの距離が計算できるのだ。

年周視差が1秒(1度の3,600分の1)のときに3.26光年(これを1パーセクと言うそうなのだ。)なんだって。
でも、この1秒なんて角度を正確に測ることは難しいんだよね・・・。
実際にケプラーさんがケプラーの法則を導く基になった詳細な天文観測データを残したティコ・ブラーエさんは、この年周視差が「観測できない」ということをもって地動説を否定したくらい。
当時の観測技術では仕方がないけど、ケプラーさんのようにもう少し近い惑星の動きに注目すると地球が公転していることがわかったんだけどね(>_<)

年周視差は遠くなればなるほど小さい値になるので観測が難しくなるのと、観測対象の恒星も実は動いているという事実があるので、遠くの恒星になるとブレが大きくなるんだ。
そこで別の方法で推定したりするわけ。
例えば、同じような色(表面温度)の恒星と明るさを比べ、見かけ上の明るさは距離の二乗に反比例することから距離を推定したりするのだ。
実際には全く同じ色の星はないから、かなりの推測だけど。
さらに、円盤銀河の回転速度から距離を推定したり、ビッグバン以降の宇宙の広がりを説明するハッブルの法則を用いて光のドップラー効果(遠くに離れていく光は波長が長い方にシフトする=赤方偏移)で推定したりするんだって。

で、年周視差で距離を求めた恒星を基準とし、こうした他の方法を組み合わせてより遠い星までの距離を推定していくのだ。
これを「宇宙の距離梯子」と呼んでいるんだって。
なんか、魏志倭人伝(三国志魏書東夷伝倭人条)とか、山海経の世界における位置の説明のようになっているのだ。
つまり、ある地点までの距離と方角を示し、さらにそこからまた距離と方角を示し、とつなげていくのだ。
なので、どうしても誤差の上に誤差を積み重ねていくことになってしまうんだよね。

そこで考えられているのが、年周視差をより正確に測定しようという試み。
すでに欧州宇宙機関(ESA)は20世紀にヒッパルコスという衛星を打ち上げ、宇宙空間から年周視差の測定を行ったのだ。
宇宙からだと大気の影響も受けないし、地上とは独立した二系の観測データが得られるので、推定誤差を小さくすることができるのだ。
さらに高精度に測定しようという計画もあって、日本でも国立天文台などを中心にJASMINE計画というのがあるよ。
米国航空宇宙局(NASA)やESAも同じようなミッションを検討しているらしいけど、日本の計画では、赤外線で観測することでさらに測定誤差を小さくしようというものなのだ。
ただし、赤外線観測には技術的な課題もあるんだけどね(熱線なのでセンサ部分を極低温に保たないと正確に観測できないのだ。)。

というわけで、実は星までの距離は古代ギリシア時代から連綿と続く三角測量で測っていたのだ!
原理的には単純だけど、むしろ基礎データをきちんと観測することが課題なんだよね。
宇宙空間の壮大なスケールで三角測量をしているってなんだか不思議だよ。

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