2012/06/09

太陽のほくろ

6月6日(水)は21世紀最後の「金星の太陽面通過」。
東京はあいにくのくもりだったけど、ボクはなんとか雲の合間から見られたよ。
実は先日の金環日食よりレアな現象だったのだ!
いまいちマイナーだけどね(笑)
でも、すぐ前に金環日食があって日食グラスを持っている人も多かったから、観測した人も意外といるかな?

「太陽面通過」又は「日面経過」というのは、太陽と地球の間に内惑星が入って、太陽に影ができる現象。
ボクたちの住んでいる太陽系には内惑星は水星と金星があるので、それぞれあるのだ。
でも、水星の場合は見かけの大きさがきわめて小さいので、望遠鏡で見ないとわからないんだって。
金星の場合は、見かけの大きさが太陽の30分の1くらいなので、太陽の上をほくろのような黒い点が動いていく現象として観測されるんだ。
今回は午前中いっぱいくらい見られるみたいだから、かなり観測の条件はよいね♪
(正確には、午前7時過ぎから午後2時前まで約6時間半あるので、多少雲があってもその合間から見えるかも!?)

もともと、太陽と地球と他の惑星が一直線上に並ぶ現象を「合(ごう)」と言うんだけど、内惑星の場合は、内惑星-太陽-地球という並び順の「外合」と、太陽-内惑星-地球という並びの「内合」があるのだ。
この内合の時に「太陽面通過」が起きるわけだけど、毎回起こるわけではないんだ。
それは、内惑星の公転軌道と地球の公転軌道は同一平面上になくて、少し傾いているから。
金星の場合は3.4度の傾きがあるんだって。
しかも、金星の見た目の大きさは小さいので、内合の状態になっても太陽の上や下を通過することになってしまって、太陽の上に黒い影が投影されないのだ。
うまいこと交点軌道面の交点近くで内合になると晴れて観測できるんだよ。
このためにまれな事象なんだ。

その周期は時代とともに少し変わるらしいんだけど、今のところは8年、121.5年、8年、105.5年という周期で繰り返すそうなのだ。
前回は2004年6月8日だったので、今回はその8年後の周期。
ということは、次は121.5年後の2117年12月11日になってしまうんだ!
というわけで、21世紀で最後のレア・イベントというわけさ。
これは見逃してはならないよ。

この現象を世界ではじめて予測したのはかのヨハネス・ケプラーさん。
さすが惑星の軌道の研究をしていただけあるね。
で、実際に彼が生きていた1631年に発生することを予測したのだ。
でもでも、このときの予測の精度は少し悪くて、数時間程度ずれていたようなんだよね。
日没間際に通過するはず、と思っていたんだけど、実際に通過するのは欧州では日没後の時間で観測できないものだったのだorz
ケプラーさんはその次の通過を1761年と予測していたので、ここで観測をあきらめちゃったんだよね。

ところが、英国の天文学者のエレミア・ホロックスさんが改めて計算したところ、8年後の1639年にも通過が起こりそうだ、ということがわかったのだ。
ただし、この時も計算の精度がよくないので、ホロックスさんはそれこそ1日中観測をしていたらしいよ。
そして、日没の1時間ほど前、雲がきれて晴れ間がのぞいたところで観測できたんだって!
これが人類で最初の予測した金星の太陽面通過の観測だよ。
でも、この観測結果は彼の死後まで発表されなかったんだとか・・・。

この太陽面経過を正確に観測すると、太陽と地球の距離が測定できるんだ。
惑星までの距離は、惑星の天球上の見かけ上の動きから、太陽と地球の間の距離である1天文単位の何倍かで測れるんだけど、問題の1天文単位の絶対値はわからないのだ。
今、金星は動いていないと仮定すると、太陽面通過にかかる時間を計測すると三角測量の原理で地球と太陽の距離が計算で求められるんだ。
でも、実際には金星も動いているので、2地点以上で観測しないと答えが出ないけど。
ホロックスさんも友人と協力して見積もってみたらしいよ。

ところが、この太陽面通過の時間を正確に求めるのが難しいんだ。
入るときと出るときは太陽の縁の光がゆがんで影が水滴状の形に見え、いつ入ったのか、いつ出たのかが正確にわからないのだ。
このため、かなり誤差が出ていたらしいよ。
ただし、これは光学機器の発達でかなり防げるようなので(遮光を強くして光の強度を抑えた上で解像度をよくすればかなり防げるみたいで、当時の望遠鏡ではピントがきちんと合わなかったことが原因みたい。)、今はけっこう正確に観測できるらしいよ。

ホロックスさんの後、18世紀になってからもこの方法による太陽までの距離の見積もりが行われて、あの彗星に名前を残しているハレーさんの提唱で世界で初めての国際的な共同研究で各地で観測が行われたみたい。
19世紀になると、開国から間もない日本にも観測隊が来たみたい。
明治政府は正直「?」だったみたいだけど、長崎や横浜で観測が行われたみたい。
横浜にはそのときの記念碑もあるみたいだよ。

と、けっこうむかしから全世界で注目されていた現象なんだよ。
見られた人はラッキー♪
見られなかった人はなんとか22世紀まで長生きしてもらうしかないね(笑)

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