2017/01/14

しわとしわをあわせて?

お正月と言えばおせち料理。
で、このおせち料理で衝撃的な発言を知ったのだ。
それは、おせち料理の黒豆のに方について。
黒豆と言えば、いかにしわが寄らずに柔らかく煮えるか、ということで、ネット上にも様々な情報・レシピが載っているけど、中でも有名なのは、料理研究家の土井勝さんが15年かけて考案したという「土井式」。
これは簡便につるつるの黒豆が作れると評判なのだ!
ところが、この「土井式」について、土井勝さんの息子さんで、やはり料理研究家の土井善晴さんが衝撃的な発言をしていたのだ。

つまり、もともと黒豆は「しわが寄るまでまめに働く」という縁起物だから、しわがない黒豆はよくない、と、土井勝さんのお母さんは言っていた、ということ。
確かに、調べてみると、地方によってはむしろしわの寄った黒豆を食べることもあるみたい。
ということは、苦労せずとも、工夫せずとも、普通に柔らかくなるまで黒豆は煮とけばよかったってこと?
15年かけたレシピが自分の母親に否定されていたとは・・・。

現在のおせち料理自体は、江戸時代に徐々に形になってきて、明治以降に形式化したものなんだって。
そもそもお重に詰めて、というのが明治以降の話で、江戸時代はお膳に載せた料理とお重に詰めた料理の両方があったみたい。
明治以降の様式が「日本の伝統」と認識されている例の一つだね。
縁起物や語呂合わせも江戸時代考案のもののようだよ。
もちろん、古来から祝い用の料理とかはあって、当然ながらその流れも合流しているとは思うんだけど。

黒豆については、江戸の高級料亭「八百善」が考案したものと言われているようなのだ。
だとすると、やはり最初はしわがなく、きれいなつるっとした煮豆だったのでは・・・。
おそらく、それが庶民に浸透していく過程で、料理屋のようにしわなく煮ることが難しいので、「むしろしわがあった方が」ということになった可能性もあるよね。
むしろその方が理屈は通ってる(笑)

むかしながらの作り方だと、まず黒豆をやわらかく煮て、それを甘い糖蜜に浸して味を含ませるようなのだ。
徐々に糖蜜の濃度を上げて、濃い糖蜜に浸していくんだって。
この方法だと、どうしても1週間くらいかかるんだよね・・・。
それが、「土井式」では2日間でできるのだ。
ま、これも今となっては手間がかかる、ということかもしれないけど。

黒豆にしわが入る原因はいくつかあって、ひとつは急に浸透圧の高い液につけると、豆から水分を奪ってしまうので、しわができてしまうというもの。
なので、むかしながらの製法では徐々に濃い糖蜜にしていくという行程だったのだ。
ところが、「土井式」では、最初に煮汁を作ってしまって、乾燥した黒豆をそれでもどすんだよね。
そうると、煮汁は豆に染みていくだけで、水分を奪っていくことはないのだ。
さらに、煮汁が熱いうちに豆を入れることで、さらに染み込みの早さを加速しているんだ。
これで一晩放置すると、甘い煮汁で戻された黒豆ができるわけ。

今度はこれをやわらかく煮るんだけど、「土井式」では、弱火でじっくりと8時間くらいかけて煮るのだ。
考案された当初は石油ストーブも多く使われていたので、石油ストーブに載せておくということだったみたい。
このとき、煮汁は豆がひたひたになるくらいに常にキープする必要があって、水分が少なくなってきたら熱湯を足すのだ。
豆にしわが寄る第二の原因として、急激な温度変化があるんだよね。
なので、水分補給には水を差したりしないわけ。
また、沸騰させずに弱火でことこと煮込むというのも、沸騰させてしまうと豆の表面が空気に触れる可能性が出てきてしまうから。

というわけで、「土井式」は本当によく考えられらレシピなんだよね。
ところが、現在では黒豆は正直あまり人気のない料理・・・。
ボクは割と黒豆は好きなんだけどなぁ。

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