2018/01/13

臭みに立ち向かう

パリの魚介類はくさい!
スーパーで売っているようなものは当然として、マルシェで氷の上に並べられているようなものもかなりのにおいなのだ・・・。
フランス人はあまり魚の臭みを気にしないのかな?
日本ほど冷蔵・冷凍輸送の体制が整っていないようなので、流通の問題であるのは確かなんだけど。
なので、パリでは家で魚料理を食べる機会は減ってしまうのだ(>_<)
職場の同僚はパリでは魚は食べないとか言っているよ。

実は、真空パックに入って売られているスモークサーモンもそうなんだよね。
日本で売っているものでもくさみが気になって・・・、なんてネットの相談を見たけど、パリで売られているものは多分もっとくさみがあるよ。
一応、パックを開けてそのままでも食べられるみたいなんだけど、推奨は、ドレッシングなどであえてカルパッチョやサラダにすることなのだ。
我が家では、塩漬けイクラとともに鮭親子丼にしたんだけど、わさび醤油でカバーしたのだ。

この魚のくさみの主な原因と言われているのは、トリメチルアミンという物質。
すごく簡単な構造の有機化合物だよ。
低濃度でいわゆる「魚臭」、高濃度ではアンモニアのような悪臭になるのだ。
悪臭防止法の規制対象でもあって、特定悪臭物質に指定されているんだって!
魚の場合、浸透圧を調節するために体内にトリメチルアミン-N-オキシドという物質を持っていて、これが魚の死後に付着している細菌による還元されると、悪臭の原因であるトリメチルアミンが出てくるのだ。
なので、トリメチルアミンは魚の腐敗の進行度によって増えるんだよね。
つまり、鮮度よく流通させないと、くさくなるわけ・・・。

このトリメチルアミンは水によく溶ける物質なので、水で洗えばある程度取り除けるんだけど、魚の切り身をそのまま真水で洗ってしまうと、浸透圧の関係で切り身が水分を吸ってしまい、食感も悪くなるし、味もぼやけたものになるのだ・・・。
そこで、仮に洗う場合は海水程度の塩水を使うのがよいらしいよ。
そうすると切り身は「ぶよぶよ」にはならないのだ。
伝統的には、魚の身から水分を吸い出して「締まった」状態にする方が、身がぷりぷりし、味も濃くなるので、塩水で洗うよりは、塩を振って、水分を吸った塩をぬぐい取る、という方法がとられているよ。
水分と一緒にくさみ成分もぬけるので、塩をして少し閉めると改善するみたい。
ただし、生魚はいいとして、スモークサーモンにはあまり使えないね(笑)

浸透圧を気にせずに水で洗うには、野菜ではやった「50度洗い」という方法もあるのだ。
50度前後(48度~52度)のぬるま湯を用意して洗う、というだけなんだけど。
野菜の場合は、50度前後の水で簡便に表面の殺菌をするとともに、適度な水分を吸収させてしゃっきり、みずみずしくさせるのだ。
でも、これだと魚ではまずいのでは?、と思うんだけど、ちょっと違うみたい。
表面の殺菌でこれ以上くさみ成分が増えないようにするのは効果があるとして、ぬるま湯で洗うのは、「余計な水分を吸わせない」ようにするためなのだ。
逆説的に聞こえるけど。

魚や肉の場合、やってみるとわかるのだけど、ぬるま湯に入れると表面が少し白く、固くなるのだ。
これはタンパク質が熱で変成しているからだよ。
そうすると、水が染みこみにくくなるのだ!
ところが、この程度の熱変性は可逆的なので、ぬるま湯で洗った後によく水分をぬぐい取って乾燥させると、元の色、というか、より鮮やかな発色になるのだ。
50度前後という絶妙な温度設定により、火は通らないんだけど、表面のタンパク質は変性する、というのがポイント。
熱すぎると「たたき」にしたように表面に火が通ってしまうし、ぬるすぎると殺菌できないので要注意。

ドレッシングであえるというのも効果があって、これは「酢」が威力を発揮しているのだ。
柑橘類の果汁でも一緒だよ。
トリメチルアミンは酸性条件下ではトリメチルアンモニウム塩に酸化されるので、くさみがなくなるのだ。
これは純粋に化学的な話。
ヨーグルトにつけるというのも同様の話で、中は乳酸によって酸性になっているので、くさみがなくなるのだ。
焼き魚にレモンをしぼるというのも一理あるわけだね。

ちなみに、トリメチルアミンは熱でも飛ぶので、焼いたり煮たりするとくさみは軽減するよ。
でも、先にくさみを取ってから焼いたり煮たりした方がおいしいわけで。
ちょっと工夫をすればよりおいしく魚が食べられそう。

0 件のコメント: