2024/04/13

においのもと

 テレビで見たのだけど、岡山県はトイレの消臭剤の年間消費量がナンバー1らしい。
その理由をインタビューでさぐっていたんだけど、番組の中で出していた結論は、洋式トイレで男性が小をする場合に座らず立ったままする人の割合が全国平均に比べて圧倒的に高いから、ということだったのだ。
つまり、まわりに飛沫が飛び散っていて、それがにおいのもとになっているというわけだ。
トイレ用洗剤のCMでも思ったより飛び散っている、みたいなのがあったよね。

でも、実は尿素のものが臭いわけじゃないのだ。
もともと腎臓の中で血液をろ過して老廃物を取り除いた廃液が尿になるわけで、基本的に膀胱から尿道を経て外に出るまでは無菌状態。
っていうか、膀胱や尿道にある時点で細菌が中にいる場合は、膀胱炎や尿道炎を起こしているのだ(>_<)
問題は体外に排出された後。
つまり、検尿の時などの出したての尿は臭いわけではないのだ。
でも、検尿カップから提出用容器に移した後、残ったのをそのままにしておくと臭いが出て来るよ。
残りのほとんどはお入れにそのまま流すと思うけど、検尿カップにこびりついて残ったものは後々臭いが出るので、水ですすぐとかしないとまずいわけだ。

では、なぜ臭いが発生するのか。
尿臭のメインはアンモニア臭。
もともとアンモニアは毒なので、体内で発生するアンモニアは尿素にして無毒化されるんだよね。
それが尿中に排出されるわけ。
でも、体外に排出された尿素は、まわりにいる最近に分解され、再びアンモニアが発生するのだ。
これがにおいの発生源。
特有の刺激臭が出て来るよ。

このほか、尿中には微量ながらタンパク質も含まれているので、それが分解されるとやはり腐敗臭のもとになるような物質もできているのだ。
卵や肉が腐ったようなにおい。
とはいえ、尿中のたんぱく質はごく微量なので、大量のアンモニア臭を押しのけてまで感じられるようにはならないんだよね。
犬なんかは人間より嗅覚が鋭くて、アンモニア臭の奥にある別の物質のにおいまで完治できるのでおしっこでなわばりをマーキングするんだけど、さすがに人でそこまでできる人はあまりいないはず。

でも、おしっこのにおいが強くなる、というのはあるんだよね。
これはむしろ病気の兆候。
なんらかの原因で普段は尿中に排出されない物質が大量に尿中に排出されることでにおいのもとになっているのだ。
わかりやすいのは、栄養ドリンクを飲むと大量の水溶性ビタミンのビタミンB2(リボフラビン)が尿中に排出されるので、尿が真っ黄色になって少し薬臭くなるのだ。
で、腎臓の病気とかで、血液のろ過機能が弱ってくると、本来は尿中に出てこないタンパク質が排出され、それがにおいのもとに。
健康診断の検尿も基本は尿中のたんぱく質を測定しているんだけど、これが多いと腎機能が低下しているというシグナルになっているんだよね。
ちなみに、泡だってその泡がなかなか消えない、というのもタンパク質が多めに排出されてしまっているシグナルの一つ。

では、臭い対策はどうするか。
単純に言えば、尿の飛沫が飛んでいるのが問題なので、それをきれいにふき取っておけば臭いは発生しないのだ。
でも、トイレを使うたびに毎回毎回掃除はできない・・・、となると、別のにおいが悪臭をごまかすしかないわけ。
いわゆる「ベルサイユ方式」。
昔のトイレの芳香剤はこれ。
「芳香剤」とはよく名付けたもので、より強い、でも、人にとっては良いにおいに感じるものでアンモニアを中心とした悪臭をごまかすのだ。

でも、現在普通に使われているのは消臭剤。
名前のとおり「悪臭の原因を消す」のだ。
では、どうやって除去するか。
代表的なものは、化学的方法と物理的方法。
化学的方法というのは、別の化合物と反応させて臭いのしない化合物に変化させてしまう、という発想。
トイレの場合はわかりやすくて、においの原因はアンモニアなので、このアンモニアに何かを反応させて悪臭の原因にならない化合物にしてしまえばよいのだ。
アンモニアは塩基性なので、多くの場合は何らかの酸性物質と反応させるよ。
ただし、なんでもいいかというか、そういうわけでもないのだ。
例えば、そこら辺にある二酸化炭素と反応させて炭酸アンモニウムにしても、炭酸アンモニウム自体が強い刺激臭を持つので意味ないのだ。
塩酸と反応させて塩化アンモニウムに変換すれば無臭になるけど、この物質は強い吸湿性があるので、べとつくのだ。
トイレでそれは使えないよね。
というわけで、ちょうどよいものというのを探すのは大変で、だからこそいろんな商品があるわけ。

物理的方法の方は、多孔性の単体に臭いの原因物質を吸着させるというもの。
素焼きの陶器や活性炭にアンモニアを吸着させるのだ。
冷蔵庫や靴箱用の消臭剤は主にこれだよね。
トイレのようなある程度の広さがある空間だとこれだけだと間に合わないので、トイレ用消臭剤の場合は上の化学的方法と組み合わせになることが多いよ。

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