2024/11/30

コスパよい飯

 個人的に意外なニュースだったんだけど、ふりかけの売上げが伸びているらしい。
一般に米の消費量は下がっていると言われているけど、ふりかけ業界はずっと右肩上がりなんだそうで。
米の消費量だけで行くと、1962年(昭和37年)のピークで一人当たり年間118.3kg。
1日あたりだと320gくらいで、これは2合ちょっとにあたるのだ。
お茶碗でいうと4杯くらいかな。
これが2022年(令和3年)になると、一人当たり年間51.5kgで半分以下。
それでも、1日に1合、茶碗2杯分くらいは食べている計算なのだ。

というわけで、意外(?)とごはんを食べているんだけど、このごはんを食べる量が減った原因がふたつあって、ひとつはごはん以外の主食の選択肢が増えたこと。
よく言われるのは、給食によるパン食の普及や麺類による代替だよね。
朝や昼だけでも一食分がパン又は麺になればだいぶ消費量は落ちるはずなのだ。
でも、そうは言っても感覚的にはもっと置き換わっているような感じがしながら、実際には最大で半分しか置き換わっていなということンあだよね。
これにはもう一つの理由があるからなのだ。


それは、おかずを多く食べるようになったこと。
昔は塩辛い漬物やらめちゃくちゃしょっぱい塩鮭、濃い味付けの煮物とかで、少しのおかずでたくさんごはんを食べる、というスタイルだったのが、肉や魚を主菜としてきちんと食べるスタイルになって、その分だけご飯を食べる量が減ったというわけなのだ。
これは日本の食事が炭水化物偏重型の途上国スタイルから、主催・副菜が充実した先進国スタイルに切り替わったことを意味するのだ。
もともと日本でも高級な懐石料理とかだとごはんは最後の最後に少し食べるだけだよね。
おかずよりもごはんの方が安価なので、安上がりにおなか一杯にするにはごはんをたくさん食べるのがよいというわけなのだ。

ところが、ここにきてふりかけの需要が伸びているというのは、それにちょっとした反動が起きているということなんだよね。
というのも、ふりかけの売上げが伸びている要因として専門家が指摘しているのが、不況によりおかずが一品減った代わりにふりかけを使っているのでは、というものだから。
ごはんばかりたくさん食べていた時代は、それこそ「ごはんのとも」といわれるようなものがたくさん食卓に常備されていたわけだけど、おかずが充実してきてからはそういうものは徐々に家庭から消えて行っているのだ。
主菜がちょっとしょぼくなった分、他で補う必要が出てくるわけだけど、漬物や佃煮などよりはふりかけの方が安価で保存もきくし、何より味のバリエーションが多い、ということみたい。
こどもがおかずだけ先に食べてご飯が残ったときはのりたま、なんてのがボクが小さいころよくあった光景だけど、最近は大人もいろんな味のふりかけを楽しむようになってきているらしいよ。
確かに、少し高級なラインナップも見かけるような。

こう聞くと、日本の副菜が文化的に消えて行くようで少しさみしい気もするけど、そのかわりにふりかけは進化していっているのだ。
それと、ふりかけはグローバル展開もしているんだよね。
海外の人はごはんといかずを一緒に食べるというのが苦手で、どうしても先におかずだけ食べてごはんが残るという形になってしまうのだとか。
ボクがパリにいたころは、ごはんに甘めのしょうゆをかけているフランス人をけっこう見たけど、そういう不健康そうなことをしなくても、ふりかけがあればおいしく食べられるのだ。
で、ついに海外の人にも気づかれてしまったらしい(笑)
すき焼きふりかけなんかは味的に人気でそうだよね。

というわけで、むかしほど貧相ではないけど、それほど豪華にもできないという微妙なバランスの食糧事情ではふりかけが勢力を伸ばしてきているのだ。
でも、これはごはん食にこだわるからであって、パンや麺ならおかずも少なくすむし、もっと安上がりにできるんじゃないか、と思って、ちょっと調べてみたんだよね。
とりあえず、わかりやすいように、イオンのネットスーパーの商品(ほとんどがトップバリュ製品)で、単位単価あたりの熱量(カロリー)を比較してみたのだ。
それぞれ100円でどれだけの熱量が得られるかで比べたんだけど、
(1)食パン                 861.7kcal
(2-1)生うどん        569.7kcal
(2-2)冷凍うどん     534.2kcal
(2-3)乾麺うどん     906.5kcal
(3-1)米                 778.1kcal
(3-2)パックごはん   277.0kcal
(4)乾麺パスタ         1,437.6kcal
となったのだ、
トップは圧倒的にパスタで、まさに桁違い。
びりはレンジで温めるパックごはんで、ここまでくると貴族の食べ物だ(笑)

よくネット掲示板で最強の貧乏飯はパスタと言われることがあるけど、数字的にはそうみたい。
これにふりかけ的な安いパスタソースをあえるのが最も安上がりだね。
乾麺うどんもそれに近くてなかなかいい感じ。
これらに次ぐのは食パンだけど、さすがに毎食はつらいだろうなぁ。
で、米は4番手で、悪くはない感じ。
バリエーションとかまで考えると、米というのはかなり良い選択肢かもね。

想定外だったのはうどんのスコアの低さ。
業務スーパーのひと玉20円未満とかのうどんまでいくと米に追いつくんだけど、普通にスーパーで売っているようなやつではまだまだ。
コスパの良い自炊はうどんとか言ってるのはにわかということだね。
パスタ最強はそのとおりだったんだけど。

2024/11/23

乾いた氷

 最近は要冷蔵品を買っても楽しみが減ったのだ。
それは、ドライアイスではなく、保冷剤がついてくることが多くなったから。
子供のころはドライアイスに水をかけてスモークごっこをするのが好きだったんだよなぁ。
そんなドライアイスだけど、二酸化炭素がかたまったもの、といこと以外はよく知らなかったので、ちょっと調べてみたよ。


ドライアイスは二酸化炭素の固体状態のものなんだけど、常圧下では液体になることなく、固体から気化するのだ。
昇華というやつだよね。
このとき、まわりの空気がわりと湿っていると、その冷機で空気中の水分が凝固して細かい氷ができるんだけど、それがドライアイスから立ち上る白煙の正体。
水をかけてあげると周りの水分量が増えるので、白煙が出やすくなるのだ。
乾燥地帯にドライアイスを放置しても白煙は出ないよ。
やったことないけど。

ドライアイスの冷却能力は、同重量の氷の2倍、同容積の氷の3倍以上らしいのだ。
かつ、氷のように融けた後に水が残らないので、びしょびしょにならない!
だから「ドライアイス」と呼ばれるわけだけど、使い勝手もよかたんだよね。
逆に、融けていくと炭酸ガスが発生するので、密閉容器の中には入れられないというデメリットはあるのだ。
最近はゲルを使った保冷剤が多いけど、凍らせれば再利用できるし、何より、ドライアイスより「冷やし過ぎない」というメリットがあるのだ。
冷却能力が高すぎるのも困ることがあって、水分が凍結したりすると風味が府しなわれたり、ぱさぱさになったりするんだよね。
なので、ドライアイスを裸で入れるのではなく、不織布に包んだりして直接触れないようにしたりするのだけど。

そんなドライアイス、作り方は僕のイメージとはちょっと違ったのだ。
加圧しながら冷却していくと塊のドライアイスができると思っていたんだけど、そうではないんだよね。
まず、加圧したうえで冷却していって、液体状態の二酸化炭素を作るんだって。
これを常圧状態に戻してあげると断熱膨張により一気に固化してパウダー状のドライアイスができるんだって。
断熱膨張というのは、外界と熱のやり取りをしないで体積が膨らむこと。
液体二酸化炭素が炭酸ガスになる際には気化熱が必要なんだけど、それを周りから熱を奪うんじゃなくて、自分の温度を下げてまかなうことになるんだよね。
で、液体から固体になるわけ。

同じような現象は、密閉容器に水の入ったコップを入れておいて、そこから真空ポンプで減圧していくと、いきなりコップの中の水が沸騰し、その後いきなり氷になる、というのがあるのだ。
よく科学実験で紹介されたりするから有名なもの。
水は蒸発する際にまわりから気化熱を奪うよね。
だから汗をかくと冷却効果が出てくるのだ。
ところが、瞬間的に体積を膨張させると、まわりと熱のやり取りをしている暇がないから、自分の温度が下がってしまうのだ。
スプレー缶でずっと噴射し続けると感が冷たくなってくるのもこれと同じ現象だよ。
で、この方法だとパウダー状のドライアイスができるんだけど、あらかじめ液体の二酸化炭素に水を少しだけ混ぜておくと、さらさらの粉状ドライアイスの周りに氷の粒もできて、それがつなぎのように働いて成形しやすくなるそうな。
なので、それを型に入れて押し固めてあげるとペレット状やブロック状のドライアイスになるんだって。
落雁を作っているようなイメージだね。

ドライアイスの意外な利用方法は、遺体の保存。
腐敗しないようにするエンバーミングという処理もあるけど、ドライアイスは冷やして腐敗を遅らせるだけとはいえ、簡便かつ安価で、さらに、棺に入れっぱなしでもそのまま火葬してしまって問題ないのでよく使われるんだそうだよ。
最近はあんまり人を呼ば核なったとはいえ、通夜・葬式とやる場合はけっこう亡くなってから時間がかかるからね。
そういうのもあって、製造業者は減っているけど需要はそこまで落ち込んでおらず、国内製遺贈だけでは間に合ってなくて一部輸入しているそうなのだ。
そんなに使っているものなんだねぇ。

2024/11/16

塩の力

 ステーキを焼くときに塩をあらかじめふるけど、それって実は、下味をつけるという意味だけではないみたい。
どうも、塩で表面を「ひきしめている」んだとか。
なので、塩を振る量や塩をふってからおいておく時間なんかも大事らしい。
ステーキみたいな料理は焼くというプロセスだけが大事なんだと思っていたけど、どうも、焼く前からもう勝負は始まっているらしい。

科学的にみると、肉の表面に塩をふると、その塩が肉表面の水分でかなり濃い水溶液になるんだよね。
そうなると、浸透圧の差で、肉表面の水分をさらに吸い上げるのだ。
どうもこの効果が大事らしくて、肉表面の水分が吸われていく過程で、肉の表面の筋組織が引き締まるんだとか。
でも、それはあくまでも表面だけの話というのがポイント。
肉の内部の水分まで奪ってしまうと焼いたときにじゅしーさが亡くなってパサついてしまうから。
なので、表面だけ塩に水分を吸われて引き締まっているのだけど、表面以外の内部にはさほど影響がない、という状況に持っていきたいわけ。
この作用を知っていると、どれくらい塩をふればよいのか、焼く前にどれだけの時間をあけて塩をふっておくべきなのかが決まってくるよ。
鉄板焼きなんかにいくと無造作に塩をふっているようにも見えるけど、おそらく長年の経験に基づくノウハウみたいなのがあるはずなのだ。

一方で、そうやって表面に塩をふるだけでなくて、塩水につけて肉を柔らかくする、というのもあるのだ。
それが最近時々ネット見かける「ブライン液」というやつ。
レシピによって濃度は変わるんだけど、塩と砂糖を混ぜた水だよ。
塩と砂糖をそれぞれ重量濃度で5%としているのもあるけど、これは相当あまじょっぱいなのだ。
モデレートなやつだと塩3%、砂糖2%でトータル5%の重量濃度。
生理食塩水は0.9%なので、十分に高張な液なので、長く漬け込んでおくとに気が内部から引き締まるはずなのだ。
ちなみに、海水は約3.4%の濃度なので、このモデレートなものでもそれよりも濃いよ。
人間は味覚的に生理食塩水に近い濃度のものをちょうどよい塩気と感じるので、から辛い液ということになるのだ。

で、なんでこんな甘辛い液につけると肉が柔らかくなるのか?
ネット上ではいろんなことが書かれているんだけど、おそらくこういうことだと思うんだよね。
まず、このブライン液の場合は表面処理ではなくて長時間漬け込むタイプなので、肉中の水分とこのブライン液の間で塩と砂糖の平衡状態になるのだ。
つまり、肉からは余計な水分が出てくる、漬け込み液からは塩と砂糖が浸透していく。
十分に長い時間が経過すると、漬け込み液と肉中の水分の塩・砂糖の濃度がほぼ同じになってバランスするのだ。
この状態を目指しているんだよね。
このとき、おそらく肉の方はもとより水分が抜けていて全体的にちょっと引き締まっているんだけど、一方的に水分を搾り取っているわけではないのでぱさぱさにはならないのだ。
さらに、塩だけでなくて砂糖も入っていて、加熱する過程でこの砂糖が保水効果を発揮して肉から水分が抜けにくくなるので、結果としてぷりぷりに仕上がると考えられるのだ。
これが鶏むね肉のようなパサつきやすい肉でもおいしくふっくらと仕上げられる、と言われている所以ではないかと思うよ。

さらに、筋原線維を構成しているミオシンとアクチンは、塩の存在下ではアクトミオシンという形で一つになって水ぬ溶けやすくなるのだ。
これは、ひき肉を練っていくとき、塩を加えると粘り気が出てくるのと同じ現象。
ハンバーグでも餃子の種でも、塩が存在していないとあの粘り気は出ないのだ。
ブライン液の場合は漬け込むだけなので練ったひき肉のおうに粘り気が出るわけではないけど、筋原線維のいち部は浸透していった塩分の濃い漬け込み液の効果で一部アクトミオシンが形成され、水に溶けやすくなっている状態になっているはず。
これは現象的には、筋原線維の一部が融解して肉が柔らかくなっている、ということにほかならないのだ。
なので、普通は加熱すると肉は固くなっていくけど、この効果で柔らかさがプラスされる、ということだね。
さっきの佐藤による保水効果と合わせると、やわらかくふっくらと仕上げるということなのだ。

考えてみると、漬け込み型のから揚げなんかは実はこういう現象が起きていて、漬け込み液には塩分が含まれているし、砂糖やみりんを入れる場合もあるので糖分もあるのだ。
で、店によってはその漬け込み液に半日程度漬け込むとかいうので、まさにこのブライン液漬け込みとほぼほぼ同じ状況になっているわけ。
で、この唐揚げの漬け込み液は、鶏肉に味をしみこませる、という以上に、火を通してもふっくらジューシーというのにも「貢献していると考えられるのだ。
下味付けずに唐揚げ粉で、というのもあるけど、こういうメカニズムを知ると、じっくり漬け込むタイプのから揚げの魅力が増すね(笑)

2024/11/09

どちらに入れました?

 日本では衆議院総選挙、米国では大統領選挙がちょっと驚きの結果で終わったのだ。
選挙は水物、ふたを開けてみるまでわからない、とは言うけど。
日本の場合、投票率は低めだけど、注目度は高いわけで、マスコミは投票締め切り後すぐに開票速報を出し始めるのだ。
で、いきなり「当選確実」が出たりするんだよね。
これには「出口調査」のデータが重要なのだ。

出口調査はその名のとおり、投票所の出口で待ち構えて「どこに投票しましたか?」というのをアンケートで聞いて、その結果を集計したもの。
当落予想には、各マスコミが独自の基準を持っていていろんなデータを加味するようなんだけど、出口調査の結果は最重要なものと位置付けられているよ。
ボクも一度だけ聞かれたことがあるのだ。
でも、日本では、公職選挙法第52条で「投票の秘密保持」が定められていて、「何人も、選挙人の投票した被選挙人の氏名又は政党その他の政治団体の名称若しくは略称を陳述する義務はない。」ということなので、出口調査のアンケートには必ずしも答える必要はないよ。
で、そういう回答率が100%ではないということも踏まえて、おおむね実際の選挙結果を推定できるようにアンケートを行う必要があるのだ。
テレビの視聴率は統計学的にはけっこういい加減なところがあるというけど(サンプルの絶対数が少ない。)、こっちは当落予想をしていて大きく外すと問題になるので、各社工夫しているようなのだ。

一般的には、統計学でいうところの二段階抽出で、まずは対象の選挙区の中のどの投票所でアンケートするかを選ぶのだ。
このとき、統計学上必要なサンプル数は決まっているので、あまりにも小さい規模の投票所は最初から除外されるよ(例えば、東京都の選挙区の離党の投票所など)。
さらに、選挙の場合は特定の地域で特定の政党や候補の支持が異様に高いということがあるので(いわゆる組織票)、小規模投票所を除いて完全にランダムで投票所を選んでしまうと、確率的にこういう全体の分布より偏った分布を持つことが容易に想定される投票所が多く選ばれてしまう可能性も出てくるのだ。
なので、そこも補正が必要なんだよ。

そうして投票所を選んだら、そこに調査員を派遣して、投票所から出てきた人を無作為抽出で捕まえて投票先を聞くのだ。
だけど、ここでも完全にランダムにやってしまうと、年来や性別等が偏ってしまうので、そういうか頼りに配慮しながら声をかける人を調節するみたい。
てゃいえ、年代別でけっこう投票率は変わるので、実際には高齢者は多めに聞かないといけないはず。
なので、その辺はけっこう選び方が難しいはずなのだ。

それと、最近の傾向として、期日前投票がけっこう増えている、というのも重要な要素。
期日前投票についても時々出口調査をするんだけど、投票日だけ張り付けばよいのと違って、あまり人が来ない期日前投票に1週間以上も人を張り付けるわけにはいかないので、初日と中日と最終日と、とか日を決めて調査するみたい。
この間の総選挙でも期日前投票のデータでは・・・、と選挙速報で言っていたので、それなりの規模ではやっているみたい。
こっちは見たことないけど。

で、こうして投票先の動向を予測するんだけど、実際に当落の予想をするときは、他にもいろんな要素を加味するんだって。
そのひとつが、あらかじめ行っている世論調査。
支持する政党だとかなんだとか聞いておいて、全体のトレンドをつかんでおくのだ。
投票の動向とは完全一致しないけど、どの政党が人気で、どの政党がそうでないかはわかるよね。
実際には、各選挙区にすべての政党が立候補者を立てるわけではないので、入れる先がない、ということで必ずしも指示していない政党に投票するケースもあるので、そのあたりも考慮に入れる必要があるよ。

さらに、開票が始まると、まずはな目だけ確認して各候補者ごとに投票用紙の山を分けるんだって。
で、いくつかの山に分けた後で、一票一票名前をさらに確認しながら集計していくのだ。
マスコミはこの作業を見ていて、その山の大きさで、圧倒的な差がついているのか、僅差で接戦になるのかを判断するとか。
これができると数分以内で「当選確実」が打てるんだよね。
でも、t表締め切り直後に出ているものもあるような・・・。
どうも、そういうのは世論調査などの結果で明らかに「圧倒的有利」になっていて、かつ、出口調査でも問題なく大きく優勢、ということみたい。

こんな感じでデータを集め、あとは各社の判断で「当選確実」を出していくんだけど、選挙特番をはしごすると、微妙にずれているのがよくわかるのだ。
これは、世論調査や出口調査は各社の独自データであるため(世論調査はニュース配信会社のものを使う場合もあり。)。
まさに腕の見せ所なわけだけど・・・。
大きく間違うと責任問題になるので、けっこう大変みたい。
ま、当選確実をいつ出すかで大きく視聴率が変わるとも思えないので、早い、よりは、より確からしい、方が大事なんだと思うけど。
でも、投票結果が数十票差で当落が分かれる、なんて大接戦も過去にはあったようで、なかなか難しい作業なのだ。

それと、最近は比例との重複立候補で「復活当選」もあるので、さらに難しいんだよね。
「復活当選」するかどうかは、選挙区での惜敗率(当選者の獲得した票数に対してどれだけ迫っていたか)が関係するので、やはり「票読み」が大事なのだ。
(比例の順位は同率が認められているため、惜敗率が高い方から当選になっていくのだ。)
この辺は開票が進まないとなかなか全容がつかめないものではあるんだけどね。
だれが当選するかはそうなんだけど、比例で何人当選しそうかは票数に依存するので、選挙後の各党の勢力図変化はわかるのだ。
今回も「与党は過半数割れしそう」、「立件民主党や国民民主党が躍進しそう」というのは締め切り直後から出ていたしね。

2024/11/02

指名No.1

 衆議院の解散総選挙があったので、まもなく新たな内閣総理大臣の指名が行われるんだよね。
今回は任期満了前の解散だったので、召集されるのは特別会(マスコミは「特別国会」と呼ぶよ。)。
基本的には内閣総理大臣の指名を行うことだけを目的にしていて、今回は11月11日召集、会期は4日間を見込んでいるみたいだね。
解散総選挙後30日以内に国会を召集しないといけないのだけど、今回は自公の議席が伸びず、「少数与党」という微妙な状況になっているので、わりとゆっくり目に召集されるのだ。
与党側も野党側も連立する市内とかの駆け引きがあるからね。
で、せっかくなので、改めて内閣総理大臣が指名されるプロセスについて調べてみたよ。

内閣総理大臣の指名は日本国憲法第67条第一項に「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」と定められていて、これに基づいて行われるのが内閣総理大臣指名選挙。
通称「首班指名」と呼ばれるもの。
同条項の後段で「この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。」となっているので、最優先で審議される議題なんだけど・・・。
今回のように解散総選挙後に改めて特別会が開催される場合、改めて議長・副議長の選任や議席の確定などの議事進行上必要不可欠なことを決めないといけないので、それが終わった後に首班指名が行われることになるよ。
例えば、すでに国会の海中で、首相が病気などを理由に内閣総辞職した場合は、他に審議中の法案などがあっても、それは差し置いてまず首班指名をする、ということなのだ。
第一次安倍政権のときは臨時会での所信表明演説後に総辞職だったからそんな感じだよね。

国会における首班指名の選挙は、予算のように衆議院先議などのルールもなく、それぞれ独立して行うことができるのだ。
このとき、この「指名」という議事は特別の定めのあるものではないので、日本国憲法第56条第二項「両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。」に従うのだ。
でも、実際には、最初の指名投票では、連立を組んでいる場合を除いて、各党は自分のところの代表者(多くの場合は党首)を指名するので、ここで過半数を超える候補がいきなり出てくることはまれなんだよね。
選挙前のように自民党が一党で過半数を越えている場合はそこで終わりになるんだけど。

で、最初の投票で過半数を越える候補者がいなかった場合、上位2名による決選投票になるのだ。
これは各議院の議院規則で決まっていて、例えば、衆議院の場合は、第18条第三項で「 投票の過半数を得た者がないときは、第八条第二項の規定を準用して指名される者を定め、その者について指名の議決があつたものとする。」としていて、これのもととなる第8条第二項では「投票の過半数を得た者がないときは、投票の最多数を得た者二人について決選投票を行い、多数を得た者を当選人とする。但し、決選投票を行うべき二人及び当選人を定めるに当り得票数が同じときは、くじでこれを定める。」となっているのだ。
日本の法律だとわりとよく出てくるけど、同数で決められない場合、最後はくじ引きなんだよね・・・。

ここで重要なのが、決選投票の票の数え方。
ここでも過半数を取らないとダメ、というルールになると、いつまでの指名を一本化できなくなる恐れがあるよね。
でも、実際にはそんなことにはならないようになっているんだ。
ここで着目すべきは、衆議院規則の規定ぶり。
「決選投票を行い、多数を得た者」となっているのがポイント。
この書き方だと、白票などの無効票を除外し、一番投票数の多かった人、ということになるのだ。
なので、第一党と第二党の代表で決選投票になった場合、他の党は双方とも応援したくなくて無効票にしても、第一党の代表が指名されるような仕組みになっているのだ。
おそらく、今回も「野合」が成立しない以上は、自公連立の候補者が決選投票で選ばれることになるはず。


このプロセスでそれぞれの議院で指名する者が決まるのだけど、衆参で指名者が一致しない場合があるのだ。
今回も「野合」が起こると数の上では衆議院は野党代表を指名することもできるので、与党が過半数を占めている参議院とは確実に指名者が異なることになるのだ。
報道で「野合」にはならなさそうだけど。
このときは、他の議案と同様に、両院協議会が開催されることになっていて、そこでの話し合いで一本化できればその人が最終的な指名者になるよ。
ここでも議論が分かれる場合、決を採って、両院協議会の出席者の2/3以上が指示した人がいればその人が指名されるんだ。
それもかなわない場合は、「衆議院の優越」により衆議院で指名された者が最終的に選ばれるよ。
※日本国憲法第67条第二項「衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」
ま、プロセスはともかく、基本的には衆議院での指名者が次の首相になるのだ。
過去に「ねじれ国会」となったときには両院協議会でも調整つかず、ということはあったけど、ルール上プロセスは規定されていても、それだけの話になっているのだ。

ちなみに、先も出てきた憲法第67条第一項の規定では、内閣総理大臣は国会議員の中から選ぶとだけ規定されているので、参議院議員でもいいはずなんだけど、実際には衆議院議員から選ぶことが通例となっているのだ。
理論的にはOKだとしても、首相は衆議院の解散権を持つので、自らの職を賭さずに解散権と持つのはどうかというのが根底にあるのと、憲法では何かと衆議院の優越性を認めているので、というのもあるらしい。
過去に指名投票では参議院議員の名前があがったことは何度もあるわけだけど(そもそも党首が参議院議員である場合など)、実際に指名されているのはみな衆議院議員なのだ。