2024/11/09

どちらに入れました?

 日本では衆議院総選挙、米国では大統領選挙がちょっと驚きの結果で終わったのだ。
選挙は水物、ふたを開けてみるまでわからない、とは言うけど。
日本の場合、投票率は低めだけど、注目度は高いわけで、マスコミは投票締め切り後すぐに開票速報を出し始めるのだ。
で、いきなり「当選確実」が出たりするんだよね。
これには「出口調査」のデータが重要なのだ。

出口調査はその名のとおり、投票所の出口で待ち構えて「どこに投票しましたか?」というのをアンケートで聞いて、その結果を集計したもの。
当落予想には、各マスコミが独自の基準を持っていていろんなデータを加味するようなんだけど、出口調査の結果は最重要なものと位置付けられているよ。
ボクも一度だけ聞かれたことがあるのだ。
でも、日本では、公職選挙法第52条で「投票の秘密保持」が定められていて、「何人も、選挙人の投票した被選挙人の氏名又は政党その他の政治団体の名称若しくは略称を陳述する義務はない。」ということなので、出口調査のアンケートには必ずしも答える必要はないよ。
で、そういう回答率が100%ではないということも踏まえて、おおむね実際の選挙結果を推定できるようにアンケートを行う必要があるのだ。
テレビの視聴率は統計学的にはけっこういい加減なところがあるというけど(サンプルの絶対数が少ない。)、こっちは当落予想をしていて大きく外すと問題になるので、各社工夫しているようなのだ。

一般的には、統計学でいうところの二段階抽出で、まずは対象の選挙区の中のどの投票所でアンケートするかを選ぶのだ。
このとき、統計学上必要なサンプル数は決まっているので、あまりにも小さい規模の投票所は最初から除外されるよ(例えば、東京都の選挙区の離党の投票所など)。
さらに、選挙の場合は特定の地域で特定の政党や候補の支持が異様に高いということがあるので(いわゆる組織票)、小規模投票所を除いて完全にランダムで投票所を選んでしまうと、確率的にこういう全体の分布より偏った分布を持つことが容易に想定される投票所が多く選ばれてしまう可能性も出てくるのだ。
なので、そこも補正が必要なんだよ。

そうして投票所を選んだら、そこに調査員を派遣して、投票所から出てきた人を無作為抽出で捕まえて投票先を聞くのだ。
だけど、ここでも完全にランダムにやってしまうと、年来や性別等が偏ってしまうので、そういうか頼りに配慮しながら声をかける人を調節するみたい。
てゃいえ、年代別でけっこう投票率は変わるので、実際には高齢者は多めに聞かないといけないはず。
なので、その辺はけっこう選び方が難しいはずなのだ。

それと、最近の傾向として、期日前投票がけっこう増えている、というのも重要な要素。
期日前投票についても時々出口調査をするんだけど、投票日だけ張り付けばよいのと違って、あまり人が来ない期日前投票に1週間以上も人を張り付けるわけにはいかないので、初日と中日と最終日と、とか日を決めて調査するみたい。
この間の総選挙でも期日前投票のデータでは・・・、と選挙速報で言っていたので、それなりの規模ではやっているみたい。
こっちは見たことないけど。

で、こうして投票先の動向を予測するんだけど、実際に当落の予想をするときは、他にもいろんな要素を加味するんだって。
そのひとつが、あらかじめ行っている世論調査。
支持する政党だとかなんだとか聞いておいて、全体のトレンドをつかんでおくのだ。
投票の動向とは完全一致しないけど、どの政党が人気で、どの政党がそうでないかはわかるよね。
実際には、各選挙区にすべての政党が立候補者を立てるわけではないので、入れる先がない、ということで必ずしも指示していない政党に投票するケースもあるので、そのあたりも考慮に入れる必要があるよ。

さらに、開票が始まると、まずはな目だけ確認して各候補者ごとに投票用紙の山を分けるんだって。
で、いくつかの山に分けた後で、一票一票名前をさらに確認しながら集計していくのだ。
マスコミはこの作業を見ていて、その山の大きさで、圧倒的な差がついているのか、僅差で接戦になるのかを判断するとか。
これができると数分以内で「当選確実」が打てるんだよね。
でも、t表締め切り直後に出ているものもあるような・・・。
どうも、そういうのは世論調査などの結果で明らかに「圧倒的有利」になっていて、かつ、出口調査でも問題なく大きく優勢、ということみたい。

こんな感じでデータを集め、あとは各社の判断で「当選確実」を出していくんだけど、選挙特番をはしごすると、微妙にずれているのがよくわかるのだ。
これは、世論調査や出口調査は各社の独自データであるため(世論調査はニュース配信会社のものを使う場合もあり。)。
まさに腕の見せ所なわけだけど・・・。
大きく間違うと責任問題になるので、けっこう大変みたい。
ま、当選確実をいつ出すかで大きく視聴率が変わるとも思えないので、早い、よりは、より確からしい、方が大事なんだと思うけど。
でも、投票結果が数十票差で当落が分かれる、なんて大接戦も過去にはあったようで、なかなか難しい作業なのだ。

それと、最近は比例との重複立候補で「復活当選」もあるので、さらに難しいんだよね。
「復活当選」するかどうかは、選挙区での惜敗率(当選者の獲得した票数に対してどれだけ迫っていたか)が関係するので、やはり「票読み」が大事なのだ。
(比例の順位は同率が認められているため、惜敗率が高い方から当選になっていくのだ。)
この辺は開票が進まないとなかなか全容がつかめないものではあるんだけどね。
だれが当選するかはそうなんだけど、比例で何人当選しそうかは票数に依存するので、選挙後の各党の勢力図変化はわかるのだ。
今回も「与党は過半数割れしそう」、「立件民主党や国民民主党が躍進しそう」というのは締め切り直後から出ていたしね。

2024/11/02

指名No.1

 衆議院の解散総選挙があったので、まもなく新たな内閣総理大臣の指名が行われるんだよね。
今回は任期満了前の解散だったので、召集されるのは特別会(マスコミは「特別国会」と呼ぶよ。)。
基本的には内閣総理大臣の指名を行うことだけを目的にしていて、今回は11月11日召集、会期は4日間を見込んでいるみたいだね。
解散総選挙後30日以内に国会を召集しないといけないのだけど、今回は自公の議席が伸びず、「少数与党」という微妙な状況になっているので、わりとゆっくり目に召集されるのだ。
与党側も野党側も連立する市内とかの駆け引きがあるからね。
で、せっかくなので、改めて内閣総理大臣が指名されるプロセスについて調べてみたよ。

内閣総理大臣の指名は日本国憲法第67条第一項に「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」と定められていて、これに基づいて行われるのが内閣総理大臣指名選挙。
通称「首班指名」と呼ばれるもの。
同条項の後段で「この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。」となっているので、最優先で審議される議題なんだけど・・・。
今回のように解散総選挙後に改めて特別会が開催される場合、改めて議長・副議長の選任や議席の確定などの議事進行上必要不可欠なことを決めないといけないので、それが終わった後に首班指名が行われることになるよ。
例えば、すでに国会の海中で、首相が病気などを理由に内閣総辞職した場合は、他に審議中の法案などがあっても、それは差し置いてまず首班指名をする、ということなのだ。
第一次安倍政権のときは臨時会での所信表明演説後に総辞職だったからそんな感じだよね。

国会における首班指名の選挙は、予算のように衆議院先議などのルールもなく、それぞれ独立して行うことができるのだ。
このとき、この「指名」という議事は特別の定めのあるものではないので、日本国憲法第56条第二項「両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。」に従うのだ。
でも、実際には、最初の指名投票では、連立を組んでいる場合を除いて、各党は自分のところの代表者(多くの場合は党首)を指名するので、ここで過半数を超える候補がいきなり出てくることはまれなんだよね。
選挙前のように自民党が一党で過半数を越えている場合はそこで終わりになるんだけど。

で、最初の投票で過半数を越える候補者がいなかった場合、上位2名による決選投票になるのだ。
これは各議院の議院規則で決まっていて、例えば、衆議院の場合は、第18条第三項で「 投票の過半数を得た者がないときは、第八条第二項の規定を準用して指名される者を定め、その者について指名の議決があつたものとする。」としていて、これのもととなる第8条第二項では「投票の過半数を得た者がないときは、投票の最多数を得た者二人について決選投票を行い、多数を得た者を当選人とする。但し、決選投票を行うべき二人及び当選人を定めるに当り得票数が同じときは、くじでこれを定める。」となっているのだ。
日本の法律だとわりとよく出てくるけど、同数で決められない場合、最後はくじ引きなんだよね・・・。

ここで重要なのが、決選投票の票の数え方。
ここでも過半数を取らないとダメ、というルールになると、いつまでの指名を一本化できなくなる恐れがあるよね。
でも、実際にはそんなことにはならないようになっているんだ。
ここで着目すべきは、衆議院規則の規定ぶり。
「決選投票を行い、多数を得た者」となっているのがポイント。
この書き方だと、白票などの無効票を除外し、一番投票数の多かった人、ということになるのだ。
なので、第一党と第二党の代表で決選投票になった場合、他の党は双方とも応援したくなくて無効票にしても、第一党の代表が指名されるような仕組みになっているのだ。
おそらく、今回も「野合」が成立しない以上は、自公連立の候補者が決選投票で選ばれることになるはず。


このプロセスでそれぞれの議院で指名する者が決まるのだけど、衆参で指名者が一致しない場合があるのだ。
今回も「野合」が起こると数の上では衆議院は野党代表を指名することもできるので、与党が過半数を占めている参議院とは確実に指名者が異なることになるのだ。
報道で「野合」にはならなさそうだけど。
このときは、他の議案と同様に、両院協議会が開催されることになっていて、そこでの話し合いで一本化できればその人が最終的な指名者になるよ。
ここでも議論が分かれる場合、決を採って、両院協議会の出席者の2/3以上が指示した人がいればその人が指名されるんだ。
それもかなわない場合は、「衆議院の優越」により衆議院で指名された者が最終的に選ばれるよ。
※日本国憲法第67条第二項「衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」
ま、プロセスはともかく、基本的には衆議院での指名者が次の首相になるのだ。
過去に「ねじれ国会」となったときには両院協議会でも調整つかず、ということはあったけど、ルール上プロセスは規定されていても、それだけの話になっているのだ。

ちなみに、先も出てきた憲法第67条第一項の規定では、内閣総理大臣は国会議員の中から選ぶとだけ規定されているので、参議院議員でもいいはずなんだけど、実際には衆議院議員から選ぶことが通例となっているのだ。
理論的にはOKだとしても、首相は衆議院の解散権を持つので、自らの職を賭さずに解散権と持つのはどうかというのが根底にあるのと、憲法では何かと衆議院の優越性を認めているので、というのもあるらしい。
過去に指名投票では参議院議員の名前があがったことは何度もあるわけだけど(そもそも党首が参議院議員である場合など)、実際に指名されているのはみな衆議院議員なのだ。