指名No.1
衆議院の解散総選挙があったので、まもなく新たな内閣総理大臣の指名が行われるんだよね。
今回は任期満了前の解散だったので、召集されるのは特別会(マスコミは「特別国会」と呼ぶよ。)。
基本的には内閣総理大臣の指名を行うことだけを目的にしていて、今回は11月11日召集、会期は4日間を見込んでいるみたいだね。
解散総選挙後30日以内に国会を召集しないといけないのだけど、今回は自公の議席が伸びず、「少数与党」という微妙な状況になっているので、わりとゆっくり目に召集されるのだ。
与党側も野党側も連立する市内とかの駆け引きがあるからね。
で、せっかくなので、改めて内閣総理大臣が指名されるプロセスについて調べてみたよ。
内閣総理大臣の指名は日本国憲法第67条第一項に「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」と定められていて、これに基づいて行われるのが内閣総理大臣指名選挙。
通称「首班指名」と呼ばれるもの。
同条項の後段で「この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。」となっているので、最優先で審議される議題なんだけど・・・。
今回のように解散総選挙後に改めて特別会が開催される場合、改めて議長・副議長の選任や議席の確定などの議事進行上必要不可欠なことを決めないといけないので、それが終わった後に首班指名が行われることになるよ。
例えば、すでに国会の海中で、首相が病気などを理由に内閣総辞職した場合は、他に審議中の法案などがあっても、それは差し置いてまず首班指名をする、ということなのだ。
第一次安倍政権のときは臨時会での所信表明演説後に総辞職だったからそんな感じだよね。
国会における首班指名の選挙は、予算のように衆議院先議などのルールもなく、それぞれ独立して行うことができるのだ。
このとき、この「指名」という議事は特別の定めのあるものではないので、日本国憲法第56条第二項「両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。」に従うのだ。
でも、実際には、最初の指名投票では、連立を組んでいる場合を除いて、各党は自分のところの代表者(多くの場合は党首)を指名するので、ここで過半数を超える候補がいきなり出てくることはまれなんだよね。
選挙前のように自民党が一党で過半数を越えている場合はそこで終わりになるんだけど。
で、最初の投票で過半数を越える候補者がいなかった場合、上位2名による決選投票になるのだ。
これは各議院の議院規則で決まっていて、例えば、衆議院の場合は、第18条第三項で「 投票の過半数を得た者がないときは、第八条第二項の規定を準用して指名される者を定め、その者について指名の議決があつたものとする。」としていて、これのもととなる第8条第二項では「投票の過半数を得た者がないときは、投票の最多数を得た者二人について決選投票を行い、多数を得た者を当選人とする。但し、決選投票を行うべき二人及び当選人を定めるに当り得票数が同じときは、くじでこれを定める。」となっているのだ。
日本の法律だとわりとよく出てくるけど、同数で決められない場合、最後はくじ引きなんだよね・・・。
ここで重要なのが、決選投票の票の数え方。
ここでも過半数を取らないとダメ、というルールになると、いつまでの指名を一本化できなくなる恐れがあるよね。
でも、実際にはそんなことにはならないようになっているんだ。
ここで着目すべきは、衆議院規則の規定ぶり。
「決選投票を行い、多数を得た者」となっているのがポイント。
この書き方だと、白票などの無効票を除外し、一番投票数の多かった人、ということになるのだ。
なので、第一党と第二党の代表で決選投票になった場合、他の党は双方とも応援したくなくて無効票にしても、第一党の代表が指名されるような仕組みになっているのだ。
おそらく、今回も「野合」が成立しない以上は、自公連立の候補者が決選投票で選ばれることになるはず。
このプロセスでそれぞれの議院で指名する者が決まるのだけど、衆参で指名者が一致しない場合があるのだ。
今回も「野合」が起こると数の上では衆議院は野党代表を指名することもできるので、与党が過半数を占めている参議院とは確実に指名者が異なることになるのだ。
報道で「野合」にはならなさそうだけど。
このときは、他の議案と同様に、両院協議会が開催されることになっていて、そこでの話し合いで一本化できればその人が最終的な指名者になるよ。
ここでも議論が分かれる場合、決を採って、両院協議会の出席者の2/3以上が指示した人がいればその人が指名されるんだ。
それもかなわない場合は、「衆議院の優越」により衆議院で指名された者が最終的に選ばれるよ。
※日本国憲法第67条第二項「衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」
ま、プロセスはともかく、基本的には衆議院での指名者が次の首相になるのだ。
過去に「ねじれ国会」となったときには両院協議会でも調整つかず、ということはあったけど、ルール上プロセスは規定されていても、それだけの話になっているのだ。
ちなみに、先も出てきた憲法第67条第一項の規定では、内閣総理大臣は国会議員の中から選ぶとだけ規定されているので、参議院議員でもいいはずなんだけど、実際には衆議院議員から選ぶことが通例となっているのだ。
理論的にはOKだとしても、首相は衆議院の解散権を持つので、自らの職を賭さずに解散権と持つのはどうかというのが根底にあるのと、憲法では何かと衆議院の優越性を認めているので、というのもあるらしい。
過去に指名投票では参議院議員の名前があがったことは何度もあるわけだけど(そもそも党首が参議院議員である場合など)、実際に指名されているのはみな衆議院議員なのだ。
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