2010/12/18

渋く決めるぜ

いよいよ冬に突入して、ボクの好きな柿の季節も終わろうとしているねぇ(>_<)
果物の中では断然柿が好きなので、残念だよ。
でもでも、その一方で、この時期の楽しみは干し柿。
日本伝統のドライフルーツだけど、ボクはこの干し柿も好きなのだ。

柿はかなり早い時代の弥生時代には梅や桃、杏などとともに大陸から日本に渡来して、以来栽培が始められているようなのだ。
実を食べるだけじゃなく、木質が固いことから柿の木は家具などに使われるし、あの渋みのもとを抽出した柿渋は防腐剤や防水剤として利用されてきたのだ。
まさに日本の民俗に密着した植物なのだ。

柿は果物の中でも糖度が特に高いんだけど、これは貴重な甘味だったのだ。
サトウキビやテンサイからとれる砂糖は超希少品・高級品で、一般的には発芽玄米や麦芽から作られる水飴が主要な甘味料だったんだよね。
それも主要成分は麦芽糖なのでそんなに甘くないのだ。
それ以前、平安時代なんかはツタなんかの少し甘い樹液を煮詰めて作る「あまづら」くらいしか甘味料がないので、柿の甘さは格別!
甘味を求める日本人にとってあこがれの存在だったのだ。
(サツマイモも甘いけど、これは江戸時代中期、八代将軍吉宗公が栽培を奨励して広がったのでだいぶ遅いのだ。)
で、現在も和菓子の甘さは干し柿の甘さが基本になっているとも言われているよ。

柿にはご存じのとおり甘柿と渋柿があるんだけど、甘柿は突然変異でできたもので、たまたま渋みがなくてそのままでも生食できるようになったもの。
これ幸いと品種改良を重ねて今ではいろんな栽培種(富有柿や次郎柿など)ができているんだよね。
一方、渋柿でも、なんとか渋を抜いて食べてきた歴史があって、むしろ渋柿から渋を抜いたものの方が好き、なんて趣向もあるのだ。
干し柿にするのは一般に渋柿だよ。
ま、渋を抜くために干しているので当たり前なんだけど・・・。

渋柿の渋み成分はタンニン。
タンニンには水に溶ける可溶性タンニンと水に溶けない不溶性タンニンがあって、渋柿には可溶性タンニンが多く含まれるので渋く感じるのだ。
甘柿の場合はほとんどが不溶性タンニンになっているので渋みを感じないわけ。
で、渋柿でも、可溶性タンニンを不溶性タンニンに変えられれば甘く食べられるのだ。
そのための「渋抜き」の工夫が連綿と考案されてきたんだ。

その最たるものが干し柿で、乾燥させることで水分量を減らし、果実中に含まれるタンニンを凝集させることで不溶性にするのだ。
渋柿に含まれるタンニンはもともとポリフェノールの一種がいくつも結合してできている縮合型タンニンなんだけど、結合している数が少ないと水に溶けるのだ。
逆に、結合している数が増え、分子量が増えると水に溶けなくなって、同時に渋みを感じなくなるわけ。
水分量を減らすことでタンニンの分子が近づき、縮合が進むということだよ。
さらに、干し柿の場合は乾燥させることで保存食にもなっていて、流通にも便利になるんだよね。
これで日本の甘味の代表選手が干し柿になったのだ。

渋抜きには他にもいくつか方法があって、一番簡単なのはそのまま放っておいてとろとろになるまで完熟させること(リンゴと一緒に密閉して、リンゴから放出されるエチレンガスで熟成を進めるという方法もあるよ。)。
まだ固い、しゃりしゃりした状態で食べたいときは、別に渋抜きする必要があるのだ。
有名なのはアルコール(焼酎)につけるもの(樽柿)で、エタノールが入ることで水素結合が弱まるためにタンニンが水に溶けづらくなり、縮合が進むんだ。
同じ原理でアルコールを振りかけて密封しておいておく、という方法もあるよ。
それからお湯につける、米ぬかにつけるなんて方法もあるのだ。
工業的には、二酸化炭素の超臨界流体(高温・高圧下で液体時対の中間のような性質を示す状態)に通して二酸化炭素中にタンニンを抽出する、という方法もあるのだ。
これだと大量の柿を一気に渋抜きできるのだ。

干し柿は乾燥が進むと黒く、固くなり、表面には糖分が析出してきて白い粉が吹いてくるよね。
柔らかいうちならそのまま食べられるけど、固くなってくると刻んで料理に使ったりするのだ。
時代が下ると干し柿の製法も進み、大正時代に福島県で考案されたのがあんぽ柿。
硫黄で燻蒸してから干すことで、半生で柔らかく、ジューシーになるのだ。
これは海外で柔らかい干しブドウを作るときに硫黄燻蒸することにヒントを得たそうだけど、干しているうちに硫黄は飛んでいくので、食べる段階では硫黄臭はないのだ。
戦後になると、同じような方法で長野県名産の大きな柿を使った市田柿も登場するのだ。

ちなみに、干し柿は自分でも簡単に作れるよ。
渋柿の皮をむいて、少し表面を乾燥させてからへたのところをひもでしばり、風通しのよいところにつるしておけばよいだけ。
ただし、直射日光が当たるとかぴかぴになるので、陰干しで徐々に乾燥させていくのがみそ。
それと、湿度が高いとカビが生えたり腐敗したりするので、冬のような乾燥した時期に作るのがよいのだ。
むかしは秋に収穫した渋柿を冬に干し柿にしたわけだよね。

最後に、何かと嫌われる柿の渋だけど、むかしの人はわざわざ柿渋を抽出していろいろな用途に使っていたのだ。
防腐作用があるので即身仏に塗布したり、防水作用もあるので漁網や釣り糸に塗ったり、独特の茶に染める染料として柿渋染めに使ったりなどなど。
乾燥すると固く頑丈にもなるので、うちわや傘にも塗っていたのだ。
さらに、タンパク質凝固作用があるので、清酒を造るときに入れて余分なタンパク質を除去するのにも使われているんだって(今ではこの用途が一番多いらしいよ。)。

柿渋をとる場合は、まだ未成熟な青い果実を粉砕し、二昼夜ほど発酵・熟成させてから圧搾するんだとか。
そのまま圧搾した絞り汁が「生渋」で、その上澄みをとったのが「一番渋」。
一番渋をとった残りに水を加えてさらに発酵させ、そこから圧搾してとるのが「二番渋」と呼ばれるらしいよ。
これを数年保存して、熟成させてから使うんだって。
途中で発酵させるのでかなりの悪臭だとか。
こっちも簡単に作れそうだけど、干し柿と違ってあまり作りたくないね(笑)

2010/12/11

・・・は青かった!

先日、コリラックマさんがお風呂場でつまずいて、ひざに立派な青あざができてしまったのだ(ToT)
見ているだけで痛そう!
子どもの頃はそれこそ擦り傷でかさぶたができたり、転んで青あざができたりすることが多かったよね。
大人になると頻度は減るけど、青あざだけは時々できてしまうのだ(>_<)
で、ふと気になったので、この「あざ」について少し調べてみたよ。

一般に「あざ」は皮膚に現れる変色のことで、肌の色と違う色の部分が局所的に現れるものなのだ。
これは生まれつきのもの(先天性のもの)もあれば、けがをしたり病気をしたりしてできるもの(後天的なもの)もあるんだよね。
青あざは外傷によってできる後天的なものの代表例で、誰しも一度ならずお世話(?)になるもの。
大きな外傷だけ消えないあざになることもあるんだよね・・・。
先天的なもので有名なのはアジア人によく見られる蒙古斑。
幼児の間にだけ見られるものである程度大きくなると消えていくんだよね。
人によっては消えないようなあざが生まれつきある人もいるんだって。

青あざは打ち身でできることが多いけど、その原因は内出血。
皮膚の深いところで出血すると、まずはそのぶつけたあたりが赤くなるのだ。
その後、出血した血が固まって黒くなるんだけど、これが皮膚を通して青く見えるんだって。
この血液の赤とか黒の色は血中のヘモグロビンの色なんだけど、さらに時間が経過してヘモグロビンが分解されていくとまた色が変わってくるのだ。
ヘモグロビンの中の色素のヘムから鉄イオンがはずれてビリベルジンになると緑色になるのだ。
そうすると青あざもちょっと色が緑がかってくるわけ。
さらに、ビリベルジンがビリルビンになると、黄色くなるんだけど、これがあざの治りかけの時に黄色い色だよ。
ちなみに、ヘムからできるビリルビンは黄色の色素で、尿の色の原因でもあるのだ!
見ていて痛々しいけど、やがて自然に治るからまだ安心かな。

通常は強い打ち身で内出血が起きたりするんだけど、白血病になったりすると、血小板が少なくなって血が固まりにくくなるので、ちょっとした刺激で内出血しやすくなるのだ。
それで鼻血がよく出たり、青あざが知らないうちにできていたりという症状が出てくるんだ。
特に覚えがなく、痛みもなかったのに青あざができるときは注意が必要かもね。

青あざは時間の経過とともに消えていくことが多いんだけど、なかなか消えないあざもあるのだ。
それらの多くはメラニン色素が皮下に沈着しちゃっているんだよね。
メラニン色素は肌の色や日焼けの色の原因として有名だけど、局所的に量が増えて、かつ、それが安定的に沈着してしまうとあざになるのだ。
皮膚の浅いところにたまると黒ずんで見え、深いところだと青くなるわけ。
打ち身による青あざでなく、皮膚に青いあざがある場合は、このメラニン色素が皮膚の深いところで沈着している可能性が高くて、レーザー治療で色素を焼くなどしないと消すことはできないみたい。

面的な広がりを持って色素が沈着するとあざと呼ばれるんだけど、これがもう少し範囲が狭いと肌のくすみ、しみ、そばかすと呼ばれるのだ。
皮膚の比較的浅いところにたまるので茶色から黒に見えるんだよね。
くすみやしみは老化とともに皮膚に色素が沈着してしまう現象で、これはもう普段から肌のお手入れをしっかりとして、新陳代謝を高め、可能な限り色素が沈着しないように気をつけるしかないのだ。
できてしまったらコンシーラーなどの化粧品で隠すことになるわけ。
ちなみに、色素の沈着は物理的な刺激によっても起こるので、傷跡のまわりが少し黒ずんだりするのも同じことなのだ。

思春期に悩ましいそばかすはスポット的に色素が沈着する現象で、局所的にメラニン色素を作るメラノサイトという細胞が活性化することによって起こると考えられているんだ。
白人に特に多いんだけど(黄色人種や黒人はもともとメラノサイトがある程度活性化しているのでひどくないと目立たないというのもあると思うけど。)、これは優性遺伝するものみたい。
ようは紫外線による刺激に弱い、ということのようで、光過敏症などを併発していることもあるんだけど。
できやすい体質の人は紫外線を避けるしかないけど、できてしまったものはレーザー治療もあるみたい。
ちなみに、しみやそばかすの原因も若い頃の過度な日焼けだったり、睡眠不足などのストレスだったりする(ストレスがたまると体内に活性酸素が増えて、それが悪さをするのだ。)けど、紫外線には気をつけた方がよさそうなのだ。
紫外線に当たらないとビタミンDが活性化しなくてカルシウム代謝が悪くなったりするので当たらないですませるわけにはいかないんだけど。

2010/12/04

New Islandからの贈り物

この時期はまだ銀杏並木の下でギンナン臭がするねぇ(>_<)
落ち葉の下に最後に残されたギンナンが隠れていたりするから、踏まないように気をつけないといけないのだ!
そんなギンナンのにおいをかいでいると思い出すのがくさや。
日本でもっともくさい食べ物のひとつだよね。

一般には伊豆諸島、中でも新島の名産と言われているのだ。
八丈島のものもメジャーだけど、新島から製法が伝わった、と言われているようなので、やはり新島が元祖みたい。
くさやは干物の一種で、「くさや液」と呼ばれる独特な調味液に漬けてから補干されたもの。
そのにおいから発酵食品のように思われがちだけど、発酵しているのはその調味液であって、くさや本体ではないのだ。
くさや干物なので、乾燥させることで水分含有量を少なくして雑菌の繁殖を抑制した保存食。
むしろ菌は繁殖していないんだよ。

そのくさや液というのは、長年にわたってくさやに使う魚が漬けられてきた塩水で、中には漬けた魚からいろいろな成分が溶け出し、それが発酵しているのだ。
独特の茶褐色も、あの強烈なにおいも発酵と熟成によるもの。
アミノ酸や核酸が多く含有されているので、うまみも凝縮されているんだけど、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの有機酸やそのエステル類が「臭さ」のもとになっているんだ。
そう言えば、ギンナンの臭さも酪酸などの有機酸由来だから、確かににおいが似ているはずなのだ。
もともと魚の成分が溶け出した塩水なので、ヴェトナムのニョクマム、タイのナンプラーなどの魚醤に近い風味なんだけど、もっと強烈みたい。

これはくさや製造業者が代々受け継いでいるもので、塩分濃度や漬けてきたさなかの種類などで多様性があるんだって。
まさに焼き鳥のたれと同じだけど、においがあるから大変だよね(笑)
ぬか床のように一般家庭でも受け継がれているところがあるんだとか。
それって、自宅でくさやを作っているってことだよね。
すごい世界なのだ!

発祥は詳細にはよくわからないみたいだけど、もともとは近海でとれる魚を保存食にするために塩水に漬けてから干物にしていたんだけど、塩が貴重品だったために、同じ塩水を何回も使い回したらしいのだ。
その結果、塩水には魚の成分がダシのように溶け出し、それが発酵し、熟成することでくさや液の原型ができたというわけ。
すでに江戸時代にはくさやが名物になっていたようだから、相当歴史があるんだね。
ちなみに、新島は米がほとんどとれないので、代わりに塩で年貢を納めていたんだけど、むかしは塩田法で手間ひまをかけて塩を精製しなければいけなかったので、特産品とは言え非常に貴重なものだったそうだよ。

実は、くさや液さえあればくさやを作るのは意外と簡単。
ムロアジやトビウオ、シイラなどの魚を開き、内臓や血合いを除去してていねいに洗い、十分に水気を切ってからくさや液につけるのだ。
これは一昼夜ほど漬け込んでしっかりをくさや液を浸透させるみたい。
漬け込んだ後はまたていねいに洗ってから天日干し。
最近は乾燥機なんかも使うようだけど、干物と同じで天日干しの方がおいしくなるらしいのだ。
ただし、あまり乾燥させすぎると固くなりすぎるので注意が必要。
実際に自分で釣った魚を干物にする人もいるから、何代かにわたって漬け込む塩水を使い続ければくさや液ができあがるかも(笑)

くさやはそのままでもくさいので真空パックや瓶詰めで売られているけど、これを焼くとさらににおいが拡散するのだ・・・。
最近では普通に魚を焼くのもはばかられるくらいだから、くさやを焼こうものなら大変だよね。
時と場所を選ばないと!
でも、好きな人は好きなんだよねぇ。
ちなみに、くささを数値化してみると、世界一くさいと言われる発酵缶詰のシュールストレミング(ニシンの塩漬けを缶の中で発酵させたもの)や韓国のエイを発酵させたホンオフェ(強烈なアンモニア臭)に比べるとまだまだちょろいものみたい。
だったら自宅で作って、自宅でも食べられるかな?
ボクはあえて挑戦しないけど。

2010/11/27

生ハムは「生」だけど豚肉を生食してよいのか

最近はどこに行ってもメニューに生ハムを見かけるよね。
そんなに流通していないから高級品という扱いだったと思うんだけど、それこそサイゼリヤにもおいてあるくらいなのだ!
一気に日本でも広まったよね。
それでも、スペインのハモン・セラーノやイタリアのプロシュートは今でも高級品として流通しているから、リーズナブルな生ハムが生産されるようになったということかな?
いずれにせよ、庶民でも生ハムを食する機会が増えたわけだけど、ちょっと気になったのは、豚肉って生で食べて大丈夫だったっけってこと。

一般には、豚には寄生虫がいることがあるので、生食せずにしっかり火を通してから食べないとダメ、と言われるよね。
これは有鉤条虫のことで、眼球や神経にも規制する恐ろしい寄生虫・・・。
重篤な症状につながることもあるので忌避されてきたのだ。
最近ではそういう寄生虫は減っているんだけど、寄生虫だけでなく、ヘルペスやトキソプラズマ、E型肝炎などの病原微生物がいる可能性があるので、加熱してから食べるべきと言われているよ。
というわけで、原則としてやっぱり豚肉は生で食べない方がよいみたい。

ハムやソーセージ、ベーコンなどの豚肉の加工食品は、多くの場合燻製されているんだよね。
その燻蒸効果で内部のタンパク質が変性するので、加熱したのと同じような効果が出てくるわけ。
ハムの場合はしっかり塩漬けしてから燻製するわけだけど、塩と燻製の二重の保存技術を使っているのだ!
ちなみに、よく口にするプレスハムはくず肉を集めて大豆由来のタンパク質などの接着剤でくっつけ、圧力をかけて円柱や直方体に成形してから蒸したりゆでたりして加熱しているのだ(ロースハムはもう少し高級な肉を使っているけど、肉を集めて成形して作るのは同じだよ。)。
いずれにしても、燻蒸や加熱をしているのだ。
ところが、生ハムの場合は、燻蒸せず、そのまま冷暗所で乾燥させながら熟成させるだけなんだよね。

生ハムの場合は普通のハムよりかなりきつめに塩をしているので、その保存効果は高まるんだけど、さらに乾燥させることで水分を飛ばすので、その保存効果が高まるのだ。
細菌(バクテリア)なんかは高い塩分濃度と乾燥で増殖が抑えられるので十分に効果があるんだよね。
ウイルスの場合は、自分で増えるものではなく、感染した宿主のメカニズムを使って増えるので増殖を抑えるとかそういうことでは防げないのだ。
ただし、ウイルスは乾燥状態や高い塩分濃度の環境下ではそんなに長い間活性を保てないので、生ハムのように長期間熟成させる場合にはウイルスも感染力を失っているようなのだ。
すべてのウイルスがそういうわけではないだろうけど、むかしから食べられてきて問題になっていないので、たぶん大丈夫なんだろうね(笑)

生ハムのみそはこの熟成というやつで、熟成させることでうまみが増え、凝縮するのだ。
熟成課程でうまみのもとであるアミノ酸や核酸が増え、さらに水分が抜けていくことでそれが濃縮されるのだ!
この肉の熟成は生肉でも同じで、よく牛肉なんかでは2~3週間冷蔵庫で熟成されてから出荷されるというよね。
死んだ直後は死後硬直が起こっていて肉が硬いんだけど、その後に自家消化が始まると肉がやわらかくなってくるのだ。
これは細胞の中に残っている酵素が死んだ後も働き続けることから起こる現象で、タンパク質なんかは分解されてアミノ酸が出てくるというわけなのだ。
高分子のコラーゲンも分解されて分子量が小さくなることで回りの水分を吸って膨潤するのだ。
それらの反応の結果として肉がみずみずしく、やわらかくなるのだ。
ただし、死後直後に食べるとまだグリコーゲンが分解されずに残っているので、肉は硬いけど独特の甘みを楽しめるらしいよ。

生ハムの場合は、この熟成を長期間かけて行うのだ。
塩分と乾燥で細菌の増殖を抑えているので、腐らせることなく長期間熟成させることが可能になっているんだ。
それでも、この熟成は2~4度くらいの冷暗所で行うみたいだよ。
ずっと冷蔵庫に入れておくイメージなのだ。
さらに、中華ハムとしておなじみの中華火腿は、途中までは生ハムと作り方が一緒なんだけど、乾燥させる過程で表面にカビを生えさせるのだ。
そうすることでさらに熟成が進むと言われているんだ。
高級な鰹節の表面にカビを生えさせて熟成させるのと同じみたい。

こうして、生ハムの場合は塩と乾燥で腐敗を防ぎ、長期間熟成させることで豚肉のうまみを凝縮しつつ、生食できるようにしたすぐれた加工食品だったのだ。
最近では冷蔵保存技術が高まったので、燻製食品でも塩や燻蒸が弱めであんまり保存食品になっていないものも多いけど、生ハムの場合はそういうわけにはいかないので、しっかり作らないと食べられないのだ。
低価格なものもあるけど、それなりのお値段がするのもうなづけるね。
今後は、むかしの人が積み上げてきた保存技術に敬意を表しながら食べないとね。

2010/11/20

カプセルの中身はなんじゃらほい?

小惑星探査機「はやぶさ」が地球に持ち帰ったカプセルの中に入っていた微粒子が小惑星イトカワ由来のものらしいということが判明したのだ!
連日大さわぎだね。
「はやぶさ」はもともと工学実証機として、将来の宇宙探査に向けて様々な新技術を宇宙で試すのが主目的だったんだけど、人類初の偉業を成し遂げたのだ。
その長い旅の途中にはさまざまなトラブルもあって、満身創痍での基幹だったから感動している人も多いんだよね。
でも、科学としてはこれからも大きな山があるわけで、これからその微粒子の解析をどんどん進めていかなければならないのだ。

今回イトカワのものらしい微粒子がわかったのはサンプルコンテナと呼ばれるサンプル収納容器のA室。
B室というのもあって、2つに分かれているのだ。
当初の「はやぶさ」の計画では、イトカワにタッチダウンしたときにインパクターと呼ばれる金属の弾丸を地面に向けて発射し、その衝撃で舞い上がった岩石の粒やほこりをサンプラーホーンから吸い上げて集める計画だったんだよね。
でもでも、1回目の着地ではレーザー測距(レーザーの光が反射してくる時間で距離を測る技術)に不具合があって、緩降下してソフトランディングするはずが、どーんと大きな衝撃で衝突し、横倒しになってしまったと考えられているんだよね(映像はなくて電気信号のデータしかないので実際にどういう状況下は想像するしかないのだ・・・。)。
そのせいで化学スラスタが故障してしまってまた大変になるんだけど、なんとかその後回復し、2度目の着地はうまくいったのだ。
ここでもトラブルがあって、弾丸がうまく発射されなかったのだ(ToT)
で、最初に衝突したときにサンプルが入ったのがまだ開けていないB室。
2回目の軟着陸のときに舞い上がったちりやほこりを集めたのがA室。
なので、B室にはさらに大きな粒子が入っているのではないかと期待されていたんだけど、今回、ごくごく小さなA室の粒子(100分の1mmくらいの大きさ、髪の毛の太さの10分の1くらいかな?)を調べたところ、地球のものではないと考えられる、という結論に至ったのだ!

サンプルコンテナの中にはもともと地球のほこりなんかが混入(コンタミ)している可能性があったと考えられていたので、内部からとった微粒子が本当にイトカワ由来かどうかをずっと調べていたんだよね。
で、今回の結論に至った根拠として、いくつか説明されているのだ。
まずは微粒子の鉱物種とその組成で、これは走査型電子顕微鏡や蛍光X線分析などで調べたのだ。
カプセルの中にあった微粒子を顕微鏡で見てみると、地球上でも見られるかんらん石(緑色の半透明の石で、Mg2SiO4とFe2SiO4の混合物。)と輝石(ガラス光沢をもつケイ酸塩鉱物で、XY(Si,AL)2O6という化学組成で、XやYは鉄やマグネシウムが入るのだ。)が存在していたんだって。
でも、X線を照射して蛍光として出てくる特性X線を検出する蛍光X線分析をしてみると、地球上のかんらん石や輝石に比べると鉄/マグネシウム比率がはるかに大きいことがわかったんだって。
これは地上で見つかる隕石に近いもので、宇宙由来のものである可能性を示唆しているのだ。
さらに、「はやぶさ」がイトカワのまわりを飛びながら近赤外線やX線でイトカワ表面の物質を調べたデータとも整合しているので、イトカワ由来だろう、ということになったんだ。

でも、一番最初の発見は、その微粒子の中に硫化鉄の結晶が発見されたこと。
硫化鉄自体は地上にないこともないんだけど、非常に不安定な物質で、すぐに酸化されて硫黄と酸化鉄になってしまうので、地表面では見つからないものなのだ。
「はやぶさ」のカプセルは宇宙から真空状態で地上に帰還し、そのまま地上の物質が混入しないよう真空をたもったまま中身の解析をしていたので、硫化鉄が酸化されずにすんでいたんだ。
特殊な結晶構造をとっているそうなので、専門家の人は見た瞬間に「これだ」とわかったそうだよ。
これが見つかってから本格的に分析を進めて、中で見つかったほぼすべての粒子について上記のような特徴がわかったということなのだ。

ちなみに、当初はカプセル内に地球上の物質が混入している疑いがあったんだけど、けっきょくカプセルの中からは地球上で見つかるような岩石の破片などはなかったとか。
「はやぶさ」は鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられたので、火山灰が入っているんじゃないか、とも言われていたんだけど、それもなかったみたいだよ。
豪州の砂漠に落として回収したけど、そこの砂らしきものもなかったようで、まさに宇宙のちりだけを持ち帰ったことになるのだ。
ただし、微粒子をとる課程でカプセル内部をテフロン製の特殊なへらでこすっているんだけど、その作業で生じた金属片は混ざっているみたい。

いよいよこれでアポロの月の石やスターダストの彗星のしっぽのちり以来の宇宙物質の解析が始まるのだ。
イトカワは原始天体と言われていて、太陽系の形成初期の状態が保存されている「化石」と呼ばれているのだ。
ビッグバンが起こってから冷却していく課程で様々な元素や物質が生まれ、そういったものが集まって恒星系やそれが集まった銀河が形成されていくんだけど、イトカワの場合は、太陽系ができていく中で、ちりや岩石が集まってそのまま固まって太陽の周りを回り始めたのだ。
これは「はやぶさ」が解明したラブルパイル構造という中にたくさん隙間がある構造からもわかっているのだ。
一方、惑星のように質量が大きな天体だと、岩石など集まってきた結果、その重力で中心に圧力がかかり、高温になって溶け出してしまうのだ。
地球のマントルがそれで、集まった当初とは岩石の状態・構成が変わってしまうのだ!
なので、イトカワの岩石と地球の岩石を比べてみると、もともとはどういうものが集まって、それがどう変化して固体惑星になっていくのかなんていう太陽系の進化の過程がわかるかもしれないのだ。

さらに、宇宙はX線やガンマ線などの多くの放射線にさらされている環境なんだけど、こういう放射線が当たると結晶構造が壊れたり、いびつになったりするんだよね。
それを宇宙風化と呼んでいるんだけど、イトカワでとられたサンプルの決勝がどれだけ宇宙風化を受けているかを調べられると、太陽系の年齢(太陽系の基となるちりやほこりができてからどれくらいの時間が経っているか)がわかるかもしれないんだって。
なんだか壮大な話だねぇ。

今回の発表では、とりあえず地球のものではなく、イトカワのものらしい微粒子だった、ということがわかったんだけど、本当の解析はこれから。
播磨にある大型放射光施設のSPring-8など、最先端の分析機器・設備を使って国を挙げて解析を進めるのだ。
さらに、米国航空宇宙局(NASA)なんかの海外機関とも協力も進めるらしいよ。
まだ開いていないB室にはさらに大きな粒子があるかもしれないし、今後が楽しみなのだ♪
ちなみに、もっと大きな粒子が見つかると、さらに解析の幅が広がるみたいで、関係者はわくわくしているようだよ。

2010/11/13

かさかさから守れ!

秋から冬にかけて乾燥してくる時期に欠かせないのがリップクリーム。
最近は男性でも使っている人が多いよね。
ボクなんかもわりと乾燥しがち(?)で、すぐにくちびるが切れてしまうので、けっこう使う方なのだ。
いったん切れるとものを食べるたび、口を開けるたびに痛いからね(>o<)
で、今回はこの時期から手放せなくなるリップクリームについて少し調べてみたのだ。

定義は簡単で、くちびるに塗布する軟膏剤を指すのだ。
リップバームと呼ばれることもあるよね。
「軟膏」というのは体の表面に使う薬の外用薬の形態の一種で、湿布のように貼って使うのが硬膏、クリーム状・ゲル状のものを塗って使うのが軟膏なのだ。
リップクリームは塗って使うので軟膏だよ。
タイプも二つあって、スティック状になっていて口紅と同じように塗るタイプと、チューブや容器に入っていて指につけて塗るタイプがあるのだ。
一般に「バーム」と呼ばれるのは指で塗るタイプが多いみたい。

くちびるは皮膚とは違って粘膜が直接露出しているんだよね。
皮膚だと表面にケラチンなどからなる角質層に守られているので乾燥や刺激物に対して抵抗力があるんだけど、粘膜の場合は上皮細胞が直接表面に出てしまっているので乾燥などに弱いのだ。
胃腸などの消化管の端がめくれて外気に触れている状態なんだよね。
消化管の中は粘液なんかで保護されているけど、くちびるはそうはなっていなくて、普段は唾液で湿らせたりするしかできないのだ。
そこで、薄い膜を作って保護するのが主な役割だよ。
最近では、その保護作用だけでなくて、女性用では淡く色や香りをつけたり、グロスのようにつやを出させたりする美容目的にも使われるのだ。
そのほか、口内炎や単純疱疹(口唇ヘルペス)の治療目的で使われるものもあるよ。

リップクリームの主成分となる基剤でよく使われるのはミツロウやワセリン。
ミツロウは天然成分で、ミツバチの巣の主成分。
加熱圧搾したり、熱湯に溶かし出したりして不純物を取り除いて抽出するのだ。
そのままだと黄色っぽいんだけど、精製・漂白することで白くなるんだ。
むかしはろうそくにも使われていたんだけど、ミツロウでろうそくを作るとすすが出にくいということで教会でよく使われていたみたい。
一方のワセリンは化学的に石油から取り出すもので、長鎖の飽和炭化水素が複数種類混ざったもの。
飽和炭化水素は炭素数が少ないと気体だったり、液体(油)だったりするんだけど、炭素数が増えて分子量が大きくなると常温で固体の脂になるのだ。
それを精製したのがワセリンだよ。
精製度が高いものは純白で、劣化してくると徐々に参加されて淡黄色になってくるのだ。

この基剤にメントールや樟脳などの成分が含まれるのだ。
どちらもひんやりとした爽快感を与えるもので、軽い炎症は抑える作用もあるよ。
メントールはいわゆるハッカ臭がする成分で、お菓子から化粧品までいろんなものに使われているよね。
もともとはハッカ油から抽出された成分なのだ。
一方、樟脳(カンファー)は防虫剤のイメージが強いけど、香料としても使用されているのだ。
クスノキの製油成分から抽出されるもので、クスノキの葉や枝を蒸して、水蒸気分流して製油成分を集めるんだよね。
こちらもすーすーした感じの香りが特徴的だよ。
これらに香料なんかを加えたのが一般的な保湿目的のリップクリーム。

最近では、ビタミンが配合されていて抗酸化作用を持たせたり、サリチル酸やアスピリンを加えて抗炎症作用を強めたりしたものもあるのだ。
そういうのが口角炎や口内炎、ひどいくちびるのひび割れなんかに使われるんだよね。
多くのものは「医薬部外品」だけど「薬用」と書いてあるのだ。
特にひどい症状に治療目的で使う医薬品では、ステロイド剤が配合されているものもあるよ。
これはひどい口内炎などに使うみたい。
口内炎はウイルス性や細菌性のものは抗生物質とかで対応できるんだけど、ストレスや偏食などから起こると言われている原因不明のものは治療のしようがないので、ひどくなるとステロイド剤で対症療法をすることがあるのだ。

女性が化粧品的に使う場合には、グリセリンが配合されていてつや出しになったり、顔料が入っていて色をつけたり、香料が入っていて香りをつけたりするのだ。
このほか、酸化チタンや酸化亜鉛などの成分が配合されていて、サンスクリーン剤(日焼け止め)として機能するものもあるのだ。
くちぶりに日焼け止めというと変な感じだけど、メラニン色素が沈着するとくちびるの色が黒ずんでくるので、鮮やかな赤い色を保つためには意味があるみたい。
なかなか奥深いねぇ。

というわけで、単にリップクリームと言っても今ではいろんなものがあるのだ。
用途に応じて使い分けないと。
ボクの場合は単純に保湿だけだから一番シンプルなやつでよいのだけど。

2010/11/06

とられすぎるなよ!

うちの職場では年末調整に向けての作業が始まったのだ。
毎年のことなんだけど、これがよくわからないんだよね・・・。
いっつも「こんな感じかな?」と適当に書いて出してしまうんだけど、それで特に問題になったこともなく、わからないまま来てしまっているのが現状。
もともとわかりづらいんだけど、きちんと手続きしないと税金を払いすぎてしまうことになるので、注意が必要なのだ!

この年末調整は、毎月のお給料からあらかじめ所得税などの税金を差し引いている「源泉徴収」制度において、最終的に所得税の過不足を計算して調整をすることなのだ。
本来控除となって課税対象にならない部分についても源泉徴収では課税対象として計算されていたりするので、そのままでは税金を払いすぎていたことになるんだ。
そこで、控除額を差し引いて最終的に所得税として支払うべき金額を算定し、そのために事業所等が調整をしてくれるのだ。
なので、気をつけて作業をしないと、払わなくてもよい税金を払っているおそれがあるんだよ。

これに対立する概念が確定申告。
年が明けて2月になると確定申告の時期になるのだ。
年収が多い人や、複数の事業者から給与が出ている人、大きな臨時所得があった人なんかが対象で、自分で年間所得と控除分を計算し、これだけ課税対象の所得がありますよ、と申告する制度。
よく脱税では、考え方の違いとか言いながら修正申告するけど、あれはこの確定申告の手続きの話なのだ。
控除されると思っていたり、必要経費で落とせると思っていたらそうではなくて課税対象の収入に区分される、ということなんだよね。
もっと悪質なのに所得隠しなんてのもあるけど。
まだまだ使いづらいみたいだけど、電子申請も一部できるみたい。
確定申告をすると、税金として過分に払っていたお金が返ってくることがあるのだ。
これが還付金。
でも、きちんと自分で確定申告をしないともどってこないので、注意と勉強が必要なのだ!

年末調整で計算するので有名なのは配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除などなど。
具体に年末調整の作業をするのもこれらなのだ。
配偶者控除でよく言われるのは、パート収入を103万円以内に納めるという「103万の壁」の問題。
103万円を越える収入があると配偶者控除からはずれるんだよね。
なので、むかしのパートはたいてい年収100万程度に抑える例が多かったのだ。
ただし、民主党のマニフェストでは子ども手当の財源のために配偶者控除を廃止する方針がしめされているんだよね。
同じく子ども手当の財源のために縮小が検討されているのが扶養控除。
こちらは配偶者以外の扶養家族で、年間所得が規定額より少ないと適用されるんだよね(自己収入が多いとそもそも扶養家族と見なされないのだ。)。
このふたつは年末調整で扶養家族の所得証明が求められ、控除の対象になるかどうかがチェックされるのだ。
でも、最近問題になっているのは、この二つの控除がなくなると、子どもが少ない家庭ではかえって負担増になるという問題。
現金がないからいまいち現実感がないけど、税金が免除されていた額の方が子ども手当として給付される現金より大きくなるということだよ。

生命保険料控除は、生命保険の保険料等に支払った金額のうちの一部が控除対象になるというもので、年末調整の時期になると保険会社から保険料の支払い証明書が送られてくるのだ。
これを添付して申請すると、年末調整で所得税や住民税から控除してくれるんだ。
一方、多額の医療費を払った場合などの医療費控除は自分で確定申告をしないといけないのだ。
大きな手術などをした場合は対象になる可能性があるので、いろいろと調べてみると還付があるかも。
生命保険等に入っていて、そこからお金が給付されている場合は、その分を除いて計算する必要があるのだ。
けっこうわかりづらいので、まずは国税庁のHPで説明を見るのがよいかも。

もともと日本の源泉徴収は、戦費を効率よく集めるために1940年にナチス・ドイツの例にならって導入されたものだそうで、その徴税効率の高さから、多くの先進国で現在でも導入されている制度なのだ。
米国でも第二次大戦中に導入されたとか。
徴税する方は各個人ではなく、その個人に給与を支払っている事業者だけを相手にすればいいので楽だし、とりっぱぐれも少ないよね。
ただし、いつの間にか税金を払っているので、いまいち納税の実感が薄れるという問題もあるんだ。
確かに、消費税なんかと違って、給料から天引きで支払われていると、トータルでどれだけ納税したかって実感がつかめないよね(>_<)

とまあ、ざっと見た感じはこういうことなのだ(笑)
自分については課税対象の所得がどれだけあって、という計算なんだけど、源泉徴収ではそれすらも機械的な手続きで事業所でやってもらえるんだよね。
手続きは毎度悩むけど、確定申告に比べるとはるかに楽ではあるのだ。
でもでも、やっぱりどれだけ税金払っている、という納税意識は薄いから、一度は確定申告に挑戦してもよいのかもね。