2009/11/14

お湯で煮ただけの鍋?

うちの職場の同僚が「鯛ちり」が食べたいとさわぎだし、来週食べにいくことになったのだ。
そう言えば、家で鍋をするときはポン酢につけて食べるのが多いけど、外で食べるときは味付きの汁で煮てあるものが多いような
関東ではそもそもあんまり「ちり鍋」を食べず、寄せ鍋や湯豆腐が多いこともあって、くだんの「鯛ちり」についてもみんなはっきり言って「?」といった感じ(笑)
絶対にうまい、というので食べに行くことにしたんだけどね。
そこで、今回は「ちり鍋」についてちょっと予習をすることにしたのだ。

ちり鍋というのは一般的には昆布などのダシで具材を煮て、ポン酢などのつけだれにつけながら食べる鍋料理。
最初から味付きの汁で煮てある具だくさんの汁物としての鍋料理(ちゃんこ鍋や石狩鍋など)とは一線を画すものなのだ。
そのまま取り皿にとって食べるだけの方が楽というのもあるけど、ポン酢とモミジおろしでさっぱり、はふはふと食べたいというのもあるよね。
ボクもわりと好きなのだ。
以前、ちゃんこ料理屋で頼もうとしたら、「うちはつゆが売りなので味付きの鍋にして」と怒られたこともあったくらい(笑)

このちり鍋、通常はタラ、タイ、フグ、ハモなどの白身の淡泊な魚やカニが多いよね。
おそらく、味付きの汁でしっかり煮てしまうとぱさついてしまってうまさが薄れるけど、さっと火を通して食べるちり鍋だとおいしく食べられるということなのだ。
このちり鍋の起源は幕末から明治にかけてと言われていて、お刺身などの生の魚を食べられない西洋人がお湯につけて火を通して食べたのがはじまりなんだとか。
湯につけると身が「ちりちり」と縮むので「ちり鍋」と呼ばれるようになったんだとか。
そういう意味では、「しゃぶしゃぶ」と同じようなものなんだね。

ちなみに、火を通すと身の中の脂肪がとけ、アミノ酸が出てきてうまみが増すんだよ。
その一方で、魚介の場合は火を通しすぎるとかたくなるし、脂肪分の少ない白身の魚は脂が抜けきってぱさつくので、さっと火を通すことが大事なんだ。
一方、しゃぶしゃぶの場合は、肉をさっぱり食べるために余計な脂を湯で融かして除いて食べる調理法で、根本的な考え方が違うんだよね。
最近では、いわゆる「鯛しゃぶ」とかもあるけど、むしろあれはより薄い切り身を使うちり鍋と整理すべきものかも。
起源的には原初のちり鍋の食べ方に近いよね。

特殊(?)なちり鍋としては、豚肉と白菜を使った常夜鍋なんていうのもあるよね。
これは毎晩食べてもあきない、ということからついた名前だそうだよ。
こっちも淡泊な素材をおいしく食べるというよりは、肉をよりさっぱり食べる方法だよね。
最近ではチゲや火鍋など豚肉を使った鍋はたくさんあるけど、むかしの肉をそんなに食べ慣れていない人たちにとってはそれくらいしないと肉の脂身には抵抗があったのかも。
すき焼きの前身の牛鍋はみそやしょうゆの濃い味付けで肉の臭みを抜いて食べるものだし、明治からはしばらく肉食になれるための調理法が各種開発されたんだよね。
今ではもう肉を食べ慣れてきたから、そういう肉本来の味が感じづらい料理法では物足りないというところもあるけど。

ここでちり鍋をするときに問題となるが、具材の新鮮さなのだ。
さっと火を通しただけでうまみを活性化させて食べるのが基本で、そのときに魚介から出たダシを野菜や豆腐が吸うという構造。
なので、もともとの魚介が新鮮なものでないとおいしくないのだ(>_<)
どうもこれが外であまりちり鍋が出て来ない理由のような気がするんだよね。
味付きの汁鍋であればある程度味でごまかせるんだけど、具材の味がそのまま出るちり鍋ではそれがつらいから。
今では流通も発達してイワシやサンマの刺身なんてのも普通に都心で食べられるようになったので状況は変わっているんだろうけど、おそらく、経緯としてそういうことがあったのではないかと思うのだ。
そういう意味では、今度食べに行くちり鍋は楽しみだね♪

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