2010/01/23

動く大地

最近の研究で、マダガスカル島にいるほ乳類はアフリカ大陸から漂流して流れ着いたものの子孫であることがわかってきているのだ。
現在の海流だとむしろ島から大陸に行く方向に流れているんだけど、かつては大陸も島ももっと南の位置にあって、海流も大陸から島に流れる方向だったことがわかったとか。
スパコンを使ったシミュレータで過去の地形と海流を予測した結果だそうだよ。

で、ここで気になったのが「むかしはもっと南の位置にあった」という部分。
これって古生物の話だとよく出てきて、オーストラリア大陸は早い時期に他の大陸から離れたので独自に有袋類が繁栄したとか、日本海はかつて湖だったので大陸からナウマン象がわたってきたとか、そういう話はよく聞くよね。
今や常識となりつつある「大陸移動説」、プレートテクトニクスだけど、実はこの説はけっこうつい最近になって認められてきたものなんだよ。
よくよく考えれば、自分の足下の大地が日々わずかに動いているっていうんだから、なかなか信じづらいよね。

このプレートテクトニクスが最初に想定されたのは第一次世界大戦後のドイツ。
ヴェーゲナーさんという人が、アフリカ大陸の西側のくぼみと南アメリカ大陸の東側のでっぱりがうまいことかみ合うんじゃないか?、と妄想したことに始まるのだ。
そこで出てきたのが、もともとは世界はパンゲアと呼ばれるひとつの超大陸で、それが分裂していろんな方向に動いていって今の形になっていったとするもの。
もともと古生物の世界では化石の分布からアフリカと南米の間で何らかの動植物の交流があるっぽいことがわかっていた、というのもこの発想が出てきた背景だよ。

でも、当時は固いはずの大地が動くなんて想定しづらいし、大陸が動く原動力も潮汐力や地球の自転による遠心力に求めていたので、いまいち信憑性が低く、あまり振り返られることがなかったんだよね(>_<)
ところが、地球の内部構造が徐々にわかってきて、数kmの厚さの固い近くの下には流動的なマントルがあって、そこでは対流があるらしい、ということがわかってくると、そのマントルの上を近くが滑るように移動しているのではないか、ということで見直されてきたのだ。
さらに、海洋学の分野で、海嶺で新しい物質が内部からわき上がってきて海底は徐々に拡大していき、海溝では逆に押し出された物質が内部に沈み込んでいく、という海洋底拡大説が出てくると、大陸の移動も同じように起きているんじゃないか、とプレートテクトニクスの現在の考え方がまとまっていったのだ。
それが1960年代だよ。
つまりは、まだ50年そこそこの話なのだ!

その後さらに証拠は積み上がっていって、岩石に残された古地磁気を比較することで、大陸の移動がどうなっていたのがわかるようになっていたのだ。
地球は長い時間で見ると古代と比べて地軸がずれて傾きが変わっているんだけど、それによって地磁気の方向も変わっているのだ。
岩石の中には微弱ながら古代の地磁気が記憶されているんだけど、その磁北の方向を比較することで古代の北極点はどのあたりにあって、どのように大陸が移動していったかの目安がつけられるということなのだ。
今ではGPSを使った衛星測位と電子基準点の組み合わせで、年間数mm~数cmという大地の動きを精確に観測することもできているよ。

大陸や海洋が動くときの単位がプレートで、プレートが「1枚岩」でなく、いくつかに分かれているからこそ地形が変わっていくのだ。
プレートとプレートの境界では、軽い(比重の小さい)大陸プレートの下に重い(比重の大きい)海洋プレートが沈み込んだり、プレート同士が衝突してその部分が盛り上がったり、プレートがすれ違って巨大な横ずれ断層ができたりしているのだ。
日本海溝は太平洋プレートが北アメリカプレートの下に沈み込んでいる位置にあるんだよ。
太平洋プレートは西に動いているんだけど、そのせいでハワイは徐々に日本に近づいているのだ。
でも、日本の手前で日本海溝に沈んでしまうんだよね・・・。

一方、ヒマラヤ山脈はインドプレートとアジアプレートが衝突して盛り上がったところで、今でもちょっとずつ高くなっているんだよ。
カリフォルニアの西部から何部にかけての巨大なサンアンドレアス断層は太平洋プレートと北アメリカプレートの境界で、ここでは沈み込みや衝突はなく、すれ違いにより大きな横ずれ断層になっているんだ。
地上だとそんなに多くないけど、海底にはけっこうあるみたい。

このプレートが沈み込んだり、衝突したり、すれ違ったりするところには、プレート間の摩擦でゆがみやたわみが蓄積されてしまうんだよね。
それが閾値までたまって一気に開放されると大きな地震が起こるのだ・・・。
地震多発地域はだいたいプレートの境界にあるんだよね。
日本でもリスクが高いと言われている伊豆半島近辺は、太平洋プレート、北アメリカプレート、フィリピン海プレートの3つのプレートがひしめく(?)位置で、そのせいで富士山は盛り上がっているんだけど(伊豆半島はフィリピン海プレートにのっていて、それが本州に食い込んでいるのだ!)、それだけゆがみやたわみもたまりやすいのだ。
そのエネルギーが活火山である富士山の噴火として放出されるか、大きな地震となって放出されるかのリスクがあるんだよね。
富士山の火山活動は現時点ではそんなに活発でないので、地震が心配されているんだ。
というわけで、大きな話で超長期のタイムスパンのような話でありつつ、地震というわりと身近なところにも関わっている話なのだ。

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